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    元スレ八幡「俺ガイルRPG?」

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    901 = 899 :

    >>900
    ありがとう、頑張って下さい

    904 :

    乙です。
    がんばよ

    905 :

    Side - Hiratsuka


    平塚「私のこの手が光って唸るっ、お前を倒せと輝き叫ぶ!」

    材木座「最後に勝利するのは……勇気ある者だぁぁぁぁっ!!」

    叫びながら私が拳を、そして材木座が剣を構えながら駆け出す。

    私たちが狙うのは、影の葉山だ。もう片方の影の雪ノ下には、雪ノ下本人と比企谷の妹が向かっている。

    影の葉山はふっと軽い笑みを漏らしながら、剣を構えて私たちを迎え撃つ体勢に入った。

    影葉山「結衣といろはがあんな一瞬でやられるとはね……仇は取らせてもらおうか」

    材木座「ふぬぅん!!」バッ!!

    きらりと、剣が広場に差し込む光を反射した。と同時に材木座が大きく振りかぶった剣を影葉山目掛けて勢いよく振り下ろす。

    それを影葉山は己の剣の腹で受け止めた。

    瞬間、ガキィィン! という衝撃音が轟き、小さな花火が散る。

    906 = 1 :

    材木座はそのままつば競り合いに持ち込もうと剣を押し込むが、単純な力比べではステータスの勝る影葉山の方が優勢のようだ。

    影葉山は涼しい顔を崩さないまま、材木座の剣を身体ごと押し返す。

    影葉山「はっ!」キィン!!

    材木座「ぬっ!?」

    キィンと音が鳴ると同時に、押し返された材木座が大きく仰け反る。そこに生まれたのは大きな隙だ。

    当然、影葉山はそれを見逃さない。すぐに剣を軽く引くと、材木座に向かってその刃を振るおうとして──

    平塚「させるかっ!!」ドッ!!

    影葉山「くっ!」

    当然、それを許すわけにもいかない。

    私は影葉山の振るう刃と材木座の間に、割り込むように身を躍らせる。ギリギリのタイミングで私の拳が影葉山の振るう剣に当たり、攻撃軌道を逸らすことが出来た。

    907 = 1 :

    そしてすぐに拳を握り締めると、剣を弾かれた影葉山に向けて右ストレートを放つ。が、手ごたえはあまりない。影葉山も反射的にすぐに身を引いていたために、私の拳の当たりは浅かったようだ。

    しかし当然それで終わりにするわけではない。当たりが浅いならばすぐに第二第三のパンチを打ち込めば良い。

    平塚「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ──ッ!!」ドドドド

    影葉山「くっ!」

    私の拳のメリケンサックが、影葉山の剣にぶつかる度に甲高い金属音が鳴り響く。私の猛ラッシュを剣で捌こうとはさすがだが、私はスーパーアーマーを持っているため、多少剣で弾かれた程度では怯むことはない。

    そしてこの零距離であれば、影葉山の剣より私の拳の方が早い。幾度か、私の拳が葉山の身体を捉える。

    そのまま沈むまで私の拳を食らい続けてくれれば楽だったのだが、そう簡単にはいかないようだ。

    影葉山「やりますね、でも俺も押されたままでいるわけにはいかない」ゴッ!!

    突然、葉山の剣が眩い閃光に包まれた。おそらく大技で強引に私のラッシュから抜け出そうというのであろう。

    マズいな、一旦引くしかない……だが、今咄嗟に引いて避けられる技だろうか……?

    影葉山「爪竜連牙ざ──」

    いろは「葉山先輩に打つのはちょっと気が引けますけどー……飲み込んでくださいっ、いろはスパイラル!!」ゴウッ!!

    その時だった。

    908 = 1 :

    突如、私たちの足元のところに魔方陣がぱぁっと広がる。

    ゴウ! と派手な轟音が響くのと同時に、影の葉山がその魔方陣から現れた水の渦巻きに巻き込まれた。

    影葉山「なっ!?」

    丁度、一色の呪文の詠唱が終わったのだろう。ナイスタイミングだ。

    平塚「一色か、助かった」

    魔法攻撃は味方には当たることはない。これほど大きく広がっている水の渦巻きの中にも、私が巻き込まれることはないのだ。おかげで、渦巻きの中を観察出来るというちょっとレアな経験が出来てしまった。

    だが、当然渦巻きの中の光景に魅入っている余裕はない。渦巻きの中に捕らわれ、動けなくなっている影葉山を狙う絶好の機会だろう。

    これを見逃すわけにもいかない。私はそのまま渦巻きの中に入り込み、そして中にいる影葉山の側へと向かった。

    影葉山「!?」

    渦巻きの中に入ってきた私の姿を見つけたのか、その目を見開く影葉山。

    だが、渦潮の中に捕らわれてしまった影葉山は自由に動くことが出来ない。少々アンフェアな状況ではあるが、こちらも手加減出来るような状況ではないのでな……全力でいかせてもらおう。

    909 = 1 :

    平塚「悪く思うなよ、はあっ!!」ドガッ!!

    影葉山「ぐあっ!!」

    私の右ストレートが、影葉山の顔面に綺麗に突き刺さる。ドガッと鈍い音がしながら、影葉山は渦巻きの外にまで大きく吹き飛ばされた。

    所詮姿だけが一緒である偽者なのだとは分かっているが、生徒の顔面を思い切り殴り飛ばすというのはあまり良い気分ではないな……。

    影葉山「くっ……」

    私が殴り飛ばした結果とはいえ、一色の水魔法から脱出することが出来た影葉山は素早く体勢を立て直す。

    しまったな、もう少し渦巻きの中でタコ殴りしていた方が結果的に多くのダメージを与えられたかもしれん。

    材木座「ぬぅ、遅れを取ってしまった……」

    平塚「今からでも遅れを取り戻すために働きたまえ」

    とはいえ、これまでの戦闘で影葉山に与えたダメージもかなり溜まってきているはずだ。

    残念ながらこの世界の戦闘は相手のHPを確認することは出来ないので、具体的にどの程度追い詰めているのかは分からないが、これでまだ残りHPが三割以上あるということはない……とは思う。

    910 = 1 :

    あと一押しだ。

    軽く息を吸って、気合いを入れなおす。影葉山の一撃は恐ろしいが、私と材木座で上手く切り替えて相手の隙を突いていけばそもそもその一撃を出させずに完封することが出来るはず。もっともその材木座がやや不安定なのは気になるところであるが……。

    まぁ、それは仕方があるまい。これまでずっと旅をしてきて数々の戦闘を乗り越えてきた私たち勇者パーティほどは経験を積んでいるわけでもないのだから。それに致命的なミスをするほどではないし。

    よし、このまま押し切ろう──

    そう思った時。

    平塚「!?」

    材木座「こ、これは!?」

    刹那、身体中が凍るような冷気に包まれる。

    もしや影葉山の氷呪文か、と思って咄嗟に顔を向けるも、当の影葉山も困惑したような様子である。

    影葉山「なんだ……!?」

    どうも、影葉山が何かを仕掛けてきたわけではなさそうだ。

    氷……と思わず雪ノ下のことが脳裏を掠めた。

    もしや、これは彼女の何かか?

    雪ノ下の方に視線をやると、雪ノ下の周りが雪の結晶の形をしたような光に包まれていた。

    平塚「まさか──!?」


    911 = 1 :



    Side - Hachiman


    影の由比ヶ浜&一色はサブレの活躍によって退場させることが出来た。

    しかし、このボス戦が終わったわけではない。

    まだ影の雪ノ下、葉山、そして俺が残っている。

    相手の後衛からの大規模魔法はなくなったとはいえ、影雪ノ下と葉山の突破力は依然として脅威であることに変わりはない。

    そして影の俺の使う呪文の面倒臭さも変わりはない。

    そんな残りの三人を、崖の向こうで戦っている川崎、そしてその傍らにいる留美の二人が倒される前に片付けなければならない。

    俺は、再びその面倒臭い呪文を使う影の俺の相手をすることにした。

    912 = 1 :

    八幡「グラビティ!」モワーン

    木の棒を構えて、鈍化魔法の詠唱を終える。黒い重力の塊のようなものが現われ、真っ直ぐに飛んでいった。

    影の俺は俺の方ではなく、雪ノ下たちの方を向いている。上手くいけばこのまま直撃してくれるのだが。

    影八幡「くっ!」バッ

    が、俺の鈍化魔法のスピードというのはそこまで早くない。その存在に気付いた影の俺が咄嗟にその場を飛び退いて呪文は避けられてしまった。

    こういう時、相手が判断のつく人間相手だと本当に厄介だ。ミノタウルスなどといった魔物はパワー面では確かに強力だが、俺の魔法の厄介さに気が付いて咄嗟に避けるとか、そういう判断は出来ないからな。

    影八幡「ちっ……」

    影の俺の舌打ちがここまで聞こえてきた。

    現状、相手の面子は3人で、こちらは7人だ。単純計算で、相手ひとりに対してふたり以上で当たる事が出来る。

    だが、俺ひとりが影の俺を押さえることが出来れば、影雪ノ下、葉山のそれぞれに3人もつくことが出来るのだ。

    相手の後衛の魔法攻撃による妨害がなくなった今、相手にとってこの3体1の状況を崩すのは容易ではない。

    影の雪ノ下や葉山が強引に大技でその状況を突破しようにも、常に3体1の状況を保っていればそもそも大技を撃たせる隙も与えないで済む。

    このままいけば、この圧倒的優性を返されることはない。

    913 = 1 :

    ただ、影の俺の鈍化魔法によってのみ、その状況をひっくり返される可能性はある。

    もしも影の俺の鈍化魔法によってこちらの前衛の動きが止まり、その隙に大技を撃たれてしまえば、回復役の由比ヶ浜がいない現状ではそのまま瀕死に追いやられる可能性も高い。

    もしこちらにこれ以上の人員の欠落があれば、形勢逆転される可能性もある。そこまではいかなくとも、川崎の救助が間に合わなくなる確立はぐんと上がってしまう。

    よって、今一番警戒しなければならないのは影の俺だ。

    だから、俺は影の俺によって逆転をされないようにマークする。

    八幡「悪いな、ここで足止めされてくれ」

    影八幡「この……」

    影の俺もそれらの状況は全て理解しているのか、やや焦ったような表情を浮かべている。

    914 = 1 :

    しかし、だからといって無理に呪文を撃とうという様子は見せない。俺たちの鈍化魔法は、隙が大きい割にスピードはない技だ。面として対峙してしまうと、そう簡単に撃つ事は出来なくなる。

    サブレを召喚する前と同じような、にらみ合いに近い状況になる。

    こいつを足止めすればいいだけの俺としてはありがたいが、己の仲間の援護に向かいたい影の俺にとっては厳しい状況であるはずだ。

    当然、あちら側もそれらのことは理解しているだろう。

    ダッと地面を蹴る音がする。影の俺が、俺に向かって駆け出してきた。

    これまでの戦いぶりを見るに、影の俺も使える呪文はグラビティひとつのようだ……敵ながら俺の影でごめんと内心で謝りたくなってしまったが、今の俺にとっては予想外の行動を取られることがないという意味で追い風だ。

    となれば、影の俺が取るアクションは、体術で俺を倒してから鈍化魔法を打ち込み、俺が動けない間に影雪ノ下たちの支援に向かう……といったところか。

    ろくなダメージソースを持たない俺の今の目標は、影の俺を倒すことではない。他のパーティメンバーたちが影雪ノ下、葉山の両名を倒すまで足止めすることだ。だから、突っ込んでくる影の俺と真正面から戦う必要はない。

    ただ、逃げる!

    915 = 1 :

    影八幡「待て!」

    基本ステータスはあちらの方が上だ。単純な足の速さでは勝てない。だが、要は相手の鈍化魔法を受けず、かつ影雪ノ下たちの支援をさせなければいいのだ。

    俺は前衛たちが戦っている広場の中央から離れるように逃げ出す。これで影の俺が背中を向ければ後ろから鈍化魔法を打ち込めばいいし、追ってくるのであればそのまま追いつかれる寸前まで逃げればいい。

    そう考えていたのだが。

    八幡「なっ!?」

    ちらと後ろを見やれば、なんと影の俺は踵を返して広場の中央の方へ向かおうとしていた。

    こちらを追ってくると踏んでいた俺にとっては予想外の行動であったが、それならそれですぐに俺もそれに対応した行動に切り替えることにする。

    背を向けて走り出した影の俺の後ろから鈍化魔法を打ち込んでやろうと、俺は呪文の詠唱を始めた。

    八幡「グラビティ!」モワーン

    ──呪文を唱えてから、自分の軽率な行動を悔いた。

    916 = 1 :

    影八幡「かかったな」

    俺が呪文を放つのと同時に、影の俺がばっと振り向いた。そして軽く身体を逸らすと、俺の放った黒い重力の塊を避ける。

    しまった、今の逃走は俺に呪文を撃たせて隙を作るための演技だったのか!

    それに気付いた時にはすでに遅い。俺は呪文を撃った後の硬直状態になっていた。

    だが、硬直状態は決して長くはない……それにグラビティの速度はそんなに早くない。今から影の俺が呪文を唱えてもそれが俺の元にまで届くとは限らない。

    早く動け、動けと身体を動かそうとする──その時であった。

    八幡「冷たっ!?」

    影八幡「な、なんだ!?」

    突如、空気が凍ったように感じた。

    いや、見れば広場中の空気が、壁が、床が、本当に凍っている。

    これは、一体──?


    917 = 1 :

    お盆前に投稿しようと思っていましたが、書くのが間に合わないままお盆に入ってしまったため、少々間が空いてしまいました。
    別にめぐりのバレンタインデーのやつを書き終えたから燃え尽き症候群になったとかじゃないそんなんじゃないちょうよゆう。

    それでは書き溜めしてから、また来ます。

    918 :

    お疲れ様です

    921 :

    「氷結は終焉…せめて刹那にて砕けよ!」

    922 :

    そういや平塚先生の中の人もテイルズいたな……

    そしてやはり爪竜連牙斬は死亡フラグ

    923 :

    Side ? Yukino


    雪乃「小町さん、頼むわ」

    小町「了解です、雪乃さん!」

    影の葉山くんに対しては平塚先生と材木座くん、そして影の比企谷くんに対してはこちら側の比企谷くんが向かった。

    そして残る影の私に対しては、私自身と小町さんのふたりで当たることになる。

    影雪乃「……よくも、由比ヶ浜さんと一色さんを」

    雪乃「それはこちらのセリフでもあるのだけれど」

    こちらの由比ヶ浜さんを痛い目に合わせたツケはきちんと払ってもらわないとね。

    地面を蹴り出し、その勢いのまま剣を突き出す。

    924 = 1 :

    雪乃「はっ!」シュッ

    ユキノの ヴォーパル・ストライク!!▼

    技を使用してポゥッと光に包まれた剣を、影の私に向けて放つ。単発の突き技だ。

    影雪乃「ふっ!」バッ

    シャドウ・ユキノの スノウ・スパイク!!▼

    一瞬、冷えた空気が私の頬を撫でた。氷の魔力に包まれた影の私の一閃が、私の突き出した剣をカキンという衝撃音と同時に弾く。

    雪乃「くっ!」

    悔しいけれど、認めるしかない。

    影の私の力は、私自身よりも勝るようだ。

    真正面から打ち合っても、勝負にならない。

    影雪乃「そこよ」

    一撃を弾かれた私に立て直す余裕を与えまいと、影の私は再度剣を構え直して距離を詰めてくる。その速度は異様なまでに早く、きっとその剣は私が回避行動を取るより前に届いてしまうだろう。

    けれど、今のこれは、1対1の勝負ではない。

    925 = 1 :

    小町「てやーっ!!」

    コマチは クロスランサーを つかった!!▼

    影雪乃「うっ!?」

    私に向かって突撃してきていた影の私の横に、小町さんが勢いよく槍を突き出す。

    唐突な横槍に、影の私もさすがに体勢を崩した。

    その隙に私もすぐに立て直して、影の私へと間合いを詰めにいく。

    雪乃「はあっ!!」ヒュッ

    相手の手元を狙って剣先を向けた。目的は相手の武器を弾き落とすことだ。小町さんによる攻撃を受けた直後である今ならば、この攻撃にまで反応することは出来ないはず──。

    影雪乃「っ!!」

    しかし影の私は咄嗟に後ろに跳び退いてしまい、私の剣は地面を打った。あんな不安定な体勢から、素晴らしい反応速度だと思う。さすがは私の影、と言ったところかしら。

    926 = 1 :

    けれど、そんな無茶な回避をいつまでも続けられるわけではない。私の剣は避けられてしまったけれど、すぐに小町さんが影の私に向かって槍を構えて飛び出していった。

    小町「とおっ!!」ガキンッ!!

    影雪乃「きゃっ……!」

    小町さんの放った突き技が、影の私の胸の辺りを正確に捉えた。槍と鎧がぶつかり合い、激しい火花が散る。

    ただでさえ咄嗟の回避行動にとって不安定だった姿勢から、小町さんの突き技を真正面から受けてしまったことによってさすがの影の私と言えども耐えられなかったのか、後ろに転がっていった。

    地面に転がった相手に対して複数人で囲もうとするのはあまり褒められた戦い方ではないでしょうけど、今はそうも言っていられないわね。

    この好機を逃すわけにもいかない。すぐに私も小町さんもそれぞれの得物を構えて、倒れた影の私に向かって攻撃を加えようとする。

    雪乃「食らいなさい」

    小町「雪乃さんをボコボコにするのはちょっと心が痛みますけど許してくださいっ!!」

    私の剣と、小町さんの槍が煌く。そのまま影の私に突き刺さる──そう思った瞬間であった。

    927 = 1 :

    影雪乃「……甘いわ」パアッ

    雪乃「!?」

    シャドウ・ユキノは スノウ・バリアを つかった!!▼

    突如、影の私の地面に魔方陣が広がった。そしてぱぁっと光り輝くと同時に、影の私の周りに雪で出来た壁……まるでかまくらのようなものが現れる。

    そして私と小町さんの振り下ろした一撃は、そのかまくらのようなものに弾かれてしまった。

    小町「防御魔法……!? こんなものまで使えたんですか!?」

    影雪乃「奥の手は最後まで取っておくものよ」

    槍の一撃が弾かれ大きな隙を晒してしまった小町さんに対して、雪の壁の呪文を解いた影の私が迫る。

    雪乃「小町さん!!」

    なんとか手を打ちたかったけれど、あの雪の壁に弾かれて硬直してしまっているのは私も同じ。

    影の私の刃が、小町さんに向かって振り下ろされる。

    928 = 1 :

    影雪乃「これで、おしまいよ」ゴッ!!

    シャドウ・ユキノの ブリザード・ストライク!!▼

    小町「きゃああああああああっ!!」

    雪乃「っ!!」

    小町さんの悲鳴と、影の私の氷の一撃による衝撃音が鳴り響いた。

    あれだけの大技をまともに受けてしまった小町さんは大きく吹き飛ばされる。けれど、不幸中の幸いと言うべきか、辛うじてHPは0になっていないようね。

    とはいえ、そのHPは赤く点灯しており、とても危ない状態。あのままでは戦闘に復帰するのは危険でしょうし、アイテムで回復をしなければならない。

    そしてその間、あの影の私の相手をしなければならないのは私だ。

    小町「ううっ……すみません雪乃さん、少しお願いします……」

    影雪乃「一撃では仕留め切れなかったようね……まぁ、いいわ」

    カチャ、と再び剣を構え直す。それに対して、私も己の剣を構えた。

    私と、偽物である私の間にピリッとした緊張感が走る。

    ゲームの中の世界だというけれど、肌に走るこの圧力はまるで元いた世界で感じるものよりよほど鋭いように思えた。

    929 = 1 :

    影雪乃「はっ!!」

    先に床を蹴り駆け出してきたのは向こう側からであった。

    その鋭い刃を横薙ぎに繰り出してくる。私はそれを剣の腹で受け止めると、キィンと火花が散って腕に衝撃が伝わった。

    それで終わりではない。剣を弾くと、相手の防御の薄そうなところに向けて剣を振るう。しかしすぐに反応されてしまい、私の一撃は空を切った。

    だけど、元から避けられると踏んでいた私はすぐに剣を引いて二撃目を繰り出す。影の私の身体を捉えたと思ったけど、その二撃目は剣で受け止められてしまった。

    甲高い金属音が鳴り響く。それから私と私の間で動きを読み合い、そして少しでも先の一手を撃とうと剣を打ち合う。キン、キン、と、互いに攻撃を仕掛け、それを迎え撃ち、反撃を試みればそれに対してまた反応が返される。

    読み合いで劣っているとは思わない。けれど──単純なパワーと、そしてスピードという面に置いて、影の私は少しばかり私の上を行っていた。

    影雪乃「ふっ!」ガキィン!!

    雪乃「くっ!!」

    私の意識の薄かったところに、容赦ない一撃がやってきた。辛うじて反射的にそれを受け止めることは出来たけれど、今のはとても危なかった。

    930 = 1 :

    正直に言って、押されてきている。小町さんが復帰するまでにはまだ少々時間が要るでしょう。その時、私が入れ替わりでHPを回復しなければならない状況になっていたら今度は小町さんひとりにあれの対処を頼まなければならない。

    自分のことを褒める事に繋がるかも知れないけれど、さすがに小町さんひとりでは厳しい相手でしょう。

    私はある程度HPに余裕を持たせたまま小町さんが復帰するまで時間を稼がないと、再び2体1の状況に持ち込めない。

    けれど──

    影雪乃「これでどうかしら」キンッ キンッ ガキンッ!!

    雪乃「くううっ!」

    段々と、影の私の振るう剣の速度が増しているように感じた。必死にその猛攻に対応しようとはするけれど、先ほどまでにより明らかに追いつかなくなってきている。

    影雪乃「そこよ!」ヒュッ!

    雪乃「きゃっ!」

    そしてとうとう、一突きが私の胸の真ん中辺りに直撃してしまった。ザザッと後ろに押されてしまう。ステータスを見れば、HPがガクンと減っていた。

    だめ、このままでは……。

    931 = 1 :

    影雪乃「……あなたでは、私には勝てないわ」

    雪乃「な……」

    冷たく言い放たれたその声に顔を上げると、影の私がまるで見下すかのような目線を向けていた。

    影雪乃「他の仲間を守れないまま、己の無力さを知るといいわ」

    その目線がちらりと別の方向へ向かう。その先にいるのは小町さんだ。

    雪乃「……これ以上、私の仲間たちを失うわけにはいかないわ」

    先ほどの、由比ヶ浜さんが倒れてしまった時のことがフラッシュバックされた。

    二度と私の無力さが原因で誰かが倒れるなんてことはあってはならない。

    こんなところで、諦めるわけにはいかないわ……。

    影雪乃「そう、けれど現実は非情よ。それを私が教えてあげるわ」

    タンと地面を蹴る音がした。同時に、影の私が突風の如くこちらに突っ込んでくる。

    力及ばないかもしれない。それでも、ここで退くわけにも、負けるわけにもいかない!

    932 = 1 :

    立ち上がって剣を構え直し、その突進を真正面から受け止めようとした。

    その時。

    戸塚「暴風、吹き荒れて! テンペスト!!」ゴウッ!!!

    サイカは テンペストを となえた!▼

    辺り一面に、黄緑色の魔方陣が広がった。これは、戸塚くんの──?

    そして次の瞬間、ゴウッと巨大な竜巻が周りに吹き荒れた。

    影雪乃「きゃあっ!?」

    小町「わわっ、戸塚さんすっごい!!」

    戸塚「ぼくだって……みんなの役に立ちたいんだ!」

    そういえば先ほどから戸塚くんの呪文が飛んできていなかったけれど、これの詠唱に取り掛かっていたのでしょう。

    それにしても、戸塚くんもいつの間にこれほどの強力な魔法を習得していたのね。

    933 = 1 :

    突然の嵐に、影の私もその動きを止めている。

    絶好の機会だ。きっと、影の私もさほど体力はないでしょうから……。

    一撃で、決めにいく。

    ユキノは おうぎをつかった!▼

    雪乃「凍てつきなさい──」

    周りに、雪の結晶が舞う。

    空気が冷え、そして水色の魔方陣が広がった。


    雪乃「──エターナルフォースブリザード!!」


    瞬間、広場中の気圧が氷結する。パキパキという音と共に天井から床、果ては壁までもが氷に包まれていく。

    影雪乃「これは──!?」

    暴風の中に捕らわれていた影の私も、つららのような氷の中に閉じ込められる。

    雪乃「はあああああっ!!」

    叫びながら、さらに奥義の出力を上げていく。もっと、もっと凍りつくす。

    ──全てを出し尽くしたと、そう思った時。

    私たちがいた広場一帯が、氷の部屋と化していた。



    934 = 1 :

    今更だけど、なんで俺ガイルSSを書いてるのに戦闘描写で頭を抱える羽目になってるんだろう……。
    正直自分の文章力の無さに泣きたくなってますけど、まだ当分続くっぽいです。よろしくお願いします。

    それでは書き溜めしてから、また来ます。

    936 :


    生きることは戦いだから仕方ない

    937 :

    >雪乃「──エターナルフォースブリザード!!」

    どこぞのアラサーと中二がとても良い笑顔で肩を叩いてくれそうな名前ですね

    941 :

    乙です、今年は夏が短かったですね〜
    ひたむきに支援してます

    942 :

    Side - Hachiman


    八幡「……雪ノ下か!?」

    一瞬にして広場中が凍り付いてしまった。

    その氷の波動に、先ほどまで前にいた影の俺まで巻きこまれてしまっている。

    こんな芸当が出来るのはあいつしかいないだろう。

    見たところ影の俺も凍り付いているようなので、そこから注意を逸らして雪ノ下の方を振り返る。

    雪乃「……これで、おしまいかしら」

    小町「す、すごいです雪乃さん!!」

    材木座「聞いたことがある……一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させるという禁断の奥義! エターナルフォースブリザード! 相手は死ぬ!」

    平塚「これからがいいところだったというのに……」

    そちらの方を見やれば、剣を鞘にしまい込んでいる雪ノ下と、その周りに小町たちの姿が見えた。

    そしてその前には大きなつららのようなものがそびえ立っている。その中には影の雪ノ下、さらに俺の影と同様に巻き込まれたのか、影の葉山までが氷の中に閉じ込められていた。

    おいおい、まさかあいつ、3人のボスキャラを同時に仕留めたってことになるのか……? どんだけ強いんだよ、エターナルフォースブリザード。さすがは誰もが考える最強必殺奥義。相手は死ぬ。

    しかしこれだけヤバい奥義ですら、あの魔王・陽乃さんには通用しなかったのだ。

    無論あの時よりだいぶレベルは上がっているとはいえ、じゃあ今ならあの陽乃さんに通用するかと思えるかといえば、いまいちそんなビジョンが思い浮かべられない。

    果たして、あの魔王に勝つことは出来るのだろうか。

    ……いや、まだまだ陽乃さんと戦うまでには猶予があるはず。今は、ここのボスを倒せたことを喜ぶべきでは──じゃない!

    943 = 1 :

    八幡「そうだ、あいつは……」

    影の俺たちとの連戦だったのですっかり忘れていたが、このダンジョンのボスは影の俺たち自体ではなく、それを呼び出していたシャドウとかいう奴だったはずだ。

    そのボスの姿を捜して、あいつがいたはずの上空を見上げると。

    八幡「……うわーお」

    シャドウ「…………」

    なんということでしょう、そこにはカッチカチに凍りついたボスの姿があるではありませんか。

    どうやら宙に浮いていたはずのシャドウまでもが、雪ノ下の奥義に巻き込まれていたらしい。

    いや、本当にすげぇなこれ……。もうこれからのダンジョン全部エターナルフォースブリザードだけで突破しようぜ。そんなに連発出来なさそうだけど。

    しかしまぁ、見たところボスも巻き添えとはいえ倒せてしまっているみたいだな。

    とりあえずボス戦を終えられたことに安堵のため息をついていると、ゴゴゴゴゴゴゴと地響きが聞こえてきた。

    八幡「な、なんだ?」

    戸塚「あ、見て!」

    いつの間にかこちらに近付いてきていた戸塚が指差した方を見てみると、崖の方に橋のようなものが出来ていた。

    なるほど、ボスを倒したから元に戻ったのか。なんというゲーム的ご都合主義。まぁ今更だが。

    944 = 1 :

    戸塚「ぼく、川崎さんのところに行ってくるよ!」

    八幡「頼む。材木座、お前も戸塚と一緒に川崎の援護に回ってくれ」

    材木座「うむ、承知した」

    平塚「私も行こう」

    橋を渡って川崎と留美の救出に向かった戸塚たちを軽く見送ると、俺は後ろの方を振り返る。

    ボス戦はなんとか終えることが出来たものの、無事というわけではない。

    いろは「雪ノ下先輩、大丈夫ですかー?」

    雪乃「私は大丈夫よ。それより由比ヶ浜さんは……」

    ボス戦は終わったが、無事というわけではない。

    戦闘の最中で、由比ヶ浜のHPは0になってしまっているのである。

    HP0の瀕死状態から元に戻るためには蘇生アイテム『復活の薬』を使用しなければならない。

    その『復活の薬』を使用すれば、HPが0になっても復活することは出来る。

    だがしかし、問題はその『復活の薬』の使用条件にある。

    ……お忘れの方も多いと思うので、一応説明しておこう。

    対象が瀕死状態であり、口を動かせないからという性質のせいなのかどうかは知らんが、その飴状の薬を飲ませるには誰かが口移しで飲ませなければならないというのだ。

    そして前回のダンジョンにおいて、雪ノ下が瀕死状態になった際、俺がその薬を飲ませる役を請け負った。

    945 = 1 :

    さて、ここで問題がふたつ。

    一つ目は、今瀕死状態になってしまった由比ヶ浜に誰が薬を飲ませるか。

    二つ目は、

    雪乃「由比ヶ浜さん! ……やはり返事はしないのね。小町さん、確かこういった状態に使える薬があったわよね?」

    小町「い、一応……まぁ……あ、あはは……」

    雪乃「?」

    そのことを、どうやって雪ノ下に説明するか……である。

    前回瀕死状態だった雪ノ下は、このアイテムの使用方法を知らない。

    これから由比ヶ浜に『復活の薬』を使用するのであれば、それはつまり雪ノ下に……前回、どうやって雪ノ下に飲ませたのかまで説明する必要も出てくるだろう。おそらくは、きっと俺がやったということまで。

    本当は雪ノ下も川崎の救助に行ってくれれば良かったのだが、あれどう見ても由比ヶ浜の側から離れそうにないし、事情を話さないで離れてくれるとも思わない。

    小町「あ、あう……」

    いろは「あ、あー……」

    雪乃「小町さん? 一色さん?」

    見れば、小町が助けを求めるような視線を俺に向けている。一色も気まずそうな表情でお茶を濁していた。おそらく俺と同じようなことを考えているのだろう。

    ……仕方がない。由比ヶ浜にアイテムを使わねばどうしようもないし、どうせいつかは話そうとは思っていたわけだし。

    それに材木座たちが戻ってくるとまた面倒だ。誰が由比ヶ浜に飲ませるにしろ、見られてぎゃあぎゃあ騒がれてもあれだし。

    腹、括るか。

    946 = 1 :

    八幡「雪ノ下」

    俺の呼びかけに、雪ノ下は何かしら? と言いながら振り向いた。

    と同時に、小町と一色もやや驚いたような表情を浮かべながら俺の方に振り向く。

    八幡「あー……、これが由比ヶ浜の瀕死状態を治せるアイテムだ」

    言いながら四次元ストレージから『復活の薬』を取り出した。中に飴のようなものが入っている瓶を雪ノ下に対して見せ付ける。

    雪乃「そう、なら早速由比ヶ浜さんに」

    八幡「だが、これを使うにはちょっと面倒な条件があってな」

    説明を続けながら、俺は雪ノ下や由比ヶ浜の近くにまで寄った。

    八幡「このアイテムは飴みたいな形をしてる。でも、今の由比ヶ浜は瀕死状態だから動けない。だからこれを飲み込むことが出来ないんだ」

    雪乃「そうなの……なら、私の時はどうやって使ったの?」

    まぁ、当然の疑問だよな。前回のボス戦で雪ノ下が倒れてしまった時には、アイテムを使って蘇生したとしか伝えていない。口移しをした云々に関しては説明していないのだ。

    少々間を置いてから、俺は説明に入る。

    八幡「……口移しだ」

    雪乃「は?」

    八幡「このアイテムは、口移しで相手に飲ませる必要がある。誰かがやってな」

    雪ノ下は何を言ってるのか分からないという困惑の表情を浮かべて首を捻った。当然の反応だと思う。俺たちも最初そのことを知った時は似たような反応をしていたはずだろうから。

    さすがに信じられなかったのか、俺から薬を受け取ると、アイテムの説明文を確認し始める。

    しかし広がったウィンドウに書かれていることは、たった今俺が説明したことと変わりないものであるはずだ。

    947 = 1 :

    雪乃「……本当なのね」

    やはりそうだったのか、テキストを読み終えた雪ノ下ははぁとため息をつきながらウィンドウを閉じた。

    そして、はっと何かに気付いたように目を見開いた。

    俺も反射的に、雪ノ下が何に思い当たったのか、それに気付いてしまう。

    雪乃「……なら……私が倒れてしまった時……一体誰が……」

    八幡「……」

    ……そりゃ、気付くよな。気付いてしまうよな。

    言いたくねぇなぁ。

    だが、そういうわけにもいかないことは理解している。

    仕方がない場面であったのは確かだ。しかしだからと言って──例えゲームの中の世界であろうとも──まぁ、その? 口付けをしてしまったのは事実なわけで。

    それを黙っているわけにもいかないだろう。

    意を決して、俺は再び口を開いた。

    八幡「──俺だ」

    雪乃「……っ」

    一瞬、雪ノ下の表情が強張る。そして鋭い視線を俺に真っ直ぐに向けてきた。

    その目を見返すことが出来ず、思わず視線を逸らして身を捩ってしまう。今の雪ノ下と目を合わせられる自信がなかった。

    雪乃「……そう」

    しばらく沈黙を挟んでから、雪ノ下が短くそう答えた。そしてその視線は俺から由比ヶ浜へと移る。

    近くにいた小町と一色はうろうろとしているだけで、どうしたらいいか分からないようにしていた。

    948 = 1 :

    八幡「黙っていて悪かった」

    雪乃「……仕方がなかったのよね」

    八幡「え?」

    雪乃「仕方がなかった……のなら、仕方ないでしょう」

    八幡「あ、ああ……」

    日本語としては少々おかしいような気はしたが、野暮な突っ込みを入れることもなく同調する。

    雪乃「……今はそのことは置いておきましょう。由比ヶ浜さんを助けることが優先だわ」

    八幡「あ、ああ……そうだな」

    予想していたよりあっけなく流されてしまい、肩透かしを食らってしまったような感覚に陥った。……まぁ、今はと言っていたし、後で話があるのだろうけども。

    とりあえず由比ヶ浜を助けることが最優先なのは俺も同意だ。川崎たちの方から聞こえてくる戦闘音も徐々に収まってきた。そろそろ戻ってきてもおかしくない。

    しかし、まだ問題は残っている。

    由比ヶ浜に誰がこの『復活の薬』を飲ませるのかというものだ。

    八幡「じゃあ……誰が由比ヶ浜にそれを飲ませるかだが──」

    雪乃「あなたがやりなさい」

    八幡「──は?」

    言い終える前に、雪ノ下の声が遮った。

    一瞬呆気に取られ、そして少し遅れてから雪ノ下の発した言葉の意味を理解しようとする。

    ──あなたがやりなさい。

    無理。理解出来なかった。

    949 = 1 :

    八幡「は? いや、お前何を言って」

    仮に俺がやりそうな流れになったとしても、一番反対しそうだと考えていた雪ノ下から推してくるとは思ってもみなかった。

    あなたに由比ヶ浜さんを任せるわけにはいかない、私がやるわ! がちゆり! みたいな流れを予想していたのに……。

    雪乃「……一度、経験したことがある人がやった方がいいでしょう」

    いや、技術的な要素は特にないんだから、経験云々はあまり関係ないような……。

    八幡「や、その、雪ノ下は」

    小町「いいからちゃっちゃとやっちゃいなよお兄ちゃん、雪乃さんの時には鼻息荒げながらむしゃぶりついてたくせに」

    八幡「最悪の誤解だ!!!」

    雪乃「…………あなた、人の意識がないことをいいことに、私に何をしたのかしら」

    八幡「待ってくれ!! 小町が適当言ってるだけだ!」

    雪ノ下が自分の身体を抱くようにしながら一歩後ずさって、まるで汚物を見るかのような冷たい視線を俺にくれてやがった。待ってくれ、俺は悪くない。小町が悪い。普通に。

    ……だが、まぁ今ので少し張り詰めていた空気が弛緩したような気がする。ちょっと助かった。やり方は選んで欲しかったけど。

    950 = 1 :

    八幡「……仕方ねぇな」

    いろは「あれ、今回は割とすんなり行くんですね」

    八幡「二回目だし……なによりあいつらが帰ってくる前に終わらせたい」

    とうとう川崎たちの方の戦闘音が鳴り止んだ。となれば、ここに戻ってくるのも時間の問題だろう。

    さすがに材木座とか留美たちの前でする羽目になるのだけは御免だ。それだけは絶対に避けたい。

    由比ヶ浜の側に寄り、しゃがみこむ。目を閉じたまま動かない由比ヶ浜からは、いつもの騒々しさの欠片も感じなかった。

    雪乃「……言っておくけれど、必要なこと以外の変なことを由比ヶ浜さんにやったら絶対に許さないわよ」

    八幡「しねぇよ!」

    雪ノ下から手渡しされたアイテムを受け取りながら反論する。まさかこいつ、他の奴もいる場で俺がそんなことをする可能性があると思っているのではないだろうか。あるわけがない。ちなみに他に誰もいなくても当然そんなことはしない。

    薬を受け取ってから由比ヶ浜の顔を見ると、自然とその唇に視線が行ってしまう。もしもこの世界がゲームの中でなければ、きっと鼓動がすごい勢いになっていたに違いないだろう。

    雪乃「……川崎さん達も戻ってきているわ。私たちが壁になるから、早いところ済ませなさい」

    八幡「お、おう……」

    言うと、雪ノ下は小町と一色と一緒に立ち上がって、戻ってくる川崎たちから俺と由比ヶ浜の姿が見えないようにする位置に並ぶ。

    ……まぁ、色々思うことはあるが、これ以外に選択肢はない。後で死ぬほど謝り倒す他あるまい。

    瓶の蓋を開けると、中に入っていた飴のようなものを素早く口の中に放り込む。

    そして──



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