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    元スレ勇者「パーティーにまともな奴がいない……」

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    601 = 589 :

    >>600
    ミス多くてすいません。その通りです。

    多分もう無いと思いますが……

    602 :

    いいや、おまえは致命的なミスをひとつ犯している。
    それはこr

    603 :

    暗殺者ちゃんがなかなかベッドに戻ってこないと思ったら…

    604 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     
    夕方 牢屋


    兵士「夕食だ」ガチャ

    勇者「夕食は出るんだな」

    勇者「お昼も出てない訳ですし、当然です」

    暗殺者「まあ、俺達が死んだら困るって事だろ」

    勇者「でしょうね」

    勇者「なあ、俺パンよりお米がいいんだけど、変えてくれない?」

    兵士「この町の主食はパンだ、文句を言うな」

    勇者「パンとか喰い慣れてねぇんだよ、喉に詰まったらどうすんの、死ぬよ?」

    暗殺者「ただのクレーマーだな……」

    勇者「イライラしてるのはわかりますが、食事に文句をつけないで下さい」

    勇者「はいはい」

    勇者「今回はパンでいいよ、明日は米で頼むな」

    兵士「……」

    勇者「無視すんなよ」

    戦士「何なんですか、あなたは」

    勇者「気にしないで下さい、嫌いな相手にはいつもあんな感じですから」

    605 = 604 :

    戦士「……ところでさっき言っていたはめられたって言うのは何の事ですか?」

    勇者「俺とイケメンは計画されて捕まったって事」モグモグ

    戦士「何のためにですか」

    勇者「魔王を生け捕りにさせるためだろ」モグモグ

    遊び人「そのためにあんなめちゃくちゃな事を言って逮捕したのよ」モグモグ

    暗殺者「あんたもわかってたのか」モグモグ

    遊び人「あれだけ無茶苦茶の事をして気付かない訳無いでしょ」モグモグ

    戦士「一体何のためそんな事を?」

    イケメン「世界平和のためでは無いだろうね」モグモグ

    勇者「あんたは知ってるか?」モグモグ

    兵士「知っていても話す気は無い」

    勇者「博士はどうだ?」モグモグ

    博士「知らないね、どうやら私がこの町を出た後の計画みたいだね」

    遊び人「女戦士は食べないの?」モグモグ

    戦士「精神統一をしていますので」

    勇者「それって時間の無駄遣いじゃね?」モグモグ

    戦士「精神統一は心の乱れを直す重要なものだ、無駄ではない!!」

    606 = 604 :

    勇者「キレるなよ……」モグモグ

    遊び人「女戦士は沸点が低いから気をつけてね」モグモグ

    勇者「もう少し早く教えてほしかったかな」

    兵士「黙って食べろ」

    勇者「文句があるなら出て行け」

    イケメン「君の口の悪さはある種尊敬に値するね」

    勇者「……なあ、ここの鍵って何処にあんの?」

    兵士「鍵は全て大臣様が管理している」

    勇者「お前信用されてないの?」

    兵士「そう言う規則なのだ」

    勇者「信用されてないって事じゃん」

    兵士「黙っていろ」

    勇者「了解」

    大臣「気は変わったかね」ガチャ

    勇者「また来たよ、つーか髭剃ってねぇし」

    大臣「手伝う気になったかな?」

    イケメン「あなたに協力する気は無い」

    勇者「俺も無いぞ」

    大臣「ここから出られなくていいのか?」

    607 = 604 :

    勇者「でもあんたに協力したらここから絶対に出られるって保障も無いだろ」

    暗殺者「その通りだ」

    大臣「それは私が保障しよう、と言うより魔王を生け捕りにしてもらうには外に出さなくてはいかんだろ」

    勇者「まあ、協力する気は無いけどね」

    大臣「……」ギリッ

    イケメン「理由を教えてもらえないかな?」

    大臣「お前達が知ることではない」

    イケメン「なら一生協力する気は無いよ」

    遊び人「胡散臭すぎるのよね」

    勇者「わかったら髭剃って出直してこい」

    大臣「……」

    勇者「いいからさっさと帰ってください、下種が」

    大臣「貴様!!」


    大臣は鉄格子越しの女勇者の胸ぐらを掴む。


    大臣「誰が下種だ!!」

    勇者「おい、女に手を出しちゃダメだろ」

    イケメン「男として最低だね」

    608 = 604 :

    大臣「……もういい!!」

    勇者「乱暴だな」

    大臣「愚民が……」ガチャ

    勇者「性格悪いな、あの髭」

    勇者「あなたが言えた事ですか」

    イケメン「あんなに怒らせちゃったら今度こそ拷問を始めるんじゃないか?」

    勇者「大丈夫だろ」

    戦士「何が大丈夫か説明してみろ!!」

    勇者「そうキレるなって、いつもの敬語はどうした」

    遊び人「そうよ、怒ってても仕方ないわ」

    戦士「……」

    勇者「……おい、水くれ」

    兵士「そこに桶があるだろ」

    勇者「汚ねぇだろ、この水」

    兵士「……仕方ないな」スタスタ

    兵士「ほら」スッ

    勇者「……」ニヤリ

    兵士「な――――!?」


    勇者は鉄格子の向こうに居る兵士の顔面をヒノキの棒で突く。


    兵士「が……」ドサッ

    勇者「楽勝」ニヤリ

    609 = 604 :

    戦士「あなたは一体何を……」

    勇者「女勇者、鍵持ってんだろ」

    勇者「はい」ガチャガチャ

    戦士「いつの間に!?」

    遊び人「さっき胸ぐらを掴まれた時に盗んだのよ」

    暗殺者「見えてたのか」

    遊び人「だって遊び人だもの」

    イケメン「君も知ってたのかい?」

    勇者「まさか、盗んでるかどうかは賭けだった」

    博士「危ない作戦だね」

    暗殺者「俺達はずっとこうやって来てるんだ」

    勇者「開きましたよ」ガチャ

    勇者「じゃあこっちも頼む」

    勇者「わかってます」ガチャ

    勇者「……よっ、と」ズルズル

    イケメン「何してるんだ?」

    勇者「こいつを牢屋に入れとく」スタスタ

    勇者「これでちょっとは時間が稼げる、と思う」ガチャ

    博士「さて、こっからどうするんだい?」

    イケメン「あの大臣を倒す」

    610 = 604 :

    博士「やめた方がいいと思うよ」

    イケメン「なんで――――」

    博士「大臣が何を持っているかわからないんだ、下手に戦わない方がいいよ」

    勇者「俺もそう思う、魔王の情報を集めてさっさと逃げた方がいい」

    イケメン「……」

    勇者「止める気は無いけどね」

    イケメン「僕は僕のやり方でやる、他人に流される気は無い」ガチャ

    遊び人「じゃあまた今度ね」タタタッ

    戦士「……」タタタッ

    博士「大丈夫かな」

    勇者「俺達は俺達の事をすればいいだろ」

    勇者「どうするんですか?」

    暗殺者「とにかくここから移動しないと不味いだろ」

    博士「そうだね」ガチャ

    勇者「行くあてはあるのか?」

    博士「無いよ」

    勇者「無いのかよ」

    611 = 604 :

    暗殺者「困ったな……」

    勇者「資料なら普通資料室にあるんじゃないんですか?」

    博士「その資料室が何処にあるのかわからないんだよね」

    勇者「とにかく探しまわるしかねぇ!!」タタタッ

    博士「見つかったらどうするんだい?」タタタッ

    勇者「殺せばいいです」タタタッ

    博士「……君達は凄いね」タタタッ

    暗殺者「褒めてくれてありがとう」タタタッ

    博士「昔とずいぶん構造が変わってるね……」タタタッ

    勇者「とにかく昔資料室があった場所に案内してくれ」タタタッ

    博士「あ、ああ、わかったよ」タタタッ

    勇者「兵士がいないな……」タタタッ

    博士「ここはあくまで研究施設だからね、私達が逃げたのが知られれば、兵士が山ほどやってくるさ」タタタッ

    暗殺者「じゃあ時間との勝負だな」タタタッ

    612 = 604 :

    今日はここまで。

    気がついたらこのssを始めて一カ月経ってました。早いですね

    613 :

    乙です
    いつも楽しみにしてますありがとう

    614 :

    乙。
    なかなか先が見えなくて楽しい。

    615 :

    ペースが速くて羨ましい 乙

    616 :

    いつもワクワク待ってるぞ

    617 :

    乙ー
    面白いよー

    618 :

    博士「ここだ」ガチャ

    勇者「……埃っぽいな」スタスタ

    暗殺者「人が居なさそうな部屋だな」ガサゴソ

    勇者「使わなくなった資料置き場といった所ですかね」

    勇者「魔法兵器、魔道装置、どれもこれも物騒なもんばっかだな」パラパラ

    博士「この町の研究なんてほとんどが人殺しのためのものだよ」

    勇者「……」パラパラ

    勇者「……魔道騎士、なんだこれ?」


    『魔道騎士
     体と武器に魔法を組み込み戦う兵器。
     今の所五人の候補者が存在する。
          発案者 博士』

    勇者「博士、これがあんたの研究か?」

    博士「……そうだよ」

    博士「私がこの町で最後に行った研究だね」

    勇者「これも兵器だよな」

    博士「結局これが出来上がる事は無かったけどね」

    勇者「どうしてですか?」

    博士「燃費が悪すぎたんだ、とても人間の魔力供給だけじゃ動けないんだよ」

    619 = 618 :

    暗殺者「この候補の五人はどうなったんだ?」

    博士「この研究所の何処かに保管されてるんじゃないかな」

    勇者「もう魔道騎士に改造されたんですか?」

    博士「一人だけね、残りはみんな失敗して死んでしまったよ」

    博士「多分その一人だけが保管されてる……」

    勇者「物騒な研究だな」

    博士「だから私はこの町から出たんだ」

    暗殺者「それにしても、この町は戦争でもする気なのか?」パラパラ

    博士「その通りさ」

    勇者「え?」

    博士「彼等の目的はこの町を大きくする事だからね、必要なら戦争だってするさ」

    博士「もちろんそんな事を知っているのはごく一部の人間だけだけどね」

    暗殺者「何がしたいんだろうな」

    博士「少なくとも私にはわからないよ」

    勇者「……ん、『魔王の書』……これか?」ガサゴソ

    博士「うん、思ったより早く見つかった様だね」

    暗殺者「これで後は逃げるだけだな」

    勇者「ああ……先帰ってていいぞ」

    620 = 618 :

    暗殺者「どうしたんだ?」

    勇者「あの髭の計画を調べる」

    博士「何のためにだい?」

    勇者「あの髭が悔しがってる姿を見たいから」

    勇者「先に逃げてていいぞ」

    勇者「手伝いますよ」

    勇者「……いいのか?」

    勇者「はい、あなたの暴走はいつもの事ですし、私のあいつには苦しんでもらいたい」

    勇者「ははっ、そうだな」

    暗殺者「さっさと終わらせて逃げるぞ、ドラゴンが待ってる」

    勇者「悪いな」

    博士「私も手伝うよ、あの男の計画は潰しておきたいしね」

    勇者「……」

    剣士「勇者さん、居ますか!!」ガチャ!!

    勇者「剣士か、脅かすなよ……」

    621 = 618 :

    ドラゴン「勇者!!」


    ドラゴンは体当たりするほどの勢いで勇者に抱きつく。


    勇者「ぐはっ!?」

    ドラゴン「無事か?」

    勇者「たった今無事じゃなくなった……」ゲホゲホ

    魔法使い「イケメンは!?」

    勇者「あいつ等ならどっか別の場所にいる、多分探せばすぐ見つかると思う」

    魔法使い「……ありがとう、じゃあね!!」タタタッ

    剣士「早く逃げましょう!!」

    勇者「……悪い、まだ仕事が残ってるんだ」

    剣士「な、なら僕も手伝います」

    勇者「悪いな」

    剣士「いえ、僕が決めた事ですから」

    剣士「あと、皆さんの武器です」スッ

    勇者「ありがとう」

    勇者「ありがとうございます」

    622 = 618 :

    博士「さて、じゃあ行こうか」タタタッ

    勇者「そうですね、急いだ方がいいです」タタタッ

    勇者「心当たりはあるのか?」タタタッ

    博士「多少ならあるよ」タタタッ

    剣士「何するんですか?」タタタッ

    勇者「簡単に言えば嫌がらせです」タタタッ

    剣士「嫌がらせ……ですか」タタタッ

    暗殺者「ああ、バカみたいにくだらない最高の嫌がらせだ」タタタッ

    ドラゴン「面白そうだな」タタタッ

    勇者「博士、どの辺りだ?」タタタッ

    博士「もう少し先だよ」タタタッ

    博士「あの扉だ」タタタッ

    勇者「ドラゴン、任せた」タタタッ

    ドラゴン「ああ、わかった」

    剣士「え?」


    ドラゴンは跳び蹴りで鉄の扉が吹き飛ばす。


    勇者「相変わらずの火力だな」

    623 = 618 :

    兵士長「そいつらが脱獄者だ!!」

    兵士達「動くな!!」

    勇者「……どうするんですか?」

    暗殺者「戦うしかないだろ」


    勇者は掴みかかってきた兵士の右腕を斬り落とす。


    勇者「言っとくけど手加減する気ないからな」

    暗殺者「死にたくなかったら逃げた方がいいぞ」

    兵士長「くっ……」

    勇者「わかったらさっさと道を開けて下さい」

    暗殺者「道を開けないなら血祭りだな」

    甲冑「……」スタスタ

    兵士長「い、一旦退くぞ」タタタッ

    兵士達「は、はい」タタタッ

    勇者「なんだあれ……」

    勇者「何なんでしょうか」


    それは真っ白な西洋甲冑を着た兵士だった。

    624 = 618 :

    博士「あれは魔術甲冑だよ、普通の甲冑の何倍も硬いんだ」

    勇者「あれもあなたの作ったものですか?」

    博士「うん、あれも私が作ったものだ」

    勇者「戦う気か?」

    甲冑「目標ヲ捕捉、攻撃ヲ開始スル」

    暗殺者「……自我は無いみたいだな」

    博士「ああ、あの甲冑を着た人間は遅かれ早かれ自我が無くなる」

    博士「彼も自我を無くしたんだろうね」

    勇者「剣を持ってないな」

    博士「ああ、剣なんか使うより素手で戦った方がよっぽど頑丈だからね」

    ドラゴン「ここはオレの出番だな」

    勇者「え?」

    ドラゴン「向こうが素手ならこちらも素手の方がいいだろ」

    勇者「……大丈夫か?」

    ドラゴン「気高き竜をなめるなよ」

    暗殺者「行くぞ」タタタッ

    625 = 618 :

    勇者「すぐ戻ってきます」タタタッ

    剣士「ま、負けないで下さいね」タタタッ

    勇者「頼んだ」タタタッ

    甲冑「目標逃亡、追撃ヲ開始スル」タタタッ


    だがドラゴンの蹴りで追撃を遮られる。



    ドラゴン「何してる、貴様の相手はオレだぞ」

    甲冑「……目標変更、戦闘ヲ開始スル」

    ドラゴン「ふふん、物分かりがいい奴だ、そう言う奴は好きだぞ」

    甲冑「攻撃開始」

    ドラゴン「かかってこい、人間風情が」

    626 = 618 :

    今日はここまでです。

    明日は初の得物無しの戦いです。

    627 :

    おっつん
    いいねぇワクワクする

    628 :

    おつ
    いいねぇテカテカする

    629 :

    うひょ!乙んつん

    630 :

    久々に来たら思わぬ方向に進んでた…

    631 :

    >>620
    私"の"あいつ…だと…!?
    いつのまに大臣は女勇者フラグを立てていたのか

    632 :

    ドラゴンと甲冑は同時に殴りかかった。

    お互いに左手で相手の右手の一撃を防御し、動きが止まった。

    ドラゴンと甲冑はお互いに睨み合う。

    甲冑の奥は真っ暗で中に人間が居るかどうかも疑わしかった。


    「見かけ倒しでは無いみたいだな」


    ドラゴンは甲冑を睨みながら、小さな声で言った。
    比喩でもお世辞でも無い、ただの本心。
    相手を甘く見ていた事への謝罪も僅かに含まれていた。

    甲冑はドラゴンの右手を弾くと、ドラゴンの腹目掛けて、左手で殴りかかった。
    鎧が擦れるのか、ギチギチと音が鳴る。

    だが、ドラゴンはそんな単純な攻撃を素早くかわすと、右フックを相手の脇腹にお見舞する。

    一般人の攻撃だったら大したダメージにならないだろう。
    しかしドラゴンの場合、その一撃で数メートル相手が吹き飛ぶ。

    甲冑もその攻撃で吹き飛び、地面を転がっていた。
    ゴロゴロと音をたてて転がる。

    だがその鎧には傷一つ付いていない。

    甲冑は素早く起きあがると、ドラゴン目掛けて跳んだ。

    高く跳び、ドラゴんめがけて落ちて行く。

    体を大きく捻り、鎧を着ているとは思えない速度で蹴りを放つ。

    ゴウッ、と言う風を切るような音が響き、衝撃波が床を破壊する。

    633 :

    肉弾戦wktk

    634 = 632 :

    だがドラゴンはタッチの差で後ろに跳び、回避していた。

    ドラゴンは体が浮いたまま、甲冑の方を睨み、狙いを定める。

    大きく息を吸い、酸素を蓄える。

    静寂。

    次の瞬間にはドラゴンの口から紅蓮の炎が吐き出される。
    散らばる事なく一直線に進むそれは炎の槍のようだ。

    炎の槍が甲冑の胸に突き刺さり、文字通り甲冑の胸を焦がす。
    ジリジリと焦げるような音が鳴り、焦げ臭いにおいが漂っている。

    獣のような咆哮が部屋に響く。

    甲冑は炎の槍を真正面から受けながら突っ込んできた。

    普通なら一瞬で炭になるほどの威力の炎を受けながらも突っ込んで来る。


    「なっ……!?」


    呼吸が乱れ、炎の槍の威力が弱まる。

    不味い、と直感的に察知する。
    だが予想に反し、体が動かない。
    理由はすぐにわかった。
    酸素を使い過ぎたのだ。

    ドラゴンは舌打ちをし、防御しようとした。
    だが間に合わない。

    甲冑の右拳がドラゴンの腹に突き刺さる。
    メキメキと体が嫌な音をたてる。
    ただでさえ少なくなった酸素がさらに無くなるような感覚。
    気を抜けば、口から内臓を吐き出してしまいそうだ。

    635 = 632 :

    吹き飛ばないよう努力する暇も無く、四メートル近く、後ろに吹き飛んでいた。

    受け身をとる暇も無く、無様に地面を転がる。

    普通の人間なら、骨の一本や二本は折れていただろう。
    だがこんな化物同士の戦いではそんな常識は通用しない。

    ドラゴンは起きあがり、こちらを見ている甲冑を見る。


    「げほげほ……さすがに無傷では無いみたいだな」


    苦しそうに息を吸いながらこぼす。

    甲冑の鎧の胸の部分は溶けて、グチャグチャになっていた。

    二人の化物はお互いに睨み合い、攻撃態勢に入る。

    無音。

    地面を蹴り、甲冑が跳ぶ。
    ドラゴン目掛けて一直線に跳ぶその姿はまるで弾丸だ。

    だがドラゴンは動かない。

    甲冑が弾丸なら彼女は弾丸を斬り裂く剣だ。

    弾丸と剣が激突する。

    轟音と共に辺り一帯に衝撃波がはしった。

    その衝撃波は四方の壁が吹き飛ばし、床をクレーターの様にへこませる。

    636 = 632 :

    ドラゴンと甲冑はその中心に立っていた。
    お互いに右拳がぶつかり合っている。

    剣は弾丸を受け止めていたのだ。

    「どうした、その程度か?」


    ドラゴンは甲冑の頭を掴むと、床に思い切り叩きつけた。
    クレーターの様にへこんだ床にクモの巣状の亀裂が走る。

    だが甲冑は頭を掴んでいる手を振り払うと、後ろに大きく跳んで逃げた。

    顔の部分が大きく歪んでいるが、致命傷にはなっていない。


    「頑丈だな、貴様も」


    ドラゴンは地面を蹴り、甲冑に向かって走り出す。

    甲冑は腰を落とし、ドラゴンの顔面目掛け、右拳を突き出す。
    空を切る音が壁の無い部屋に響く。

    だがドラゴンは姿勢を低くし、その攻撃をかわしていた。

    次の瞬間、ドラゴンの回し蹴りが甲冑の顔を捉える。
    顔の部分の鎧がメキメキと音をたてた。

    甲冑は竹トンボの様に回転しながら、吹き飛んだ。
    地面を音をたてながら転がる。

    顔の部分はすでに形すら保っていなかった。

    だがそれでも、それだけの攻撃を受けてもまだ立ち上がる。

    637 = 632 :

    甲冑が地面を蹴り、弾丸と化す。

    ドラゴンは正面からその攻撃とぶつかり合う剣と化す。

    何度目かの激突。

    剣は弾丸を受け止めていた。

    ゼロ距離で睨み合う二人。


    「貴様の負けだ」


    ドラゴンは短く言うと、息を大きく吸った。
    破壊への準備。
    破滅の予兆。

    一瞬の静寂の後、甲冑が紅蓮の炎に包まれた。
    灼熱の炎が甲冑を溶かす。

    炎の中でも甲冑はドラゴンに殴りかかる。

    だがドラゴンは容易くその攻撃をかわす。

    その程度の攻撃は想定済みだ。
    何度も同じ手を食うほど愚かではない。


    「いい事を教えておいてやる」


    ドラゴンは限界まで体を捻り、最後の一撃の威力を高める。

    今までの一撃とは明らかに違う渾身の一撃。


    「恋する乙女より強い者は無いんだ」


    ドラゴンのアッパーが甲冑の顎を砕いた。

    甲冑が真上に吹き飛ぶ。

    轟音と破片を撒き散らしながら甲冑は地面に堕ちた。

    638 = 632 :

    ドラゴン「オレの勝ちだな、人間」

    甲冑「ぐぐ……」

    ドラゴン「……なんだ、中にはちゃんといたのか」

    甲冑「お前は誰だ、俺は……?」

    ドラゴン「気にするな、考える方が面倒だ」

    甲冑「……」

    ドラゴン「どうする、貴様の望むようにしてやるぞ」

    甲冑「……お前の好きにしろ」

    ドラゴン「そうか、なら――――」


    ドラゴンは甲冑の顔面を殴り、気絶させる。


    ドラゴン「さて、これからどうするかな」

    ドラゴン「オレも無傷じゃないし、少し休んだ方がよさそうだな」ドサッ

    勇者「ドラゴン、無事か?」タタタッ

    ドラゴン「勇者、早かったな」

    勇者「ああ、早く逃げるぞ」

    勇者「早くしましょう、私達まで燃えてしまいます」

    639 = 632 :

    ドラゴン「燃やしたのか?」

    剣士「魔法具とマッチが役に立ちました」

    暗殺者「どれだけ燃えるかはわからんが、あいつの計画はもう無理だろうな」

    勇者「いじめがいがあると思ってたのですが微妙でしたね、いい玩具になると思ってたんですけど……」

    暗殺者「そりゃ残念だ」

    勇者「拍子抜けです」

    勇者「今後に期待しとけばいいだろ」

    勇者「言っておきますが、あれは私が目を付けたんですからね」

    勇者「なんか変な意味に聞こえるぞ」

    勇者「言っておかないと、あなた達が遊び始めるじゃないですか」

    暗殺者「お前ってああいう傲慢なタイプ大っ嫌いだもんな」

    勇者「当たり前です」

    勇者「ドラゴン、歩けるか?」

    ドラゴン「勇者、お姫様抱っこしてくれ」

    勇者「歩けないのか?」

    ドラゴン「歩けるが脇腹がな……」

    勇者「出口まで無理か?」

    ドラゴン「無理だ」

    勇者「……わかったよ」

    ドラゴン「やった!!」


    勇者はドラゴンをお姫様抱っこする。


    暗殺者「そんなに嫌そうじゃないな」ニヤニヤ

    勇者「痛いって言ってんだ、仕方ないだろ」

    640 = 632 :

    勇者「いいからさっさと行きますよ」タタタッ

    勇者「はいはい」タタタッ

    勇者「剣士、そのあたりも燃やしといてください」

    剣士「はい」


    剣士は魔法具を使って、火の球を生み出す。


    剣士「こんなことしていいんですかね?」ボウッ

    勇者「何かあったら勇者が何とかしてくれます」タタタッ

    勇者「無理だ」タタタッ

    博士「大丈夫、こんな混乱した中で犯人を見つけるのは不可能だよ」タタタッ

    暗殺者「だといいけど」タタタッ

    勇者「そこも燃やしといて下さい」

    博士「あ、そこはダメだよ」

    勇者「なんでだ?」

    博士「そこは……住人のための研究の資料が置いてある所だからね」

    勇者「……わかりました、早く行きますよ」タタタッ

    博士「……」タタタッ

    641 = 632 :

    今日はここまで。

    得物を使った戦闘しか書いた事が無かったので肉弾戦はちょっと微妙かもしれません。

    次回までに特訓しときます。

    最近シリアスばっかりだったので、ちょっとほのぼの系を書けたらなと思います。

    642 :


    よかったよ
    甲冑ごと焼くとかそんな拷問あったよな…

    643 :

    どらごんにご褒美をくれてやってー

    644 :

    ドラわんこ!

    645 :

    地の文上手い
    肉弾戦もよかった
    もっと上手くなるならwktk
    最初に基地外ばかりと言ってすまん

    646 :

    博士がイキナリ怪しくなったな

    647 :

    最初の頃の不安はいったいどこへ…
    乙としか言いようがない

    648 :

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    数日後 港


    勇者「魔法の町で大火災だってさ、大変だな」パラパラ

    暗殺者「新聞なんてものは当てにならんぞ」

    勇者「いや、新聞ってのも意外といいぞ、半分以上は嘘だけど」

    暗殺者「情報ってのはやっぱり真実じゃないとダメだろ、裏社会の情報なら嘘なんて一つも無いぞ」

    勇者「嘘一つで命にかかわるもんな」

    暗殺者「良くわかってるな」

    勇者「常識だろ」

    勇者「わかりましたから、そのくだらない話をやめて下さい」

    勇者・暗殺者「了解」

    剣士「それにしても、ずいぶん大きな事件になっちゃいましたね」

    博士「表から見れば有名な研究機関の大火災だからね」

    ドラゴン「犯人の特定を急ぐって書いてあるぞ」

    博士「ただの建て前だよ、ハンターに動かれてもボロが出るばかりだからね」

    勇者「ハンターは動いてないんですか?」

    博士「うん、自分達で犯人を見つけるから協力はいらないとでも言ったんじゃないかな」

    649 = 648 :

    ドラゴン「これからどうするんだ?」

    勇者「とりあえず一回王様の所に帰ろうと思う」

    暗殺者「書類も見つけましたしな」

    勇者「ちょうど船もあるし、一回帰って女大臣とこれからの事を話し合っといた方がいいだろ」

    勇者「そうですね」

    勇者「博士達は?」

    博士「私達は南に向かう事にするよ」

    勇者「じゃあここでお別れだな」

    剣士「短い間でしたがありがとうございました」

    勇者「きちんと稽古はしてくださいね」

    剣士「はい」

    暗殺者「船が出るみたいだぞ」

    勇者「またな」スタスタ

    博士「また今度会えるといいね」

    暗殺者「そうだな」スタスタ

    ドラゴン「貴様等も頑張れよ」スタスタ

    剣士「はい!!」

    船乗り「出発!!」

    650 = 648 :

    勇者「……長い船旅になりそうだな」

    勇者「そんなことわかり切ってたじゃないですか」スタスタ

    ドラゴン「みんな同じ部屋は久々だな」

    勇者「そう言われればそうだな」ガチャ

    暗殺者「遅かったな」

    勇者「鍵はどうした」

    暗殺者「そこにある」

    勇者「……世間ではこれを針金って言うんだ、覚えとけ」

    勇者「これからは何処でも自由に入れる訳ですね」

    ドラゴン「やったな!!」

    勇者「何もやってねぇよ、むしろ犯罪だぞ」

    勇者「別に大丈夫ですよ、バレなければ」

    勇者「バレないって保証は無いだろ」

    暗殺者「バレなければいいのか?」

    勇者「金持ちなら別にいいだろ」

    暗殺者「いや、ダメだろ」

    勇者「ちゃんとわかってる」


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