元スレ八幡「俺ガイルRPG?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
101 :
後書きは要らない
102 :
くぅ疲よりはまし
103 = 1 :
× × ×
雪乃「さて、小町さんを傷つけた罪はどのように償わせようかしら」
雪ノ下が無様に地面に這いつくばっている2匹の狼に向けて剣を抜いた。その面は酷く冷徹であり、由比ヶ浜などは「ゆきのんこわっ!」と若干引き気味だ。
もちろん俺としては止める理由などない、それどころか俺も加わるまである。次はその剣を俺にも貸してくれ。
狼弟「ひいっ、悪かった! 許してくれ!」
狼兄「これからは人間のタメになることをするからよー!」
狼らは涙目でそういうと、ものすごい速さでどこかに逃げ出していった。ちっ、逃がしたか。
雪乃「待ちなさい、逃がしはしないわ」
小町「まーまーまーまー、落ち着いてください雪乃さん。小町はへーきですから!」
それを追いかけようと雪ノ下は走り出そうとしたが、小町がそれを抑えた。
結衣「ヒッキー落ち着いて!」
ちなみに同じく追おうとした俺は由比ヶ浜に止められていた。止めるな、お兄ちゃんには動かないといけないときがあるんだよ。
小町「お兄ちゃんも落ち着いて、今から追っても追いつけないでしょ」
八幡「む……」
小町が言うのなら仕方がない、命拾いしたな狼共。
104 = 1 :
平塚「ご苦労だった、まぁ上出来だったんじゃないか」
小町「先生もお疲れ様ですー。さてお兄ちゃん、なんでここにいるのか教えてほしいんだけど。しかも制服姿で」
ようやく落ち着いたので、早速今の状況を整理し始めることにした。俺も、何故小町がここにいるのかなど知りたいことはたくさんある。
八幡「俺は目覚めてみたら他の3人と一緒にこの世界にいたんだ。そんで国の王様にここにいる狼の魔物を倒せって言われてな、来てみたらお前がいたってわけだ」
俺は簡潔に自分の経緯を説明した。ちなみに制服姿である理由は説明しなかった。何故なら俺も分からないからだ。小町でさえも動きやすそうな銀の鎧なのに、俺ひとりだけがこのパーティの中で圧倒的に浮いてしまっている。
いやタイツみたいなものの上に白衣を羽織っている平塚先生もいつもと印象が大して変わらないから、もしかしたらそんなことはないのかもしれないが。いややっぱり浮いてるよねこの制服。絶対このファンタジー世界観にあってない。
小町「お兄ちゃん達も起きたらここにいたの?」
八幡「ああ、そうだ」
小町「小町はねー、昨日は部屋で寝てたはずなのに今朝きたらお城の部屋にいたんだよ」
どうやら小町も今朝この世界に来たようである。だが、俺達とはスタート地点が異なる。
小町「そしたら王様にこの装備貰っちゃってねー、北の方に向かってみるといいなんて言うから行ってみたら狼が商人達を襲って逃げてるじゃん!」
ほほう、小町をこの戦いに巻き込んだのはあのクソジジィだったか。あとで鈍化魔法でもぶつけてやろう。
小町「やられちゃった商人を見てるとなんかむかーってきてね、ここまでやってきちゃったわけです」
八幡「だからってソロで来る必要はなかっただろうが……」
小町「だってその時は他に仲間がいるだなんて分からなかったし」
それもそうか。それに比べると最初から4人パーティが組めている俺達は恵まれた境遇だったといえるだろう。
105 = 1 :
結衣「でも小町ちゃん、よくひとりでここまでこれたね」
小町「いやー大変でしたよ、ひとりだから囲まれると一気に不利になっちゃいますしー。あとは気合いと薬草飲みまくってなんとか」
小町もゲーム経験はそれなりにあるからか、国を出る前にあらかじめ薬草を大量に買い込んでいたわけだ。俺達は結局薬草を使うこともなくここまで来られたわけだが、小町の場合はナイス判断だったというわけだ。
小町「そうしてここに至る、ってわけなのです。いやー皆さんが来てくれて本当に助かりました、ありがとうございますー」
結衣「いいんだよー、気にしなくて」
雪乃「間に合って良かったわ」
本当、あと少し遅れていたら小町のHPは0になっていただろうと思うと背筋が凍る。ここに来た時点でHPは一桁だった上に、おまけにスタン(気絶)状態になっていたのだ。かなりギリギリだったと言えるだろう。
平塚「うむ、比企谷妹がこうして無事でいられてなによりだ。さて、町に戻ろうじゃないか」
あ、そういえばここからまた町に戻らないといけないのか。
最近のRPGはボスを倒すと近くにダンジョンの入り口に戻るワープ装置が出てくることが多いのだが、残念ながらこの部屋にはワープ装置みたいなものは見当たらず、俺達が入ってきた扉以外の出口も見当たらない。
仕方が無いのでしぶしぶそのまま来た道を引き返すことにした。別にそういうところはゆとり仕様にしてくれていいと思うんだけどなぁ……。
106 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます。
107 :
文句言いたいだけのアホだから気にしないでいいで
何人パーティーでいくのか楽しみ
108 = 100 :
遊戯部の時にね
まあ自分で言っててなんだけどSSだし細かい事だしいいんじゃない?
ちなみにゆきのんはテレビゲームの事をピコピコって言ってた
109 = 1 :
× × ×
雪乃「後ろから炎の玉が飛んできて、私の体をすり抜けていった時は少し驚いたわ」
結衣「あの時は本当にごめんねゆきのん!」
小町「でもでも、味方の魔法は当たらないってのは便利ですね! 小町達が敵を抑えて、結衣さんが後ろからファイアーって戦法は強そうです!」
特に急ぐ必要もなくなり小町が新しくパーティに加わったため、行き道とは違って和気藹々といった感じで帰り道を進んでいた。
ちなみに雑魚戦は全て前衛の3人に任せている。俺と由比ヶ浜のMPはすでに底を突いたためだ。
そういえば狼の魔物との戦いの時、後半の方から由比ヶ浜の戦っている姿が見えなくなっていたが、あれはMPが切れて呪文が使えなくなって後ろに下がっていたからだったのか。
そうそうMPを確認する際にステータス画面を見てみると、小町も含めて俺達のレベルは3になっていた。思い返してみれば、狼の魔物を倒した時にあのチープな音が鳴っていたような気がする。
やはりボス戦で貰える経験値というのは、雑魚敵から貰えるそれとは比較にならないのであろう。
ちなみに俺の呪文欄に新しく何かが追加されているということはなかった。さすがに鈍化呪文だけでは頼りなさ過ぎるし、攻撃呪文のひとつやふたつくらい欲しいものなのだが。ていうかなんで俺だけ新技覚えないのだろう。ちょっと運営さーん、ここバグってますよー!
110 = 1 :
帰り道も半ばにまでくると、行きの時に見かけた空の宝箱を再び見かけた。
八幡「そういや小町、あの宝箱って開けたのはお前か」
小町「うん、そうだよー」
やはり宝箱を開けることが出来るのはプレイヤーキャラクターだけというのは当たっていたのか。
小町「そういえば見せてなかったね、これが宝箱に入ってたアイテムだよ」
小町はそう言うと、どこからか瓶のようなものを取り出した。
そういえば昔はよくゲームの主人公ってあんな大量のアイテムをどこにしまっていたんだろうなぁと思っていたものだが、この世界でもアイテムは空間にしまって、空間から取り出すことが出来るらしい。
しかもパーティメンバー内でアイテムは共有出来るらしい。本当に便利なので、これこそ現実世界に導入すべき技術だと思う。
八幡「なになに……『復活の薬』だと?」
小町から瓶のようなものを手渡されたので、それを手に取ってウィンドウに出た説明を軽く読む。
この瓶の中には飴のようなものが入っており、これを口にするとHP0の状態から復活出来るらしい。なんだこの世界にもげんきのかたまり的ポジションのアイテムあるんじゃないですかやだー。
となればHP0になったらリアルに死亡というデスゲーム的なあれも多分ないだろう、そう考えて『復活の薬』をさっさと空間ストレージにしまった。
ああ、リアルでもこれが出来ればどんなに荷物が重くても手ぶらで行動することが出来るのに。いや、重い荷物を持って行動すること自体がそもそもあんまりない気がするけど。
111 = 1 :
八幡「それにしても、小町は槍使いなのか」
小町「そうなんだよ。お兄ちゃんは黒魔術師なんだっけ、ほんと似合うなー」
もういいよそのネタは。俺だって本当は槍を持って無双とかやってみたかった。
だが正直今の方が楽っちゃ楽なので、別にこのままでもいいような気がしてきた。槍とか持っても上手く扱える気がしないし。
小町「それで、雪乃さんが勇者で結衣さんが僧侶。平塚先生が格闘家と。うーん、皆さん似合ってますねー。特に雪乃さん」
雪乃「そ、そうかしら」
小町「そりゃもう、ドハマリですよー」
確かに雪ノ下の凛とした勇者姿は改めて見直してみても見事だ。あれほど鎧姿が様になる女子高校生もそうそういないだろう。
それに比べて……。
八幡「お前の鎧姿、ホント似合わねーな」
小町「えーっ、そんなことないよ! 今の小町的にポイント低い!」
八幡「お前のそのポイントはステータス画面で確認出来ねえのかよ……」
あまり重装備という感じではないが、小町が纏っているのは西洋式の銀の鎧であった。ゲームとかでよく見るやつに比べればはるかに軽量化されていそうではあるが、どのみち小町のイメージには微妙に合わないように感じた。
俺の制服姿よりはよっぽどマシだとは思うが。
112 = 1 :
八幡「俺からしたら、お前の方がよっぽど魔法使いとか似合いそうなんだが」
小町「まーそこはねー、小町も魔法使いとかの方が似合うと思うんだけど」
自分で言っちゃうのかよ。
小町「パーティ的には前衛3人、後衛2人の方がバランスいいしねー」
八幡「まぁ、そりゃそうだが」
小町が加わったので、今の勇者パーティは5人になっている。ゲームと違って4人までしか戦闘に出られないなどということはないのは先ほどのボス戦で判明している。モンスターハ○ターなんかだと5人での出撃は不吉とか言っていたような気がするんだが。
小町が途中参加したことにより、勇者パーティに変化が起こる可能性があるということが分かった。もしかしたら他にも現実世界から来ている人がいて、新しくパーティに加わることだってあるのかもしれない。おいおい俺の夢ちょっと処理追いついてんの?
それにしても、あんまりリアルに会話が進むものだから、だんだんここが夢の中なのかすら怪しく感じるようになってきた。現実世界ではないのは明らかなのだが……しかし他の4人はそこら辺のことを気にしていないようだし、俺も気にしないでおこう。
113 = 1 :
× × ×
1の国 城内部
王様「おお、よくぞ戻ってきた勇者殿」
開幕直後に木の棒をジジイに向けて投げつけてやったが、残念ながらすり抜けていってしまった。小町を戦いに巻き込んだ奴のような奴を仲間判定しなくていいんだぞシステム。
続けて瓶か薬草でも投げつけてやるかとストレージを漁っていると小町に止められてしまった。妹さんそこどいて、そいつ殺せない。
王様「これは御礼だ、受け取ってくれ」
ユキノは きんいっぷうをもらった!▼
雪乃「ありがとうございます」
王様「あちらの会場にご馳走を用意した。どうぞ、召し上がってくれ」
このゲーム、飯食えるのかよ。朝から何も食べていないのにも関わらず、特に空腹は感じていないが。
結衣「うわーご馳走だって、ほら行こう!」
雪乃「ちょっと由比ヶ浜さん、手を引っ張らないで、ちょっと由比ヶ浜さん!」
平塚「ところでこの世界に煙草はないのかね、少々口が寂しくなってしまった」
小町「だってさ、ほらお兄ちゃん行こう!」
八幡「はいはい」
114 = 1 :
扉を開くとそこには大きな会場が広がっており、大量のご馳走が広がっていた。すげーなこれ、ゲーム内とは思えない細かさだ。
結衣「うわっ、すごっ! これ全部食べていいの!?」
八幡「お前これ全部食いきるつもりかよ、どこのインなんとかさんだよ」
結衣「違うし!?」
しかしゲーム内で食べても味はするのか……そう思いながら、試しにひとつ口をつけてみる。
八幡「……普通に食える」
正直に言って驚愕した。もちろん現実の食事に比べれば細かい諸々は全く違うが、一応味はした。それどころか普通にうめぇ。
平塚「ふむ、漫画やゲームの食事を旨そうと思ったことはこれまでにもあったが、まさかその夢が叶うときが来るとはな」
先生はそう言いながら骨に肉がついた、いわいるマンガ肉に大胆にかぶりついていた。本当に男らしい食べ方するなぁ、あの人……って待ってマンガ肉もあるの、俺も食べてみよう。
115 = 1 :
八幡「……ん?」
それから会場の隅っこで細々と食べていると、突然ウィンドウが開いてメッセージが書かれた。
ハチマンのHPが 4じょうじょうした!▼
ハチマンのMPが 7じょうしょうした!▼
なんと、この世界の食事はステータス上昇を兼ねているみたいであった。確かに食事でパワーアップするゲームもそんなに珍しくない。
それならもっと食べればさらにステータスが上がるのではないかと思ったが、そのウィンドウが出た頃はちょうど満腹であった。
上手く出来ているなと思いつつ、他の面子を見てみる。
小町は雪ノ下、由比ヶ浜らと談笑しながらまだ食事を続けている。平塚先生の姿は見当たらなかったが、どこかにでも行っているのだろうか
今から小町達の輪に入る気にもなれなかった俺は皿などを片付けると、その会場を後にして外に出た。
116 = 1 :
城の外に出ると、冷たい風が体を撫でた。太陽はとうに沈んでおり、辺りは暗くなっていた。現代日本と違って中世世界であるここは街頭などもなく、月と星の明かり、そして城から漏れる少しの光だけが外を照らしていた。
ふと空を見上げてみる。雲ひとつない空には綺麗な星が多く見える。
そのまま星を眺めながら、俺はこの世界について思考を巡らせた。
この世界がどういう原理なのか、どうやって来たのか、本当に夢の中なのかなどを考えるのはもうやめた。考えていても間違いなく答えは出てこない以上、考えるだけ無駄だという結論に至ったためである。
ならば次に考えるべきことは。
どうすればこの世界を脱出し、元の世界に戻ることが出来るかということだろう。
八幡「……」
案外今日このまま寝て朝起きたら向こうの世界の朝で、普通に学校に登校するんじゃないかという考えも頭をよぎった。
だが、何故か今俺がいるここをただの夢だとも思えなくなってきていた。
もしかしたら、明日も明後日もこの世界に残っているのかもしれない。
どうすれば元の世界に戻れるか。
自然に戻ることが出来ないのなら、方法はひとつだけ思い浮かぶ。
八幡「……魔王の討伐」
王様は言った、勇者には魔王を倒して欲しいと。
それがおそらくこのRPG世界の最終目標であると想像するのは簡単なことだった。
ならば、俺が為すべきことはそれしかあるまい。
魔王の討伐がこの世界の最終目標であり、現実世界に戻る唯一の手段。
ひとまず俺はそう仮定し、それに向かって行動することに決めた。
そう思っていた時、後ろから足跡が近づいてきた。振り返ってそちらの方を見てみると、長い髪と白衣、そして煙が風に吹かれているのが様になっている女教師の姿が見えた。
117 = 1 :
平塚「何を黄昏れている、比企谷」
八幡「……この世界にも煙草あったんすね」
平塚「ああ、城の中でちょっと探してみたら中の人に少しだけ分けてもらえてな、それでちょっと外に」
八幡「そうですか」
そうとだけ答えると再び辺りに沈黙が訪れた。平塚先生がタバコを1本吸い終えると、俺に向かって喋り始めた。
平塚「何を考えていたんだ?」
八幡「いや別に……どうやったらあっちの世界に帰れるのかな、的なことを」
平塚「そうか……」
先生は再び煙草を取り出し、マッチで火をつけた。ライターまでは存在していないのだろうか。
八幡「……先生も、俺と同じで現実世界から来たんですよね?」
平塚「ああ、そのはずだ。私も私でちゃんと自我を持っている。君の夢の登場人物じゃないさ」
こういったメタ的な話が出来ている以上、やはりただの夢ではないではないと確信した。
118 = 1 :
八幡「現実世界での昨日、何をやっていましたか?」
平塚「君達奉、仕部と生徒会が作ったというフリーペーパーの完成の報告を受けたのは覚えているが」
間違いない。平塚先生は俺と同じ日の夜にこの世界に来ている。
八幡「こちらで何日経っても、あちらでは一晩しか経ってないとかだと嬉しいですね」
平塚「本当にそれだけはお願いしたいところだな……まさか現実でも1日過ぎているとかだと笑えないぞ」
そこら辺こそ本当にゲーム的ご都合主義でなんとかしてもらいたいところだ。
平塚「城の中に部屋が用意されているらしい。そこで寝るがいい」
八幡「ども、じゃ先に行ってますね」
平塚「ああ、私もこれを吸い終えたらすぐに行く」
まだまだ分からないことは多い。
しかしひとまずの目標が出来たことで俺の心にかかったモヤは、若干だが晴れたような気がした。
119 = 1 :
時系列的には10.5巻の後ですが、来月の11巻発売までに終わる気がしなくてちょっと焦る。
書き溜めしてから、また来ます。
120 :
おつ
121 :
乙
ゆきのんのHP不足は食事で解決できるのかな?
122 :
おつ
面白い
123 :
ゆきのんあんま食べれなくて上昇値低そうだなw
ゲームだから食えるのかもしれんが
125 :
魔王は陽乃さんなんだろ?
126 :
ゆきのんは金のパンさん1個集めて1ライフ
銀のパンさん4個集めて1ライフ増える
127 :
× × ×
八幡「……」
翌朝。
ベッドで目覚めると、俺は真っ先に周りを見渡した。
ここは昨夜、俺が寝た城の部屋である。
ほんの少しだけ目覚めた時には現実世界に戻っているという期待は確かにあったが、そういったオチはなかったということだ。
仕方が無いので、俺はベッドから起き上がると扉を開けて部屋を出た。
この世界は起きたばかりでも頭が冴え、体の調子が良好なのが素晴らしい。
昨日晩飯を食べた広場に向かうと、そこには雪ノ下がすでにいた。
雪乃「おはよう、比企谷君。……まだこの世界にいたのね」
八幡「おう、おはよう。残念ながらまだこの世界にいるんだ」
そこらにあった椅子を引いてそこに座った。雪ノ下もここにいることだし、おそらく全員まだこの世界に残留していることだろう。
いや、これでもし小町だけ現実世界に帰っていたらそれはそれでショックだな……とか考えていたが、それから数分もしないうちに小町、由比ヶ浜、平塚先生とひとりも欠けることなくその広場にやってきた。
平塚「よし、全員揃っているな。全員起きたら王のところへ来いとのことだ」
広場を出る先生に続いて、俺達も王様のいるところへ向かった。
チラッと廊下に置いてある豪華な時計を確認すると短い針が7を指していた。この時間だとあんのクソジジィもしかして起きてないとかあるんじゃないのかと若干不安に思っていたが、部屋に入ると普通にいた。NPCの朝は早い。
128 = 1 :
王様「よく来た、勇者ユキノとその仲間達よ」
豪華な玉座に王様は座っていた。やっぱり小町を巻き込んだのは許せないのでもう一度なんか投げつけてやろうかと考えていると、雪ノ下がこちらの方を睨みつけてきたのでそれはやめておいた。いや別にやっても意味がないからやらなかっただけで、雪ノ下にビビってやめたとかそんなんじゃないんだからね!
王様「昨日はよくやってくれた。それでは今度こそ魔王討伐に向かってもらう」
王様はそういうとこちらにやや大きめの箱を渡してきた。雪ノ下がそれを開くと、中からアイテムが複数出てきた。そのうちのひとつにこの世界のものと思われる地図があった。
王様「今私達がいる、この国が1の国だ」
そういうと、雪ノ下が広げた地図の左端の方に目線を移す。はじまりの町は端っこにあるのはどこのRPGも大して変わらないのだろうか。
王様「そしてここから2の国、3の国、4の国を経由し、この最東部に存在する5の国に向かってもらう」
別にそれらの国を経由しないでも、そのまま東に直進すれば5の国に辿り着けるような気がするんですけど……まぁ、どうせ通路にどかせないNPCが立っていたりして前に進めなかったりするのだろう。仮に進めたとしてもレベルが足りなさそうに思えるし。
王様「その5の国はすでに魔王が支配している……勇者殿らにはそこまで行って魔王を討伐してもらい、5の国の解放およびに世界に平和を取り戻していただきたい」
別に魔王が死んだとしても世界に平和とは戻らないと思うんですよね。共通の敵を失って国らで争うようになるだけで、そういう意味では魔王がいた方が人間界的には平和なんじゃないかなと思う。
なんていつも勇者魔王物を読んでいる時の感想は、今は抑えておこう。今の俺達は勇者サイドにいるわけで、どうやっても魔王との戦いは避けられないわけだ。
王様「それではよろしくお願いします、ご武運を」
って説明それだけで終わり!? これから魔王を倒しに行くっていうのに、もうちょっとなんかないのか。
しかしそれっきり王様の反応はなくなってしまった。これだからNPCは……。
雪乃「行きましょう、これ以上ここにいても意味はないもの」
雪ノ下がそう言って部屋の扉を開け出て行くと、残りの3人もそれに続いて部屋を出ていった。俺はというと最後に反応のなくなった王様をぶん殴ってやろうかどうか考えていたが、結局踏ん切りがつかずにそのまま部屋を出た。
129 = 1 :
× × ×
平塚「昨日の露店に行ってみよう」
城の外に出ると、平塚先生がそう言った。狼の魔物退治のイベントが終わったので、何か新しい商品が入荷しているかもしれないという判断からだろう。
パーティ内からは誰一人反対もなく、そのまま露店へ向かった。
商人「いらっしゃい!」
ニア 買いに来た
売りに来た
雪乃「買いに来たのですけれど」
雪ノ下がそう言って品揃えを確認する。
薬草しか取り扱っていなかった昨日とは違って、装備も含めたそれなりの種類の商品が並んでいた。
それでも若干少ないように思えるが、序盤の店ならばこんなもんだろう。
HPを回復する薬草はまだまだストックが大量にあるので、今度はMPを回復するアイテムを買い込んでおくべきだ。幸い残金は王様から貰った金があるので余裕があるし、気が付かなかったが一応雑魚魔物を倒した時にも僅かながらお金を貰えているらしい。
ちなみにMPを回復するアイテムはオレンジグミだった。パクるにしても、ドラク○かテイル○のどっちかに決めて欲しい。ていうか薬草をド○クエから取るなら、それの対になるMP回復はFFのエ○テルだろ。
平塚「さて、比企谷。装備を買い換えようじゃないか」
八幡「先生は新しい町に行くたびに装備を買い換える派ですか? 俺は行けるところまで同じ装備を使う派ですが」
あとダンジョンで拾った装備のみ使う派。
平塚「ま、まぁここで戦うのは私達自身だしな……それに残金はまだそれなりにある、そんなにケチケチしなくてもよかろう」
特に反対って訳じゃないから別にいいんですけどね。ここで稼いだお金を少しでも現実世界に持っていけるのであれば話は別なのだが。
130 = 1 :
さすがにそれは有り得ないかと先程の考えを打ち消しつつ、露店に並ぶ装備を眺める。左隣にしゃがみこんだ由比ヶ浜がひとつの装備を手に取った。それを見てみると、なんとメガネだった。この世界にもあるんだな。
結衣「なんか思い出すね、そごうに行ったときのこと」
八幡「ああ、あんときな……」
メガネ……じゃなくてアイウェアだったか、あれは。雪ノ下の誕生日プレゼントを選んだ時のことを思い出した。さすがにこの世界のメガネにブルーライトカットとか、そういう機能はついていないと思うが。
由比ヶ浜からメガネを手渡されたので、つい反射的に受け取ってしまった。それをそのまま自分の顔にかけてみる。どうせかけてみろとかまた言われるのだから、だったら最初から自分でさっさとかけてしまった方が利口だ。
結衣「似合わなっ!」
小町「うわーお兄ちゃんそれはないよー」
由比ヶ浜だけでなく、後ろから割り込んできた小町からも芳しくない評価を頂いてしまった。おかしい、俺がメガネをかけるとこの腐った目を誤魔化すことが出来て、残念イケメンだったのが正統派イケメンになってモテモテになるというのが近頃のSSのトレンドだったはず……ちなみに俺がメガネをかける設定のSSは良作だという法則があるのでオススメだ。
八幡「ま、そうだろうなぁ……やっぱメガネは雪ノ下がかけている方がよっぽど様になるわ」
雪乃「えっ、あ……ありがとう」
見てみると、右隣に雪ノ下がいた。お前いつの間に。
八幡「あ、ああ……まぁ事実だしな」
小町「ほほう……小町がしばらく見ない間になにやら進展がー?」
うるせ。お前は受験勉強してろ。……ていうかこれ本当にリアルタイム進んでないよな? 魔王倒す頃には現実の試験が終わっているとかないよな?
平塚「私もメガネをかければ結婚出来るのかなぁ……結婚したい」
少し離れたところでは平塚先生が哀愁を漂わせていた。メガネの有無に結婚が出来るかどうかを賭け始めたらもう末期だと思う。早く誰かもらってあげてよぅ!
131 = 1 :
結局俺達はそれぞれ武器と防具をワンランク上のものを揃えるということになった。お金はこれですっからかんになったが、どうせ次の町に着くまで使う機会はないだろうし特に関係は無いだろう。
買い物を終えると、次の目的地の2の国へ向かうために南門を目指すことにした。その南門から出て道なりにすすむと、2の国に辿り着くらしい。
今回は特にイベントも無く、普通にそのまま南門に辿り着いた。
昨日狼の魔物に壊されていた北門とは違い、こちらの門はきちんと門としての役割を果たしていた。いや、どうだろうな……魔物に襲われて壊れる門とか、役割を果たしていないのと同じじゃないかな……。
雪ノ下が時計を取り出して、今の時間を確認した。まだ午前8時だ。ここから2の国まで徒歩だとそれなりの時間が掛かるとNPCが話をしていたが、この時間から出れば今日中に辿り着けないということはないだろう。
ちなみに、この時計は王様から貰った箱の中に地図と一緒に入っていたものだ。地味に便利なものをつけていたものだ。
平塚「よし、これから国の外に出る。再び魔物と遭遇することもあるだろう、皆準備は平気か?」
そう言って先生はパーティメンバー全ての顔を見る。そして全員が首を縦に振った。
雪乃「大丈夫です」
結衣「次の町はどんなところなんだろうねー」
小町「小町は絶好調ですよー!」
そして俺達は門番に頼んで門を開いてもらい、1の国を出た。
これでようやくひとつクリアか……。
これからまだ5の国まであると思うと、俺は国を出てわずか数秒で憂鬱になってしまった。
× × ×
第2章 2の国編
こうして俺達は1の国を出て、2の国を目指して歩き始めたのだが、その道中で俺達は数多くのイベントをこなした。
笑いあり、涙あり、感動ありというとんでもない密度の内容でだった……。
その内容はあまりにも濃く、それら全てを詳細に語るのはさすがに手間だ。
ということで、1の国から2の国への道中はダイジェストでお送りしたいと思います。では、どうぞ。
132 = 1 :
NPC女「ねぇ、ダメなの……あたしじゃ、ダメなの……?」
NPC男「……俺じゃお前に釣り合わないだろ」
──立場の違いによって、結ばれぬ恋。
NPC女>2「えー、ユリちゃんってばあのビキガヤ君と仲良いのー?」
NPC女2取り巻き「くすくす」
NPC女「えっ、あ……あはは……」
八幡「……一瞬、相模がこの世界に来てるのかと思った」
──身分違いの恋を嘲笑う周囲の環境
結衣「そんなので諦めちゃうなんて……絶対おかしいよ!」
──しかし、そこにひとりの乙女が立ち上がる!
NPC女「私は、それでも私は……」
結衣「諦めないで! 諦めなければきっと叶うから!」
NPC女「ユイ……」
──結衣の応援を受けて、逆境に立ち向かうことを決めたユリ(NPC女)!!
NPC男「やめろ、俺と一緒にいてもお前はろくなことにあわない。だから俺のことは──」
NPC女「それでも、それでもあたしは……ビッキーとの本物が欲しい!」
八幡「おいこの脚本書いた奴出てこい」
──『もう迷わない』そう決めた恋する乙女ユリ(NPC女)と、捻くれた男ビッキー(NPC男)の愛。
結衣「燃え上がれ! 恋のユイファイアー!!」
平塚「こ、これはまさか!!」
──結衣はこの恋をどう成就させるのか。
NPC男「見つけた……これが、本物だ……ユリ、好きだ」
NPC女「ビッキー……大好きだからね」
結衣「良かったねユリ……私もいつかは……えへへ」
小町「ねぇお兄ちゃん、あのふたりって結衣さんとお兄ちゃんに似て」
八幡「お願いだから何も言わないでくれ、いや本当にお願いだから」
──これは、一途な乙女と捻くれた男の愛のイベント。
──命短し恋せよ乙女。
133 = 1 :
NPC老人「ここを通りたくば、自分に打ち勝つのじゃ!!」
八幡「自分に打ち勝つ……?」
雪乃「それは、どういう意味かしら……?」
──彼らの恋を成し遂げた一行の前に現れたのは、難題を突きつける老人。
平塚「いいだろう……この私が相手になってやる!!」
NPC老人「その意気や良し! ならば破ってみよ!」
──その難題に挑むは我らが教師、平塚静!!
シャドウシズカ「ククク……やぁ、私」
平塚「お前は……私なのか……!?」
──その平塚の前に立ちはだかったのは、なんと自分であった!!
シャドウシズカ「本当はお前だって分かっているんだろう……このままだと結婚出来ないんだってなぁ!」
平塚「ぐはぁ!!」
八幡「先生────ッ!!!」
──自分は何よりも自分に正直で、何よりも自分に残酷だ。
シャドウシズカ「私だから分かるんだ、気付いているんだ……何故なら、お前は私だからだ!」
平塚「そうだな、私はお前だ……だが、お前も私だ!!」
シャドウシズカ「!?」
──しかし、その自分を肯定できるのもまた自分である。
平塚「受け入れてやる、お前を!! お前もまた、私なのだから──!!」
シャドウシズカ「おのれ私ィィィ!!!」
小町「ねぇお兄ちゃん、さっきから平塚先生が言ってることの意味分かる?」
八幡「考えるな、感じろ」
──過去の自分を受け入れ、彼女は今前に進む。
平塚「真ん中から打ち砕く!!俺の自慢の、拳でぇぇ!!」
──果たして、彼女は結婚することが出来るのか!?
134 = 1 :
小町「お兄ちゃん、手を離して! このままじゃお兄ちゃんまで落ちちゃう!」
八幡「馬鹿なことを言うな! 俺が、お前のことを見捨てるわけ無いだろうが!!」
小町「お兄ちゃんまで犠牲になることはないよ……だから、お別れだね。お兄ちゃん」
八幡「小町────ッ!!!」
──この昼、最大のピンチが比企谷兄妹を襲う!!
雪乃「マズイわ、魔物がそちらへ!」
平塚(未婚)「間に合わないか……!?」
結衣「ヒッキー、小町ちゃん!!」
──小町の行方やいかに!?
魔物「ぐひゃひゃひゃひゃ」
小町「お兄……ちゃん」
──魔物に攫われてしまった小町。このままでは彼女の命は無い。
八幡「俺は……無力なのか」
結衣「大丈夫だよ……小町ちゃんは生きてるってあたしは信じる!」
八幡「由比ヶ浜……!!」
──妹を助けるために、兄は立ち上がる!!
八幡「助けるんだ……小町を!!」
雪乃「出来るわ。あなたなら、きっと。」
──兄には、頼れる仲間達がいる!!
平塚「さぁ行け比企谷、妹を救えるのは君だけだ!」
八幡「うおおおおおお!!!」
魔物「ぎゃああああああああ!!!」
小町「お兄ちゃ──ん!!」
──やはり俺の兄妹バトル物はまちがっている。
監督「あっ、お疲れー良い画が撮れたよー!」
八幡「なんで演劇の手伝いが強制イベントなんだよ……!」
小町「えーでも小町は楽しかったなー……やっぱ小町のお兄ちゃんはお兄ちゃんしかいないって分かったし」
八幡「はぁ? どういう意味だ……?」
小町「むふふー、なんでもなーい」
135 = 1 :
パンさん「パン?」
雪乃「まさか……パンさん!?」
──少女は、奇跡の邂逅を果たす。
パンさん「パン~? パン!」
小町「えっ、まさかあのパンダのパンさん!?」
雪乃「ええ……信じられないのだけれど」
──そこで出会ったのは、パンダのパンさん。
パンさん「パン? パン!」
雪乃「ふふっ、そうね。私もそう思うわ」
八幡「えっ、お前あれなんて言ってるのか分かるのか……?」
──少女らは種族の壁を越えて、友情を誓い合う。
ドラゴン「おっと、そいつは私の獲物だ」
パンさん「パン! パン!」
雪乃「あなたに、パンさんを渡しはしない!」
──だが、そこに無情の現実が襲い掛かる!!
ドラゴン「がぁぁぁあああ!!」
パン「パン──!!」
皆「「「パンさ────ん!!!」」」
雪乃「まさかあなた……私のことを、かばって……!?」
──雪乃をかばって倒れてしまうパンさん。
ドラゴン「世の中、弱いものから倒れていくのが常識だ」
雪乃「そうね……私がもっと強ければ、パンさんはこんなことには……!!」
平塚「おい雪ノ下、それは!!」
雪乃「私は──限界を越える!!」
──友達のため、彼女は剣を取る!!
パンさん「パン……」グッ
ドラゴン「まさか……これは」
雪乃「いや、やめて……パンさ──ん!!!」
──彼女は友達を救えるか。
──雪乃とパンさんの友情物語。
136 = 1 :
……本当に色々あって、俺達は2の国に辿り着いた。
時間は午後の10時を越えていた。信じられないが、今朝1の国を出たところである。正直1週間くらい経っていると思っていた。内容が濃過ぎて。
雪乃「ううっ……パンさん……」
平塚「良い奴だったな……パンさん……」
八幡「そうですね……」
最後にパンさんが親指を立てながらドラゴンを巻き込んで自爆していったところは涙無しでは思い返せない。本当にお前は良い奴だったよ……。
結衣「ぐすっ……ねぇ、ゆきのん。元に戻ったら、パンさんのことをもっと教えて……」
雪乃「……えっ?」
結衣「あたし思ったんだ……パンさんのことをもっと知りたいって……」
八幡「俺にも教えてくれ、雪ノ下……パンさんは……パンさんは、俺達の本物の仲間だろう……!!」
雪乃「比企谷君まで……もちろんよ、パンさんの魅力を余すことなく教えてあげるわ」
小町「あっ、小町にもちろんよろしくです!」
平塚「私もだ……私も、もっとあいつのことを知りたい……!!」
雪乃「みんな……!!」
こうして、俺達の結束はパンさんを通じてより強固になったのであった。
パンさん、お前は俺達の心の中で生きているぜ……!!
137 = 1 :
書き溜めしてから、また来ます。
138 :
急に糞になったので退場します
139 :
静ちゃんェ…
140 :
乙
変な世界観だな
141 = 1 :
ヒノミチルーコノーヘーヤー
ソットトキーヲマーツーヨー
八幡「……」
翌朝。
2の国のとある宿屋の部屋で、俺は目を覚ました。
俺達がこの世界に来て3日目の朝だ。部屋にある時計を見れば、ジャスト7時を迎えていた。
昨日もそうだったが、この世界の睡眠はベッドに入って目を瞑ればその瞬間に寝ることができ、そして決まった時間に必ず起きられるようになっているようだ。
その上、体は常に軽いと良いこと尽くめだ。どうしてゲームの主人公が宿屋で一晩寝るだけで体力がマックスになるのか、その秘訣を垣間見たような気がした。
この機能があれば寝不足や寝坊といった問題は全て解消するだろうに、どうして現実世界はああも辛く厳しいのだろう。
もしかしてこの世界にずっといた方が健康的に過ごせるんじゃないかなぁとか思いつつ俺はもう一度目を閉じた。寝られなかった。この世界は二度寝を許さないらしい。
仕方がないので布団をどかし、ベッドから起き上がって部屋を出た。
142 = 1 :
階段を降りて宿屋のロビーに向かうと、そこにはすでに他の4人が揃っていた。
結衣「ヒッキー、やっはよー!」
八幡「やっはよー!?」
またなんか新しい挨拶が誕生していた。あれ、こいつ朝は普通におはよーとか言ってなかったっけ……。
小町「お兄ちゃんおそーい!」
八幡「すまん、二度寝しようとしたら寝れなくてな」
雪乃「どうして二度寝をしようという発想が出てきたのかしら……」
いや、二度寝って発想とか考えてやるもんじゃないんだよ。気が付いたら二度寝をしていて、起きたら昼になってるもんなんだ。なんならそのまま三度寝まである。
平塚「おはよう比企谷、皆揃ったようだな」
パーティ全員がやってきたことを確認すると、平塚先生は広げていた新聞を机に置いた。この世界にも新聞と言うものは存在しているらしい。どうして中世ヨーロッパみたいな世界観なのに日本語で書かれているのかという疑問は残るが。
平塚「この町にも王が住む城があるそうだ、ひとまずそこに向かおうと思う」
げ、また王とか会うのかよ。あの偉そうな態度あんまり見たくないんだけどなぁ。
平塚「どうやらこの国を治めているのは若い女王らしい。NPCの会話を聞く限り、たいそうな美人とのことだ」
まぁ、美人だったらどんな態度も許されるしね! 例え偉そうにふんぞり返ろうが、普通なら怒りを買うような毒舌を振るおうが、美人なら許される。
雪乃「……何か?」
後者はお前のことなんだけど。
143 = 1 :
宿屋を出ると、そこからでも大きくそびえ立つ城が見えた。
昨日は夜遅くにこの国に到着したので町並みを見ることは出来なかったが、1の国とはまた違った感じの中世ファンタジーっぽい雰囲気が出ている国のようだ。
結衣「わっ見て、噴水だ!」
小町「こっちは水のアーチがありますよ!」
この国は水が綺麗なことから、水を使った建造物が多々存在しているとのことだ。ソースはその辺のNPC。
どうしてあいつらは俺が何も聞かなくても「この国は水がウリなんだ」「あの噴水はこの広場のシンボルだよ」「また新しく水門が作られるそうだ、本当にこの国は水を使った建物が多いなぁ」とか独り言を呟いてくるのだろうか。独り言は俺の特技だというのに。
とはいえ、透明な水が流れる建造物の数々は確かにすごいものばかりだ。
町のあちこちに目を奪われつつ、俺達は城へ向かっていった。
その道中でも、NPCの独り言や会話が耳に入ってきた。盗み聞きをしているわけではない、あいつらが何故かよく通る声でそう言っているだけだ。
NPC1「なぁ聞いたか、この国のお姫様が攫われたかもしれないって噂」
NPC2「聞いた聞いた。でも噂だろ? あんま適当なこと言ってると兵が飛んでくるぞ」
NPC1「怖いわー、あんまり言うのやめとこ」
俺達にまで聞こえるほど大きい声で言っている時点でもう手遅れだと思うのだが。
それはさておき、その会話の中身には少々興味が沸いた。
NPCがこういった話をしていると、それは次のイベントに関わることが多いからだ。
八幡「姫が攫われた……もしそれが本当なら、次のイベントは姫を連れ戻すこととかになるのか」
平塚「攫われた姫を勇者達が助ける。まさに王道中の王道じゃないか」
お姫様ねぇ……。
何故か、その単語に不吉な予感がした。
144 = 1 :
× × ×
城に辿り着くと、門にいた兵士がこちらにやってきた。どうやら顔パスでそのまま通してくれた1の国の兵士と違って仕事をしているらしい。
兵士「止まってください、どのようなご用件でありますか」
雪乃「私は雪ノ下雪乃と申します。よろしければ、ぜひ女王様のお目にかかりたいのですが……」
兵士「おお、勇者様であられましたか。女王様はこの先の通路を真っ直ぐ行った先の部屋におられます」
今の自己紹介でどうやったら勇者だと分かったのだろうか。
予想以上に素直に兵士が門を開いてくれたので、城の中に入ると1の国の城と同様に豪華な作りであった。庶民暮らしなので豪華以外にこういったものを褒める言葉が思いつかねぇ。
城の中にも噴水のようなものが複数あり、この国が水に深い関わりを持っているというのがよく分かる。
八幡「そういやグー○ルで『千葉県 水』って打つと候補に『千葉県 水 まずい』とか出てくるんだよな……」
結衣「えっ、なんで今ここで言うの!?」
いや、そんなにまずいと思わないんだけどね? これはあれか、俺が千葉を愛するがあまり千葉の水は全ておいしく感じるようになっているのか、そもそも他県の水の味が分からないから比較のしようがないのか。それ以前に水道水をそのまま飲む機会がないだけのような気もするが。
145 = 1 :
平塚「む、あそこが王座の間か」
入り口から少し歩くとすぐに女王がいるという部屋の前にまでやってきた。雪ノ下が扉の前の兵士に挨拶をすると、兵士はすぐに扉を開けた。
雪ノ下に続いて部屋に入ると、中に玉座に座っている女王の姿が見えた。
雪乃「失礼致します、私は1の国からやって参りました雪ノ下雪乃と──」
女王に向かって雪ノ下が挨拶をしようとしたとき、突然言葉を失って信じられないという顔つきになった。
いきなりどうしたのか分からず、俺も前にいる女王のことを見てみる。
その瞬間に、雪ノ下が固まった訳を察した。俺の顔も雪ノ下のように信じられないという顔になっていただろう。
横にいた由比ヶ浜と平塚先生も驚愕した顔つきで女王の方を見つめていた。ただひとり、小町のみがパーティメンバーが驚いている意味が分からずに疑問符を浮かべていた。
何故小町を除く俺達4人が言葉を失っているのか。
それはそこにいた女王様が、まさかの知り合いだったからである。
めぐり「あはっ、おはよう雪ノ下さん」
雪乃「どうして……城廻先輩がここに……」
この国の若くてたいそう美人である女王。
我らが総武高校の元生徒会長・城廻めぐりはいつも通りのほんわかとした笑顔を浮かべていた。
146 = 1 :
めぐり「いやー、雪ノ下さんが勇者だーっていうのは聞いてたんだけど……本当に見てみるとびっくりだねー」
めぐり先輩改めてめぐり女王は、そう言って俺達を見渡した。
城廻「平塚先生に由比ヶ浜さん、比企谷くんもいたんだね」
八幡「……ども」
会うのはしばらくぶりだったが、苗字を覚えられていたようで少し嬉しくなる。体育祭の時にちゃんと覚えたと言っていたのは嘘ではなかったらしい。いや、体育祭終わった後も何回か呼ばれていたっけか。
小町「ねぇお兄ちゃん、この人知り合い? いつの間にこんな美人さんと知り合いになってたの?」
八幡「ウチの高校の前生徒会長だ。奉仕部での仕事の時に何度か会ったことがあるってだけだ」
めぐり「比企谷くんの妹さんかな? 私は城廻めぐり、今はこの2の国の女王をしてるよ」
小町「あっ、比企谷小町でーす、よろしくお願いします」
この世界でもめぐりんほんわかパワーは健在であった。例えゲーム世界でもあのオーラを遮断することは出来ないらしい。めぐりん、恐ろしい子ッ!
めぐり「あはっ、可愛らしい妹さんだね。小町さん、よろしくね」
小町「ううっ、戸塚さんとはまた違うベクトルの眩しさ……お義姉ちゃんとしてはどうだろう……」
そうだ戸塚だよ戸塚。小町だけでなくめぐり先輩までこの世界にいるとなると、思った以上に現実世界よりこの世界に来ている人数が多いのかもしれない。となればそのうちのひとりが戸塚である可能性は十分にある。ああ、マイラブリーエンジェル戸塚たんよ。早くお前に会いたい。
147 :
ここからはマジメに書いてくれ
148 = 1 :
どこにいるのかも分からない戸塚に思いを馳せていると、雪ノ下達は俺を置いて話を進めていた。
雪乃「城廻先輩も2日前に起きたらこの世界に来ていて、そして王女になっていたということですね。それと、私が勇者だと聞いていたと先ほどおっしゃっていましたが、それはどこからの情報なのでしょうか」
めぐり「各国の王族には勇者ユキノのことは伝えられていて、そこから私も聞いたの。他にもここにはあっちの世界から来ている人がいたから、間違いなく雪ノ下さんのことだなって分かったの」
平塚「待て城廻、他にもここにきている人がこの国にいるのか?」
えっ、戸塚? 戸塚がここにいるの? 今戸塚って言ったよね?
めぐり「はい、そうです……そう、そのことで勇者の雪ノ下さんたちにお願いがあるの」
そう言うと、めぐり先輩は真剣な眼差しになる。前にも見たことのある毅然とした態度、確かに生徒会長を務め上げた威厳がそこにはあった。
めぐり「これは昨日の話なんだけど、この国のお姫様──と言ってももちろん私の子どもではないんだけど、とにかくそのお姫様が魔物に攫われちゃったの」
雪乃「魔物に……!?」
町で流れていた噂ってのは本物だったのか。しかし、魔物が絡んでいるという物騒なことになっているのまでは知らなかった。
めぐり「情報規制はしてるからあんまり攫われたことは広まってないはずなんだけど、どこからか町にも噂として漏れちゃってるみたいで。このままだとお姫様も危ないし、国の雰囲気も悪くなっちゃうと思うんだ」
なるほど、国としてはお姫様が攫われたということは公表してはいないらしい。だから中途半端に噂が流れてしまっているのだろう。
149 = 147 :
ここからはマジメに書いてくれ
150 = 1 :
めぐり「その魔物の在り処はすでに分かってて、国の兵士を向かわせてはいるんだけど全く連絡が取れなくて……そこで、雪ノ下さん達に魔物を倒してお姫様を連れ戻してもらいたいの」
予想していた通り、あの噂はお姫様救出系イベントのフラグだったらしい。
そしてこの国でやるべきことも判明した。
攫った魔物を討伐、およびお姫様の救助。要するにク○パ倒してピ○チ姫助けて来いってことだ。
雪乃「分かりました。引き受けます」
めぐり「ありがとう雪ノ下さん。そして、そのお姫様っていうのが私達と同じ世界から来た人なんだ」
八幡「なに……!?」
まさかマジで戸塚がお姫様だというのか……?
や、やばいぞそれは。何がやばいかって俺のSAN値がやばい。
しかし、めぐり先輩が言ったその人物は予想とは異なるものの──ある意味イメージ通りの人物であった。
めぐり「お姫様っていうのは、一色さんのことなの。一部の民からは、いろは姫って呼ばれてるみたい」
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