元スレ八幡「俺ガイルRPG?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
351 = 1 :
葉山「待たせたね」
葉山の装備はきっちりとした鎧と剣で、まさに騎士って感じだ。女騎士のような雪ノ下と並ぶと本当に絵になる。やっぱあいつが主人公やった方がいいんじゃねぇのか。
三浦「結衣―、あーしのこれどう? キマってない?」
先ほどまで女王らしいドレス姿だった三浦もやや軽そうな鎧姿になってやってきた。見た目としては雪ノ下に近いだろう。あれもまたくっ殺みたいな台詞が実に似合いそ……心なしか三浦に睨みつけられたような気がした。これ以上変なことを考えるのはやめておこう。
海老名「たかまがはらにーかしこみーかしこみー」
海老名さんの装備はどこかで見た巫女服と榊だった。そうだ、確か千葉村で見たあれにそっくりなのだ。しかもステータスを見てみると職業はきっちり陰陽師になっていた。このゲーム無駄に適応力ありすぎだろ。だったら俺のこの制服ももうちょっと別のものにして欲しかったものだ。
戸部「つーかこれめっちゃあるわー」
大和「それな」
大岡「それめっちゃあるわー」
葉山の取り巻き三人組は、葉山のそれと似ているものの少し簡素な鎧をまとっていた。武器は戸部が斧、大和が戟、そして大岡が……なんと野球のバットだった。まさか装備関係で俺の同レベルで酷い奴が他にいるとは思わなかった。思わず同情してしまう。いや、木の棒よりマシだと思うけど。
葉山がこちらまで歩いてくると、何故か俺の方へ向かってきた。なんだ、お前は俺のステルスを見破れるとでも言うのか。
葉山「ところでさっきは聞きそびれたんだけど……どうしてヒキタニくんは制服なんだ?」
ほっとけ。
352 = 1 :
× × ×
自分達のパーティと葉山達のパーティが合流し、3の国から出発すると時計が再び進み始めた。イベントがスタートした証だろう。
元々7人だった俺達に葉山達の6人が加わったため、今のパーティはなんと13人だ。
これはRPGの攻略パーティとしてはかなりの大人数だ。あと不吉な数字でもある。
三浦「でさー、あーしの国とかマジそんな感じなんだよねー」
結衣「そうなの? 前に言った2の国っていうところはー」
由比ヶ浜は久しぶりに再開した三浦や海老名さん、葉山達のグループに混じって会話をしていた。いつものクラスでの光景に近い。
小町「へー、小町も生徒会やってたんですよー」
いろは「わっ、だったら小町ちゃんもウチの生徒会に来てくれると嬉しいなー」
戸塚「小町ちゃんが生徒会になったら、総武高校も良くなりそうだよね」
小町は一色、戸塚達と会話をしている。そういえば小町と一色って現実世界ではまだ会ったことがなかったはずだが、なんだかすでにもう仲良くなっているように見える。
小町には一色の悪いところが伝染しないことを祈るばかりだ。
ちなみに俺は当然そのパーティからちょっと離れて後ろをついていっているだけだ。ぼっち万歳。
こうやってグループ行動でも存在感を消して空気に徹し、他人に迷惑をかけないことに関しては定評が有るのだ。
一方で雪ノ下はこのパーティの先頭を歩きながらも、他の面子とは会話をせずにぼっちでいる。
俺とは正反対の位置にいるのに、やってることが同じってのもなんだかなぁという感じだ。
353 = 1 :
そんなパーティメンバー相手に人間観察をしていると、平塚先生が俺の近くにやってきた。
平塚「どうかね、ここでの居心地は」
八幡「最悪ですよ、なんでゲームでもあんなリア充共を見なきゃならないんですか」
平塚「はっはっは、期待通りの返しだ」
先生は軽く俺の言葉を笑い飛ばすと、柔和に微笑んだ顔を向けてきた。
平塚「だが、これも千葉村の時以来のいい機会だ。まだまだ君たちは別のコミュニティとうまくやる術が見についていなさそうだからな、これを機に少しはうまくやる方法を考えたまえ」
八幡「あの時よりはマシになったと思うんですけどね」
平塚「どこがだ。この前の海浜総合との話し合いなんて酷かったじゃないか」
八幡「うっ……」
そこを突かれると厳しい。平塚先生が言っているのは、クリスマスの時の玉縄率いる海浜総合高校との会議のことだろう。
確かにあれなどは、まさに別のコミュニティとうまくやれなかった最悪のパターンのひとつに近いといえるだろう。
354 = 1 :
八幡「いや、あれはあくまでイベントの問題のソリューションを見つけ出すパフォーマンスであってですね、結果にコミットしようと」
平塚「君は一体何を言っているんだ」
はっ、また意識が高くなってしまった。しかも手もろくろ回しのようにぐるぐる回っていた。本当にあの玉縄くんが残していったインパクトは大きい。
もし小町が本当に総武高校の生徒会に入ることになったら、海浜総合高校と関わることだけは絶対にやめとけって強く言い付けておこう。
八幡「ていうか俺だけじゃなくて雪ノ下にも言った方がよくないですか、それ」
平塚「無論、雪ノ下にも同じことを言うつもりだ」
そう言うと、平塚先生は俺の側を離れて雪ノ下の方へ向かった。去り際に、ひとつ言葉を呟く。
平塚「君たちはお気に入りの生徒だからなぁ、卒業する前に教えておきたいことが山ほどある」
にかっと笑った平塚先生の顔が、妙に印象に残った。
ほんと、あと10年早く生まれて10年早く出会っていたら──そんな仮定に、意味はないなんて分かってはいるのだが。
355 = 1 :
昨日はこまちにっきの方を書き終えた瞬間にぶっ倒れてたので更新出来てませんでした、申し訳ありません。
まさか小町の誕生日が3月3日だということを終盤まで完璧に忘れていて、帳尻を合わせるために四苦八苦していたなんて言えるわけないんだよなぁ……。
書き溜めしてから、また来ます。
357 :
狂気を感じる新スレを見つけてしまった
358 :
乙乙
お気に入りって名言しちゃう先生ェ…
359 = 1 :
× × ×
八幡「……」
雪乃「はっ!」ズバズバ
カニ「カニーッ!!」
三浦「らぁっ!!」ズバズバ
トカゲ「カゲーッ!!」
前衛にいる雪ノ下と三浦のふたりが、剣を振るって魔物をぶった斬る。
その様子は、鬼気迫るものであった。
八幡「……」
どうしてこうなったんだっけか。ちょっと前に合ったことを思い返してみる。
確か、なんかの話の流れで誰が一番魔物を倒せるかーみたいな感じの内容になって、そこで雪ノ下と三浦が触発されてあんな感じになってしまったはずだ。
──まぁ、あーしが一番倒せると思うけどね。
──あら、言うわね。でも私が全部狩ってしまうから、あなたの獲物はなくなっていると思うのだけれど。
そんな感じで出てくる魔物のほとんどが雪ノ下と三浦が退治されてしまっている。たまに漏れてくるのを葉山か戸部辺りが狩る程度だ。
おかげで後衛に全く出番が回ってこないし、まして直接攻撃手段がない俺に至っては完全に蚊帳の外だった。
いや、決してサボっているわけではない。
パーティに13人もいれば、必然的に出番がやってこない人間が出てくるのも自明の理なのだ。
だから今の俺がぼーっとしているのも仕方が無い。俺は悪くない、他の奴らが優秀なのが悪い。
360 = 1 :
ピロリーン
おっ、どうやら雪ノ下か三浦かが倒した魔物から貰った経験値でレベルアップをしたようだ。
例え誰が魔物を倒そうとも俺にも経験値が入るからこのパーティ制度はいい。働かずにもらう経験値はうまい。
ちなみに俺は特に新しい技は追加されていなかった。もうレベルも7だというのに、俺はイベント以外で追加された技は一切無しだ。レベル1の時から覚える技が変わらないとか何? アンノーンなの?
小町「お兄ちゃーん」
八幡「ん?」
まぁ確かに俺の生態とか実質アンノーンみたいなところあるしなーなんて考えていると、俺のところへとことこと我が妹小町がやってきた。
小町「暇」
八幡「……だろうな」
今も一応このパーティは魔物と戦闘中なのだが、それもやっぱりほぼ雪ノ下と三浦の無双状態だ。
雪ノ下と三浦は互いにこいつには絶対負けないみたいなオーラを出しつつ、魔物をばっさばさと斬り伏せていく。
あいつら、マラソン大会の一件でちょっとはマシな間柄になったと思ったのに全く変わってねぇ。むしろ、前よりライバル的な意味で溝が深くなっているまである。
……いや、見ようによっては協力して魔物狩りをしているとも言えるのか? モンスターハ○ターじゃん。
三浦「ちょっと、それあーしの獲物なんだけど!」
雪乃「あら、あなたが動くのが遅いのが悪いのではなくて?」
三浦「あぁ!?」
……いやぁ、本当に仲良いな。口ではああは言っていても、やっていることは協力プレイなのだから。うんうん。
まぁ、こんな感じなので他のプレイヤーの出番が全くないのである。小町が暇とかいうのも頷ける。だって俺も暇なんだもん。
小町「お兄ちゃんの知り合いってさ、なんていうか個性的な人が多いよね」
お前も、その個性的な面子のひとりだっつーの。
361 = 1 :
× × ×
その先の戦闘もほぼ雪ノ下と三浦の活躍によってすぐに終わることが大半であった。
そのまま1時間程進むと、ようやく件の廃墟の城とやらにたどり着いた。
葉山「ここが、言っていた城だよ」
結衣「へー、なんか雰囲気あるね!」
戸塚「すごく……大きいね……」
八幡「戸塚、今のもう一回言ってもらっていいか?」
戸塚「えっ?」
小町「こら、お兄ちゃん」ゲシッ
八幡「いてぇ!」
なんだよ小町……俺はただ、純粋な気持ちで戸塚の声が聞きたかっただけだというのに……。
362 = 1 :
葉山「この城にはふたつの入り口があって、それぞれ全く別の部屋に繋がっている。そしてその奥の部屋にあるボタンを、ふたつとも押し続けなきゃならないんだ」
葉山がそう説明すると、雪ノ下がこくりと頷いて応えた。
雪乃「分かったわ、ならここで二手に分かれましょう」
葉山「ああ。俺達はこっちの扉から入るから、雪ノ下さんたちはあっちの扉から入ってくれ」
そう言うと、葉山に続いて三浦、海老名さん、戸部、大和、大岡もパーティから別れてあちらの扉に向かっていった。
葉山「それじゃ、そっちの部屋のボタンを頼む」
三浦「結衣も気ぃつけなよ?」
海老名「そっちも頑張ってね」
結衣「うん! 隼人くん、優美子、姫菜も頑張ってね!」
雪乃「それでは、そちらの方はお願いするわ」
由比ヶ浜たちが手を振って別れを告げると、葉山たちはそのまま扉の中へと消えていった。
363 = 1 :
それを見送ると、雪ノ下も身を翻してもうひとつの方の扉へと足を向ける。
雪乃「それでは私たちも、私たちのやるべきことをやり遂げましょう」
結衣「うん、頑張ろうね、ゆきのん!」
雪乃「……くっつかないでもらえるかしら」
由比ヶ浜が雪ノ下の腕を取ると、そのままぎゅっとその腕に抱きついた。
雪ノ下はそれに一瞬顔をしかめて言葉の上では拒否の意を唱えたが、結局それ以上のことも言わず振りほどこうともしないまま由比ヶ浜を腕にくっつけて歩き始める。
そして今度はそれを見た小町が、由比ヶ浜がくっついていない方の雪ノ下の腕に突撃していった、
雪乃「小町さんまで……」
小町「んー、雪乃さんにベッタリできる機会とかそうそうないのでー。あー小町にも雪乃さんのようなお姉さんがいたらなー」
そう言った小町に対して、雪乃は一瞬はっと驚いたような顔をした。
しかしすぐにそれを納めると、今度は柔らかい笑みをその顔に浮かべて言葉を紡ぐ。
雪乃「……そうね、私にも小町さんのような妹がいたら良かったと思うわ」
小町「えっ、本当ですか!? いやーこれならお互いのためにもなりますね! 小町は雪乃さんがお義姉ちゃんになって欲しいし、雪乃さんは小町が妹になってほしい。ならば雪乃さん! 是非ウチのお兄ちゃんとうわわ!」
八幡「これ、小町。雪ノ下が困ってんだろうが」
364 = 1 :
雪ノ下が若干反応に困るほどまくし立てていた小町の後ろ首を無理矢理引っ張り、雪ノ下の元から引き剥がした。
すると小町が物凄く怒ったような顔をこちらに向けて、怒鳴り始める。
小町「ちょっとお兄ちゃん、何するの!?」
八幡「んだよ、お前にはお兄ちゃんがいるでしょお兄ちゃんが。ほれ、俺の腕にくっつくがいい。あっ、今の八幡的にポイント高くないか?」
小町「今のはさすがに小町的にポイント低いかなー……」
八幡「なん……だと……!?」
この前なんかは俺の腕を取りながら一緒に夜のお店(※コンビニ)まで行ったというのに、こいつもしかしてそのこと忘れているのではないか。
もしかして嫌われちゃったかなと小町の兄離れにショックを受けていると、雪ノ下にくっついたままの百合ヶ浜もとい由比ヶ浜がなにやらじっとこちらを見つめていることに気がついた。
八幡「……どうした、由比ヶ浜」
結衣「えっ、あっ、いやなんでもないよなんでも、たはは」
八幡「……?」
明らかに俺の方を見ていたと思ったが、違っただろうか。そう思っていると由比ヶ浜がそのまま言葉を続けた。
結衣「いやー、その、もしヒッキーがお兄ちゃんだったらどうなるのかなー、なんてことを……あはは」
八幡「お前がもしも妹だとしたら面倒見切れねぇよ」
結衣「辛辣だ!?」
いやだってあのアホの子だよ? たまに雪ノ下ですら手に負えない時があるくらいなのに、この俺が世話など見切れるわけがない。ちょっと頭が残念なところがある小町ですでに手一杯だ。えっ、小町に面倒見られていることの方が多い? ほっとけ。
365 = 1 :
その小町はどうしているかと目を向けていると、いつの間にか俺の元を離れて由比ヶ浜の方へぴゅーっと走ってしまっていた。
小町「いやーでもですね結衣さん、ウチのお兄ちゃんはそりゃもうたまにどうしようもないところもありますが、ああ見えても結構妹のためには色々やってくれたりする優しいところもありまして、是非結衣さんに引き取って貰えるとうわわ!」
八幡「これ、小町。由比ヶ浜が困ってんだろうが」
俺もすぐに小町のところへ向かうと、由比ヶ浜にまくし立てていた小町の首を掴み、そして無理矢理引き剥がした。
すると、またすごい形相になった小町が俺の目を睨みつけてくる。
小町「なにすんのさー! せっかくお兄ちゃんのいいところをアピールしようとしているのにー!」
八幡「余計なことはせんでいい。それに俺の妹は小町ひとりだけだ」
小町「お、お兄ちゃん……」
俺と小町の間に感動のムードが立ち込める。うんうん、千葉の兄妹はやはりこうでなくちゃいけない。
そんな俺達のやり取りを遠巻きで見ていた戸塚がふっと笑った。
戸塚「でも、八幡にはいいところいっぱいあるよ! 僕も、たくさん言えるから」
八幡「戸塚ぁ!!」
小町「ええ!?」
すぐに戸塚の元へ駆け出してその手を取った。
ああ、そうだな……俺には戸塚しかいない……戸塚エンドこそトゥルーエンドなんだ……!!
小町「そ、そんなのってあり……!? やっぱりお兄ちゃんの青春ラブコメはまちがってるよ……!!」
366 = 1 :
× × ×
先ほどまでは少しわいわいやっていたパーティも、ダンジョン──廃墟となった城の中に入ると緊張感が漂ってきた。
葉山たちが抜けていったので、今の陣形はいつも通りのものに戻っている。
先頭に雪ノ下と平塚先生、ちょっと後ろに小町と戸塚、そしてそれの後ろに一色と由比ヶ浜という並びだ。ちなみに俺はそれよりさらに後ろでひとりです。なんだ、いつものことじゃん!
もし万が一働く羽目になったら探偵とかやろうかな、同僚とか上司とかいないから人間関係に気を遣わなくて済む上にこのステルス性能がめちゃくちゃ役に立つし。
なんて考えていると、前に影が複数表れるのが見えた。
魔物かと思い、パーティメンバー全員が身構える。
ウマ達「ウマーッ!!」
ウマAが あらわれた!▼
ウマBが あらわれた!▼
ウマCが あらわれた!▼
ウマDが あらわれた!▼
ウマEが あらわれた!▼
ウマFが あらわれた!▼
城の廊下に突然馬の魔物の大群が現れる光景はなかなかにシュールだった。前面の熊に続いてその鳴き声はなんなんだよ。ヒヒーンって鳴け。
367 = 1 :
しかし前回のダンジョンに比べると出てくる数が多い。さすがは第3ステージといったところか。
ウマ達「ウマーッ!!」
馬の魔物達は固まったまま、こちらに向かって勢いよく突進をしかけてきた。さすがにこれに真正面からぶつかるわけにもいかないので、全員素直に横に動いてこれを避ける。
そして俺たちの横を馬の魔物達が通り過ぎると、すぐに後衛陣が魔法を唱え始めた。ゲームではこういう突進系の雑魚と戦う時、突進した後の隙だらけなところに攻撃するのがセオリーだからな。
八幡「グラビティ!!」モワーン
結衣「葉っぱの刃に切られちゃえ、ユイリーフブレード!!」ヒュッヒュッ
いろは「ちょっとスパッと行きますよー、いろはスラッシュ!!」ビュッ
戸塚「鋭い風の刃! エアスラスト!!」ヒュゴー
えっ、俺以外の呪文全部初見なんだけどなんで皆新しい呪文覚えてんの? しかもなんで全部斬属性なの?
唱えられた呪文の数々が馬の魔物の大群に襲いかかり、その陣形を大きく乱した。
そこへ前衛の3人が武器を構えて突撃する。
雪乃「今、楽にしてあげる」
平塚「肘打ちぃ! 裏拳正拳! とおぉりゃあぁぁ──!!」
小町「えーいやっ!!」
3人の攻撃にウマが複数頭吹き飛ばされる。
だが馬のHPは意外と高く、それだけではまだ全てを狩り尽くすことは出来ていなかった。
368 = 1 :
ウマD「ウッマー!!」
雪乃「!!」
馬の一頭が雪ノ下に向かって突進をしかけにいく。雪ノ下はそれにすぐに気がついたが、避けるには少々距離が短過ぎる。
これはさすがに雪ノ下が一撃貰ったか。
そう思ったのだが、雪ノ下は何を思ったか避けるどころか、逆に馬に向かって思い切り飛んだのだった。
雪乃「はっ!」
すると雪ノ下はなんと馬の背に飛び乗り、そしてそのまま跨った。……そういや、あいつ乗馬が趣味とか昔どっかで言ってたなぁ。だからって走ってる馬に飛び乗ることは普通やらないと思うんだけど。
雪乃「ふっ!」
そしてその馬に跨ったまま剣で馬をめった刺しにし、馬は何も出来ないまま光の塵になって消え去った。え、えげつねぇ……。
いろは「いろはスプラーッシュ!!」ゴゴゴ
馬F「ウママーッ!」
その雪ノ下のぶっ飛んだ曲芸を見ている間に他の馬の魔物も方がついていたようで、振り返ってみれば馬の魔物のあとの光の塵が一面に漂っていた。
軽く肩を回しながら戻ってきた雪ノ下に対して、思わず感嘆半分呆れ半分のため息をついてしまった。
八幡「お前、ほんとすげぇな」
言うと、雪ノ下は悪戯っぽく笑う。
雪乃「あら、知らなかったのかしら。これでも私、結構なんでも出来るのよ」
369 = 1 :
またまた息抜きで新作書いてます、そちらも宜しくお願いします。
結衣「一日一万回、感謝のやっはろー!」八幡「は?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432456542/
こまちにっきは……息抜きにならなかったからね……。
それでは書き溜めしてから、また来ます。
370 :
息抜きにこのSSの続きをかいてもいいのよ……
371 :
息抜きで他SSとかよく書けるな~尊敬するわ
そして息抜きの幅の広さがやべえな
372 :
× × ×
平塚「む、扉か」
しばらく城の廊下を進むと、やや大きめの扉が見えた。
他の部屋の扉より豪華な作りだ。おそらくこの扉の先に、例のボタンとやらがある部屋があるのだろう。
雪乃「でも、この扉には鍵が掛かっているようね」
雪ノ下が扉を開けようとしたが、それには鍵が掛かっているようで開くことはなかった。
見れば、その扉には鍵穴がある。
八幡「RPG的に考えるなら、ここの鍵がどっかに落ちてるだろうな」
戸塚「他の部屋の宝箱とかに入ってるのかな?」
大抵こういったものは鍵が別の部屋に落ちていると相場が決まっている。
リアルで考えれば、部屋の鍵が他の部屋に落ちているなどまずありえない話だ。
しかし、ここはRPGをイメージしたような世界だ。
ならば、今までどおりRPGのお約束に乗るのが上策だろう。
373 = 1 :
いろは「じゃあ、さっそくその鍵とやらを探しに行きましょうよー」
一色はそう言うと、近くにあった別部屋の扉を開こうとタタタッと走って行ってしまった。
八幡「あ、おい。ひとりで先に行くんじゃ」
カニ「カニーッ!!」
いろは「きゃあっ!!」
言わんこっちゃない……。
このダンジョンはいつどこに魔物が潜んでいるのか分からない。
そのような状況で、単独行動をするのは愚の骨頂である。
374 = 1 :
……まさか俺が他人の単独行動を責める日が来るなんてなぁと少し自虐的になりながらも、素早く木の棒を構えて一色に迫るカニにその先を向けた。
八幡「グラビティ!」モワーン
その先から黒い重力の塊のような何かが飛び出し、それが蟹のような魔物に直撃する。
するとその蟹の動きが極端に重くなり、ハサミのようなものの動きも鈍くなった。
八幡「さっさとこっち来い」
いろは「ひゃあっ!」
その間に素早く一色の元へ駆け寄ると、蟹の魔物の側から距離を取るように一色の手を引っ張った。
そしてそこへ雪ノ下が剣を抜きながら蟹の魔物へ斬りかかり、その体を一瞬で光の塵へと変える。
雪乃「これで終わりよ」ズバッ
八幡「悪い雪ノ下、助かった」
雪乃「いえ別に……いつまで手を握ってるの」
八幡「あっ」
いろは「ひゃっ」
雪ノ下に指摘されて、素早く一色から手をどける。そういえば仕方がなかったとはいえ、いきなり女子の手を引っ張るようなことをしてしまったのだった。
八幡「あ、悪い……」
いろは「い、いえ……わたしは助けてもらったんですし、先輩が謝らなくても……」
思わず顔を横に向けてしまった。くそ、そう顔を赤くされると意識しちまうじゃねぇか!
いや、これは不可抗力。あくまで一色を助けるために必要なだけだった。おーけー?
375 = 1 :
結衣「むー……」
一色から目を逸らして他のメンバーに目を向けてみると、由比ヶ浜はマンボウのように顔を膨らませ、心なしか若干怒りをこめたような目で俺の方を睨みつけていた。
小町「ほほう……いろはさんも、もしかしてお義姉ちゃん候補だったり……我が兄ながら、隅に捨てて置けませんなぁ」
その隣では小町がぶつぶつと何かを呟いていた。こちらは何かムカつく目で俺の方を見ている。なんだその生暖かい目は。
八幡「そ、それよりほら早く部屋の中を探そう。鍵があるかもしれねぇしな!」
なんだか居心地が悪い空気が流れ始めてきたので、それをリセットするような意味を込めて、やや大きい声を出しながら部屋の中に入る。
……俺も集団の空気とか感じられるようになって来ちゃったんだなぁ。これが成長というヤツなのだろうか。
376 = 1 :
戸塚「あっ、見て八幡! 部屋の奥に宝箱があるよ!」
突然、戸塚が大声で部屋の奥を指差した。それに釣られて俺もその先を注視してみると、確かにそこには宝箱がポツンと置かれている。
おそらく、あれが扉をあける鍵の入った宝箱だろう。
いろは「ああいうのって、勝手に開けていいんですかねー?」
俺の横でぴょこっと一色がそう話しかけてくる。そういやこいつは第2ステージの道中で仲間になったから、まだ宝箱を開けるところを見たことがないのか。
八幡「いいんだよ、俺たち勇者一行は魔王を倒すためなら何をしても許される。道に落ちてる宝箱を開けようが問題ないし、なんなら他人の部屋に不法侵入してツボを割っても怒られないまである」
いろは「さすがに他人のツボ割ったら怒られませんかね……」
いやぁ、ところがどっこい許されるんだなぁこれが。
許されるどころか、もはやRPGでは勇者のテンプレ行動のひとつと言えるだろう。
一色ってRPGとかやらねぇのかな。やらなさそうだな。やりそうに見えねぇなぁ……。
雪乃「あったわ、あの部屋の鍵かしら」
いつの間にか宝箱に近づいていた雪ノ下が、その中身の鍵を見せてきた。
状況から察するに間違いない、あの部屋の鍵だろうな。
八幡「じゃあ、さっきの鍵の付いてた部屋に戻るか……」
それを確認すると、身を翻して部屋の出口に戻ろうとする。その時だった。
377 = 1 :
バタン!! と大きい音が部屋に響き渡る。
見ると、部屋の出口の扉が勝手に閉まった音であった。
八幡「誰かが閉めたのか?」
いろは「いえ、全員部屋の中にいると思うんですけど……」
一色の言うとおり、パーティメンバー7人全員が宝箱の周囲にいる。だからこの中の誰かがその扉を閉めたというのは超能力でも使わない限りあり得ない。
ということは……。
八幡「罠か!」
それに気付くのと同時に、部屋に複数体の魔物が湧き出てきた。
確かに、入り口近くに蟹の魔物が一体いるだけなのは少な過ぎると思っていたが……。
すると、近くの平塚先生がメリケンサックを手に嵌め直しながら一歩前に出た。
平塚「ふっ、いいだろう。ならばここは私に任せて──先に行けぇぇぇえええ!!」
八幡「いや……出口閉まってるんすけど……」
378 = 1 :
× × ×
出てきた魔物たちを一掃すると、再び出口の扉が開いた。
まぁ、さっきの部屋の入り口の蟹の魔物といい、鍵を回収したら出てきた魔物の群れといい、こういうトラップ的な要素があるのもRPGのダンジョンではお約束だろう。よくあることだ。
しかし、RPGとかそういうのに慣れていなさそうな一色はぶーたらと文句たらたらであった。
いろは「ああいう不意打ちってよくないと思うんですよねー! もうちょっと心の準備をさせて欲しいっていうか」
最初の入り口の蟹の魔物に襲われた一色はぷんすかと怒っている。
しかしその怒り方すらもどこかあざとい。
こいつは怒る動作ですら計算してやらなきゃ気が済まんのか……。
雪乃「別に……いつ来てもいいように心構えをしておけば問題ないわ」
一方で、同じくRPGに慣れていないだろう雪ノ下はこんな感じだ。まぁ、こいつの場合いつも何かに備えているように見えるしな……お化けは苦手そうだったけど。
そして他の面子は全員RPG経験者なので、こういった事態があった程度では騒いでいない。戸塚と平塚先生に至ってはなんかダンジョンのお約束的な話をしている。俺も混ざりたい。
379 = 1 :
いろは「えー雪ノ下先輩だから出来るんですよそういうのはー」
雪乃「大したことじゃないでしょう。いつどのようなことがあっても対処出来るように心構えを」
ゾンビが あらわれた!▼
雪乃「ひゃあっ!!」
いろは「いろはスラーッシュ!!」ヒュンヒュン
ソンビ「うぼあーっ!」ドーン
いろは「……で、心構えがなんですっけ?」
雪乃「……」キッ
いや、なんでそこで俺を睨むんですかね……。べ、別にちょっと可愛い悲鳴あげたなとか思ってないよ?
ていうか、いろはす全然ビビってないじゃん。やっぱさっきの云々って全部計算じゃないのん……?
× × ×
最初に行った部屋に戻ると、雪ノ下が鍵を取り出して鍵穴にそれを差し込んだ。
そしてその鍵を捻ると、ガチャリと鍵が開いたような音がする。
かぎが ひらいた!▼
わざわざウィンドウも開いて、テキストが更新された。なら間違いない。これでこの中に入ることが出来るだろう。
380 = 1 :
雪乃「開けるわよ」
さっきの反省なのかどうなのか、やや慎重に扉を開く。
しかし、今回は特に入り口付近に魔物はおらず、部屋の奥まで見渡しても特に敵のようなものは見えない。
中の部屋は、広場といっていい程広い作りになっていた。
そしてこの部屋の奥には何か台のようなものが設置されており、それの上にボタンのようなものが置かれていた。
八幡「あれが、葉山の言ってたボタンだろうな」
そういや、あっちの部屋とこっちの部屋のボタンを同時に押さなきゃいけないって言っていたような気がするのだが、葉山達のパーティはもうすでにボタンのある部屋に辿り着いたのだろうか?
そんなことを考えながら部屋の奥にまで進むと、後ろの方でまたバタンと大きな音がした。
振り返ってみると、開けっ放しにしていた扉がまた勝手に閉まっていた。ということは……。
八幡「またか……」
雪乃「魔物が来るわね」
まさか二部屋連続で同じ罠を使ってくるとはな。
それともなんだ、さっきのは今回のための演習みたいな感じだったの?
ぽっぽっと、部屋のあちこちに魔物がポップする。今回は部屋が広いだけあって、さっきより若干多めのように見える。
八幡「じゃあ、さっさと片付けるか……」
結衣「ま、待って! 魔物がどんどん出てくるよ?」
八幡「は?」
よく見てみると、魔物のポップする音が止まらずにポッポッと鳴り続いていた。
ウィンドウのテキストが次々と更新されていき、スクロールが追いついていない。
381 = 1 :
スライムが あらわれた!▼
ソンビが あらわれた!▼
クマが あらわれた!▼
ヘビが あらわれた!▼
ゴーレムが あらわれた!▼
コウモリが あらわれた!▼
カニが あらわれた!▼
ドクロが あらわれた!▼
スライムナイトが あらわれた!▼
デビルが あらわれた!▼
サソリが あらわれた!▼
アーチャーが あらわれた!▼
トカゲが あらわれた!▼
ウサギが あらわれた!▼
おっさんが あらわれた!▼
カマキリが あらわれた!▼
ジャイアントが あらわれた!▼
マシーンが あらわれた!▼
…………………………………………
……………………
…………
……
382 = 1 :
平塚「おい……これは何体いるんだ!?」
戸塚「す、すごい数だね……」
結衣「これ、倒せるの!?」
いろは「や、やばいですやばいですまじやばいです!」
小町「ぜ、全部倒さなきゃ駄目なの……?」
雪乃「……!!」
八幡「これって、まさか……!!」
モンスターハウス。
部屋に閉じ込められ、大量のモンスターに囲まれる罠。
今、俺たちは文字通りモンスターのハウスに閉じ込められてしまったのであった。
383 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます。
384 :
おっさんがモンスターなわけ無いだろ!勘弁してくれよ!
乙
385 :
よっしゃパープルヘイズのディスク使った後、聖域の巻物でタコ殴りや!
386 :
放電で一撃やろ(ポケダン並感)
387 :
このアーチャーは弓を使うアーチャーなのだろうか
388 :
二匹ほど仲間になりたそうに起き上がりそうなのがいるな
389 :
おっさんは同人要素かな?
390 :
>>387
アーチャーが弓を使うわけないやろ!いい加減にしろよ!
今更ながら思ったんだけど由比ヶ浜は僧侶なのに攻撃魔法覚えすぎじゃない?
あれだけの攻撃魔法覚えるなら『僧侶』っていうより『白魔導士』の方がしっくり来る
391 :
× × ×
雪乃「はぁ!!」ズバッ
小町「てやーっ!!」ヒュッ
平塚「チェストォォォオオオ!!」バキッ
戸塚「やぁ!!」シュッ
結衣「ユイファイアー!!」ゴゴゴゴ
いろは「いろはスプラッシュ!!」ドバー
八幡「グラビティ!!」モワーン
四方八方から襲い掛かる魔物の集団を相手に、俺たち勇者パーティは一言で言えば苦戦していた。
いつものパターンは前衛が魔物を押さえつけて、後衛が安全地帯から呪文を叩き込むというものだ。
しかし、こうも魔物に囲まれるとその定石パターンは使えない。
前衛が押さえ込める魔物には限りがあるし、先ほどからもうすでに何体もの魔物が後衛の方にまで侵入してきている。
この部屋に、もう安全地帯と呼べるようなところはなかった。
392 = 1 :
カニ「カニーッ!!」
いろは「先輩ガードッ!!」
八幡「ぐわぐぶぐわばらっ!?」
そして俺は、後衛に近づいてくる魔物を鈍化魔法で遅くしつつ、たまにこうやって肉の壁となって後衛陣の呪文を稼ぐ時間を稼いでいる。
いや、壁になりたくてなっているのではない。今のは一色が俺のブレザーを引っ張って無理矢理蟹の魔物に向かって突き飛ばしたのだ。絶対に許さない、絶対にだ!
いろは「よーし、いけますよー! いろはスラッシュ!」ヒュッ
カニ「カニッ!!」スパー
いろはは いろはスラッシュをとなえた!▼
かぜのやいばが あいてをきりさく!▼
俺が蟹の魔物を押さえつけている間に、一色がカマイタチのような刃の呪文を唱えて蟹の魔物を真っ二つにする。味方の呪文は俺には当たらないとは言え、自分の体を刃が素通りしていくのは普通に怖い。
結衣「ハートレスサークル!!」
ユイは ハートレスサクールをとなえた!▼
まわりのみんなの たいりょくをかいふくする!▼
由比ヶ浜が呪文を唱えると、俺たちの周りの床に光の魔方陣が描かれた。すると、その魔方陣の上に立っていた俺たちのHPが回復する。
今までノーダメージを保ってきていた後衛の由比ヶ浜や一色も致命的というほどではないにせよ、ダメージを受けてしまっているのだ。
結衣「ヒッキー、大丈夫!?」
八幡「俺は大丈夫だが、後ろにいる奴の頭が大丈夫じゃねぇ」
いろは「ひどくないですか先輩!」
いや、どう考えても酷いのはお前でしょ。
まぁこの状況でいつまでも一色を責めていても仕方があるまい。実際俺が盾になった方がいい場面だったのは事実だし。
393 = 1 :
前を向くと、前衛陣が必死に魔物の数を減らすべく奮戦していた。
雪乃「これで終わりよ」スパスパスパ
クマ「クマァァァ!!」
ユキノは ソードダンスをつかった!▼
雪ノ下が、舞うような剣技で熊の魔物の腕を、足を、顔を斬り裂く。相変わらずいつ見ても、惚れ惚れするような動きだ。
小町「千の磔-ラッシュ・ロック-!!」ゴゴゴゴゴ
ゴーレム「ウゴゴ!!」
コマチは ラッシュ・ロックをつかった!▼
がんせきが あいてにおそいかかる!▼
だーから、小町は中の人的には合ってるけどキャラに合ってない技を無理矢理使うな!!
平塚「──教えてやる。これが、モノを[ピーーー]っていうことだ」ボコッ
デビル「ビビルッ!!」
先生まで対抗して中の人ネタを使わなくても──使ってない!! 自分の中の人がヒロインやってる格ゲーの主人公の名言ではあるけど自分の中の人ネタじゃない! 先生スト2だけじゃなくて、まさかメルブ○までプレイしてたんすか格ゲー好き過ぎでしょ。
しかもよく見るとただの通常攻撃だ!! さすがにメリケンサックで死の線は見切れなかったらしい。
戸塚「アバンストラッシュ!!」ズバァ
ドクロ「ドクッ!?」
サイカは アバンストラッシュをつかった!▼
けんにためたとうきを しんくうはのようにとばす!▼
あーやったやった、傘でやった。下校中にひとりで傘振り回してたら、近くにいた女子の集団に『なにあれー』『あれヒキカエルくんじゃなーい?』『プークスクス』って笑われた辛い記憶が思い返される。
しかし戸塚って意外とこういうの好きなんだよな。やっぱり男の子か。
394 = 1 :
雪乃「キリがないわね……」
小町「ま、まだいるんですか……」
しかし、パーティメンバーの奮戦に反して魔物の数はまだまだ多い。
というか、現在進行形で新しく魔物が出没しているのだ。
いつの間にか由比ヶ浜が全体回復呪文を覚えてくれていたおかげで、今のところこれだけの数の魔物を相手に強いても戦線が崩壊する事態は起きてはいない。
しかし、いつかはMPが切れてアイテムに頼らざるを得ないタイミングがやってくる。
その時になってもこのまま戦線を保ち続けられるだろうか……?
八幡「……あ」
ふと、サブレのことを思い出した。
この世界に来てから鈍化魔法ひとつで戦い続けていたのですっかり忘れていたが、そういえば今の俺はなかまをよぶという新しい技を習得していたではないか。
今こそ、あの15メートルはあるサブレの力を借りる時ではないだろうか?
八幡「よし、頼むぞサブレ!!」
ストレージからモンスターボ○ルのようなものを取り出すと、それを素早く投げた。
瞬間、そのボールが開いて中から光が溢れ出てくる。
ハチマンは なかまをよんだ!▼
395 = 1 :
サブレ「わんわん!!」
八幡「……あれっ?」
しかしそこに出てきたミニチュアダックスフントのような犬は、かつて見た15メートルほどある巨体ではなく、3メートルほど──それでも犬にしては十分でかいが──にまで縮んでいた。
あれか、よくある敵だと強いけど仲間にした瞬間に弱くなるっていう奴か。いや、サブレが敵だった時はないけど。
まぁいい。とにかく今は犬でもなんでも欲しい状況だ。
多少縮んでも戦力になってくれるのなら問題ない。
八幡「いけっ、サブレ!! 10万ボルト!!」
サブレ「わんっ!!」
10万ボルトは撃ってくれなかった。かなしい。
396 = 1 :
しかし3メートルほどの体になったサブレは素早く近くの魔物に迫ると、その首を一瞬で食い千切った。
サブレ「わうん!!」
おっさん「ぐあああああああああああ!!!!」
うわ、ゲーム補正なかったらグロかったろうなあれ。
アーチャー「ふっ!」
近くにいた弓を構えた人形のようなものがサブレに向かって弓を放ったのが見えた。すぐに声を張り上げて、サブレに指示を出す。
八幡「避けろサブレ!!」
サブレ「わん!!」
サブレは素早くそこから飛んで弓を避けると、そのままダッシュで弓の人形に向かって突進していった。
サブレ「ガルッ!!」
アーチャー「あぐっ!」
そしてそのまま勢いを乗せた爪で一閃、人形を真っ二つに引き裂いた。
結衣「す、すごい、すごいよサブレ!!」
15メートルの巨体は何故か失っていたものの、サブレは十分以上に強かった。
動きは素早く、牙は魔物を喰い破り、爪は魔物を切り裂く。
その無双っぷりによって、魔物の勢いが大きく挫かれた。ここはサブレの勢いに生じて、攻勢に出るときであろう。
397 = 1 :
八幡「よしっ、サブレに続くぞ。グラビティ!!」シーン
……あ、あれ?
魔法が出ない?
MPを確認してもまだ残量は残っていたので、不思議に思っているとひとつの可能性に辿り着いた。
おそらく、サブレを呼んでいる間は俺が魔法を唱えることは出来ないのであろう。
まぁ、これもRPGではよくあることだ。なら、ここはサブレに任せつつ俺はアイテムの使用に専念するとしよう。アイテムも使えなかった。じゃあもう逃げ回ってるわちくしょう!!
小町「い、いやああああ!!」
突如、小町の悲鳴が響き渡った。すぐにそちらの方へ振り返ると、小町が複数の魔物に囲まれているではないか。
おっさんB「ぐへへ、いいことしようや」
おっさんC「ははは、いいではないか、いいではないか」
おっさんD「上の口では嫌がっていても下の口はどうだろうなぁ!!」
小町「お兄ちゃ──ん!!」
八幡「小町!!」
すぐに小町の下へ駆けつけようとするが、ここからでは少々距離がある。これでは間に合うか分からない──が、あいつの速さなら!
八幡「サブレ、小町を助けてくれ!」
サブレ「わうーん!!」
すると、サブレは素早く地面を蹴り、数秒もしないうちに小町の下へ駆けつけた。
サブレ「わんっ!!」
そしてそのまま牙で一体目、爪で二体目、尻尾で三体目を片付けた。あいつ、手際良過ぎだな……。
小町「わぁ~、サブレありがとっ!!」
398 = 1 :
サブレ「わうーん」
サブレは小町に軽く挨拶のように喉を鳴らすと、そのまま光の塵になって消えてしまった。
小町「サブレ!?」
そしてその光の塵は球状になり、そのまま俺の手元に返ってきた。
八幡「時間、か……」
どうやら呼び出しても、無期限にずっと戦わせられるわけではないらしい。正しく計っていたわけではないが、体感で5分程だろうか? 一定時間が経つと、サブレはまたモンスタ○ボールに戻ってきてしまうらしい。
ならもう一度呼び出せばいいと思ってモンスター○ールを投げつけようとすると、ウィンドウが出てきてテキストが更新された。
なかまは よびだせない!▼
のこりじかん 2:59:50▼
八幡「マジかよ……」
はじめてのなかまをよぶを使った経験で分かったことが複数ある。
まず、サブレはめちゃくちゃ強いこと。
サブレを呼び出している間は、俺は魔法及びアイテムを使えないこと。
サブレが戦える時間は大体5分程度であること。
そして一度呼び出すと、次に呼べるようになるまでに3時間は掛かるということだ。
5分戦わせるのに3時間待たなきゃならないとか、燃費悪過ぎでしょ……。
399 = 1 :
クマ「クマーッ!!」
カニ「カニーッ!!」
サル「ウキーッ!!」
八幡「げっ」
だが、サブレが消えようとも魔物の出現は止まらない。
サブレの活躍によって一時はこちらの有利になったと思われた戦況が、時間を経るごとにだんだんと押されてしまっているのが分かる。
クマ「くまもんっ!」
雪乃「うっ!」
結衣「ゆきのん!」
雑魚相手にはまだダメージを負ったことがなかったあの雪ノ下ですら、襲い掛かる数の暴力の前に押されつつある。
このままでは非常にマズイ……何か、何かないか……。
400 = 1 :
ゴーストA「ケケケ」
ゴーストB「ケケケ」
ゴーストC「ケケケ」
八幡「な!?」
そしてまだ出没する新しい魔物の中に、今まで見たことのない魔物が現れた。
白い球体のようなものに目がついているあれは……ゴーストと呼ぶらしい。テ○サみたいだ。
ゴーストAは ゆうれいびをとなえた!▼
ゴーストBは ゆうれいびをとなえた!▼
ゴーストCは ゆうれいびをとなえた!▼
すると、なんとそのゴーストたちは呪文を唱えて炎の固まりを複数こちらに向けて放ってきた。
今まで呪文というのは勇者パーティが使うばかりで、ボス戦を除けば相手に使われたことはない。
思えば、勝手に魔物は呪文を使ってこないと思い込んでいたのだろう。
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