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    元スレ勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」

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    1 :


    「八百年ぶりに復活したけど色々とちがいすぎて困るなあ」

    僧侶「どうした、勇者?」

    「そう、まずキミだよ」

    僧侶「なにが言いたいんだ?」

    「一週間前に初めて顔合わせしたときはいかにも僧侶って感じの服装だったじゃん?
      なんで今は格闘家みたいになってるの?」

    僧侶「逆になにがおかしいのか私にはわからんのだが。
       私たちは密使としてこれから魔王の帝国へ向かう。
       教会の尼僧服なんて来ていたら我が国の人間だってバレる可能性があるだろ」



    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1381053549

    2 = 1 :


    「いや、まあ服装についてはそうかもしれないよ?
      でも僧侶なのになんで杖とか持ってないの?」

    僧侶「杖……錫杖のことか?」

    「いやいや杖は杖だよ、だいたい杖がなかったら呪文唱えられないじゃん」

    僧侶「杖が呪文と関係あるのか? だいたい私は呪文や魔法の類はほとんど使えないぞ」

    「ええっ!?」

    3 = 1 :


    僧侶「なにを驚くことがある、私たちのような尼僧は心身を鍛える厳しい修行から肉体派になることがほとんどだ。
      この前も西の森でワイバーンとやりあったがもちろんこの拳一つで下したぞ」

    「本当にキミは僧侶なのか? 
      オレの時代の僧侶は杖持って髪のご加護うんぬん言って傷をよく癒してもらってたのになあ」

    僧侶「そういえば聞いたことがあるな、当時の僧侶は癒し手だったらしいな。
       まあお前の知っている時代の僧侶と今の時代の僧侶は別物なのだろう」

    「どうやらそうみたいだな。
      オレの旅のお供だった僧侶とは明らかにべつものと」

    僧侶「そうだ」

    「ていうかもう一つ聞いていい?」

    僧侶「なんだ?」

    4 = 1 :



    「口調だよ、口調。オレと最初に会ったときはもっとそれっぽい口調だったじゃん。
      なんか語尾に『まし』とかついてたし」

    僧侶「普段はな、だが今は私は僧侶というよりも陛下から密使の仕事を授かった遣いだ。
       そしてお前は私の同伴者というわけだ」

    「はあ……」

    僧侶「まあもともと私の性格上あのような話し方は向いていないのだ、気にするな」

    「まあ個人によってそりゃあ色々とちがうのか」

    僧侶「いちおう私は今回、お前の護衛の任務も任されている。わからんことはなんでも聞いてくれ」

    「わかった。
      じゃあ次は……キミだな」

    戦士「ん? もしかしてボクのことかい?」

    5 = 1 :



    「やはり見た目からのツッコミになるんだけどキミは戦士なんだよな?」

    戦士「なにが言いたいんだい? ボクほど男らしくかつ色男な戦士はいないよ?」

    「いやあなんて言うかオレの時代の戦士とはかなりちがうからさあ。
      たしかオレの時代の戦士はもっとこう鎧とか甲冑とかゴリゴリに装備してたからさ」

    戦士「そうなのかい?」

    「だからキミみたいにそんな高級そうなローブを身にまとって、なんか色々とよくわからない装飾品をつけてると戦士に見えないんだよ。
      どちらかというと魔法使い、みたいな感じかな」

    戦士「ハハハハ、そんなボクは国のお抱え騎士じゃないんだから。
       それにそんなごっつい格好してたら疲れちゃうし女の子にもモテないじゃん」

    6 = 1 :


    「いやあ、オレの知ってる戦士っていうのは戦い大好きな熱血漢だったからなあ」

    戦士「まあ別にそういう時代錯誤な戦士はいくらでも世の中にいるよ?
       でもそんな暑苦しい格好して剣を振り回すなんてナンセンスさ」

    「いや、でもなあやっぱり戦士っていうのは……」

    戦士「あのさあ、勇者くん。キミみたいな生きた化石の常識はもはや時代がちがいすぎるんだからいちいち気にしてたら負けだよ?」

    「い、生きた化石……」

    7 = 1 :


    僧侶「この人はこの若さでいくつもの公的ギルドの経営を任されている。
       名門貴族出身ですでに官僚にまで上り詰めているからな」

    「そんなすごい人なのか、キミ?」

    戦士「まあ、武功を立てるだけが立身出世の方法じゃないってことさ。
       もちろん剣の腕もたしかなボクだけど、頭もいいからさ。官僚試験も一発合格なわけ。
       おかげで今は人事や監督とかも任されてるよ」

    「今の時代の戦士はキミみたいなのが主流なのか」

    戦士「いやいや全然! ボクなんかはむしろ異端だよ。
       でもボク、頭悪い暑苦しいのはキライだからさあ。剣を振るうことだけが戦士のできることじゃないだろ?
       ボクは魔法もかなり使えるしね、おっとごめんよ。さっきから自慢話ばかりになってるね」

    「なんて言うかすげーな」

    8 = 1 :


    戦士「まあ仲良くやろうよ。本来なら僧侶ちゃんとかはボクの部下にあたるんだけど今は苦楽を共にするパーティー。
       特別にタメ口を許してあげるよ、対等な仲間としてね」

    僧侶「まあ私のほうが年上だからな、お前がそう言うなら私は敬語を使うつもりはないしそのような接し方もしない」

    戦士「いいよいいよ、キミみたいな美人なら口を聞けるだけでハッピーだからね」

    (大丈夫なのか、このパーティ)

    「あー、で最後の一人なんだけど」

    魔法使い「…………」

    9 = 1 :



    魔法使い「私は魔法使い、よろしく」

    「あ、ああ……」

    魔法使い「…………」

    「…………」

    魔法使い「なにか言いたいことでも?」

    「ああ、キミは魔法使いなんだよな? 身につけている黒いローブとかトンガリ帽子を見るかぎり」

    魔法使い「その通り」

    10 = 1 :

    戦士「どちらかと言うと魔法使いと言うよりは魔女みたいだけどね」

    「魔法使いはオレの時代と変わらないのか?」


    魔法使い「あなたの時代を知らないからなんとも言えないけれど私は魔法を使うから魔法使い。
         ギルドにも魔法使いとして登録している」

    「ってことはオレの知ってる魔法使いと変わりがないってことか、なんか安心した」

    僧侶「安心した? なぜ?」

    「八百年経っても変わらず残ってるものがあるんだなあと思ってさ」

    11 = 1 :


    戦士「ところで勇者くん、キミはほとんど記憶がないんだってね」

    「ああ、実はさっきから八百年前とのちがいを振り返ってたんだけど記憶がほとんどないからな。
      さっきみたいな一般知識はあるんだけど、冒険していたときの記憶なんかはほとんどない」

    僧侶「記憶がないのにあんなことを言っていたのか」

    「だから、八百年前の一般知識ぐらいの記憶はあるんだよ」

    戦士「記憶がない勇者くんが本当に戦力になるのかなあ?」

    「それはオレも疑問に思う」

    (そもそもなぜオレが八百年間の封印から目覚めさせられ、現在このよくわからないパーティで船着場まで向かっているのかと言うと……)

    12 = 1 :

    一週間前、突如オレは復活した。
    いや、国の上級魔法使い――賢者たちにより八百年の封印を解かれた。

    今回封印されて八百年もの間眠っていたオレを復活させるよう命令した王は、オレを見つけるなりまくし立てて来た。

    今回オレを復活させた理由は魔王が君臨する帝国への視察をオレに頼むためだった。
    かつて勇者として魔王を滅ぼしたオレだったら視察し得た情報を確実に国に持ち帰ることができるから、という理由らしい。

    現在人間と魔物の対立や戦争はほとんど沈静化されて今のところは目立った争いはないそうだ。
    しかし、今度は人類同士での争いが絶えないらしい。

    この国も隣国との小競り合いが絶えないらしい。
    そこで魔王の帝国、通称魔界へ行き魔界の技術がどれほどのものなのか見て、
    場合によっては魔王と交渉してあちらの技術者を『お雇い外国人』として雇い国の発展に利用したいらしい。

    いやいや、魔物を雇うって……。

    ていうか世界を救うのが勇者の役目のはずなのに王とは言え、これでは単なる使いっ走りじゃないか?

    ちなみに記憶喪失のことを王に伝えても王はオレへの仕事の依頼を下げようとはしなかった。

    なぜオレは八百年前魔王を倒したあと自らを封印したのか、それについてはオレ自身も覚えていないし国の史料や記録にも残っていない。
    つまり、オレは自分のことがまるでわからないのだ。


    そして現在に至る。

    13 = 1 :


    (誰かがオレのことを勇者として見てくれないかぎりオレは自身が勇者であるかどうかすらわからないわけだ)

    「ところで気になってたんだけどこのパーティはどういう理由で選ばれてるんだ?」

    僧侶「たしかに。私たちの立場は言ってみれば勅使だ。適当な寄せ集めのメンツというわけではないだろうな。
       しかし私のような凡愚がなぜ選ばれたのかわからん」

    戦士「それについてはボクから説明するよ。
       まあ、と言ってもやっぱり半分は寄せ集めのメンツさ。
       なにせボクらの国は今はどこもかしこも人手不足だからね」

    僧侶「むっ……」

    (僧侶が少し残念そうな顔したな)
       

    14 = 1 :


    戦士「しかも人手不足な上に勇者くんが復活した一週間前、賢者たちが謎の爆発事故に遭遇していてね。
       護衛兵士たちもそのときにかなり負傷してしまった」

    「なんか大変なんだな」

    戦士「そんなわけで選べる少人数の中からボクが選りすぐったのがキミらなわけさ」

    僧侶「お前が?」

    戦士「そう、陛下に頼まれたからねー。
       魔界好きと言われるほどに魔界に詳しい僧侶ちゃん。
       魔物を扱った魔法のエキスパートの魔法使いちゃん。
       そして言うまでもなくこのボク、完璧とはいかなくてもそこそこに優れたメンツさ」

    「なるほど……って、魔物だ!」

    15 = 1 :


    戦士「魔物って……あれはスライムだろ?」

    「いや、だからスライムだから魔物だろ!?」

    魔法使い「昔はたしかにオーソドックスな魔物だった。雑草のようにどこにでも現れる存在だった」

    「今は違うっていうのか?」

    魔法使い「今は時代の変化とともに天然のスライムは駆除され、食用に改良されたスライムがこの国のスライムの九割を占めている」

    「しょ、食用!? スライムって食べられるの!?」

    16 = 1 :


    僧侶「知らないのか? スライムと言えば回復系アイテムのグミやドリンクの定番じゃないか」

    「え、ええっ!?」

    僧侶「さすがに刻んで焼いて食べるというわけにはいかないがな」

    「こ、これも時代の変化というヤツなのか……?
      しかも普通に襲ってこないな」

    魔法使い「今の魔物たちはスライムのように品種改良とある程度のしつけを受けて人を襲わないようにしてある。
         もう少し街を離れればスライム以外の魔物も出てくる。そいつらは一定の周期ごとに人を襲わないように魔術でおとなしくしてある」

    「いや、そうなのか。それはある意味いい時代になったな」

    戦士「そんなに驚くことなのかい、ボクたちからしたらどれも普通のことなんだけどなあ」

    17 = 1 :



    僧侶「そもそもそうやって魔物をおとなしくさせていなかったら人なんて簡単に襲われるぞ。
       行商なんかもできなくなってしまうし、街から街への移動もかなり大変になるだろうな」

    「オレたちのころは魔物は襲ってきてなんぼだったからなあ」

    戦士「もちろん人の手が及ばない山奥とか砂漠に行けばいくらでも魔物は襲ってくれるよ」

    僧侶「試しに私が持ってるスライムを調理したものを食べてみるか?」

    「グミかなにかか?」

    僧侶「いや、刻んでお手頃なサイズにして幾つかの薬草とヴィネガーとニンニクに二日つけたスライム饅頭だ」

    「遠慮しておく」

    僧侶「なぜか皆、お前のようにこれについては遠慮するな。美味しいのに」

    (怖くて食えるか! 
      ……しかし、記憶がほとんどないのにジェネレーションギャップを味わうことになるとは)

    18 = 1 :


    「魔物が襲ってこないせいで簡単に港までたどり着いたな」

    戦士「船乗るためだけに魔物に襲われてたらたまったもんじゃないけどね」

    「ところで船はどこだ?」

    僧侶「なにを言っている? 目の前にあるじゃないか?」

    「え? ……こ、これええぇ!?」

    戦士「キミのリアクション無駄に大きいけどわざとじゃないんだよね?」

    「いやいや、なんとなくデカイ建物みたいなのが海に浮いてるなと思ったけど……これが船なのか」

    戦士「なるほどね、勇者くんの時代には汽船なんかなくてちっちゃな帆船ぐらいしかなかったのか」

    19 = 1 :



    「すまないが、いったいなぜこの船はこんなにデカイんだ?
      あとそのなんだ『キセン』っていうのはこの巨大な船のことか?」

    戦士「そうだよ、まあキミが知っている時代の船とはまったくの別物だと思った方がいい」

    「しかも一つじゃない、十隻はあるか?」

    魔法使い「そろそろ出港の時間。乗りましょ」

    戦士「船についてはまた乗ってから説明してあげるからとりあえず行こうか」

    僧侶「お前、驚きすぎて今日で死ぬんじゃないのか?」

    「たしかに今の時点で驚きだけで疲労困憊って感じだからな」

    20 = 1 :


    船内にて


    「は,はやい!なんてスピードでこの船は走ってるんだ!?
      中もすごい、普通に揺れていなかったらなにかの建物の中だと勘違いしてしまいそうだ。
      うちの国の技術はすでにここまでの発展を遂げていたのか?
      いや、これよりすごいものが魔界にはあるというのか?」

    僧侶「そんなにはしゃがなくても……」

    戦士「どうだかねえ、この船がすごいこと自体は確かだけどこれは他国から買い取ったものだからねー」

    「買い取ったってことはこの船はべつにこの国が作ったわけじゃないのか。まあだとしてもすごいけど」

    戦士「でもボクの推測が正しければこの船みたいなのを買い取り続けたりすれば待っているのは国としての破綻だと思うけどね」

    「破綻? どうして」

    21 = 1 :



    戦士「キミは気づかなかったかい? あの港にあった船の大半が老朽化してることに」

    「すまん、興奮しすぎてあまり見てなかった」

    戦士「まあ、そうだろうね。あの港にあった船の大半は朽ち果てかけている。
       なぜかと言えばうちの国には技術者が致命的に足りてないんだ。船こそ買い取ったがメンテナンスをやる技術者も船員もいない。
       もともとあの船は前の王が買い取ったものなんだけど、まともなメンテナンスもしないせいで老朽船と化してしまった」

    僧侶「たしかそのせいで我が国の汽船会社の経営も悪化の一途をたどってるらしいな」

    戦士「そりゃあそうでしょ。船は大きいだけでボロくて旅客船でありながら船員の接客態度は最低、出港時国もまともに守れない。

       ボク、女の子をデートで誘っときここの船使ったけどホントに最悪だったよ。
       しかも船が足りないから客も満足に捌けない、悪化しないほうがどうかしてるよ。
       今は技術者を外国から雇ったりしてるけど、その技術を自分のものにしなければ結局破綻しかしないよ」

    「…………?」
       
    戦士「さらに言えば海軍のほうの船も汽船が主流になってるけどこれもやっぱり船員や技術者が追いつけていない。
       船が壊れるたびに新しいものを買ってたんだよ、前の王様までは」

    22 = 1 :


    「金、ヤバくないか?」

    戦士「前の王様とか豪遊しまくりだったからねえ、宮廷の奢侈とかもすごかったらしいよ。
       ていうかうちの国って外債とかにも手を染めてるし、いずれは借金で身動きがとれなくなるかもね、ははは」

    「笑って言っていられることなのか?」

    戦士「笑えないね。だが、だからと言って今のボクらにできることはないからね。
       ボクらは今やれることを全力でやるしかないんじゃない?」

    僧侶「必要な技術の横流しではなく、それをきちんと咀嚼し嚥下して自分の国のものにする。私たちはそのために魔界へ行くんだ」

    「…………」

    戦士「そういうことだよ。あと二時間もすれば魔界の遣いと落ち合う場所につくだろうから、ボクはそれまで寝させてもらうよ」

    23 = 1 :


    「あの距離をこれだけの時間で来られるとは本当にすごいな。
      で、ここはいったいどこなんだ?」

    僧侶「――という街みたいだが」

    戦士「ここは魔物たちの経営する会社がいくつかあってね」

    「ま、魔物が会社!?」

    僧侶「いや、そこは驚くところじゃないだろ。なぜ我が国にヤツらの会社が……」

    戦士「そんなに驚くことでもないでしょ? だいたいそういうのがなかったら今回の魔界の視察という企画も提案されなかったでしょ」

    「ここで魔物と落ち合うんだよな?」

    戦士「一応、時間ではもうすぐのはずだよ」

    24 = 1 :



    「いったいどんな魔物が来るんだろうな」

    僧侶「おそらく人型だとは思うが……」


    「あなた方が我が魔界への遣いの方々でしょうか?」


    「うおぉ!? 急に背後から……っ!?」

    魔法使い「驚きすぎ……ローブで姿は隠しているみたいだけど。ゴブリン?」

    ゴブリン「そのとおりでございます。さすがは魔法使い様」

    戦士「キミが今回ボクらの魔界への案内役でいいのかい?」

    ゴブリン「そのとおりでございます。私は陛下の勅命を受け、あなた方を迎えにきた次第です。
         本来ならもう少しきちんとした挨拶をしたいところですが私の姿を見られるのは困りますゆえ、先に目的地へのご案内をさせていただきたいと思います」

    (魔物が普通にしゃべってる……けどみんなが驚かないってことは今はこれが普通なのか)

    25 = 1 :


    勇者魔王系初めて書くんでめちゃくちゃかもしれませんけどよかったら見てください
    今日はここまで

    27 :


    この世界観は期待

    28 :

    再 開

    29 = 28 :


    ホテルにて


    「小さな宿泊施設みたいだがこれもお前たちの会社なのか?」

    ゴブリン「左様でございます。もっともこちらはダミー会社でありますゆえ客人が入られることはありませんが」

    「ダミー会社?」

    僧侶「ようはここはコイツら魔物どものアジトとしての役割しか果たしてないということだ」

    戦士「さすがに魔物たちが大っぴらに商売できる会社はほとんどないよ。
       そのごく一部さえほとんど知ってる人間はいないだろうけどね」

    「いやはやすごい時代だ……ていうかちょっと待て」

    戦士「どうしたんだい、勇者くん?」

    30 = 28 :



    「お前……さっきら喋ってるよな?」

    ゴブリン「それがなにか?」

    「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤいやイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ。
      魔物がしゃべってんぞ! 魔物がオレに敬語で話しかけてんぞっ!? やべえよっ!」

    魔法使い「……なるほど」

    僧侶「どういうことだ、魔物が口を聞くのがそんなに珍しいのか?」

    魔法使い「彼の生きていた時代、つまり八百年前には言語を扱う魔物はいなかった」

    「たぶん……記憶は曖昧だけどそれでも魔物とおしゃべりした記憶は……ないはず」

    31 = 28 :


    戦士「じゃあ魔王との最終決戦の時は? ラスボス戦の時はどうだったんだい?
       魔王との対決前にはやっぱり会話はあってしかるべきだと思うんだけど」

    「いや……オレの記憶では、たしか『ウバアアアア』とかしか言ってなかった気が……」

    魔法使い「そう、魔物たちが言語を介したコミュニケーションをし出したのは確認できる範囲では少なくともあなたが死んで以降」

    「うわあ~なんかちょっと感動を覚えているオレがいるわ」

    戦士「まあ魔物がみんな話せるわけじゃないけどね」

    「しかもオレたちと同じ言語を使ってるけど勉強したのか?」

    32 = 28 :


    ゴブリン「いえ、我々の帝国とそちらの国の言語は同じもの使用しております」

    戦士「世界には色々な言語があるけどボクらの国の言葉とキミらの国の言葉が同じというのはなかなかびっくりだよね」

    「なんかよくわかんないけど感慨深いなあ」

    僧侶「勇者、お前は記憶がない上に時代のギャップに対応するのは大変だろうがとりあえず一旦そういうのはあとにしないか?
       話が一向に進まなくて困る」

    「悪い、たしかにそうだな。これからオレたちはどうするんだ?」

    ゴブリン「これから移動魔法であなたがたを我が帝都へと案内いたします」

    「移動魔法……?」

    33 = 28 :



    ゴブリン「少々離れていてくださいませ……」

    「これは魔法陣か?」

    魔法使い「魔術によって開かれたワープ空間。しかもこの規模なら、人間なら一度に百近く程度運べるようになっている」

    ゴブリン「皆様にはこの空間に飛び込んていただければあとは一瞬で我が国まで飛ぶことができます」

    戦士「ちょっと待ってもらっていいかな?」

    ゴブリン「なんでございましょうか?」

    34 = 28 :


    戦士「一応ボクにこの魔法陣の確認をさせてほしいんだよ。 もちろんキミたちのことは信用してるけどね」

    僧侶(……)

    戦士「なあに、ボクは石橋を常に叩きながら渡るタイプだからね……ふむふむ、いやあ素晴らしい魔法空間だ。
       これほどの高次元な魔法空間となると作成にも相当時間がかかったんじゃないかい?」

    ゴブリン「誠に申し訳ございませんがこの魔法陣については私のような下々には答える権利はありません」

    戦士「いやいや、気にしないでくれよ。さあ、みんなさっさと魔界へと向かおうじゃないか」

    「緊張するな」

    35 = 28 :


    戦士(頼んだよ……魔法使い)

    魔法使い(…………)

    ゴブリン「一瞬で長距離を移動する魔法空間ですのでもしかしたら酔ったりするかもしれませんがご容赦ください」

    戦士「まあボクらがやろうとしてるのはチート行為、多少の厄介ごとは受け入れるさ」

    ゴブリン「それではどうぞ、あなた方の幸運を祈っております」

    「よし、行くぞ」

    ――
    ――――
    ――――――

      

    36 = 28 :


    (魔法空間……オレはこんなのに入ったことあるのか……あ、あれ?

      景色がゆがんでいく、いや、そうか。移動魔法なんだからな。
       うわあ、みんなもゆがんでいく……き、気持ち悪いかも。

      んっ……あのゴブリンも魔法空間の中に入ってないか? 目の錯覚か?)

    僧侶「――な、に……おか、 ない―――― か?」

    戦士「え―― な、 ん……て ―――― 」

    (なにかがおかしい? やばい、景色がゆがむどころか極彩色の光が……亜,ぁ亜ぁ頭数甘与ア当頭が……っ!?)


    「う、  うわぁ ―― 、、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ」 

    37 = 28 :

    ――――――
    ――――
    ――

    「――っ!? ぷはぁっ!?」

    (なにが起きたかわからない、だがあの空間の中でなにか爆発のようなものが起きた気がしたが……)

    僧侶「……っ!
       ハァハァ……ま、魔界にはつ、ついたのか?」

    魔法使い「……ついた」

    「なにかあの空間にいるときおかしくなかったか? くそっ、頭が痛いし視界がボヤけて……」

    戦士「ボヤくのはあとにしたほうがいいよ、勇者くん」

    「…………って、なんだよこれ!?」

    38 = 28 :

















    僧侶「……オークとゴブリンが十体ずつ、か」

    「まったく状況はわからんがなんでオレたちは魔物の群れに囲まれている?」

    戦士「本来なら魔界帝都にある建物に飛ばされるはずだったんだけど、ここは普通に海辺だねー」

    「で、この状況どうするんだよ?」

    戦士「そうだねえ。なんらかの手違いがあったみたいだしまずはボクらの自己紹介をして誤解を……」

    魔法使い「……残念ながらそれは無理みたい。この魔物たちは酷く興奮しているみたい。既に臨戦体勢」

    「戦うしかないってことか……」

    39 = 28 :

    今日はここまで

    感想ありがとうございます

    40 :

    乙です
    魔法使い可愛いよ魔法使い

    42 :

    世界観がなかなか

    43 :

    乙です
    魔王のほうからこっちに来たけど独特の世界観が良いね

    44 :







    45 = 44 :







    46 = 44 :


    ゴブリン「ぐおぉ……」

    ゴブリンがもっていた棍棒をいきなり勇者たちに投げつける。
    勇者は自分にめがけて飛んできた巨大な棍棒をとっさに横っ飛びによける。

    「こっちは争うつもりはないがそっちがその気なら仕方ない、応戦するぞっ!」

    戦士「どっちかって言うと今のは最後の通告っていう風にも思えたけどね……ていうか勇者くんは闘い方を覚えてるのかい?」

    「えっ……?」

    そういえばそうだ。自分は八百年前いったいどうやって魔物たちと相対していたのだろう。
    その疑問に固まってしまった勇者目がけてゴブリンたちが一斉に棍棒を投げつけた。

    僧侶「勇者っ!」

    ヤバイ、と思った瞬間鈍い音と共に重い衝撃が地面に走る。
    勇者の目の前の砂が衝撃に津波のようにせりあがり投擲された棍棒をすべて弾いた。


    47 = 44 :


    「な、なにが起こった?」

    僧侶「あとで説明する! 全員口を閉じてろ!」

    勇者の背後で僧侶が地面に向かって拳を振り落とす。
    再び衝撃。
    先ほどよりも遥かに膨大な砂の波が生じる。遅れて屈強なゴブリンとオークを飲み込む。

    僧侶「とにかく一旦逃げるぞ」

    砂の波に飲み込まれた魔物たちを無視して勇者たちを逃げ出すことに成功した。

    48 = 44 :


    僧侶「どうやら逃げ切ることはできたみたいだな」

    魔法使い「先ほどの魔物の気配はかなり離れたみたい」

    「ふぅー、なんとか助かったな。
      しかし僧侶のあの砂の衝撃波の術はすごかったな」

    戦士「たしかにあれのおかげでずいぶんあっさりと逃げれちゃったからね。
       それに比べて勇者くんはねえ……」

    「……むう、たしかに我ながら情けなかったが。だが次こそはこのオレが……」

    戦士「まあ勇者くんの番外編は楽しみにしておくとして……これからどうしようね?
       当初の予定とはだいぶかけ離れてしまったしねえ」

    「オレたちは帝都の建物につくはずだったんだよな?
      ならどうして海辺についたんだ?」

    49 = 44 :



    魔法使い「原因は不明、ただあの魔法空間は明らかにおかしかった」

    「やっぱりそうなのか? なんか入った瞬間から気持ち悪いし光が明滅して視界がメチャクチャになったりしてヤバイなとは思ってたけど」

    僧侶「あの魔界からの遣いのゴブリン……アイツがなにかした可能性は?」

    戦士「その可能性はあるかも、しれないけど。
       どうしてわざわざそんなことをしたのかねえ、座標変えてボクらにオークをけしかける理由もわからないし」

    僧侶「たしかにそんなことをするぐらいならあの魔法空間の中で[ピーーー]ほうが容易いか……」

    「考えてもわからないことはわからないし、とりあえずこの森を抜けよう」

    戦士「そうだね、実はここが魔界でもなんでもなくて敵外諸国のどこかなんて可能性もあるしね。
       情報収集のために街へ向かおう、この森を抜ければ案外すぐそこに街があるかもしれない」

    50 = 44 :


    二時間後


    「なにが森を過ぎればすぐ街があるかも、だ。メチャクチャ長い距離歩いたぞ」

    戦士「仕方ないじゃん。魔界なんて始めてくるんだから」

    僧侶「……しかし、すごい綺麗で壮観な街だ。我が国よりも下手したら素晴らしいかもな。
       人もたくさんいるが、祭典であるのか」

    「ていうかこれだけ人がいる時点でここは魔界じゃないんじゃないのか?」

    戦士「どうだろうねえ、とりあえずどこかで情報収集しないと自分たちの状況もわからないしこれからどう動くかにも困るからね」

    「おやおやお兄さんたち、お困りかなあ?」

    戦士「……おや、キミは? 誰だい?」

    「ええっ!? 私を知らないの!?」


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