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元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
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>>195 どのクラスの宿に泊まるのかな?
~魔王城~
側近「魔王様」
魔王「ぐががー……zZZ」
側近「魔王様、起きてください」
魔王「ふごごー……zZZ」
側近「…………」
側近「とっとと起きてください、魔王様」グイー
魔王「いっ、だだだ! やめて、角引っ張らないで! ひっこ抜ける!」
側近「なんだか、私が来ると、半分の確率で魔王様が寝てる気がします」
魔王「しょうがないだろぉ、慣れない事ばかりで、こっちは疲れてるんだよ」
側近「疲れたら、回復呪文を使えばいいじゃないですか」
魔王「MPの無駄遣いはあまりしたくないの! 冒険中にMP0になった時の、恐ろしさといったら……」グスグス
側近「あなた今、魔王なんですから、そんな心配は無意味ですよ。仕方が無い――」
まおうのそっきんは じゅもんをとなえた!
まおうの たいりょくが かいふくした! ▼
魔王「あ、疲れがとれた」
側近「回復魔法ぐらい、下々の者でも使えます。いつでも頼りにしてください」
魔王「そっか、……ありがとな」
側近「側近ですから当然です。ところで、魔王様、夕食の準備が出来たそうですが……」
魔王「おおおお! 飯ーー! 行く行く! 食べるーーーっ!!」
側近(……気のせいか、呪文かけた時より、元気が出てるような)
~村~
魔法使い「はーい、到着ー」
戦士「おー、もう夕焼けが」
僧侶「迷宮にいた時は気づかなかったですけど、けっこう時間が経ってたんですね」
勇者「ところで魔法使い。ここは、先ほどの街ではないようだが?」
魔法使い「ん? 宿に泊まるってだけだから、あたしの独断で移動先決めたんだけど」
勇者「……普通そういうことは、相談してから決めてほしいんだが」
魔法使い「まーまー、細かいこと気にしない」
勇者(適当すぎるというのも、難のある性格だな……)
魔法使い「ちなみにこの村、温泉が有名で、宿屋にも露天風呂がついてるってさ」
勇者「素晴らしい働きぶりだぞ、魔法使い」グッ
僧侶(勇者様が、真顔でサムズアップを……!)
戦士「にしても、なつかしいなー」
僧侶「この村に来た時は、冒険の中盤でしたっけね」
戦士「あ、そういう意味じゃなくてさ。おれ、この辺の生まれなんだよね」
魔法使い「あらそうなの、初耳ね」
戦士「ちょうど、この村の隣町に住んでたんだけど、もう町は無くなったんだ」
僧侶「え、どうしてですか?」
戦士「魔物の大群に襲われたんだよ」
戦士「おれが7つの時だから、20年前のことだったかな」
戦士「近くに住んでた大賢者が助けに来てくれたから、死傷者は少なかったけど、……」
戦士「町の9割は壊滅、毒を使う魔物が多かったから、戦闘で毒沼がいっぱいできちゃって……」
戦士「毒沼の埋め立ては、技術的にまだ不可能。だから、町の再建もあきらめて……」
戦士「生き残った人達は、おれを含め、別の所に引っ越していったよ」
勇者「…………」
勇者(20年前の襲撃作戦か。確かに、そんなこともあったな)
勇者(その時の生き残りが、こうして勇者の仲間になっているとは……)
勇者(偶然か、はたまた運命か……)
戦士「っと、辛気臭い話になって悪かったな。さ、宿泊まろうぜ、宿! 温泉ー!」
僧侶「戦士さん、ご苦労されてたんですね……」
魔法使い「……あー」
僧侶「でも、あんなに明るく振舞って……」
魔法使い「うーん……」
僧侶「あ、すみません、ちょっと涙が……」グスッ
魔法使い「……ってことはぁ」
僧侶「……魔法使いさん? 何をそんなに一生懸命考えてるんですか?」
魔法使い「――え? ああ、いやいやいや、べっつにー」
魔法使い(……まさか、ね)
~宿屋~
主人「一晩60Gですが、お泊りになりますか?」
勇者「はい」
主人「では、ごゆっくりお休みください」
魔法使い「あ、御主人さん。露天風呂は何時までやってますかー?」
主人「夜の間は何時でもどうぞ。うちは、朝食時に大浴場の掃除をしていますので」
魔法使い「ありがたいねぇ、どうもー」
主人「では、こちらお部屋の鍵になります」ジャラジャラ
勇者(……二つ?)
魔法使い「じゃあ、こっちのもーらい!」ヒョイ
僧侶「それでは、勇者様、戦士さん、また明日……」
勇者(……ああ、男女で部屋を分けてるのか)
~宿屋・男部屋~
戦士「っはー、疲れたー」
勇者(……質素な家具に、木造の床と壁。掃除はいきわたっているらしい)
戦士「夕日も沈んじまったなぁ。風呂入る頃には、星が見えっかな?」
勇者(ベッドのスプリングはいまいち。俺の部屋のに比べたら、遥かに硬い)
戦士「……勇者、なにシーツの匂い嗅いでんの?」
勇者(洗剤の匂いと、日に干した匂いがする……。洗いたてだが、手触りはそこそこか)
勇者(これらを踏まえ、この宿屋の総合評価は――)
勇者「5点だな」
戦士「え、何点中5点?」
戦士「しかも、何の点数だよ」
勇者「この宿の評価だ。10点中5点」
戦士「100点中じゃなくて良かった……。ていうか、露天風呂に入る前に、評価決めるなよ!」
勇者「そうか、そういえばまだ風呂に入ってなかった」
戦士「というわけで、一緒に行こうぜ勇者。いやー、楽しみだなー、温泉」
勇者「ああ、じゃあ身体洗うの頼む」
戦士「はぁ? なんで? しかも俺が?」
勇者「なぜって……」
勇者「風呂に入る時は、下々の者が身体を洗ってくれるのだろう?」
戦士「なんなのその王子様発言」
戦士「16にもなって甘えたことを抜かすな! 自分でやるんだぞ! いいな!」
勇者(……そうか、人間界ではそういうことになっているのか)
勇者(となると、こいつが身体を洗うところを見て、覚えるしかないな)
勇者(まさか、勇者と入れ換わって、こんなことを学ぶはめになるとは思わなかった……)
勇者(しかし、人間界の温泉は初めてだな)
勇者(魔界のはいくつか行ったことがあるが、さて、どれほどのものか)
勇者(…………♪)
戦士「お、着いたぜー」
~露天風呂・男湯~
戦士「おお、いいねぇ。岩風呂じゃん」
勇者(湯が、無色透明……)
戦士「さっさと脱いで、浸かろうぜー。お、ここに効能書いてある。泉質はアルカリ性単純温泉……」
勇者(硫黄の匂いが、魔界に比べてはるかに薄い。あのむせ返るような匂いが好きだったんだが……)
戦士「へー、疲労回復や美容、切傷とか擦り傷の外傷にも効くってよー」
勇者(……温度は、41~2度くらいか。ぬる過ぎる。湯どころか水じゃないか)チャプ
戦士「お、湯加減見てるのか? 勇者ー」
勇者(何より、最も納得いかないことが一つ……)
勇者「なぜ、溶岩風呂じゃないんだ……っ」
戦士「勇者、ここは地獄じゃねえぞ」
~宿屋・女部屋~
魔法使い「いやっほー! ベッドー!」ボフン
僧侶「魔法使いさん、乱暴に使ったらベッド壊れちゃいますよ」
魔法使い「いいじゃないのよー。無礼講ー」
僧侶「それにしても、一人15Gはけっこうしますね……」
魔法使い「でも、露天風呂つきと思ったら、けっこう安い方じゃない?」
僧侶「わざわざ露天風呂つきの宿屋に、泊まる必要はないような……」
魔法使い「たまには、こういうのもいいでしょ? 心身ともに疲れをほぐすみたいなさ」
僧侶「しかし……」
魔法使い「僧侶ちゃん、そんなお堅い頭じゃ、大好きな勇者ちゃんを振り向かせられないよ?」
僧侶「ぅひゃい!?」ビビクッ
魔法使い「ふむ、図星からの奇声とみた」
僧侶「そ、そそそそんなことありません!」
魔法使い「きゃはは、僧侶ちゃん、分っかりやすーい」
僧侶「私は神に仕える身です! そ、そのような不埒な色恋沙汰など……!」
魔法使い「でも、僧侶ちゃんが勇者を見てる時って、ザ・恋する乙女の眼してるよ?」
僧侶「はうっ!」
魔法使い「まあ、あたしは、かなり序盤で気づいてたけどね」
僧侶「そ、そんな昔から……!」
魔法使い「あははっ、僧侶ちゃん、顔まっかー」
僧侶「からかわないでください!」
僧侶「だいたい、なんでこんな時に、そんなことを……」
魔法使い「だって、もう魔王戦よ?」
僧侶「それとこれと、何の関係が……」
魔法使い「――魔王を倒せば、冒険が終わる」
僧侶「……!」
魔法使い「冒険が終わったら、このパーティーも解散よね。きっと」
僧侶「ゆ、勇者様と離れ離れ……!」
魔法使い「だからさ、離れる前に、自分の気持ちを素直に伝えた方がいいんじゃない?」
僧侶「…………」
魔法使い「まあ、確認したいことがあったら、事前に聞いておくのも手よ?」
僧侶「それは、つまり、例えば……?」
魔法使い「うーん、そうねぇ……」
魔法使い「『勇者様は彼女いますか?』とか」
僧侶「~~~~っ!? き、聞けるわけがありませんっ!」
魔法使い「えー、告白前の常套句でしょうに」
僧侶「もう! 私、お風呂入ってきますからね!」
魔法使い「はーい、いってらっしゃーい」
僧侶「……? 魔法使いさんは、行かないんですか?」
魔法使い「あたしはもうちょい、夜が更けてからでいいや。ちょっと済ませたい用事もあるし」
僧侶「……そうですか」
魔法使い「あ? 一緒に入りたい? 温泉に浸かりながら、恋の悩み相談でも……」
僧侶「け、けっこうです! 間にあってます!」
バタンッ!
魔法使い「あーあー、行っちゃった。いやー、それにしても面白かったなー」
魔法使い「…………」
魔法使い「――さて、私も行かなきゃ」
もう今週来れないかなと思ったら、運よく来れました。
本日はここまでです。
読んで下さった方、コメント&乙くださった方、有難う御座います。
それでは、また来週。
本日はここまでです。
読んで下さった方、コメント&乙くださった方、有難う御座います。
それでは、また来週。
~魔王城~
魔王「っはー、大満足だったー……」
側近「喜んでいただけたようで何よりです」
魔王「夕食はさらにボリュームがあったなー。あれなんだっけ? あのメインディッシュ……」
側近「暗黒牛のシャリアピンステーキ、真紅ワインソースですね」
魔王「そうそう、それそれ! あれマジ最高だった。肉柔らかすぎて、超感動」
側近「お気に召されたのなら、また次回作らせますよ」
魔王「おお! 頼む! あ、それとさ、側近」
側近「はい、何か?」
魔王「少し、気になったことがあるんだけど……」
側近「――なるほど、会議中の殺気ですか」
魔王「ああ、誰のか分かんなかったから、少し気になってて……」
側近「…………」
魔王「むしろ、なんで殺気持たれなきゃいけないのか分かんないし」
側近「そうですか。分からないのならば、説明をする必要がありますね」
魔王「うん……、ん?」
側近「――魔物の中には、魔王様の座を狙っているものが多数います」
魔王「……え?」
側近「分かりませんか? 上昇志向、支配欲、出世欲、功名心、野心ってやつですよ」
魔王「はあ……」
側近「魔物や魔族といった輩は、そういった願望が、ひときわ強いんです」
魔王「……」
側近「だから魔王様は狙われやすいのです。同胞である魔物や、魔族からも……」
側近「幹部ともなれば、そういう野望を心に抱えながら、仕える者もいるでしょう」
側近「なので、普段から用心をお願いしますよ、魔王様」
側近「魔王様の寝首を掻いて、のしあがろうと企む輩は二百といますから」
魔王「…………」
魔王(魔王の奴、そんな環境で魔王なんかやってたのか……)
魔王(どんくらい魔王やってるって言ってたけ、たしか500年?)
魔王(……なんか、可哀そうだな)
魔王(あいつの周りに、心から信じられる奴って、どれくらい居たんだろう……)
魔王「なぁ、側近」
側近「何でしょうか」
魔王「魔王はいつから魔王やってたんだ?」
側近「5歳ですよ」
魔王「へー、5歳……。……5歳っ!?」
側近「魔王様が5歳の時に、魔王様のご両親は人間に殺されました」
魔王「…………」
側近「なので、幼いとはいえ、止む負えず一人息子を、魔王にする必要があったのです」
魔王「……そうか」
側近「ところで、魔王様は、魔王に飽きたから勇者をやりたい、とおっしゃったんですよね?」
魔王「ん、ああ。そうだけど?」
側近「昼間に聞いた時は、びっくりしましたが、今なら納得できます」
魔王「……というと?」
側近「魔王様はきっと、魔王以外の生活がしたかったんだと思います」
魔王「……うん。5歳の時から魔王やってたら、そりゃ飽きるし、他の事したくなるよな」
側近「…………」
側近(……本当は、すぐにでも城に帰ってきてほしいですが、)
側近(魔王様の気が済むまで、羽を伸ばしてもらいたいのも、本心ね……)
側近(……魔王様、今頃どうしてるかしら?)
~露天風呂・男湯~
戦士「よーし、旅の疲れを癒すぞー」ザバッ
勇者(……なるほど、最初に頭から湯をかぶる、と)ザバッ
戦士「露天風呂だと、テンションあがるなぁ」
勇者(シャンプーを適量手にとり、手の平を擦り合わせて泡だてて……)
戦士「……勇者、さっきから何でこっち見てるんだ?」
勇者(……しまった、不審に思われたか。なんとか別の話に切り変えないと……)
勇者「……その、戦士はどうして、戦士になろうと思ったんだ?」
戦士「え、おれ? いやー、話すと長くなるんだけどさー」
勇者(……しまった、面倒くさいことを聞いてしまったようだ)
戦士「おれ、元々は戦士じゃなかったんだよ。城に仕えてた兵士だった」ワシャワシャ
勇者(指を立てて、泡だてたシャンプーで髪を洗う、と……)ワシャワシャ
戦士「子供の時から力自慢で、町のガキ大将みたいなこともしてたんだよ、おれ」ワシャワシャ
勇者(前髪、側頭部、後頭部、耳の裏……)ワシャワシャ
戦士「だから、こういう仕事合ってるかなーと思ったんだけど……」ワシャワシャ
勇者(……自分で頭を洗うと、人にやってもらう時ほど、そんなに気持ちよくないな)ワシャワシャ
戦士「上司と喧嘩しちまって、退職処分になったんだよね」ザバー
勇者(充分洗えたら、桶の湯をかぶって、泡を洗い落とす)ザバー
戦士「それからは、傭兵もどきでもやろうかなーって酒場に行ったんだけど」
勇者(次はリンスを出して……、リンスは泡立たないのか)
戦士「全然仕事来なくて、酒に溺れる生活になって……」ワシャワシャ
勇者(シャンプーと同じ要領で洗う……)ワシャワシャ
戦士「そんな時に、おまえに会ったんだよな」
勇者(よし、頭の洗い方をマスターしたぞ!)
――――――――――
―――――…
―……
「なぁ」
戦士「……ん」
「おっさん、飲みすぎはよくないぜ」
戦士「だぁれが、おっさんだー……。おれはまだ、27だ」
「そっか、ちなみにオレは今日16になったんだ」
戦士「はっ、酒も飲めねぇ餓鬼が、酒場なんか来るなよ……。とっとと帰れ」
「そういうわけにはいかないんだ」
戦士「あぁ?」
勇者「オレ、仲間を探してるんだよ。魔王を一緒に倒すために」
戦士「……するってぇと、お前が噂の勇者か」
勇者「ああ、そういうことだ」
戦士「世も末だなぁ。こーんな餓鬼に、世界を託すなんてよ」グビッ
勇者「だーかーらー、もう飲むなって。オレだって、一人じゃ無理だと思うから、仲間探してるんだよ」
戦士「一人でも百人でも無理なもんは無理だ。あきらめろ、餓鬼ぃ」
勇者「――まだ始まってもないのに、あきらめられるかよ」
戦士「…………」
勇者「オレだって、魔王と闘うなんて、正直怖いよ」
勇者「でも、誰かが闘わなきゃ、平和は訪れないんだ」
勇者「オレはこの世界に住むみんなを助けたい。でも、それは、オレの力だけじゃできない」
勇者「力を貸してくれないか? あんたみたいな強い人の力が、必要なんだ」
戦士「…………」
勇者「…………」
戦士「…………」
勇者「…………」
戦士「……」グビーッ
勇者「だからもう飲むなって!」
戦士「プハ……、そんな怖い顔すんなよ。こいつは最後の一杯だ」
勇者「へ?」
戦士「つまり、この酒場で酒に溺れる生活も、もうおさらばってことだ」
勇者「……ってことは」
戦士「行こうぜ、勇者。魔王を倒すんだろ?」
勇者「……! おうっ!」
―……
―――――…
――――――――――
戦士「……あれから2カ月かぁ。長かったような、短かったような」
勇者「…………」
戦士「なんにせよ、魔王を倒したら、もうこんな生活もおしまいだな」バシャァ
勇者「…………」
戦士「けっこう楽しかったんだけど、しゃあないよなー」
勇者「……おい」
戦士「ん、なに?」
勇者「リンスが目に入った時は、どうしたらいいんだ? 痛くて困る」
戦士「おまっ!? そういう時は我慢しないで、洗い流すんだってば!」バシャバシャ
~村はずれの小屋~
……コンコンコン
???「どうぞ」
魔法使い「ちわー、お久しでーす」
???「こんな夜更けに誰かと思ったら、貴女でしたか。大きくなりましたねぇ」
魔法使い「ざっと20年ぶりかしら。大賢者様もとい師匠も、元気そうで何よりね」
大賢者「ええ。すこぶる元気ですよ。それより、今宵はどのような用件ですか?」
魔法使い「近くまで来たから寄っただけよ」
大賢者「ああ、故意に近くまで来たんですよね。古代の迷宮から、呪文を使って……」
魔法使い「……何で知ってんのよ」
大賢者「各地に使い魔を飛ばしてるので」
魔法使い「のぞきは最低よ」
大賢者「老後のささやかな楽しみですよ。ご堪忍」
魔法使い「それより、まだ魔法で若作りなんかしてんの?」
大賢者「この姿だとけっこう便利ですから」
魔法使い「いい加減あきらめて、実年齢で生活したらいいのに」
大賢者「そう言われましても、わたし永遠の“ナインティーン”ですし」
魔法使い「“ナインティ”の間違いでしょ?」
大賢者「これは一本取られましたね」
大賢者「それにしても、本当に大きくなりましたね。あの頃とは見違えるようです」
魔法使い「20年も経ったら嫌でもそうなるわよ」
大賢者「あの頃……、あなたは確か10歳。泉の近くで泣きべそかいてたのを良く覚えてます」
魔法使い「どうかしてたね、私も。男の子との喧嘩に負けたーって大泣きして」
大賢者「そこを、わたしに見つかって、『仕返ししたいから魔法おしえて』ってなって……」
魔法使い「なんでそんなによく覚えてるのよ」
大賢者「これでも賢者ですから」
魔法使い「相変わらず、喰えないじじいね」
シュンシュン……
大賢者「あ、ぐっどたいみんぐ。お茶が沸きましたよ」
魔法使い「私が来ると分かってたから、沸かしてたんでしょ。白々しくて腹立つわ」
……コポコポコポ
大賢者「……しかし、その時の男の子どうしてますかね」
魔法使い「…………」
大賢者「隣町に住んでた子でしたっけ。この村でも有名なガキ大将だったような」
魔法使い「…………」
大賢者「あの魔物達の襲撃以来、みんなバラバラに移動してしまったから、再会の見込みは薄いですね」
魔法使い「…………」
魔法使い(……どっこい、かなり近いところにいたんだけどね)
魔法使い(さっき意識して見るまで、気づかなかったわ。まさか、あんなにでかくなってるとは)
戦士「べーっきしょん!!」
勇者「どうした、戦士。風邪か?」
大賢者「はい、お茶どうぞ」
魔法使い「ありがと……。……あ、この匂い」
大賢者「わたしのオリジナルブレンドの薬草茶ですよ」
魔法使い「懐かしいわ。私が子供のときにも、出してくれたっけ」
大賢者「ええ。少々苦味が残るので、あの時はよく『不味い』と連呼してくれましたよね」
魔法使い「師匠って、本当に細かいことばかり覚えてるわよね」
大賢者「これでも賢者ですから。それで、お味の方は?」
魔法使い「美味しいわ。もう砂糖無しで飲めるほど、大人になっちゃったんだね、私……」
大賢者「それで、今宵訪問した本当の用件は何ですか?」
魔法使い「ああ、それね。どうしても大賢者で博識な師匠に、聞きたいことがあったのよ」
大賢者「わたしで助けられることなら、なんなりと。短かったにしろ、師弟関係でしたからね」
魔法使い「助かるわ」
大賢者「で、何を聞きたいんですか?」
魔法使い「――勇者が本物か偽物か、確かめる方法を、知りたいんだけど」
本日はここまでです。
いつも読んでくださり有難う御座います。
感想とか乙とかも書きこんで下さって、有難う御座います。
また今週来ます。
いつも読んでくださり有難う御座います。
感想とか乙とかも書きこんで下さって、有難う御座います。
また今週来ます。
~露天風呂・女湯~
僧侶「…………」チャプ
僧侶「…………」
僧侶(……魔王戦が終わったら、勇者様と離れ離れ)
僧侶(……そんなの、さみしすぎる)ポロ…
僧侶「あ、駄目! 泣いちゃ駄目です、私!」ゴシゴシ
僧侶「…………」
僧侶(やっぱり、はっきりと言うべきでしょうか、私の気持ちを……)
僧侶(……でも、勇者様は私のことどう思ってるかな)
僧侶(……も、もし嫌いだったとしら……、すごく泣くんだろうな、私)
僧侶(でも、もし万が一好きって言われたら……!!!)
僧侶「……キャー…」カァアア
~村はずれの小屋~
大賢者「……それは、とどのつまり、どういうことなんですか?」
魔法使い「そのままの意味よ。今の勇者は偽物じゃないかと、私は疑っているの」
大賢者「偽物……? そこに至るまでの経緯を聞きたいのですが」
魔法使い「そういう、説明がめんどいところこそ、覗き見しといてよ」
大賢者「まあまあ、そう言わずに」
魔法使い「はいはい。――昨日の魔王戦以降、勇者の様子がおかしいのよね」
大賢者「具体的に、どんな風におかしいんですか?」
魔法使い「うーん、うちの勇者って、基本熱血系なんだけど。今日になって、かなり冷めてるのよ」
大賢者「ははあ。態度が激変したと」
魔法使い「うん。生き返って一言二言交わした時に、『変だなー』ってまず思ったわ」
大賢者「ですね。例えるなら、あなたが一晩で、完璧な淑女らしさをマスターしてるといったところですか……」
魔法使い「私をなんだと思ってるのよ」
大賢者「いやあ、そりゃあさすがに変とも思いますよねー」
魔法使い「なんで質問スルーしてんのよ」
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