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元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
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勇者(――魔界の者は、伝説の武具を手にとることができない)
勇者(以前、どこかの村にある伝説の兜を、魔物達に奪いに行かせたことがあるが)
勇者(魔物達は――、伝説の兜に触れた瞬間、粉微塵になって消し飛んだ)
勇者(伝説の武具に、聖なる力に満ちているからだろうな)
勇者(魔王の俺なら、そこまでダメージは深刻ではなさそうだが、)
勇者(腕一本吹き飛ぶ覚悟は、しておいた方がよさそうだ)
勇者(以前、魔族に奪わせようとしたら、半身が吹き飛んだらしいからな)
勇者(……ここは、戦士にでも持ち帰ってもらうことにして――)
魔法使い「――じゃあ、勇者ちゃん。早速、装備してみてよ」
勇者「 え 」
戦士「そうだな! やっと見つけたもんな!」
僧侶「勇者様、是非!」
勇者「いや、お前達ちょっと待て」
魔法使い「あら、どうしたの勇者ちゃん? このタイミングで、何を待てっていうのさ」
勇者「その、心の準備ってやつが……」
魔法使い「あら、この期に及んで、怖気づいちゃったってわけ?」
勇者「…………」
魔法使い「伝説の武具は、勇者にしか装備できないんだから、大丈夫よ。何を心配しているのさ」
魔法使い「だってあんた、――勇者なんでしょ?」
勇者(……こいつ!)
勇者(いまの目……、完全に俺を疑っている目をしていた)
勇者(やられたな。たぶん、あの魔法使い、かなり前の段階から、俺を疑っていた)
勇者(そして、この状況を待っていた――)
勇者(俺が勇者か、勇者でないか、はっきりする局面を……!)
魔法使い「ほら勇者ちゃん、さっさと装備してよ。早く脱出呪文で、帰りましょ?」
戦士「そうだぜー、おれも早く宿屋に行きてぇなー」
僧侶(……勇者様、なんだか表情が険しいような)
勇者「…………」
勇者(……そういうことなら、俺も容赦せんぞ)
勇者(たとえ片腕を吹き飛ばされようとも、本当の姿を現わせば、)
勇者(勇者のいない勇者一味など、ものの五分で片づけられる)
勇者(こいつらを全滅させて、魔王城に戻り、)
勇者(魔王城にいる勇者をなぶり殺して、元の生活に戻るだけ)
勇者(ただ、それだけだ)
勇者(二日も特別休暇をもらったんだ。もう充分だろう、魔王に戻っても)
勇者(…………)
勇者(……遊覧船は、また別の機会に乗ることにするか)
勇者「……いいだろう。装備してやる」
僧侶「……勇者様」
戦士「お、ついにこの時が来たな!」
魔法使い「伝説の武具を装備する瞬間ね。胸が熱くなるわぁ」
勇者(ふん、女狐め。よくもこの魔王をハメたな)
勇者(だが、覚えてろ。剣を引き抜いたら、真っ先に臓物を引きずりだしてやる)
魔法使い(……気のせいだといいなー。なんだか悪寒がするわぁ)
勇者「…………」
勇者(……間近に近づけば、さらに魔力を強く感じる。身体がバラバラになってしまいそうだ)
勇者(これに触れて、俺は生きて帰れる保証があるのだろうか?)
勇者(……考えてもしょうがないな。もう引き下がれないんだ)
勇者(――勝負だ、伝説の武具よ。貴様の聖なる力で、俺が倒せるか?)
――ガッ
~魔王の部屋~
側近「……魔王様、この惨状はいったいどういうことでしょうか?」
魔王「…………」
側近「壁は、粉々に斬り砕かれ、調度品は倒れ、床も傷ついて、」
魔王「…………」
側近「いったい、私がいない間に何をしてたんですか?」
魔王「……超頑張ってはんこを探してました!」
側近「もう少し、頑張りを抑えることは、できなかったんですか?」
側近「で、そのはんこは見つかったんですか?」
魔王「……まだです」
側近「そうですか。それも当然ですね」
魔王「え?」
側近「あら、申し上げませんでしたっけ?」
側近「魔王様は、魔界にある『真・魔王城』にはんこを保管しているんですよ」
魔王「な、なにぃいい!?」
魔王「おい、一言も聞いてないぞ、そんなの! てっきりこの部屋にあるんだとばっかり……!」
側近「はい。魔王様なら、そんな勘違いもするだろうと思って、とってきました」
魔王「と、とってきたって何を!?」
側近「もちろん、はんこですよ。今日はちょうど魔界に行く用事があったので」
魔王「で、でも、魔王しかはんこの場所しらないんじゃ……!?」
側近「あれは嘘です」
魔王「え、嘘……?」
側近「私も一応、場所を教えてもらってたんですよ。先代の魔王様から」
魔王「へ、へぇー……」
側近「おかげで、先代が急死された時に、現魔王様にはんこの場所を教えることができました」
魔王「なるほどー」
側近「もし隠し場所を変えられてたら、私もお手上げでしたけど、まだ同じ所に隠してあったので、」
側近「運よく、はんこを手に入れることができました」
側近「というわけで、頑張って書類仕事なさってくださいね」
魔王「……釈然としない」
側近「どの辺がですか?」
魔王「だって、なんで、オレに嘘ついたんだよ側近!」
側近「ですから、お部屋の中の物の場所を覚えてもらおうと思いまして。壁を壊されるのは予想外でしたけど」
魔王「あと、なんではんこ取ってきてくれたんだよ!?」
側近「それは……、魔王様がお命じになったからですよ」
魔王「……オレが?」
側近「だって……」
側近「――こんな時こそ、側近の力が必要なんですよね?」
魔王「……!」
側近「では、そろそろ失礼します。書類仕事、頑張ってくださいね」
魔王「……おう」
――バタン
魔王「…………」
魔王「……側近の奴、たまーに嘘つくけど、やっぱり優しいんだな」
魔王「さーて、気を取り直して、仕事仕事。はんこさえあれば、こっちのもん……」パラ……
魔王「…………」
魔王「……えー」
魔王「あー……」
魔王「ぅおー…」
魔王「…………」
魔王「……駄目だ、勝てる気がしねぇ」ガクッ
魔王「活字と数字って、こんなに強敵だったのか……。灰になりそう」プシュゥウ……
側近(……やっぱり勇者、撃沈してる)
側近(……あとで、料理人達に言って、甘い物を用意してもらおうかしら)スタスタ
~古代の迷宮~
戦士「ゆ、勇者……!」
僧侶「……あ、ぁあっ!」
魔法使い(……なんてことなの)
勇者「 ………… 」
ゆうしゃは でんせつのつるぎを そうびした。 ▼
戦士「うぉおおーー! おめでとだぜ、勇者ーー!」
僧侶「な、なんて神々しい……! 勇者様がついに、伝説の剣を……!」ブワッ!
魔法使い(……ちょっと師匠ぉ。どういうことよ、これぇ)
勇者「 ………… 」
勇者「 ………… 」
勇者「 ………… 」
勇者( 馬鹿な )
勇者( ……俺は魔王だ )
勇者( 変化の呪文で姿を変えていようとも、俺は魔王だ )
勇者( 姿が変わっただけで、装備できる武具が変わるわけではない )
勇者( どういうことなんだ )
勇者( なぜ、俺は伝説の剣が装備できたんだ? )
勇者( この剣が偽物なのか? )
勇者( それとも、俺が―― )グラ…
戦士「……っと、勇者!?」ガシッ
勇者「 」
戦士「おいおい、突然よろけてどうしたんだ? 危ないだろ?」
勇者「 」
戦士「……勇者?」
( 俺は魔王だ )
( 魔王のはずなんだ )
( 俺は魔王だ )
( なぜ伝説の剣が、装備できたんだ )
( 俺は勇者じゃない )
( 俺は魔王だ )
( 俺は魔王だ )
( 俺は……… )
( 俺 は 誰 なんだ ? )
そうりょは じゅもんを となえた!
ゆうしゃの たいりょくが かいふくした!! ▼
勇者「……!?」
僧侶「あ、大丈夫ですか? 勇者様」
勇者「……僧侶」
僧侶「あの、その、顔色が悪かったので、回復呪文を……」
勇者「ありがとう……」
僧侶「…………」
僧侶(……体力は回復したけど、顔色は悪いまま)
僧侶(……勇者様)
魔法使い「とーにーかーくっ!!」
僧侶「わっ!? 魔法使いさん……?」
勇者「…………」
魔法使い「もう、帰りましょうよ。勇者ちゃんも、具合悪そうだし」
戦士「そうだなぁ、もうここにも用は無ぇしな」
僧侶「そう……、ですね」
勇者「…………」コクン
魔法使い「そうと決まったら、脱出して、どっかの街に行くわよ」
勇者「…………」
魔法使い「ねえ、勇者ちゃん。どこ行く?」
勇者「……?」
魔法使い「こういう時は、相談してから行き先を決めるんでしょ?」
勇者「…………」
勇者「……南の港町に向かってくれ」
魔法使い「りょーかい! みんな、あたしに捕まってて!」
まほうつかいは じゅもんを となえた! ▼
本日はここまでです。
読んでくださり有難う御座います。
週末に家を空けるので、次回更新は来週になります。
読んでくださり有難う御座います。
週末に家を空けるので、次回更新は来週になります。
乙です。
魔法使いと側近って会う事があったら仲良くなれそうな気がするww
魔法使いと側近って会う事があったら仲良くなれそうな気がするww
O2
を初めて見た時は意味が分からなかったwwww乙の派生ね
てことでO2
を初めて見た時は意味が分からなかったwwww乙の派生ね
てことでO2
おつおつ!
文字色変えられるなんて初めて知ったwwwwww
いつかの代の魔王も勇者と入れ替わってそのままお互いの座に就きっぱだったってことかなー
そもそも魔王さんのご両親殺されてるしね…うう…
続きまってるよー!
文字色変えられるなんて初めて知ったwwwwww
いつかの代の魔王も勇者と入れ替わってそのままお互いの座に就きっぱだったってことかなー
そもそも魔王さんのご両親殺されてるしね…うう…
続きまってるよー!
乙ですー。
魔王が伝説の剣装備できちゃったり、勇者の思考が魔族よりの好戦的なものになりつつあるしで、精神年齢は外見年齢に引っ張られるって話みたいに、変化するとその姿に精神が引っ張られちゃうのかな?
魔王が伝説の剣装備できちゃったり、勇者の思考が魔族よりの好戦的なものになりつつあるしで、精神年齢は外見年齢に引っ張られるって話みたいに、変化するとその姿に精神が引っ張られちゃうのかな?
~魔王城~
料理人A「なんと私、魔王様のお部屋まで、デザートをお持ちせよと、側近様からご命令頂きました」
料理人A「料理人風情の私、魔王様のお部屋のドアをノックする価値も御座いませんと、」
料理人A「側近様にお断り申し上げたのですが、魔王様きってのお願いと聞き、」
料理人A「極度の緊張感プラス喜び勇んで、魔王様のお部屋に向かっているわけで御座います」
料理人A「……ここが、魔王様のお部屋」ゴクリ…
料理人A「魔王様、魔王様。料理人です。ケーキをお持ちいたしました」コンコン
魔王「ケーキッ!?」ガチャバタン!
料理人A(なんと、コンマ二秒で出て来られるとは……!)
料理人A「本日のケーキは、ナイトメアベリーソースのレアチーズケーキで御座います」
魔王「おおお! 美味そう! いただきますっ」パクッ
料理人A「…………」ドキドキ
魔王「……ん~、美味~い! このほどよい甘酸っぱさ、最高だな!」モグモグ
料理人A「なんと、この料理人、感動で御座います!」
魔王「頭使った時は、甘い物に限るよな。うん!」
料理人A「ああ、そういえば、いま事務仕事がんばってるんですよね、魔王様」
魔王「お、おう……」
魔王(……まだ、三枚しか終わってないけどな)
料理人A「我々も応援してますよ! がんばる魔王様のために、とびきり美味しいご夕食を用意しますね!」
魔王「ほ、ほんとか! よっしゃー、がんばるぜー!」
魔王(やべぇ、俄然やる気がみなぎってきた……!)
~南の港町・遊覧船~
……ザザァン
僧侶「いい風が吹いてますねー」
魔法使い「気持ちいいなー」
勇者「…………」
僧侶「勇者様?」
魔法使い「勇者ちゃん大丈夫?」
勇者「……ああ」
魔法使い(……全然大丈夫そうな目してないんですけど)
僧侶(迷宮にいた時よりは、落ちついたみたいですが、まだ暗い顔を……)
勇者(……俺は)
僧侶「……。勇者様、見てくださいよ。海が綺麗な色ですよ」
勇者「そう……だな」
魔法使い「それにしても、港町に来るなり、遊覧船に乗りたいだなんて、勇者ちゃんも男の子ねぇ」
勇者「……船が好きなんだ」
魔法使い「……ふーん」
勇者「…………」
――――――――――
―――――…
―……
ザザァン……
「――初めての船は楽しいか?」
「うん、楽しい! ねぇ、おとうさん。船って、はやいんだね」
「ああ、最新型の船だからな。嵐や渦潮もへっちゃらなんだ」
「すごーい。あ、おさかなさん!」
「ああ、あれは地獄鮫だな」
「じごくざめ?」
「鉄をも噛み砕く歯を持っている凶暴な鮫だ。人間の船を群れで襲って、木端微塵にしてしまうんだぞ」
「つよいんだなー、じごくざめ。おとうさんって、何でも知ってるんだね」
「ふははっ、当然だろ?」
魔王「なにせ俺は魔界の王――魔王だからな」
「すごいなぁ、おとうさん。ぼくも、おとうさんみたいな、まおうになりたい」
魔王「なれるさ、お前なら。何て言ったって、俺の息子だからな」
「ほんとに? ぼく、まおうになれる?」
魔王「ああ、お前が頑張った分だけ、立派な魔王になれるよ」
「じゃあ……、ぼく、がんばる!」
魔王「よし、それでいい。お父さんも、お前が物凄い魔王になれるよう協力するぞ」
「ありがとう、おとうさん」
魔王「それじゃあ、明日は、新しい呪文を教えてやろうかな?」
「わーい、ぼくがんばるよ!」
魔王「その意気だ。魔王への道は険しいが、お前なら絶対なれるぞ。俺が保証する――」
ザザァン……
―……
―――――…
――――――――――
勇者(……結局、父と船に乗ったのは、あれを含めて3回だけだったな)
勇者(その後も、魔王の職務の関係で、何度か船に乗ったが、)
勇者(仕事の一環だったから、心を休める時間など当然皆無)
勇者「…………」
勇者(久々に……、落ちついて船に乗ることができた)
勇者(甲板で味わう海風は、港で感じるそれとは段違い)
勇者(よく見ると、人間界の海の方が、色が薄いんだな)
勇者(だが、透き通っていて、波がきらめいていて綺麗――)
戦士「ぅおぇえええええ……!」
勇者「……なぜ、このタイミングで嘔吐するんだ戦士」
僧侶「せ、戦士さん! 大丈夫ですか!?」
魔法使い「まったくだらしないわねぇ」
戦士「しょうがねぇだろ。おれ乗り物駄目なんだよ……うぷ」
勇者「……じゃあ、なぜ一緒に船に乗ったんだ。港で待ってればよかっただろ」
戦士「だっておれ――ぉげえっ、船大好きだもんッ!」
勇者「胃液を吐きつつ言う台詞じゃないな」
僧侶「戦士さん、少し中で休みましょうか?」
戦士「ふぐぅ、かたじけない……」
魔法使い「ひっどい顔色だね。こっちまでもらいゲロしそうだよ」
僧侶「勇者様、戦士さんは私たちに任せてください」
魔法使い「こいつの世話は、私たちがしておくから、もすこし海でも眺めてなよ」
勇者「……ありがとう、そうさせてもらおう」
……ザザァン
少女「お兄様ー、海の色がきれいですわー」
青年「そうだな。船から眺める海っていうのもオツなもんだ」
従者「自分、船に乗るのは初めてです」
少女「あら? お兄様、見てください」
青年「ん?」
僧侶「戦士さん、もう少しですから、がんばってください」
戦士「げぇえ、この浮遊感にも似たふらつきが、きくぅうおえええ」
魔法使い「ああ、もう吐かない! 船員さんのデッキ掃除の範囲が増えるでしょうに!」
少女「ほらほら、かわいそうな人間がいますわー」
青年「……いいか、妹。こういう時は、指さしたり凝視しないのが、人間界の礼儀なんだぞ」
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