元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
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651 = 1 :
~宿屋・男部屋~
僧侶「きゃあああ! 助けてーー!!」
???「クルッポーーー!」バサバサ
勇者(こいつ、突然、開いた窓から入ってきただと!?)
僧侶「鳥! 鳥がぁ! ああ、やめて! つつかないで!」
???「ポーーー!」ツンツンツンツン
勇者(あのフクロウ、間違いない……側近!?)
勇者「僧侶! 早く部屋から出るんだ! こいつは俺がなんとかする!」
僧侶「あ、はい! すみません!! 失礼しました!」
――バタン
652 = 1 :
勇者「…………」
???「……」ゼエハア
勇者「……おい」
???「……!」ビクッ
勇者「なんのつもりだ? ――側近」
???「…………」
側近「……申し訳御座いませんでした」ボムッ
勇者「何を勘違いしているんだ?」
側近「え……?」
勇者「俺が求めているのは謝罪ではない。状況の説明だ」
653 = 1 :
※側近解説中
:
:
:
勇者「……つまり、あの弱小勇者からまた手紙を預かったので、」
勇者「フクロウに変身してやってきたら、俺と僧侶のただならぬ会話を聞き、」
勇者「俺を守ろうと無我夢中で、開いた窓から侵入して、僧侶を攻撃したと……」
側近「仰る通りでございます」
勇者「気持ちは嬉しいが、叱るべきかも良くわからんから、正直複雑だ」
側近「申し訳御座いません……」
勇者「しかしあんなに動揺する側近は初めて見たな」
側近「は? 何のことですか?」
654 = 1 :
勇者「貴様、フクロウの鳴き声は知ってるよな?」
側近「ええ、まあ……。一般的には、ホーホーですよね」
勇者「さっきのクルッポーは、むしろ鳩の鳴き声だと思うんだが」
側近「…………!?」
勇者「貴様らしかぬ凡ミスだな」
側近「お、仰る通りで御座います……」
勇者(消え入りそうになるほど赤面する側近も、初めて見たな……)
勇者「ところで、弱小の手紙はどうした?」
側近「あ、はい、こちらに……」
勇者「……どれ」ガサガサ
655 = 1 :
『 魔王のボケナスへ
よお、元気か? みんなも元気にしているか?
今回、超大切なこと伝えるから心して読めよ!
お前、「冒険の書」って知ってるか? どうせ知らねーだろ。
王様のとこに行って、王様に話しかけたら、今までの冒険の記録をつけてもらえるんだぜ。
だから、今日は夜遅いからいいけど、明日の朝一に城に行って、冒険の書、書いてもらえよ!
絶対だぞ! オレだって、「魔王の記録」つけてんだから、お前も冒険の書ちゃんとやるんだぞ!
あと、今日お前の代わりに、書類仕事やってやったぞ。感謝しやがれ。
オレってば、超絶スゲー勇者だから、デスクワークなんか全然大したことなかったぞ!
じゃあな、オレの仲間にもよろしくな!
勇者より 』
勇者「……相変わらず、頭の悪そうな文章だった」
側近(魔王様が眉間にしわを……。勇者のやつ、いつも何書いてるのかしら)
656 = 1 :
側近「それでは、私はこれで」
勇者「まて、まだ戻るな側近。勇者に返事を書く」
側近「え? 魔王様がお返事を?」
勇者「ああ、短く済ませるがな」カキカキ
側近「そうですか」
勇者「それと側近、貴様にも吉報を伝えてやろう」
側近「なんですか?」
勇者「――明日、魔王城に帰ることにした」
側近「……!!?」
657 = 1 :
側近「そう……ですか、それは本当に良かったです」
勇者「また退屈な日々に戻るのかと思うと憂鬱だがな。まあ、充分息抜きはできた」
側近「…………」
勇者「よし、返事が書けた。頼んだぞ、側近」
側近「かしこまりました。それでは、おやすみなさいませ。魔王様」
勇者「ああ、おやすみ側近」
――バサッバサッ
勇者「…………」
勇者「さて、僧侶の様子でも見に行くか」
勇者「余計なことは言うなと、口止めし忘れたしな」
658 = 1 :
~宿屋・女部屋~
勇者「確か、この部屋だったかな。おい、僧――」
僧侶「……、…… ――」
勇者(話し声? 誰か部屋にいるのか?)
僧侶「……神よ、私の祈りをお聞きください」
勇者(いや、ただ祈っているだけか……)
659 = 1 :
僧侶「世界に平和が訪れますように、またそのために、ちっぽけな私に力を貸してください……」
僧侶「みんなが幸せになれますように、また苦難に遭っている人に救いの手が差し伸べられますように……」
僧侶「いまこの場にはいない勇者様の身が、何事もなく安全でありますように……」
僧侶「……グスッ、……うぅ」
僧侶「また、……勇者様でない勇者様の、悩みや苦しみが和らぎますように……グス」
勇者(…………)
勇者(人間の祈りは初めて聞いたな)
勇者(知らなかった……、人間とは泣きながら祈る生き物なんだな)
勇者「……僧侶、一人か?」コンコン
僧侶「え!? は、はい!!」
660 = 1 :
勇者「扉は開けなくていい。言い忘れたことがあったから、伝えに来ただけだ」
僧侶「な、なんでしょうか?」
勇者「いいか? 今日聞いた話は、誰にもするんじゃない――」
僧侶「……ッ!? ……はい」
勇者「よし、それでいい。おやすみ僧侶」
僧侶「……おやすみなさい」
僧侶「…………」
僧侶(……怖かった。ドア越しなのに、殺されるかもって思った……)
僧侶「……彼はいったい、誰なの?」
661 = 1 :
勇者「…………」スタスタ
魔法使い「あっれー? 勇者ちゃん、何してんの?」
勇者「別に、なんでもない」
魔法使い「あっそー、聞くだけ無駄でした的な?」
勇者「それより、何を持ってるんだ?」
魔法使い「これ? 薬草茶よ。知人にもらったの」
勇者「…………」
魔法使い「欲しい? なんなら、一杯あげるよ」
勇者「では、もらおうか」
魔法使い「はい、どうぞー」
662 = 1 :
勇者「いい匂いだな……」ゴクッ
魔法使い「でしょー、お味はどう?」
勇者(――!? これはっ!?)
魔法使い「なに? びっくりするほど美味しかった?」
勇者「……魔法使い、これを作ったのは誰だ?」
魔法使い「えー、誰って知り合いだってば。昔なじみの知り合い」
勇者「……今度、そいつに会いに行くことはできるか?」
魔法使い「げえっ」
勇者「なんでそんなに嫌そうな顔をするんだ」
663 = 1 :
魔法使い「まあ、それはあれよ、いろいろとあってね」
勇者「できることなら、なるべく早く会いたい。嫌なら住んでる場所だけでも教えろ」
魔法使い「んー、ものすごく気が進まないけど、住んでるとこは、この間の温泉の村の郊外よ」
勇者「そうか、ありがとう」
魔法使い「それより、僧侶ちゃん見なかった?」
勇者「…………」
魔法使い(あー、めっちゃ警戒されてる目だわ、こりゃ)
664 = 1 :
勇者「……見たが、それがどうかしたか?」
魔法使い「んー、僧侶ちゃんにも薬草茶あげようと思ったんだけどね」
勇者「なら、僧侶は部屋に戻っているぞ」
魔法使い「おーけー、教えてくれてありがとー。あ、僧侶ちゃんとなんか話した?」
勇者「他愛もない話をしただけだ」
魔法使い「あ、そう。じゃあねー、おやすみー」
勇者「ああ、おやすみ」スタスタ
魔法使い(……タイミングずれちゃったか。残念残念)
魔法使い(もう少し早く気付けば、会話を拾えたかもしれないのにねー)
魔法使い(まあ、悔やんでもしょうがない。明日もなんかアクションしてみよ)
665 = 1 :
~宿屋~
勇者「…………」スタスタ
勇者「…………」ピタッ
勇者(あの薬草茶とやら、俺は以前飲んだことがある……)
勇者(知ってる味だった。確か、幼い頃だっただろうか)
勇者(それも、人間界ではなく、魔界でだ……)
勇者(つまり、これを作った人物は――)
戦士「うぇっほほーい、勇者ー! 飲みすぎちったぁー! たっだいまぁーーん!!」フラフラ
勇者「……殺意の湧くタイミングと、テンションで帰ってきたな戦士」
666 = 1 :
~魔王の部屋~
魔王「…………」
魔王「……んー」ゴロン
魔王「んあーー」ゴロン
魔王「だめだー、全然寝付けねえ」
魔王「まったく、魔王のやつ。あんな手紙よこしやがって……」
『 明日、魔王城に帰る。
心して待て。
魔王より 』
魔王「だぁあーー! 寝れねぇーー! 明日早起きしないといけないのにー!!」
667 = 1 :
今日の分はここまでです
更新遅くなってもうしわけありませんでした
読んでくださりありがとうございます
次回から佳境に入るかも……?
また来週来ます
668 :
おう!来週楽しみにしてるよ!
669 :
おつ
心して待ちます!
670 :
おつ
楽しみにしてる
671 :
おつおつ
さてはてこの後どうなることやら
672 :
乙
側近ハトwwwwww
673 :
おつつ
見続けててよかった
675 :
乙
クルッポー
676 :
――――――――――
―――――…
―……
「おとーさん」
「なんだ?」
「ゆーしゃって、なにする人なの?」
「いい質問だな。おまえはどう思う?」
「え? んー……、わかんない」
「字を見たらよくわかるぞ。勇者は「勇ましき者」と書いて、勇者だ」
「いさま……し?」
「勇気があるってことだよ。勇気があると、恐れないで危険や困難に立ち向かえるんだ」
「へえー」
「相手が魔物だろうと、魔王だろうと、みんなのために恐れず戦う――それが勇者だ」
「ねえ、おとーさん。オレもおとーさんみたいな、ゆーしゃになれるかな?」
「んー、そうだなぁ……」
「……」ドキドキ
677 = 1 :
「……正直、分からん!」
「えっ!?」
「確かに、おまえには勇者になる素質があるよ。勇者の血を引いているからな」
「じゃあ、なんでわからんなの?」
「素質だけじゃあ勇者にはなれないんだ」
「どういうこと?」
「“血”だけじゃなくて、“心”が勇者じゃなきゃ、勇者にはなれないんだ」
「こころ……?」
「おまえにはまだちょっと、難しいかな。あ、そうだ、久々に剣の稽古でもつけてやろうか?」
「うん! おけいこする!」
「よし、じゃあいくか。母さーん、ちょっと出かけてくるぞー。夕飯までには戻るからなー」
―……
―――――…
――――――――――
678 = 1 :
~魔王城・裏庭~
――キィン ガキィン!
暗黒剣士「なかなかの腕前ですね、魔王様」
魔王「あんたもやっぱり強いな。一太刀ごとの重みが違う」
暗黒剣士「お褒めの言葉、有難く頂戴します。――ハァッ!」
魔王「うぉっと!? いいね、そうこなくっちゃな!」
:
:
暗黒剣士「魔王様、手合せ有難うございました」
魔王「おう、オレも楽しかったぜ。ありがとうな」
暗黒剣士「では、私はこれから持ち場に向かいます」
魔王「ああ、ご苦労さん。……ふぁあ」
暗黒剣士「眠そうですね、魔王様。大丈夫ですか?」
魔王「いやー、昨日ちょっと寝れなくてさ。ま、大丈夫だろ」
679 = 1 :
暗黒剣士「そうですか、あまりご無理をされないように」
魔王「そうするわ。心配してくれてありがとうな」
暗黒剣士「いえ、礼を言われるほどのことでは……、あ、魔王様」
魔王「なに?」
暗黒剣士「次回の特訓は、いつになさいましょうか?」
魔王「あー、……そうだな」
『 明日、魔王城に帰る。 』
魔王「……とりあえず、今後の予定もわからんし、また気が向いたら頼むわ」
暗黒剣士「かしこまりました。それでは行ってまいります」
魔王「おう、じゃな。がんばれよ」
魔王「…………」
680 = 1 :
魔王「……あー、今日で魔王城ともおさらばと思うと、なんか寂しいな」
魔王「二日しか経ってないのに、いろいろあったなぁ」
魔王「…………」
魔王「あいつら、いつこっち来るのかな」
魔王「せめて、昼飯食ってから帰りたいな」
魔王「…………」
魔王「あ! そんなことより、朝飯が先だ! あさめしあさめしー♪」
魔王「…………」
魔王「……はあ」
681 = 1 :
~城~
王様「よくぞ来た勇者よ! そなたらの旅の成果を、冒険の書に記録してもよいかな?」
勇者「はい」
王様「しかと記録したぞよ。ではゆくがよい! 勇者よ!」
勇者「はい」
勇者(あの弱小が強く勧める割には、案外あっさりしてたな)
勇者(しかし、二回しか来ていないのに、この貧弱な城も見納めとなると、どこか感慨深い)
戦士「なーんか、久々にお城に来た気がするなー」
僧侶「二日ぶりなんですけどね」
魔法使い「それにしても、妙だねぇ」
勇者「何がだ、魔法使い」
魔法使い「見てごらんよ」
682 = 1 :
学者「資材はこちらでよろしいですか?」
宮廷魔導士「ああ、確かに。では、あの梱包済みのやつを一階に降ろしてもらえるかい?」
学者「かしこまりました。直ちに」
兵士「隊長! 馬車と馬の手配、もう少し時間がかかりそうです!」
隊長「遅いぞ! あと40分後には出発なんだ! 何が何でも間に合わせろ!」
兵士「はっ!」
勇者「……ずいぶんと慌ただしいな」
僧侶「みなさん、走り回ってて、お忙しそうですね」
魔法使い「ね? お城っていつもこんなんだっけ?」
戦士「えー、いつもこんなんじゃなかったっけ? おれ、以前ここで働いてたけどさ」
魔法使い「戦士ちゃんが言うと、頼りになるはずのセリフも、頼りなくなるねえ。信憑性的な意味で」
勇者「……興味がわいた。少し探るか」
魔法使い「んー、では行きますか」
683 = 1 :
勇者「おい、そこの」
宮廷魔導士「おや、これはこれは勇者様。ご機嫌麗しゅう」
勇者「これから何があるんだ? ずいぶん賑やかな様子だが」
宮廷魔導士「いえ、勇者様がお気になさるようなことでもありませんよ」
魔法使い「でも、珍しくないかい? 学者さんも兵士さんも、どたばた走り回ってさ」
宮廷魔導士「我々としては、極秘任務ゆえ、外部の人間には、あまり口外したくないんですけどね」
魔法使い「そこをなんとか」
宮廷魔導士「困りますね」
勇者「魔法使い、その辺にしておけ。とりあえず、極秘任務ということは分かったんだ」
魔法使い「ちぇ、了解ー。あきらめが早いなぁ、勇者ちゃん」
勇者「誰があきらめると言った?」
魔法使い「え?」
勇者「みんな、ついてこい」
684 = 1 :
~城・研究室~
戦士「相変わらず、ここは本が多いなー」
僧侶「こちらの方々も、忙しそうですね」
魔法使い「なるほど、上位の人間が口を割らないなら、他へってことか」
勇者「そういうことだ。……おい、そこの」
老学者「ほえ? おおお勇者様、わざわざこんな所まで足を運んでくださるとは」
685 = 1 :
勇者「一つ質問がある。今日なにかあるのか? 城内がやけに騒がしいが」
老学者「うーむ、他の者にはあまり言うなと言われとっての。なんといったらよいか……」
勇者「言える範囲でいい。少し気になっただけだからな」
老学者「ふむ、そういうことなら、――実は、研究中だった魔導具が先日ついに完成しましてな」
戦士「魔導具?」
魔法使い「魔力の籠った道具のことね。使うと、魔法を使った時みたいな効果が表れる」
老学者「左様。試験運用も上々、ゆえにこれから城外で、実際に使ってみようというわけでして」
僧侶「それで馬車の手配があったんですね」
老学者「まあ、わしから言えるのはこのくらいかのぉ」
魔法使い「ありがとー、おじいちゃん。参考になったわ」
勇者「世話になった……、ではそろそろ、――!?」
戦士「ん、どうした? 勇者」
勇者「少し待ってろ」
686 = 1 :
ゆうしゃは ほんだなを しらべた。
ゆうしゃは 「ゆうしゃのけっとうとでんしょう」を みつけた! ▼
魔法使い「『勇者の血統と伝承』? へえ、面白そうな本じゃない」
僧侶「かなり古い本ですね」
老学者「確かもう廃版になっとる本じゃぞ。もう出回っとらんから、入手困難で希少な本じゃ」
勇者「じいさん、この本、借りて行きたいんだが……」
老学者「ふぉっほ、勇者様のお頼みとあらば、お断りできんとも」
勇者「ありがとう、助かる」
687 = 1 :
戦士「さーて、冒険の書も記録したし、そろそろ行くか?」
勇者「いや、まだだ」
僧侶「といいますと、どちらへ?」
勇者「まだ、充分なアイテム補充をしていない。少し買い物にでかけるぞ」
魔法使い「そうねー、古代の迷宮でけっこう使ったしね」
勇者「そのあとは、母さんに挨拶してから、魔王城に行く」
魔法使い「お、えらいぞ。ちゃんと顔見せに行くなんて」
勇者「この間、そう言われたからな」
勇者(……それに、実質これが最後になるかもしれないからな)
勇者「というわけで諸君、まずは買い物だ」
戦士 & 僧侶 & 魔法使い「おー!」
688 = 1 :
本日の分はここまでです。読んでくださりありがとうございます。
ちょっと遅れてしまい申し訳ないです。週一更新がんばります。
目標木曜、あるいは今週中にまた来ます。
692 :
おつ
695 :
魔王(勇者)は溶岩風呂にはいったのか気になる
696 :
~魔王の部屋~
側近「本日の朝食は、魔獄高原の採れたて黒イモのポタージュとおかずパンケーキです」
魔王「……ん」
側近「パンケーキは、添えてあるトマトソースでお召し上がりください」
魔王「……おう」
側近「……魔王様、大丈夫ですか?」
魔王「んへ!? な、なにが!?」
側近「あまり元気が無さそうでしたので」
魔王「あー……」
697 = 1 :
魔王「なんていうかさ、もうすぐ魔王帰ってくるんだよな?」
側近「そうですね。そのように聞いております。何とも嬉しいことです」
魔王「……そうか、側近は嬉しいか」
側近「まお……、勇者様はどのように感じておいでですか?」
魔王「うーん。正直、……複雑」
側近「へえ、意外ですね。てっきり勇者様も喜んでいるのだとばっかり」
魔王「そりゃあ、仲間とかに会えるのは嬉しいよ。二日ぶりだけど、やっぱり嬉しい」
側近「では、なぜ複雑な心境に?」
魔王「なんて言ったらいいんだろうな……」
698 = 1 :
魔王「たった二日だけど、いろんなことがあったよな」
側近「はい」
魔王「短いなりに、魔物や魔王軍のこととか少しだけ見れて、ちょっと勉強になった」
側近「まあ、魔王として生活できる勇者なんて、ごくまれかつ希少に違いありません」
魔王「勇者としてこれから何ができるのか、考える機会にもなったけど……」
側近「けど?」
魔王「魔王城から離れるのがさ、なんだかさみしいんだ」
側近「…………」
699 = 1 :
魔王「情が移ったっていうのとは、ちょっと違うと思う」
魔王「愛着が湧いたっていうのは、近いけどやっぱり違う」
魔王「側近にもたくさん世話になった。勇者なのに、魔王軍のみんなと知り合えて良かった」
魔王「だからかな……。離れるのがさみしい」
側近「…………」
側近「魔王様、一つ質問があります」
魔王「ん、なに?」
側近「貴方は誰ですか?」
魔王「え? 勇者だけど?」
側近「なら、何も問題ないではありませんか」
魔王「なんで? なにが?」
700 = 1 :
側近「貴方は勇者です。ゆえに、いつでも魔王城にお越しください」
側近「我々魔王軍精鋭部隊が、全力をもっておもてなし致します」
側近「要は、いつでも会いにきてよろしいということです」
側近「当然、魔王の顔ではなくなるのですから、立場は変わるでしょう」
側近「しかし、仲間に隠れて、心のうちで密かに懐かしむくらいは、できるのではないですか?」
魔王「…………」
魔王「ありがとうな、側近。んじゃあ、お言葉に甘えて、ときたまお邪魔させてもらうよ」
側近「ええ、いつでもどうぞ。全兵力を用いてねじ伏せますから」
魔王「容赦ないなぁ」
側近「さ、魔王様。早くお召し上がりください。せっかくの料理が冷めてしまいます」
魔王「ああ、そうだな。いただきます」
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