元スレ勇者「パーティーにまともな奴がいない……」
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751 = 750 :
王「へ、兵隊を出した方が―――――」
女大臣「下手に動けばこちらの動きが相手にバレてしまいます」
暗殺者「ああ、その通りだ、今回は動かないでくれ」
女大臣「わかっています」
金髪「ど、どうするんすか、えーと……」
暗殺者「暗殺者だ」
金髪「暗殺者さん!!」
暗殺者「今、考えてる最中だ」
暗殺者「使える奴はお前以外にいるか?」
金髪「えーと、黒スライムがいるっす」
暗殺者「三人か……」
暗殺者「一か所でもアジトが分かれば……」
金髪「小さいアジトなら一か所知ってるっすよ!!」
暗殺者「……とにかくそこに行ってみるか」
金髪「了解っす!!」
752 = 750 :
殺者「案内してくれ」
金髪「は、はい、こっちっす!!」ガチャ
暗殺者「ああ」タタタッ
金髪「ど、どうするんすか?」タタタッ
暗殺者「調べるだけだ」タタタッ
金髪「妹さんは無事っすかね?」タタタッ
暗殺者「わからん、もし狙われていたならもう遅いかもしれん」タタタッ
金髪「じゃ、じゃあ早くした方がいいんじゃないっすか!?」タタタッ
暗殺者「向こうは勇者達に任せる、俺達は殺し屋のアジトを見つけるのが仕事だ」タタタッ
金髪「勇者さん達間に合ってるといいっすけど」タタタッ
暗殺者「今はこっちに集中しろ」タタタッ
金髪「わ、わかったっす」タタタッ
金髪「ここの家がアジトっす!!」
暗殺者「……中に人は居るか?」
金髪「わ、わかんないっす」
金髪はドアの僅かな隙間から家の中を覗く。
753 = 750 :
金髪「いない……みたいっすね」
暗殺者「ちょっと退いてくれ」ガチャガチャ
金髪「な、何やってんすか?」
暗殺者「開いたぞ」ガチャ
金髪「ちょ、勝手に開けちゃダメっすよ!!」
暗殺者「汚い部屋だな」スタスタ
金髪「どうなっても知らないっすよ……」ガサゴソ
暗殺者「何かあっても俺が何とかする」
金髪「お、男らしいっすね」
暗殺者「殺し屋につながるものは無さそうだな」ガサゴソ
金髪「そうっすね」
不良A「さっさと来い――――あれ、鍵開いてる?」ガチャ
金髪「や、ヤバ――――」
暗殺者「こっちだ」
暗殺者と金髪は押し入れに素早く隠れる。
不良B「掛け忘れただけだろ」スタスタ
不良A「だよな」スタスタ
不良B「それにしてもあの勇者って野郎が帰ってきてるなんてな」
754 = 750 :
不良A「ああ言うのをバカって言うんだよな」
金髪「勇者さんは――――――」
暗殺者「落ち着け」
不良A「そんな簡単に出てくるのか?」
不良B「妹がさらわれたって分かれば、嫌でも出てくるだろ」
金髪「一般人に手を出すなんて最低っす……」
暗殺者「金髪、あいつ等から殺し屋の居場所を吐かせるぞ」
金髪「……わかったっす」
暗殺者「行くぞ……一、二の……三!!」
二人は同時に飛び出し、不良に殴りかかる。
不良A「ぐ……なんだテメェ等!!」
暗殺者「黙れ」
暗殺者は不良Aの肩にナイフを突き刺す。
不良A「あぐ……」
暗殺者「静かにしてれば何もしない」
755 = 750 :
不良B「大丈夫か?」
金髪「他人の心配してる暇があるんすか?」
不良B「テメェ……」
暗殺者「単刀直入に聞く、殺し屋の居場所は何処だ?」
不良A「し、知るか……」
暗殺者「次は何処を刺してほしい?」
不良A「……言わない」
金髪「さっさと言った方が楽っすよ」
不良A「テメェ等に言う気は無い!!」
暗殺者「そうか、ならいい」
不良A「え?」
暗殺者「こっちの奴に聞く」
不良B「な……!?」
暗殺者「そいつはお前が見張っとけ」
金髪「は、はいっす」
暗殺者「隣の部屋で聞いてやるよ」ガチャ
不良B「は、放せ」ズルズル
756 = 750 :
暗殺者「安心しろ、死なない程度にしといてやるよ」ガチャン
金髪「……」
不良A「……」
金髪「話す気にはならないっすか?」
不良A「あ、当たり前だ!!」
金髪「……」
不良A「……」ガタガタ
金髪「しゃべったらどうっすか?」
不良A「話す訳ないだろ!!」
暗殺者「ちっ、ダメだ」ガチャ
金髪「どうしたんすか?」
暗殺者「ちょっとな……」
暗殺者は血まみれのナイフを金髪に見せる。
金髪「わ、わかったっす」
不良A「……待て、待ってくれ!!」
757 = 750 :
金髪「どうしたんすか?」
不良A「話す、話すから」
暗殺者「さっさと話せ」
不良A「殺し屋は北の教会だ」
金髪「教会っすか?」
不良A「ああ、もう使われてない教会だ、そこに勇者の妹もいる」
暗殺者「本当だな?」
不良A「ああ、本当だ」
暗殺者「ありがとよ」
暗殺者は不良Aの腹を殴り気絶させる。
金髪「さっきの奴殺しちゃったんすか?」
暗殺者「まさか、気絶させてあるだけだ」
金髪「情報を引き出すのがうまいっすね」
暗殺者「死の恐怖ってのを植え付けてやればあっという間だ」
暗殺者「これくらいは覚えておいた方がいい、将来役に立つぞ」
金髪「了解っす」
758 = 750 :
今日はここまでです。
今回のシリアスはちょっと長くなるかも
759 :
いいっす!
760 :
おおう
761 :
おおマジ乙
763 :
金髪が暗殺者(裏?)に惚れるプラグ…?
764 :
~~~~~~~~~~~~~~
勇者「無事でいてくれよ……」タタタッ
女勇者「急ぎましょう」タタタッ
ドラゴン「間に合ってくれよ」タタタッ
勇者「……」タタタッ
ドラゴン「なんだあれ?」タタタッ
勇者「チンピラか……」
チンピラ「久々だな、勇者」
勇者「誰だよお前」
チンピラ「虹色のバラだよ」
女勇者「何の用ですか」
チンピラ「昔の復讐ってわけだ」ニヤニヤ
チンピラ達「殺しはしないから安心しな」ゾロゾロ
勇者「……」
勇者「女勇者、ドラゴン、先に行っててくれ」
女勇者「わかりました」タタタッ
ドラゴン「すぐ来いよ」タタタッ
765 = 764 :
チンピラ「おい、待て!!」
勇者「黙ってろ、お前等の目的は俺だろ」
チンピラ「ほう、いい度胸してんじゃねーか」
勇者は近くに落ちていたヒノキの棒を拾い上げる。
勇者「今の俺は非常にイライラしてんだ、手加減は出来ねぇぞ」
チンピラ「はっ、この人数差で勝てると思ってやがるのか?」
勇者「ああ」
チンピラ達「バカじゃねーの?」ゲラゲラ
勇者「何がおかしいんだ?」
チンピラ「はははは、最高だよお前!!」
勇者「汚い笑い声あげてんじゃねぇよ、ゴミ」
チンピラ「はははは……さっさとやっちまえ!!」
766 = 764 :
チンピラ達は一斉に勇者に向かって走り出した。
どのチンピラもヒノキの棒や鉄パイプを握っている。
六人。
勇者は相手の人数を確認すると、ヒノキの棒を構えた。
呼吸を調え、攻撃のタイミングを探る。
一人のチンピラが勇者の頭目掛けてヒノキの棒を振り下ろす。
だが遅い。
遅すぎる。
いや、正確には勇者が速過ぎるのだ。
勇者はいとも簡単に相手の攻撃を回避すると
相手のヒノキの棒が振り下ろされる前に反撃を開始する。
勇者は力の入っていない、滑るように滑らかな動作でヒノキの棒を振った。
振るのに力は必要無い。
重要なのは全身を使って滑らかに振る事だ
体から肩、肘、手首を滑らせるように使う事によって腕だけの力よりよっぽど少ない隙で大きな力を生み出せる。
それが刀を実際に使ってみて感じたことだった。
その証拠に顔面にヒノキの棒が直撃したチンピラは、まるで竹トンボのように回転しながら四メートルほど吹き飛んだ。
勇者はすぐにヒノキの棒を構え直し、相手を睨みつける。
767 = 764 :
それを見て怖気づいたのか、走ってきていたチンピラ達が一斉に止まった。
今までの勢いは何処に行ったのか、僅かに後ろに下がる者もいる。
拍子抜けだ。
いや、チンピラにそんな事を求める事こそ間違っていたのかもしれない。
まるで風船から空気が抜けるみたいに彼の体からやる気が抜けていく。
「やる気がねぇならとっとと帰れ、俺はさっさと帰りたいんだ」
勇者はつまらなそうにヒノキの棒をクルクルと回す。
さっきまでの獣の目は今は無い。
今まで溢れていたやる気はいつの間にか気だるさへと変わっていた。
だが相手は道を開ける気配も無く、ただ押し黙ったまま勇者を睨んでいた。
勇者は深いため息ををつくと、ヒノキの棒を構え直す。
弱い者いじめる趣味はないが道を開ける気がない以上、目の前のチンピラ共を倒すしか道は無さそうだ。
勇者は姿勢を低くして、地面を軽く蹴り、チンピラ達に向かって跳んだ。
だがそれはチンピラ達にとっては恐ろしく速く、誰一人として反応できない。
まずは目の前にいるチンピラの右足目掛け、ヒノキの棒を横に薙ぐ。
ゴキッ、という誰が聞いても骨が折れた音が響いた。
それと同時に鈍い呻き声も聞こえる。
768 = 764 :
勇者はさらに左肩にヒノキの棒を振り下ろす。
もう一度同じ音が響いた。
チンピラは痛みのせいなのか気を失い、その場に倒れ込む。
だが勇者は止まらない。
彼は崩れ落ちるチンピラを踏み台し、少し後ろに立っているチンピラ目掛けて跳ぶ。
相手の体が硬直しているのが、ここからでも分かった。
蛇に睨まれた蛙というのはこういう状態の事を言うのだろう。
全身を使い、相手の脳天にヒノキの棒を振り下ろす。
鈍い音と共にチンピラが地面に倒れた。
「ここまでか」
周りを見渡しながらぼんやりと呟く。
いつの間にか残りのチンピラ達はそれこそ霧のように消えていた。
だが追う気力も無いためヒノキの棒を捨てる。
「なんなんだ?」
勇者の中に一つの疑問が渦巻いていた。
本当に些細な違和感。
チンピラにしては統率された戦い方。
そして引き際。
なんとなく嫌な予感がした。
769 = 764 :
勇者「何なんだ、この違和感?」
勇者「……」
勇者「とにかくさっさと帰らねぇと」タタタッ
勇者「……」タタタッ
勇者「女勇者、ドラゴン!!」
女勇者「勇者……すいません」
ドラゴン「間に合わなかった……」
勇者「気にすんな、仕方ねぇよ」
女勇者「勇者、こんなのが置いてありました」スッ
勇者「……」
『勇者へ
妹を返してほしかったら明日の朝、南の空き地に来い
必ず一人で来る事、誰かと一緒に来たら妹の命は無いものと思え』
勇者「典型的な誘拐文だな……」
ドラゴン「勇者?」
勇者「……まだ丸一日ある、暗殺者が帰ってくるまで待機だ」
女勇者「頭が冷えてますね、少しは変わったんですか?」
勇者「ああ、俺だって成長するさ」
770 = 764 :
勇者「それに今回だって無闇に走り回ってどうにかなる訳じゃねぇだろ」
女勇者「その通りです」
女勇者「家の中で争った形跡は無さそうです」
勇者「って事は乱暴な事されて連れて行かれた訳じゃねぇって事か」
ドラゴン「そうだとしても安心できんぞ、相手はチンピラだ」
勇者「今はとにかく暗殺者を待つしかないだろ」
女勇者「そうですね」
金髪「勇者さん!!」タタタッ
暗殺者「妹と殺し屋の場所がわかった」タタタッ
勇者「何処だ?」
暗殺者「北の教会だ」
勇者「ありがとう」
女勇者「今すぐ行くんですか?」
勇者「ああ、そのつもりだ」
暗殺者「勇者」
勇者「ん?」
暗殺者「……俺に行かせてくれないか?」
771 = 764 :
勇者「……殺し屋と戦いたいのか?」
暗殺者「ああ」
勇者「理由は?」
暗殺者「お前よりも殺し屋の事を知ってるし、あいつに聞きたい事がある」
勇者「……じゃあ任せるよ」
暗殺者「悪いな」
金髪「俺が責任をもって妹さんを助けるっす!!」
勇者「ああ、頼むよ」
金髪「任せておくっす」
女勇者「私達は何か出来る事は無いですか?」
暗殺者「今の所は別にいい、何かあったら金髪にれんらくしてもらうようにする」
女勇者「分かりました」
暗殺者「じゃあ行くぞ」タタタッ
金髪「了解っす」タタタッ
ドラゴン「珍しいな、お前戦闘好きだろ?」
勇者「ちょっと気になる事があってね」
勇者「少し出掛けてくる」スタスタ
女勇者「わかりました」
772 = 764 :
今日はここまで。
地の文が不安定ですいません。
773 :
むう。
wktk
774 :
乙乙
776 :
勇者「……」スタスタ
勇者「黒スライム、いるんだろ?」
黒スライム「なんだ、気付いてやがったのか」ピョンッ
勇者「気配がしたんだ」
黒スライム「ほう、なかなか出来る奴だな、お前は」
勇者「今はそんな話じゃねぇよ」
黒スライム「……お前の言いたい事はわかってる」
黒スライム「あいつ等と戦って違和感があっただろ」
勇者「……凄いな」
黒スライム「最初から凄いって言っただろ」
勇者「チンピラにしては統率がとれてたな」
黒スライム「ああ、付け焼刃とはいえあれは確実に兵士の戦術だな」
勇者「お前も分かってたのか」
黒スライム「あんなもの誰が見てもわかる」
777 = 776 :
勇者「……」
黒スライム「まあ新米兵士より下手くそな戦い方だったがな」
勇者「どうなってんだ?」
黒スライム「今の所は何も分からん」
勇者「調べてくれるか?」
黒スライム「当たり前だ、それが俺の仕事だからな」
黒スライム「……気をつけろよ」
勇者「何がだ?」
黒スライム「これはチンピラの復讐なんてもんじゃないぞ」
勇者「分かってる」
黒スライム「……じゃあまた後で、報告は後からする」ピョンッ
勇者「ああ」スタスタ
778 = 776 :
~~~~~~~~~~~~~~~~
北の教会
暗殺者「……」ガチャ
殺し屋「遅かったじゃ―――――あれ、誰?」
そこには20代後半の茶髪の男が座っていた。
暗殺者「お前の部下が教えてくれたんだ」
金髪「妹さんを返すっす!!」
殺し屋「妹、誰それ?」
金髪「トボけても無駄っす、あんたが誘拐したのは知ってるっすよ!!」
殺し屋「えーと……ああ、あの子ね、はいはいはい」
殺し屋「……誰だっけ?」
金髪「勇者さんの妹っすよ!!」
殺し屋「ああ、そう言ってくれないとわかんないよ」
金髪「いいからさっさと妹さんを返すっす!!」
殺し屋「あの子ならここにはいないよ」
779 = 776 :
暗殺者「じゃあ何処だ?」
殺し屋「さあ、悪いけどそう言う事は別の奴に任せてるんだ」
金髪「嘘ついてるんじゃないっすか?」
殺し屋「嘘だと思うなら調べてみればいいさ、俺はここにいるからさ」
金髪「……」
暗殺者「金髪、妹の居場所を探しに行ってくれ」
金髪「りょ、了解っす!!」タタタッ
殺し屋「ありゃりゃ、帰っちゃうの?」
暗殺者「安心しろ、俺は残る」
殺し屋「ありがとね、ちょうど退屈してたんだ」
暗殺者「それにしても、裏社会でカリスマとまで呼ばれたテメェがチンピラのリーダーなんかやってるなんてな……」
殺し屋「いんや、それはちょっと違うぜ」
殺し屋「俺は裏社会のカリスマでもないしチンピラ共のボスでもない」
暗殺者「何言ってんだ?」
殺し屋「俺は今も昔も賞金稼ぎさ」
殺し屋「金が貰えるんなら町のゴミ拾いだってやってやるよ」
780 = 776 :
殺し屋「貰える金が高い仕事を選んでたら、自然と裏社会の仕事が多くなっちゃっただけだよ」
殺し屋「裏社会のカリスマなんてのはあくまであだ名だよ、うんこ君と同じだ」
暗殺者「うんこ君?」
殺し屋「あ、俺の昔のあだ名、茶髪だけでうんこ君って今考えるとひどいあだ名だよね」
暗殺者「じゃあこれも賞金稼ぎの一環って訳か?」
殺し屋「ああ、いい給料貰ってるんだ、あ、今羨ましいと思っただろ」
暗殺者「……」
殺し屋「思い出した、お前暗殺者だろ」
暗殺者「……ああ、そうだ」
殺し屋「お前の事は知ってるよ、体を改造したんだってね」
暗殺者「詳しいんだな」
殺し屋「当り前さ、俺は人間が好きだからね」
殺し屋「あ、もちろん生きてる人間がって事だからね」
暗殺者「分かってる」
殺し屋「よかったよかった、変な誤解されちゃたまらないもん」
暗殺者「……」
781 = 776 :
殺し屋「ん?」
暗殺者「予想と少し違ったんでな」
殺し屋「……よく言われるよ、特に初対面の人にはね」
殺し屋「変なあだ名がついちゃうと先入観が生まれちゃうから良くないと思うんだ」
殺し屋「うんこ君ってあだ名だけで不潔と思われちゃうだろ?」
暗殺者「……そうだな」
殺し屋「おっと、無駄話が長くなっちゃったかな」
殺し屋は鉈を構える。
殺し屋「お前は俺を殺しに来たんだろ?」
暗殺者「ああ」
暗殺者もまたナイフを構える。
殺し屋「言っとくけど加減とかはしないよ、相手に失礼だからさ」
暗殺者「……」
782 = 776 :
今日はここまで。
敵キャラが全体的にキャラが濃い気がする……
784 :
亀レスですまないんだが、強者の持ってた黒い剣はどこ言ったんだ?
とりあえず乙乙
785 = 774 :
殺し屋なんとなく名キャラっぽい
786 :
>>784
魔法の町で捕まった後回収し忘れたんじゃね
787 :
殺し屋は壁を蹴って、暗殺者に向かって跳んだ。
一見簡単そうにその動作を行っているが、それは体のばねを最大限に使った高度な動作だ。
暗殺者は僅かに後ろに後退りし、ナイフを構えた。
武器の威力的にはあちらの方が上だが、他も面では圧倒的にナイフが有利だ。
第一鉈は戦闘用の武器ですら無い。
相手の武器の間合いを計算し、避ける準備をする。
彼女は体を反らせ、横に振られた鉈をすれすれで回避した。
彼女の首のすぐ横を鉈が通過する。
さらに殺し屋の背中目掛けてナイフを数本投げる。
「あはは、お前見かけによらず凄い奴だったんだ」
殺し屋は彼女から数メートル後ろに着地し、こちらを振り返った。
右手には鉈を持ち、左手には数本のナイフを持っている。
「あ、これ返そっか?」
788 = 787 :
殺し屋はナイフを彼女目掛けて投げる。
だがそれは殺意を持ったものではなく、本当にナイフを返すために投げたのだった。
その行為は彼女にとって侮辱に等しいものだった。
完全になめられている。
そう感じざるを得ない。
「気にしなくていいよ、えーとなんだっけ、名乗るほどの者じゃあございませんから……あれ、違った?」
彼は楽しそうにケタケタ笑いながら鉈を構え直す。
軽い感じで一歩跳び、暗殺者の前まで移動する。
軽やかで、素早くて、無駄のない動き。
その動作だけで相手の強さが嫌というほど分かる。
殺し屋は鉈を大きく振り上げ、暗殺者目掛け振り下ろす。
その顔は無邪気な子供のようにも、残酷な殺人鬼のようにも見える。
殺し屋の鉈と暗殺者のナイフが激突した。
暗殺者は僅かにナイフを傾け、力を受け流す。
真正面からぶつかり合えばナイフは鉈には勝てない。
だが逆に言えば真正面から戦わなければ勝てるという事だ。
789 = 787 :
少しずつだがナイフを持つ右手への負担が減っていく。
後はこのまま力攻撃を受け流しきり反撃をするだけだ。
彼女はそう考え、すでに頭の中でどう反撃するかを思考していた。
だがしかし。
「武器ってのは鉈だけじゃない、全身の事を言うんだよ」
そんな軽い声と共に重い蹴りが彼女の鳩尾に直撃する。
殺し屋のつま先が彼女の鳩尾にめり込む。
意識の飛びそうな激痛と、吐き気が彼女を襲う。
そして気付いた時には石ころの様に数十メートル蹴り飛ばされていた。
必死に痛みをこらえ立ち上がる。
呼吸は乱れ、冬の風の様にヒューヒューと音をたてていた。
目の前はくらみ、足元もおぼつかない。
だが彼女はナイフを構え、姿勢を低くし、攻撃態勢をとる。
その様子を殺し屋は楽しそうに眺めていた。
その目は何か愛おしいものを見ているようだ。
790 = 787 :
「やっぱり人ってのは素敵だ、お前を見てるとそう思うよ」
そんな声を聞きながら暗殺者は殺した目掛けて跳んだ。
一直線に、彼の急所目掛けてただ真っすぐに突き進む。
ガキィン、という金属音が教会全体を包む。
殺し屋の鉈は彼女のナイフを防いでいた。
滑らかな動作で彼女のナイフを弾くと、素早く反撃に転じる。
その一連の動きは実にスムーズで隙が無かった。
殺し屋の鉈が振り下ろされる。
もう一度金属音が鳴り響いた。
暗殺者のナイフは本当にギリギリでナイフを受け止めていた。
あとコンマ一秒遅ければ鉈が彼女の体を切り裂いていただろう。
無音。
静寂。
その瞬間、二人は完全に停止していた。
お互いにどう動こうか、相手がどう動くかを探っているのだ。
暗殺者は弾かれるように後ろに跳んだ。
791 = 787 :
殺し屋も同じように後ろに跳ぶ。
お互いの距離は十メートルほど、互いに十分に射程圏内だ。
「うん、もういいや」
突然殺し屋はそんな事を言った。
冗談でもおふざけでもなくそう言っているのだ。
暗殺者は無言のまま教会の椅子に座りだした男を見ていた。
蔑む訳でも、侮蔑する訳でもない、ただただ見る。
「何言ってんだ?」
「そのまんまの意味、俺もう飽きちゃっただよね」
殺し屋は椅子に座ったまま、すんなりと言い放った。
全身の力は抜け、今襲いかかれば容易く殺せてしまいそうだ。
暗殺者は無言のまま殺し屋に襲いかかった。
刹那の内に相手の懐に飛び入り、ナイフで心臓を貫く。
792 = 787 :
だがしかし、今回もまた鉈で防がれていた。
だが彼女の攻撃は終わっていない。
素早く左手で椅子を掴むと、殺し屋の脳天目掛けて椅子を振り下ろす。
木材が割れる音と共に血と椅子の破片が飛び散る。
「な……」
暗殺者はそれ以上声が出なかった。
殺し屋は左手で椅子を砕いていた。
椅子の破片が手に刺さり、ほんの少しだけ血が出ている。
この男は一瞬の攻撃を一瞬で判断し、一瞬で防御したのだ。
「ダメダメ、椅子ってのは座るためのものであって武器じゃない」
殺し屋は歌うように言った。
次の瞬間、殺し屋の前蹴りが彼女の腹に直撃していた。
肺の酸素が吐き出される感覚と共に後ろに吹き飛ぶ。
793 = 787 :
彼女は痛みに耐えながらも態勢を整え、地面に着地する。
すでに意識は朦朧としている。
「無益な戦いって言うのは俺の趣味じゃないんだ、骨折り損のくたびれ儲けってやつ?」
「お前はこれを無益な戦いだと思ってるのか?」
「ああ、だって俺を倒したってお前等が探してるなんとかって子が返ってくる訳じゃないだろ」
暗殺者は呆れた様な顔をしてナイフを構えた。
それにつられて殺し屋も椅子から立ち上がる。
お互いの視線がぶつかる。
暗殺者は姿勢を低くし、殺し屋向かって跳―――――――。
その瞬間、暗殺者の右腕は吹き飛んでいた。
宙をクルクルと舞い、ゆっくりと地上に落ちて行く。
暗殺者が振りかえるとそこには殺し屋がいた。
返り血で顔を赤く染めた殺し屋が。
「終わりだよ。あ、まだやりたいならやってあげてもいいけど」
そう言うと殺し屋は鉈をしまった。
794 = 787 :
殺し屋「久々に楽しめたよ、ありがとね」
暗殺者「テメェ……」
殺し屋「あ、手斬っちゃったけど良かった?」
暗殺者「なんで殺さない……」
殺し屋「え、だって殺す気ないし、あれだよ、えーと、なんだ?」
暗殺者「どうでもいい」
殺し屋「あ、思い出した、男ってのは無益な戦いはしないんだ」キリッ
暗殺者「……」
殺し屋「あれ、かっこいいと思ったんだけどな……失敗した?」
殺し屋「……とにかく殺す気は無い」
殺し屋「あ、あと本当に腕大丈夫?」
暗殺者「くっつけとけば治る」
殺し屋「良かった良かった、じゃあまた今度」ピョン
暗殺者「クソが……」
暗殺者はその場に崩れ落ちた。
795 = 787 :
今日はここまでです。
>>784
黒い剣は強者と一緒に埋葬されました。
>>444 の強者の剣というのは黒い剣の事です。
796 :
乙
殺し屋強いな
797 :
乙
殺し屋かっこいいな
798 :
乙
殺し屋清々しいな
799 :
>>796-798
殺し屋乙
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