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    元スレ八幡「俺ガイルRPG?」

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    501 = 1 :

    八幡「……どうした?」

    結衣「ヒヒヒ、ヒッキー、こ、これを見て」

    思わず声を掛けると、ようやく動き出した由比ヶ浜は何故か顔を赤らめながら瓶を俺に手渡してきた。

    なんだなんだと思いながらそれを受け取り、そしてウィンドウを開いた。

    ふっかつのくすり▼

    ひんし じょうたいから たいりょくを ぜんかいふくする▼

    しようするには くちうつしで たいしょうにたべさせる▼

    八幡「……」

    目をごしごしとこすって、もう一度そのテキストを読み返した。

    しかしその内容に変わりはなく、ただそう書いてあるだけだった。

    502 = 1 :

    小町「なになにどしたの……わっ、これは……」

    いろは「わわわ、口移しですか?」

    平塚「な、なんだと……!?」

    戸塚「す、すごいね、なんだか……」

    他のメンバーも横からそれを除き見ると、それぞれリアクションを取っていた。

    ……なんで、なんで蘇生アイテムを使うのに口移ししなくちゃならないんですかね。

    結衣「ね、ヒッキー……どうしよ?」

    あははと、無理矢理浮かべたような愛想笑いをしながら由比ヶ浜がこちらにそう話を振ってきた。

    ……いや、俺が知るかよ。


    陽乃「へくちっ。ううっ、なんか面白いものを見逃した気がする……」

    503 = 1 :

    息抜きと称して他のSSばっか書いてそうに見えるかもしれないですが、一応あくまでメインはここです。はい。

    書き溜めしてから、また来ます。

    504 :

    先生と姉のんの距離感難しいねこれ

    505 :



    ラブコメの予感

    506 :

    百合ヶ浜が百合の下にやればいいだけじゃね

    507 :



        ×  ×  ×


    八幡「……さて、どうするか」

    由比ヶ浜の膝枕の上で意識を失っている雪ノ下を見下ろしながら、俺はそう切り出した。

    現在雪ノ下のHPは0になっており、瀕死状態となっている。

    話しかけても、体を揺すっても一切反応が無い。

    これで口付けしないと起きないとか、まるで白雪姫である。雪ノ下だけに。

    もしこれで俺が死んでいたのなら、マジで死んだゾンビを扱うが如く投げ捨てられていただろう。……ほんと、陽乃さんの時スキルで死んでなくてよかった。

    508 = 1 :

    結衣「え、えーと……口移しって……」

    由比ヶ浜結衣は、あははと愛想笑いを浮かべながら膝に乗せている雪ノ下の顔を見つめた。

    その口元には……そこで俺は目を逸らした。変に意識してしまって仕方が無い。

    平塚「…………」

    平塚静は目を瞑り、腕を組んでどんと立っていた。……よく見ると肩とかがぷるぷる震えている。あの、先生? 一応彼氏いたことあるんですよね? キスくらい経験ありますよね?

    戸塚「あ、あはは……どうしようね?」

    戸塚彩加は、由比ヶ浜のように愛想笑いを浮かべてどうしようかとこちらに目線を向けてきた。ふと、戸塚の唇に視線がいってしまう……もう、間違ってもいいかな?

    いろは「えーと、これどうするんでしょうかね……」

    一色いろはも、またどうしましょうという視線を俺に向けてきた。いや、だから俺に振られても困るんだが……。

    このだだっ広い部屋に沈黙が漂う。

    先ほど陽乃さんが来襲したときの緊張感溢れる沈黙とは違い、どうすればいいのか分からない気まずい沈黙だ。

    小町「そーですねー、まぁ雪乃さんも女の人ですしー」

    しばらくどうすればいいのか考える振りをしていると、小町の間延びした声がその沈黙を破った。

    なんか思いついたのかと小町を見ると、小町もまた俺の方を見ていた。

    509 = 1 :

    小町「お兄ちゃんがやっちゃえばいいんじゃない?」

    八幡「アホか」

    だが俺はそれを一言に断って、妹の頭にチョップを食らわせた。

    正直、小町がそうからかってくるのは予想済みだ。

    ここにいる男は俺一人だし、いつも変な気を回してくる小町がどうこうしてくるのは目に見えている。

    ……あっ、戸塚もいたわ。

    小町「えー、お兄ちゃんここはチャンスでしょチャンスー」

    だが、小町はしつこく俺の手を掴んでぶんぶんと振り回す。

    八幡「あのな……」

    小町の手を振り払って、それから目を背けた。

    すると、一色と由比ヶ浜がこちらを向いていることに気がついた。

    510 = 1 :

    八幡「……どうした」

    いろは「……いえ、先輩だったら喜んで雪ノ下先輩にぶっちゅーってやると思いまして」

    ぶっちゅーってなんだよ、ぶっちゅーって。その言い方古くない? 平塚先生が言うならまだ分かるんだけど。

    結衣「……」

    で、由比ヶ浜の方はマンボウのように頬をぷっくりと膨らませたまま俺のことを睨んできていた。

    心なしか顔が赤く見える。

    ゲームなのにほんとこういう細かい表現しっかりしてるな。いや本当にゲームなのか知らんけど。このやり取り何回目だよ。

    結衣「……ヒッキー」

    八幡「……なんだよ」

    少しの間、俺のことを睨み続けていた由比ヶ浜がようやく口を開いた。

    名前を呼んでから、しばらくもごもごと口を動かしていたが、突如何かを決めたように顔を上げる。


    結衣「ヒッキー、ゆきのんに……してあげて」

    511 = 1 :



    八幡「……は、なんだって?」

    由比ヶ浜が言っている言葉が理解できず、思わず聞き返してしまった。

    別にどこぞの難聴ではない。言葉はしっかり聞こえていた。

    だが、その上で理解できずに聞き返してしまったのだ。

    結衣「だ、だから……ヒッキーがやってあげてって言ってるの!」

    顔を赤くし、目を見開きながらそう大声で叫ばれた。

    いや、言われ直してもやっぱり意味がわからない。

    八幡「……なんで俺がやるんだよ、お前がやればいいだろ、百合ヶ浜」

    結衣「ゆ、ゆり……? や、でもほら、あたし達……女の子、どうしだし……」

    胸の前で人差し指どうしをつきあわせ、由比ヶ浜はぼそぼそと呟いた。

    ばかねぇ、あんた。女の子どうしだからいいんじゃないの! ほら、ユキ×ユイとかあると思わない? 考えるだけで、こう、なにかがこみ上げてきますよ。

    512 = 1 :

    八幡「……じゃあ、平塚先生とかどうすか。人口呼吸のやり方とか教師なら知ってるでしょ」

    平塚「は、はぁ!?」

    何故か、話を振られた平塚先生はあたふたしていた。

    八幡「生徒のピンチですよ、ほら先生出番です出番」

    平塚「あっいや……そりゃ生徒のピンチを助ける教師には憧れるがな……」

    だが、平塚先生にしては珍しく歯切れが悪い。

    こちらとしては平塚先生にやってもらうのが一番収まりがいいと考えているのだが。

    平塚「……いや、私も比企谷がやるべきじゃないかと思うよ」

    八幡「はぁ!?」

    なんと、まさか平塚先生までが由比ヶ浜サイドについてしまった。おいあんた教師だろ。

    八幡「何考えてるんですか」

    平塚「あまり私が口を出すべき場面ではないと思うのでな。タバコを吸ってくるので、私は席を外そう」

    八幡「えっちょっ」

    平塚先生はそう言うと、タバコを加えながら手を振りそのまま部屋の出口の方へ向かっていってしまった。

    513 = 1 :

    後には、俺、由比ヶ浜、小町、一色、戸塚が残される。

    再び気まずい沈黙がやってきた。

    しかしこのままでは埒が明かないのは確かだ。雪ノ下をこのまま放置するわけにもいかないし。

    誰かがやらなくてはならない。

    平塚先生がやるのが一番、そうでなければ由比ヶ浜がやればいいのにと思っていたが、何故かこの二人が揃って俺に押し付けようとしている。

    八幡「……なぁ、由比ヶ浜。頼めないか?」

    一応、確認するようにもう一度由比ヶ浜にそう言った。

    しかし由比ヶ浜は首をぶんぶんと振ると、いつもより真面目な顔で俺の方を向く。

    結衣「駄目だよ……ゆきのんもさ……ヒッキーの……方が……」

    最後の方は声が小さすぎて聞き取れなかったが、断られたのだけは分かった。

    百合ヶ浜もとい由比ヶ浜さんがやってくれりゃ誰もが納得してくれると思うんだけどなー。

    しかし由比ヶ浜の決意は固そうだし、仕方が無いので他に頼むしかあるまい。

    そう考えて、周りを見渡した。

    514 = 1 :

    八幡「……」

    戸塚「八幡?」

    戸塚は──こんなんでも一応、男の子だ。さすがに任せるのはマズかろう。

    いろは「……先輩?」

    一色は頼まれてくれるだろうか?

    平塚先生はどっか行っちゃったし、由比ヶ浜はああだし、戸塚に任せるのはマズいし、小町は俺がやらせねぇとすると、他に候補が一色しかいない。

    駄目元で一色に頼んでみることにした。

    八幡「なぁ、一色。お前が」

    いろは「お断りします」

    言い終わる前に断られた。せめて話は最後まで聞け。

    八幡「……やっぱ、女どうしじゃ抵抗あるか」

    いろは「まぁ、それもありますけど……」

    一色はもじもじと指をあわせると、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

    いろは「……あたしも、先輩がやった方がいいって思いますから」

    八幡「……」

    一色も、由比ヶ浜サイドについてしまった。

    515 = 1 :

    戸塚はかなりばつが悪そうにしているが、特に何か言い出そうとする様子ではなかった。

    小町「んー、満場一致ですねー。じゃ、ほらほらお兄ちゃん」

    八幡「しゃーねぇな……葉山たちが着くのを待つか」

    小町「なんでそうなるの!?」

    いや、だって、ほらねぇ?

    俺に口付けされるとか、さすがに雪ノ下さん怒るでしょ……と後ろ頭を掻きながらパーティメンバーを見てみる。

    八幡「……げっ」

    すると由比ヶ浜、一色、小町が、俺が思わず後ずさりしてしまうほど怖い目でこちらを睨んできていた。

    小町「はぁ……ヘタレとは思ってたけど……ここまでとは」

    いろは「ちょっと、葉山先輩にはやらせませんよ」

    結衣「……………………」

    中でも由比ヶ浜がダントツで怖い。

    その由比ヶ浜が、ポツリと声を漏らした。

    516 = 1 :

    結衣「ヒッキーはさ、いいの?」

    八幡「なにがだよ」

    結衣「ゆきのんと……隼人くんがさ、キスをしても」

    八幡「いや、キスってわけじゃ……」

    ふと、雪ノ下と葉山が口付けを交わす妄想が脳裏を掠める。

    美男子と美少女の口付け。

    それはもう、絵に飾っても様になるような光景だろう。

    八幡「……」

    だが、どうしてか。


    自分の胸が、一瞬ざわつくのを感じてしまった。


    小町「……お兄ちゃん? なんか怖い顔してるよ」

    八幡「へ? ああ、悪い」

    言われて、つい自分の顔の筋肉が強張っていたことに気が付いた。

    別に怖い顔とか、そんなのをしたつもりはなかったのだが。

    517 = 1 :

    はぁと小町が大きいため息をつく。

    小町「そんなに他の人にやらせたくないなら、お兄ちゃんがやればいいのに……」

    八幡「いや別にやらせたくないとか、そんなんじゃ」

    小町「はいはーい、もういいから。人命救助なんだから仕方ないと割り切って」

    そう言って、小町は強引に蘇生アイテムの入った瓶を俺に押し付けてきた。

    八幡「……」

    結衣「……」

    いろは「……」

    由比ヶ浜と一色が、ジト目とも睨みともつかない目で俺の方を見ていた。

    …………はぁ。

    518 = 1 :

    八幡「……人命救助だからな、仕方なくだぞ」

    そう自分に言い聞かせるように、言い訳を口にしながら瓶の蓋を開けた。

    ポンっと、軽快な音が鳴る。

    八幡「……」

    その中にある飴を取り出して、それを眺めた。

    ……全部お前が悪いんだからな。

    結衣「ヒッキー……」

    八幡「……ていうか、お前らここにいる必要なくね? 出来れば見て欲しくないんだが……」

    結衣「え? ああうん、ごめんね気が利かなくて」

    由比ヶ浜はそうあたふたしながら言うと、膝に乗せていた雪ノ下を俺に渡してきた。

    小町「えー! 小町は見てたいけど」

    八幡「アホ。悪い由比ヶ浜、小町を連れていってくれ」

    結衣「あ、あはは……ごめんね小町ちゃん、あたし達はちょっと出ていこ?」

    小町「お兄ちゃんのばかーっ! へたれーっ! 八幡!」

    いや、なんで俺の名前を悪口のように言うんですかね?

    519 = 1 :

    いろは「……」

    戸塚「じゃ、じゃあぼくたちも外にいるね」

    八幡「ああ」

    一色と戸塚も最後に一瞥すると、由比ヶ浜についていって部屋から出て行った。

    このだだっ広い部屋に、俺と意識のない雪ノ下だけが残される。

    八幡「……はぁ」

    雪乃「……」

    ……もう、あれこれ考えるのをやめよう。

    そうだ、仕方ないんだ。これは人命救助。人口呼吸とかと一緒。

    そう頭の中で言い訳を続けながら、俺は飴を自分の口に放り込んだ。

    そして──


    520 = 1 :



        ×  ×  ×


    雪乃「……ここは」

    結衣「あっゆきのんが起きた!」

    ……しばらく経って、雪ノ下が意識を取り戻したのか、由比ヶ浜の声が聞こえてきた。

    ちなみに俺は部屋の端で体育座りをしながら顔を膝に埋めているので、その光景は見えていない。

    小町「お兄ちゃーん、雪乃さん起きたよー!」

    八幡「……」

    ……。

    521 = 1 :

    小町「ちょっと? お兄ちゃん?」

    俺の側にまでやってきた小町が、肩をゆらゆらと揺らしてきた。

    八幡「……いや、そのほっておいてくれない?」

    小町「そういうわけにもいかないでしょ、ほら行くよ」

    八幡「あっおい」

    小町に無理矢理手を引かれ、雪ノ下たちが集まっているところへ連れて行かれる。

    ふと、その中心にいる雪ノ下と目があった。

    雪乃「……どうしたのかしら?」

    八幡「……なんでも」

    思わず、雪ノ下の口元に視線が行ってしまった。

    ……死にたい。

    522 = 1 :

    感謝のやっはろーの方が完結しましたので、そちらの方もよろしくお願いします。

    それでは書き溜めしてから、また来ます。

    523 :

    おちんぽ

    524 :

    当面の脅威は去ったんだからまず街に戻って教会みたいな別の復活手段がないかを探ってから
    それでもなければようやく使う、みたいな先延ばしの流れになるかと思ったがそんなことはなかったぜ。

    525 :

    無理やりすぎない?

    両想いの恋人なら分かる気がするけど
    口付けを男にしろっていうのはちょっと…

    526 :

    しゃぶれよ

    527 :

    三浦の相手は誰だろ

    528 :


    >>527
    すまん・・・俺なんだ。すまん

    529 :

    乙乙
    ゆきのんにこっそりヒッキーが口付けしたよって伝えたい

    530 :

    いや、ここは黙っておいてゆきのんが復活の薬を使う機会に使用法を見て
    私の時は誰がしたの?ってなってからの八幡が生きてたらそれはそれで良いし
    八幡が死んでたらゆきのんに口実もできるし、顔を赤らめながら借りを返さないと的な言い訳をまくし立てるゆきのん、アリじゃね?
    どちらにしても、羞恥を煽れるんじゃなかろうか

    531 :

    長文ウザイから
    いちいち蒸し返すな

    532 :

    予測とかやめろ

    533 :

    ヒッキーにやらす必要なかったよね

    534 :



        ×  ×  ×


    平塚「見つけたぞ、これが葉山の言っていた魔王への攻略に役に立つアイテムというやつだろう」

    しばらくどこかに行っていた平塚先生が、何かアイテムを手に持ったまま帰ってきた。

    そういえばすっかり忘れていたが、元々このダンジョンにやってきた目的はその対陽乃さん用のアイテムとやらを回収するためだったな……。

    平塚「この部屋の奥に隠し部屋があってな、そこの宝箱の中に入っていたよ」

    八幡「一人でトレジャーハンターやってきたんですか……で、一体どんなアイテムなんですか」

    俺がそう尋ねると、平塚先生はそのアイテムを投げて渡してきたのでそれを受け取る。

    それはスイッチのついた箱のような物だった。

    535 = 1 :

    その箱のようなものの説明を見るためにウィンドウを開く。

    アイテムせつめい▼

    なまえ:タイムストップ▼

    すこしのあいだ、あいてのじかんをとめる すごいスイッチだ!▼

    一度つかうと、きえてしまう▼

    八幡「時間停止アイテム……?」

    ゲームでも時間停止系のアイテムや呪文というのはたまに見かけるが、相手の身動きなどを全て止めるという性質から極めて強力であり、そして大抵の場合貴重なアイテムだったり払うコストが大きかったりする。

    なるほど、ラスボスを倒して手に入れた甲斐はありそうな強力なアイテムだ。時よ止まれ! ザ・ワールド!

    とはいえ、説明にも書いてある通り一度使い切りのアイテムのようだ。これは確かに、ラスボスになると思われる陽乃さん戦まで取っておくのがいいだろう。まぁ俺は取っておいたエリクサーを肝心のラスボス戦で使わないで、後から使ってなかったことに気が付くタイプなんですけどね。

    536 = 1 :

    平塚「時を止めるとは、まさにラスボス戦での必殺技に相応しいじゃないか。ところでどれだけの間、時を止められるのだろうな」ドドドドドドドドド

    説明には少しの間としか書かれておらず、具体的な時間は書かれていない。血とか吸ってないけど9秒間くらい止まるかなぁ……。

    まぁ、何分も止められると期待はしない方がいいだろう。そう適当に考えながらそのスイッチを四次元ストレージに放り込んだ。……四次元に干渉出来るなら普段から時を止められてもいいだろうに。

    結衣「あっ、隼人くん達だ」

    由比ヶ浜の声に振り返ってみると、部屋の入り口に葉山たちのパーティがやってきていた。

    しかし、その葉山たちの雰囲気は暗い。

    葉山「すまない……随分と遅れた」

    八幡「……災難だったな」

    まぁ、さすがに陽乃さんと戦闘になっていたのならば仕方があるまい。俺たちもあの陽乃さんの強さは身をもって知っているので、あまり責めづらいというのが本音だ。

    537 = 1 :

    軽く葉山たちの面子を見渡してみる。

    戸部ら3バカはどうでもいいとして、海老名さんはいつもよりやや無理に笑顔を浮かべている印象を受けた。そして三浦は……なんでか、顔真っ赤。

    ──隼人たちもさー、雪乃ちゃんと一緒であんまり強くなくてさ。あの金髪の子? のHPを0にしてあげたらそれだけでパーティがガタガタになっちゃってて。

    ふと、陽乃さんの台詞が脳裏を駆け巡った。

    ……HP0、復活の薬、ちょっと気まずそうな海老名さん、顔を真っ赤にしたままの三浦、そして葉山。

    あっ。(察し)

    しかし雪ノ下が……された記憶がないということは、三浦も同じようにその時の記憶はないはずだろう。

    なのに顔を林檎のように赤くしているということは、復活の薬の使用方法を知っていた?

    いや、それはあまり三浦のイメージに合わないな。

    だとしたら……葉山、まさか伝えたのか……?

    あいつ男かよ、やるなぁ。

    ちなみに雪ノ下には瀕死状態になってから復活の薬を使って蘇生させたことまでは説明したのだが、その経緯については何の説明もしていない。いやね、そりゃもう無理ですわ。当の本人は瀕死状態になってしまったことについて反省しっぱなしだったので、その経緯について特に気にしていなかったのが幸いだ。

    まぁ、これで実は葉山以外がやっていたとかだったら腹を抱えて転げるほどのコントなのだが、三浦の顔が赤くなっているのはどう見ても怒りからくるものではなく羞恥か嬉しさからくるものであろう。

    538 = 1 :

    結衣「優美子、大丈夫?」

    三浦「……えっ、いや大丈夫……へへへ……」

    うっわ、めっちゃ幸せそう。リア充爆ぜろ。

    八幡「さっさと戻ろうぜ、早く寝てぇし」

    これ以上あの雰囲気に当てられるのも嫌なので、そう言って帰宅ムードを作ろうとする。

    事実、対陽乃さん決戦兵器も葉山パーティも回収した以上ここに長居は無用だ。さっさと帰ってさっさと寝るに限る。

    ベッドが俺を待っている……そんなことを考えていると、葉山が俺の方に向かってやってきた。

    それに気が付いて葉山の方に顔を向けると、葉山はやぁと軽く手を挙げた。

    葉山「アイテムの回収は済んだのか?」

    八幡「ああ、悪いが先に貰っちまった」

    葉山「構わないよ、元々雪ノ下さん達に渡すつもりだったんだ」

    そう快活に言う葉山だったが、やはりどこか雰囲気は重い。

    その理由は三浦の件なのか、それとも……。

    葉山「……そういえば、陽乃さんと出会ってね。戦うことになったんだけど、完敗だったよ」

    ……どうやら、葉山の気分が沈んでいるように見えるのは陽乃さん戦の敗北を引きずっているからのようだった。良かったな三浦まだワンチャンあるぞ、Yだし。ワンチャンのY。

    539 = 1 :

    八幡「ああ、雪ノ下さんに聞いた」

    葉山「こっちにも陽乃さんが来ていたのか?」

    八幡「ついさっきまでな」

    そう言うと、葉山の視線が少し離れたところにいる雪ノ下の方に向けられた。

    その雪ノ下は小町や一色らと囲んで談笑しているようだ。……小町、一色、お前ら下手なこと漏らすんじゃねぇぞ。

    八幡「そういや、お前なんで雪ノ下さんと戦ったんだ」

    葉山「……あっちから仕掛けてきたからな。多分向こうは遊びのつもりだったんだろうけど、俺は手も足も出なかった……そのせいで優美子は……」

    ギリッと歯軋りをする音が俺の耳にまで届く。

    そう言った葉山の顔は酷く苦々しそうにしており、拳を強く握り締めていた。

    八幡「……そんな気にすることかよ、ありゃ相手が悪い」

    そう適当に声をかけると、葉山が驚いたような顔で俺の顔を見た。

    葉山「……慰めてくれているのか? 君にしては珍しい」

    八幡「は?」

    いや、別にそんなつもりは全くなかったのだが。べ、別にお前のことなんてどうでもいいんだからねっ!!

    八幡「ばっ、ちげーよ、事実だろ。俺たちも雪ノ下さんにボッコボコにされたしな」

    葉山「……そうか」

    葉山はそう言って顔をあげると、身を翻して三浦や由比ヶ浜たちがいる方へ足を向けた。

    540 = 1 :

    葉山「済まない、時間を取らせちゃったな。それじゃあ帰ろうか」

    そう号令をかけると、他の皆もぞろぞろと出口に向かい始める。あっれー、おかしいな。俺が帰ろうって言った時は誰一人反応してませんでしたよね……?

    これが日陰者とリア充の発言力の違いか……とやや遠い目をしていると、誰かが俺の近くにまでふらっとやってきていた。

    海老名「や、ヒキタニくん」

    八幡「海老名さん……」

    はろはろ~と手を振りながらこちらに近づいてきた赤いフレームの眼鏡をつけた女子──いや腐女子だが──海老名姫菜は、俺の顔を見るとふふっと軽い微笑みを浮かべた。

    海老名「ねぇねぇヒキタニくん、隼人くんとはどう? 最近すごい仲いいよね? はやはちあったりするんじゃない?」

    八幡「ねぇよ、ねぇ」

    即座に否定すると、海老名さんはさも愉快気に笑った。本当にやめてくれ。俺はあいつのことは嫌いだ。

    そして、海老名さんは笑顔をひっこめると急に真顔になり、小声で言葉を紡ぎ始めた。

    海老名「……ヒキタニくんならさ、たぶん隼人くんのことを受け止めてあげられると思うんだ」

    八幡「……」

    海老名さんの言葉に対して、俺は沈黙で答えた。

    ……冗談じゃない、なんであんな奴のことを受け止めてやらにゃならんのだ。

    541 = 1 :

    しばらく黙っていると、海老名さんは腐腐腐と笑いながら顔を上げた。

    海老名「やっぱり、時代ははやはちだよ! 時代と、あとわたしも、はやはちを求めてるんだよ!」

    八幡「嫌に決まってんだろ……」

    どう考えても、求めてるのは海老名さん一人なんだよなぁ……。

    海老名さんはしばらく腐腐腐と恐ろし気な笑い声を漏らしていたが、不意に眼鏡のフレームを指で押し上げた。光が反射して、彼女の視線の先が分からなくなる。

    海老名「多分、隼人くんはわたし達には何も言ってくれないからさ。でもきっと、ヒキタニくんなら頼りに出来るんだと思う……」

    小さな声で呟かれた言葉、ともすればともすればそれは聞き逃してしまいそうなほどにか細かった。

    その真意を問おうとすると、アホっぽい声が大きく聞こえてきた。

    結衣「姫菜ー、ヒッキー、置いていっちゃうよー」

    海老名「あっごめーん、すぐに行くねー」

    由比ヶ浜の声に海老名さんも大きな声で答える。身体を由比ヶ浜のほうに向けながら、ちらっと俺の顔を見た。

    542 = 1 :

    海老名「じゃ、また今度はやはちについて熱く語り合おうね!」

    八幡「その今度は二度とこねぇよ」

    だが俺のその否定は聞こえてたのか聞こえていないのか、そのままたたっと由比ヶ浜のほうへ走り去ってしまった。

    俺もゆっくりと、その後を追う。足を一歩前に進めながら、海老名さんの言葉を思い返していた。

    葉山が俺に何かを言う事など、まして頼ってくることなど金輪際ないだろう。

    葉山は俺なんかよりすごい奴だ。

    決して対等などではない。

    俺が葉山を助けることなど、ありえるわけがない。

    ……だがきっと、これも俺が勝手に葉山に期待しているだけなのだろう。

    あいつは、常にすごい奴なのだと。


    543 = 1 :



          ×  ×  ×


    八幡「つ……疲れた」

    城の広場のソファーにどかっと座りながら、はぁと大きな息を吐く。

    あの後、再びパーティが13人になってからは特に想定外の事態も起こらずに3の国の城にまで無事帰還した。

    なんなんだよ、毎回そうだけどなんでダンジョンってあんなに広いのにワープ機能ねぇんだよ、なんで毎回歩いて帰ってこなくちゃならねぇんだよ。

    スタミナの概念はなくても、普通に精神面での疲れがどっと来る。

    おまけに帰り道でもまた雪ノ下と三浦が魔物狩り競争始めるし。お前らさっきまで死んでたんだよね? 随分と元気ですね? あっ、そのことを思い出すと俺が死にたくなるからやめよう。

    544 = 1 :

    小町「疲れたおじさんのような声出しているねー」

    ソファーの背もたれにだらしなく寄りかかっていると、我が妹・小町がこちらに向かってやってきた。

    小町「なんか会社帰りのお父さんみたいだよー、小町的にポイント低ーい」

    八幡「なに、そりゃ聞き捨てならねぇ」

    あのクソ親父に似てきたということは、小町からの好感度も親父に似てくる可能性があるということだ。それだけは避けねばなるまい。小町に嫌われたら多分アパホテルから飛び降りる自信がある。ちなみに千葉県で一番高いホテルのことね。

    小町「全く、働く気がないのに雰囲気だけ疲れた社会人みたいとか、ほんとどうしようもないよねー」

    そう呆れたように言ながら、小町は俺の隣にぽすっと可愛らしく座った。俺の妹がこんなに可愛いわけがない。

    しばらくの間座ったまま黙っていた小町だったが、突然俺の肩に頭を乗せてきた。

    そして、小声でぼそっと呟く。


    小町「……雪乃さんの唇はどうだった?」


    八幡「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

    思わず声にならない悲鳴をあげると、小町がジト目で俺の顔を見つめてくる。

    小町「ちょっとお兄ちゃん、そんなリアクション取らないでよ。こっちが反応しづらくなっちゃうでしょ」

    八幡「お前な……」

    妹のジト目に対してやや強めに睨みつけたが、小町はぷいっと顔を逸らしてしまった。

    545 = 1 :

    八幡「……あの時は流されちまったけど、やっぱ俺がやるべきじゃなかっただろ。たとえ女どうしだろうとお前らの誰かがやるべきだった。雪ノ下のことを考えればな」

    小町「まーだそんなこと言ってるのごみいちゃんは」

    そう言うと、小町がむくれながら俺の頬を指でぐりぐりと押してくる。痛い痛い。ゲームだから痛くないけど。

    小町「……雪乃さんは、他の誰にやられても嬉しくないでしょ」

    八幡「ん、そりゃどういう」

    俺が問い詰める前に、小町はすたっとソファーから立ち上がった。

    そしてくるりと体を回転させて、俺の方を向く。

    小町「じゃー仕方ないね、お兄ちゃんにいつものお得意の言い訳を差し上げましょう」

    八幡「おい、誰の得意技が言い訳だ」

    小町「お兄ちゃん」

    即答だった。いやまぁ間違ってはないんだけどさ。

    546 = 1 :

    ふふーんと笑いながら、小町は腰に手を当てる。

    小町「この世界はさー、ゲームなんでしょ?」

    八幡「……なるほど」

    小町の言いたいことが、すぐに理解できた。

    確かに言われてみれば、この世界はゲームか夢か、はたまた何か特殊技術で作られた世界か何かだ。

    細かいことは分からないが、少なくとも現実世界ではない。

    そう、決してリアルの出来事ではない。

    得意顔の小町はそのまま言葉を続ける。

    小町「だから、そんなにいつまでも気にしないの」

    八幡「……それもそうだな」

    確かに。ゲームだからノーカンノーカン。

    もう過ぎてしまったことはどうしようもないが、あとから受け止め方を変える事くらいは出来る。

    八幡「そう考えたら、少し楽になってきたわ」

    小町「ん、じゃあそろそろご飯食べにいこ?」

    そういって小町は広場を目指すべく歩き出した。

    俺もソファーから立ち上がると、小町に続いて歩き出す。

    小町「…………ほんとは、気にして欲しいんだけどね」

    ……最後の誰かの呟きは、きっと妖怪のせいなのだろうと。

    心の中で、そう言い訳した。

    547 = 1 :

    >>326で第3章以降は最初から駆け足で行こうと思いますと書いたな、あれは嘘だ。
    現時点で第2章の約5万文字を超えてしまいましたね……。第4章こそは抑え目にしたいなと思います。

    それでは書き溜めしてから、また来ます。

    548 :

    長いの大歓迎

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    549 :



    めぐりバレンタインに続いて陽×静まで書いてたからこっち見捨てたのかとか思ってすみませんでした、めっちゃ書いてるやん・・・


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