元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
351 = 1 :
魔王「しょうがないなぁ……、はんこ探すかぁ……」
側近「頑張ってくださいね、魔王様」
魔王「ん? 側近は助けてくれないの?」
側近「私は私で別件の仕事がございますので、それは無理なご注文です」
魔王「えーーー!? 頼むよ、こんな時こそ側近の力が……!」
側近「自分で何とかして下さい。もとい、これを期に、はんこ以外の物の場所覚えてください」
魔王「……また、そんなこと言ってぇ」
側近「では、私はそろそろこの辺で」
魔王「あ、ちょっと……!」
バタン……
魔王「おいてけぼりかよ、畜生……」
魔王「しゃあないなー……、自分で探すかぁ」
352 = 1 :
???(…………)
???(ククク……、側近は行ったか)
???(この時間帯、思った通り魔王が一人きりになったな)
???(これで、彼女の妨害を受けずに、魔王を仕留めることができる……)
???(……それにしても)
魔王「……うわー、箪笥の中、似たような服ばっかりじゃん」ガサガサ
魔王「しけてんなぁ。なんか、装備品の一つでも入れとけっての」ゴソゴソ
???(魔王のやつ、……なぜ朝っぱらか、部屋の箪笥を引っかきまわしているんだ?)
353 = 1 :
本日はここまでです。
いつも読んでくださりありがとうございます。
また今週来れると思います。
354 :
よし、まってる。文章読みやすくて俺は好きだぜ!
355 :
動揺する側近、かわいいww
356 :
勇者系で一番楽しみにしてる
乙
358 :
側近の服装が妄想できない…
359 :
まってるよ!!
360 :
~古代の迷宮~
勇者「よし、行くか」
戦士「はっはー、楽しみだなぁ」
僧侶「……今日は、あのゴーレム出てきませんね」
魔法使い「この間の一体限りだったんでしょうね。ある意味ボスだったんじゃない?」
戦士「まあ、一番怖いやつはもういなくなったってことだよな! 楽勝だな!」
勇者「……そいつはどうかな」
戦士「へ……?」
勇者「見てみろ」
361 = 1 :
戦士「げぇっ! なんだありゃ!?」
僧侶「滑る床ですね。かなりたくさんあります」
魔法使い「端っこには落とし穴も見えるなぁ。一歩でも道順間違えたら、落ちるわね」
勇者「加えて、天井を見てみろ。魔封じの魔法陣だ。このすべる床地帯では、呪文は使えないようだな」
戦士「なんだそりゃぁああああ!!?」
勇者(古代人め、初っ端から複雑なトラップを仕掛けてきたな)
勇者(……退屈しなさそうだ)
362 = 1 :
~西の村・酒場~
老人「……っふーい、朝から飲む酒も格別じゃのぉ」
――ガチャ カランカラーン
老人「お、来たな? おーい、ここじゃここじゃ」
少年「…………」
老人「そんなに怖い顔するでない、ほれ、ここ座れ」
少年「……ハァ」
老人「そう、思いっきりノリ気じゃない顔するでないぞ。酒が不味くなる」
少年「……朝っぱらのせいか、私たちしか客がいないじゃないですか」
老人「その方が好都合じゃろ。無闇に人間に姿を見られずに済むしな」
少年「……翼竜、こんな辺鄙な村に呼び出すとはどういうことですか?」
老人「これ。変化中に名を呼ぶな、海魔人。なあに、ここの地酒は上手いと評判なんじゃよ」
363 = 1 :
少年「……ああ、奢ってほしいんですか?」
老人「それもあるの」
少年「じゃあ、お金だけあげますから、僕帰りますよ」
老人「待て待て。せっかくだし、お主も飲んでけ」
少年「こんな姿で飲めるわけないでしょう」
老人「うおおーい、マスター。わしの孫にミルクついどくれー。あと、地酒をもう二瓶!」
少年「勝手に注文しないでください! しかも、孫だなんて……!」
老人「まあまあ、そういう設定もいいじゃろ」
マスター「どうぞ……」ス…
老人「さすがマスター、早いのぉ」
少年「……ったく、付き合うのは、この一杯だけですよ」
364 = 1 :
老人「しかし、お主。なぜに、そんなちびっこの姿に化けたんじゃ?」
少年「しょうがないでしょう。海の魔物が、化けながら陸上に上がるのは、大変なんですよ」
老人「ははぁ、魔力温存のための省エネ化というわけじゃな」
少年「港町とかだったら、もう少し大きめに化けられたんですけどね」
老人「なるほど、海が近いからの」
少年「それが、こんな山奥に呼びだすだなんて……」
老人「仕方なかろう、ここの地酒はここでしか飲めぬのじゃ」
少年「つまり、貴方のおかげで、僕はこんな姿になるハメになったわけですね」
老人「いかにもその通りじゃ」
少年「じゃあ、これ飲んで、さっさと海に帰らせていただきます」グビーッ
老人「こりゃー! 一気飲みするでない! お主に話があるんじゃよ!」
365 = 1 :
少年「プハッ……、なんですか? 話って」
老人「お、聞いてくれるのか。実はな、面白い報告があったんじゃよ」
少年「……といいますと?」
老人「うちの軍で、昨日勇者と戦った奴がいてな、その時の報告なんじゃが」
少年「内容は?」
老人「勇者が戦闘から逃げる際、“魔族語”を話したそうじゃ」
少年「……魔族語!? 勇者が!?」ガタッ
366 = 1 :
少年「……確かに魔族語だったんですか?」
老人「おうとも、わしの部下が聞いたんじゃ。間違いない」
少年「しかし、魔界でしか使われていない魔族語を、人間が使えるはずが……」
老人「もちろん、ありえない。じゃが、実際に話したそうじゃ」
少年「でも、余程のきれものでもない限り、人間が魔族語を覚えるなんて、一生かかっても無理でしょう?」
老人「いかにも。なんともきな臭い話じゃが、事実なんじゃよ。海魔人」
少年「ちなみに、勇者はなんと言ったんですか?」
老人「えーっと、確かなぁ……」
老人「『見逃せ、俺は仲間だ。』……だったかの?」
少年「は? 仲間……? なに言ってるんですか、勇者のくせに」
老人「確かに、下手な冗談にしか聞こえんよな。――言ったのが“本物の勇者”だとしたらな」
少年「!?」
367 = 1 :
少年「翼竜……、貴方は何を言いたいんですか?」
老人「ふむ。わしも部下の報告しかもらっとらんから、憶測しかできんのじゃがの」
老人「おそらく今、魔界の者が勇者になりすましておる」
老人「原因、経緯は不明じゃが、魔族語を話せる時点で、そう思っていいじゃろう」
老人「そう思えば、捨て台詞の内容も納得がいく」
老人「そして、本物の勇者はどこか別のところにいるはずじゃ」
少年「……話だけ聞いてると、信じがたいですね」
老人「じゃが、もしこれが本当ならば、チャンスだとは思わんか?」
少年「なんのチャンスですか」
老人「無論、魔王の座を奪うチャンスじゃよ」
少年「……ほう」
368 = 1 :
老人「自力で、魔王を殺してしまうというのも手だが、人間界には専門家がいるじゃろ?」
少年「……勇者のことですね?」
老人「そこで、わしの計画はこうじゃ。まず、どこかにいる本物の勇者を見つけ出す」
少年「それで?」
老人「味方面して、一緒に魔王を倒そうと言って仲間になる。助けた恩もあれば、了承しないはずがない」
少年「なるほど。あの勇者の性格なら、可能な話だ」
老人「そして、勇者が魔王を倒した時に、隙を狙って勇者を殺す。そうすれば――、」
少年「……魔界どころか、人間界をも征服できる、ということですね」
老人「理解力が早い奴は、話が早くて助かるのぉ」
369 = 1 :
少年「ようやく、貴方が僕を呼んだ理由が分かりましたよ」
老人「むぅ?」
少年「貴方の狙いは、僕の持っている“しるべの宝玉”ですね?」
老人「おお! その通りじゃ!」
少年「以前、人間の船を襲って手に入れた宝玉。使えば、探し物や探し人の居場所が分かる効果があります」
老人「うむ。いいアイテムじゃから、勇者たちも欲しがるじゃろうな」
少年「しるべの宝玉があれば、伝説の武具の居場所も、すぐ判明するでしょうからね」
老人「そして、本物の勇者を探すこともできる。そこで提案じゃ、海魔人」
少年「何ですか?」
老人「――わしと同盟を組まぬか? 魔王と勇者を殺してしまえば、全世界はわしらのモノじゃ」
少年「相変わらず、悪だくみが得意ですね」
老人「だてに長生きしとらんからの」
少年「貴方のことは嫌いですが、貴方のそういうところは、評価してますよ」
370 = 1 :
老人「くくく、それでは、交渉……」
少年「ええ、――決裂です」
老人「なにっ!?」
少年「なに驚いてるんですか? 別に貴方と組む必要はないんです」
老人「おい、海魔人!」
少年「だって、僕が宝玉を使って、僕がその計画を遂行すればいい話でしょう?」
老人「しかし、わしは知恵を貸したぞ!?」
少年「知りません、そんなの。貴方が一方的に話してきただけですよ?」
老人「ぬぅうう!」
少年「情報量として、酒代くらいは奢ります。僕が世界を手にするのを、酔いながら見てるといいですよ」
老人「……この糞餓鬼がぁ!」
少年「そんなに怖い顔しないでくださいよ。では、僕はそろそろ行きますね」ガタッ
371 = 1 :
老人「……餓鬼が、ここから無事に出れるとは思うなよ?」
少年「え――っ」
――ヒュン ドスッ
少年「……ぐぁ!? ナイフ、だと……? あ、」グラッ
マスター「申し訳御座いません、海魔人様」
老人「ふぉーっほっほっほ! 海魔人め、お主が宝玉を素直に渡すとは、最初から思っとらんわ」
少年「……貴様! そのマスターは……!」
老人「わしの腹心の部下――毒竜じゃよ。こいつの毒はきっついぞぉー?」
少年(……駄目だ、立てない! 身体が、痺れ……)
老人「毒竜は優秀な部下でのぉ。あらゆる毒を作りだすことができるんじゃ」
マスター「ナイフに麻痺毒を塗らせていただきました。あと3分もすれば、自白作用も効いてくるかと」
少年(自白作用だと……! 翼竜のやつ……っ!!)
老人「宝玉のありかさえ教えてもらえば、お主なんか要らぬわ。爪が甘いのぉ、海魔人」
372 = 1 :
老人「さぁて、自白してもらった後は、どうしてやろうかの?」
少年「……!」
老人「細切れにして、竜どもの餌にしてやろうかの? いや、生臭くて誰も食わんじゃろうなぁ?」
少年「……っ……!」
老人「お主の領地は、ごっそりいただいて、お主の部下どもも、わしのモノになって……」
少年「……~っ!」
老人「お主の幹部の座は、この毒竜にでも継がせようかのぉ? ふぉーほっほっほ!」
少年「…き、……さまぁっ!」
老人「んーー? ほほっ! こりゃ愉快じゃ! 泣きべそかいてるぞ、海魔人が!!」
少年「この……僕に、こんな、恥を……っ!」
老人「悔しくてたまらんのじゃな? 分かりやすい顔じゃ。愉快愉快!」
マスター「翼竜様、そろそろお時間です……」
老人「おお、自白の時間じゃな。では、問わせてもらおうか。海魔人、宝玉のありかは――」
――ガチャ カランカラーン
373 = 1 :
少年「!?」
マスター「…………」
老人「何者じゃ!」
側近「――翼竜、後輩いじめもいい加減になさい?」
老人「側近じゃと!? 何故、この場所が分かった!?」
側近「貴方の悪企みについては、貴方の腹心の部下が、教えてくれたわ」
老人「なにっ!? 毒竜、貴様ぁ! 裏切ったな!?」
マスター「先に魔王様を裏切ろうとしたのは、貴方です。翼竜様」
老人「っぐぅ、今まで良い待遇させてやったのに、とんだ仕打ちじゃな!?」
マスター「自分は……、貴方の部下である前に、魔王様の部下ですから」
老人「ぬぅうううっ!」
374 = 1 :
側近「海魔人、これを……」
少年(毒消し草か……、助かる)
側近「翼竜、貴方を魔界軍法会議にかけます。魔界まで同行していただけるかしら?」
老人「……くっ! おのれぇ!」ボムッ!
少年(……変身を解除した!?)
翼竜「そうみすみすと、ついていく馬鹿がおるか! 今回は、退かせてもらうぞ!」バサァ
マスター「逃がさん」ヒュッ
翼竜「――ぅごっ!? ぁあ、」ドサ
マスター「海魔人様に放ったのと、同じ毒ナイフです」
側近「よくやったわ、毒竜」
375 = 1 :
翼竜「……くそ、ぅう」
側近「翼竜は私自ら、魔界に連行します。毒竜、海魔人の手当てをお願い」
マスター「了解しました」
翼竜「ぅ、ううっ、畜生ーーーー!」
――ガチャ カランカラーン
マスター「……翼竜様」
少年「なあ、毒竜」
マスター「海魔人様。……毒は、抜けましたか?」
少年「毒消し草が効いている。だが、さっきはよくもやってくれたな!?」
マスター「自分は、申し訳御座いませんと言いましたが?」
少年「口の減らない奴め、気に食わないな」
マスター「……本当に申し訳御座いませんでした、自分の上司のせいで」
少年「…………」
376 = 1 :
少年「それで、貴方はこれからどうするんですか?」
マスター「どう、といいますと?」
少年「何か裏があるんでしょう? 僕を助けた理由が」
マスター「…………」
少年「幹部席への昇進か、はたまた、君が宝玉を使って、翼竜の計画を遂行するか」
マスター「……自分は、曲がったことが嫌いなだけです」
少年「つまらない人ですね、貴方。実力があるのなら、のし上がればいいのに」
マスター「…………」
少年「まあ、それも良しとしましょう。今回は、助けてくれて、有難う御座います」
マスター「……いえ、自分は何もしていないです」
377 = 1 :
マスター「今回の件も、暗黒剣士様からご助言いただいたことですし……」
少年「……え? 何だって?」
マスター「翼竜様から、この件について聞く前に、暗黒剣士様から教えてもらってたんですよ」
マスター「回廊ですれ違った時に、翼竜様から計画を聞いているかと尋ねられて……」
マスター「何も聞いていないと答えたら、翼竜様が海魔人様を嵌めて、魔王の座を狙っていると聞かされ、」
マスター「自分のとこにも、話が行くだろうと暗黒剣士様はおっしゃいました」
マスター「そして、ただ上司の命令を聞くのではなく、自分が最も正しいと思う人に従えと、言われました」
マスター「だから、今回は翼竜様ではなく、魔王様についたのです」
378 = 1 :
少年「……暗黒剣士は、翼竜の計画をどこで聞いたと言っていましたか?」
マスター「酒場に同席した時に、翼竜様が酔った拍子に話したのを聞いたそうです」
少年「側近に、知らせるように伝えたのも、暗黒剣士でしたか?」
マスター「ええ、その通りです」
少年「そうですか、良く分かりました……」
少年「――暗黒剣士め! 僕らを囮に使いやがったな!」
マスター「え……?」
少年「分からないのか!? あの野郎は、魔王と側近を離すために、君に計画を話したんだ!」
マスター「……!」
少年「翼竜の計画を利用して、魔王を討つチャンスを意図的に作ったんだよ、あいつは!」
マスター「それでは、自分は……」
少年「踊らされたんですよ。貴方も、僕も、翼竜も、側近も」
マスター「そんな、まさか……!」
379 = 1 :
少年「今頃、あいつは魔王を殺しに行ってるはずだ。側近が魔界から帰ってくる前に」
マスター「……魔王様が危ない!」
少年「魔王はどうでもいい! それより、魔王の座が……、うっ」クラ…
マスター「海魔人様!?」
少年「くそっ、海から離れてるから、体力が……! 毒竜、海水持ってこい!」
マスター「……しかし」
少年「早く、暗黒剣士を止めに行かないと! おい、毒竜早くしろ!」
マスター「海魔人様、実は……大変、おっしゃりにくいんですが」
少年「なんだ!? 早く言え!!」
マスター「……自分、翼が生えてませんし、呪文も使えません」
少年「この役立たずーーーー!!!」
380 = 1 :
今日はここまでです。
読んでくださりありがとうございます。
また来週きます。
381 :
蛇みたいな感じか
382 :
ワームとかそっちの系列なら確かに翅はないわなww
385 :
塩水つくって飲ましちゃりー
386 :
ワームも竜って言う?
翼の無い竜と言えばサーペントあたりが該当しそうだけど。
387 = 1 :
>>379
日本語間違えてましたので訂正
×マスター「海魔人様、実は……大変、おっしゃりにくいんですが」
↓
○マスター「海魔人様、実は……大変、申し上げにくいんですが」
388 :
×おっしゃりにくい
○申し上げにくい
389 :
乙乙!
390 :
ワームもドラゴンの一種を指すこともあるらしいぞ
ワームのwikiに書いてあったわ
391 :
~古代の迷宮~
勇者「……道が入り組んでいるな」
僧侶「あれ、ここさっきも通ったような……」
魔法使い「えーと、さっきはどっちを通ったっけ? 右? 左?」
戦士「わかんねー時は、まっすぐ行きゃいいんじゃねーの?」
魔法使い「ばかねー、それで同じ道通っちゃったら、二度手間じゃない」
戦士「馬鹿っていうな! これでもおれは、考えてモノ言ってんだぞ!」
勇者(……ここまで、信憑性のない台詞も珍しいな)
僧侶「あ……、皆さん!」
まもののむれが あらわれた! ▼
392 = 391 :
戦士「くそっ、またか!?」
魔法使い「数が多いわね。魔法で一網打尽にしてやるわ」
僧侶「勇者様! ご指示を!」
勇者「……戦士は俺とあの魔術傀儡を叩け。僧侶と魔法使いはあの合成獣に攻撃魔法を……」
勇者(意外と人造魔物が多いな……、倒しても倒しても出てくる)
勇者(罠も多いし、先ほどはパズルを解かないと開かない扉もあったし……)
勇者(古代人め、そんなに伝説の武具の元へ行かせたくないのか)
勇者(俺は別に勇者じゃないから、武具はどうでもいいと思っていたが……)
勇者(こうまで守りに徹されると、――俄然欲しくなってきたぞ)
393 = 1 :
~魔王の部屋~
魔王「こ……、こういう絵画の裏とかに……! ……ない」
魔王「じゃあ、ベッドの下! ……ない」
魔王「あ、分かった! 箪笥の裏にころころ転がったりしたんじゃ……! ふぬぬぬ……!」グググ…
魔王「駄目だー、一人じゃ動かせねぇ……。なんか細長いモノとか……」
???(……なにやら、先ほどから探しものをしているらしい)
???(まあ、ずっとここで眺めているのも、時間の無駄だ……)
???(早々に殺ってしまおう)
394 = 1 :
――キン ズバァッ
魔王「え……」
――ガラガラガラ
魔王「な、なんだ!? 突然、壁がバラバラに切れ……っ」
???「………!」ビュッ
魔王(誰か突っ込んでくる! こいつは!?)
――ガキィイイン!
???「ちっ、まさか剣で防御されるとは……」
魔王「お前は!?」
暗黒剣士「貴様の首を落としに来た者だ。魔王よ」
395 = 1 :
魔王(何て速さだ……! 壁際から、一瞬でオレの間合いに!)
暗黒剣士(初手で致命傷を負わせるつもりだったが、まさか防がれるとは)
魔王(さっき壁を粉々にしたのも、まさか剣で……!? すごい剣士だ!)
暗黒剣士(普段から、剣を振るう者でないと出来ない防御。だが魔王は、それほど頻繁に剣術を鍛えていただろうか)
魔王(とにかく――)
暗黒剣士(――まあいい)
魔王「いったい何のつもりだ、暗黒剣士!」
暗黒剣士「貴方を殺しに来たのだと、言ったはずだが?」
396 = 1 :
魔王「ていうことは、会議中に殺気を放ってたのはお前だったのか」
暗黒剣士「隠したつもりだったんだが、鋭い魔王だ」
魔王「とりあえず、聞かせろ。なんでオレを殺しに来たんだ!?」
暗黒剣士「貴方のぬるいやり方が気に入らない。ただそれだけだ」
魔王「ぬるいやり方……?」
暗黒剣士「ふん、ずいぶんと白々しい台詞を吐く」
397 = 1 :
暗黒剣士「そもそも、魔王軍による人間界の侵攻は、長きにわたって試みられている」
暗黒剣士「歴史上、貴方よりもずっとずっと前の魔王から、人間と魔王軍の戦いは繰り返されてきた」
暗黒剣士「特に貴方は、魔王の中でも強大な力を持っている」
暗黒剣士「ご両親の死を境に、幼少期から死に物狂いで力を求めた結果だろうな」
魔王「…………」
暗黒剣士「しかし貴方は、その力を持て余している」
暗黒剣士「侵攻は低レベルな魔物たちにばかり任せて、自分から大きく動こうとする気配など全くない」
暗黒剣士「あの勇者だって、その気になれば、骨も灰も遺さず焼き払えるはずだ」
魔王「…………」
暗黒剣士「何時まで、まどろっこしい手を使い続けるつもりだ、魔王」
暗黒剣士「――貴方が本気を出せば、脆弱な人間どもを殲滅する為に、二日も要らないはずだ」
398 = 1 :
魔王「……それがオレを殺す理由か」
暗黒剣士「そうだ、貴方が魔王でい続けたら、千年経っても人間界を侵略できない」
魔王「…………」
暗黒剣士「だから、魔王が変わる必要があるんだ。頂点が変わらねば、この状況も変わらん」
魔王「…………」
暗黒剣士「ゆえに、魔王の座を空けろ。無能の魔王め――」ヒュッ
魔王「いやだね!」ガキィン!
暗黒剣士「何故だ?」
魔王(……ここで勇者の姿だったら、「てめぇなんかに、人間界は渡さねぇ!」って言えるんだけどなー)
399 = 1 :
魔王「……理由は、お前と同じだ。オレもお前のやり方が気に入らない」
暗黒剣士「そうか。どうせ説得には応じないとは、思っていた」
魔王「壁切って登場した時点で、説得で解決するつもりなかったろ?」
暗黒剣士「まあな。それゆえ、容赦なく、死に至らしめることにしよう――」
――ズバッ キィン!
魔王(凄まじい剣さばき! こっちが、防戦一方になってる!)
暗黒剣士(魔法や息の攻撃を使ってこないな。好都合だが、なにゆえ……)
魔王(しかも、的確に急所を狙ってくる。……押されている!)
暗黒剣士(しかし、魔王はここまで剣術に長けていただろうか? なにか違和感が――)
魔王(もう向こうのペースに飲まれてるな。なんとか戦いの流れを……)
暗黒剣士(まあいい、確実に仕留めることが、最優先事項――)
400 = 1 :
魔王(……こんな時、魔王ならどうしてた?)
魔王(思い出せ、あいつとの戦闘を! あいつならどう戦う……!)
魔王(…………!!)
まおうは こごえるふぶきを はいた!
あんこくけんしに 139のダメージ!! ▼
暗黒剣士「ぐぉっ!?」
魔王「……へへ、思い出したぜ。確か、こんな感じだった」
魔王(オレや戦士が、近距離戦に持ち込もうとした時、)
魔王(魔王は、呪文や息攻撃で、オレ達を牽制し、近づけないようにしていた)
魔王(つまり、距離さえ稼げれば、あの剣士に勝てる!)
魔王(あいつに何度も負けた経験が、こんな風に生かされるとはな……)
みんなの評価 : ★
類似してるかもしれないスレッド
- 魔王「お前、実は弱いだろ?」勇者「……」 (333) - [48%] - 2016/6/11 10:15 ★
- 提督「俺の嫁艦をバカにすると言うのか?」 (218) - [47%] - 2016/3/17 7:15 ☆
- 魔王「助けてくれぇ勇者ぁ!」 (76) - [45%] - 2018/10/15 2:47
- 姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」 (815) - [45%] - 2012/7/11 15:45 ★
- 上条「そろそろ怒っていい?」 イン「ん?」 (465) - [43%] - 2011/5/30 6:31 ★★★
- 魔王「余は何をやっておるのだ……」 (827) - [42%] - 2012/1/15 14:30 ★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について