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    元スレ魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」

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    551 = 550 :

    魔法使い「…同族じゃない、か。確かにな」

     心の奥で微かにほの暗い感情が沸き上がる。

     人間として生きたい。

     ――だがそれは、他ならぬ人間が、魔法使いを人間だと認めてくれなくてはいけない。
     ただの一方的ななりきりでは、駄目なのだ。
     混血だとか。
     呪い子だとか。
     そう言われているうちは――人間など、なれやしない。 

    「…お兄さん?」

     人間の少女が不安げに見上げてくる。

    魔法使い(この子もいつかは混血を忌むのだろうか)

    552 = 550 :

     結局――混血はモノとしてしか扱われない。
     牛や豚と同レベルだ。

    魔法使い(私が人間と認められたら…)

    魔法使い(それは、他の混血への裏切り行為なのか?)

     人間に迫害されている混血がいたとして。
     敵視されてしまうのだろうか?

    「そうだね。人間を憎む混血もたくさんいるわけだし」

    魔法使い「じゃあ……私には、味方がいなくなってしまうのか?」

    「何言ってるの?」

     ナイフを二振り両手に持ち、女は嘲るように笑った。

    「あ ん た な ん か に 味 方 な ん て い る わ け な い じ ゃ な い 」

    553 = 550 :

     女も薬を飲んだ一員である。
     手に入れた力は読心。
     戦闘には向かないが、このような時には多く使える。

     魔法使いを相手にした場合、彼女に奥深く眠る悩みを利用した。
     『どうやら人間として生きたい』と分かったら、その考えに揺さぶりをかけていけばいい。

     間違えているか、正しいか。
     その問いだけでも大抵はうまくいく。

    (この程度じゃまだ心は壊れないけど、戸惑ってはいる)

     だから、この隙に。

    「逃げようとする動物は殺さないとね?」

     牢に入り、まっすぐに魔法使いを討ちにかかった。

    554 = 550 :

    「…やった」

     手応えがあった。
     が、何か違う。

    魔法使い「…ふむ。痛いな」

     壁の向こうで混血が呟いた。
     ――壁?

    「は、羽?」

    魔法使い「ああ。翼にも痛覚はあるんだな」

     翼でぱんっとナイフをはじき、彼女は姿を現す。

     背からソレは生えていた。
     首元、手首には羽毛らしきものがうっすら見える。

    魔法使い「私に味方なんていない、か。なるほど…なかなかキツいな」

     だがな、と混血は拳を握りしめる。

    魔法使い「その言葉で現実に戻れたよ」

     分からない。
     なぜ、こんなにすがすがしい顔をしてるのか。

    魔法使い「それは間違えだ。全てを受け止めると語ってくれた人がいる」

    魔法使い「私をここまで育ててくれた人がいる」

    魔法使い「そして――」

    555 = 550 :

    魔法使い「私と旅をしようと言ってくれた奴がいる」

     固めた拳をみぞおちに鋭く突き刺した。

    魔法使い「――その他はまた考えよう。どうせ、私は長く生きる」

    「――っ!」

    魔法使い「…ちょっと目を背けていたんだ。向き合わせてくれて感謝する」

     その声は届かなかった。

    556 = 550 :

    ――建物内

     どやどやと出てきた人間を数秒かからず伸した後、魔王が顔をあげた。

    魔王「む」

    「どうしました」

    魔王「いや、魔法使いが壁を乗り越えた気がしてな」

    「物理的に?」

    魔王「精神的に」

    「えっ?」

    蝙蝠「デンパ、デンパ!」

    「何を言ってるんだおまえは」

    魔王「ともあれ。悩ましいところだな……」

     二つの分かれ道を交互に見比べながら魔王は言う。

    魔王「“人魚”を救うか、魔法使いを救うか――どちらを先にするか」

    557 = 550 :

    ううむ…

    続く

    558 :

    乙、読心の女は腹立たしい良いウザさだな

    559 :

    烈火の炎のあの子思い出した

    560 :

    魔王様に電波って言う蝙蝠スゲぇっす!

    561 :

    烈火の炎か・・・懐かしいな

    563 :

    あれはいいおっぱいだったな

    564 :

    蝙蝠さんはきっと大物になる

    565 :

    乙乙!
    蝙蝠可愛いな

    566 :

    きっとハリーポッターのアラゴグぐらい大きくなる

    567 :

     右からは多数の魔物の気配。
     左からはそれより少し強いなにかの気配。

    「…魔王さま」

    魔王「なんだ」

    「先に、“人魚”達を救出するほうが良いかと思います」

    魔王「……」

    「小娘たちは…恐らく、自力でなんとかするでしょう」

     魔法使いのほうばかりに気をとられてはいけないのだ。
     魔物の王である彼は真っ先に魔物である“人魚”を救い出すべきで。

     “人魚”も魔法使いも、それぞれここから遠く、しかも逆方向。

     どちらを救うためには――どちらかを見捨てなければいけない。

    568 = 567 :

    (……見捨てる、はないか)

    (ただ…生存確率が半分になることは確か)

    (片一方が逃げられたことに激昂し、殺してしまう可能性だってある)

    魔王「……」

    (…辛い判断でしょうが…)

    魔王「そうだな。まず“人魚”からだ」

    「はっ」

    魔王「待たせたな、蝙蝠。行くぞ」

    蝙蝠「ウン、コッチダヨ!」

    569 = 567 :

    ――とある部屋

    蝙蝠「タブンココ!」

    魔王「……」ガチャ

    「これは……」

     青い光が部屋を満たしていた。
     巨大な水槽。
     その中に浮かぶ、傷ついた“人魚”達。
     意識がないものが大半だった。

    「何故こんな姿に…」

    魔王「真珠を出させるためだろうな」

    蝙蝠「ダサセルッテドウヤッテ?」

     魔王はすぐには答えず近くに放られていた物体を持ち上げる。
     鞭だった。

    魔王「こんなやつで痛めつけて、泣かせるんだろうな」

     瞳に表情は無かった。

    570 = 567 :

    魔王「商売のためだけに。それだけでこいつらは傷つけられた」

     鞭は一瞬で炭くずと化した。

    魔王「――誰も生かしておけないな」

    「」スッ

    側近「魔王さま……」

    魔王「側近、海の位置は分かるか」

    側近「はい」

    魔王「今からお前に魔力を注ぐ。そして“人魚”と海に転移しろ」

    側近「え!?」

    魔王「術師無しでも移転はできるが――安全性はそのぶんなくなるからな」

    魔王「弱った“人魚”を陸に打ち付けるなどできない」

    側近「そうですね」

    魔王「頼まれてくれるか」

    側近「拒む理由などどこにありましょうか?」

    571 = 567 :

     魔王は水槽に近寄る。

    魔王「聞こえるか」

    「……え?」「誰?」

    魔王「今、お前たちを海に連れていく」

    「!?」「え、夢?」「夢なの?」

    魔王「移転を行う。少し我慢しとけよ」

    「まお…魔王、さま?」「わたしたちのために?」

    魔王「側近」

    側近「はっ」

     魔王は指の肉を噛みちぎり、側近は自らの翼を小さく傷付けた。
     互いの血液を当て、魔王は魔力を傷越しに送り込む。

    魔王「体液同士を触れあわせないといけないというのは面倒だな」

    側近「そうですね」

    魔王「気をつけろよ」

    側近「ありがとうございます」

    572 = 567 :

     強い魔力を送られたからか一瞬ふらついたが、側近は水槽に寄る。
     魔王が少し遠くに離れたのを確認して、自分と水槽を魔法陣で囲う。

     そして消えた。
     後に残ったのは魔王と蝙蝠と、

    魔王「……水槽だけは残したのか。側近の魔法もなかなかのものだな」

    蝙蝠「ソッキン、マホウ、ツカエルノ?」

    魔王「使えるさ。日頃はあまり使わないだけで」

    蝙蝠「ナンデダロ?ツカエルナラ、ツカエバイイノニ」

    魔王「ほら、よく言うだろ」

    魔王「能ある鷹は爪を隠す――ってな」

    蝙蝠「ソレ、ウマイトコニ、イレテキタネ!」

    魔王「ふん。さ、おれたちは魔法使いのところに向かうぞ」

    573 = 567 :

    ちなみに魔王さんはドヤ顔でした
    続く

    574 :

    おつおつ

    575 :

    >体液同士を触れあわせないと
    ・・・ふぅ

    576 :

    乙乙

    578 :

    乙乙!

    581 :

    ――牢付近

    「……」ポカーン

    魔法使い(しまった)

    魔法使い(ついこの子の前で本来の姿になってしまった)

     緊急事態ではあったが、迂闊だったとも思う。
     少女との間に亀裂が入ることは避けたかったのに。
     …先ほどから混血混血言われているのでもう手遅れかもしれないが。

    「……」

    魔法使い「えっと、その」

    「…て……」

    魔法使い「て?」

    「お兄さん、天使さまだったんだ!?」

    魔法使い「は?」

    「こんけつって、天使さまのことだったの?」

    582 = 581 :

    魔法使い(あ、そもそもそれ自体知らなかったんだ)

    魔法使い「いやなんというか、私は天使じゃなくてだな…」

    「でも、羽があるし」

    魔法使い「うう……これには深い理由があって…」

    魔法使い(天使、か)

     金色の髪に青い瞳、そして白い翼。
     神のつかいといわれるそれと言われたのは初めてだった。

     魔法使いは黒に近い茶色の髪と瞳、そして若干まだらな模様のある焦げ茶色の翼を持つ。
     どうみたってそんな美しい存在じゃない。そう考えた。

    583 = 581 :

     だがしかし、ここで混血について教えるよりこのまま天使として誤認識させておいたほうが
     この先楽なような気がしてきた。わざわざ仲が割れるようなことは言いたくないし。

    魔法使い「……天使に近い存在だよ」

    「そうなんだ!」

    魔法使い「う、うん」

     心が傷んだ。

    「嬉しいなぁ…天使さまが助けに来てくれたんだね」

    魔法使い(不意討ち食らって牢に放り込まれたけど)

     むしろ助けられたのは魔法使いだったりする。
     我ながら情けない。

    584 :

    乙乙!

    586 :

    魔法使い「よし、じゃあここを出……っ!?」

     ぞわりと。
     本能的な恐ろしさを感じた。

    「どうしたの?」

    魔法使い(この魔力…魔王か?)

    「天使さま?」

    魔法使い「あ、い、いや。なんでもない」

    「?」

    魔法使い「それと天使さまはやめようよ。なんだかむず痒くなる…」

    「うーん。天使さんは?」

    魔法使い「あんま変わってないような……まあいいか」

     少女と手を繋いで、歩き出す。
     騒ぎで起きた見張りはいたが、魔法でダウンさせた。

    魔法使い「早く家に帰らないとね」

    「うん!」

    587 = 586 :

     一見すれば仲良さげな背中が完全に牢から消えた後。

     腹を抱えながら女がよろよろと起き上がった。
     目には憎悪を浮かばせて。


    「壊してやる」


     そして、翼の去った方向に駆け出した。

    589 = 586 :

    ……

    魔法使い(ああそうだ…この姿になると)

     十数人に囲まれながら魔法使いは思考する。
     元々ここに雇われていたらしき人間や、兵士の恰好をした人間。
     矢や剣を手にジリジリと間合いを詰めて来ている、

    魔法使い(人、殺したくなるんだよな)

     不思議と少女は殺したくはないが。
     恐らく守ってあげたいという感情のほうが強いのだろう。

    魔法使い「しばらく、何も見えなくなって、何も聞こえなくなるけど良い?」

    「えっ……怖いよぅ」

    590 = 586 :

    魔法使い「うん…ちょっとだけだから」

    「……そばにちゃんといるなら、いいよ」

    魔法使い「いるよ。手を繋いだままでいるから」

    「じゃあ」

     コクリとうなずいた少女の頭に片手をのせて小さく呪文を呟く。
     一時的なものだが生身の体を相手にしているためにわずかに緊張する。
     少女の目の前に手を振ってみせても反応しないことを確認して、魔法使いは「さて」と辺りを見回す。

    魔法使い「お待たせしたな。ここからは未成年の教育にはよくないから」

    591 = 586 :

     誰も彼も無言だ。
     矢はほぼ魔法使いに狙いをつけて、あとは射つだけ。

    魔法使い「忠告するが――もし攻撃するなら、お前たちの命はない」

    魔法使い「私は攻撃してきたら普通に殺すぞ?」

     たじろくような空気が表れた。
     頭の中で適切な魔法陣を浮かべながら最終警告をする。

    魔法使い「攻撃するな。私たちは帰りたいんだ」

    「―――射て!」

     弓が穿たれた。

    592 :

    なんていいところで・・・
    寝落ちかい?
    なにはともあれ乙!

    593 :

     矢が放たれて数十秒後。

    魔法使い「……だから言ったのに」

     魔法使いたちの周りで立つ人間は誰一人としていなかった。

    「な、なぜ……矢が、効かない…あの矢は、魔法を…」

    魔法使い「簡単なことだ」

     血だまりの中で蠢く人間を魔法使いは冷ややかな眼差しで見やる。

    魔法使い「魔法が通じないなら、直接的な魔法で戦わなければいい」

    魔法使い「だから強風を起こして矢を叩き落とせたんだよ」

    「むちゃくちゃだ…」

    魔法使い「…賭けだったけどな」

    594 = 593 :

    魔法使い「でもまあ、結果オーライか。これで対策も分かった」

    「忌み子が……呪われてしまえ…」

    魔法使い「呪い子がこれ以上呪われたらどうするんだよ」

    「貴様らは…いないほうが、世のためなんだよ…!」

    「この世界は、人間のものだっ!」

    魔法使い「――言いたいことは、それだけか」

    「はん……貴様なんかに殺されてたまるか」

     皮膚を切り裂いた音と、液体が床に滴り落ちる音。
     魔法使いはそれを黙って見届けて、目を伏せた。



     彼女が少女を抱き抱えてそこを出たとき、生きている者はいなかった。

    595 :

    風なんて吹かして少女に当たらないのか?

    596 = 593 :

    ……

    魔法使い「ここまでくればいいか」パァァ

    「ん……終わったの?」

    魔法使い「終わった」

    「あの人たちは?」

    魔法使い「…ごめんなさいって、帰っていったよ」

    「そうなんだ。なんか、すごい生臭かった気がする」

    魔法使い「それは…」

     真実は言えない。

    魔法使い「みんなで魚捌いていたんだ」

    「魚捌いていたの!?」

    魔法使い「だから生臭かったんだと思う」

    「え、そうなんだ…へぇ…」

     自分で嘘をついといてなんだが、もう少し人を疑うべきだと思う。

    魔法使い「ん、広い通路だな…ここ行ってみるか」

    「うん!」

    597 = 593 :

    >>595
    魔法使いと少女の場所は台風の目みたいな感じだったと思って下さい

    598 = 595 :

    >>597
    わざわざありがとう

    599 = 593 :

    ――通路

    魔王「魔法使いの近くに来ているな」

    蝙蝠「ソウナノ?」

    魔王「あいつの魔力が強くなってきている」

    蝙蝠「フゥン。ネェネェ、マオウサマ!」

    魔王「なんだ」

    蝙蝠「マホウツカイッテヒト、ドウオモッテル?」

    魔王「ふむ…そうだな。見所のあるやつだと思う」

    蝙蝠「ソレダケ?」

    魔王「それと、質問から離れるがあいつを考えると胸が苦しい」

    蝙蝠「ビョウキ?」

    魔王「だとしたら嫌だな」

     蝙蝠はまだ子供で、魔王は色恋とは離れて暮らしていたために発言の重大さを分かっていない。
     恐らく側近あたりが聞いたら身悶える話を魔物たちはしばらくしていた。

    600 = 593 :

    魔王「誰か来たか」

     直進か左右かの分かれ道。
     右から足音が聞こえた。間隔からして走っている。

    「…っはぁ、見つけ…あれ?」

    (回りこんだはず…まさか途中で曲がった?)

    魔王「なんだお前は」

    「あんたこそ誰よ…みたことない顔だけど」

    魔王「だろうな。少し人探しをしている」

    「……男装した混血のこと?」

    魔王「それだな。知っているのか」

    「知っているもなにも、用があるんだよね」

    魔王「ほう。どんな?」

    「その前にちょっと覗かせてね!」

     話している相手が誰かもしれず、ただ恨みでここまで動いていた女は
     いつものように敵の弱点を汲み取ろうとした。


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