元スレ魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
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251 :
漏らしたか……
252 :
漢字と語彙力の低さに絶望している今日この頃
始めます
253 = 252 :
魔法使い「……」
倒れた戦士をしばらく無表情で見つめる。
脇腹に意識を向け、傷の程度を確認した。
血は止まっているとはいえ、重症。
内臓も傷ついただろうし、もしかしたら致命傷かもしれない。
医学にはあまり明るくないので推測するしかなかったが。
魔法使い「…本当に僧侶の治癒魔法を真似できたらなぁ…」
小さく呟いた時。
気が緩んでしまった時。
興奮状態がおさまり、受けた傷の痛みが強くなってきた、その時。
最悪のタイミングで、黒い影が襲いかかってきた。
254 = 252 :
魔物A「ウガアァァァァ!!」
魔法使い「!?…こんな時に!」
空を切るように手を振る。
宙に魔法陣が現れ、それと同時に魔物が横に切れた。
ぶしゃっと血が飛び散る。
それで終わりではなかった。
後ろから二匹目の魔物が飛び出てくる。
魔法使い「……っ!」
痛みと疲労により足が縺れ、尻餅をついた。
猪のような形をしたそれは、魔法使いに一直線に突進してくる。
頭が真っ白になり、身体が動かない。
魔法使い(ここで――終わりか?)
突然目の前が暗くなった。
255 = 252 :
魔法使い「…?」
痛みは襲ってこない。
撥ね飛ばされた気もしない。
目はしっかりと開いているはずなのだが。
まるで何かが覆い被さっているような。
それは羽毛、のようだった。
魔法使い「あなた、は…」
見上げると、見慣れない誰かがいた。
人間の形をして、それでいて鳥の形をしているもの。
聞いたことがある。
いや、知っている。
鳥人族。
側近「――同類が危機ならば、助けなければならないからな」
最近聞いたことのある声で、彼は言った。
256 = 252 :
わずかに考えて、それがあの鷹だということに気づいた。
魔法使い「でも、私は――」
側近「混血だな。人間と魔物の」
魔法使い「半端者を――あなたは、今、守っているんですよ」
混血は異種間で産まれた汚れた存在だ。
人間にも魔物にも、忌まわしい存在として嫌われ、最悪殺される。
この状況は、どう考えても魔物から自分を守っている。
なぜなのか。
側近「駄目か」
魔法使い「そういう、わけじゃないです、が…私みたいな存在は、迫害されてて…」
257 = 252 :
側近「誰もみていない」
魔法使い「…魔王は?」
側近「そちらで馬鹿どもを粛正している」
魔法使い「……」
そっと地面に寝かせられ、魔法使いには空しか見えなくなった。
不完全な丸い月。
魔法使い(満月に魔力は強まるんだったか)
なら、何故自分は今日いきなり魔力が強くなったのか。
いくつもの満月を越えたが、こんなことは前に一度きりだけだ。
痛みが強くなり、目がまわる。
視界に、角の生えた美しい男が入り込む。
魔王「よう、一日ぶり」
258 = 252 :
魔法使い「…大変な時にいないな、あなたは」
魔王「タイミング悪いよな。仕事を片付けててな」
魔法使い「私が、混血だと気づいていたか?」
魔王「ふん、最初から薄々な。杖から魔力は感じられなかったから怪しんではいた」
魔法使い「…そうだったな」
魔王「で、普通は魔力を持ち得ない女だった。側近の話と統合すると、なんかの魔物と人間の愛の結晶だなと」
魔法使い「そうか…それで、魔王。私はどうなる?」
金色の目がきょとんとした。
魔王「どうなるとは?」
259 :
魔法使い「魔物と人間が、結ばれることは、禁忌だ。その子供も、然り」
痛みに顔を歪ませながら続ける。
魔法使い「王にとって、私の存在は――許せるのか?」
魔王「ふむ。なら言わせてもらおう」
魔王は手の甲を自らの爪で傷つけ、垂れてきた血を魔法使いの傷に注ぐ。
急速に傷が癒えていく。
魔王「歯向かう奴には容赦はしないし、助けを乞うものには手をさしのべる」
魔王「その逆もあるし、例外もある。気分にもよるし、厳格に行うときもある」
魔王「つまり、おれがルールだ」
魔法使い「……流石、魔王だな」
そして魔法使いの意識は途切れた。
260 = 259 :
魔王「…なるほど。そういうのを忌む奴もいたな」
側近「はい。そこの連中もそうでしょう」
翼で倒された魔物達を指す。
側近「一昨日あたりの生き残りですかね」
魔王「何故ここまではるばるときたのか不思議だな」
側近「そこの放出されるわずかな魔力を辿って来たのでしょう」
側近「混血の内臓は強い魔力を与えてくれるとも言いますし」
魔王「ほう。まだおれへ対抗する気だったか」
側近「…一時は大量生産や乱獲もあったそうですよ。美容にいいとか、なんとか」
261 = 259 :
魔王「ふん、くだらん。実際に効果は?」
側近「あるかどうかも不明です」
側近「それでも今だに裏取引をされているともっぱらの噂ですね」
魔王「なら、こいつはよほど運がいいやつなんだろうな」
側近「でしょうね。かなり恵まれているほうでしょう」
魔王「はん――とりあえず誰かに見つかる前に人間の姿にしといてやらないとな」
ごそごそやりはじめた魔王に側近が後ろから疑問を投げ掛ける。
側近「あの、魔王さま――その小娘のこと、気に入ったのですか?」
262 = 259 :
魔王「さぁな。――なんだろうな、放っておけないというのか」
側近「……」
魔王「この娘はなかなか面白いことをするから目が離せないというのか」
側近「……」
魔王「そっちの男に丁度刺されているところを見たとき、どうしてか不快だったが――」
側近「……」
魔王「おそらく気に入ったのだろうな。面白いから」
側近「……そうですか」
色々考えたあと、そうだこの人恋愛経験皆無なんだ、と側近はようやく気がついた。
264 :
おつおつ
268 :
魔王(童貞)
269 :
>>268
世の中には知ってはいけない、もしくは知ってしまっても口にしてはいけない事というのがあるんだよ?
270 :
>>269 大人や!
271 :
>>269
魔王様何やってんすか?
272 :
確かに魔王童貞だわ…
始めます
273 = 272 :
側近「しかし」
魔王「ん?」
側近「今日は満月ではありません。ならなぜ、小娘の魔力があそこまで暴発したのか…」
力の扱いになれていないものが力を暴走させることは珍しくない。
魔法使いの場合、出来るだけ魔力を抑えていたから尚更だ。
魔王「…完全な魔物じゃないって意味なんじゃないか?」
魔王「新月でも三日月でも満月でもない、半端な月」
魔王「混血を表す――最高の皮肉だとおれは思っていたがな」
側近「……そうですね」
魔王「ま、そんな話は後だ。こいつらをどうするかが問題なわけだが」
274 = 272 :
側近「このまま放置してもよろしいのでは?小娘もいずれ目覚めるでしょう」
魔王「だとすると、そっちの戦士とやらが先に起きる可能性があるぞ」
魔王「今度こそ殺されかねん」
側近「なら殺してしまえばいいではないですか」
魔王「…同類傷つけた相手にはとことん厳しいよな、お前ら一族」
側近「どこも同じだと思いますが」
魔王「そんなもんか。――手っ取り早いのが誰かをここに連れてくることだが」
側近「事件のせいで外を歩く人間はほとんどいないでしょうね」
魔王「それなんだよな」
275 :
側近「困りました」
魔王「困ったな」
側近「やっぱりそこの男を」
魔王「そうなると魔法使いに容疑がかかりそうだけどな」
側近「ううむ…。下手なことして小娘に恨みを買われるのも厄介ですね」
魔王「困ったな」
側近「困りましたね」
オーイ
魔王「おや。どうやら、ここで悩んでいた甲斐はあったみたいだな」
側近「あれは?」
魔王「憲兵隊みたいだな。ふん、ようやくご到着か」
側近「めんどくさくなる前に、退散しますか」
魔王「そうだな。行くぞ」シュンッ
276 :
魔法使い… 別の意味で処刑されそうなので拾って行きます。
278 = 275 :
―――
――
―
魔法使い「……っ!!」ガバ
僧侶「きゃっ」
魔法使い「ゆ、夢か……」
僧侶「夢、ですか?」
魔法使い「ああ…勇者と盗賊が死んで、戦士が犯人で、僧侶の腕が大変なことになった夢を…」
僧侶「あの、それ…現実です」
魔法使い「……」
僧侶「現実です」
魔法使い「……現実か」
僧侶「残念ながら…」
279 = 275 :
魔法使い「そうだ僧侶、腕は!腕はどうなったんだ!?」
僧侶「あぁ…この通り、欠けてしまいました」
魔法使い「そんな」
僧侶「離れたものは流石に、生やしようがありません…」
僧侶「でも、今までどおり治癒魔法は使えますよ。…あと、利き手じゃなくて、良かったです」
魔法使い「そういう問題じゃない!…私がもっと早く行けば…」
僧侶「やめて下さい。魔法使いさんが、取り乱してまでわたしを探したと聞いています」
僧侶「――わたしは、それで十分なんです。それにこうやって生きているんですから、ね」
魔法使い「……」
280 = 275 :
僧侶「魔法使いさんこそ大丈夫なのですか?丸三日は眠っていましたよ」
魔法使い「え」
僧侶「怪我はないとはいえ、おびただしい血が魔法使いさんのローブや周りの地面を濡らしていたみたいです」
魔法使い「……」
僧侶「私が見た限り、うっすらと傷が塞がった後がありましたが…」
僧侶「誰かに治療をしてもらったのですか?お礼を言いにいかないと…」
魔法使い「……。さあ、どうだろう。記憶がなくて」
僧侶「記憶喪失ですか!?」ガタ
魔法使い「剣士と離れたあたりから全くな…」
魔法使い(言えないことが多すぎる)
281 = 275 :
魔法使い「僧侶こそ、出血が酷かったんじゃ?」
僧侶「剣士さんがお医者さんに連れていってくれて、輸血をしてもらいましたので」
僧侶「かろうじてあった意識の中、止血をしていたのが良かったみたいです」
魔法使い「なるほどな…」
魔法使い「……」
魔法使い「あれ?私、裸……?」
僧侶「あ、すみません!背中の…魔法陣には触りませんでしたから」
僧侶「確かあれに触れると魔法を全て使えなくなるって聞きましたので…」
魔法使い(ごめんそれ大嘘)
魔法使い「ん?」ペタペタ
僧侶「どうしました?」
魔法使い(身体が男になっている…)
282 = 275 :
魔法使い「」ペタペタ
魔法使い(下半身は変わっていない…上半身だけ?)
僧侶「魔法使いさん?」
魔法使い「あ、いや、なんでもない」
僧侶「ともかく、わたしが助かったのは魔法使いさんと剣士さんのおかげです」
僧侶「ありがとうございました」ペコ
魔法使い「そんな畏まって言わないでもいいのに」
ガチャ
剣士「いいじゃねえか。あと、好意は受け取っておけよ」
魔法使い「…すごい自然に入ってきたな」
283 :
>>282 さすがにひげの生えた娘は拾えない…
284 :
また寝落ちごめん
>>283
大丈夫一時的だから
285 = 284 :
魔法使い(まてよ……戦士が私のことについて何か言ってるんじゃ…)
剣士「それで、魔法使い」
魔法使い「な、なんだ?」
剣士「そんな身構えるなよ。なにか聞きたいことは?」
魔法使い「……やっぱり、戦士のことだな」
僧侶「……」
魔法使い「あ、悪い――僧侶にとっては、気分の良くない話題か」
僧侶「いいえ。罪を憎んで人を憎まず、そう教わっていますから」
魔法使い「強いな」
僧侶「魔法使いさんほどではないですよ」
剣士「話していいか?――下手すると、僧侶より酷いことになっちまった」
魔法使い「酷いこと?」
286 = 284 :
剣士「気が…狂っちまったんだよ。話しすら通らない」
魔法使い「は?」
剣士「戦で生きる人間がああなるんだ。恐ろしいモノをみたんじゃないかって話だ」
剣士「憲兵隊によるとあたりの木がなぎ倒されたりしていたらしいからな」
魔法使い「……」
剣士「何があったんだ?」
魔法使い「さあ…私は、なにも覚えていなくてな」
僧侶「記憶が抜けているみたいなんです」
剣士「本当か!?僧侶、記憶を呼び起こすことは?」
僧侶「いいえ…まだそのような技術は出来ていないんです」
287 = 284 :
剣士「そうか……どんなヤツだったんだろうな、そいつ」
魔法使い「……」
剣士「そばに魔物も死んでいたんだと。どうやら一撃らしい」
魔法使い「へぇ…」
僧侶「良かったですね、手を出されなくて…」
魔法使い「全くだ…その誰かさんが傷の手当してくれたのかな」
剣士「え、じゃあなんだ?こっちの味方か?――でも戦士があれだし…」
魔法使い「どうだろうな―――きっと気まぐれなやつなんだよ」
288 = 284 :
魔法使い「それで、戦士は?」
剣士「先に城へ送還されたよ。――勇者たちもいっしょにな」
僧侶「……」
魔法使い「そうか…終わったんだな」
剣士「ああ」
魔法使い(あの老夫婦のことは…また後で行こう)
剣士「俺らも帰れとさ。こんなんじゃ――魔王以前の問題だ」
魔法使い「だな」
僧侶「みなさんは、また新しい“勇者”さまが現れたら…どうします?」
剣士「そうだなぁ…どうすっか」
僧侶「わたしはもう無理でしょうが…魔法使いさんは?」
魔法使い「私は…」
289 = 284 :
『お前の一家をバラされたくないなら、勇者と旅に出ろ』
魔法使い「そうだな――」
『そして、勇者のために戦い、勇者を守り、そして――』
魔法使い「私、あそこの大臣が苦手だからあんまり会いたくないんだよ…」
『国の為に死ね、混血児』
魔法使い「ちょっと、旅に出ようかな…修行もかねてさ」
魔法使い(あの大臣にあったらどんな無茶ぶりされるか)
剣士「“勇者”パーティーには付いていかないと?」
魔法使い「ああ」
剣士「そのほうがいいかもな…疑心暗鬼になっちまいそうだ」
290 = 284 :
僧侶「でも、一度国には戻りますよね?」
剣士「ああ。母ちゃんに会いたいしな」
魔法使い「私も…師匠に挨拶しないと」
剣士「じゃあ、一週間以内にはここを出るか。それでいいな?」
魔法使い「分かった」
僧侶「はい」
剣士「じゃ、魔法使いはちゃんと体力戻しておけよ」ガチャ
魔法使い「分かったよ」
剣士「腹減ったら下来い」バタム
魔法使い「持ってきてくれないんだ…」
僧侶「あはは…。でも意外ですね」
魔法使い「ん?」
僧侶「大臣さん、お嫌いですか。優しいと思うんですけど」
291 = 284 :
魔法使い「ちょっとな…色々あって」
魔法使い(私の正体を何故か知っているし)
魔法使い(それをネタに脅されて討伐にでる羽目になったからな…)
魔法使い(まあ、いいか。これから先あの人から逃げていれば)
僧侶「ふぅん…性格の会う会わないは色々ありますからね」
魔法使い「そうだな」
僧侶「じゃあ、わたしもちょっと横になりますね」
魔法使い「ああ、無理をさせてしまったか…。ありがとうな」ニコ
僧侶「い、いえ!平気ですよ!では!」ガチャバタム
魔法使い「……?」
292 = 284 :
青年「待ちくたびれたぞ」
魔法使い「だからいきなり現れるな。…ひとつふたつ聞きたいんだが」
青年「なんだ?」
魔法使い「なんで私は男性の身体になっている?」
青年「脱がされるのは分かっていたからな。ちょっと魔法をかけておいた」
魔法使い「あ、そうなんだ…てっきり悪ふざけだと」
鷹「魔王さまのお気遣いに感謝しろ小娘!」ザクッ
魔法使い「いっだぁ!?」
青年「明日には元に戻ってる。ま、胸のサイズに変わりはなさそうだがな」
魔法使い「ふざけんな、一応あるからな」
293 = 284 :
青年「しかし良かったな。戦士とやらがお前の存在を脅かさなくて」
魔法使い「良かったのか悪かったのか…」
青年「どうしていた?もし戦士が正気で、べらべらと話していたなら」
魔法使い「その時は――その時、だよ。そうなったら考える」
青年「ふん。そうだ、仲間に感謝を述べるのもいいがこいつにも礼を言っとけ」
鷹「えっ、ま、魔王さま」
魔法使い「?」
青年「夜毎にこっそり具合を見に来ていたんだ。今はそんな親切微塵も見せてないがな」
鷹「いやいやいや魔王さまそれはあの」
294 = 284 :
魔法使い「……」
鷹「恩人の娘ですし――」
魔法使い(恩人?)
鷹「あ、あと鷲一族の最後の生き残りですから」
魔法使い「――それでも、ありがとうございます」ペコ
鷹「う…」
青年「いやー側近が慌ててるなんてめったに見られないから楽しいな」ニヤニヤ
魔法使い「…悪趣味」
青年「よく言われる」
295 = 284 :
青年「さ、では行くか」
鷹「はっ」
魔法使い「……帰るのか」
青年「仕事もたまには見ないとな」
魔法使い「ふぅん」
青年「また会える日を願って」
魔法使い「もう会いたくないけどな、私は」
青年「ふん。そんなに期待するな」
魔法使い「どこをどう勘違いしたらそうなる」
青年「じゃあな、魔法使い」シュンッ
魔法使い「……」
魔法使い「……変な奴だな」
296 = 284 :
休憩
エピソード最終回は今夜から
297 :
乙でした
299 :
乙
ラスト舞ってる
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