元スレ魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
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302 = 284 :
――数十日後、城
王「あの勇敢なるものが亡くなったのには、心を痛めておる」
王「しかし、おまえたちも様々な混乱にあっただろう」
王「今は身体を休め、心を休め――そして仲間の冥福を祈ってくれ」
王「“勇者”の剣は――再び握れるものが出るまで眠らせておこう」
王「……ご苦労であった」
303 = 284 :
――城の門前
剣士「さて、ここでお別れだな」
魔法使い「そうだな」
僧侶「…なんだか、寂しいですね…」
剣士「気が向いたら、僧侶のいる教会に寄るよ」
剣士「…勇者と盗賊の墓参りにもな」
魔法使い「私も」
僧侶「ありがとうございます。待っていますね」ニコリ
僧侶「でも剣士さん、そろそろお嫁さんを見つけなければいけませんよ?」
剣士「……………ハイ」
魔法使い(うわあ、今のはキツい)
304 = 284 :
剣士「じゃあ、な。元気で」
魔法使い「そっちこそ」
僧侶「またお会いできますよね?」
剣士「もちろん!」ヒラヒラ
魔法使い「……」
僧侶「……」
魔法使い「僧侶は、こっちだよな?私もなんだ」
僧侶「そうなんですか?では、しばらくご一緒に」
305 = 284 :
魔法使い「……」
魔法使い「なあ、僧侶」
僧侶「はい」
魔法使い「勇者は…魔物が嫌いだったじゃないか」
僧侶「そう、ですね」
魔法使い「そして混血も。いなくなればいいと、言った」
僧侶「ええ」
魔法使い「僧侶はどうなんだ?魔物を、混血を、憎むのか?」
僧侶「そうですね…。全ての生命は神様から与えられたものです」
僧侶「それをわたしたち教会の人間がどうして憎めましょう?」
僧侶「…だから最初はあまり魔王討伐に行きたくはなかったのですが」
魔法使い「そうなのか…」
306 = 284 :
僧侶「あ、もう近くですね。わたしの住むところまで」
魔法使い「じゃあここらでさよならか」
僧侶「あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「いつか――魔法使いさんのこと、聞かせてくれませんか?」
魔法使い「……」
僧侶「わたしと同じ秘密が、あるように思えて」
魔法使い「意外だな。僧侶にも秘密があるのか」
僧侶「はい。――どうか、まあ会えたとき、話し合いましょう」
魔法使い「…私のことが嫌いになるかもしれないぞ?」
僧侶「いいえ、嫌いになりません。わたしは魔法使いさんが酷いひとだとは思いませんから」
307 = 284 :
魔法使い「……」
僧侶「どうか、あなたの旅に困難がありませんように…」
魔法使い「ありがとう。きみのこれからに、災難がないように」
僧侶「それでは」
魔法使い「ああ」
僧侶・魔法使い「また、次の時に」
308 = 284 :
――国外れの家
魔法使い「……」キョロキョロ
魔法使い「……」
魔法使い「師匠?」
師匠「後ろだ」フーッ
魔法使い「…なぜあなたはいつもいつもそんなことを」ビク
師匠「話は聞いた」
魔法使い「早いですね」
師匠「もっと誉めて」
魔法使い「……。…情けないです。仲間ひとり救えなかった」
師匠「迷うな。今のお前は、迷うと飲み込まれかねん」
魔法使い「力に、ですか」
師匠「そうだ。…封印が解けとるな。暴走したか」
魔法使い「…はい」
309 = 284 :
師匠「こんなところに引きこもっては駄目だな。旅に出ろ」
魔法使い「……」
師匠「力の使い方を学べ。そして――世界を見ろ」
魔法使い「世界を」
師匠「こちらのことは心配せずともよい」
魔法使い「また師匠が女をたらしこまないか不安なのですが」
師匠「……。え、えっと――ああ、両親の墓参りにも行ったほうがよいな」
魔法使い「……」
師匠「娘の姿を見たいだろうからな」
310 = 284 :
魔法使い「これといって成長はしていませんけどね…」
師匠「両親を失ってから30年あまり――人間なら50歳は越えているはずなのに」
師匠「お前は未だに、若々しい少女のままだな」
魔法使い「元々かなり成長は遅いですが。父の血が影響しているのでしょう」
師匠「それか、あの暴走以来魔物寄りになっているかもしれんな」
魔法使い「……」
師匠「ともあれ、よく帰ってきた。おかえり」ポンポン
魔法使い「ただいま帰りました」
311 = 284 :
師匠「まぁしばらくはゆっくりしていけ」
魔法使い「はい、師匠」
師匠「肉はあったかの…」ゴソゴソ
魔法使い「私が作りましょうか、ご飯」
師匠「いや、座っとれ。いいな?間違えて毒キノコ放り込むなよ?」
魔法使い「三回しか入れたことないじゃないですか、毒キノコは。誤って」
師匠「だからじゃ!」
312 = 284 :
……
師匠「」ザクザク
魔法使い「…師匠」
師匠「なんだ?」
魔法使い「私が魔王を倒さず帰ってきて、残念ですか?」
師匠「いんや。倒したとしてもお前が死んでいたら、残念だったが」
魔法使い「…そうですか」
師匠「魔王にも昔、少しだけ関わりがあったから正直心苦しかった」
魔法使い「魔王と…?」
師匠「ちょっとだけな。もう引退したから会うこともあるまい」
魔法使い「あの。師匠は人間と魔物、どちらの味方なんですか?」
師匠「ふむ…難しいな」ジャー
師匠「そうさなぁ、わしは愛するものの味方でいるよ」
魔法使い「……槍でもふるかな」
師匠「ひどっ!!」
313 = 284 :
――魔王城
サキュバス「どうも~しばらくお出かけしてたサキュバスちゃんで~す☆」
サキュバス「あれれっ?今日は少ないね~?」
魔王「……」
ゴブリン「帰れ」
人魚「帰んなさい」バシャ
魔大臣「グッバイ」
側近「失せろ」
サキュバス「ああ~ん、言葉攻めは苦手なのあたし~」
側近「なんのようだ」
サキュバス「魔王さまが帰ってきたから~、ちょっと見に来たの~」
314 = 284 :
人魚「」イライラ
ゴブリン「おい水かけるなやめろ」
サキュバス「なんか調子悪そうじゃ~ん☆どしたの?」スリスリ
人魚「」バッシャンバッシャン
ゴブリン「うわああああ濡れたああああ」
魔大臣「書類があああああ」
魔王「…なにか最近、調子おかしくてな」
側近「?」
人魚「病気ですか?」
魔王「ふむ。病気かもしれない」
魔王「とある人物を思うと、少しばかり体温があがり心拍数が増えなにやらいてもたってもいられなくなるんだ」
人魚「……えっと」
ゴブリン「……その」
魔大臣「……むむ」
側近「……あー」
サキュバス「ええ…病ね。かなり重症な」
全員「」コクコク
315 = 284 :
人魚「こほん…それで、会議の内容ですけど」
人魚「南の海で人間によるあたしたち“人魚”の乱獲が酷いようです」
ゴブリン「“人魚”たちをどうしているとかは?」
人魚「さあ…でも、なにかされてはいるかもしれないわ」
魔大臣「これは少々痛い目をみせないといけないか」
ゴブリン「兵を攻めこませるか?」
人魚「防護力の強い“人魚”を乱獲よ?――普通の人間じゃないわ」
魔大臣「ゴーレムはだめか…トロールは強いが遅いしな」
ゴブリン「あと、まずは何が起きてるか調べないといけないな…」
316 = 284 :
魔王「……おれがまた出かけたら怒るか?」
人魚「いえ?時折帰って来てくだされば」
魔王「じゃあ、そこに行ってくる。側近」
側近「はっ。――え?」
魔王「どんなやつがおれの国の民を捕まえて遊んでいるのか見てみたくてな」ツカツカ
魔大臣「そんな、魔王さま直々に」
魔王「手間が省けるだろ。用意してくる」ガチャ
全員「……」
サキュバス「もしかしてさ~…誰かに会いたいのかな?」
ゴブリン「…多分」
人魚「きぃっ!誰よ!」
魔大臣「でも最近生き生きとしてるからいいんじゃないか…?」
側近「どうだろうな…」
318 = 284 :
??「“魔王”が倒されたらどうしようかとヒヤヒヤしていたが――よもや仲間割れとはな」
??「丁度いい。これでまた一歩、計画が前進する」
??「“勇者”の剣が手に入った」
??「魔力を増強させる薬は完成した」
??「そしてこの私の人を操る魔法――」
??「……あの混血がそばにいると色々厄介だが…対策をまた考えるか」
??「ふふ、まだだ。まだ計画は途中だ」
??「しかしなんだろう?この身体の震えは!ああ、楽しみすぎる!」
319 = 284 :
??「さあおいで、可愛い可愛い完成品――」
コツリ コツリ
僧侶「」ペコ
??「普通の少女が薬を飲み、魔法を使えるようになる」
??「新しい時代が来る!そして私はその先頭に立つのだ!」
??「これから忙しくなるぞ――手伝ってくれ、僧侶」
僧侶「はい」
僧侶「分かりました――大臣さん」
320 = 284 :
魔王「俺と手を組め」魔法使い「断る」
――了
321 = 284 :
お分かりのとおり、続きます
すいません続きます
このままこのスレを使うべきでしょうか?
322 :
ガラっと内容が変わるなら変えた方がいいかも
323 :
このままでいいよ
324 :
ワクワクが止まらない
325 :
シコシコが止まらない
326 :
このままでお願いします!乙!
327 :
とにかく乙!
一話完結と思ってたのにまさかの続編で期待
330 :
このスレで続けるに一票
331 :
>>1 乙 そして展開期待
何気に楽しい魔王ファミリィ-
332 :
たくさんの感想ありがとうございます
このままここで投下していきます
334 :
いいね 乙
335 = 332 :
魔王「俺と旅をしろ」魔法使い「断る」
336 = 332 :
――国外れの家
師匠「これでよし」ポン
師匠「魔法使いよ、翼の封印は前回より軽くしておいた」
魔法使い「何故ですか?」
師匠「こういう類いのものは解けるとき激痛を伴うからの」
魔法使い「…確かに」
師匠「敵の目の前で行動不可になったら困るだろう?」
魔法使い「そうですね」
師匠「……こんなことせずとも、普段から出し入れ可能にしてもよいのに」
魔法使い「私の翼はタンスの服ですか」
師匠「ちょっとうまいなその例え」
337 = 332 :
魔法使い「どうやら私の感情の高ぶりで翼が出るみたいですから」
師匠「封印無しではどんな弾みで翼が広がるか分からないと」
魔法使い「はい。あと翼の自制の仕方がいまいち良く分からないので…」
魔法使い(前回は魔王がやってくれて助かったけど)
師匠「ふむ…。まあそれは自ら学んでいくしかあるまい」
魔法使い「あと…私は、人間として生きたいのです」
師匠「魔物としては駄目なのか?」
338 = 332 :
魔法使い「私は、魔物化すると人間を殺したくなってしまうんです」
師匠「血が騒ぐ、というやつか」
魔法使い「それに、今まで人間として生きてきましたから」
師匠「難しい問題だの。しかしそれはおまえの問題だ、おまえが解くしかない」
魔法使い「はい」
師匠「そうだ、旅に出るなら南の街に寄ってくれ。――知り合いへ、手紙を届けてほしい」スッ
魔法使い「師匠のお知り合いに?分かりました」
師匠「さぁ――行ってこい、弟子」
魔法使い「行ってきます、師匠」
師匠「死ぬなよ」
魔法使い「もちろんです」
339 = 332 :
――森の入り口
魔法使い「さて」
魔法使い(南の街に行くには、まずこの森を抜けなければいけない)
魔法使い(魔物がわんさかいるという噂だ)
魔法使い(かなり遠回りとはいえ北の街から行った方が安全だが――)
魔法使い(手紙を無くすのはいやだから早めに届けに行こう)
魔法使い「……」スタスタ
魔王「ほう、杖を新調したのか」
魔法使い「!?」ビク
側近「……」
魔法使い「!?」ビビク
340 = 332 :
魔王「何を驚く」
魔法使い「そりゃあ驚くだろう!いつからいた!?」
魔王「今だ」
側近「今ですね」
魔法使い「……そうか」
魔王「そうだ」
魔法使い「短い別れだったな…」
魔王「ふん。まあそうだな」
魔法使い「それで、なんでふたりはここに?」
魔王「この森の主に挨拶をしていたらたまたまお前が来たからな」
魔法使い「挨拶?」
側近「森の管理は大変だから、たまに魔王さまが労いの言葉をかけに行くのだ」
魔法使い「へぇ…」
魔王「魔法使いこそなんだ。旅でもするのか?」
341 :
>>337 また難しい命題を出したな…
だが、先が見えないのは最高。
342 :
魔法使い「まあな。修行の旅というか、自分探しの旅というか」
魔王「自分探しの旅ってたいてい自分が見つからないまま終わらないか」
魔法使い「…細かいことはいいんだよ」
魔王「ふん、そうか」
魔王「ここを通るということは――南へ行くんだな?」
魔法使い「ああ、そうだな。用事もあるし」
魔王「そうか。じゃあ――」
343 = 342 :
魔王「おれと旅をしろ」
魔法使い「断る」
344 = 342 :
魔王「解せん」
魔法使い「なんだよ旅って!魔王が旅って!」
魔王「駄目か」
魔法使い「駄目というか、普通“魔王”は王座に座ってるもんじゃないのか?」
魔王「思い込みもはなはだしいな。普段は会議室の椅子に座っている」
魔法使い「……」
魔王「勇者が来たときぐらいだな。あの部屋使うの」
魔法使い「使い分けているのか…」
魔王「お前、山となった書類の中で戦いたいか?」
魔法使い「それはなんか嫌だな」
345 = 342 :
魔王「ああ、ちゃんと外出許可ももらっているぞ」
魔法使い「子供か…」
側近「小娘のほうが子供だろう!」ザクッ
魔法使い「うぅぎゃああああぁぁぁあ!!」
魔王「それと、今回は観光でも暇つぶしでもないんだよ」
魔法使い「は?」
魔王「――ちょっと人間を痛い目に遭わせないといけない用事が、な」
346 = 342 :
魔法使い「……」
魔王「微妙な顔をしているな」
魔法使い「南の方で、人間がなにかをしたのか?」
魔王「ああ。魔物と人間の間にある境界を越えるようなことをだ」
魔法使い「……」
魔王「なぜ暗い顔をする?」
魔法使い「……私は、人間の――味方、だから」
347 = 342 :
魔法使い「……」
魔王「微妙な顔をしているな」
魔法使い「南の方で、人間がなにかをしたのか?」
魔王「ああ。魔物と人間の間にある境界を越えるようなことをだ」
魔法使い「……」
魔王「なぜ暗い顔をする?」
魔法使い「私は、人間の――味方だ」
魔王「ふむ。理由は?」
魔法使い「今まで人間として生きてきたから」
魔法使い「だから私は、人間があなたに傷つけられるなら…一応の手は打たなくてはいけない」
348 = 342 :
魔王「面白い。おれと戦うか」
魔法使い「いいや、それは勘弁だ。どう考えても魔王のほうが圧倒的すぎる」
魔王「ならばどうする?」
魔法使い「ペンは剣より強し、というだろう?話し合いだよ」
魔王「ほう」
魔法使い「それで、人間達が何をしているんだ?」
魔王「聞いてどうする」
魔法使い「――それを止めさせる。それなら文句はないだろ」
魔王「おれとではなく、人間とか。なるほど、原因を無くそうと」
魔法使い「そうだ。…もちろんお前とも話さなくてはいけなさそうだがな」
349 = 342 :
>>346は無しで
350 = 342 :
魔王「はは、まさか城の外でおれと話し合いをしようとするやつがいるなんてな」
魔法使い「……」
魔王「だがな、魔法使い。お前が守ろうとした人間に手のひらを返されることだってあるぞ」
魔王「“魔女”という存在にはかなりの金額がかかっていると聞いたが」
魔法使い「…そうだな。半年は遊べる位の」
魔王「それがバレてしまったらどうするんだ?感謝もなにもせずお前を火に焼くぞ?」
魔法使い「……」
魔王「分かっているならいいが」
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