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    元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」

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    301 = 1 :



      『  м月б日


       夜、かん部の一人が ぼくの首をねらって 攻げきしてきた

       側近が気付いて助けてくれなかったら、死んでたかもしれない

       話をきくと、プリンに毒をもったのも、こいつだと分かった

       かん部の動きを封じた側近は、ぼくがこいつを殺した方がいいと教えてくれた。

       この先、こういう裏切り者と戦う機会がふえるから、今のうちに慣れておけだって。

       覚えたばかりの火の魔法を、つかった。  かん部の さけび声が すこし怖かった

       一回じゃ死ななかったから、なんども呪文をとなえた。 かん部は たくさん 叫んだ

       8回目の呪文でやっと死んだ。

       側近はほめてくれた。殺したのははじめてだったから、ぼくは少しおかしなきもちだった

       でもこのきもちは、きっと戦闘のとき邪魔になるから、 早く殺すことに慣れないといけない  』



    魔王「 頼む  もう やめ」

    302 = 1 :



      『  т月w日


       父さんと母さんが殺されてから、一年が経った。僕は六歳になった。

       一年前より、いろんな呪文を覚えたし、強くなったと思う。

       父さんと母さんの墓参りに行ってから、側近が誕生日プレゼントをくれた。

       人間界に建てた魔王城だった。

       魔物たちが頑張って作ってくれたらしい。ここを拠点に、人間界を支配する予定だ。

       まだ子どもだけど、魔王になったから、特別に人間界に行かせてもらって、魔王城を見せてもらった。

       広かったしすごかったけど、作りが甘いと感じた。

       もっと道順を複雑にすること、塀を高くすることと、見張り台を作ることを注文して、魔界に帰った。

       一年経ったけど、僕はまだ父さんのような立派な魔王になれてない。早く強くならなきゃ。賢くならなきゃ。

       一日も早く、一時間でも早く、一分でも早く、一秒でも早く早く早く早く早く早く早く立派な魔王にならなきゃ』






    魔王「  ―――もうやめろっつってんだろ! 馬鹿野郎!!」

    303 = 1 :


    魔王「ハァッ……ハァッ……」

    魔王「…………」

    魔王「何してんだろな、オレ……。日記ぶん投げたって、何もならねぇだろ」



    魔王「……っ、……あ」

    魔王「……くそっ」ゴシゴシ

    魔王「なに泣いてんだよぉ、オレぇ……」



    魔王「……畜生」

    304 = 1 :


    魔王「とりあえず、日記を……」ヒョイ

      ――パラッ

    魔王「……あ」



      『 ――暦 ц月е日


       今日は勇者について学んだ。人間界には、魔王を討伐するために勇者という専門家がいるらしい。

       勇者は世襲制で、人間と平和を守るために、魔物や魔族と戦う存在のようだ。

       なにが人間のためだ。なにが平和のためだ。

       人間さえ良かったら、なんでもいいのか?

       魔物や魔族の平和は、どうでもいいのか?

       講義の間、胸糞悪くて仕方なかった。勇者なんか嫌いだ。気に食わない。  』



    魔王「…………」

    魔王「なんだろうな、ぐさっときた……」

    魔王「……とりあえず、戻そう」ゴト

    305 = 1 :


      :
      :
      :

    魔王「…………」カキカキカキ

    魔王「…………」カキカキカキ

    魔王「…………」

    魔王「……よしっ」



    魔王「側近ーー。……って呼んだら、ほんとに来るのかな」

    側近「お呼びですか魔王様」コンコン

    魔王「うお!? まじで来たぁ!? えーと、呼んだからどうぞー」

    側近「失礼します。ご用件は?」ガチャリ

    魔王「あのー、側近は魔王の居場所分かる?」

    306 = 1 :


    側近「勇者一行には、常に偵察隊を向かわせています。ゆえに、場所の補足は造作もないことです」

    魔王「じゃあさ、頼みがあるんだけど」

    側近「なんなりと」

    魔王「この手紙を、魔王に届けてくれないか? いま、勇者の姿してる魔王に」

    側近「……かしこまりました」

    魔王「あ、でもオレの仲間にはばれないように頼むぜ」

    側近「承知の上ですよ、魔王様。私は変身魔法も使えますから、ご安心を」

    魔王「おお、助かるぜ。いやー、頼りになるなぁ、側近は」

    側近「頼りにならない側近がいたら、どうかと思いますけどね」

    307 = 1 :


    側近「それでは、行って参ります」ボムッ

    魔王「おおっ、フクロウになれるんだな」

    側近「無論、人間にも化けれますよ。それでは、魔王様。おやすみなさいませ」

    魔王「おう。おやすみー」


      バサッ バサッ――


    魔王「…………」

    魔王「……ふぁ」

    魔王「寝るか」






    魔王「それにしても、いろいろ濃い一日だったなぁ」

    魔王「一番恐ろしい事は、これだけいろいろあって、まだ一日しか経ってないことだよな」

    魔王「はぁ……。これが、いったいあと何日続くんだよ……」

    308 = 1 :



      ~露天風呂・女湯~


    魔法使い「きゃっはーい! おんせーん!!」ガララッ

    魔法使い「ん、あの人影は……」





    僧侶「……ゆうしゃさまぁ」プシュー





    魔法使い「そ、僧侶ちゃんっ!? あれから、ずっと温泉入ってたの!?」


    309 = 1 :

    今日はここまで
    たぶんまた今週来れます
    読んでくださりありがとうございます

    310 :

    楽しかったよ!続きはよといいながら、裸で待機するわ

    311 :

    もういいといいながらもついつい読み進んでしまう勇者である

    312 :

    おっつん

    313 :

    おつ

    314 :

    乙乙
    面白い!

    315 :

    コレは良スレデスね

    317 :



    側近「……」バサッバサッ

    側近「……」バサッバサッ



    側近(……偵察隊の情報によると、勇者たちはここからさらに北の渓谷を越えた村に潜伏中)

    側近(この姿のまま行ったら、夜が明けちゃうわね……)



    側近「……」バサッバサッ

    側近「……せっかくですし、移動呪文でショートカットしちゃいましょう」バサッバサッ



     そっきんは じゅもんを となえた! ▼

    318 = 1 :



      ~村~


    側近「……ここが勇者一行の潜伏先」

    側近「勇者たちのことだから、どうせ宿屋に泊ってるんでしょうね」バサッ

    側近「あら、露天風呂ついてるのね。ここ」バサッバサッ

    側近「……ん、あれは」



    僧侶「……魔法使いさん、どうもありがとうございます」

    魔法使い「いいってことよー。でも、弱めの冷気呪文で復活してくれてよかったわ」



    側近(……勇者の仲間か。こんな時間まで、のんきに入浴とは……)

    側近(しかし、何か有益な情報が得られるかもしれないし、聞き耳でも立てておこうかしら)

    側近(あの木なんか、偵察にちょうどよさそうね。よし、あそこで――)バサバサ

    319 = 1 :


    魔法使い「それにしても、のぼせるまでつかってるだなんてねー」

    僧侶「その、ちょっと考え事してて……」

    魔法使い「へー、考え事ねぇ……」

    僧侶「…………」

    魔法使い「…………」



    僧侶(……ずっと勇者様のこと考えてたなんて言えない)

    魔法使い(どうせ、ひたすら勇者のこと考えてたんだろうなぁ、分かりやすい)



    僧侶(な、なんで黙ってるんだろう。あ、私が黙ってるから……?)

    魔法使い(なんか困ってる顔してるなー)

    僧侶(なんか気まずい。どうしよう、なんかしゃべんないと……)

    魔法使い(しょうがないなー。なんか別の話題……。よし、定番のアレでいこう)

    320 = 1 :


    魔法使い「ところでさー、僧侶ちゃんって、色白いよねー」

    僧侶「は、はいっ!?」

    魔法使い「うんうん、綺麗な肌してる。すべすべで羨ましいなぁー」

    僧侶「ひっ! あ、あの! あまり触らないでください!」

    魔法使い「いいよねー。十代のお肌はピチピチで……、羨ましぃなぁあぁぁ……っ」

    僧侶「(……怖っ!) あ、その……、お好きにどうぞ」

    魔法使い「さすが、僧侶ちゃん。やっさしーなー。では、お言葉に甘えてー」



    側近(…………)

    321 = 1 :


    魔法使い「いやー、若い体は羨ましいねぇ」

    僧侶「でも、魔法使いさんも、羨ましい体してるじゃないですか……」

    魔法使い「ほー、例えば?」

    僧侶「え、その大人っぽい体つきだなぁーって」

    魔法使い「もっと具体的に」

    僧侶「ええっ!? あ、だから、その、胸とか大きいなぁ……って」

    魔法使い「ほほう、僧侶ちゃんは、胸の大きさを気にしてるわけなのね」

    僧侶「だって、そんなに大きくないし……」

    魔法使い「何言ってんの。どちらかというと、普通のサイズでしょ。もっと自信もって!」



    側近(…………)

    側近(……変身解除!)ボムッ

    側近(…………)ペタペタ

    側近(…………)

    側近(……この側近が、あの二人に遅れをとるだと!)

    側近(……なんなんだ、この敗北感は)

    322 = 1 :


    魔法使い「第一、女は胸の大きさで決まるもんじゃないわ!」

    僧侶「…………!」

    側近「…………!」



    魔法使い「女は愛よ! 愛の深さが女を語るのよ!」

    僧侶「……魔法使いさん」ジーン…

    側近(……あの女、良い事を言うじゃないか)ジーン…






    魔法使い「というわけで、今夜勇者ちゃんに告白するのよ! 僧侶ちゃん!!」

    僧侶「うひゃいいいい!?」ビクーン!

    側近(なん……だと!?)

    323 = 1 :


    僧侶「無理です! 無理です! 無理ですぅうう!」

    魔法使い「なに言ってんの! 女は度胸よ!」

    僧侶「さっき愛って言ったじゃないですかぁ!」

    魔法使い「愛も度胸も、同じようなもんよ!」

    僧侶「そんな無茶苦茶なぁ……!」






    側近(……勇者は、いま魔王様。つまり、あの僧侶は、魔王様に告白するということになる)

    側近(…………)ゴゴゴゴゴ

    側近(……変身!)ボムッ

    側近(一刻も早く、魔王様に危険を知らせねば!)バサバサ

    324 = 1 :



      ~宿屋・外~


    側近(魔王様は、いったいどの部屋に……)バサバサ

    側近(……! あの窓ね、一人きりとは好都合)

    側近(ベッドに入っているから、もうお休みかもしれないけど、緊急事態だから仕方ないわ)



    勇者「…………」



      ……コンコン



    勇者「……、う」

    勇者「……何の音だ」ムク

    勇者「なんだ? フクロウが窓に」ガララ

    325 = 1 :


    側近「魔王様!」ボムッ

    勇者「……! 側近か!」

    側近「魔王様、ご無事で何よりです!」

    勇者「いや、あまり無事でもなかったんだが」

    側近「え?」



    勇者(まさか、風呂場で奇襲を受けるとは思わなかったからな……)

    326 = 1 :


    勇者「ところで、何の用件だ?」

    側近「はい、実は魔王様に、早急にお伝えすべきことが!」

    勇者「なんだ」

    側近「魔王様! あの僧侶に気をつけてくださいっ!!」

    勇者「…………」

    側近「…………」

    勇者「……え、それだけなのか?」

    側近「はい! 諸事情により詳細には述べられませんゆえ!」

    勇者「……そうか」

    327 = 1 :


    勇者「で、それを伝えるために、わざわざ魔王城からここへ?」

    側近「ハッ!? 申し訳御座いません! それだけでは、ありませんでした!」

    勇者「お前のことだから、そうだろうとは思っていたが」

    側近「すみません、魔王様。これを……」ス……

    勇者「……手紙か?」

    側近「はい、勇者が魔王様にお渡しするよう命じたので」

    勇者「あの弱小の手紙か」

    側近「はい」

    勇者「読まないで焼き捨てては駄目か?」

    側近「駄目です」

    勇者「そうか」

    328 = 1 :


    側近「それでは、確かにお渡ししましたからね」

    勇者「ああ、いつもご苦労。側近」

    側近「この程度のこと造作もありません。それと、魔王様……」

    勇者「なんだ?」

    側近「――私は、いつでも魔王様の御帰りをお待ちしておりますよ」

    勇者「……そうか」

    側近「それでは、魔王様。お休みなさいませ」ボムッ

    勇者「ああ。おやすみ、側近」



      バサッ バサッ



    勇者「…………」

    勇者(ずいぶん久しぶりに、側近の顔を見た気がする……)

    勇者「……さて、ロクなこと書いていないんだろうが、とりあえず読んでやるか」ガサガサ

    329 = 1 :


    勇者「…………」



     『  魔王のバカヤローへ 


      今日一日まじ散々だったぞ。魔王って大変なんだな。

      側近には殺されかけるし、会議とか、すっげー大変だったんだからな。

      でも、魔王城の飯は最高に美味かったぜ。

      すっげー超絶不本意だけど、魔王城の飯食えるから、しばらく魔王になってやってもいいぞ。

      全然早く帰ってこなくていいからな! お前の好きなとこ行って、好きな時に帰って来いよ!

      南の港町は遊覧船に乗れて楽しいぞ! あと、西にある村は地酒が美味いって、戦士が言ってたぜ。

      オレはまだ酒飲めないけど、お前飲めるんだったら、飲んでこいよ!

      こっちは全然心配しなくていいからな! 側近がいろいろ助けてくれるから大丈夫だからな!

      じゃあな、勇者生活楽しめよ! あとオレの仲間によろしくな!

                                            勇者より  』

    330 = 1 :


    勇者「……なんて頭の悪そうな文章なんだ」

    勇者「やっぱりロクなこと書かれてなかったな……」

    勇者「まったく、あの弱小。どういう風の吹き回しだ?」

    勇者「早く帰ってこなくてもいいだなんて……」

    勇者「…………」

    勇者「…………」



    勇者「まあ、言われなくてもそうするつもりだったしな」



    勇者「…………」

    勇者(……遊覧船か)




    勇者「…………♪」

    331 = 1 :



      ~宿屋・食堂~


    魔法使い「わー、鰆の塩焼きおいしいー」

    僧侶「煮物もおいしいですよ。おイモさんに、味がよくしみてて」

    戦士「女将さん、おかわりー!」



    魔法使い「ところで、戦士ちゃん。勇者ちゃんは?」

    僧侶「…………!」ドキッ

    戦士「ああ、それがさー、さっき風呂で……ハッ」

    332 = 1 :



    ----【戦士の脳内】---------------------------------------


     露天風呂で張り倒したことを正直に言う

      ↓

     魔法使い「うわー、さいてー。仲間相手にそりゃないわ」

      ↓

     僧侶「戦士さん、そんな人だったなんて……。もう戦士さんは、回復してあげません!」

      ↓

     回復されないから、魔物にボコボコにされて何度も死ぬ

      ↓

     勇者「すぐ死ぬ役立たずは不要だ。酒場に帰れ」

      ↓

     酒場でまた飲んだくれ生活にリターン ← ここまで考えた

    ---------------------------------------------------------


    戦士「…………!」

    333 = 1 :


    戦士「いやぁ! なんか風呂場で滑って頭ぶつけたから、今部屋で寝てるぜ!?」

    僧侶「ええっ!? 大変じゃないですか! すぐ回復しないと!」

    戦士「あ、あーっ! でも大丈夫! 薬草使ったし、さっき意識も戻ったし!」

    魔法使い「そっかー、じゃあ今夜は勇者ちゃん休ませてあげないとねー」

    僧侶(……ということは、今夜の告白は取り消し?)ホッ

    魔法使い(戦士ったら、なーんか隠してる臭いけど、まあいいか)



    戦士(……さすがのおれも、魔王戦直前で、リタイアしたくはないぜー)ドキドキ

    334 = 1 :



      ~魔王の部屋~


    魔王「…………」

    魔王「…………」


       ――なにが人間のためだ。なにが平和のためだ

       ――人間さえ良かったら、なんでもいいのか?

       ――魔物や魔族の平和は、どうでもいいのか?


    魔王「…………」

    魔王「……どうでもいいわけねーだろ」

    魔王「勇者は、“みんな”を助けるのが仕事だからな」

    魔王「……ただ、魔物を倒すだけじゃあ、本当の平和なんか来ないんじゃないのかもな」

    魔王「だとしたら、どうすれば……、みんな、幸せになれるんだ……?」



    魔王「……ぐう…zzZ」

    335 = 1 :



      ~宿屋~


    勇者(…………)

    勇者(……いろいろあったな、今日は)


    勇者(少人数精鋭の戦闘は、意外と楽しかった)

    勇者(指揮をとりながら、自分も戦う。臨場感があってよかった)

    勇者(魔王はなかなか戦闘の最前線に出れないからな)

    勇者(魔王軍にも、一組4~5体程度の精鋭部隊を作ってもいいかもしれん)

    勇者(……っと、今は勇者だから、そんなこと考えなくても良かった)


    勇者(……勇者か)

    勇者(一時期、毛嫌いしてたこともあったが、もう遠い遠い昔の話だな)

    勇者(嫌いだった勇者をやってでも、魔王の職務を離れたいと思うようになって、念願がかなったわけだが、)


    勇者(案外、……楽しいじゃないか。こういうのも)


    勇者「……zzZ」

    336 = 1 :

    今日はここまでです。ようやく一日目終了です。
    読んでくださり有難う御座います。
    また来週来ます。

    340 :

    おつよ

    341 :



      ~魔王城~


    魔王「ふぁああー……」

    魔王「あー、疲れとれてねぇ」

    魔王「腹減ったなぁー……」


      コンコンコン……


    魔王「誰だー?」

    側近「側近です。魔王様、朝食の用意が出来てますが」

    魔王「マジで!? ちょっと待ってて! すぐ着替えるから!」

    側近「では、お待ちしております」



    魔王(しかし、すげぇグッドタイミングだな。さすが側近)

    343 = 1 :


    魔王「うおお、ベーコンの肉汁すご! サラダも上品な味だなぁ!」

    側近「お気に召されたようで何よりです」

    魔王「……あのさ」

    側近「はい何でしょうか」

    魔王「……側近も、ずっと立ってないでさ。一緒に食べない?」

    側近「…………」






    側近「何をおっしゃゐませうか魔王様。不肖のような下賤な者と食膳を共にしたゐとわ」

    魔王「え、なにその口調。動揺してるの? 動揺してるってことなの?」

    344 = 1 :


    側近「ゴホン……、ともかく。魔族の中でも、とくに高貴な血族の魔王様と、私では不釣り合いです」

    魔王「そういうもんかなぁ」

    側近「人間社会にもあるように、魔界にも身分の差を弁える文化があるのですよ」

    魔王「でも、オレ魔王じゃなくて、本当は勇者だぞ?」

    側近「でも外見は魔王でしょう? 誰かが突然部屋にでも入ってこようものなら、問題沙汰です」

    魔王「そっかー……」モグモグ

    側近「ちなみに、なぜそのようなお誘いを?」

    魔王「いや、なんかさー……、一人で食べるのって寂しいなぁって……」

    側近「…………」

    魔王「ここ最近、ずっと仲間と行動してたからかな」



    魔王「……みんな元気にしてるかなー」

    345 = 1 :



      ~フィールド~


    勇者「……よし、行くか」

    戦士「今日こそ、ダンジョン攻略だ!」

    魔法使い「はいはい、気合い入れていくわよー……ふぁ」

    僧侶「魔法使いさん、眠そうですね」

    魔法使い「あたし、低血圧だから朝弱いのよねー」

    戦士「ははは! 黙って生きてたら、そのうち高血圧で悩むことに――」

    魔法使い「おほほ、何言ってんのかしらね、この口は。んん?」ギリギリ

    戦士「ぎゃーーー! ギブギブギブ!!」バシバシ






    勇者(コブラツイストか……。いい型だ)

    僧侶(戦士さん、一言余計なんですよね……)

    346 = 1 :


    魔法使い「ところで勇者ー。今日は逃げるなんて言わないわよね?」

    勇者「ああ、無論そのつもりだ」



    魔法使い(……おや、案外すんなりと。昨日のアレはどういう風の吹き回しだったのかしら?)



    勇者「その代わり、今日はこいつを使う」チャプ

    僧侶「あ、聖水ですね」

    戦士「なんだ、やっぱり今日もダンジョンまで、体力温存かぁ」



    魔法使い(結局、戦わない方針は継続なのね……)

    347 = 1 :


    戦士「それにしても、聖水なんか久々に使ったなー」

    僧侶「魔物が出てこないと、道中が楽ですね」

    魔法使い「こんな感じで、迷宮もサクサク進めればいいんだけどねー」

    勇者「…………」






    勇者(聖水か……。実際使うのは初めてだが、便利な道具があるんだな)

    勇者(……こんな感じで、人間を寄せ付けない道具とか、作れないだろうか?)

    348 = 1 :



      ~魔王城~


    側近「それでは、魔王様。本日のスケジュールですけど」

    魔王「うん」

    側近「本日は、書類仕事だけです」

    魔王「書類仕事?」

    側近「ダンジョン建設企画書、魔王軍異動届、勇者一行偵察報告書、魔界からの書類も多数……」

    魔王「けっこうあるなぁ」

    側近「とりあえず、肘の高さまである書類が山脈作って溜まってます」

    魔王「そんなに!? なんで?」

    側近「昨日魔王様が、書類仕事片付けなかったからですよ」

    魔王「えーーー!? おいおい何やってたんだよ、昨日のオレ!」

    側近「寝てたり、食べたり、会議に出たり、私に殺されかけたりですね」

    349 = 1 :


    側近「書類仕事は簡単ですよ。書類に目を通して、読んだという証拠としてはんこを押せばいいだけです」

    魔王「……でも全部読まないといけないんだろ?」

    側近「はい、その通り」

    魔王「無理だよ、そんなの!」

    側近「そうですか、それもそうかもしれませんね」

    魔王「ん?」

    側近「我らが魔王様は速読が特技でしたから、難なく事務仕事を済ましていましたけど……」

    魔王「……!」

    側近「所詮勇者ごときには、魔王様の真似事など到底不可能ですよねぇ」

    魔王「……何だとぉっ!? いいぜぇ、やってやろうじゃねぇか!」

    側近「おや、そうですか」

    魔王「魔王なんかに負けてたまるか! 書類仕事くらい、この勇者様が華麗にこなしてやらぁ!」



    側近(……さすが勇者、ちょろいですね)

    350 = 1 :


    魔王「そうと決まったら! 側近、はんこ持ってこい!」

    側近「無理です」

    魔王「え、何で!?」

    側近「魔王様のはんこは、大切なものなので、魔王様しか保管場所は知りません」

    魔王「……ぇえええええええ!?」

    側近「だから自分で探してくださいね」

    魔王「なんという難題を残していきやがるんだ、魔王め!」

    側近「まぁ頑張って下さいよ。そういうの得意でしょう、勇者なら」

    魔王「なんでそうなるんだよ」

    側近「偵察隊から、勇者は行く先々の村や町やダンジョンで、根こそぎ宝を持ちだしているとの報告が……」

    魔王「あ、あれは! 冒険に役立ちそうなものがあると、つい……!」

    側近「手癖の悪い勇者様ですね」


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