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    元スレさやか「奇跡も魔法も……」ほむら「私のは技術よ」

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    ジャイロ「よかったな。師弟関係だったが仲違いしてた、とも聞いているぜ」

    杏子「限られた資源を食うにはテリトリー張って一人で狩るってのが一番だからな」

    杏子「世話好きでお節介で……挙げ句に共闘だなんだって、甘ちゃんだからな。まーそこが好きなとこでもあるんだけどさ」

    杏子「過程はどうあれ仲直りできてよかっ……何言わせんだテメェ!」

    ジャイロ「自分で言ったんじゃあねーか」

    杏子「そ、それで、あんたの方は何してるんだ?」

    ジャイロ「何って……別に何ってこともないが……」

    ジャイロ「おまえは何の用なんだよ」

    杏子「ん、ちょっとした相談事」

    ジャイロ「相談?」

    杏子「……あのさ」

    杏子「実は昨日、色々あった後……さやかの家の場所を聞いて……行ってみたんだ」

    杏子「そしたらこっそりと家から飛び出るさやかを見つけたんだ」

    ジャイロ「さやかを見たのか?」

    杏子「ああ。思わず隠れて尾行したんだ。その頃には深夜だったと思う」

    杏子「あたしは感じなかったが、使い魔か何かの気配でも感じたのだろうか魔法少女の姿になって、夜の公園を覚束ない脚でフラフラと……」

    ジャイロ「それで、どうしたんだ?」

    杏子「話しかけようとしたんだが……」

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    杏子「さやかが、前を歩いてた男二人組の片方と肩がぶつかって……」

    杏子「肩が折れたーとか叫んでたからまぁそういう奴なんだろう」

    杏子「助けにいこうかと思ったんだけど、突然、さやかがそいつの脚を『斬った』んだ」

    ジャイロ「!」

    杏子「脚の肉がベロンってなって、そいつは悲鳴をあげて、どっから湧いたのか人が集まってきた。……その時にはさやかは既にいなかった」

    ジャイロ「……それ、マジか? 見間違いでなく?」

    杏子「マジだ。完全にプッツンしてって感じだったぜ」

    杏子「野次馬に紛れて斬られた奴のとこに行ったら暗くて顔がよく見えなかった、日本刀のようなものを持っていた、変なコスプレをしていたってサツに喚いてた」

    ジャイロ「…………」

    杏子「で、さやかは見失っちまったし、しゃーないからあたしは帰った。そして、今朝……。単刀直入に言う」

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    杏子「さやかが失踪した」

    ジャイロ「……どういう理由で?」

    杏子「その反応。まだほむらから聞いてなかった?」

    杏子「昨日から家に帰っていない。ケータイも家に置きっぱ。……家出少女と言えば可愛げはあるがな」

    ジャイロ「いや、失踪したこと自体は聞いた」

    ジャイロ「俺が聞いたのは、『何故、今なんだ』ってことだ。こないだまでは至って普通だったぞ」

    杏子「……Dioが原因だろうな」

    ジャイロ「昨日、さやかとおまえが喧嘩したって聞いたんだが?」

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    杏子「……さやかはDioのせいで本当に望んでいる願いが叶えられなかった」

    杏子「その恨みを胸に、あたしがDioとグルだと思い込み、あたしを襲撃した」

    杏子「それまでのことはあたしは誰とも会ってないからよくわからんが、あたしを殺すためにその憎悪を押さえ込んで鍛錬していたっぽいんだ」

    杏子「で、その憎悪が爆発してさやかはあたしを殺そうとして、ほむらに助け垂れた。偽善者なほむら達とはこれ以上一緒にいられないってな。で、今」

    ジャイロ「なるほど。わかりやすいな」

    杏子「なぁ、ジャイコ」

    ジャイロ「ジャイロだ! 二度と間違えるな! 俺の名はジャイロ! ジャイアンでもジャイコでもない!」

    杏子「すまんね。……で、あたしはどうすればよかったんだ?」

    杏子「やっぱあの時追った方がよかったのかな」

    杏子「ほむら達は今日知ったが、あたしはさやかが失踪する瞬間を見ていたんだ」

    杏子「マミにどうして黙ってたんだ、って怒られたらどうしようって思って言えなくてさ……」

    杏子「あんたなら冷静に聞いてくれると思って、話した」

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    ジャイロ「……そうだな。追わなかったという選択が正解だ」

    ジャイロ「もし下手に動いてさやかに気付かれてたら何されたか……」

    杏子「…………」

    ジャイロ「怖いのか?」

    杏子「いや……経験はあたしの方がある。本気で戦うとなれば、あたしは負けるはずがない」

    杏子「あの時は……気圧されたというか、油断したというか、人殺しの目をしてたというか……とにかく躊躇しちまったんだよ」

    杏子「あたしらしくねーことだけど、怖いというより心細い」

    ジャイロ「何でもいいが、黙っていたのはいただけないがな」

    杏子「……そうだな」

    ジャイロ「それで? 話はこれだけか?」

    杏子「ん、それだけだ。まぁ、挨拶しておきたかっただけさ。じゃあな」

    ジャイロ「おう」

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    ――
    ――――


    ほむら「こんにちは、ジャイロ」

    ジャイロ「今日は来客が多いな」

    ほむら「杏子が来たの?」

    ジャイロ「ああ。心配してるようだった」

    ほむら「そう……。根は優しい子だからね」

    ジャイロ「……それで?」

    ほむら「なに?」

    ジャイロ「それで? と言ったんだ。俺にどうしてほしい?」

    ほむら「話が早くて助かるわ」

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    ほむら「あなた、確か医者なのよね」

    ジャイロ「本職は法務官だがな」

    ほむら「手術で回転の技術って使うのよね。前に言ってた気がする」

    ジャイロ「回転は処刑と医術のために発展したモンだ」

    ほむら「確か回転で視神経を繋げて失明を治す手術とかあるのよね」

    ジャイロ「……何が言いたい?」

    ほむら「断裂した腕の神経を何とかすることは?」

    ジャイロ「回りくどいこと言ってないでとっとと言え」

    ほむら「上条恭介の腕を診てほしい」

    ジャイロ「さやかの大切な幼なじみのことだな。Dioの襲撃の後、一度だけ伝言のために会った」

    ほむら「そうよ」

    458 = 368 :



    ジャイロ「ダメだ」


    ほむら「…………」

    ほむら「それは……治せないという意味? したくないという意味?」

    ジャイロ「よく診てみないとわからんからな。後者の意味合いで言った」

    ほむら「何故?」

    ジャイロ「『納得』しないからだ。納得は全てを優先する」

    ほむら「……納得?」

    ジャイロ「今、そいつの腕を治したとして、さやかはどうなる?」

    ほむら「喜ぶ?」

    ジャイロ「いいや、余計に話が拗れるな」

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    ジャイロ「仮におまえは『まどかを守るとかどーでもいーや』と思って何も対策をとらないとする」

    ほむら「…………」

    ジャイロ「これは例え話だ。……で、もしマミと杏子が二人でまどかとさやかを契約させずにさらにワル何とかを倒しちまったらどうなる?」

    ほむら「……私はいらなかったんだって思う」

    ジャイロ「そうだ。壁越推量だがその後おまえは無力感に悩まされて生き続けるだろう」

    ほむら「いえ、多分自殺するわ。時も止められないし、何も出来なかった最弱の魔法少女になるし」

    ジャイロ「所詮例え話だしどうでもいいわ。で、本題はさやかだ」

    ジャイロ「さやかの望みは彼の腕を治すことだ。それが叶えられなかったからといって俺が治してしまえば……」

    ほむら「美樹さやかは自分の存在価値を見失うと?」

    ジャイロ「そういう解釈もアリだ。願う必要がなかったんだからな。さやかは無力感に精神が押しつぶされる」

    ジャイロ「……いや、あいつのことだから悪者が大切な幼なじみに手を加えたとキレて治すどころじゃないな」

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    ジャイロ「そもそも一番大事なのは患者の意志だ。いきなり現れたこんなナリの奴が腕を治すなんて言ったらどうなる?」

    ほむら「どうみても医者じゃないものね。歯にゴーゴーとか書いてある人……もう色々とアレだし」

    ジャイロ「喧嘩売ってんのか。まぁ、自称さやかと面識があるらしき不審者だからな。彼にとっての俺は」

    ジャイロ「そんな奴が医者でも……信頼している幼なじみの後押しがあればまた変わるはずだ」

    ジャイロ「何にしてもさやかが納得する選択をしなければならない」

    ジャイロ「俺達が自分勝手に満足してはいけないんだ。納得しなければ先へと進まない」

    ほむら「……三日後」

    ジャイロ「ん?」

    ほむら「三日後、進展させるわ」

    ジャイロ「それならいいんだがな」

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    三日後


    ――屋上


    マミ「美樹さんが行方不明になって三日……。美樹さんから接触はあった?」

    まどか「ありません……。マミさんはどうでした? ほむらちゃんは?」

    マミ「特にないわ。暁美さんも無理に捜さないほうがいいと言ってるし……」

    ほむら「キュゥべえが言うには少なくとも生きてはいるみたいよ」

    ほむら「そういうキュゥべえはさやかに口止めされているし、そもそも一定の場所に留まっていないらしいわ」

    まどか「……わたしがあの時、励ましの言葉なり言えてれば……」

    ほむら「まどか、あなたが気にすることはないのよ。引きこもるならまだしも、失踪するなんて誰も予想できなかった」

    まどか「はぁ……」

    杏子「捜しだして無理矢理しょっ引いてやりたいな。あたしじゃ刺激するだけだけど……あいつには家族がいる。心配してくれる奴がいるから……」

    マミ「佐倉さん……。あなたが行けば私達が心配するじゃな――」

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    マミ「って佐倉さん……」

    杏子「よっ」

    杏子「忍び込んできた」

    マミ「もう! 佐倉さんったら。学校に来ちゃダメって言ったでしょ?!」

    杏子「いいじゃん。バレなきゃ」

    ほむら「心細いんでしょ」

    杏子「…………」

    ほむら「いつも通り外を出歩いてもどこかで美樹さやかにエンカウントするかわからない」

    ほむら「かと言って家にいても落ち着かないしマミの家ということで美樹さやかが尋ねてくる可能性がある」

    まどか「……怖いの?」


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    杏子「ちげーし! ちっげーし! 何馬鹿言ってくれちゃってんの!?」

    マミ「まぁ……ごめんね。気を使ってあげられなくて」

    杏子「違うっつってんじゃん!」

    マミ「ギュッてあげるわ」

    杏子「バーカ! バーカ!」

    まどか「あ、あはは……」

    マミ「あなたはもう独りぼっちなんかじゃないんだから、いつでも頼ってくれてもいいのよ」

    マミ「学校に忍び込むのはいただけないけども」

    杏子「う、うん……」

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    杏子「いや、まぁ……何て言うか」

    杏子「元はと言えばあたしのせいだし……」

    マミ「大丈夫。美樹さんと絶対仲直りさせてあげるから……」

    杏子「……うん。あたし……実は、ほんとは「マミパイで圧迫祭りして」ほしかったり……」

    杏子「アフレコすんな」

    ほむら「ダメかしら」

    まどか「……今のはないよ。ほむらちゃん」

    ほむら「ちょっと妬いちゃったわ」ファサ

    杏子「なんだよ……からかうなよ……」

    マミ「あらまぁ。それじゃあ、暁美さん、ギュッてしてあげる」

    ほむら「……いいの?」

    まどか「!」

    ほむら「ほんとに抱きしめてくれる? 頭も撫でてくれる?」

    マミ「えぇ。もちろん」

    ほむら「でも断る」

    マミ「……」

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    まどか「じゃあわたしがっ」ギュッ

    ほむら「ちょ、ま、まどか、じょ、冗談のつもりだったのに……っ」

    まどか「わたしも力になりたいなって」ナデナデ

    杏子「……」ジー

    マミ「……」ジー

    ほむら「は、恥ずかしいからやめて……///」

    ほむら「そっ、それよりも美樹さやかのことよ」

    マミ「それもそうね」

    ほむら「取りあえず、三日前話したでしょ。今日、集まって話し合うわ」

    杏子「おう」

    マミ「ええ。ちゃんと予定を空けておいたわ」

    まどか「わたしもパパとママに言っといたよ」

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    まどか「ほむらちゃんちにお泊まりっ♪」

    マミ「メインは美樹さんのことなんだけど……」

    まどか「ウェヒヒッ、もちろんわかってますよぉ~」

    杏子「それで? 具体的に何を話すんだよ」

    マミ「私も日にちを設定したあたり、少し気になってたわ」

    ほむら「今日がタイミングいいという意味合いよ」

    杏子「タイミング?」


    ほむら「美樹さやかを迎えに行くわ」

    467 = 368 :



    ――ほむら宅


    ほむら「――と、言うわけで、みんなに集まってもらったわけだけど」

    まどか「ほむらちゃんのおうちー」

    マミ「な、何だかすごい部屋ね……」

    ほむら「魔法でちょっと……ね」

    ジャイロ「……こいつがワルプルギスの夜ってやつか?」

    ほむら「えぇ。そうよ。……そうね」

    ほむら「本題は美樹さやかだけど、予めワルプルギスの情報でも見ておいて」

    ほむら「これがワルプルギスの資料よ。渾身の出来」

    マミ「へぇ……」

    ほむら「その間にお茶を淹れるわ」

    杏子「お茶菓子はあるのか?」

    ほむら「開口一番にそれなの? ちゃんと用意してあるから座ってなさい」

    まどか「ほむらちゃん。手伝うよっ」

    ほむら「いいのよ。まどか。お客さんなんだから」

    まどか「お泊まりしてお世話になるんだからそれくらい……」

    ほむら「いいのよ。座ってて」

    まどか「むー」

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    ジャイロ「出没地……戦場ではビルが宙を舞う。大きさ……攻撃パターン……」

    ジャイロ(何度かループしただけある。悪くない情報だな)

    杏子「何かほむらの秘密はないだろうか」ゴソゴソ

    マミ「こらこら、人の家の物を漁ろうとしないの。でも私も気になっちゃう」

    ジャイロ「他人のものを盗み見る教育を受けて育ったのか?」

    杏子「学校行ってない」

    ジャイロ「行けよ」

    杏子「行ったらマミに怒られるもん」

    まどか「そういう意味じゃないよ杏子ちゃん……」

    杏子「お、眼鏡発見。そういや視力は悪いんだってな」

    まどか「ほむらちゃんは赤渕派なんだね」

    マミ「眼鏡っ子時代の写真とかないかしら」

    まどか「アルバムとか見てみたいなって思ってしまうのでした」

    ほむら「実家にあるわ」

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    杏子「げっ」

    マミ「あっ」

    まどか「ぎくっ」

    ほむら「人の部屋を漁ろうだなんて余計なことを考えないで」

    ほむら「はい。お茶とクッキー」

    まどか「い、いただきまーす」

    杏子「うめぇ」サクサク

    ほむら「さて、と、美樹さやか対策会議開催よ」

    ほむら「まぁ、こうやって集まって話す機会もなかったし、ついでに色々話しておきたいことを話したいわね」

    ほむら「……ところで、ワルプルギスの資料を見て何か思ったことはあるかしら?」

    杏子「すまん。見てない」

    ほむら「だと思ったわよ」

    マミ「残念ながら、私も強力であることしかわからないわ」

    まどか「マミさんも見てないけどね」

    マミ「ギクリ」

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    まどか「ほむらちゃん。そういう話はさやかちゃんを加えてから話し合うべきじゃないかな」

    まどか「さやかちゃんを迎えにいってから……」

    ほむら「それはそうだけど……やっぱり、気になって落ち着かないのね」

    まどか「うん」

    ほむら「ワルプルギスの話も大事だけど、まずは本題である美樹さやかのことね」

    マミ「はーい」

    杏子「うーい」

    ジャイロ「…………」

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    ジャイロ「……なあ、ほむら。今……歌思いついた。考えたのよ。作詞作曲、ジャイロ・ツェペリだぜ」


    杏子「は?」

    ジャイロ「聴きたいか? 歌ってやってもいいけどよ」

    ほむら「ずいぶんあなた……暇そうじゃあないの……」

    ジャイロ「聴きたいのかよ? 聴きたくねーのか? みんなはどうなんだ? ……俺は二度と歌わねーからな」

    まどか「…………」

    マミ「…………」

    ほむら「…………じゃあ、聴きたい」

    ジャイロ「そうか。いいだろう。タイトルは『魔法少女の歌』だ。オホン、ン、歌うぜ」

    まどか(何を考えてるんだろう……)

    472 = 368 :



    ジャイロ「ほむら☆マギカ♪ ほむら☆マギカ♪」

    ジャイロ「ほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむ♪」

    ジャイロ「ほむら☆マギカ♪」



    ジャイロ「……つぅ――歌よ。どォよ? 歌詞の2番は『巴☆マギカ』で繰り返しよ」

    ジャイロ「マミマミマミマミマミマミ……♪ ちなみにマギカっつーのはラテン語で『魔法の』って意味ね」

    ほむら「…………」

    杏子「…………」

    まどか「…………」

    マミ(ラテン語! そういうのもあるのね!)


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    ジャイロ「……どよ? どうなのよ?」

    ほむら「いいわジャイロ。気に入った」

    ジャイロ「マジすかッ!?」

    ほむら「あっ……ヤバイわ! スゴクいい! 耳にこびりつくわ! ほむほむのとこが」

    ほむら「傑作って言うのかしら……癖になる! 動画投稿サイトなら視聴回数ミリオン越え間違いないわ!」

    ジャイロ「マジすか! マジそう思う? 実は俺も密かにそう思うのよ。だろォ~~~!? 譜面にできる?」

    ジャイロ「ただよォ~……杏子はどうするか考えてないんだよ。三番の歌詞な。キョーキョーじゃ言いづらいし、佐倉からとってサクサクってのも気に入らねー」

    ほむら「あんあんでいいわ。あんあん」

    杏子「おい」

    ジャイロ「何でだ? キョーコって名前だろ」

    杏子「うん」

    ほむら「あんあんでいいのよ」

    杏子「おい」

    474 = 368 :



    まどか「…………ねぇ、真面目にやろうよ」

    ほむら「ほむほむほむほむ♪」

    まどか「……」

    マミ「…………」

    マミ「マミマミマミマミ♪」

    まどか「!?」

    杏子「…………」

    杏子「あんあんあんあん♪」

    まどか「!!??」

    まどか「…………遊んでる場合じゃないのに」

    まどか(……まどまどまどまど♪)

    ジャイロ「さやかはどうしようかねぇ」

    マミ「で、その美樹さんは今どこにいるのかしら」

    まどか「急に本題に回帰したよ。流石マミさん」

    杏子「ほむら、今夜迎え行くって言ったよな。居場所、知ってるんだろ?」

    475 = 368 :



    ほむら(今までの時間軸からすれば、居場所は全く分からないということもない。時期や動機が違うから確証はない……が、ただ一つだけ確かなことがある。それは……)

    ほむら「……『シートン動物記』の著者E・T・シートンは『追跡不可能な動物はいない』と言ったわ」

    杏子「動物扱い!?」

    マミ「プロファイリングとかと言ってあげて……」

    まどか「そ、それで……さやかちゃんを追跡できるの!?」

    ほむら「簡単なことよ。魔女と使い魔が現れるとこにいるわ」

    ジャイロ「さやかにとっては、魔女・使い魔退治が正義の形。その正義が……今の美樹さやか唯一の心の支えみたいなもの。先回りしようってことだな」

    ほむら「Exactly(その通りよ)」

    杏子「……で、でもよ、魔女も使い魔もどこに現れるかなんて……」

    ほむら「私にはわかる」

    マミ「え? どういうこと?」

    476 = 368 :


    ほむら「使い魔はちょっと自信ないけど、魔女の出現位置は大体わかる。今日がその日」

    杏子「ワルプルギスのことも言ってたし……予知の能力でもあるのか?」

    マミ「……ま、まあわかるならそれに越したことはないとして、……でもそこに美樹さんも現れるとは限らないわ」

    まどか「もしかしたら……もう遠いとこに行っちゃったのかも」

    ほむら「美樹さやかには迷いと未練がある。だから少なくとも見滝原にいるはずよ。多分」

    まどか「未練? ……ってちょっと待って、今小さく多分って言わなかった?」

    ほむら「大丈夫よ。美樹さやかは大体でいいの。見滝原にいるなら、見滝原の結界に現れる」

    ジャイロ「で、何故いると言えるんだ?」

    ほむら「彼女の上条恭介に対しての思いはなんだかんだで私はよくわかってる。本人自身が口で否定するようなことまでね」

    ほむら(それに今まで幾多の時間軸で、何が起こっても美樹さやかが探せないほど遠くへ行くことはなかったもの。確か……多分)

    477 = 368 :



    ジャイロ「ほう」

    まどか「いつの間にそんな仲良くなってたの……?」

    ほむら「別に仲良くないわ」

    ほむら「それじゃ、美樹さやかの捕獲は魔女・使い魔待ちということで……。みんな。『二つ』話しておくことがあるわ」

    杏子「話しておくこと?」

    ジャイロ「……あの話か?」

    ほむら「えぇ。そうよ」

    まどか「あの話?」

    ジャイロ「前もって言っておくが……。これから話す二つのことは全て事実だ。誰にも真偽を証明する術はないがな。俺は信用したが」

    ほむら「だからみんなも信じて欲しい。もしも、実は私は吸血鬼でしたとか言い出しても信じてちょうだい」

    478 = 368 :




    まどか「……? よくわからないけど、今更わたしはほむらちゃんのこと疑わないよ」

    マミ「……重要なことなのね。わかったわ」

    杏子「何かヤバそうな話って感じだな……」

    ほむら「一つ目は、もし美樹さやかが無茶をしてて、見つけた時には既にソウルジェムが穢れきっていた場合を想定してみんなを混乱させないよう予め話しておきたいこと」

    ほむら「二つ目は、私の目的……もとい、私が何を願って魔法少女になったか教えてあげる」

    ジャイロ「三つ目として俺のことも話していいか」

    ほむら「好きにしてちょうだい」

    まどか「ソウルジェムが穢れきると……?」

    マミ「それなら別に……穢れきったら魔法が使えなくなるんでしょ?」

    ほむら「キュゥべえにそう言われたの?」

    マミ「……いいえ」

    ジャイロ「わかんねーか。ソウルジェムはおまえ達の魂だ」

    479 = 368 :



    まどか「ま、まさか死――」

    ほむら「死ぬだけならまだいいわよ」

    マミ「……あ、暁美さん。何を隠しているの?」

    ほむら「私は隠してなんかいない。言えなかった、ってより言わなかっただけ。あなた達にとって辛く厳しい現実だから」

    杏子「……言えよ」

    ジャイロ「もし錯乱して暴れるようなら……ちょっと手荒なことをするかもしれねー」

    まどか「ど、どれだけの……秘密が……」

    ほむら「本当は前もって言っておきたかった。でも、なかなか言い出せなくて……」

    マミ「……いいから言ってッ!」

    ほむら「……いい? マミと杏子。覚悟を決めなさい。これから美樹さやかを捕まえにいくんだから絶望しないでよ」

    マミ「……」ゴクリ

    杏子「……お、おう」

    ほむら「ソウルジェムが完全に穢れると――――」

    480 = 368 :






    ――
    ――――


    さやか「うおおおおおおお!」

    使い魔「」スカッ

    使い魔「」スカッ

    さやか「スティンガァ――――ッ!」

    ザシュッ

    「」ブシャッ

    さやか「ゲフッ……よし。全滅」ボタボタ

    さやか「脇腹を貫かれて……向こう側の景色が見えそうだな……」

    さやか「……途中で左目を犠牲にしたのはまずかったかな。まあ治すからいいけど」

    パァッ

    481 = 368 :



    さやか「……ふぅ」

    QB「さやか」

    さやか「キュゥべえ。……何の用?」

    QB「グリーフシードを回収にきたよ」

    さやか「へぇ……今度はあの人から戻ってくるよう言えと言われたとかそういう伝言じゃないんだ」

    QB「どうせ聞く耳持たないだろう」

    さやか「まあね」

    482 = 368 :




    QB「……君の戦い方は合理的ではない。マミ達から教わった戦い方も無視している」

    さやか「うっさいな。関係ないでしょ」

    QB「その代わりと言ってはなんだけど、君は僕が見てきた中で最も早く成長している」

    QB「この短期間でよくここまで強くなったものだと舌を巻くよ」

    さやか「あたしは強くならないといけないんだよ……ほむらとあの人を超えて……本当の意味での救世主になるんだ……」

    さやか「それに、治癒魔法を極めないといけないの。でも、負傷した人は見たくない。だから、こうして自分をたくさん治して熟練度をあげる」

    さやか「今のあたしの治癒魔法じゃ、恭介の腕は治せない。だから、極めないと。頑張って熟練すればきっと、あれくらい治せるようになるはずだ……ならないといけない」

    QB「可能性はあるかもね。でも……」

    さやか「何」

    483 = 368 :



    QB「僕にはグリーフシードの無駄遣いに見えるね」

    さやか「あっそ。はい、使用済み」

    QB「キュップイ」パクッ

    QB「この様子だとちゃんとソウルジェムの穢れの管理はできてはいるようだし……僕はあれこれ口だしはしないよ」

    さやか「…………」

    さやか「……そういやさ、ソウルジェムって濁りきるとどうなるの?」

    QB「濁らせないに越したことはないよ」

    さやか「仮に、だよ、もしもだよ」

    QB「魔女になるよ」

    さやか「は?」

    484 = 368 :



    さやか「……今、何て言った?」

    QB「ソウルジェムは持ち主が絶望するなりして穢れきると、グリーフシードになる。つまり魔女になるんだ」

    さやか「う、嘘……」

    QB「本当だよ」

    さやか「嘘! だ、だって……そんなこと……聞いてない」

    QB「言ってないからね」

    さやか「じょ、冗談、だよね……?」

    QB「本当だよ」

    さやか「そ、そんな……なんで……」

    QB「いやなのかい? ソウルジェムさえ無事なら死なない。便利な体じゃあないか」

    さやか「…………」

    485 :

    おい、いつのまにかカウントダウン秒読みなんだが

    486 = 368 :



    さやか「あ、あはは……」

    さやか「ゾンビ……だけじゃなかった……」

    さやか「魔法少女って……魔女の卵だったんだねぇ……」

    さやか「……そりゃそうだよね。あたし、死なないことに託けてあんなに無茶して……それくらいの代償……あるよね」

    さやか「じゃあ今まであたしが殺してきた魔女って……」

    さやか「……人殺し、か……。はは、なにそれ……あたしが言えたことじゃないじゃん」

    さやか「…………」

    さやか「魔女になるなら……死ぬしか…………ないかなぁ…………」

    さやか「あはは………もうあたし、ヤバイかなぁ……あははは」

    さやか「ははは……はは、は……」

    さやか「………………」



    487 = 368 :






    「そこちょっとシ・トゥ・レィ~~~」0 ← レイ


    さやか「…………」

    ジャイロ「よっ。探したぜ」

    さやか「…………」

    ジャイロ「おいおい。何シカトしてくれちゃってんのよォ~……まあいい。隣座るぞ」

    さやか「…………」

    ジャイロ「黒いなぁおまえさんの魂。これ、グリーフシードの土産。使いかけだけど」

    さやか「…………」

    シュゥ…

    ジャイロ「浄化完了、と」

    488 = 368 :



    QB「ジャイロ。どうして君がここに……」

    ジャイロ「おい、どういうことだキュゥべえ。こいつは何で落ち込んでいる?」

    QB「僕は事実を話しただけだ」

    ジャイロ「……そうかよ。ほれ。使用済みだ。くれてやるぜ」

    ポイッ

    QB「キュップー」パクッ

    QB「……うん?」

    グルゥッ

    QB「あれ? どうして僕は後ろを向いているんだ?」

    トテットテッ

    QB「あ、あれ? 何が……? どうして僕の体は……」

    ジャイロ「グリーフシードを回転させておいた。そのまま回転に操られて失せな」

    QB「ぼ、僕は邪魔って、わけ、かい?」

    ジャイロ「ああ。邪魔だ」

    QB「わけがっ、わからっ、ないよっ、そうならっ、そうとっ、言ってっ、くれればっ、いいのにっ」トコトコ

    489 = 368 :



    ジャイロ「……」

    さやか「……何の用?」

    ジャイロ「魔女化を防いでやった感謝の言葉は?」

    さやか「何の用、と聞いているのよ」

    ジャイロ「…………」

    ジャイロ「んー、なんだ。ちょっと聞きたいんだけどォ~」

    さやか「…………」

    ジャイロ「『さやさや』と『みきみき』……どっちが良いよ?」

    さやか「…………」

    ジャイロ「おいおいおい、聞いてんだろォ~がよォ~。もしもォ~し?」

    490 = 368 :



    ジャイロ「あのな? 魔法少女の歌があんだよ。作詞、作曲ジャイロ・ツェペリね」

    ジャイロ「んで、おまえも魔法少女だから4番の歌詞として追加しようと思っているんだが……オホン、ン」

    ジャイロ「さやか☆マギカ♪ さやか☆マギカ♪ ……の後が問題でよォ~~」

    ジャイロ「さやさやさやさやさや……♪ もしくは、みきみきみきみきみきみき……♪」

    ジャイロ「……どよ? どっちが良い? 美樹さやか。ちなみに1番の歌詞はほむら☆マギカとほむで繰り返しよ」

    さやか「………馬鹿じゃないの」

    ジャイロ「ノリが悪ぃな。じゃあ俺が勝手に決めるぜ。さやさやな。さやさや」

    491 = 368 :


    ジャイロ「さやさやさやさやさやさや♪」

    さやか「……空気読んでよ」

    ジャイロ「空気は吸うモンだ」

    さやか「一人にしてっつってんの」

    ジャイロ「嫌だね。家出少女は家に帰れ」

    さやか「……魔法少女が魔女になるなら……みんな死ぬしかないんだよ。だったら、誰にも迷惑をかけずに……」

    ジャイロ「魔女にならなきゃいい話だろうが。ほむらもマミも杏子も、全員そうやって生きてきた」

    ジャイロ「大体、それを覚悟して契約したんだろうが。抜き差しならない状況だったとは言え、覚悟があるとおまえ言ったじゃあねーか」

    さやか「他人事だと思って……!」

    ジャイロ「つっても俺は既に死んでるからな」

    492 = 368 :


    さやか「死ん……? え?」

    ジャイロ「不思議に思わないのか? 俺にキュゥべえが見えるのは」

    ジャイロ「俺はな……『異次元の人間』だ」

    さやか「ハァ?」

    ジャイロ「今から百年以上前、俺は死んだ。そして魔女の力でこの世界に呼び出されたんだ。あの世からじゃあないぜ。多分」

    さやか「……馬鹿じゃないの」

    ジャイロ「じゃあ魔法少女でない俺にキュゥべえが見える理由を説明してみろよ」

    さやか「……あんた、使い魔なの?」

    ジャイロ「わからんね。ひょっとしたらそうかもな」

    ジャイロ「異次元の死んだ魂を呼び寄せる魔女とかいても不思議じゃない」

    493 = 368 :



    さやか「…………怖い?」

    ジャイロ「ん?」

    さやか「死ぬって怖い?」

    さやか「……あんたはどんな思いで死んだわけ?」

    ジャイロ「……そうだな」

    ジャイロ「…………」

    ジャイロ「俺にはよォ……気の置ける奴がいるんだよ。生前の話な」

    ジャイロ「そいつは俺の親友でもあり、回転の弟子でもあり、ライバルでもあった……。俺はそいつにできる限りのことを教えた。そして俺はそいつから多くのことを学んだ」

    ジャイロ「はっきり言って凄い奴さ。俺はそいつを死後の今でも尊敬している。そいつとの出会いは偶然だが、今でこそそれは運命で、なるべくしてなったのだと信じている」

    ジャイロ「で、話を戻すと……俺は自分の運命全てに納得していた。彼に出会えて、そして技術を託せたからな」

    494 = 368 :


    ジャイロ「だから、死ぬことそのものは、別に恐怖ってわけじゃなかったな」

    さやか「…………ふぅん」

    ジャイロ「おまえはどうなんだ」

    さやか「…………」

    さやか「……あたしが怖いのは」

    さやか「あたしが怖いのは……魔女になること。あんなのと同じに……なること……」

    さやか「だけど……それよりもっと怖いことがある」

    さやか「それは未練があるということ。その未練ある限り、あたしは死にきれない」

    さやか「それを解消さえできれば……死ぬのも魔女になるのも別に怖くないかもしれない」

    さやか「その未練を克服する……今のあたしは、それが生き甲斐。それ以降なら……案外魔女になるのも受け入れられるかも」

    ジャイロ「寂しい奴だねぇ」

    さやか「うるさい! こんなゾンビみたいな体になって! あたしは! あたしは……!」

    さやか「こんなことなら『魔法少女』なんて最初から知らなければよかったッ!」

    さやか「奇跡も魔法も、なければよかったッ! 期待しなけりゃよかったッ!」

    さやか「こんな体じゃキスしてなんて言えないよ……」

    495 = 368 :



    ジャイロ「…………」

    ジャイロ「魔法はさておきだが」

    ジャイロ「ツェペリ一族は奇跡の存在を信じている」

    ジャイロ「おまえが魔法少女の素質を持ち、願いを叶える資格を得たことは奇跡だと思う。Dioにその奇跡を食いつぶされたがな」

    ジャイロ「俺がこの世界に来れたのも、おまえ達と出会えたのも、奇跡だと思うし俺はそれに感謝しているんだ」

    ジャイロ「俺はその奇跡に敬意を表して、その奇跡に報いたいと考えている」

    さやか「…………?」

    ジャイロ「俺は、医者でもある。手術の経験がある」

    さやか「……だから、なに」

    ジャイロ「恭介って坊主の腕を治せる可能性がある」

    さやか「ッ!」ガタッ

    496 = 368 :



    ジャイロ「座ってろ。これは俺個人の気持ちだが……」

    ジャイロ「Dioが潰した『感謝すべき奇跡』を何とかしてやりたいと思っているんだ。同じ異次元の者の責任としても、な」

    さやか「……ほ、本当?!」

    ジャイロ「回転の力で、断裂しているであろう神経を繋げるんだよ。実際に診てみないとわからんが……鉄球の回転があれば、可能性はある」

    さやか「……ほ、ほんとなの!?」

    ジャイロ「あくまで『可能性』だ。できないってことも考えられる」

    さやか「そ、それは、まあ……失敗も……あるかもだし」

    ジャイロ「それだけじゃあない。俺には障害が多すぎる」

    さやか「……それって、どういう……?」

    ジャイロ「まず、手術をするにあたって俺は無免許医師ってことになる。そりゃー生まれた世界が違うからな。闇医者ってやつ?」

    ジャイロ「そんでもって『借りる』必要がある。器具や薬品やらをな。手術室だってねーし」

    さやか「…………」

    497 = 368 :



    ジャイロ「何が言いたいかっつーと、ほむら達の協力は不可欠だ。おまえ一人じゃそれができない」

    ジャイロ「……そしてそれを頼むのはおまえなんだ」

    さやか「……ど、どうして!」

    ジャイロ「理由を言わないといけないのか? 言わなきゃわからんのか?」

    さやか「…………」

    ジャイロ「おまえが頼めばほむらは動く。ほむらが動けば俺は動ける」

    ジャイロ「さやかが治してくれって言ってたぜと俺がほむらに伝えて……それを誰が証明する?」

    ジャイロ「ま、一番大切なのは彼の意志なんだが、とにかくおまえが言わなきゃならん」

    ジャイロ「それと、闇医者の仲介人が必要だ。そいつは信頼される奴でないとならない」

    さやか「…………」

    ジャイロ「さぁ、どうする」

    498 = 368 :


    さやか(…………)

    さやか(あたしが治癒魔法を極めれば……いつかは治せるようになるはずだ)

    さやか(だけど……)

    さやか(それはいつ?)

    さやか(あたしはいつまで戦える? それまでに生きていられる? いつまでこんな生活できる?)

    さやか(でも、頼めば……手術を依頼すれば……恭介の腕が……近い内に治る可能性がある)

    さやか(手術ができない、失敗する確率と……あたしが死ぬ確率。どっちが上だ?)

    さやか(いや……待て)

    さやか(どうしてあたしは、手術をすること前提で考えているんだ?)

    さやか(こいつが……あたしを懐柔しようと嘘を……可能性はある)

    さやか「…………」

    さやか「……転校生の差し金なんだな」

    ジャイロ「あ?」

    さやか「危なかったよ。魔女化の事実を聞いて衰弱した精神に、治せるかもという甘い言葉に……騙されるとこだった」

    ジャイロ「…………」

    499 = 368 :



    まどか「もう、やめようよさやかちゃん……」


    さやか「っ!?」


    ほむら「美樹さやか。あなたはどこまで愚かなの」ファサ

    マミ「美樹さん。あなたの戦い方、しっかりと見させてもらったわ」

    さやか「ま、まどか……?! それに転校生……マミ、さん……!?」

    まどか「さやかちゃんを……迎えにきたんだよ」

    さやか「む、迎えに……? あたしを……?」

    ほむら「あなたがここに来ることはわかっていた。だから先回りしたのよ」

    さやか「…………」


    500 = 368 :



    マミ「美樹さん。帰ったら説教よ。不登校の件も含めてね」

    さやか「……何が、説教ですか」

    マミ「…………」

    さやか「あなたは杏子の仲間でしょ!?」

    さやか「あいつは間接的に人を殺している!」

    さやか「鉄球の材料は廃材を盗んだもので!」

    さやか「転校生は、魔法武器じゃない、本物の銃を使う。あれはどこかから盗んできたもの!」

    さやか「銃器の窃盗なんて重罪じゃないですか!」

    さやか「犯罪者! あなたはそいつらに味方してるッ! まどか! あんたもだ!」

    まどか「さやかちゃん……」

    ジャイロ「前の時間軸の持ち込みってんならよお――逆に罪はないんじゃあねーのォーッ」

    さやか「は? 時間軸? 何を言って……」

    マミ「美樹さん」

    さやか「ハッ……」


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