元スレ勇者「パーティーにまともな奴がいない……」
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801 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
町 東側
不良「あぐ……」ドサッ
勇者「妹の誘拐を提案したのは誰だ?」
不良「知らない、俺はそれには関わって無い」
勇者「関わって無い?」
不良「今の虹色のバラは複数の派閥に別れてるんだ、俺はあそこの派閥じゃない!!」
勇者「知らないんだな?」
不良「知らない、知ってる訳ない!!」
勇者「……ったく、情報が集まらねぇな」
不良「くそっ、なんで帰って来てんだよ」
勇者「用事だ、用事」
勇者「殺し屋ってのは何処の派閥なんだ?」
不良「あいつはリーダーって名目になってるけど違う」
勇者「じゃあ実質のリーダーは誰だ?」
不良「魔法剣士って奴だ、虹色のバラの中じゃあ一番部隊も持ってる」
勇者「……魔法剣士ね」
802 = 801 :
不良「ちょうどお前が出て行ったくらいに虹色のバラに入ったんだ」
勇者「そいつの事はわかるか?」
不良「知らない、俺はあいつが嫌いだしな」
勇者「なんで?」
不良「あいつは金を使って人を使うんだ」
勇者「金?」
不良「ああ、あいつの部下も大半は金で雇われたり金に釣られた奴等だ」
勇者「ふーん」
勇者「まあいいや、情報ありがとう」
不良「さっさと帰れ」
勇者「負けといて偉そうなこと言ってんじゃねぇよ」
不良「帰ってくれ……」
勇者「……もう俺はいいかな」
不良「え?」
勇者「さっさと出て来たらどうだ?」
803 = 801 :
兵士達「動くな!!」タタタッ
兵士達は不良の腕を掴む。
不良「何なんだよ、放せよ!!」
弓兵「麻薬の密売って言えば分かるよな」
不良「……」
弓兵「連れて行け」
兵士「はっ」スタスタ
弓兵「帰ってきてたのか」
勇者「なんでここに来てんだ?」
弓兵「ちょっと会議があってな、それと命日だからだ」
勇者「会議ね……」
弓兵「坊主こそこんな所でどうしたんだ?」
勇者「人探しだよ、ちょっといろいろあってね」
弓兵「……困っているのなら手伝ってやろうか?」
勇者「別にいい、ハンターに手伝ってもらうような事じゃない」
弓兵「俺個人として協力するんだ、ハンターは関係ないぞ」
勇者「……」
804 = 801 :
勇者「いいのか?」
弓兵「ああ、お前達にはいろいろと借りがあるからな」
勇者「……」
弓兵「……」
勇者「俺の妹が町のチンピラ共に誘拐された」
弓兵「何処のグループだ?」
勇者「虹色のバラだ」
弓兵「……それでここにいたのか」
勇者「ああ、無駄足だったけどな」
弓兵「他の奴らはどうした」
勇者「暗殺者……って言って分かるか?」
弓兵「ちゃんと女大臣から聞いてる」
勇者「暗殺者は殺し屋の所に妹を助けに行った」
勇者「ドラゴンと女勇者は俺の家で待機してる」
弓兵「殺し屋?」
勇者「知ってるのか?」
弓兵「ああ、有名な男だからな」
805 = 801 :
勇者「……一旦戻るかな」スタスタ
弓兵「俺も行こう」スタスタ
勇者「本当にいいのか?」スタスタ
弓兵「さっきも言っただろ、気にすんな」スタスタ
勇者「……殺し屋ってのは強いのか?」スタスタ
弓兵「ああ、かなり強いはずだ」スタスタ
勇者「……」スタスタ
弓兵「だがあいつは目的のためなら手段は選ばんが、目的じゃないのなら何もしない」スタスタ
勇者「ずいぶんと極端な奴だな……」スタスタ
金髪「勇者さん!!」タタタッ
勇者「金髪?」
金髪「すいません、妹さん助けられなかったっす……」
勇者「え!?」
金髪「俺達が行った時にはもう別の場所に連れてかれてて……」
勇者「気にすんな、お前のせいじゃない」
806 = 801 :
弓兵「不味い事になったな……」
金髪「だ、誰っすか?」
勇者「弓兵だ」
弓兵「よろしく」
金髪「よ、よろしくっす」
弓兵「で、場所はわかるのか?」
金髪「すいません……」
勇者「……見当はついてる」
金髪「ほ、本当っすか!?」
勇者「詳しい場所は知らねぇけどな」
弓兵「犯人はわかってるのか?」
勇者「魔法剣士らしい、確証はないけど……」
弓兵「魔法剣士か……」
勇者「知ってるのか?」
弓兵「ああ、今俺が追っている男だ」
金髪「何者なんすか?」
弓兵「……お前達は知らなくていい」
勇者「なんだよそれ」
807 = 801 :
弓兵「知る必要は無い」
勇者「あ、そう」
弓兵「……」
勇者「……」
金髪「……と、とにかく一回帰った――――――」
殺し屋「やっと見つかった、この町はやっぱり広いね」
勇者「誰だ?」
殺し屋「どうも初めまして、殺し屋と申します」ペコリ
勇者「……」
殺し屋「あれ、知ってると思ってたけど知らない?」
殺し屋「は、恥ずかしい……」///
金髪「なんでここにいるんすか!!」
殺し屋「お前はえーと……まあいいか」
金髪「ふざけんなっす!!」
勇者「俺に会いに来たのか?」
殺し屋「ああ、お前に会うために遥々北の教会からやって来たんだ」
金髪「俺の事無視すんなっす!!」
808 = 801 :
殺し屋「顔は覚えてるんだけど名前がね……年かな……」
勇者「暗殺者はどうした」
殺し屋「ああ、ちゃんと生きてるよ、片腕斬っちゃったけどね」
金髪「お前……」
殺し屋「そう怒るなって、あれは事故だよ、事故」
勇者「で、何のために俺に会いに?」
勇者はそう言い刀を抜く。
殺し屋「あわわ、落ち着いて落ち着いて」アタフタ
勇者「は?」
殺し屋「俺は戦いに来た訳じゃない、お前と話に来たんだ」
金髪「う、嘘かもしれないっすよ!!」
殺し屋「ひどいなー、俺なんか悪い事した?」
勇者「分かった、二人で話した方がいいか?」
殺し屋「俺はどっちでもいいよ、ただ茶々が入るのは嫌かな」
勇者「弓兵、金髪、悪いけど先帰っててくれ」
金髪「だ、大丈夫っすか?」
弓兵「坊主なら心配いらん、行くぞ」スタスタ
金髪「き、気を付けてくださいね」スタスタ
809 = 801 :
今日はここまでです。
ここは登場キャラが多くなっちゃってますが、大丈夫かな……
810 :
乙ー
読む方は付いて行けてる。
むしろ書く方がとっちらからないか心配。
811 :
全然大丈夫
話広げすぎてないし読みやすい
812 :
別にキャラ多くない、面白い
813 :
勇者「……で、何の話?」
殺し屋「あ、それは嘘、本当は話す事なんて無くてただ会いに来ただけ」
勇者「あ、そう」
殺し屋「……あれ、怒らないの?」
勇者「怒ったって仕方ないだろ」
殺し屋「変わってるね、お前」
勇者「あんたに言われたくねぇよ」
殺し屋「俺のは個性的なだけ、お前のとはちょっと違うよ」
勇者「個性と変は紙一重だと思うけど?」
殺し屋「じゃあ俺もお前も個性的って事でいいや」
殺し屋「……じゃあそろそろ行くね」スタスタ
勇者「お前にこの仕事を頼んだのは魔法剣士か?」
殺し屋「……誰から聞いたの?」
勇者「俺の予想だ」
殺し屋「凄い予想だ、大正解」
勇者「理由は?」
殺し屋「金さえもらえれば俺は何でもする」
814 = 813 :
勇者「魔法剣士の居場所は?」
殺し屋「それは言えない、それだと契約違反になる」
勇者「律儀だな」
殺し屋「契約違反したら報酬がダメになるからさ、あれだよ、骨折り損のくたびれ儲けになるだろ」
殺し屋「……あれ、前にも言った気がするけど気のせいかな?」
勇者「そんなもん知るか」
殺し屋「まあいいや、こんだけでも話してみて面白かったよ」
勇者「そりゃどうも」
勇者「……俺を殺さなくていいのか?」
殺し屋「バレたんじゃなくてお前の予想なんだから別に殺す必要無いだろ」
勇者「いいのか?」
殺し屋「仕事に私情持ち込むの嫌いだけど、俺あいつ嫌いなんだよ」
殺し屋「それにお前と魔法剣士が戦ってる所見てみたいんだ、怖いもの見たさってやつかな」
勇者「ちょっと間違ってるけど……まあいいか」
殺し屋「あ、やっぱり間違ってたんだ、ごめんごめん」
勇者「まあ、魔法剣士は自分で探すから別にいい」
殺し屋「俺は傍観者として楽しませてもらうよ」
815 = 813 :
勇者「勝手にしろ」
殺し屋「あはは、やっぱりお前は変……じゃなくて個性的だ」
勇者「……」
殺し屋「さてと、じゃあ俺は行こうかな」
勇者「俺も行かせてもらう」
殺し屋「期待してるよ、久々に面白そうなものが見れそうだし」
勇者「戦う気は無いのか?」
殺し屋「ほとんど無いね、まあその時の気分で決めるけど」
勇者「……」
殺し屋「行かなくていいの?」
勇者「もう行く」スタスタ
殺し屋「じゃあまた今度」ピョンッ
816 = 813 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
勇者の家
勇者「ただいま」ガチャ
女勇者「おかえりなさい」
勇者「暗殺者は?」
暗殺者「……すまん」スタスタ
勇者「治るまでどのくらいかかるんだ?」
暗殺者「二週間くらいだな」
勇者「じゃあ今回は待機だな」
暗殺者「俺が弱いばっかりに……」
ドラゴン「貴様のせいじゃない」
女勇者「自分を責めない方がいいですよ」
暗殺者「……」
弓兵「で、どうだったんだ?」
勇者「やっぱり魔法剣士が犯人みたいだ」
弓兵「……居場所は?」
817 = 813 :
勇者「それはまだわかってない……」
女勇者「調べれば何とかなります」
ドラゴン「虹色のバラとかいうのを片っ端から潰していけばいいだろ」
金髪「……つまり前哨戦っすね!!」
女勇者「そう言う事です」
黒スライム「なら食材屋の裏を攻撃するといいぞ」ピョンッ
ドラゴン「なんだ?」
黒スライム「俺様の名は黒スライムだ、覚えとけ」
勇者「スライムの笛で呼んだんだ」
ドラゴン「ああ、よろしく……」
黒スライム「あそこは人の出入りが激しい、多分お前等探してる情報があるはずだ」
女勇者「ありがとうございます」
黒スライム「いいって事よ」
勇者「場所も決まったか……」
弓兵「でもどうやって入る、下手にやればこっちが不利だぞ」
勇者「……」
母親「ただいま――――ってあれ、妹は?」
勇者「ちょっといろいろあってな」
勇者「借金は返したか?」
母親「それが利子の分を払えって言われたのよ!!」
母親「とりあえず帰るって言って逃げて来たわ」
818 = 813 :
勇者「後で怒鳴り込んでくるぞ」
母親「知らないわよ」
女勇者「……いくらですか?」
母親「何が?」
女勇者「借金ですよ」
母親「1000ゴールドよ」
勇者「それ俺達が返してくるよ」
母親「え、いいの?」
勇者「ああ、ちょっと用事もあるし」
女勇者「入る名目が出来ましたね」
勇者「ああ」
女勇者「私と勇者と弓兵は中の制圧、ドラゴンと金髪は外から来る増援を片付けて下さい」
弓兵・勇者・ドラゴン・金髪「了解」
女勇者「では、行きましょうか」
弓兵・金髪・ドラゴン・勇者「ああ」
819 = 813 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
貸金
女勇者「1000ゴールドです」
貸金屋「すいませんが利子がつくので2000ゴールド必要なんですよ」ニコニコ
勇者「ちょっと待ってくれ、ついさっき1000ゴールドって言ってただろ!!」
貸金屋「そう言われましても……」
女勇者「困りましたね」
貸金屋「困ったのはこちらの方ですよ、ちゃんと払っていただかないと困るんですよ」
勇者「絶対おかしいだろ!!」
勇者は貸金屋の胸ぐらを掴む。
女勇者「勇者!!」
弓兵「落ちつけ」
貸金屋「な、何すんだ!!」
貸金屋「調子こいてんじゃねーぞ!!」
勇者「お前こそ偉そうに何言ってんだ!?」
820 = 813 :
貸金屋「おい、出て来い!!」
男達「なんすか?」ゾロゾロ
貸金屋「こいつ等にいろいろ教えてやれ」
勇者「なんだお前等」
男「用心棒だ」
勇者「……」
男「さっさと払っちまえよ」
勇者「もう金がねぇんだ」
男「だったら稼いで来いよ!!」
男は勇者を殴る。
勇者「……殴ったな?」
男「だったらどうした?」ニヤニヤ
勇者は刀を抜き、男の両腕を斬り落す。
貸金屋「な……!?」
勇者「正当防衛ってやつだ」ニヤリ
女勇者「そうですね」
弓兵「……好き勝手にやってくれ、責任は俺が持つ」
勇者「逃げたい奴はさっさと逃げた方がいいぞ」ニヤリ
821 = 813 :
今日はここまでです。
明日から来週月曜日まで忙しくなるので投下が少なくなるかもしれません。
極力頑張りますが、ダメだったらすいません。
822 :
乙
風邪引かないようにな
823 :
うむ
824 :
正当防衛過剰過ぎwwww
825 :
乙
過剰防衛すぎワロタ
826 :
過剰防衛正当過ぎwwwwww
827 :
勇者・・・最初の頃と変わりすぎwwwwwwww
828 :
よし、ぶっ殺せ
829 :
とりあえず母親には酷い目にあってほしい
830 :
まともなやつどころかもう勇者と呼んではいけないレベルwww
831 :
勇者と女勇者は得物を構え、背中合わせに立っていた。
周りには数えきれないくらいの男達が剣を構えて立っている。
ざっと数えても30人は超えているだろうか。
二人は何も言わず周りの男達を睨みつける。
数秒の静寂。
勇者と女勇者は同時に相手に斬りかかった。
相手が剣を持っていると言っても、それはただのチンピラ。
勇者はある男を斬り裂き、女勇者は別の男を突き殺す。
それは本当に一瞬の事だった。
一人の男が女勇者の背後から斬りかかる。
だが勇者は一瞬でその男の背後に回り込むと男を一撃で仕留める。
二人はまた背中合わせになり、周りを囲む男達を見た。
お互いの呼吸が重なり、お互いの背中の温かさが伝わる。
弓兵は二階の制圧に行ったのだろう、ここにはいなかった。
つまり二人以外は全員敵という事だ。
勇者は邪悪な笑みを浮かべた。
周りが全員敵という事は単純に敵を全滅させればいいのだ。
これほど分かりやすい作戦はない。
832 = 831 :
「行けるか?」
「当たり前です」
会話はそれだけだった。
むしろそれだけで十分だ。
勇者と女勇者の関係は友人でも、恋人でもない。
しかしそれ以上に二人は何かで通じ合っている。
ドラゴンとはまた違った意味で深い関係だ。
勇者は一歩前に出ると、前の男達目掛けて刀を横に薙ぎ払った。
その一撃で目の前が血に染まり、真っ赤な水溜りがいくつも出来あがった。
元人間の残骸達が宙を舞っている。
きっと勇者の背後にもその光景が広がっているのだろう。
勇者は振り返ることなく、目の前の敵を貫いた。
目にも止まらない、刹那の一撃。
崩れ落ちる男を横目で見ながら次の標的を探す。
とにかく前だけを見続ける。
背中は彼女に任せてあるのだから。
833 = 831 :
そこにある感情は一つ。
信頼。
お互いに剣を交えたからこそ。
一緒に旅をしたからこそ。
絶対的な信頼があるのだ。
勇者は振り向く事無く、横にいる男を縦に振り下ろす。
肩から太ももまでを一太刀で斬り裂いた。
まるで魚を捌くかのようにあっさりと真っ二つになる。
勇者の黒髪と顔が赤く染まる。
服はすでに元の色が分からない位真っ赤になっている。
窓から逃げ出す男達を一瞥し、刀を構え直した。
逃げて行く者に興味は無い。
834 = 831 :
勇者は大きく一歩前に進み、刀を振りかぶる。
背後に殺気を感じた。
敵が背後にいるのが直感的にわかる。
だが彼は決して振り返らない。
背後で呻き声と人を斬る音が聞こえた。
「ありがとな」
勇者は小さな声で呟く。
女勇者に聞こえたかどうかは分からない。
いや、聞こえなくてもいい。
勇者は振りかぶった刀を振り下ろす。
空を斬りながら刀は男の肩目掛けて真っすぐに進む。
滑らかで無駄のない動作。
背中を気にしなくていいから出来る動作だった。
血が炸裂し、床と壁をさらに赤く染まった。
勇者は穏やかに笑う。
背中を預けられる事に。
そんな仲間がいる事に安堵しながら。
835 = 831 :
女勇者は体を大きく捻り、目の前の男を一気に叩き斬った。
四人ほどの男が赤く染まり、血を炸裂させる。
あれほどいた男達も今では十人をきっていた。
仲間に背中を預けるという事。
仲間の背中を守るという事。
それはどちらも女勇者にとって初めての経験だった。
今までの彼女には心を許せる人間なんていなかった。
勇者という肩書を持つために仲間は昔に捨てたからだ。
勇者というのは孤高で気高き者でなければならない。
彼女はそう信じて来た。
だが今は違った。
今の彼女には仲間がいた。
友人がいた。
一人の少年が彼女の信じてきた概念を、考え方を、全てを変えたのだ。
836 = 831 :
彼は私の何なんでしょうか……
そんな気持ちが浮かぶ。
答えはぼんやりとした雲の様な状態で彼女の心に存在していた。
だが雲から形になる事は無い。
女勇者は素早く地面を蹴り、勇者の背後にいた男に斬りかかる。
男が勇者を斬る前に女勇者の剣が腰のあたりから横に真っ二つにする。
男は一撃で絶命した。
勇者は一度も振り向かなかった。
多分それは彼女を信頼しているからなのだろう。
仲間を守る感覚。
それは不思議な、本当に不思議な感覚だった。
「ありがとな」
そんな時、勇者の声が聞こえた。
様々な音が混じり会う中で微かに、しかし確かに。
837 = 831 :
温かく、優しい声。
信頼と安堵の混じった声。
心の中に響く声。
女勇者の中でぼんやりとあった思いがはっきりとした形を手に入れた様な気がした。
それは思った以上に単純で、それでいて思った以上に不思議なものだった。
これが本当にそれかどうかは分からない。
でもこれはまぎれもなく答えの一つだ。
そうですか、私はこんなに簡単な気持ちに気付けなかったんですか……
彼女は僅かに苦笑する。
だが自嘲では無い、不思議な苦笑。
彼女は最後の一人を剣で貫いた。
呻き声と共に地面に倒れる男を眺める。
これで勇者と女勇者の仕事は終わりだ。
「終わったな」
勇者の声が無音の部屋に響く。
聞きなれた、優しい声。
そう、ここが今の私の居場所。
それが彼女の答えだった。
なら私は勇者の何になれるのでしょうか?
そんな事をふと考える。
答えはすぐに出た。
いや、むしろ決まっていた
口にするのも恥ずかしい答え。
勇者でもなんでもない、一人の乙女が考えた答え。
一人の戦士の乙女が出した答え。
838 = 831 :
女勇者「勇者……」
勇者「ん?」
女勇者「分かりました」
勇者「え、な、何が?」
女勇者「あなた達は私を強くしてくれました」
勇者「……」
女勇者「あなた達は私に多くの事を教えてくれた」
女勇者「……そのきっかけを作ってくれたのはあなたです」
勇者「俺?」
女勇者は勇者を抱き締める。
勇者「え、ちょ……!?」
女勇者「決めました」
女勇者「私はあなたとドラゴンの、刃になりたい」
女勇者「あなたとドラゴンを守りたいんです」
勇者「……くさい台詞だな」
女勇者「あなたのがうつったんです」
勇者「……そうかもな」
女勇者「そうですよ」ニッコリ
839 = 831 :
今日はここまでです。
なんとか女勇者のデレまで持って行けました。(次のデレはいつになるんだろう……)
明日は短いですが弓兵戦です。
840 :
乙
感動的だが周りは血塗れである
841 = 825 :
乙
この二人の関係はなんか不思議でいいな
相棒に近い感じがする
842 = 827 :
>>839
乙
女勇者がデレたwwwwwwwwww
843 :
何十人も斬り殺して辺り一面血塗れにしないとデレられないとか、なんかの呪いかよwww
844 :
ザンデレか
845 :
ひゃっほう!
乙!
846 :
なにこの最高なデレ方
おつ!
847 :
血まみれがこの二人にはお似合いさ
女勇者デレ乙!
848 :
こいつら魔物と戦う気ねぇなwww
対人戦になった途端イキイキしやがる
849 :
魔王の空気っぷりがやばい
850 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓兵は素早く階段を上りきり、周りを見渡した。
貸金屋と五人の男がこちらを睨んでいるのが見える。
弓兵は微笑し、相手の目を見る。
チンピラ六人など弓兵にとっては敵ですらない。
弓兵は矢筒から矢を取り出すと、弓につがえた。
右手で弓を引き絞り、左手で狙いを定める。
その動作は機械の様に精密で、機械の様に早かった。
弓はギリギリと音をたて、矢を放つ時を待っている。
後は右手を離すだけだ。
弓兵の弓から矢が放たれる。
ヒュンッ、という音がこだました。
矢じりを鈍く光らせながら矢は飛んでいく。
矢は一直線に男に突き刺さる。
グサリ、と文字通り男の胸を貫く。
男はひざから崩れ落ち、声も上げず息絶える。
残り五人。
弓兵は無駄な動きをほとんどせず、次の動作に移る。
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