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    元スレ魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」

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    201 = 196 :

    ――宿

    魔法使い「戦士はちゃんといるといいんだが」

    剣士「こういうときはちゃんとした男だよ」

    戦士「俺がなんだって?」ノソリ

    魔法使い「いた」

    剣士「いた」

    僧侶「?」

    僧侶(どうして戦士さんの靴が土まみれなんだろう…)

    魔法使い「どうした僧侶?」

    僧侶「いえ…戦士さん、今日はどこかいきましたか?」

    戦士「いや?ずっとここにいたが」

    僧侶「そうですか…なんか靴が汚れている気がして…」

    戦士「ああ、手入れ怠っちまったからな」

    剣士「ちゃんとそういうのはやっておけよ」

    202 = 196 :

    戦士「それどころじゃなかったんだよ」

    魔法使い「まあまあ、ここは争うところじゃないぞ」

    魔法使い「女将さん、何か飲み物をくださいませんか」

    「ええ。今持ってきますわね」

    剣士「女将さん、こんな図体のでかいやつが一日中いて嫌だったでしょう」

    戦士「おい」

    「いえいえ。トラブルも起こさないでくれますし…」カチャカチャ

    剣士「偉かったな」

    戦士「おい」

    「あ、昼時は定食屋として開放していて、戦士さんのことまで頭がまわりませんでしたわ。ごめんなさい」

    戦士「いやぁ…逆に気にされると困るっていうか…」ポリポリ

    203 = 196 :

    「どうぞ」カチャカチャ

    魔法使い「ありがとうございます。一応戦士にも照れってあるんだな」

    戦士「うん、今の言葉ちょっと傷ついたぞ」

    剣士「だったら盗賊のほうがもっと――」

    僧侶「……」

    魔法使い「……」

    戦士「あー……」

    剣士「…今日失言多いな、俺…」

    魔法使い「早めに見つけ出さないと。あの二人の、いや四人のためにも」

    戦士「四人?」

    魔法使い「そうか、戦士は聞いてなかったか…」

    魔法使い「第一発見者とその伴侶が殺されていた」

    204 = 196 :

    剣士(あっさりだな)

    僧侶(わたしたちの時よりあっさりですね)

    剣士(ちょっとめんどくさくなってしまったんだろうな)

    戦士「…酷いな」

    魔法使い「ああ。応対したと見られる夫人はとくに酷かった」

    戦士「人間とは思えねぇな」

    剣士「でも待てよ…そんな細かい芸当ができたってことは、魔物じゃない?」

    魔法使い「うん?話してくれないか」

    剣士「家ん中まで夫人は犯人をいれたんだろ?魔物ならいれないだろ」

    魔法使い「見た目がグロテスクなのもいるからな」

    剣士「しかも人間らしい知恵と伝達方法があったってことだ」

    205 = 196 :

    剣士「と、なると…俺の魔物説も疑い直さないとな」

    魔法使い(まだ考えてたのかそれ)

    戦士「傷跡が剣か、魔物の爪ないし歯かは分かってるのか?」

    魔法使い「それは分かっている。剣だ」

    戦士「剣ねぇ……」チラ

    剣士「…お前まで俺を疑うのかよ」

    戦士「別にそんなわけじゃねえよ」

    戦士「でもまあ、お子ちゃま勇者がいなくなって清々はしてんだろ?」

    剣士「…あのな、戦士。お前やっぱり疑ってんじゃねえか」

    戦士「そもそもな、普通は報酬じゃなくて国のために戦うもんだろ」

    206 = 196 :

    剣士「そこまで引っ張り出すか。じゃあどんな動機なら良かったんだよ」

    戦士「国民のために、国王様のために、お妃様のために、お姫様のために、だろ」

    剣士「今まで王家とかにまったく興味なかったくせにな…」

    戦士「悪いかよ突然興味もっちゃ」

    僧侶「あ、あ、あの」

    魔法使い「……」タンッ

    バッシャアアア

    剣士「つめたぁ!?」

    戦士「冷水!?」

    魔法使い「今、仲間割れしてどうする。頭を冷やせ」

    剣士「体まで冷えてしまったんスけど…」

    魔法使い「……」クルリ トンッ

    ボォッ!

    剣士「あっつぅ!?」

    戦士「乾かし方が強引だろ!!」

    207 = 196 :

    魔法使い「落ち着いたか?まったく…」

    魔法使い「仲間割れが犯人の狙いだったらどうするんだ?」

    剣士「…ごめん」

    戦士「…すまん」

    僧侶「仲直りして良かったです…」

    魔法使い「そうだ。憲兵はまだか?」

    剣士「もう少ししたら来るんじゃね?」

    戦士「ならもう安心だな」

    魔法使い「問題は犯人をしぼれるかなんだけどな」

    魔法使い(ぶっちゃけしぼりこめてはいるんだが)

    剣士「念のため、ちょっと部屋行ってくる。何かなくなってたら嫌だし」

    208 = 196 :

    魔法使い「そうだな。刃物類は特に慎重にな」

    剣士「うい」トントントン

    戦士「ふわぁ」

    魔法使い「なんだかんだで夕暮れ時か…一日が早かったな」

    僧侶「太陽が沈むのも早くなってきていますしね」

    ドッターン ギャア!

    魔法使い「…あの馬鹿、なんかひっくり返したな」

    戦士「ちょっと見ていくか」

    魔法使い「私が行く。またケンカなんかされたらたまらない」

    戦士「へいへい、悪かったですねー」

    魔法使い「一体なにをしたのやら…」トントントン

    209 = 196 :

    戦士「……」

    僧侶「あの、戦士さん」

    戦士「なんだ?」

    僧侶「さっきから気になっていたんですが…ポケットから見えてるその鎖、なんですか?」

    僧侶「なんだか、ネックレスのチェーンみたいな感じがするんですが」

    戦士「…あぁ、これか」

    僧侶「それに、今日どこかに行きましたよね?土がまだ新しいから…」

    戦士「……――む!?」

    僧侶「どうしたんですか!?」

    戦士「魔物の気配だ!近いぞ!」ガタッ

    僧侶「えっ!?」

    戦士「悪い、サポートしてくれ僧侶!」ダッ

    僧侶「え……あ、ええと…待ってください!」ダッ

    210 = 196 :

    トントントン

    剣士「ほんと助かった」

    魔法使い「剣士がランプをひっくり返し…あれ?いない」

    「あ、なんかさっき魔物だぁとか言って出ていっちゃいましたよ?」

    剣士「魔物?」

    魔法使い「…戦士と、僧侶が?」

    「その時はこっちいなかったから分かりませんが、多分二人だけで」

    「お客さんもいないし、どっちに行ったかは分からないですね…」

    魔法使い「……剣士、かなり不味いぞ」

    剣士「不味いって、なにが?」

    魔法使い「戦士が魔物を察知して出ていった、そうなんですよね?」

    「はい…」

    211 = 196 :

    「魔物の気配がどうたらこうたらって」

    魔法使い「…くそっ!剣士、急いで出る準備をしろ!」

    剣士「な、なんだよ?」

    魔法使い「気づけ!何ヶ月このパーティーで行動してきたんだ!」

    剣士「う、うん」

    魔法使い「魔物の気配を察知できるのは私と勇者と、微弱なら僧侶だけ!」

    剣士「そ、そういえばそうだよな…。俺も戦士も魔物の気配を掴めな…なに!?」

    魔法使い「そうだ!戦士は分類からすれば一般人、魔物の気配なぞ遠くから分からない!」

    剣士「じゃ、じゃあなんだ!?戦士は……」

    魔法使い「何故虚偽の事を言ってここから飛び出した?何故僧侶を連れていった?」

    剣士「…まさか、僧侶はなにかマズいことを言ったのか」

    魔法使い「恐らくな!手分けして探すぞ」

    魔法使い「――下手すると、僧侶が危ない!」

    212 = 196 :

    ――街

    剣士「魔法使い!」

    魔法使い「なんだ、いたか!」

    剣士「お前が落ち着け!――居場所を割り出す魔法を」

    魔法使い「…そうか。でも、私は」

    剣士「僧侶が使ってたカップを借りてきた。どうだ?」

    魔法使い「…少し劣るが、やってみよう」コト

    コツッ

    魔法使い「……」

    剣士「……」

    魔法使い「…森だ」

    剣士「森?確か遠いよな」

    魔法使い「走るしかないだろう」ダダッ

    剣士「転移魔法使えないのか!?」ダダッ

    魔法使い「一切使えない!」

    剣士「うおおおお!僧侶ぉ!!」ダダダ

    213 = 196 :

    ――森の近く

    剣士「…民家がないと、さすがに静かだな」

    魔法使い「ここらのはずだが…移動したか?」

    剣士「そうか、こっちが移動している間にあっちも移動してるかもしれないんだよな」

    魔法使い「まだ遠くは行っていないはずなんだ…」

    魔法使い「苦手だけど生体探索を…ん?」

    剣士「魔法使い?」

    魔法使い「あれは……」

    剣士「どうした?何かあったか」

    魔法使い「あの白いの、なんだろう」スタスタ

    剣士「棒みたいだな、形的に」

    魔法使い「――……いや」

    剣士「…おいおい、これってまさか」

    魔法使い「まだ温い。血も、完全に固まっていない。それにこの指の形…」



    魔法使い「僧侶の、片腕だ」



    214 = 196 :

    続く

    216 :



    いいところで切りやがってちくしょう
    面白いなこれ

    217 :

    大詰めだな

    218 :

    焦らすか…

    219 :

    僧侶ぉおおおおお!

    220 :

    剣士「は……は…う、嘘だろ?」

    魔法使い「嘘だと思うなら自分で見てみろ。…少なくとも、私にはそうみえる」

    剣士「……」

    剣士「…………」

    魔法使い(傷口から見るに引きちぎられたようだな…)

    剣士「…そうりょ……」

    魔法使い(他にむごいごとされてないといいんだが…)

    剣士「なんなんだ?これって、戦士は…犯人なのか…?」

    魔法使い「……ああ。私が考える上ではな」

    剣士「頼む、説明してくれ。頭がこんがらがりそうだ」

    剣士「分かった。だが、僧侶を探しながらだ」

    221 = 220 :

    魔法使い「まず、私はハナから魔物の仕業だとは考えてなかった」

    魔法使い「勇者に近いものの犯行だと――最初から検討をつけていたんだ」

    剣士「……」

    魔法使い「ああ、分かってるさ。私は少しとはいえ仲間を疑っていた」

    魔法使い「正直、どうやって戦士が勇者を呼び出したのかは知らない」

    魔法使い「ただ、その時点で凶器は持っていたはずだ」

    剣士「商人のおっさんが、初心者っぽい男が剣を買ったと言っていたな」

    魔法使い「そうか。――泥酔した勇者を力ずくで斬り伏せるのは、力のあるものならできると思う」

    剣士「そうだな。元々、怪我をさせやすいように――殺しやすいように作られたものだからな」

    222 = 220 :

    魔法使い「…私には第一発見者が何を見たのか分からない」

    魔法使い「ただ、『先入観』はいいヒントではあった」

    魔法使い「剣をつかうからって“剣士”とは限らない」

    魔法使い「次に、盗賊」

    魔法使い「あの前日、なにか話していたんだよ。盗賊と戦士が」

    剣士「そうだったな」

    魔法使い「おそらく盗賊は戦士の弱味かなにか握っていたんじゃないか?」

    剣士「…だからあんなとこに呼び出して殺したと?」

    魔法使い「そう考えるのが自然だ。あいつ、金儲けしか考えてなかったしな」

    剣士「……。じゃあ金を盗んだのは?」

    魔法使い「盗賊が生きていると思わせる小道具だよ」

    魔法使い「だからって、今このタイミングで仲間の金をとって逃げるのは些か無理があるが」

    223 = 220 :

    剣士「そうだな。下手すると自分が疑われる――指名手配がかけられるだろうし」

    魔法使い「それに。盗賊が金だけ律義に盗むわけないじゃないか」

    剣士「……だよな」

    魔法使い「第一発見者は、多分住所のメモを覚えていたんだ」

    剣士「みんなに見せるようにしてしまったからな…」

    魔法使い「私がうまくいかなかったことに安堵しただろう」

    魔法使い(そしたら、私も犠牲者に名を連ねていたかもしれない)

    魔法使い「ここまで仮説をべらべら喋ったが――訂正はあるか?戦士」

    224 = 220 :

    剣士「戦士?」

    魔法使い「向こうの木の横だ」

    剣士「…見えた」

    戦士「こうなったら、全員殺るしかないな」

    魔法使い「ふむ。では私の仮説はだいたい合っていたのか」

    戦士「余裕そうだな」

    戦士「そうだよ。勇者を殺したのも盗賊を殺したのも夫妻を殺したのも、俺だ」

    剣士「僧侶は!?」

    戦士「『まだ』死んじゃいねぇぜ?」

    剣士「くそぉっ!」

    魔法使い「やめろ。冷静を欠いた剣士が今突っ込んだら負ける」

    剣士「っ」

    225 = 220 :

    戦士「ほんっとーにさぁ…勇者は、資格なんかないんだ」

    戦士「何故あいつが選ばれた!?“勇者”に!何故俺じゃなかった!」

    戦士「あんな女遊びをするやつが、姫様と結ばれる気でいたんだ!」

    魔法使い「……」

    戦士「姫様のもらいもんだよ…勇者から貰ったんだ」チャリ

    魔法使い「奪ったんだろ」

    戦士「これがふさわしいのは俺なんだ。俺だけなんだよ!」

    戦士「なのに…あいつはせせら笑いやがった!負け組を見るようにな!」

    戦士「――それで、思ったんだ」

    戦士「“勇者”になれないなら手を汚してでも“勇者”になればいいと気づいたんだ」

    226 = 220 :

    戦士「殺して、しばらくしてネックレスをとりに行った」

    戦士「そしたら通行人――第一発見者だな――に見られた」

    戦士「どんな顔してたんだろうな。思いっきり睨んだら逃げちまったよ」

    魔法使い(ご主人は戦争の記憶でも蘇ったのだろうか…勇者血まみれだったしな)

    戦士「そしたらなんで気づいたか盗賊だ。俺の秘密を弱味にして交渉してきた」

    戦士「むちゃくちゃな交渉だったよ。あれは、俺が路頭に困るぐらいの金額だ」

    剣士「……」

    戦士「だから、殺した。殺した方が手っ取り早いって知っているからな」

    227 = 220 :

    戦士「あとはお前の想像通りだよ、魔法使い」

    魔法使い「…やれやれ」

    魔法使い「『第一発見者がどんな凶器で殺されたか知らないのに剣ないし牙の傷だと推測した』」

    魔法使い「それをたった今考えたが、無駄になってしまったようだな」

    戦士「冥土の土産には十分か?」ザッザッ

    魔法使い「僧侶は?」

    戦士「あっちに転がっているよ。ピーピー煩かったからな」

    剣士「このっ……!」

    魔法使い「剣士。僧侶を安全なところへ連れていけ」ボソ

    剣士「お前は?」ボソ

    228 = 220 :

    魔法使い「こいつを引き留める」ボソ

    剣士「ば……!なら、俺も!」

    魔法使い「重症の僧侶を放置するならいいぞ」ボソ

    剣士「……っ」

    魔法使い「行け。――足手まといだ」ボソ

    剣士「わぁったよ!」

    魔法使い「こちらから行くぞ、戦士」コツン

    ゴォォォ

    戦士「ぐぅっ!?」

    剣士「」ダダッ

    戦士「しまっ――」

    魔法使い「ほらほら、戦う相手が違うんじゃないか?」

    戦士「ちぃっ…」


    剣士「僧侶!」

    僧侶「…」グッタリ

    剣士「止血を…」ギュ

    剣士「任せたぞ、魔法使い…!」

    229 = 220 :

    魔法使い(行ったか)

    戦士「隠せると思ったんだけどなぁ」スラリ

    魔法使い「…剣、か」

    戦士「一度は埋めたんだよ。だけど僧侶が気づいちまって」

    魔法使い「……あのさ。思ったこと言っていいか」

    戦士「あ?」

    魔法使い「くだらない」

    戦士「――なんだと?」

    魔法使い「くだらないと言ったんだ」

    魔法使い「一人殺して、ズルズルと何人も殺害して」

    魔法使い「その動機が姫様への淡い恋心なんだからな。彼女もかわいそうだ」

    230 :

    なんかどっかで見た気がする

    231 :

    >>230見たいなレスはあちこちでよく見るよww

    232 = 220 :

    戦士「――お前に何が分かるってんだよ!」

    戦士「俺は姫様のためにこの仲間<パーティー>に入った!」

    戦士「全ては姫様のためだ!それの何が――」

    魔法使い「なにもかも他人に投げつけるな!あたかも姫様のせいみたいじゃないか!」

    魔法使い「仲間は、どうだって良かったのか!?」

    戦士「うるさいんだよ!!――死ね!」ザッ

    魔法使い「土の壁!」ヒュッ

    戦士「効くかぁ!」ボガッ

    魔法使い「憲兵に大人しく自首しろ。逃げ切れると思うな!」

    戦士「やってみないと分からないだろうが!」

    233 = 220 :

    魔法使い(こうなったら――)ガンッ

    戦士「!?」

    魔法使い(石を当てて何ヵ所か死なない程度に損傷させるか――)

    ガラガラガラ

    戦士「うわぁ!」

    魔法使い「悪いな、死にはしないが――」

    234 = 220 :

    >>230
    多分どっかで影響受けてるんだろうね…

    235 = 220 :

    『初めまして。オレは勇者』

    『えっと、わたしは僧侶です!』

    『盗賊です?』

    『剣士。よろしくな』

    『あー、俺は戦士だ。まあよろしく』

    『私は魔法使い』

    『これからオレらは魔王倒すまで一緒だからな!頼むぜ!』

    236 = 220 :

    魔法使い(…仲間を傷つけていいものか?)

    魔法使い(仲間を殺した男とはいえ、私がこの男を傷つける理由に――)

    戦士「はぁっ!」ドガ

    魔法使い「ぐぅっ」ズサァ

    戦士「いってぇな…よくもやってくれたな」ヒュンヒュン

    魔法使い(ちっ…少し、迷った)

    戦士「これがなければ魔法使いクンはただの人間だぁな?」バキッ

    魔法使い「あ、杖」

    戦士「……なんだよ商売道具折られたのにその反応。使えなくなったんだぞ?」

    魔法使い「…まあ、そうだな」

    237 = 220 :

    戦士「余裕そうだな」ザクッ

    魔法使い「ガッ……!?」

    戦士「ほらほらどうした?まだ刺されただけじゃねえか」グサ

    魔法使い(駄目だ…駄目なんだよ)

    魔法使い(私がこれから先人間として生きるためには、使っちゃだめなんだ)

    戦士「ん?なんだこれ…サラシ?」

    魔法使い「あ…」

    戦士「…お前、まさか、女だったのか?」

    魔法使い「……」

    戦士「なるほどな…同室に頑なだったのも男装がバレるからか」

    魔法使い「……」

    238 = 220 :

    戦士「まさか本当にいるとは思わなかったが」

    戦士「勇者に同行してなにをするつもりだったんだよ?――“魔女”」

    魔法使い「……」

    戦士「さっきの威勢のよさはどうした?」

    魔法使い(出血多量で死にそうなだけだよ)

    戦士「そうか…全部“魔女”のせいにすれば事は済むのかな」

    戦士「そんなら、証拠の首を貰うぜ。混血児」グッ

    魔法使い「!」

    魔法使い(私――死ぬ――殺される――殺される?)ドクンッ

    魔法使い(な、力の、制御が、できない)

    魔法使い(…――満月が近い?――強い力に共鳴?――魔王?――)

    239 = 220 :

    戦士「?なんだよ、静かになって…」

    魔法使い「う」



    魔法使い「ぅぅぅぅあああああああああ!!」バサァッ




    青年「おいおいおい。ちょっと離れていたらずいぶんと進展してるじゃねーか」

    青年「仲間外れはよくないぜ。元から仲間じゃないけど」

    「……」

    青年「側近、見とけよ。お前ら一族の苦しみの種は除かれたぜ」

    「そのようですね」

    青年「さて、どうする?助けにいくか?」

    「…しばらく様子見で」

    青年「ふん。そうしよう」

    240 = 220 :

    大風呂敷を綺麗に畳めなかった
    続く

    243 :

    俺も、様子見…

    244 :



    路頭には迷うものであって困るものではないよね

    245 :

    ―――
    ――


     ぼたぼたと戦士に斬られ刺された箇所から血が溢れ出てくる。
     だが、魔法使いは傷口に片手を添えるだけですぐさま止血には動かない。
     魔法使いにとって、それを気にかけている場合ではないのだ。

    魔法使い「いたい……」

     刺されたときだって痛かったが、この背を焼くような痛みはもっと酷かった。
     それは瞬間的なものではあったが、まだつづいているようにすら思えた。

     彼女はよろりと立ち上がる。

    戦士「つ、翼が……」

     戦士の言う通り、魔法使いの背中から一対の大きな翼が生えていた。

    246 = 245 :

     翼といえども幼児が思い描く、天使の背についているような白い翼ではない。

     濃い茶色をした、シャープな形をした翼。
     先端は他より長い羽により切れ込みがあるように見える。

    戦士「な、なんだよ…どうなってんだよ…」

    魔法使い「私も、聞きたい、ぐらいだ」

     息も絶え絶えにあげる。容姿にもいくらか変化があった。
     きついつり目となり、白眼の部分がうっすらと黄色に染まっている。
     手首や足首、首もとには白い羽が薄く生えている。

    247 = 245 :

    魔法使い「怖いよ…この姿になったら、私は……」

    戦士「ち、近寄るな化物…」

     ふらふらと助けを求めるように魔法使いは戦士のほうに歩いていく。
     彼女の変化に腰が抜けた彼は、座ったままなんとか後退を試みた。

    魔法使い「また…人を攻撃してしまうんだ…それが、怖いんだよ」

    戦士「…くっそぉ!」

     気力を振り絞り立ち上がった戦士は、力加減を忘れて思いっきり魔法使いの顔を殴った。
     いや、殴ろうとした。

     魔法使いが、あっさりと片手で受け止めた。

    戦士「え、え、ええ…?」

    魔法使い「化物になってしまったんだ…私は」

    248 = 245 :

    戦士「筋力まで増加するのか…!」

    魔法使い「違う。魔法を使っただけだ」

     その回答に戦士が目を見開く。

    戦士「嘘だ…だってお前、杖がないと魔法が…」

    魔法使い「私は“魔法使い”じゃないんだよ。杖がなくても、使える」

    魔法使い「戦士が言った通り――私は混血児、だ」

     近くにあった木に拳を叩きつける。
     一瞬木の幹に魔法陣が浮かんだ後、大きな音を立ててへし折れた。

    魔法使い「どっかいってくれ。私たちの前から、消えてくれ」

     戦士が後退りしたが、すぐに木にぶつかって止まった。

    249 = 245 :

    戦士「う、うわ、わぁ……!」

     喘ぎながら、戦士は目の前の少女から目が話せなかった。

    魔法使い「じゃないと、私は思わず殺してしまう」

    魔法使い「戦士は許されないことをしたし、許す、つもりはないけど――でも、仲間だったから」

     ガタガタと震える男のすぐ前で立ち止まった。
     いつの間にか魔法使いの血は止まっていた。

    魔法使い「だめだな、この姿になると―――」

     戦士の頭のすぐ上の木に手を当てた。
     それだけで、さっきとおなじように木が倒れる。

    魔法使い「―――人間が、殺したくなる、よ」

    戦士「………ひぃぃ!!」

     悲鳴をひとつのこすと、股間から生暖かい液体を漏らし戦士は気絶した。

    250 :

    おつ


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