元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
251 = 1 :
大賢者「でも、それだけでは、疑う要素にはならないのでは?」
魔法使い「そうね。だからその時は、勇者には深くは突っ込まなかったわ」
大賢者「序盤でかまをかけておくと、あとあとが怖いですからね」
魔法使い「だから、当面、勇者を“疑っていない”ポーズをとることにしたの」
大賢者「潜伏からの真偽特定ということですか。考えましたね」
魔法使い「『疑ってませんよー』って雰囲気出してたら、向こうも油断すると思ってね……」
魔法使い「でも、何もしなかったら、向こうも簡単に尻尾を出さないだろうなーと思ってさ」
大賢者「ふむ……」
魔法使い「……せっかくだし、いきなり勇者のお母さんに会ってもらったわ」
大賢者「なるほど、身内の眼に頼りますか」
魔法使い「でも、特になんもなかった。お母さんもなんも言って無かったし」
大賢者「予想通りの収穫はなかったんですね」
252 = 1 :
魔法使い「さすがに、お母さんは気づいてくれると思ったんだけどね」
大賢者「切り札が一枚消えましたね」
魔法使い「うーん、勇者のお母さん、けっこうおっとり系だからなぁ……」
大賢者「気づいていなかったか、あるいは気づいてて言わなかったか……」
魔法使い「どちらにしても、勇者のお母さんって大物かもね」
勇者母「はっ……くしゅん!」
勇者母「あら大変、ポークソテーに胡椒かけすぎちゃったわ」
253 = 1 :
大賢者「しかし、勇者が本物だから、お母様が何も言わなかったというのも考えられるのでは?」
魔法使い「まっさかー、この短期間であんなに落ち付き払えるもんですか、あの勇者が」
大賢者「話を整理すると、その勇者とお母さんの件、四通りの答えがでる可能性がありますね」
魔法使い「四通り?」
大賢者「1・勇者は本物なので、お母様は何も言わなかった」
魔法使い「ふんふん」
大賢者「2・勇者は偽物で、お母様も気づかなかった」
魔法使い「ほうほう。あ、私は2派ね」
大賢者「3・勇者は偽物で、お母様は気づいていたけど、何も言わなかった」
魔法使い「3だとしたら、お母さんに聞きに行くのが早道かもね」
大賢者「でも、回答が4だとすれば、その選択は危険ですよ」
魔法使い「は? じゃあ、4って何よ」
254 = 1 :
大賢者「4・勇者は偽物で、お母様も “偽物” だから、偽勇者をかばって何も言わなかった」
魔法使い「 」
魔法使い「……ちょっと! 変な空想やめてよ! 鳥肌立った!」
大賢者「確率だけに焦点を合わせるなら、こんな仮説も作れるんですよ」
魔法使い「余計なことすんな! 今、勇者について話してるんでしょーが!」
大賢者「これは失敬。で、他に勇者を疑う要素はあるんですか?」
255 = 1 :
魔法使い「そうねえ、たとえば、戦闘中なのにボーっとしてることもあったし、」
魔法使い「いつもガンガン攻めろみたいな戦法のはずが、今日に限って『逃げる』なんて指示だすし、」
魔法使い「かと思えば、ゴーレム戦で、いつになく頭使った戦術も繰り出すし、」
魔法使い「その時使った火炎魔法の魔力も、勇者にしてはちょっと強すぎるし……」
大賢者「態度だけでなく、戦術や魔力にも変化が見られると? もはや別人ですね」
魔法使い「でしょ。外見は勇者そのものなんだけど、性格とか思考とかガラッと変わっててさ」
大賢者「さすがにそれは妖しすぎます」
魔法使い「ほんとにねー。あの勇者を疑ってないやつがいるとしたら、そいつ頭がどうかしてるわよ」
戦士「ぶぇっきしーんっ!!」
勇者「やっぱり風邪じゃないか、戦士」
256 = 1 :
魔法使い「でも、まだ決定打がないのよ。偽物だっていう証拠がさ」
大賢者「証拠ですか……」
魔法使い「それさえ分かれば、『貴様、偽物だな! 名を名乗れ!』って問い詰めるんだけど」
大賢者「確かに、わたしもその勇者が、本物かどうか知りたくなってきました」
魔法使い「ということでさ、なんか知恵貸してくんない?」
大賢者「……そうですねー」
大賢者「では、こんな案はどうでしょう」
魔法使い「お、何々?」
257 = 1 :
大賢者「あなた達は今、“古代の迷宮”を探索中ですね?」
魔法使い「うん、今日は入り口で帰ってきちゃったけどね」
大賢者「“古代の迷宮”には、勇者にしか装備できない伝説の武具がある。ゆえに……」
魔法使い「ゆえに?」
大賢者「――ダンジョンで見つけた伝説の武具を、すぐに勇者に装備させたらいいんですよ」
魔法使い「 ! 」
大賢者「勇者が本物なら、装備できます。勇者が偽物なら、装備できません」
魔法使い「さっすが師匠! 冴えてるじゃん!」
大賢者「これでも賢者ですから」
魔法使い「亀の甲より年の功とは、よく言ったもんだわ!」
大賢者「褒めてるつもりなんでしょうけど、嬉しくない発言ですねぇ」
258 = 1 :
魔法使い「ありがとうね、師匠! 頼れる師だわ!」
大賢者「どういたしまして、久々に弟子に会えたのは嬉しかったですよ」
魔法使い「よーし、こうなったら、明日にでも迷宮攻略して、伝説の武具をゲットしなきゃ!」
大賢者「気合いが入ってる弟子を見るのは、楽しいですね。あ、一つ質問が」
魔法使い「何よ」
大賢者「どうしてそんなに、勇者の正体を暴きたいんですか?」
魔法使い「え。もちろん、偽の勇者に、本物の勇者の居場所を聞き出して、勇者助けるのよ」
大賢者「……なるほど、ですね」
魔法使い「あいつがいないと、魔王が倒せないからね」
大賢者「それ以外に理由は?」
魔法使い「え?」
大賢者「頭脳明晰なあなたが、それだけの理由で動く人間とは思えません」
魔法使い「…………」
259 = 1 :
大賢者「あなた、幼いころから、そんなところありましたよね」
大賢者「自分の目的を達成するために、本心を隠したまま行動する」
大賢者「建前の理由を前面に出して、誰にも本音を伝えない」
魔法使い「…………」
大賢者「わたしに魔法を教えろと言った時も、そうでした」
大賢者「喧嘩した男の子に仕返しする、というのは建前」
大賢者「本音は、いつも危なっかい遊びをして、大人にさえ喧嘩腰だった、その男の子の身を案じて、」
大賢者「彼が大変な時に、自分が助けられるように、魔法の力を得たかった」
魔法使い「…………」
大賢者「今回もそうです」
大賢者「勇者を疑って暗躍を図りながらも、仲間の誰にもそれを伝えていない」
大賢者「今日、わたしの元に来たことも、どうせ誰にも伝えていないんでしょう?」
魔法使い「…………」
260 = 1 :
大賢者「師匠として言わせてもらいますが、あなたはもう少し、人を信頼した方がいい」
魔法使い「…………」
大賢者「そんな生き方していたら、いつか誤解の袋小路に立たされますよ」
魔法使い「…………」
大賢者「もっと、みんなに本音を話すようにしたらいいじゃないですか」
魔法使い「…………」
大賢者「でないと、本当のあなたを知らない人々が増えていくだけです」
魔法使い「…………」
261 = 1 :
大賢者「ちなみに、これは助言ではなく、予言です」
魔法使い「…………」
大賢者「何故そんな未来がわたしに分かるのか、聞きたいような顔してますね」
魔法使い「…………」
大賢者「あなた、昔のわたしにそっくりなんですよ」
大賢者「今のあなたは、過去のわたしで、今のわたしは、未来のあなたです」
大賢者「もう少し自分を出すようにしないと、こんな風に孤独に余生を過ごすことになりますよ」
大賢者「わたしは嫌いじゃないですけど、はっきり言って、こんな生活、あまりお薦めできませんね」
魔法使い「…………」
262 = 1 :
魔法使い「…………」ガタッ
大賢者「御帰りですか?」
魔法使い「…………」コクン
大賢者「夜道に気をつけてくださいね」
魔法使い「…………」ス…
大賢者「その包みは、お土産ですか?」
魔法使い「…………」コクン
大賢者「ありがたく頂戴しておきますよ。わたしの好きなお菓子、覚えててくれたんですね」
魔法使い「…………じゃあね、師匠」
大賢者「……ええ。いつでも、どうぞ。お待ちしてますよ」
バタン
大賢者「…………」
大賢者「都合が悪くなると、黙り込んじゃう癖は、子供の時から変わって無いですね」
大賢者「……さて、お菓子でもいただきますか」
263 = 1 :
魔法使い「…………」スタスタ
魔法使い「…………」スタスタ
魔法使い(本音かぁ……)
魔法使い(うまく説明できないから、言いたくないだけなんだよね)
魔法使い(子供のころに、町を魔物に襲撃されて、大好きな村をめちゃくちゃにされて、)
魔法使い(こんな悲しみを、誰にも経験してほしくないから、勇者の仲間になった)
魔法使い(一日でも早く勇者と一緒に、魔王を倒して、)
魔法使い(もうどこかの町や村が、魔物に襲われないようにしたいだけ)
魔法使い(そのためには、本物の勇者が力が必要。ただそれだけ)
魔法使い(この場合、復讐ともとれるし、世直しともとれるし、)
魔法使い(自分の気持ちを素直に言うって、骨が折れるよなぁー)
魔法使い「あー、疲れたー。温泉入りたいー」スタスタ
264 = 1 :
今日はここまでです。
魔法使いと大賢者の会話がほとんどになってしまいました。
読んでくださってありがとうございます。
感想や乙もはげみになっております。嬉しいです。
また今週来ます。
268 :
~露天風呂・男湯~
戦士「いいかー、100まで数えるんだぞー」
勇者「……ああ」
戦士「のぼせそうになったら、『ギブアッープ!』って言ってあがるんだぞー」
勇者「……分かった」
戦士「そんじゃー、いーち。にーい。さーん……」
勇者「…………」
勇者(やっぱり、思ってたより熱くないな。なんだか、物足りない)
勇者(しかし、人間の身体としては、適温なんだろうな。身体がポカポカしてきた)
勇者(……気持ちいいな)チャプ
戦士「お、ちゃんと肩までつかるなんて、偉いなー」
269 = 1 :
勇者(それにしても、魔王城の方は大丈夫だろうか……)
勇者(たしか、今日も会議があったよな。あの弱小、上手くやってるだろうか)
勇者(こういう何も無い時間って、余計なことばかり、考えてしまうな……)
勇者(あいつ、この時間、何をしてるだろうか)
勇者(会議はとっくのとうに終わって、たぶん夕食も済んで……)
勇者(夜やることといえば、あとは風呂と寝る準備と……それと)
勇者(…………!!)
勇者「しぃまったぁあーーーー!」ザッパァ
戦士「おーい勇者ー、そこは『ギブアップ』だっつーに」
270 = 1 :
~魔王城・魔王の部屋~
側近「それでは魔王様、また明日来ますね」
魔王「ああ、いろいろとありがとうな。側近」
側近「寝間着は鏡台においてあります。何か欲しいものがあれば何時でも呼んでください。それと……」
魔王「それと?」
側近「寝る前には“魔王の記録”を、しっかりつけてくださいね」
魔王「……ん? 魔王の、記録?」
271 = 1 :
側近「ご存じありませんか?」
魔王「うん、知らない。つーか初耳」
側近「そうですか、ならば説明を。魔王の記録とは、とどのつまり日記みたいなものです」
魔王「はぁ」
側近「三代前の魔王様が、日々何をしたか、勇者の動向はどうか、などを記録しはじめて、」
側近「以来、先代魔王様、そして現魔王様が、毎日の記録を残しているのです」
魔王「三代前ってことは……、今の魔王のじいちゃん?」
側近「まあ、そういうことになりますね」
魔王「でもなんで、記録を?」
側近「さぁ、さすがの私も2000年前のことは分かりません」
魔王「そっか、それじゃあ仕方ないな」
側近「ちなみに、先代魔王様の話によると、『記録を残したら後世の魔王のためになる』とか言ってたような」
魔王「へーーー」
魔王(……あれ? 側近って今何歳?)
272 = 1 :
魔王「まー、なんていうか……、勇者風に言うと“冒険の書”みたいなもんか」
側近「そうかもしれませんね。ちなみに、魔王の記録は一番奥の本棚の左上にあります」
魔王「そっか。ちなみに、偽物の魔王も、記録書かないと駄目?」
側近「5歳から魔王に就任した魔王様も、毎日欠かさず書き続けてますよ」
魔王「律儀だなー、魔王って。分かった、一応書いておくよ」
側近「助かります。それでは、魔王様、また明日……」
魔王「おう、じゃな」
――バタン
魔王「…………」
魔王「…………」
魔王「……さァて」ユラリ…
魔王「魔王の日記かァ……。そんな面白ぇモンが拝めるとは、思ってもみなかったなぁ……」ニタァ
273 = 1 :
まおうは ほんだなを しらべた。
まおうは 「まおうのきろく」を みつけた! ▼
魔王「じゃじゃーん! ついに見つけたぜー!」
魔王「いやぁ、人の日記のぞくのって、なんでこんなに楽しいんだろうなー」ホコホコ
魔王「……お、これ一週間前の日付じゃん。どんなこと書いてあるのかなーっと」ペラ
『 ……暦 д月ы日
弱小勇者がまた魔王城にやってきた。
事務処理の途中だったから、煩わしくて早々に片づけた。
懲りない馬鹿が勇者になると心底面倒だな。 』
魔王「な、なにおうっ!?」
274 = 1 :
魔王「えっと、他の日付は……」パラパラ
『 ……暦 д月л日
会議で、勇者を倒すために、ダンジョン内のモンスターの強化について話し合った。
海魔人と氷精霊が小競り合いを始めたから、激しい炎を吐いて黙らせた。
結局、会議は終わらなくて、議決は次回に持ち越しになった。
とはいえ、あの弱小勇者が相手だし、モンスターの強化しなくても、全然充分だと思うが。 』
魔王「こ、こいつ……!」
『 ……暦 ц月в日
偵察隊からの報告。勇者たちは、まだ最初のダンジョンで手こずってるようだ。
予算を低めでこしらえた、罠も少ないダンジョンで、何度も迷い、魔物に全滅させられているらしい。
正直言って、失望だ。大丈夫か、この勇者。薬草が切れた? なんで買い溜めてこなかったんだ?
これほどまで、弱小な勇者は初めて見たぞ。相手は雑魚のはずなのに、こいつは雑魚以下の弱小だな。 』
魔王「……言いたい放題、言いやがってーーー!」
275 = 1 :
魔王「ん。……ここは、この記録の最初のページか」パラ…
『 ……暦 б月ф日
ついに勇者の一族から、新たな勇者が生まれたらしい。
そいつは今日で16になったようだ。偵察隊の情報によると、酒場で仲間を集めているとのこと。
これまで500年、様々な勇者を相手にしてきたが、骨のある奴はほんの一握りしかいなかった。
こいつは俺を楽しませてくれるだろうか。魔王の仕事なんて雑務ばかりだから、いい加減飽き飽きしている。
新しい勇者がどんな奴かは、まだわからない。
だが、このつまらん生活が勇者の介入で、すこしでも面白くなるんじゃないか、と期待している。 』
魔王「…………」
魔王「あいつ……」
魔王「……相当退屈してたんだなぁ」
276 = 1 :
魔王「とりあえず、俺も書いておくか」カキカキ
『 ……歴 д月зе日
今日は昼飯と夕飯が超美味かった! 特にステーキ!
それから、側近はちょっと怖いけど優しい奴だって分かった。
魔王の仕事が、すげー大変だってのも分かった。
仲間から魔王の座を狙われてるって聞いて、ちょっとショックだった。
会議はかなり緊張した。なんであいつら、あんなに協調性ないんだろうな。なんだか心配だ。 』
魔王「……よし、こんな感じかな。上出来だぜ、オレ!」
277 = 1 :
魔王「じゃあ、魔王の記録をしまって……と」
――バサッ
魔王「ん、なんか落ちた?」
魔王「へー、古い本だなぁ。なんの本だ?」パラ…
『 ○が つ X にち
おとぉ さんが あたらし ぃ まほお おしえて くれ た
あまり じょぅずに できなかった
でも おとおさ ん が がんばれ って いった から がんばる!! 』
魔王「読みづらっ! なにこの汚い字!」
魔王「どこのガキの落書き帳だ? えーと……」パラパラ
278 = 1 :
魔王「あ。」
『 きょおは ぼく の 5さいの たんじょおび
おとぉさん から この きろくしょ をもら った
おとおさんは きょお まおおのきろく のこと おしえて くれた
ぼく もいつか まおおに なる から きろく お つけなさい だって
きょお から まいにち かくって おとおさん と やくそく した』
魔王「……もしかして、もしかするけどよ」
魔王「これ、魔王のガキのころの日記……?」
魔王「…………」ニタァー
魔王「よーし読もう。全部読もう。舐めつくすかのように読み切ろう」パラパラパラ
279 = 1 :
今日はここまで。たぶん明日続き投下します。
読んでくださりありがとうございます。
281 :
面白く読ませてもらってるけど、うまくレスが思い浮かばず、しかし淡白に乙と云うのもなんか気が引けるというか
乙
283 :
>>281
自分の気持ちそのものであり、それも的確と言うか、無駄に装飾することなく書いているオマエも中々。
文才ねー自分が辛いわ。
284 :
面白いなぁ
側近ちゃんかわええ
乙!!
285 :
~露天風呂・男湯~
勇者「うぉおおーーー! させるかぁあーーー!」
戦士「うわわぁあーー、勇者がご乱心だぁあーーー!」
勇者「絶対に触れさせんッ! 俺の過去を探らせてたまるかぁあっ!」
戦士「ちょっ、こら! ストップ! 落ちつけって!!」
勇者「あの弱小ぉお! 決して五体満足で帰さんぞぉおおおおーーーー!」
戦士「…………こぉのッ!」
戦士「――必殺! 戦士ラリアットォオオ!!!」
ドグシャア!!
勇者「ごふぁっ!」ドサッ
戦士「ったく、公共浴場で暴れるなよ。他のお客様に迷惑かかっちまうだろうが」
286 = 1 :
ザワザワ……
戦士「いやぁ、ご迷惑をおかけして、ほんとすんませーん」ヘコヘコ
勇者「…………」
戦士「おい勇者ー。何、黙りこくってんだよ。おまえも謝れって」
勇者「…………」シーン
戦士「え、もしかして気絶してる……? おかしいな、そんなに力こめたつもりは……ハッ」
287 = 1 :
----【戦士の脳内】---------------------------------------
いま露天風呂
↓
装備品全部外してる
↓
勇者の守備力はその分下がってる
↓
おれはもともと力自慢
↓
手加減したつもりが、実は勇者のダメージ半端ない
↓
勇者がのびちゃう ←今ここ
---------------------------------------------------------
戦士「ゆ、勇者ーーー! しっかりしろぉおーーー!」
288 = 1 :
~魔王の部屋~
魔王「さーて、早速魔王の恥ずかしい過去を漁っちゃうぜー」ペラペラ
『 Γがつ Πに ち
おかぁさん と ぷりん お つくった
かたまるの まつ じかん が ながく て まちくたび れた
ぷりん は すごく おいしかった
ぼく おかあさんの ぷりん だいすき! 』
魔王「……プククッ」
魔王「そぉーかー、まおう君はプリンが好きなのかぁー」ニヤニヤ
289 = 1 :
『 Ψがつ α にち
きょお おとおさんの おしごとの へやに ないしょで はいってみた
いろんな かみ が あった で も むずかしぃ じ ばかり で よめなかった
そしたら おとぉさんのそっきんに みつかっちゃった
かってに はいっちゃ ダメだって さ しかられちゃった
でも おとおさん には へやに はいったこと ないしょに してくれるって
おとぉさんのそっきんは すご く やさしいんだよ 』
魔王「ははは! あのスカした魔王も、やんちゃ坊主だったんだなー! ウケるー!」
魔王「あー。でも、この魔王の父ちゃんの側近ってさー……」
魔王「……まさか、だよな?」
290 = 1 :
『 Λがつ Φにち
きょおは あめが ふった
おかあさんと きたのたに へ さんぽに いくよていだった から ざんねん
でも おかあさん は かわりに えほん を よんで くれたょ
ぼく の だいすきな どらごん がでてくる えほん だよ
おひるねの とき おねしょ しちゃった
おかあさん ごめん なさい 』
魔王「……!! ま、魔王のやつがおねしょって……!!」バシバシ
魔王「駄目だ腹痛い! 面白すぎて腹痛い! 死ぬーーー!」
291 = 1 :
魔王「はー……、やっと落ちついた。次ーっと」
『 νにち Τがつ
あした おとおさん と おかあさん は にんげんかい にいくんだって
ぼくは まだこども だから いっちゃ ダメだって さ
おとおさんのそっきんと おるすばん だって さ
つまんない
でも おとお さんが あしたの ぶんも たくさん あそんで くれた!
ぼくも おとな だったら にんげんかい に いけたのかな
はやく おとなに なりたいな
きょおは おかあさんと いっしょに ねるんだ! うれしぃ! 』
魔王「……なんだろうね、この魔界のホームドラマ。マジ和む」
魔王「つーか、この日記。ニヤニヤ笑いが止まらねぇ」ニヤニヤ
魔王「……魔王のご両親さん、良い人たちだったんだろうな……」
魔王「えーと、次のページは……」
292 = 1 :
『
おとおさん と おかあさん が ころされた
』
293 = 1 :
魔王「…………え」
294 = 1 :
『
もう おとおさん と おかあさん に あえない
おとおさん とあそべない おかあさんの ぷりんもたべれない
なんで
いやだ どうして
たくさん ないた まだ なみだが とまらない
でも そっきん が なぐさめてくれた
まだ かなしい おとおさん は おかあさん は どこにいったの
だれが おとおさん と おかあさん を ころしたの
ゆるさない そいつをころしてやりたい 』
295 = 1 :
『 だれも おしえてくれなかった
おとおさん と おかあさん を ころしたのは だれなのか
どうして ころしたか なにも
そっきんも おしえてくれなかった
でもそっきんは ぼくに おしえない りゆうを おしえてくれた
ぼくが それを しったら “ ふくしゅう ” するから だって
まおうを つぐ のは ぼくしか いないのに
ぼくが ふくしゅうに いって もし ころされたら みんなが こまるからだって
ぼくは もう まおうに ならないと いけないんだって
ぼく は まだ こどもだけど まおうに ならなきゃいけない 』
魔王「…………!!」
296 = 1 :
『 Τがつ гにち
たくさん まおうがく の べんきょうを した
あたらしい じゅもん を 23 こ おぼえた
ごはんを たべる じかん と ねるじかん が まえより すくなくなった
じかん が もっとほしい
はやく おとうさんのような りっぱな まおう に ならなきゃいけない 』
魔王「…………」
297 = 1 :
『 Τがつ зеにち
さっき こわいゆめ を みた こわくて ねれない
おかあさんと いっしょにねれたら おかあさん は だきしめてくれて
あんしんさせて くれたのに おかあさん……
ねれないから べんきょう しよう もっと たくさん べんきょう できるように
むずかしい じ の べんきょう を しよう べんきょう したら りっぱなまおうに なれるから 』
魔王「……おい」
298 = 1 :
『 кがつ у日
きょう も たくさん べんきょう した でも さいきん ねむれない
すごくつかれて ねむかったけど がんばった そっきんが 心ぱい してくれた
でもいいんだ だって ぼくは ま王 にならなきゃいけない から
あした は ま王ぐん の ぜんぶのめいぼ を あんき しなきゃ 』
魔王「……もういい」
299 = 1 :
『 е月 ы日
ま王軍 の かん部 と会って あいさつした
少しきん張したけど 大じょうぶ だった
そっ近 が かん部たちは みんな なかよくないから 気をつけてと おしえてくれた
みんな を まとめるには 力が ひつよう だとおしえてくれた
力がほしい 』
魔王「……もういいって」
300 = 1 :
『 ф月 ф日
だれかが ぼくの おやつに 毒を もった
すぐ吐きだしたけど 、 のどが焼けるようにいたかった
少し毒をのみこんでしまって、すごく苦しかった
でも、こんなときのために、側近が毒けし草を もたせててくれてて、よかった
すぐ毒けし草をのみこんだから、いのちは助かった。運がよかった。
今日のおやつはプリンだった。 もう二度とプリン食べたくない 』
魔王「 」
みんなの評価 : ★
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