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元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
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『 м月б日
夜、かん部の一人が ぼくの首をねらって 攻げきしてきた
側近が気付いて助けてくれなかったら、死んでたかもしれない
話をきくと、プリンに毒をもったのも、こいつだと分かった
かん部の動きを封じた側近は、ぼくがこいつを殺した方がいいと教えてくれた。
この先、こういう裏切り者と戦う機会がふえるから、今のうちに慣れておけだって。
覚えたばかりの火の魔法を、つかった。 かん部の さけび声が すこし怖かった
一回じゃ死ななかったから、なんども呪文をとなえた。 かん部は たくさん 叫んだ
8回目の呪文でやっと死んだ。
側近はほめてくれた。殺したのははじめてだったから、ぼくは少しおかしなきもちだった
でもこのきもちは、きっと戦闘のとき邪魔になるから、 早く殺すことに慣れないといけない 』
魔王「 頼む もう やめ」
『 т月w日
父さんと母さんが殺されてから、一年が経った。僕は六歳になった。
一年前より、いろんな呪文を覚えたし、強くなったと思う。
父さんと母さんの墓参りに行ってから、側近が誕生日プレゼントをくれた。
人間界に建てた魔王城だった。
魔物たちが頑張って作ってくれたらしい。ここを拠点に、人間界を支配する予定だ。
まだ子どもだけど、魔王になったから、特別に人間界に行かせてもらって、魔王城を見せてもらった。
広かったしすごかったけど、作りが甘いと感じた。
もっと道順を複雑にすること、塀を高くすることと、見張り台を作ることを注文して、魔界に帰った。
一年経ったけど、僕はまだ父さんのような立派な魔王になれてない。早く強くならなきゃ。賢くならなきゃ。
一日も早く、一時間でも早く、一分でも早く、一秒でも早く早く早く早く早く早く早く立派な魔王にならなきゃ』
魔王「 ―――もうやめろっつってんだろ! 馬鹿野郎!!」
魔王「ハァッ……ハァッ……」
魔王「…………」
魔王「何してんだろな、オレ……。日記ぶん投げたって、何もならねぇだろ」
魔王「……っ、……あ」
魔王「……くそっ」ゴシゴシ
魔王「なに泣いてんだよぉ、オレぇ……」
魔王「……畜生」
魔王「とりあえず、日記を……」ヒョイ
――パラッ
魔王「……あ」
『 ――暦 ц月е日
今日は勇者について学んだ。人間界には、魔王を討伐するために勇者という専門家がいるらしい。
勇者は世襲制で、人間と平和を守るために、魔物や魔族と戦う存在のようだ。
なにが人間のためだ。なにが平和のためだ。
人間さえ良かったら、なんでもいいのか?
魔物や魔族の平和は、どうでもいいのか?
講義の間、胸糞悪くて仕方なかった。勇者なんか嫌いだ。気に食わない。 』
魔王「…………」
魔王「なんだろうな、ぐさっときた……」
魔王「……とりあえず、戻そう」ゴト
:
:
:
魔王「…………」カキカキカキ
魔王「…………」カキカキカキ
魔王「…………」
魔王「……よしっ」
魔王「側近ーー。……って呼んだら、ほんとに来るのかな」
側近「お呼びですか魔王様」コンコン
魔王「うお!? まじで来たぁ!? えーと、呼んだからどうぞー」
側近「失礼します。ご用件は?」ガチャリ
魔王「あのー、側近は魔王の居場所分かる?」
側近「勇者一行には、常に偵察隊を向かわせています。ゆえに、場所の補足は造作もないことです」
魔王「じゃあさ、頼みがあるんだけど」
側近「なんなりと」
魔王「この手紙を、魔王に届けてくれないか? いま、勇者の姿してる魔王に」
側近「……かしこまりました」
魔王「あ、でもオレの仲間にはばれないように頼むぜ」
側近「承知の上ですよ、魔王様。私は変身魔法も使えますから、ご安心を」
魔王「おお、助かるぜ。いやー、頼りになるなぁ、側近は」
側近「頼りにならない側近がいたら、どうかと思いますけどね」
側近「それでは、行って参ります」ボムッ
魔王「おおっ、フクロウになれるんだな」
側近「無論、人間にも化けれますよ。それでは、魔王様。おやすみなさいませ」
魔王「おう。おやすみー」
バサッ バサッ――
魔王「…………」
魔王「……ふぁ」
魔王「寝るか」
魔王「それにしても、いろいろ濃い一日だったなぁ」
魔王「一番恐ろしい事は、これだけいろいろあって、まだ一日しか経ってないことだよな」
魔王「はぁ……。これが、いったいあと何日続くんだよ……」
~露天風呂・女湯~
魔法使い「きゃっはーい! おんせーん!!」ガララッ
魔法使い「ん、あの人影は……」
僧侶「……ゆうしゃさまぁ」プシュー
魔法使い「そ、僧侶ちゃんっ!? あれから、ずっと温泉入ってたの!?」
今日はここまで
たぶんまた今週来れます
読んでくださりありがとうございます
たぶんまた今週来れます
読んでくださりありがとうございます
側近「……」バサッバサッ
側近「……」バサッバサッ
側近(……偵察隊の情報によると、勇者たちはここからさらに北の渓谷を越えた村に潜伏中)
側近(この姿のまま行ったら、夜が明けちゃうわね……)
側近「……」バサッバサッ
側近「……せっかくですし、移動呪文でショートカットしちゃいましょう」バサッバサッ
そっきんは じゅもんを となえた! ▼
~村~
側近「……ここが勇者一行の潜伏先」
側近「勇者たちのことだから、どうせ宿屋に泊ってるんでしょうね」バサッ
側近「あら、露天風呂ついてるのね。ここ」バサッバサッ
側近「……ん、あれは」
僧侶「……魔法使いさん、どうもありがとうございます」
魔法使い「いいってことよー。でも、弱めの冷気呪文で復活してくれてよかったわ」
側近(……勇者の仲間か。こんな時間まで、のんきに入浴とは……)
側近(しかし、何か有益な情報が得られるかもしれないし、聞き耳でも立てておこうかしら)
側近(あの木なんか、偵察にちょうどよさそうね。よし、あそこで――)バサバサ
魔法使い「それにしても、のぼせるまでつかってるだなんてねー」
僧侶「その、ちょっと考え事してて……」
魔法使い「へー、考え事ねぇ……」
僧侶「…………」
魔法使い「…………」
僧侶(……ずっと勇者様のこと考えてたなんて言えない)
魔法使い(どうせ、ひたすら勇者のこと考えてたんだろうなぁ、分かりやすい)
僧侶(な、なんで黙ってるんだろう。あ、私が黙ってるから……?)
魔法使い(なんか困ってる顔してるなー)
僧侶(なんか気まずい。どうしよう、なんかしゃべんないと……)
魔法使い(しょうがないなー。なんか別の話題……。よし、定番のアレでいこう)
魔法使い「ところでさー、僧侶ちゃんって、色白いよねー」
僧侶「は、はいっ!?」
魔法使い「うんうん、綺麗な肌してる。すべすべで羨ましいなぁー」
僧侶「ひっ! あ、あの! あまり触らないでください!」
魔法使い「いいよねー。十代のお肌はピチピチで……、羨ましぃなぁあぁぁ……っ」
僧侶「(……怖っ!) あ、その……、お好きにどうぞ」
魔法使い「さすが、僧侶ちゃん。やっさしーなー。では、お言葉に甘えてー」
側近(…………)
魔法使い「いやー、若い体は羨ましいねぇ」
僧侶「でも、魔法使いさんも、羨ましい体してるじゃないですか……」
魔法使い「ほー、例えば?」
僧侶「え、その大人っぽい体つきだなぁーって」
魔法使い「もっと具体的に」
僧侶「ええっ!? あ、だから、その、胸とか大きいなぁ……って」
魔法使い「ほほう、僧侶ちゃんは、胸の大きさを気にしてるわけなのね」
僧侶「だって、そんなに大きくないし……」
魔法使い「何言ってんの。どちらかというと、普通のサイズでしょ。もっと自信もって!」
側近(…………)
側近(……変身解除!)ボムッ
側近(…………)ペタペタ
側近(…………)
側近(……この側近が、あの二人に遅れをとるだと!)
側近(……なんなんだ、この敗北感は)
魔法使い「第一、女は胸の大きさで決まるもんじゃないわ!」
僧侶「…………!」
側近「…………!」
魔法使い「女は愛よ! 愛の深さが女を語るのよ!」
僧侶「……魔法使いさん」ジーン…
側近(……あの女、良い事を言うじゃないか)ジーン…
魔法使い「というわけで、今夜勇者ちゃんに告白するのよ! 僧侶ちゃん!!」
僧侶「うひゃいいいい!?」ビクーン!
側近(なん……だと!?)
僧侶「無理です! 無理です! 無理ですぅうう!」
魔法使い「なに言ってんの! 女は度胸よ!」
僧侶「さっき愛って言ったじゃないですかぁ!」
魔法使い「愛も度胸も、同じようなもんよ!」
僧侶「そんな無茶苦茶なぁ……!」
側近(……勇者は、いま魔王様。つまり、あの僧侶は、魔王様に告白するということになる)
側近(…………)ゴゴゴゴゴ
側近(……変身!)ボムッ
側近(一刻も早く、魔王様に危険を知らせねば!)バサバサ
~宿屋・外~
側近(魔王様は、いったいどの部屋に……)バサバサ
側近(……! あの窓ね、一人きりとは好都合)
側近(ベッドに入っているから、もうお休みかもしれないけど、緊急事態だから仕方ないわ)
勇者「…………」
……コンコン
勇者「……、う」
勇者「……何の音だ」ムク
勇者「なんだ? フクロウが窓に」ガララ
側近「魔王様!」ボムッ
勇者「……! 側近か!」
側近「魔王様、ご無事で何よりです!」
勇者「いや、あまり無事でもなかったんだが」
側近「え?」
勇者(まさか、風呂場で奇襲を受けるとは思わなかったからな……)
勇者「ところで、何の用件だ?」
側近「はい、実は魔王様に、早急にお伝えすべきことが!」
勇者「なんだ」
側近「魔王様! あの僧侶に気をつけてくださいっ!!」
勇者「…………」
側近「…………」
勇者「……え、それだけなのか?」
側近「はい! 諸事情により詳細には述べられませんゆえ!」
勇者「……そうか」
勇者「で、それを伝えるために、わざわざ魔王城からここへ?」
側近「ハッ!? 申し訳御座いません! それだけでは、ありませんでした!」
勇者「お前のことだから、そうだろうとは思っていたが」
側近「すみません、魔王様。これを……」ス……
勇者「……手紙か?」
側近「はい、勇者が魔王様にお渡しするよう命じたので」
勇者「あの弱小の手紙か」
側近「はい」
勇者「読まないで焼き捨てては駄目か?」
側近「駄目です」
勇者「そうか」
側近「それでは、確かにお渡ししましたからね」
勇者「ああ、いつもご苦労。側近」
側近「この程度のこと造作もありません。それと、魔王様……」
勇者「なんだ?」
側近「――私は、いつでも魔王様の御帰りをお待ちしておりますよ」
勇者「……そうか」
側近「それでは、魔王様。お休みなさいませ」ボムッ
勇者「ああ。おやすみ、側近」
バサッ バサッ
勇者「…………」
勇者(ずいぶん久しぶりに、側近の顔を見た気がする……)
勇者「……さて、ロクなこと書いていないんだろうが、とりあえず読んでやるか」ガサガサ
勇者「…………」
『 魔王のバカヤローへ
今日一日まじ散々だったぞ。魔王って大変なんだな。
側近には殺されかけるし、会議とか、すっげー大変だったんだからな。
でも、魔王城の飯は最高に美味かったぜ。
すっげー超絶不本意だけど、魔王城の飯食えるから、しばらく魔王になってやってもいいぞ。
全然早く帰ってこなくていいからな! お前の好きなとこ行って、好きな時に帰って来いよ!
南の港町は遊覧船に乗れて楽しいぞ! あと、西にある村は地酒が美味いって、戦士が言ってたぜ。
オレはまだ酒飲めないけど、お前飲めるんだったら、飲んでこいよ!
こっちは全然心配しなくていいからな! 側近がいろいろ助けてくれるから大丈夫だからな!
じゃあな、勇者生活楽しめよ! あとオレの仲間によろしくな!
勇者より 』
勇者「……なんて頭の悪そうな文章なんだ」
勇者「やっぱりロクなこと書かれてなかったな……」
勇者「まったく、あの弱小。どういう風の吹き回しだ?」
勇者「早く帰ってこなくてもいいだなんて……」
勇者「…………」
勇者「…………」
勇者「まあ、言われなくてもそうするつもりだったしな」
勇者「…………」
勇者(……遊覧船か)
勇者「…………♪」
~宿屋・食堂~
魔法使い「わー、鰆の塩焼きおいしいー」
僧侶「煮物もおいしいですよ。おイモさんに、味がよくしみてて」
戦士「女将さん、おかわりー!」
魔法使い「ところで、戦士ちゃん。勇者ちゃんは?」
僧侶「…………!」ドキッ
戦士「ああ、それがさー、さっき風呂で……ハッ」
----【戦士の脳内】---------------------------------------
露天風呂で張り倒したことを正直に言う
↓
魔法使い「うわー、さいてー。仲間相手にそりゃないわ」
↓
僧侶「戦士さん、そんな人だったなんて……。もう戦士さんは、回復してあげません!」
↓
回復されないから、魔物にボコボコにされて何度も死ぬ
↓
勇者「すぐ死ぬ役立たずは不要だ。酒場に帰れ」
↓
酒場でまた飲んだくれ生活にリターン ← ここまで考えた
---------------------------------------------------------
戦士「…………!」
戦士「いやぁ! なんか風呂場で滑って頭ぶつけたから、今部屋で寝てるぜ!?」
僧侶「ええっ!? 大変じゃないですか! すぐ回復しないと!」
戦士「あ、あーっ! でも大丈夫! 薬草使ったし、さっき意識も戻ったし!」
魔法使い「そっかー、じゃあ今夜は勇者ちゃん休ませてあげないとねー」
僧侶(……ということは、今夜の告白は取り消し?)ホッ
魔法使い(戦士ったら、なーんか隠してる臭いけど、まあいいか)
戦士(……さすがのおれも、魔王戦直前で、リタイアしたくはないぜー)ドキドキ
~魔王の部屋~
魔王「…………」
魔王「…………」
――なにが人間のためだ。なにが平和のためだ
――人間さえ良かったら、なんでもいいのか?
――魔物や魔族の平和は、どうでもいいのか?
魔王「…………」
魔王「……どうでもいいわけねーだろ」
魔王「勇者は、“みんな”を助けるのが仕事だからな」
魔王「……ただ、魔物を倒すだけじゃあ、本当の平和なんか来ないんじゃないのかもな」
魔王「だとしたら、どうすれば……、みんな、幸せになれるんだ……?」
魔王「……ぐう…zzZ」
~宿屋~
勇者(…………)
勇者(……いろいろあったな、今日は)
勇者(少人数精鋭の戦闘は、意外と楽しかった)
勇者(指揮をとりながら、自分も戦う。臨場感があってよかった)
勇者(魔王はなかなか戦闘の最前線に出れないからな)
勇者(魔王軍にも、一組4~5体程度の精鋭部隊を作ってもいいかもしれん)
勇者(……っと、今は勇者だから、そんなこと考えなくても良かった)
勇者(……勇者か)
勇者(一時期、毛嫌いしてたこともあったが、もう遠い遠い昔の話だな)
勇者(嫌いだった勇者をやってでも、魔王の職務を離れたいと思うようになって、念願がかなったわけだが、)
勇者(案外、……楽しいじゃないか。こういうのも)
勇者「……zzZ」
今日はここまでです。ようやく一日目終了です。
読んでくださり有難う御座います。
また来週来ます。
読んでくださり有難う御座います。
また来週来ます。
~魔王城~
魔王「ふぁああー……」
魔王「あー、疲れとれてねぇ」
魔王「腹減ったなぁー……」
コンコンコン……
魔王「誰だー?」
側近「側近です。魔王様、朝食の用意が出来てますが」
魔王「マジで!? ちょっと待ってて! すぐ着替えるから!」
側近「では、お待ちしております」
魔王(しかし、すげぇグッドタイミングだな。さすが側近)
側近「本日の朝食は、極楽鳥の卵のフレンチトースト。ダークハニーシロップでお楽しみください」
側近「それから、獅子豚の肉厚ベーコン。翡翠菜のシーザーサラダ」
側近「ドリンクは100%灼熱リンゴジュースでございます」
魔王「いっただっきまーす♪」マグッ
魔王「……うまっ! マジうまい!」ガツガツガツ
側近(……相変わらず、凄い食べっぷりだわ)
側近(子供みたいにあんなに喜んで……)
側近(…………)
側近(……魔王様は、いつも退屈そうな顔で食事をされてましたっけ)
魔王「うおお、ベーコンの肉汁すご! サラダも上品な味だなぁ!」
側近「お気に召されたようで何よりです」
魔王「……あのさ」
側近「はい何でしょうか」
魔王「……側近も、ずっと立ってないでさ。一緒に食べない?」
側近「…………」
側近「何をおっしゃゐませうか魔王様。不肖のような下賤な者と食膳を共にしたゐとわ」
魔王「え、なにその口調。動揺してるの? 動揺してるってことなの?」
側近「ゴホン……、ともかく。魔族の中でも、とくに高貴な血族の魔王様と、私では不釣り合いです」
魔王「そういうもんかなぁ」
側近「人間社会にもあるように、魔界にも身分の差を弁える文化があるのですよ」
魔王「でも、オレ魔王じゃなくて、本当は勇者だぞ?」
側近「でも外見は魔王でしょう? 誰かが突然部屋にでも入ってこようものなら、問題沙汰です」
魔王「そっかー……」モグモグ
側近「ちなみに、なぜそのようなお誘いを?」
魔王「いや、なんかさー……、一人で食べるのって寂しいなぁって……」
側近「…………」
魔王「ここ最近、ずっと仲間と行動してたからかな」
魔王「……みんな元気にしてるかなー」
~フィールド~
勇者「……よし、行くか」
戦士「今日こそ、ダンジョン攻略だ!」
魔法使い「はいはい、気合い入れていくわよー……ふぁ」
僧侶「魔法使いさん、眠そうですね」
魔法使い「あたし、低血圧だから朝弱いのよねー」
戦士「ははは! 黙って生きてたら、そのうち高血圧で悩むことに――」
魔法使い「おほほ、何言ってんのかしらね、この口は。んん?」ギリギリ
戦士「ぎゃーーー! ギブギブギブ!!」バシバシ
勇者(コブラツイストか……。いい型だ)
僧侶(戦士さん、一言余計なんですよね……)
魔法使い「ところで勇者ー。今日は逃げるなんて言わないわよね?」
勇者「ああ、無論そのつもりだ」
魔法使い(……おや、案外すんなりと。昨日のアレはどういう風の吹き回しだったのかしら?)
勇者「その代わり、今日はこいつを使う」チャプ
僧侶「あ、聖水ですね」
戦士「なんだ、やっぱり今日もダンジョンまで、体力温存かぁ」
魔法使い(結局、戦わない方針は継続なのね……)
戦士「それにしても、聖水なんか久々に使ったなー」
僧侶「魔物が出てこないと、道中が楽ですね」
魔法使い「こんな感じで、迷宮もサクサク進めればいいんだけどねー」
勇者「…………」
勇者(聖水か……。実際使うのは初めてだが、便利な道具があるんだな)
勇者(……こんな感じで、人間を寄せ付けない道具とか、作れないだろうか?)
~魔王城~
側近「それでは、魔王様。本日のスケジュールですけど」
魔王「うん」
側近「本日は、書類仕事だけです」
魔王「書類仕事?」
側近「ダンジョン建設企画書、魔王軍異動届、勇者一行偵察報告書、魔界からの書類も多数……」
魔王「けっこうあるなぁ」
側近「とりあえず、肘の高さまである書類が山脈作って溜まってます」
魔王「そんなに!? なんで?」
側近「昨日魔王様が、書類仕事片付けなかったからですよ」
魔王「えーーー!? おいおい何やってたんだよ、昨日のオレ!」
側近「寝てたり、食べたり、会議に出たり、私に殺されかけたりですね」
側近「書類仕事は簡単ですよ。書類に目を通して、読んだという証拠としてはんこを押せばいいだけです」
魔王「……でも全部読まないといけないんだろ?」
側近「はい、その通り」
魔王「無理だよ、そんなの!」
側近「そうですか、それもそうかもしれませんね」
魔王「ん?」
側近「我らが魔王様は速読が特技でしたから、難なく事務仕事を済ましていましたけど……」
魔王「……!」
側近「所詮勇者ごときには、魔王様の真似事など到底不可能ですよねぇ」
魔王「……何だとぉっ!? いいぜぇ、やってやろうじゃねぇか!」
側近「おや、そうですか」
魔王「魔王なんかに負けてたまるか! 書類仕事くらい、この勇者様が華麗にこなしてやらぁ!」
側近(……さすが勇者、ちょろいですね)
魔王「そうと決まったら! 側近、はんこ持ってこい!」
側近「無理です」
魔王「え、何で!?」
側近「魔王様のはんこは、大切なものなので、魔王様しか保管場所は知りません」
魔王「……ぇえええええええ!?」
側近「だから自分で探してくださいね」
魔王「なんという難題を残していきやがるんだ、魔王め!」
側近「まぁ頑張って下さいよ。そういうの得意でしょう、勇者なら」
魔王「なんでそうなるんだよ」
側近「偵察隊から、勇者は行く先々の村や町やダンジョンで、根こそぎ宝を持ちだしているとの報告が……」
魔王「あ、あれは! 冒険に役立ちそうなものがあると、つい……!」
側近「手癖の悪い勇者様ですね」
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