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    元スレ勇者「パーティーにまともな奴がいない……」

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    351 :

    父親「厄介な者?」

    大臣「はい、力だけを追い求める狂人です、あなたも注意した方がいいですよ」

    父親「忠告ありがとうございます」

    父親「それではまた」スタスタ

    大臣「……あなたは勇者様を苦しめるのが本当に好きですね」

    父親「ははっ、バレていましたか」

    大臣「バレバレですよ」

    父親「他人の不幸ほどうまい酒の肴は無いじゃないですか」

    大臣「やっぱりあなたは最低の屑ですね」

    父親「そうかもしれませんね」

    大臣「まあ、口出しする気はありませんが……」

    大臣「私は仕事に戻ります」スタスタ

    父親「はい、頑張って下さいね」

    大臣「勇者様達が何処にいるか知っていますか?」スタスタ

    父親「いや、何処にいるかまでは知らないですよ」

    大臣「そうですか……」スタスタ

    大臣「急いだ方がいいですね」スタスタ

    352 = 351 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    夜 宿屋


    勇者「どうしようかな……」

    暗殺者「交渉か?」

    勇者「ああ、いい方法が思いつかなくて」

    暗殺者「あのおっさん頑固そうだからな」

    勇者「でも凄ぇ人だと思うぞ」

    勇者「何を根拠にそんな事を言っているんですか?」

    勇者「理由は無ぇよ」

    勇者「結局直感ですか」

    勇者「お前直感の凄さを知らねぇな、凄ぇんだぞ」

    勇者「どうでもいいです」

    暗殺者「まあ、直感なんて当てになんないしな」

    勇者「じゃあ凄いおっさんじゃねぇと思うのか?」

    ドラゴン「いや、あのおっさんはタダ者じゃないぞ」

    暗殺者「ああ、あの人は刀を作れる数少ない職人だ」

    勇者「知ってたのか」

    暗殺者「ああ、有名な人だからな」

    勇者「刀とはなんですか?」

    勇者「刃が片方にしかついてなくて細い独特の形をした剣だ」

    勇者「斬れ味を究極まで追求したものだと鉄でも斬れる凄い剣だ」

    353 = 351 :

    勇者「詳しいですね」

    勇者「刀はかっこいいし好きなんだ」

    勇者「でも使いづらそうですね?」

    暗殺者「勇者の戦い方にはあってると思う、刀は防御は弱いが、攻撃は最強だから」

    ドラゴン「でも交渉はうまくいくのか?」

    勇者「微妙だな、明日も無理かも……」

    勇者「とりあえず、私達は買い物に行ってきますね」

    ドラゴン「何買うんだ?」

    勇者「私も剣を強化してもらいたいので」

    勇者「そんな金あんのか?」

    勇者「私だって交渉ぐらい出来ますよ」

    暗殺者「恐喝だろ」

    勇者「もしくは剣を振り回して脅すかだな」

    勇者「何か言いましたか?」

    勇者・暗殺者「何も言ってません」

    勇者「次言ったら肉塊にしますからね」

    勇者・暗殺者「了解」

    354 = 351 :

    勇者「じゃあ俺は暗殺者と交渉か」

    暗殺者「丸一日交渉するのか?」

    勇者「無理だと思ったらさっさと帰るよ」

    勇者「出来るだけ粘るけどね」

    暗殺者「うまくいくといいな」

    勇者「別行動は久々ですね」

    勇者「ドラゴンの村の時以来だな」

    勇者「そうですね」

    勇者「暗殺者は行きたい所無いのか?」

    暗殺者「別に無いな、武器もいらないし」

    勇者「あ、そう」

    ドラゴン「勇者、今日はどうだ?」

    勇者「無理、つーか明日も明後日も無理」

    勇者「別にやってくれてもいいですよ」

    勇者「なら右手に持った剣をしまってくれるかな?」

    355 = 351 :

    勇者「何の事ですか?」ニッコリ

    勇者「目が笑ってねぇ……」

    暗殺者「死んでもいいから楽しんだらどうだ?」

    勇者「悪魔のささやきが聞こえるんですけど」

    ドラゴン「どうする?」

    勇者「絶対嫌だ」

    暗殺者「ちっ、つまんないなあ……」

    勇者「死んだ理由がダサ過ぎだろ!!」

    勇者「女を抱いて死ねたら本望じゃないんですか?」

    ドラゴン「しかも美人だぞ」

    暗殺者「抱いちゃえよ、さっさと抱いちゃえよ」ニヤニヤ

    勇者「いつの間にか周りが敵だらけになってんだけど!!」

    356 = 351 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    次の日  道具屋前


    勇者「いろいろ買えましたね」スタスタ

    ドラゴン「次は何処に行くんだ?」スタスタ

    勇者「武器屋ですかね」スタスタ

    ドラゴン「了解」

    勇者「人通りが少ない所に来てしまいましたね」

    ドラゴン「迷ったのか?」

    勇者「いえ、路地裏に来てしまっただけなので、すぐに戻れば大丈――――」


    突然女勇者の後頭部に激痛が走る。
    彼女は立っていようと必死に踏ん張るが地面に倒れてしまった。


    勇者「くっ!!」

    「こいつでいいんですか?」

    リーダー「ああ、目標はこいつだ、そっちのはお前等の好きにしろ」

    357 = 351 :

    「それにしてもこいつを捕まえるだけで3000ゴールドっていい仕事ですよね」

    リーダー「まったくだ、こんな楽な仕事なかなか無いぞ」

    勇者(ドラゴンが……まずい!!)

    「じゃあこっちは俺が好きにしますね」

    リーダー「ああ、勝手にしろ」スタスタ

    「へへ」

    勇者(……何とか動けますね)

    勇者「気持ち悪いです……」

    「ん、なんか言ったか?」

    勇者「気持ち悪いです!!」


    女勇者は叫ぶと、男の股間を蹴りあげる


    「ぐあっ!!」

    「テメェ!!」

    勇者「黙りなさい!!」


    さらに追撃の拳が男の顔面をとらえる。


    「がはっ!!」

    358 = 351 :

    勇者「さっきは油断しただけです、あまり調子に乗らない方がいいですよ」

    「わ、悪かった、逃がしてくれ」

    勇者「ドラゴンをどうする気ですか?」

    「逃がしてくれ!!」

    勇者「質問に答えてください、ドラゴンをどうするつもりですか?」

    「お、俺達はあいつを捕まえてくれって頼まれただけだ」

    勇者「さっきの男は何処に行ったんですか?」

    「そ、それは言えない」

    勇者「何故ですか?」

    「ば、バラしたら俺が殺される」


    女勇者は男の顔面に蹴りを入れる。


    勇者「答えなさい」

    「む、無理だ」

    勇者「言わなければ私があなたを殺しますよ」

    「……食材屋の裏にあるボロ小屋だと思う」

    勇者「わかりました」

    359 = 351 :

    「じゃあ逃がして―――――」


    女勇者は男の腹を思いっきり蹴って気絶させる。


    勇者「とにかく勇者の所に行かなくては」フラフラ

    勇者「くっ……」ドサッ

    大臣「大丈夫ですか」スタスタ

    勇者「ど、どうしてここに?」

    大臣「血が出てますよ」

    勇者「私は大丈夫です、ただドラゴンが連れて行かれてしまいました……」

    大臣「……遅かったですか」

    勇者「ど、どういう事ですか?」

    大臣「詳しい話は後でします、今は勇者様と合流しましょう」フキフキ

    勇者「そ、そうですね」

    大臣「摑まってください」スッ

    勇者「すいません」ガシッ

    360 = 351 :

    今日はここまでです。

    来年まで数時間ですね。

    今夜はずっと起きてるつもりですので、物語の事、俺の事、聞きたい事があったら聞いてください。

    ちなみに明日は午前中に更新します。

    361 :

    >>1は処女ですか!?

    362 :

    >>361

    女なら処女です。

    363 :

    いまレス番50あたり読んどります
    面白いんで頑張ってくださいな(`・ω・´)

    364 :

    あとどれぐらいで完結しますか?
    きちんと完結できそうですか?
    ドラゴンは好きな時に変身解除可能?

    365 = 362 :

    >>364

    一応完結は出来ますが、今のところどれぐらいかかるかはわかりません。

    ドラゴンの変身は自由に解除できません。

    366 = 362 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    武器屋


    勇者「なあ、剣作ってくれよ、頼むよ」

    武器職人「嫌だ、さっさと帰れ」

    勇者「ケチだなぁ……」

    暗殺者「……さすがにストレート過ぎないか?」

    勇者「これくらいストレートに言った方が成功しやすいだろ」

    暗殺者「恋人同士でもそんなストレートな事言わない」

    武器職人「さっさと別の場所に行け」

    勇者「そんな事言わないで頼むよ」

    武器職人「嫌だ」

    暗殺者「全然ダメだな」

    勇者「……じゃあどうやったら作ってくれる?」

    武器職人「俺の剣を使いこなせる人間で、しかも内面の強さも持っているなら作ってやる」

    勇者「自分で言うのもなんだけど俺結構強いよ」

    武器職人「……証明出来るものはあるのか?」

    勇者「そんなもんねぇよ」

    武器職人「ならダメだ」

    暗殺者「それは俺が証明できる」

    武器職人「……お前が?」

    367 = 362 :

    暗殺者「こいつはあんたが思ってる二倍は強いぞ」

    勇者「それって強いの?」

    暗殺者「それにあんたの剣とこいつの戦闘スタイルは本当に相性がいい」

    武器職人「……まあ、あんたが強いのは認めよう、だが内面の強さはどうだ?」

    暗殺者「内面は……腐りきってる」

    勇者「おい!!」

    暗殺者「正直に言っただけだ」

    武器職人「なら無理だ」

    勇者「そこは嘘ついてでも正義の味方だって言ってくれよ!!」

    暗殺者「そう言う所がダメなんだろ」

    勇者「うるせぇ」

    武器職人「わかったらさっさと帰れ」

    勇者「頼むよ、マジで頼むよ」

    武器職人「帰れ、お前に剣を作る気は無い」

    暗殺者「一旦帰るか?」

    勇者「そうするか……」

    勇者「勇者!!」ガチャ

    勇者「いきなりなんだ?」

    大臣「ドラゴンがさらわれました」

    勇者「女大臣!?」

    368 = 362 :

    暗殺者「誰?」

    勇者「女大臣、俺達の旅のサポートとかしてくれてる」

    大臣「あなたが暗殺者ですね、女勇者から聞きました」

    暗殺者「そうか、初めまして」

    大臣「初めまして」

    暗殺者「……あんたからは凄い気配を感じるな、一回殺し合ってみたい」ニッコリ

    大臣「ここで殺し合いをしますか?」

    暗殺者「別にいいぞ」

    勇者「なんで殺し合う気満々なんですか」

    勇者「そんな事よりドラゴンがさらわれたって何!?」

    勇者「すいません、私が油断したばっかりに……」

    勇者「ドラゴンをさらったのは誰だ」

    大臣「さらっていったのは町の不良チームのボスです」

    勇者「じゃあそいつを殺せばいいのか?」

    大臣「いえ、黒幕は別の人物です」

    勇者「じゃあ誰だ!!」

    勇者「落ち着いて下さい」

    大臣「そいつは強さだけを追い求める狂人です」

    369 = 362 :

    勇者「名前は!!」

    勇者「だから落ち着いて下さい」

    大臣「強者です」

    勇者「そいつに捕まってるんだな?」

    大臣「そうです」

    勇者「ちょっと行ってくる」スタスタ

    大臣「どうする気ですか?」

    勇者「そいつを殺しに行く!!」スタスタ

    勇者「待って下さい」

    勇者「早くしねぇとヤベぇだろ!!」

    勇者「それはそうですが……」

    暗殺者「剣も無いお前に何が出来る」

    勇者「殴る」

    暗殺者「一瞬で死ぬぞ」

    勇者「……でも――――――」

    勇者「だいたい強者の居場所はわかってるんですか?」

    勇者「……」

    勇者「女大臣……」

    370 = 362 :

    大臣「すいませんが私は知りません」

    勇者「……」

    勇者「町をしらみつぶしに探すつもりですか?」

    暗殺者「そのリーダーは何処にいるんだ?」

    勇者「食材屋の裏のボロ小屋です」

    暗殺者「じゃあ行ってくる」スタスタ

    勇者「私も行きます」スタスタ

    勇者「俺も――――――」

    暗殺者「お前は待機だ」

    勇者「でも……」

    武器職人「おい!!」

    勇者「何だよ!!」

    武器職人「持ってけ」ポイッ

    勇者「……何だよこれ」パシッ

    武器職人「刀だ、切れ味は俺が保証する」

    勇者「どういう事だ」

    武器職人「勘違いするな、終わったら返しに来いよ」

    勇者「いいのか?」

    371 = 362 :

    武器職人「ちゃんと返しに来いよ」

    暗殺者「勇者、今は待機してろ」

    勇者「なんで!!」

    暗殺者「お前は強者を殺せ、俺はリーダーを殺す」

    大臣「勇者様、ここは二人に任せましょう」

    勇者「勇者、仲間を信じてください」

    勇者「……くさい台詞だな」

    勇者「ベタな台詞は好きなんじゃなかったですか?」

    勇者「絶対帰ってこいよ」

    勇者「くさい台詞ですね」

    勇者「くさい台詞が好きなんでね」

    暗殺者「行くぞ」タタタッ

    勇者「はい」タタタッ

    勇者「……」

    勇者「強者ってのは何者なんだ?」

    372 = 362 :

    大臣「さっきも言った通り強者は善悪を問わず力だけを追い求める男です」

    勇者「なんでそんなに力がほしいんだ?」

    大臣「あんな狂った人間の思考回路などわかりません」

    勇者「……なんでドラゴンを?」

    大臣「ドラゴンは強力な力を秘めていますから」

    勇者「そうか」

    大臣「勇者様は知らないかもしれませんがドラゴンは巨大な力の塊です」

    大臣「強者はそれを手に入れたいんでしょう」

    勇者「じゃあ早くしねぇと殺されるんじゃ――――――」

    大臣「落ち着いて下さい」

    勇者「……ああ、悪い」

    大臣「準備には時間がかかります、今は二人の帰りを待ちましょう」

    勇者「ああ、わかってる」

    373 = 362 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    勇者「こっちです」タタタッ

    暗殺者「わかった」タタタッ

    勇者「雑魚は私が処理します、リーダーはあなたが殺してください」タタタッ

    暗殺者「お前がボスを殺さなくていいのか?」タタタッ

    勇者「あいつはあなたに似たタイプの人間ですからあなたの方が戦いやすいはずです」タタタッ

    暗殺者「殺し屋って事か?」タタタッ

    勇者「だと思います」タタタッ

    暗殺者「任せろ」タタタッ

    勇者「お願いします」タタタッ

    暗殺者「あそこだな」タタタッ

    勇者「はい」タタタッ


    女勇者は跳び蹴りで扉を蹴破る。


    「なんだテメェ等!!」

    勇者「暗殺者、先に行ってください」

    暗殺者「ああ」タタタッ

    勇者「死にたくないなら逃げた方がいいですよ」

    「調子にのってんじゃねーぞ」

    374 = 362 :

    今日はここまでです。

    正月は更新時間がまばらになってしまいますが、時間を見つけては更新していきたいと思います。

    シリアスに出来るか不安だ……

    沙耶の唄欲しい……

    375 :

    あけおめ乙!

    沙耶ってことは美少女スライム(外見肉塊)が出るのか……

    376 :

    女勇者まじツンデレww
    どSツンデレ好物です

    377 :


    沙耶の唄はええぞぉ
    電話一つでグットエンドかバッドエンドか変わるけどね

    378 :

    3000円もしないんだし買っちゃいなよぅ

    379 :

    女勇者は剣を鞘から抜くと一番近くにいた男を斬り裂く。

    男の体は綺麗に二つに分かれ、鮮血が飛び散る。
    それはまるで血の噴水のようだ。
    鮮血が女勇者の顔を赤く染めた。

    女勇者は左手で顔に付いた血を拭うと武器を構えた男達を見つめる。
    その目はいつも以上の憎悪と怒りの念が込められていた。

    後ろから数人の男達が近づいてきている。

    遅い、とにかく遅い。
    まるでのろまでドジな亀だ。

    目で見なくとも相手動きがわかった。
    気配だけで動きがわかる。

    女勇者の右手が剣を握りしめる。
    女勇者は振り向き様に剣を大きく横に薙ぎ払った。

    その一撃で数人の男達が肉塊と化し、血の飛沫が辺りを赤く染める。

    女勇者はそんな血の雨の中でも男達を見ていた。
    彼女の顔に表情は無い。
    ただ怒りと憎悪だけが込められた両目だけが彼等を見ている。

    380 = 379 :

    「どうしたんですか、早く私を殺したらどうですか?」


    抑揚の無い、あらゆる感情の死んだ声が部屋にこだまする。

    だが男達は動けない。
    動けない。

    男達と女勇者の距離は5メートル。
    女勇者にとってその距離は十分射程圏内だ。

    彼女が前に大きく跳んだ。
    たった一回の跳躍だが、それだけで男達との距離は0になる。

    男達の顔は驚きと恐怖で歪んでいた。
    後ろの方にいた男達は窓から逃げ出そうとしている。

    普通なら逃げる者を追う気は無い。
    だがあの男達は例外だ。

    小金欲しさに自分の仲間をさらった人間を許す気など毛頭無い。

    女勇者の剣が目の前の男達を血の噴水に変える。
    深紅の血が女勇者の顔を、壁を、周りの男達を赤く染めた。

    女勇者は止まらない。
    彼女の剣が周りの男達を次々と切り刻む。
    なめらかで無駄の無い動きだった。

    とにかく一人も逃がさない。
    喉元を、腹を、首を、頭を、とにかく斬りまくる。
    とにかく立っている者全てをズタズタに斬り刻む。

    381 = 379 :

    深紅の血が彼女を濡らし、全身が真っ赤に染まる。
    紅く染まったその姿は正義の味方と言うよりも悪魔の様だった。

    だがそれでもいい。
    それで私は結構だ。

    私は勇者では無い。
    私は正義の味方になれるような人間でもない。
    だったら悪魔でいい。
    それで仲間が救えるのなら悪魔でも、狂人でも結構だ。

    勇者はすでにいるのだから。
    悪者を倒してお姫様を助けるのは勇者の仕事だ。

    なら私の仕事は――――。

    紅い悪魔が脅える男の首を刎ねる。

    残り一人。

    悪魔は腰がぬけて動けない男にゆっくりと近づいて行く。

    男は脅えきっている。
    男のズボンが濡れていた。
    アンモニア臭が僅かにする。


    「待て、待ってくれ、助けて――――」


    だが悪魔は止まらない。
    剣を大きく振りかぶる。

    382 = 379 :

    最後の一人を叩き斬る。
    幕切れはあまりにもあっさりとしていた。

    彼女は近くにあった布切れで剣の血を軽く拭き取り、剣を鞘にしまう。

    周りは血まみれで、普通の人間が見たら嘔吐してしまうくらいの惨状だった。
    だが女勇者はいつものように無表情のまま、その肉塊を眺めている。


    「ううっ」


    呻き声が女勇者の耳に届く。

    生き残りがいたようだ。

    はたから見れば、同情に値するような状態の男は荒い呼吸で苦しんでいた。

    だが女勇者の心に同情は無い。

    今の彼女の心の中にあるのは怒り。
    それ以外の感情は一切存在しない。

    冷酷な彼女の視線に気付いたのか、男の表情が恐怖で歪む。

    容赦などしない。

    ブスリ、と彼女の剣が男の心臓を貫く。

    その一撃で部屋は沈黙に満たされた。

    383 = 379 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    暗殺者「ここか?」タタタッ

    リーダー「……なんだ、あの女じゃないのか」

    暗殺者「誰の事だ?」

    リーダー「黒髪の美人の事だよ」

    暗殺者「部下から聞いたのか?」

    リーダー「見なくてもわかるだろ、あんな屑が勝てるわけ無い」

    暗殺者「部下を屑呼ばわりか」

    リーダー「屑は屑だ、それ以外になんて表現できる」

    暗殺者「……確かにそうかもな」

    暗殺者「って事はお前の事も屑って呼ぶしかないな」

    リーダー「それは俺が屑って事か?」

    暗殺者「それ以外にどんな意味がある」

    リーダー「それ以外無いよな」

    暗殺者「物分かりが良くて助かる」ニッコリ

    384 = 379 :

    リーダー「お前面白いよ、マジで面白い」

    暗殺者「そりゃどうも」

    リーダー「しかも、俺と同じ匂いがする」

    暗殺者「ふーん、お前みたいな暗殺者の屑と一緒にされたら俺もおしまいだな」


    リーダーの右手からクナイが放たれる。


    暗殺者「ずいぶん乱暴だな」


    暗殺者は簡単に回避する。


    リーダー「何だよ、ただのあいさつだろ」

    暗殺者「言っとくけど俺はあいつみたいに優しくないぞ」

    リーダー「俺だって優しくないさ」

    リーダー「それにお前は最高にムカつく野郎だ、殺してやるよ」

    暗殺者「奇遇だな、俺も同じことを思ってたところだ」ニッコリ

    リーダー「一瞬だ、さっさと死ね」ニッコリ

    385 = 379 :

    今日はここまでです。

    明日はちょっと出掛けるので、更新できません。

    地の文は時間がかかるから、あんまり書けない……

    386 :

    乙ーん

    387 :

    おう!乙んこだ

    388 :

    楽しみすぐる!

    389 :


    リーダーは姿勢を低くすると、両手を袖の中に入れ、攻撃の準備を始めた。
    両手から無数のクナイが放たれる。

    だが暗殺者はたった一本のナイフで飛んできたクナイを全て弾き飛ばした。
    そして飛んでくる最後の一本を左手で掴むと、リーダー目掛けて投げ返す。

    しかしリーダーはすでにそこにはいなかった。

    彼はクナイを投げた瞬間に跳躍していた。
    まるでそこだけ無重力のように空を駆けている。

    暗殺者がクナイを投げたのとほぼ同時に暗殺者の後ろに着地する。
    無音の部屋に、トンッ、という足音だけが響いた。

    軽く見積もっても7メートルは跳んでいただろう。

    リーダーは素早く、暗殺者の前に回り込むと彼女の心臓をクナイで突いた。

    だが暗殺者のナイフがそのクナイをはじく。

    ガキン、と金属がぶつかる音がこだまする。


    「避けないと、死んじまうぞ」


    そう言い、リーダーは追撃を繰り返した。
    両手に持ったクナイを振り回す。

    だが暗殺者はその攻撃全てを回避する。
    暗殺者にとってその程度の攻撃を回避することなど容易い事だ。

    390 = 389 :

    暗殺者はほんの少しだけ後ろに下がった。
    そしてリーダーの右目目掛けてナイフを突く。

    もちろん暗殺者のナイフは簡単に回避される。

    だがその一瞬、リーダーはナイフの動きにのみ集中し、下の注意力が全く無い。
    それこそ暗殺者の仕掛けた罠だ。

    相手の注意をわざと逸らす。
    古典的だが、もっとも効率的な罠。

    暗殺者は素早く足払いをかけ、リーダーを転ばせる。


    バランスを崩したリーダーは、後ろにひっくり返るように転んだ。
    足元をまったく見ていないリーダーはいとも簡単に引っ掛かってくれた。
    その拍子にクナイが何本か散らばる。

    暗殺者は迷わずリーダーの心臓を狙う。

    右手でナイフを握りしめ、倒れた相手へ覆いかぶさるように襲いかかった。
    鈍く光る銀色のナイフは真っすぐにリーダーの心臓へと進む。

    ガキン、と言う金属同士がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。

    ナイフはリーダーの右手に持ったクナイとぶつかって停止していた。

    391 = 389 :

    この男は一瞬で地面に落ちたクナイを拾い防御したのだ。

    男が邪悪な笑顔を見せる。
    言葉にしなくてもわかった。

    そんな小細工で俺を殺せると思うな。
    その残忍笑顔はそう言っていた。
    嘲笑を含んだ嫌な笑顔だ。

    苛立く笑顔だ。

    リーダーの前蹴りが暗殺者の腹部に直撃する。

    肺の中の空気が吐き出される感覚が彼女を襲った。

    後ろに跳ばされない様に踏ん張るが、後ろに跳ばされる。


    「それで殺せるわけ無いだろ、ゴミが」


    リーダーは立ち上がると、そう言い放つ。
    悪意の塊のような言い方は正真正銘の屑の証のような気がする。


    「無様に転ばされといて何言ってんだ」


    暗殺者もまた立ち上がると、そう言い放った。
    こちらの言葉にもまた悪意が込められている。

    392 = 389 :

    お互いの距離は7メートルほど。

    暗殺者はナイフを、リーダーはクナイを投げる体制に入る。

    投げたタイミングはほぼ同時だった。
    飛び交う刃物はさながら流星群のような神秘的光景に見える。

    刃物達はぶつかり合い、音をたてて地面に落ちる。

    暗殺者はまるで闘牛のように真っすぐに走り出した。
    落ちなかったクナイが肩や足をかするが止まらない。

    ほとんどぶつかるようにリーダーの胸にナイフを突きたてる。

    だがリーダーは蹴りで暗殺者の右手の軌道を変え、動かずにナイフを回避する。
    その姿はまるで闘牛を派手な動きで回避するカイボーイの様だ。

    暗殺者とリーダーの距離は0だった。

    リーダーはほとんど予備動作も無く、暗殺者を殴った。
    脇腹にリーダーの拳が突き刺さる。

    暗殺者の体がビクリと痙攣した。
    胃の中の物が逆流してくるような感覚が襲う。

    軽く意識が遠のくが、必死に引きとめる。

    暗殺者は大きく後ろに跳んだ。

    393 = 389 :

    リーダーは楽しそうに微笑み、彼女を眺めている。
    相変わらずの悪意のこもった微笑み。
    その姿はまるで悪魔だ。


    『変わってあげましょうか?』


    声が聞こえた。

    ただその声は外部からの物ではない。
    脳に直接語りかけてくるのだ。


    『あなた一人で倒せるの?』


    もう一度声が脳に響く。
    その声は心底楽しそうな口ぶりだった。


    『今はまだ大丈夫』


    彼女はそう返事をした。

    反応は無い。

    それが声の返答だ。

    394 = 389 :

    彼女は再びナイフを構え、攻撃の姿勢をとる。

    一瞬でリーダーの前まで移動した。

    このまま長期戦になれば彼女に勝機は無い。
    ならばこの一撃で勝負を決める。

    リーダーの心臓目掛けナイフを突き出す。

    クナイとナイフがぶつかり合い、火花が散った。
    刃物同士がギリギリと音をたて擦れる。

    普通なら間合いを取るべき場面だ。
    だが彼女に退路は無い。

    止められたナイフを構え直し、大きく横に振る。

    とにかく一撃。
    一撃当たれば勝機は生まれる。

    ナイフを振り、相手を翻弄する。
    とにかく相手に反撃のチャンスを与えてはならない。

    その時、暗殺者はリーダーが笑っている事に気付いた。

    理由はわからないのに寒気がする。

    リーダーの口が僅かに動く。
    何を言っているかは分からないが、何をしようとしているかはわかる。

    395 = 389 :

    魔法。
    リーダーは魔法を詠唱していた。

    一瞬の静寂。

    後ろに跳ぼうとするが間に合わない。

    直径2メートルほどの水の球が彼女を飲み込んだ。

    息が出来ずもがくが無意味だ。


    「お前にはお似合いの死に方だろ」


    リーダーは汚い笑みを浮かべながら、暗殺者を眺めている。


    『頼む……』


    暗殺者は頭の中に語りかけた。



    『こんな場面で交代?』

    『こんな場面だからこそだ』


    呼吸が苦しくなってきた。
    意識が遠のく。


    『仕方ないわね、私を楽しませて頂戴ね』


    彼女は頭の中の回路を切り替えた。
    頭の中の別の何かが起動する。

    396 = 389 :















    異変を感じ取ったのは今さっきだった。

    目の前の暗殺者に変化は無い。
    だが何かが変化している。
    言葉で言い表せない何かが変化している。

    いつの間にか水の球が赤くなっていた。

    リーダーがその異変に気付いた時、水の球が爆発する。

    爆風は無い。
    水だけを相殺されたのだ。


    「あなたがリーダーね、こんにちは」

    「……お前は?」


    暗殺者の口調は明らかに変化している。
    いや、それ以前に何か根本的な何かが違っていた。

    397 = 389 :

    彼女の右手からはおびただしい量の血が流れていた。
    彼女の立っている地面には血の水たまりが出来ている。


    「代償か……」


    リーダーは誰に言うわけでもなく呟いた。

    強力な魔法を生みだす方法は2種類存在する。
    一つは自分の持つ魔力を使う方法。
    もう一つは自分の体の一部を代償にして魔法を生みだす方法。

    彼女は自分の血を代償に魔法を生み出したのだろう。


    「そんな事はいいから戦いましょうよ」


    暗殺者は楽しそうに言った。
    その顔は恍惚の表情をしている。

    暗殺者は左手にナイフを握ると大きく跳んだ。
    そしてまるで床を走るように壁を走る。

    リーダーもクナイを構え、相手の攻撃を待つ。

    暗殺者は壁から跳び、リーダー目掛け、矢のように飛んで来る。

    398 = 389 :

    ガキィン、という金属音が響き渡った。
    ナイフとクナイが擦れて火花が散る。

    その時リーダーは勝利を確信していた。
    右手の使えない暗殺者に攻撃手段は無い。


    彼は左手でクナイを構えた。

    だがその瞬間、彼の右手の二の腕に激痛が走った。

    二の腕は暗殺者に噛まれていた。
    尖った犬歯が二の腕に食い込み、血が溢れ出る。

    彼は無理矢理に右手を振り回し暗殺者を吹き飛ばす。

    ブチッ、と肉が千切れ、大量の血と共に激痛が襲う。


    「あぐっ!!」


    リーダーは怒りを込めた目で暗殺者の睨んだ。

    彼女は彼から2メートルほど後ろの地面に立っている。

    口を動かし何かを咀嚼していた。
    何を咀嚼しているかなど簡単だ。

    彼の二の腕を食っている。

    399 = 389 :

    暗殺者は心底不味そうに肉を吐きだした。
    口の周りは血で真っ赤に染まっている。


    「やっぱり不味いわね、精子も不味いし、男っておいしい場所が無いのね」


    暗殺者は楽しそうに微笑む。

    めちゃくちゃだ。
    壊れている。
    それ以外の言葉が見当たらない。


    「多重人格なのか?」


    リーダーは問いかけた。
    それ以外にあり得ない。


    「ちょっと違うわ、多重人格って言うのは人格同士が同等なはずでしょ。でも私は違う。私達は同等じゃないの、私は彼女の許しが無ければ表には出てこれないの」


    彼女は楽しそうに続ける。


    「あの子が私を消そうと思えば私を消す事も出来るのよ」


    彼女はそれだけ言うと無言で攻撃姿勢をとる。

    400 = 389 :

    彼女は蛙のような構えをする。
    そして全力で跳んだ。

    地面スレスレの低空飛行をしながら彼を狙っていた。

    矢のように突っ込んでくる。

    回避する時間は無い。

    リーダーは持てるだけのクナイを投げつけた。
    とにかく近づかれたくない。

    だが彼女は避けなければ、防御もしなかった。
    真正面からクナイの雨に突っ込む。

    クナイが体に突き刺さり、血が飛び散る。
    しかしクナイはどれも急所に当たっていなかった。

    避ける間もなく暗殺者のナイフが彼の右足を斬り裂く。


    「あ、がァァァァァァァ!!」


    声を上げ地面に倒れる。
    立ち上がる事も出来ない。


    「あら、もう勃てないの?」


    いつの間にか彼女が目の前に立っていた。


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