元スレ八幡「俺ガイルRPG?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
1 :
俺ガイルのSSです。
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1430984337
2 = 1 :
第0章 プロローグ
八幡「……あれ?」
眠っていた俺は目を覚ますと、強烈な違和感に襲われた。
ここは……どこだ?
昨夜、俺は自分の部屋のベッドで寝たはずである。
だが、今俺がいるここは間違いなく俺の部屋ではない。
八幡「……」キョロキョロ
……情報を整理してみよう。
今俺は、6畳ほどの部屋のベッドで起きたところだ。
この部屋にはベッド以外には小さな木の机と椅子があるだけだ。物が少なく、随分と寂しい部屋である。
この部屋に時計は見当たらない……携帯もない。時間は分からないが、窓から太陽の光が漏れている。おそらく朝なのだろう。
この部屋は間違いなくここは俺の部屋ではない。見覚えもない。俺が寝ている間に移動させられた?
しかし誰が? 一体何故……?
3 = 1 :
八幡「よっこらせっと」
何故この部屋で寝ていたのかは分からないが、このベッドで寝続けていても何も分からないだろう。そう考えた俺はベッドから起き上がり、この部屋から出ることにした。
何時間ほど寝たかは分からないが、寝覚めが良かったのか体は非常に軽かった。
八幡「ん?」
起きてから気が付いたが、見に纏っている服も昨日寝たときに来ていたジャージではなかった。俺が着ていたのは簡素な『ぬののふく』であった。
もしかして寝ている間に服まで着替えさせられた……? なにそれ気持ち悪い。
部屋のドアは特にカギなどもかけられておらず、普通に空いた。
部屋から出るとそこは木造りの廊下だった。ここはアパートか何かなのだろうか
辺りを見渡してみるが、ここがどこなのかを知る情報はない。
自分の出てきた部屋を除いて他に3つの扉がある。ここがアパートなら、同じような部屋への扉だろう。
そして奥には下へ繋がる階段が見えた。よし、とりあえずこのアパートから外に出て情報を集めにゃならん。
そう考えると俺は階段に向かって歩を進めようとした。
ガチャ
八幡「!」
しかし、その時隣の部屋の扉が空けられた。
誰だ……? 俺のことをここに閉じ込めた犯人か?
しかしその扉から出てきたのは全く予想外の、そして知った顔の人物であった。
4 = 1 :
八幡「……雪ノ下?」
雪乃「ひ、比企谷君!?」
八幡「……なんでお前がここにいんだよ」
雪乃「それはこちらのセリフだわ……あなたこそ、どうしてここにいるのかしら」
八幡「分からん。起きたら何故かここにいた」
雪乃「あら……私もそうなの。昨日は自分の部屋で寝ていたはずなのだけれど」
八幡「何?」
どうやら雪ノ下も起きたらこの部屋にいたらしい。反応から見てもおそらく本当だろう。
しかしそれなら余計に状況が分からない……俺だけならともかく、どうして雪ノ下までここに運んできたんだ?
今、雪ノ下は自分の部屋で寝ていたと言っていた。あのマンションに侵入して雪ノ下を拉致した? そんなことが出来るのか?
八幡「なぁ、お前昨日部屋の鍵をかけ忘れたりとかした?」
雪ノ下「いえ、私は確かに鍵をかけたわ……それに、私のマンションのセキュリティはそれなりに強固なものだったはず」
八幡「だよなぁ……」
前に雪ノ下のマンションに行った時のことを思い出した。あんな立派そうなマンションだ、さぞセキュリティも万全なのだろう。
5 = 1 :
じゃあどうやってここに連れてきた? いや、何故こんなリスキーなことを?
考えていても、方法も動機も分からなかった。
ガチャ
八幡「!」
雪乃「!」
俺と雪ノ下の間に沈黙が訪れた瞬間、雪ノ下の出てきた部屋よりひとつ向こうの部屋の扉が開けられた。
今度こそ犯人か、もしくは何か事情を知っている奴が出てくるのかと身構えていたが、その部屋から出てきたのはまたまた知っている顔であった。
結衣「わっ、ゆきのん!? それにヒッキーまで!?」
八幡「由比ヶ浜……!?」
雪乃「由比ヶ浜さん!?」
結衣「わーん! 聞いてよゆきのーん! 起きたらなんかここにいてー!」
雪ノ下「由比ヶ浜さんも……?」
結衣「えっ、ゆきのんも? もしかしてヒッキーも?」
八幡「ああ」
おそらく由比ヶ浜も、間違いなく俺達と同じように自分の部屋で寝ていたはずなのに起きたらここにいたというパターンだろう。
ますますどうやってやったのか分からなくなってしまった……。
6 = 1 :
雪ノ下「……ここで考えても、答えは出なさそうね」
八幡「そうだな」
結衣「じゃあ、どうするの?」
八幡「とりあえず……外に出てみるか」
雪ノ下「そうね。何か分かることがあるかもしれないわ」
雪ノ下がそういって階段を降りていった。俺と由比ヶ浜もそれに続いて階段を下り、外に出た。
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アパートなのかなんなのかよく分からない建物から外に出るのは簡単だった。部屋と同じく建物の入り口にも鍵はかけられていなかったのだ。
監禁目的だとは思えない。もしそうだとしたらあまりに詰めが甘過ぎる。
あれこれ考えていると、外にいる女性の姿が目に止まった。
八幡「先生……!?」
平塚「おお比企谷! それに雪ノ下と由比ヶ浜まで……君達もここに来ていたのだな」
なんと外にいたのは我らが奉仕部の顧問、平塚先生であった。
雪ノ下「先生……? もしかして、先生が私たちをここへ……?」
平塚「まさか。私は気が付いたらここの部屋で起きてな、近くを散策していたのだよ」
八幡「先生もっすか……」
一瞬先生なら無理矢理集めるのもやりかねない……と思ったがさすがに無理があるか。
7 = 1 :
平塚「君達は今起きたところかね?」
八幡「ええ……今どういう状況なのかもよく分からないんですけど……」
結衣「起きたらいきなりこんなところにいてびっくりだよねー」
雪ノ下「由比ヶ浜さんはもうちょっと緊張感を持つべきではないかしら……」
確かに。詳しくは分からんが、俺達は夜の間にまとめて拉致られているという状況じゃないだろうか。
俺も雪ノ下達と出会って少々緊張感を失っていたが、これは本来結構ヤバイ状況なんじゃないか?
そう思っていたが、平塚先生がそれに割り込んで否定した。
平塚「ああ、それに関してだがあまり心配はしなくて良いと思うぞ」
八幡「えっ、どうして」
平塚「先ほどこの辺りを歩き回って気が付いたのだが……どうやらここは現実世界ではないようだ」
3人「「「は?」」」
現実世界ではない? 先生の言ったその言葉に俺達は疑問符を浮かべた。
雪ノ下「あの……先生? 現実世界ではない、というのはどういう意味でしょうか?」
平塚「うむ……私もまだ長くいるわけではないからな……上手く説明は出来んが、町や人に違和感があるんだ」
結衣「違和感……?」
八幡「なんか違うなーって感じのことだ」
結衣「そっちじゃないよ! それくらいは知ってるよ!」
平塚「なんというかな……ゲームの中に入り込んだ、というのが分かりやすいかもしれん」
8 = 1 :
八幡「ゲームの中?」
これはあれですか、実はソードアー○オンラインみたいなあれが現実で出来ていて、俺達はそれを使ってここに来たとかですか。
だが言われてみれば、確かに自分の体にも少し違和感を覚える。体もやたら軽いし、なんか少し肌の感覚とかが少し違うような気がする。
だが本当にあのような機械が現実で運用されているわけがない。そもそも俺、昨夜は普通にベッドに入って寝たはずだし。
寝たはず……ん?
八幡「なるほどね」
雪ノ下「比企谷君、何か分かったのかしら?」
八幡「ああ……俺は昨日、普通に自分のベッドに入って寝た。そして起きたらここにいたんだ」
結衣「それがどうかしたの?」
八幡「お前らもそうだったんだろ? そして先生のゲームの中のような感覚……謎は全て解けた!!」
某探偵のように俺は高らかに宣言した。
平塚「おお、比企谷はこの状況をどう考えたのかね?」
八幡「ここは夢の中です」
平塚「……は?」
八幡「だってそうでしょう? 俺達は全員昨夜寝たという記憶があるんです。そして4人ものの人間を拉致してこんなところに動かすなんて普通に無理です」
雪ノ下「そうね……確かに現実的ではないわ」
八幡「だったら簡単だ、俺達は今夢を見ている状態なんだ」
それなら全てに説明がつく。
なるほど……ここは俺の見ている夢だったのか……八幡納得しちゃったよ。
ただひとつ普通の夢とは違うのは、自分が夢の中にいるって自覚している点である。
9 = 1 :
八幡「なんて言ったか、夢の中で自分が夢の中にいるって自覚するの」
雪乃「明晰夢ね」
結衣「めいせきむ? なにそれ?」
雪乃「夢の中で、自分が夢の中にいるって自覚することよ。確かにそれならこれらの不可解な点に説明はつくわね……はぁ」
八幡「なんだよ、いきなりため息なんかつきやがって」
雪乃「これが夢だとしたら、私の夢にあなたが出ているということになるもの……誠に遺憾だわ」
八幡「お前夢の中でもブレねぇな」
この雪ノ下だって俺の夢の中の登場人物でしかないはずである。だったら夢の中でくらい優しくなってくれても良くない? なんで夢の中でも罵倒されなくちゃならんのだ。
平塚「まぁここが夢の中だというのなら、起きるまで楽しもうではないか諸君。そうだ、あちらに町があったぞ。まるで中世ファンタジーのような町並みだった」
八幡「中世ファンタジー?」
それってなんか昔のヨーロッパみたいな? なるほど、もしそうならばゲームの中に入り込んだみたいだと言うのも分かる。
平塚「それに人もなんだがゲームの人物みたいでな……話しかけても同じ言葉しか喋らんのだ」
八幡「CPUじゃないですか」
もしそれが本当ならば、この世界は夢かゲームの中で確定だろう。さすがに現実で同じ言葉しか喋らない奴はいない。いや、例えば戸部とかいつもうぇーいって同じ言葉しか喋ってないような気がするな。もしかしてリア充の奴らは実質CPUみたいなものなのかもしれない。どいつもこいつも似たようなルーチンしてるし。
平塚「ああ……聞いて驚け比企谷。入り口にはあの伝説の存在『ここは○○の国だ』しか喋らない奴もいた」
八幡「マジですか!?」
由比ヶ浜「ねーねーゆきのん、私あの2人が何喋ってるのか分かんないよ」
雪ノ下「安心しなさい由比ヶ浜さん、私も分からないわ」
まぁ……とりあえずその中世ファンタジーみてーな町とやらに行ってみるか。
10 = 1 :
─────────────────────────────────────────────────
町人「ここは、1の国だよ!」
八幡「あのーお尋ねしたいのですけども」
町人「ここは、1の国だよ!」
八幡「……」
すげぇ、本物だ。
見た目は完全に普通の人間なのに、その人は壊れたスピーカーのように同じ言葉を繰り返していた。
……実際に目の当たりにすると、結構怖いな。
結衣「おー! あれすごいよー! ゆきのん見てー!」
雪乃「ええ……本当に中世のヨーロッパのような……今だとスペインに近いかしら」
そして今俺達は中世ヨーロッパのような町の中を4人で歩いていた
人通りは多いのだが、何故か人とぶつかりそうになることはない。これは夢補正なのか、俺の回避能力の高さ故なのか……。
結衣「ねーねー、あそこにすっごい大きいお城があるよ!」
平塚「うむ、私もあの城は気になっていた。ところで比企谷、中世ファンタジー物で城と言えば何を連想する?」
八幡「え? いやまぁ王様でもいるんじゃないんですか?」
平塚「そうだな、王様だ。そしてファンタジーものの王様のいる城といえば最初にイベントが起こる場所だと相場が決まっている!!」
八幡「いや知りませんよ」
平塚「ふははははは! 行くぞ皆! あの城からは何か冒険の匂いがする!!」
八幡「ちょっ、先生!?」
この人漫画とか大好きだからな……このファンタジーっぽい世界に来れてちょっと興奮しているのだろうか。
俺の夢なのに俺よりノリノリってどういうことよ……いや実は俺もこのゲームっぽい雰囲気には少しわくわくというか、ちょっと楽しみなところもあるんですけどね?
平塚「ふはははははー! 待ってろ王様! 勇者が今そこへ行くぞー!」
こんなにノリノリなアラサーを見ていたらなんかちょっと冷めてしまったのである。まぁどうせ夢の中だ。楽しそうならそれに越した事はないだろう。
……ていうか俺の夢なんだから、勇者は俺でしょ。あれ、これもしかして俺って今、異世界転生チーレム無双の主人公みたいなポジションじゃね?
久しく忘れていた厨二の血が疼いてきたぜ……!!
11 = 1 :
城内部
王様のいる城というのなら少しは入るのに手間がかかると思ったが、そのまま素通り出来てしまった。やっぱり勇者のパーティは顔パスなんだろうか。
結衣「わー! 中もすごいねー!」
そして由比ヶ浜はさっきからすごいねーしか言っていない気がする。どうしてリア充というものはやたら共感を求めるのだろう。ネットでもいいね! などとやたら共感を求めるものばかりのような気がする。自分の感覚でさえも、他人に肯定して貰えないと信用出来ないのだろうか。俺は俺の感じたものを信用していきたい。いや、そもそもぼっちだから感覚を共有する友達がいませんけどね。
平塚「む、ここが王のいる玉座の間だな。たのもう!」
八幡「道場破りじゃないんですから」
まさかここで王様に無礼者! とか言われて強制敗北イベントとかならないよね?
そんなことを考えていたが、中にいた初労くらいのおじさんは柔らかい笑みで迎えてくれた。王冠をかぶっていることから考えても、間違いなく王様というやつだろう。
王様「おお、よくぞ来た勇者達よ!」
平塚「おお……まさに王道のRPGの始まりのようだな!」
八幡「マジでゲームの最初みたいな感じですね……」
世界観や、パーティが4人だということも含めて、なんともドラ○エみたいだ。
12 = 1 :
王様「うむ、実は勇者殿達にここに呼んだのには訳がある」
呼ばれてねーよ、こっちから来たんだよ……と怨みを込めた目線を王様に向けるが全く気が付いていないようだ。おのれCPUめ。
王様「実はここ最近魔物の活動が活発になってきてな……調査によると、どうやら昔倒されたはずの魔王が復活したというらしい」
八幡「魔王……ですか」
これあれだ、最近流行りの勇者魔物のやつだ。なんて王道な始まり方なんだろう。
ていうかこの世界、魔物とかいるのかよ。
王様「うむ。魔王が復活したことによって、魔物にも影響が及んだというのが各国の調査班の結論だ。そこで勇者達よ、勇者殿達には魔王の討伐を願いたい」
平塚「よし、任された!!」
八幡「ちょっ、先生!?」
平塚「おいおい何に臆しているんだ比企谷。勇者といえば魔王と戦うものだろう。断る理由など何もないと思うが?」
いや普通にめんどうくさいって理由があるでしょ……例え夢の中だろうとも、俺は働きたくない。
13 = 1 :
雪乃「はぁ……話はよく分からないけれど、その魔王というのを放置するわけにもいかないでしょう比企谷君。私達が出来るというのであれば、私たちがやるしかないわ」
結衣「よ、よくわかんないけど頑張るよ!」
雪ノ下さん実は結構ノリノリだったりしない?
八幡「いや無理だろ。今俺達の装備はこの『ぬののふく』だけだぞ。魔王どころか、その活発になったっていう魔物とやらも倒せないだろ」
王様「心配するな、ここに武器を揃えてある。これを勇者殿達に授けよう」
八幡「……ほう?」
魔王退治はめんどくさい、めんどくさいが……武器というものには少し興味を惹かれる。いやその、俺も男の子なんでね?
平塚「ほほう……武器か……ふははははは、私に似合うのはどんな武器だと思う?」
そして俺より男の子らしい感性を持っていらっしゃるアラサー教師が約1名。
王様「よし、まずは勇者殿から武器を授けよう。参れ」
平塚「ふっ……それでは先に行かせて貰うぞ」
八幡「待ってください」ガシッ
平塚「な、なんだ比企谷!」
八幡「先生が勇者なわけがないでしょう」
どう考えてもこの面子ならば俺が勇者のはずである。ソースは異世界転生チーレム無双物のラノベ。基本的に、パーティ内で1人しかいない男こそが勇者である
王様「ううむ、お主は勇者殿ではないだろう……」
平塚「そ、そんな……」orz
そう言って先生は両手と両膝を地面につけて意気消沈してしまった。すいませんね先生、勇者の座はこの俺が頂きますよ。
王様「ううむ、お主も勇者殿ではないだろう……」
八幡「なん……だと……!?」
14 = 1 :
あれー、この流れってどう考えても俺が勇者ポジじゃないの?
ていうか、俺でも先生でもないならば、一体誰が勇者だというのか。
王様「勇者はそこの後ろにいる貴女だろう。参れ、勇者ユキノよ」
雪ノ下「……私、ですか?」
由比ヶ浜「わー! ゆきのん勇者なのー!?」
雪ノ下が勇者かよ!
……いや、良く考えてみれば俺なんかよりよっぽど勇者というポジションには似合っているのかもしれない。困っている人に救いを差し伸べるとか言ってたし。
王様「勇者ユキノよ、お主にはこの剣と防具を授けよう」
雪乃「ありがたく頂戴致します」
ユキノは ゆうしゃのよろいを てにいれた▼
ユキノは ゆうしゃのつるぎを てにいれた▼
雪乃「……あら」
雪ノ下がその防具を受け取った瞬間、雪ノ下の体が光に包まれた。そしてその光が消えると、雪ノ下は鎧に包まれた姿になっていた。
見た目は凛とした女騎士といったところか……無駄に似合うな、あいつ。
15 :
雪乃「くっころ」
16 = 1 :
由比ヶ浜「わー、ゆきのんかっこいいー!!」
雪乃「意外と軽いのねこの鎧。そして動きやすいわ」
平塚「ほう……似合うじゃないか、雪ノ下」
雪乃「ありがとうございます」
平塚「ほら、比企谷は雪ノ下の姿についてどう思う?」
八幡「なんでそこで俺に振るんですか……」
雪乃「あら……別にあなたのようなファッションセンスが皆無そうな男の意見なんてどうでもいいのだけれど……一応聞いておくわ」
八幡「どうでもいいなら聞くなよ……まぁ、似合ってんじゃねーの」
くっ殺せとかあの辺りのテンプレのセリフが凄く似合いそうだ。
雪乃「褒められているはずなのに、文字通りに受け取れないのは何故かしらね……」
八幡「さ、さぁ……なんでだろうな……そ、それよりほら、俺達も武器と装備とやらを貰いにいこうぜ」
結衣「そうだねー、私のはどんなのなんだろう」
俺のはどんなもんになるのかね……槍とか? 昔忘れた厨二の血が再び疼く。
王様「僧侶ユイよ、お主にはこの杖と防具を授けよう」
結衣「そ、そーりょ?」
由比ヶ浜は僧侶か……なんか納得。でもあいつ回復呪文とか使えるのか? 間違って魔物を回復とかしたりしないだろうな……
ユイは そうりょのローブを てにいれた▼
ユイは そうりょのつえを てにいれた▼
結衣「わっ」
由比ヶ浜がそれを受け取ると、雪ノ下と同じように光に包まれた。そして光が消えると、体ほどの大きさの杖を持ち、白いローブを纏った由比ヶ浜が出てきた。
17 = 1 :
結衣「うわ可愛いー! なにこれ? ワンピース?」
雪ノ下「これはローブというものよ。確かに現代の日本ではあまり着るようなものではないわね」
八幡「確かに。ゲームの僧侶とか魔法使いの防具としてはメジャーなんだがな」
結衣「そうなの?」
八幡「お前ハリ○ポッターとか観た事無い? お前が今着ているのは、あれの白バージョンみたいなもんだ」
結衣「あーあの魔法使いみたいな?」
白だからちょっと分かりづらいけど。
平塚「ふふふ……次は私の番だな!」
八幡「あっ、先生」
さっきまで思い切り落ち込んでいたが、どうやら復活したようであった。
平塚「さぁ王よ、私にも力をくれ!!」
王様「うむ。格闘家シズカよ、お主にはこのメリケンサックと防具を授けよう」
平塚「えっ?」
八幡「ぷっ」
格闘家とは、まさに先生にピッタリな職業じゃないですか……普段拳で俺のこと殴りまくってるし。決してメリケンサックの年代が先生にぴったしだとか、そんなことは考えてはいない。
シズカは かくとうかのメリケンサックを てにいれた▼
シズカは かくとうかのぼうぐを てにいれた▼
平塚「む」
先生もまた、雪ノ下や由比ヶ浜と同じように光に包まれ、防具を装着した状態になった。
ぴっちりとしたタイツのようなものの上に白衣を着ていた。この世界で、しかも格闘家なのに白衣のまんまなんですか先生……。
18 = 1 :
平塚「ま、まさか武器がメリケンサックとは……しかし自分の拳で戦えるというのも悪くはないな、うん」
結衣「平塚先生、めりけんさっくってなんですか?」
平塚「うっ、そうか……君達の年代になるともう伝わらないものなのか……はは……」
八幡「そりゃ今時のJKにメリケンサックとか伝わらないでしょ……さて、最後は俺の番だな」
さて、俺の職業は一体何になるのだろう。槍使いだとか魔法剣士だとか決闘者だとかが頭をよぎる。
しかし現実的に考えて一番なりたいのは専業主夫だ。じゃなきゃ遊び人。
王様「黒魔術師ハチマンよ、お主にはこの木の棒と防具を授けよう」
八幡「……は?」
ハチマンは くろまじゅつしのきのぼうを てにいれた▼
ハチマンは くろまじゅしのぼうぐを てにいれた▼
八幡「うおっ」
王様から防具一式を受け取ると、体が光に包まれた。その光が晴れると俺は総武高校の制服姿になっていた。
八幡「っておい! これ普段の制服じゃねえか!」
どこの世界に制服で旅をする黒魔術師がいるというのか。あっ、ここにいましたね。てへぺろ。
さすがは俺の夢だ……他にろくな服装を脳が思いつかなかったのだろう。
19 = 1 :
由比ヶ浜「わー……いつも通りだね」
八幡「変なマント着せられるより、ある意味マシなのかもしれねぇけどな……」
だからって制服はどうなんだ制服は。
しかし、俺の職業は黒魔術師か……剣を振り回すことにも憧れはあるが、これはこれで厨二病が夢見る筆頭のものだ。くっ、静まれ俺の右腕!
遠い過去に思い描いた永久欠神『名も無き神』を思い出──やめよう、ここで黒歴史を思い出しても無駄に心にダメージを負うだけだ。
だが武器が30センチほどの木の棒というのも味気ない。おそらくこれを振って魔法でも唱えるのだろうが、もうちょっとマシなものはなかったのだろうか。自分の背丈ほどの大きさがあって、俺よりよっぽど良い出来をしている杖を貰った由比ヶ浜が羨ましい。べ、別にこっちの方が軽くて持ち歩きやすいから良いもんね!
雪乃「黒魔術師ね……あなたにはお似合いじゃないかしら」
八幡「なんだそれは、俺には陰湿でジメジメしてそうなのがお似合いだってか? 暗い地下でネズミとカラスをぐつぐつと混ぜたスープでも作ってそうとかお前なんで小学校の時の高野君が言ってたことを知ってるんだ」
由比ヶ浜「そこまで言ってないよヒッキー……」
他にも陰で呪ってきそうとかデス○ート書いてそうとかハロウィンになるとあいつ本性を表すんだぜとか言われたのを今でも忘れてないからな、絶対に許さねぇぞ二階堂さんに長谷君に山ノ内!
20 = 1 :
王様「うむ、これで全部だな」
八幡「あの、俺これ変えて欲しいんですけど」
王様「まずは勇者殿、この国の外れにある洞窟にいる狼の魔物を退治していただきたい」
スルー!? CPUの耳は都合のいいことしか聞こえないのだろうか。
雪乃「狼の魔物……ですか?」
王様「うむ。奴らは時々町に来ては人々を襲ってくるのだ」
じゃあ城の周りにでもいた兵士でもさっさと送ってやれよ、暇そうだったぞあいつら。
王様「そこでお主らにその魔物を退治してもらい、町に平和を取り戻してもらいたい」
そこで、の意味が分からない。だからなんでそれ俺達じゃなきゃ駄目なの。その辺の兵士でも魔物くらい狩れるでしょ。
平塚「比企谷、随分と不満そうな顔をしているが、こういうのが往々にして勇者達の役目だと決まっている。諦めろ」
八幡「くそっ、ご都合主義め!」
ゲームをプレイしている時もなんで勇者にばかり振るんだ? と常々疑問に感じていたが、勇者側に立ってみてもやっぱりなんでこちらにばかり振るんだ? と思う。ちょっとは働け国の兵士達。
王様「洞窟はこの国の北門から出て少し向かったところにある。頼んだぞ、勇者殿」
雪乃「お任せください」
こうして、俺達のRPGのような何かの幕は上がったのであった。
21 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます
22 = 15 :
こういう話で先生が率先して出てくるのは珍しいな
面白いお
23 :
期待
これラスボスの魔王ってもしかしてはるn…
24 :
CPUよりかNPCかAIの方がしっくりくる
25 :
魔王とかあの人しかいないよね
26 :
アラサー春麗とか厳しいですな (ノД`)
27 :
勇者ゆきのんのエロください
28 :
第1章 1の国編
1の国 城下町
王様に無理矢理魔物退治とかいう面倒極まりない問題を押し付けられた俺達は、城から出ると店が多く並ぶ商店街に来ていた。
とは言っても特にここに何か用があるわけではない、単に洞窟へ向かう北門への通過点だ。
平塚「ワクワクするな比企谷、まさにRPGゲームのようじゃないか」
八幡「俺は別にワクワクなんてしませんけどね、帰っていいですか」
雪乃「あら、どこに帰ろうというのかしら」
八幡「そりゃ家に決まってんだろ」
雪乃「あなたが現実世界に帰りたいだなんて、とうとう現実と向き合う覚悟が出来たのね」
八幡「ぐっ!」
そうだった、随分とリアリティのある夢だったのですっかり忘れていたがここは夢の中だった。
せっかく夢の中でゲームのような体験が出来ているのだから、それを蹴ってまで辛い現実と向き合うというのは確かに非合理的だ。
ていうか本当にここ、夢の中だよね?
体は現実と同じように自由に動くし、雪ノ下達との会話も至極自然だ。
本当に寝ている間に異世界に来ちゃったとかじゃないだろうな……。
しかし本当に生身のまま異世界に来たというのには、不自然な点があるのも事実だ。
肌から感じる感覚も現実のそれとは違う。言葉にするのは難しいがはっきりと違和感を覚えるし、現実ならありそうな体のダルさや疲れなども全く感じない。
他にも、さっき防具を渡された時なんてなんか会話ウィンドウみたいなのが見えたぞ。
ハチマンは かんがえはじめた▼
そうそう、こんなのってオイィ!?
29 = 1 :
八幡「さっきから出てる、このウィンドウみたいなのはなんだ?」
平塚「ゲームだと良くあることだろう」
良くあることで済ませちゃったよ、この人。
ここは夢の中で、なんかRPGっぽい世界観のゲームの世界に入った。そういう認識にしていかないと、いちいち突っ込むのもめんどくさくなりそうだ。
八幡「まぁどっちみち現実に帰る手段が分からないしな……仕方ないか」
平塚「うむ、どうせだ。起きるまで楽しもうじゃないか」
本当に起きられる時は来るんだろうな……ていうか本当に夢ならせめて服装もそれっぽくして欲しかった。
この中世ファンタジーのような雰囲気の中で、ただひとり総武高校の制服を着ている俺は周りから見るとさぞ浮いているだろう。
ぼっちとは目立たないからこそぼっちなのだ、下手に悪目立ちしてしまってはぼっちとは言えない。ぼっちプロ失格である。
そんなことを考えていると、さっきからすごいすごい言っている由比ヶ浜がすごい以外の言葉を口にした。
30 = 1 :
結衣「ねぇねぇ見て、あの店なんか違う感じしない?」
八幡「なんか違う感じってアバウトだな……」
由比ヶ浜が指を指した先の店を見てみる。なんか違う感じと言われても、見ただけでそんな違うような店には見えない。普通の露店のようだ。
だがしかし、しばらく見てみると確かに『なんか違う感じ』がその店からはしてきたのだ。
雪乃「確かに、あの露店からは他の露店とは何か違った雰囲気があるわね」
八幡「見た目的には、大して変わらん気がするがな」
見た目が変わらないのなら、一体何が違うのか。そう思ってその露店を見ていると、上の方に何かカーソルのようなものが出てきていた。
ショップ
▽
八幡「……なるほどな」
雪乃「何か分かったの?」
八幡「ああ、あれは多分勇者達が買い物を出来る店だな」
おそらく、他にたくさん並んでいる露店では俺達が買い物をすることは不可能だ。なんで分かるかって? そりゃそれがRPGゲームのお約束だからさ。
31 = 1 :
結衣「えー、こんなにたくさんお店があるのにあそこでしか買い物できないの?」
平塚「おそらくはそうだろう。ゲームをやっている身からすると当然のようだが、実際にその身になってみると寂しいものだな。さて、比企谷」
八幡「なんですか」
平塚「ここは魔物と戦うことが想定されるRPGゲームの世界の中だと仮定して、目の前に店があったらどうする?」
先生はニヤリと顔に笑みを浮かべながら俺にそう問うた。簡単だ、そんなのは決まっている。
八幡「回復アイテムを買い込む……ですかね」
平塚「ご名答。とりあえずあの店に行ってみるか」
ポケ○ンならまずキズぐすりとモンスタ○ボールを買うのがお約束だ。
平塚「雪ノ下、お金は王様から貰っていたっけか?」
雪乃「はい、防具と一緒に渡されていたようです」
残金:10000円
おお、このウィンドウっぽいやつ便利だな、是非現実世界にも導入して欲しい。
そして気になるのが、中世ヨーロッパみたいな世界観ながら通貨は円なことである。世界観ブチ壊しなのでやめて貰いたい。この世界を作った奴がいるとしたら、そいつは一体何をイメージしながらこの世界を作ったのだろうか。
平塚「ふむ、どうやらアイテムは何も持っていないようだ。やはり何かあの店で買っておくべきだろうな」
先生がそう言うと、俺達は露店へ向かった。
32 = 1 :
商人「いらっしゃい!」
ニア 買いに来た
売りに来た
これ、ウィンドウが出てきたはいいんだけど、どうやって選択肢を選ぶんだ?
雪乃「買いに来ました」
商人「ほい、今あるラインナップだ」
ああ、答えは話しかけることか。店員に話しかけるという発想が基本的に無い俺からすると完全に盲点であった。
もしもこれが俺一人だったら、この時点で詰んでいたまである。頼れるパーティメンバーがいて本当に良かった。
売り物
ニア 薬草 100円
ってやくそうしかないじゃねぇか!!
商人「最近狼の魔物に襲われることが多くて、商品が入荷出来ないんだ」
ああ、RPG初期あるある文句ね。よく最初の方とか魔物の影響で売りに出せないとかで売り物に制限がかかってるあれだ。
だったらそこにたくさんある箱とか箱とか、それから箱には何が入っているんだ。まさか全部薬草ってわけじゃないだろうな……。
33 = 1 :
雪乃「私はゲームには疎いのですが……平塚先生、こういった買い物は任せてよろしいでしょうか?」
平塚「うむ、そうだな……何が起こるのか分からん。50個くらい頂こうか」
八幡「買いすぎじゃないですか?」
金銭には余裕があるが、最初から買う量にしてはあまりに多過ぎる気がする。
FFで最初からポーシ○ンを50個も買ってからダンジョンに繰り出す奴など聞いたこともない。いやFFの話が出来るような友達はいなかったからイメージだけど。
しかし、先生は真面目な顔つきで俺に答えた。
平塚「比企谷、これが本当にゲームならそうだが……実際に戦うのは私達だ。実際に魔物に攻撃されて痛みを感じる可能性だってある。備えはしておくに越した事はないよ」
八幡「……確かにそうですね」
ノリノリでゲーム気分のように見えたが、その実、平塚先生は俺よりよほどこのゲームについて真面目に考えていたらしい。
確かに、攻撃された場合どうなるかまだ俺達は知らない。夢の中らしく実際の痛みは無いと信じたいが、今のところ判断材料が少な過ぎる。用心しておくに越した事はなかろう。
そしてダメージなどを考えると、やはり気になるのはHPが0になった時のことだ。
八幡「……」
まさかどこのデスゲームみたいにゲームの中で死んだら実際に死亡する……なんてことはないと信じておきたいところだ。だがその可能性も考えて慎重に行動することにしよう。
ところで俺達のHPはどのくらいあるのだろうか。それを知らなければ、どの程度ダメージを受けて良いのかも分からない。
どういう原理なのかは分からないが、先生達のことを良く見てみるとステータスみたいなのが確認出来るようであった。おっと、ついでに俺のも確認しておこう。
34 = 1 :
ユキノ
職業:勇者
性別:女
レベル:1
HP:14
MP:10
ユイ
職業:僧侶
性別:女
レベル:1
HP:18
MP:38
シズカ
職業:格闘家
性別:女
レベル:1
HP:35
MP:6
ハチマン
職業:黒魔術師
性別:男
レベル:1
HP:23
MP:30
雪ノ下HPひっく! ひっく! ゲームの中ですら体力ないのかよ!
14という数値が具体的にどの程度なのかは分からないが、後衛職であるはずの俺や由比ヶ浜より低い時点でお察しくださいというやつだろう。
あいつのHPにはよく気を配っておこう……。
逆に平塚先生は格闘家らしく、HPはかなり高めの数値だ。
そして由比ヶ浜や俺みたいな後衛職はMPが高めである。雪ノ下のHP以外はおおむねよくあるRPGゲーム通りといってもいいだろう。
平塚「よし、薬草は買い込んだ。それでは北門に向かうとしよう」
先生が買い物を終えると、俺達はそのまま北門へ向かった。
35 = 1 :
────────────────────────────────────────────────
北門へ向かう道中、歩きながら他の3人とステータスの確認の方法や意味などを伝え合っていた。
特に雪ノ下はHPやMPなどといったRPGあるあるの概念すら知らなかったので、俺と平塚先生が根本から教えることになったのだ。
しかしそこはさすがの雪ノ下、少し話をすればすぐに理解してくれた。
その雪ノ下とは対極の位置にいるアホの子、由比ヶ浜もRPGにはそこまで詳しくなかったので説明するには少々労力がいるかと思われたが、こちらは昔ポケ○ンのプレイ経験があったので、それに例えれば簡単に納得してくれた。
さすが国民的ゲームは普及率が違う。
そんなこんなで話をしながら10分少々歩くと、ようやく北門らしきものが見えてきた。
だが問題は、その北門があくまで『らしきもの』でしかなかったことである。
結衣「うわ……なにこれ……」
雪乃「これは酷いわね……」
元々1の国の北門であったろうそれは、ただの瓦礫と木の屑の山と化していた。
その周りにはそれを嘆いている人々と、数名の門番らしき兵がいた。
当然門としては全く機能しておらず、外の森がすでに国の中から確認出来る状態であった。
門の惨状を見て唖然としていると、瓦礫の山の周りにいた人々のひとりがこちらに気付いてやってきた。
36 = 1 :
商人「おお、これはこれは勇者様」
どうやらこいつは商人らしい。会話ウィンドウ超便利。聞き逃すこともないし。
雪乃「教えてください、どうして門はこのような状態になったのですか?」
雪乃がそう聞くと、商人は頭を抱えて項垂れた。
商人「数時間ほど前に、狼の魔物が襲ってきたのです」
八幡「……狼の魔物が?」
これは王様が言っていた、時々町に来ては人々を襲う狼の魔物というやつだろう。
雪乃「その魔物が、門をここまで破壊していったと。そういうことですか?」
商人「ええ、そうです……」
はじまりの町の周りにいる魔物というのは得てして弱小と相場が決まっているはずだが、まさか門を瓦礫の山にするほどの力があるなんて八幡聞いてない!
もしかしてこれ、最初から結構苦戦するんじゃ……狼が一体何をどうしたらこんな風に門を破壊することが出来るんだ。もしかして狼は狼でもヤム○ャみたいな奴だったりしない? 散々馬鹿にされてるけど、少なくとも今の俺達じゃ手も足も出ないぞ。
商人「門の近くにいた商人達も襲われて商品の食料を奪われてしまいました……幸い、奴らは食料を奪うとすぐに逃げ出したので、怪我人は出ませんでしたが」
怪我人は出なかったのは不幸中の幸いというところだろう。だが、瓦礫の山の周りにいる商人たちの顔色は優れない。そしてそれの対応に当たっている門番らしき兵の奴らはその時に一体何をしていたんだ。
商人「お願いします勇者様、商品は取り戻せないかもしれませんが、せめて奴らを倒してください!」
雪乃「分かりました、引き受けます」
即答だった。雪ノ下さんカッケェ。いや元よりそのためにここまで来ているのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、その凛とした受け答えが妙に様になっていた。
商人も、その雪ノ下の答えに安堵したのか先ほどより表情が柔らかくなったような気がする。NPCだから、どこまで理解出来ているのかは分からんが。
37 = 1 :
商人「そういえばもうひとつ、ここが襲われた後に槍を持った女の子が来ましてね」
八幡「槍を持った女の子?」
商人「はい。その女の子はこの惨状を見た後、怒って狼が住む洞窟へと走り出していきました」
八幡「ひとりで?」
商人「そうです。私達は皆止めたのですが、そのまま行ってしまわれたのです……」
女の子が武器持ちとはいえ、ひとりで魔物が住む洞窟に突撃するとは随分命知らずな女の子だ。どんな奴なのか、気になるところだ。
商人「出来れば、その女の子も助けてあげてください」
雪乃「分かりました。ひとりで、となると心配ね。急いで向かいましょう」
結衣「うん、早く助けなきゃ!」
平塚「うむ、さっさと終わらせてしまおう」
商人との会話イベントが終わると、俺達は駆け足で洞窟へと向かった。
ちなみに外に出る際に門だった瓦礫の山を登る必要があったのだが、そこでパーティ内唯一俺だけが転んだことは記載しないでおく。
一応、転んだ程度ではHPが削られることも怪我をすることもないということが分かっただけ収穫だったと思っておこう……。
38 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます。
俺ガイル。続 第6話はTBSで1:48から放送だから観とけよ観とけよ~
39 :
おつ
欠神があくびに見えて何のこっちゃと思ったらgodね
40 :
10分歩いてエンカしないって稼ぎが大変だ
41 = 1 :
─────────────────────────────────────────────────
国から出てから数分。
木に囲まれた道を進んでいくと、前から水色のどろどろとした何かがタマネギみたいな形をした塊がぽよんぽよんと飛び跳ねながらこちらに向かってきた。
結衣「ひっ、あれ何!? キモッ!」
八幡「とうとうはじめての戦闘か……」
スライムAが あらわれた!▼
スライムBが あらわれた!▼
見た目はド○クエに出てくるスライムそのまんまだった。おい、いいのかあれ。著作権とか、あとその他諸々。
雪乃「あれが魔物……でいいのね?」
八幡「間違いねぇな」
まさかあれが会話出来るNPCだったりはしないだろう。
いや、作品によってはスライムと会話出来る場面もあったりするのだろうが、それは今ではなかろう。
結衣「わ、私達はどうすればいいの?」
八幡「そうだな……」
相手はドラ○エの敵キャラのモロパクリだ。確かにRPGの最初の敵としてはお馴染みと言えばお馴染みではあるのだが。
となると、おそらくだがこの世界の戦闘はコマンド式戦闘であろう。
ウィンドウに表示された行動を選び、それに従って行動すればいいだけ……
42 = 1 :
そう思っていたがウィンドウなど待っていても出てきやしなかった。あれ、どういうことだ?
そんなことを考えていた俺やどうすればいいのか分からず突っ立っていた由比ヶ浜とは違い、平塚先生と雪ノ下は武器を構えていた。
平塚「ふふっ、腕が鳴るな。さぁ行くぞ!!」
先生はそう言うと、メリケンサックを指に嵌めてスライムに向かって駆け出していった。
えっ、この世界ってリアルタイム戦闘なの!?
普通こういうRPGってコマンド式戦闘じゃないの?
ドラ○エ式だと思っていたら、なんと戦闘は3Dテイル○式であった。
雪乃「なるほど……あれに攻撃して、倒せばいいのね」
そう言うと雪ノ下は腰にかけていた鞘から剣を抜き出し、平塚先生に続いてスライムに向かっていった。
八幡「お、おい雪ノ下、気をつけろよ!」
雪乃「あら、心配をしてくれているの? あなたにしては珍しいわね」
お前のHPの低さを心配してるんだよ。
雪乃「でも心配には及ばないわ」
雪ノ下は剣を構えると、物凄いスピードで駆け出した。
雪乃「はっ!」
一瞬でスライムとの距離を詰めると、すぐさま一閃。スライムに強烈な一撃を浴びせたのであった。
雪乃「やっ!」
そして容赦無くそのまま二撃、三撃。
目にも止まらぬ速さでスライムを切り結んでいく。
雪乃「これで終わりよ」
そして何度目かの攻撃でスライムA君は一度の反撃も許されないまま、光の塵になって消えていった。
なるほど、分かった。
雪ノ下はHPとMPが低くても、あのすばやさと技のキレだけでなんとかなるらしい。ちぃ覚えた。
43 = 1 :
結衣「ゆきのんすごーい!」
雪乃「別に大したことはしてないわ」
一方、もうひとつのスライムBは平塚先生がサンドバッグのようにタコ殴りにしていた。うっわ、すげぇ楽しそう。
本当にふたりとも戦闘ははじめてなのだろうか。
平塚「ハーッハッハ!」
一応相手はスライムなのだが、メリケンサックのみのほぼ素手のままで直接殴っていてヌメヌメとかしないのだろうか。
それともそこら辺のリアルな事情はゲーム的な都合で無視されているのか。本当にご都合主義が通る世界である。
いや、別にそういうご都合主義は俺達からしたらありがたい限りなんだけどさ。スライムを切りまくっていたら、その痕が剣にまとわりついて切れ味が悪くなるとかそんなことあったらめんどくさいし。
そんなことを考えている内にサンドバッグB もといスライムBもお亡くなりになっていた。かわいそかわいそなのです。
平塚「なるほどな、これが実戦か」
八幡「いや、俺達なんにもしてないんすけど」
そういえば、雪ノ下と先生が無双していたため俺と由比ヶ浜は初実戦だったというのに何もしていない。
いや何もしていないというのは表現が違うだろう。何かする必要もなく、前衛のふたりが敵を片付けてしまっていただけだ。
結衣「ふたりともかっこよかったよ!」
平塚「獲物を奪ってしまって悪かったな、次は比企谷と由比ヶ浜も戦闘に加わると良い」
えぇー……。雪ノ下と先生が全部片付けてくれるのなら、それに越した事は無いんですけど。
しかしそういうわけにもいかないのは分かっている。本番の洞窟の中に入る前に戦闘のやり方くらいは覚えておかなければならないだろう。
44 = 1 :
それから数分もしないうちに再びスライムとエンカウントした。
スライムAが あらわれた!▼
スライムBが あらわれた!▼
数分というと、実際のゲームでならばかなり長く感じる時間だろうが、リアルタイムで動いている俺達の身からすればそんなもんかという感じである。むしろ本物のゲームのように数歩歩くたびにエンカウントとかいうシステムじゃなくて本当に良かった。
平塚「じゃあ比企谷、由比ヶ浜。今度は君達がやってみるといい」
八幡「へいへい……」
めんどくせぇなぁ……俺はそう思いながら、30センチほどの木の棒を構えた。
さすがにこれで直接突き刺しに行くのは無謀というものだろう。黒魔術師らしく、何か魔法で戦うのが基本であるはすだ。
八幡「魔法ってどう使うんだ……」
そういえばその魔法とやらを使うやり方が全く分からない。
なんかこう、ウィンドウみたいなのが出てくるんじゃないのかと思ったが、前回と同様何か出てくることはなかった。
魔法が使いたい~とでも念じれば何か頭の中に思い浮かぶのだろうか。魔法が使いたい~!
あっ、今何か頭の中に浮かんだわ。これか。随分アバウトだ。
八幡「グラビティ!」
ハチマンは グラビティを となえた!▼
頭の中にふっと浮かんだ単語をそのまま口に出す。
すると、スライムAに向けて黒い塊っぽい何かが木の棒が放たれた。
そしてそれはそのままスライムAに直撃した。
八幡「やったか!?」
しかし、見てみるとスライムAは全く動じていない。
ダメージを与えられた感触は全く無かった。
どういうことだ?
45 = 1 :
雪乃「……あなたのそれ、何の役に立つのかしら」
八幡「いや待て、おかしい。確かに当たったはずだ」
俺の魔法『グラビティ』とやらは確かに直撃したはず。その瞬間をこの目で見た。腐っているこの目だが、一応視力は悪くは無いはずだ。
だが、スライムAは相変わらずウザったい顔をしながら鎮座しているし、その隣のスライムBはぴょんぴょんと飛び跳ねている。
ん?
八幡「分かったぞ、俺の魔法の効果が」
平塚「うむ、私も想像がついたぞ」
雪乃「一体なんなのかしら?」
八幡「ああ……魔法の名前から考えても、おそらく相手の体を重くするとか、行動に制限をかけるとかそういった類のものだな」
俺の魔法が当てられたスライムAは随分鈍い動きになっていたが、その隣のスライムBは相変わらずぴょんぴょん飛び跳ねている。ぴょんぴょんするのは心だけでいい。ウザいから今すぐその動きを止めろ
八幡「グラビティ!」
ハチマンは グラビティを となえた!▼
その仮説を証明するため、俺はもう一度魔法を唱えた。木の棒から放たれた黒い塊はスライムBに直撃する。
すると、先ほどまでピョンピョン飛び跳ねていたスライムBの動きが突然止まった。飛び跳ねることなく、地面で少しぷるぷるしているだけだ。
先ほど当てた、スライムAと同じ状態になったのだ。
八幡「デバフかよ……」
要するにこの呪文は弱体化呪文らしい。確かに、デバフ系呪文は黒魔術師らしいといえばらしいのだが……重力系呪文ならもうちょっとカッコいいダメージ呪文が良かった。重力系呪文といえば黒の魔本の子みたいな。そのうちアイアングラビティとかなって周りの森を全部なぎ倒せたり出来るようになるだろうか。
46 = 1 :
平塚「なるほど、比企谷の呪文は相手の動きを止めるものか。他にはないのか?」
八幡「よく分からないんすけど、多分今のところはこれだけですね」
他に使える魔法がないか、色々念じてみるもスッと頭の中に出てきたのは『グラビティ』のみだ。レベル1だから仕方が無いのかもしれないが、普通最初ってひとつくらいは攻撃呪文を覚えているものではないだろうか。
雪乃「相手の足を引っ張る魔法……比企谷君にお似合いよ」
八幡「うるせ」
相手の足を引っ張ったりとかしねぇから。何故なら足を引っ張る相手が俺にはいない。だって俺、ぼっちですから。
結衣「ヒッキーすごーい! どうやってやったの?」
八幡「いや、なんとなく頭の中に思い浮かんだんだが……」
本当に感覚で唱えたので、言葉で説明するのが難しい。
結衣「えー分かんないよー……開けゴマー!」
いやそれ違うから。魔法は魔法かもしれないけど。
それから何回やっていても由比ヶ浜は魔法を唱えることは出来なかったので、俺の魔法で動きが鈍くなっていたスライム達は雪ノ下と先生がサクッと倒してしまった。
47 = 1 :
──────────────────────────────────────────────────────
結衣「うー、ごめんねゆきのん」
雪乃「気にしなくていいわ、まだ始まったばかりだもの」
それから数度、魔物(今のところスライムのみだ)に遭遇したが、由比ヶ浜は未だに魔法を唱えることが出来ないでいた。
結果的にほとんどが雪ノ下と先生が魔物狩りをしているという状況である。いや俺も一応魔法を唱えてはいるのだが、スライム程度だと動きを鈍くせずとも前衛のふたりが瞬殺してしまうため、今のところあまり役に立ったようには思えないのであった。
平塚「なんでだろうな……僧侶である以上魔法を全く覚えていないとも思えんがな」
結衣「教えてヒッキー、どうやって魔法使ったの?」
八幡「いや、俺に聞かれてもな……」
なんか頭の中で魔法が使いたい~と思ったらパッと思いついたので、それをそのまま唱えただけだ。
そう由比ヶ浜には先刻から伝えているのだが、いまいち感覚が掴めないようでいた。
まぁ、今のところ雪ノ下と先生のタッグだけでなんとかなっている。戦った魔物はスライムのみとはいえ、ふたりともまだノーダメージだ。上々な滑り出しと言えるだろう。
国から出て、もう30分程経った。
八幡「……おい雪ノ下、平気なのか」
雪乃「ええ、平気よ」
これだけ歩けば体力の無い雪ノ下はバテるものかと思っていたが、先ほどから見ている限り特に疲れている様子は微塵も感じられない。
どうやらこの世界ではHPという概念は存在していても、スタミナという概念は存在していないらしい。事実、俺自身もだいぶ歩いてきたにも関わらず体はずっと軽いままだった。
しかしスタミナという概念が無いのであれば、雪ノ下にとってはかなり有利な条件だ。あいつの弱点とか体力の無さくらしだし。あれ、体力面の問題がない雪ノ下って実質最強じゃね?
そんなことを考えていると、前に山のようなものが近づいてきた。よく見るとぽっかりと穴が開いている。あれが狼の魔物とやらが住んでいる洞窟の入り口だろう。
平塚「あれだな」
八幡「多分そうっすね」
洞窟の中となると何か火かフラッシュを覚えているポケモ○の用意が必要かと思ったが、洞窟の中はところどころ穴が開いていて外の光が差し込んでいるようだ。思ったより明るい、このまま前に進めそうだ。
雪乃「それではいきましょうか、先に向かった槍を持った女の子の安否も心配だもの」
由比ヶ浜が魔法を使えないという問題は解決しなかったが、雪ノ下のいうとおり先にここに入っている可能性のある女の子も心配だ。
俺達はそのまま狼の魔物が待ち受けているであろう洞窟へ足を踏み入れたのであった。
48 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます。
6話のいろはす可愛い過ぎたウェイ
49 :
乙
八幡だけ現実の制服なのがなんか引っかかるな……もしかして八幡の本来封印されし力が解放されたら姿ry
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