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元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
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魔王「しょうがないなぁ……、はんこ探すかぁ……」
側近「頑張ってくださいね、魔王様」
魔王「ん? 側近は助けてくれないの?」
側近「私は私で別件の仕事がございますので、それは無理なご注文です」
魔王「えーーー!? 頼むよ、こんな時こそ側近の力が……!」
側近「自分で何とかして下さい。もとい、これを期に、はんこ以外の物の場所覚えてください」
魔王「……また、そんなこと言ってぇ」
側近「では、私はそろそろこの辺で」
魔王「あ、ちょっと……!」
バタン……
魔王「おいてけぼりかよ、畜生……」
魔王「しゃあないなー……、自分で探すかぁ」
???(…………)
???(ククク……、側近は行ったか)
???(この時間帯、思った通り魔王が一人きりになったな)
???(これで、彼女の妨害を受けずに、魔王を仕留めることができる……)
???(……それにしても)
魔王「……うわー、箪笥の中、似たような服ばっかりじゃん」ガサガサ
魔王「しけてんなぁ。なんか、装備品の一つでも入れとけっての」ゴソゴソ
???(魔王のやつ、……なぜ朝っぱらか、部屋の箪笥を引っかきまわしているんだ?)
本日はここまでです。
いつも読んでくださりありがとうございます。
また今週来れると思います。
いつも読んでくださりありがとうございます。
また今週来れると思います。
~古代の迷宮~
勇者「よし、行くか」
戦士「はっはー、楽しみだなぁ」
僧侶「……今日は、あのゴーレム出てきませんね」
魔法使い「この間の一体限りだったんでしょうね。ある意味ボスだったんじゃない?」
戦士「まあ、一番怖いやつはもういなくなったってことだよな! 楽勝だな!」
勇者「……そいつはどうかな」
戦士「へ……?」
勇者「見てみろ」
戦士「げぇっ! なんだありゃ!?」
僧侶「滑る床ですね。かなりたくさんあります」
魔法使い「端っこには落とし穴も見えるなぁ。一歩でも道順間違えたら、落ちるわね」
勇者「加えて、天井を見てみろ。魔封じの魔法陣だ。このすべる床地帯では、呪文は使えないようだな」
戦士「なんだそりゃぁああああ!!?」
勇者(古代人め、初っ端から複雑なトラップを仕掛けてきたな)
勇者(……退屈しなさそうだ)
~西の村・酒場~
老人「……っふーい、朝から飲む酒も格別じゃのぉ」
――ガチャ カランカラーン
老人「お、来たな? おーい、ここじゃここじゃ」
少年「…………」
老人「そんなに怖い顔するでない、ほれ、ここ座れ」
少年「……ハァ」
老人「そう、思いっきりノリ気じゃない顔するでないぞ。酒が不味くなる」
少年「……朝っぱらのせいか、私たちしか客がいないじゃないですか」
老人「その方が好都合じゃろ。無闇に人間に姿を見られずに済むしな」
少年「……翼竜、こんな辺鄙な村に呼び出すとはどういうことですか?」
老人「これ。変化中に名を呼ぶな、海魔人。なあに、ここの地酒は上手いと評判なんじゃよ」
少年「……ああ、奢ってほしいんですか?」
老人「それもあるの」
少年「じゃあ、お金だけあげますから、僕帰りますよ」
老人「待て待て。せっかくだし、お主も飲んでけ」
少年「こんな姿で飲めるわけないでしょう」
老人「うおおーい、マスター。わしの孫にミルクついどくれー。あと、地酒をもう二瓶!」
少年「勝手に注文しないでください! しかも、孫だなんて……!」
老人「まあまあ、そういう設定もいいじゃろ」
マスター「どうぞ……」ス…
老人「さすがマスター、早いのぉ」
少年「……ったく、付き合うのは、この一杯だけですよ」
老人「しかし、お主。なぜに、そんなちびっこの姿に化けたんじゃ?」
少年「しょうがないでしょう。海の魔物が、化けながら陸上に上がるのは、大変なんですよ」
老人「ははぁ、魔力温存のための省エネ化というわけじゃな」
少年「港町とかだったら、もう少し大きめに化けられたんですけどね」
老人「なるほど、海が近いからの」
少年「それが、こんな山奥に呼びだすだなんて……」
老人「仕方なかろう、ここの地酒はここでしか飲めぬのじゃ」
少年「つまり、貴方のおかげで、僕はこんな姿になるハメになったわけですね」
老人「いかにもその通りじゃ」
少年「じゃあ、これ飲んで、さっさと海に帰らせていただきます」グビーッ
老人「こりゃー! 一気飲みするでない! お主に話があるんじゃよ!」
少年「プハッ……、なんですか? 話って」
老人「お、聞いてくれるのか。実はな、面白い報告があったんじゃよ」
少年「……といいますと?」
老人「うちの軍で、昨日勇者と戦った奴がいてな、その時の報告なんじゃが」
少年「内容は?」
老人「勇者が戦闘から逃げる際、“魔族語”を話したそうじゃ」
少年「……魔族語!? 勇者が!?」ガタッ
少年「……確かに魔族語だったんですか?」
老人「おうとも、わしの部下が聞いたんじゃ。間違いない」
少年「しかし、魔界でしか使われていない魔族語を、人間が使えるはずが……」
老人「もちろん、ありえない。じゃが、実際に話したそうじゃ」
少年「でも、余程のきれものでもない限り、人間が魔族語を覚えるなんて、一生かかっても無理でしょう?」
老人「いかにも。なんともきな臭い話じゃが、事実なんじゃよ。海魔人」
少年「ちなみに、勇者はなんと言ったんですか?」
老人「えーっと、確かなぁ……」
老人「『見逃せ、俺は仲間だ。』……だったかの?」
少年「は? 仲間……? なに言ってるんですか、勇者のくせに」
老人「確かに、下手な冗談にしか聞こえんよな。――言ったのが“本物の勇者”だとしたらな」
少年「!?」
少年「翼竜……、貴方は何を言いたいんですか?」
老人「ふむ。わしも部下の報告しかもらっとらんから、憶測しかできんのじゃがの」
老人「おそらく今、魔界の者が勇者になりすましておる」
老人「原因、経緯は不明じゃが、魔族語を話せる時点で、そう思っていいじゃろう」
老人「そう思えば、捨て台詞の内容も納得がいく」
老人「そして、本物の勇者はどこか別のところにいるはずじゃ」
少年「……話だけ聞いてると、信じがたいですね」
老人「じゃが、もしこれが本当ならば、チャンスだとは思わんか?」
少年「なんのチャンスですか」
老人「無論、魔王の座を奪うチャンスじゃよ」
少年「……ほう」
老人「自力で、魔王を殺してしまうというのも手だが、人間界には専門家がいるじゃろ?」
少年「……勇者のことですね?」
老人「そこで、わしの計画はこうじゃ。まず、どこかにいる本物の勇者を見つけ出す」
少年「それで?」
老人「味方面して、一緒に魔王を倒そうと言って仲間になる。助けた恩もあれば、了承しないはずがない」
少年「なるほど。あの勇者の性格なら、可能な話だ」
老人「そして、勇者が魔王を倒した時に、隙を狙って勇者を殺す。そうすれば――、」
少年「……魔界どころか、人間界をも征服できる、ということですね」
老人「理解力が早い奴は、話が早くて助かるのぉ」
少年「ようやく、貴方が僕を呼んだ理由が分かりましたよ」
老人「むぅ?」
少年「貴方の狙いは、僕の持っている“しるべの宝玉”ですね?」
老人「おお! その通りじゃ!」
少年「以前、人間の船を襲って手に入れた宝玉。使えば、探し物や探し人の居場所が分かる効果があります」
老人「うむ。いいアイテムじゃから、勇者たちも欲しがるじゃろうな」
少年「しるべの宝玉があれば、伝説の武具の居場所も、すぐ判明するでしょうからね」
老人「そして、本物の勇者を探すこともできる。そこで提案じゃ、海魔人」
少年「何ですか?」
老人「――わしと同盟を組まぬか? 魔王と勇者を殺してしまえば、全世界はわしらのモノじゃ」
少年「相変わらず、悪だくみが得意ですね」
老人「だてに長生きしとらんからの」
少年「貴方のことは嫌いですが、貴方のそういうところは、評価してますよ」
老人「くくく、それでは、交渉……」
少年「ええ、――決裂です」
老人「なにっ!?」
少年「なに驚いてるんですか? 別に貴方と組む必要はないんです」
老人「おい、海魔人!」
少年「だって、僕が宝玉を使って、僕がその計画を遂行すればいい話でしょう?」
老人「しかし、わしは知恵を貸したぞ!?」
少年「知りません、そんなの。貴方が一方的に話してきただけですよ?」
老人「ぬぅうう!」
少年「情報量として、酒代くらいは奢ります。僕が世界を手にするのを、酔いながら見てるといいですよ」
老人「……この糞餓鬼がぁ!」
少年「そんなに怖い顔しないでくださいよ。では、僕はそろそろ行きますね」ガタッ
老人「……餓鬼が、ここから無事に出れるとは思うなよ?」
少年「え――っ」
――ヒュン ドスッ
少年「……ぐぁ!? ナイフ、だと……? あ、」グラッ
マスター「申し訳御座いません、海魔人様」
老人「ふぉーっほっほっほ! 海魔人め、お主が宝玉を素直に渡すとは、最初から思っとらんわ」
少年「……貴様! そのマスターは……!」
老人「わしの腹心の部下――毒竜じゃよ。こいつの毒はきっついぞぉー?」
少年(……駄目だ、立てない! 身体が、痺れ……)
老人「毒竜は優秀な部下でのぉ。あらゆる毒を作りだすことができるんじゃ」
マスター「ナイフに麻痺毒を塗らせていただきました。あと3分もすれば、自白作用も効いてくるかと」
少年(自白作用だと……! 翼竜のやつ……っ!!)
老人「宝玉のありかさえ教えてもらえば、お主なんか要らぬわ。爪が甘いのぉ、海魔人」
老人「さぁて、自白してもらった後は、どうしてやろうかの?」
少年「……!」
老人「細切れにして、竜どもの餌にしてやろうかの? いや、生臭くて誰も食わんじゃろうなぁ?」
少年「……っ……!」
老人「お主の領地は、ごっそりいただいて、お主の部下どもも、わしのモノになって……」
少年「……~っ!」
老人「お主の幹部の座は、この毒竜にでも継がせようかのぉ? ふぉーほっほっほ!」
少年「…き、……さまぁっ!」
老人「んーー? ほほっ! こりゃ愉快じゃ! 泣きべそかいてるぞ、海魔人が!!」
少年「この……僕に、こんな、恥を……っ!」
老人「悔しくてたまらんのじゃな? 分かりやすい顔じゃ。愉快愉快!」
マスター「翼竜様、そろそろお時間です……」
老人「おお、自白の時間じゃな。では、問わせてもらおうか。海魔人、宝玉のありかは――」
――ガチャ カランカラーン
少年「!?」
マスター「…………」
老人「何者じゃ!」
側近「――翼竜、後輩いじめもいい加減になさい?」
老人「側近じゃと!? 何故、この場所が分かった!?」
側近「貴方の悪企みについては、貴方の腹心の部下が、教えてくれたわ」
老人「なにっ!? 毒竜、貴様ぁ! 裏切ったな!?」
マスター「先に魔王様を裏切ろうとしたのは、貴方です。翼竜様」
老人「っぐぅ、今まで良い待遇させてやったのに、とんだ仕打ちじゃな!?」
マスター「自分は……、貴方の部下である前に、魔王様の部下ですから」
老人「ぬぅうううっ!」
側近「海魔人、これを……」
少年(毒消し草か……、助かる)
側近「翼竜、貴方を魔界軍法会議にかけます。魔界まで同行していただけるかしら?」
老人「……くっ! おのれぇ!」ボムッ!
少年(……変身を解除した!?)
翼竜「そうみすみすと、ついていく馬鹿がおるか! 今回は、退かせてもらうぞ!」バサァ
マスター「逃がさん」ヒュッ
翼竜「――ぅごっ!? ぁあ、」ドサ
マスター「海魔人様に放ったのと、同じ毒ナイフです」
側近「よくやったわ、毒竜」
翼竜「……くそ、ぅう」
側近「翼竜は私自ら、魔界に連行します。毒竜、海魔人の手当てをお願い」
マスター「了解しました」
翼竜「ぅ、ううっ、畜生ーーーー!」
――ガチャ カランカラーン
マスター「……翼竜様」
少年「なあ、毒竜」
マスター「海魔人様。……毒は、抜けましたか?」
少年「毒消し草が効いている。だが、さっきはよくもやってくれたな!?」
マスター「自分は、申し訳御座いませんと言いましたが?」
少年「口の減らない奴め、気に食わないな」
マスター「……本当に申し訳御座いませんでした、自分の上司のせいで」
少年「…………」
少年「それで、貴方はこれからどうするんですか?」
マスター「どう、といいますと?」
少年「何か裏があるんでしょう? 僕を助けた理由が」
マスター「…………」
少年「幹部席への昇進か、はたまた、君が宝玉を使って、翼竜の計画を遂行するか」
マスター「……自分は、曲がったことが嫌いなだけです」
少年「つまらない人ですね、貴方。実力があるのなら、のし上がればいいのに」
マスター「…………」
少年「まあ、それも良しとしましょう。今回は、助けてくれて、有難う御座います」
マスター「……いえ、自分は何もしていないです」
マスター「今回の件も、暗黒剣士様からご助言いただいたことですし……」
少年「……え? 何だって?」
マスター「翼竜様から、この件について聞く前に、暗黒剣士様から教えてもらってたんですよ」
マスター「回廊ですれ違った時に、翼竜様から計画を聞いているかと尋ねられて……」
マスター「何も聞いていないと答えたら、翼竜様が海魔人様を嵌めて、魔王の座を狙っていると聞かされ、」
マスター「自分のとこにも、話が行くだろうと暗黒剣士様はおっしゃいました」
マスター「そして、ただ上司の命令を聞くのではなく、自分が最も正しいと思う人に従えと、言われました」
マスター「だから、今回は翼竜様ではなく、魔王様についたのです」
少年「……暗黒剣士は、翼竜の計画をどこで聞いたと言っていましたか?」
マスター「酒場に同席した時に、翼竜様が酔った拍子に話したのを聞いたそうです」
少年「側近に、知らせるように伝えたのも、暗黒剣士でしたか?」
マスター「ええ、その通りです」
少年「そうですか、良く分かりました……」
少年「――暗黒剣士め! 僕らを囮に使いやがったな!」
マスター「え……?」
少年「分からないのか!? あの野郎は、魔王と側近を離すために、君に計画を話したんだ!」
マスター「……!」
少年「翼竜の計画を利用して、魔王を討つチャンスを意図的に作ったんだよ、あいつは!」
マスター「それでは、自分は……」
少年「踊らされたんですよ。貴方も、僕も、翼竜も、側近も」
マスター「そんな、まさか……!」
少年「今頃、あいつは魔王を殺しに行ってるはずだ。側近が魔界から帰ってくる前に」
マスター「……魔王様が危ない!」
少年「魔王はどうでもいい! それより、魔王の座が……、うっ」クラ…
マスター「海魔人様!?」
少年「くそっ、海から離れてるから、体力が……! 毒竜、海水持ってこい!」
マスター「……しかし」
少年「早く、暗黒剣士を止めに行かないと! おい、毒竜早くしろ!」
マスター「海魔人様、実は……大変、おっしゃりにくいんですが」
少年「なんだ!? 早く言え!!」
マスター「……自分、翼が生えてませんし、呪文も使えません」
少年「この役立たずーーーー!!!」
今日はここまでです。
読んでくださりありがとうございます。
また来週きます。
読んでくださりありがとうございます。
また来週きます。
ワームも竜って言う?
翼の無い竜と言えばサーペントあたりが該当しそうだけど。
翼の無い竜と言えばサーペントあたりが該当しそうだけど。
ワームもドラゴンの一種を指すこともあるらしいぞ
ワームのwikiに書いてあったわ
ワームのwikiに書いてあったわ
~古代の迷宮~
勇者「……道が入り組んでいるな」
僧侶「あれ、ここさっきも通ったような……」
魔法使い「えーと、さっきはどっちを通ったっけ? 右? 左?」
戦士「わかんねー時は、まっすぐ行きゃいいんじゃねーの?」
魔法使い「ばかねー、それで同じ道通っちゃったら、二度手間じゃない」
戦士「馬鹿っていうな! これでもおれは、考えてモノ言ってんだぞ!」
勇者(……ここまで、信憑性のない台詞も珍しいな)
僧侶「あ……、皆さん!」
まもののむれが あらわれた! ▼
戦士「くそっ、またか!?」
魔法使い「数が多いわね。魔法で一網打尽にしてやるわ」
僧侶「勇者様! ご指示を!」
勇者「……戦士は俺とあの魔術傀儡を叩け。僧侶と魔法使いはあの合成獣に攻撃魔法を……」
勇者(意外と人造魔物が多いな……、倒しても倒しても出てくる)
勇者(罠も多いし、先ほどはパズルを解かないと開かない扉もあったし……)
勇者(古代人め、そんなに伝説の武具の元へ行かせたくないのか)
勇者(俺は別に勇者じゃないから、武具はどうでもいいと思っていたが……)
勇者(こうまで守りに徹されると、――俄然欲しくなってきたぞ)
~魔王の部屋~
魔王「こ……、こういう絵画の裏とかに……! ……ない」
魔王「じゃあ、ベッドの下! ……ない」
魔王「あ、分かった! 箪笥の裏にころころ転がったりしたんじゃ……! ふぬぬぬ……!」グググ…
魔王「駄目だー、一人じゃ動かせねぇ……。なんか細長いモノとか……」
???(……なにやら、先ほどから探しものをしているらしい)
???(まあ、ずっとここで眺めているのも、時間の無駄だ……)
???(早々に殺ってしまおう)
――キン ズバァッ
魔王「え……」
――ガラガラガラ
魔王「な、なんだ!? 突然、壁がバラバラに切れ……っ」
???「………!」ビュッ
魔王(誰か突っ込んでくる! こいつは!?)
――ガキィイイン!
???「ちっ、まさか剣で防御されるとは……」
魔王「お前は!?」
暗黒剣士「貴様の首を落としに来た者だ。魔王よ」
魔王(何て速さだ……! 壁際から、一瞬でオレの間合いに!)
暗黒剣士(初手で致命傷を負わせるつもりだったが、まさか防がれるとは)
魔王(さっき壁を粉々にしたのも、まさか剣で……!? すごい剣士だ!)
暗黒剣士(普段から、剣を振るう者でないと出来ない防御。だが魔王は、それほど頻繁に剣術を鍛えていただろうか)
魔王(とにかく――)
暗黒剣士(――まあいい)
魔王「いったい何のつもりだ、暗黒剣士!」
暗黒剣士「貴方を殺しに来たのだと、言ったはずだが?」
魔王「ていうことは、会議中に殺気を放ってたのはお前だったのか」
暗黒剣士「隠したつもりだったんだが、鋭い魔王だ」
魔王「とりあえず、聞かせろ。なんでオレを殺しに来たんだ!?」
暗黒剣士「貴方のぬるいやり方が気に入らない。ただそれだけだ」
魔王「ぬるいやり方……?」
暗黒剣士「ふん、ずいぶんと白々しい台詞を吐く」
暗黒剣士「そもそも、魔王軍による人間界の侵攻は、長きにわたって試みられている」
暗黒剣士「歴史上、貴方よりもずっとずっと前の魔王から、人間と魔王軍の戦いは繰り返されてきた」
暗黒剣士「特に貴方は、魔王の中でも強大な力を持っている」
暗黒剣士「ご両親の死を境に、幼少期から死に物狂いで力を求めた結果だろうな」
魔王「…………」
暗黒剣士「しかし貴方は、その力を持て余している」
暗黒剣士「侵攻は低レベルな魔物たちにばかり任せて、自分から大きく動こうとする気配など全くない」
暗黒剣士「あの勇者だって、その気になれば、骨も灰も遺さず焼き払えるはずだ」
魔王「…………」
暗黒剣士「何時まで、まどろっこしい手を使い続けるつもりだ、魔王」
暗黒剣士「――貴方が本気を出せば、脆弱な人間どもを殲滅する為に、二日も要らないはずだ」
魔王「……それがオレを殺す理由か」
暗黒剣士「そうだ、貴方が魔王でい続けたら、千年経っても人間界を侵略できない」
魔王「…………」
暗黒剣士「だから、魔王が変わる必要があるんだ。頂点が変わらねば、この状況も変わらん」
魔王「…………」
暗黒剣士「ゆえに、魔王の座を空けろ。無能の魔王め――」ヒュッ
魔王「いやだね!」ガキィン!
暗黒剣士「何故だ?」
魔王(……ここで勇者の姿だったら、「てめぇなんかに、人間界は渡さねぇ!」って言えるんだけどなー)
魔王「……理由は、お前と同じだ。オレもお前のやり方が気に入らない」
暗黒剣士「そうか。どうせ説得には応じないとは、思っていた」
魔王「壁切って登場した時点で、説得で解決するつもりなかったろ?」
暗黒剣士「まあな。それゆえ、容赦なく、死に至らしめることにしよう――」
――ズバッ キィン!
魔王(凄まじい剣さばき! こっちが、防戦一方になってる!)
暗黒剣士(魔法や息の攻撃を使ってこないな。好都合だが、なにゆえ……)
魔王(しかも、的確に急所を狙ってくる。……押されている!)
暗黒剣士(しかし、魔王はここまで剣術に長けていただろうか? なにか違和感が――)
魔王(もう向こうのペースに飲まれてるな。なんとか戦いの流れを……)
暗黒剣士(まあいい、確実に仕留めることが、最優先事項――)
魔王(……こんな時、魔王ならどうしてた?)
魔王(思い出せ、あいつとの戦闘を! あいつならどう戦う……!)
魔王(…………!!)
まおうは こごえるふぶきを はいた!
あんこくけんしに 139のダメージ!! ▼
暗黒剣士「ぐぉっ!?」
魔王「……へへ、思い出したぜ。確か、こんな感じだった」
魔王(オレや戦士が、近距離戦に持ち込もうとした時、)
魔王(魔王は、呪文や息攻撃で、オレ達を牽制し、近づけないようにしていた)
魔王(つまり、距離さえ稼げれば、あの剣士に勝てる!)
魔王(あいつに何度も負けた経験が、こんな風に生かされるとはな……)
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