元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
551 = 1 :
~魔王の部屋~
側近「魔王様、側近です」コンコン
側近「…………」
側近「……返事がないとは、珍しいですね」
側近「魔王様、失礼します」ガチャ
魔王「…………」
魔王「…………」
側近「魔王様……?」
552 = 1 :
魔王「あ……、側近か」
側近「どうしましたか、魔王様。顔色が優れないようですが」
魔王「いや、ちょっと胸糞悪いもん読んじまっただけだよ」
側近「といいますと?」
魔王「これだよ、これ」
側近「……ああ、魔物狩猟家の被害報告書ですか」
553 = 1 :
魔王「……魔物を罠にかけたり、襲ったりして、毛皮とか爪とか角とかをはぎ取ったり、」
魔王「子供の魔物が大人数で襲われて、連れ去られたり、」
魔王「しかも攫われた魔物は、闘技場や見世物で使われてるらしいな」
魔王「なかには、競売にかけられて、富豪に飼われたり、兵士の特訓相手にされたり……」
魔王「新しい武具や道具を作るために、実験材料に使われることも……」
側近「…………」
魔王「なぁ……、人間ってこんなことばかりしてるのか……?」
側近「ええ、遠い昔から行われてる日常です」
魔王「!!」
側近「そうやって、人間は進化してきたのですよ。魔物を倒して強くなり、魔物を材料に武器を作る」
魔王「…………」
側近「しかし、こういう物騒なことが増えたのは、数千年前からのことですかね」
魔王「…………」
側近「魔物から身を守るためでなく、魔物を使って私利私欲を満たすようなことが始まったのは……」
554 = 1 :
魔王「……汚ねぇな」
側近「分かりましたか? 魔王として生活するということは、こういうことなんです」
魔王「なに……?」
側近「戦闘では最前線には出ませんが、人間と戦う以上、奴らの本性を目の当たりにする」
側近「気をしっかり持ってください。書類で見ることはまだ序の口です」
側近「魔王生活がまだ続くなら、これよりひどい惨状を知る機会もあるでしょう」
魔王「……オレは」
側近「……?」
魔王「いつまで、魔王をやればいいんだ……?」
側近「……私には分かりかねます。どうぞ魔王様にお聞きください」
555 = 1 :
側近「それと、魔王様。もうすぐ夕食の支度ができますよ」
魔王「……わかった」
側近「失礼します……」
――パタン
側近「…………」
側近(食事の話をしても、あまり喜ばなかった)
側近(……それなりにショックを受けてるってことかしら)
556 = 1 :
魔王「…………」
魔王「…………」
―― 人間さえ良かったら、なんでもいいのか? ――
魔王「……オレは、」
―― 魔物や魔族の平和は、どうでもいいのか? ――
魔王「……一体、誰を守ったらいいんだ?」
557 = 1 :
本日はここまでです
読んでくださりありがとうございます
また今週来ます
558 :
おつ
561 :
乙!
なんだかワクワクする展開になってきた!魔王(勇者)がどう動いて行くのかがスゲー楽しみw
562 :
おつー
目指すべきは調和ある対立かな
563 :
乙乙
564 :
~貧民街~
僧侶「……っしょ、っと」
僧侶「移動呪文が使えない身ってのは辛いですね……」
僧侶「でも、アイテムで補えるから良しとしましょう」
僧侶「帰りの分も買いましたし、綺麗なお花も買えましたし、」
僧侶「お小遣いをくれた勇者様に大変感謝ですね」
僧侶「…………」
僧侶「…………」
僧侶「……久々に来たなぁ」
僧侶「あ、いけない。こんなとこで、ボーっと立ってる場合じゃありませんでした」タタタッ
565 = 1 :
~貧民街・墓地~
僧侶「…………みなさん、やっとお墓参りに来れました」
僧侶「勇者様の旅に加えてもらってから、一度も来れてませんでしたね」
僧侶「墓標もこんなに汚れて……、きれいにしてあげないと」パシャン
僧侶「あとお花も添えて……」
僧侶「ふう、きれいになりました」
僧侶「ねえ……、聞いて頂けますか? あれから、勇者様の仲間にしてもらえたんですよ」
僧侶「おかげで、こっちにはなかなか来れなくなってしまったんですけど、」
僧侶「もうすぐ、魔王を倒せそうなんです。そしたら、平和な世の中になりますよ」
僧侶「…………」
僧侶「…………」グスッ
僧侶「あ、泣いちゃ駄目です」ゴシゴシ
566 = 1 :
~南の港町・海の上のレストラン~
勇者「まさか、波止場の桟橋の先にこんな店があったとはな」
青年「一応、この町の観光スポットでもあるんですよ。料理も眺めも素晴らしいとのことで」
勇者「詳しいんだな」
青年「僕の拠点から、もっとも近い町ですからね、ここは」
勇者(海底神殿か……、少し距離はあるが、ここからなら確かに近い)
青年「ちなみにここ、個室もあるんですよ。だから……」
勇者「他人に聞かれたくない話をするのに、うってつけということか」
青年「話が早くて助かります」
567 = 1 :
:
:
勇者「ほう、個室からの眺めもいいものだな」
青年「二階ですからね。丁度、夕日が落ちる時間に来れてよかったですよ」
勇者「……綺麗だな」
青年「そうですね」
勇者「それで、話とは?」
青年「ああ、いくつかお聞きしたいことがあったんですよ」
勇者「なんだ?」
青年「貴方は何者なのか、なぜ勇者に身を変えたか、勇者はどこにいるのか、こんな感じですね」
勇者「聞きたいことが多いようだな」
青年「他にも聞いてみたいことはあるんですけど、それはまた思いついた時にでも……」
勇者「ちなみに、俺からも聞きたいことがあるんだが、」
青年「構いませんよ、お好きな時に質問してください」
568 = 1 :
青年「それでは、最初の質問。貴方は何者ですか?」
勇者「…………」
勇者(……当然、魔王だということは伏せるべきだな)
勇者(昨晩、宿屋に側近が来たことで、側近が俺の正体に気付いたことはわかった)
勇者(側近は、口が固いから信用できるが、海魔人等の幹部や軍の者には、)
勇者(依然知らせないべきであろう。余計な混乱を招くだろうからな)
勇者(……嘘でもつくか)
勇者「……下流魔族の末端の者だ。一族の名は伏せさせてくれ、口にする価値もない」
青年「なるほど」
青年(やはり魔族か。覇気がなかったのも、下流だからといえば納得できる)
569 = 1 :
勇者「そういう貴様は、何者だ?」
青年「魔王軍幹部海域担当、海魔人です」
勇者(読み通りだな……。このまま軍の近況でも聞いてみるか)
勇者「ほう、魔王軍の者に会ったのは久しぶりだな。軍の皆はどうしている?」
青年「……なぜ、そんなことをお聞きになるんですか?」
勇者(いい質問だな……。俺と魔王軍の関連性を、探ろうとしている)
勇者「ずいぶん昔に、魔王軍で働いていたんだ。今はもう引退した身だが」
青年「なんと、魔王軍のOBでしたか。ちなみに、どの部隊に?」
勇者(いちいち、細かいことを聞く奴だな。現時点と今後の会話で、不自然にならなそうなところは……)
勇者「……魔王軍人事部だ」
青年「これは失礼……。オフィスの所属だったんですね」
青年(魔族なのに、隊長でも将軍でもなく、室内勤務だなんて……。確かに、一族の名を伏せたくなるわけだ)
570 = 1 :
――コンコン
ウェイトレス「お食事をお持ちしました」
青年「どうぞ」
ウェイトレス「失礼いたします」ガチャ
ウェイトレス「シーフードピラフと、タラとムール貝のアクアパッツァのお客様」
勇者「はい」
ウェイトレス「海藻スープと、6種の新鮮海藻サラダのお客様」
青年「はい」
ウェイトレス「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
青年「ええ」
ウェイトレス「ごゆっくりお召し上がりくださいませ」
――パタン
571 = 1 :
青年「ところで、人間界の食物は、お口に合いましたか?」
勇者「……いや、魔界のものと比べて、極端に味が薄い上に、栄養価も低そうだ」
青年「ですよね。故に、人間界で行動する魔物や魔族は、主食が人肉となる」
勇者「しかし……、ここの料理はなかなか美味いな」
青年「そうですか。たぶん、新鮮な素材だからですよ。幾分かはマシといったところですかね」
勇者「……ところで、貴様なぜ海藻ばかり食べてるんだ?」
青年「知らないんですか? 僕の一族は、海藻が主食なんですよ」
勇者「ああ……、知らなかった」
勇者(幹部連中と食事を共にしたこと自体、少ないから無理もない)
勇者(酒宴の席も、配下の者達とは離れていたし……)
勇者(……そもそも、いつも一人で食事していたからな)
572 = 1 :
青年「ところで貴方、なぜ勇者に身を変えていたんですか?」
勇者「…………」
勇者(……退屈だったから、という本音で通るだろうか、ここは)
勇者(だが、下流魔族の身分なら、勇者になる以外にも、退屈をまぎらす方法はありそうだし……)
勇者(……どうしたものか)
青年「あ、もしかして」
勇者「?」
青年「勇者に身を扮して、魔王を倒し、魔王の座を狙っていたとか?」
勇者「…………」
勇者(……もういいか、そういうことで)
勇者「まあ、そんなところだ」
573 = 1 :
青年「やはり。下流の出とはいえ、出世欲はそれなりにあるみたいですね」
勇者「これでも魔族だからな」
青年「勝算はありますか? 魔王に勝つ策は……」
勇者「いや、皆目見当がつかない。そもそも力の差がありすぎるからな」
青年「下流魔族と、魔王ではね。もしよかったら、僕も手を貸しますよ?」
勇者「……何?」
青年「僕も魔王の座を狙う者です。協力すれば、勝率は上がるかもしれませんよ?」
勇者(……やはりこいつも、野心があったか)
勇者(むしろ野心が無い奴の方が珍しいからな……)
勇者(…………)
勇者「助け手を差し伸べてくれるのは嬉しいが、その必要はない」
青年「え?」
574 = 1 :
勇者「諦めようと思うんだ。やはり俺なんかでは、魔王は倒せない」
青年「……なるほど」
勇者「近日中に、本物の勇者も解放するつもりだ」
青年「貴方はその後、どうするおつもりで?」
勇者「人目に触れないように隠居するよ。というか、元の生活に戻るだけだ」
青年「残念ですね、せっかくのチャンスをみすみす手放すだなんて」
勇者「いいんだ、これで。俺はひっそりと静かに生活するのが、性に合ってるんだ」
青年「…………」
勇者(そんな生活、一日たりともしたことないけどな……)
勇者(性に合うかは不明だが、憧れているのは確かだ)
勇者(いつか、誰にも煩わされず、誰も煩わさないような、静かなとこへ……)
勇者(……どうせ、当分無理だろうけどな)
575 = 1 :
青年「それでは、本物の勇者の居場所は?」
勇者「言う必要はないだろう? もうすぐ解放するんだから」
青年「……それもそうですね」
青年(これじゃあ、翼竜の作戦は使えそうにないな)
青年(そもそも、漁夫の利を狙うような卑怯な手段だったし……)
青年(魔王になるんだったら、やはり自分の手で魔王の首を落とさないと、)
青年(他の者たちも、ついてこないだろうからな)
青年(今回の策は、潔く諦めよう……)
青年「ところで、貴方の方から聞きたいこととは?」
勇者「ああ、魔王軍の連中は元気にしてるか? 何か変わったことは?」
青年「そうですねぇ……。さして変わりは……、あ」
576 = 1 :
勇者「……何かあったのか?」
青年「……はい、ありました。それも今日あがったばかりの、新鮮なネタが」
勇者「聞かせてくれないか? どうせ、俺は孤立している身分だ。他人に漏らすことはない」
青年「それもそうですね。では、これはトップシークレットですよ?」
青年「魔王軍幹部の翼竜が、裏切りを働いたため、魔界軍法会議にかけられています」
勇者「……翼竜が?」
青年「判決はまだ出ていませんが、しばらく幹部の席が一つ空くことは確かかと」
勇者(翼竜……。老齢だが、経験値の豊富さと、したたかさは幹部勢でもずば抜けていた)
勇者(それゆえに、裏切りを企む頭脳もあったというわけか……)
勇者(……このタイミングで、翼竜を失うのは痛いな)
577 = 1 :
青年「しかし、幹部の空席は誰に埋めてもらうべきですかね」
青年「翼竜の部隊と配下は、幹部の中で最も多い」
青年「それだけの数の管理を、今いる幹部に掛け持ちさせて管理するのは到底不可」
青年「しかし、幹部代理が務まる奴もいるかどうか……」
勇者「…………」
青年「ちなみに、貴方はどうお考えですか? 元人事部さん?」
勇者「……そうだな」
勇者「毒竜に任せてみたら、どうだろうか」
青年「げっ、毒竜!?」
勇者「なぜ、『げっ』なんだ?」
578 = 1 :
青年「だって彼、協調性無いし、死ぬほどマイペースだし、呪文使えないし、飛べないし……」
勇者「確かに、少し癖のあるやつだが、責任感や忠実さ、戦闘技術はなかなかのものだぞ」
青年「んー、まあそうですけど」
青年(仮にも、僕や翼竜に一撃喰らわせたやつですからね……)
勇者「幹部には力不足かもしれないが、幹部代理なら務まるかもしれん」
勇者「うまく行けば、これを期に伸びるかもしれないしな」
青年「なるほど、……一理ありますね」
青年(でも、あいつと一緒に会議席につくのか……。かなり複雑な気分だ)
青年(まともに会議出来んのかな、あいつ……)
579 = 1 :
:
:
ウェイトレス「ご来店ありがとうございました」
勇者「久しぶりに魔王軍の者と話せて楽しかったよ。ありがとうな」
青年「こちらこそ、わざわざお時間作ってくださり、大変感謝です」
勇者「気をつけて帰れよ」
青年「貴方こそ、お気をつけて」
勇者「ああ……」
勇者「…………」
勇者「……行ったか」
580 = 1 :
勇者(しかし、いろいろ知ることができて良かった)
勇者(翼竜の埋めあわせは、早急に手配しなければ……)
勇者(それに、幹部達と翼竜の配下にも連絡をいれないと……)
勇者(…………)
勇者(…………)
勇者(…………)
勇者(……つまりは、潮時だな)
勇者(――明日、魔王城に帰還しよう)
581 = 1 :
今日はここまでです。
読んでくださりありがとうございます。
次回更新は来週になります。
583 :
毒龍幹部入りか
585 :
乙です!
つづきが気になる!
586 :
乙
面白いねぇ
587 :
>>1です
たぶんこれから、週一か週二の投下になると思います
以前より、ペースが遅くなります
すみません
588 :
それでも充分早いし問題ない
楽しみにしてるよ
589 :
~村はずれの小屋~
魔法使い「ちょっと師匠ーーー! どういうことなのよーーー!」バターン
大賢者「いきなり何ですか。もう夜ですよ」
魔法使い「夜も昼も関係無いわよ、事件よ事件!」
大賢者「勇者が『伝説の剣』を装備したのでしょう?」
魔法使い「え、何で知ってんの!?」
590 = 1 :
大賢者「各地に、使い魔を飛ばしてますからね」
大賢者「ダンジョン内部までは使い魔は侵入できませんけど、」
大賢者「出てきた時には、勇者は『伝説の剣』を装備してましたから」
魔法使い「……なるほどねー」
大賢者「……しかし、偽物と踏んでたはずの勇者が、伝説の武具を装備できたとなると」
魔法使い「いったいどういうことなのよ。私じゃもうよく分かんないわ」
大賢者「勇者はやはり本物だった、あるいは……」
魔法使い「あるいは?」
大賢者「勇者の素質を持つ者が、本物になりすましていた」
魔法使い「え、なによ。勇者の素質って」
591 = 1 :
大賢者「では、ここで質問です」
魔法使い「私が質問したのに、なんで師匠が質問するのよ」
大賢者「勇者とは、どうやったらなれるでしょうか?」
魔法使い「ええ!? ……そりゃあ、なりたくてもなれるもんじゃないでしょ」
大賢者「なぜそう思いますか?」
魔法使い「だって、転職できるとこに行っても、勇者にはなれないじゃん?」
大賢者「そうですね。勇者は、普通の人ではなれません」
魔法使い「じゃあ、どうやったらなれるのさ」
大賢者「いや、それをわたしが聞いてるんですけど」
魔法使い「降参降参、ぎぶあっぷー」
大賢者「しょうがない弟子ですね、あなた」
592 = 1 :
大賢者「勇者になるには、――勇者の血を引いていないといけません」
魔法使い「え?」
大賢者「わかりませんか? 勇者は血統によってなれるのですよ」
魔法使い「いやー、わからん」
大賢者「血統というか世襲制というか、つまり勇者と血のつながりがあれば、勇者になれます」
魔法使い「いや、そういうのは分かるけど、根本が分からん」
大賢者「といいますと?」
593 = 1 :
魔法使い「なんで、勇者の血を引いてたら勇者になれるの?」
魔法使い「そもそも、勇者の血っていっても、最初に勇者になった奴はどうだったの?」
魔法使い「一番最初の勇者は、どうやってなったの? 何の血を引いてたの?」
大賢者「…………」
大賢者「…………」
大賢者「…………」
魔法使い「おーい師匠ー」
大賢者「……大賢者でも分からないことはたくさんあります」
魔法使い「今、回答から逃げたでしょ」
大賢者「鶏と卵はどちらが先なんでしょうね?」
魔法使い「たしかにその類の問題と、似たような難解さを抱えてるけどさ」
594 = 1 :
魔法使い「じゃあ何? 師匠は、あの偽勇者が勇者の血を引いてると思ってるわけ?」
大賢者「そうです。伝説の武具は、勇者にしか装備できませんからね」
魔法使い「そこも不思議なんだけどね」
大賢者「伝説の武具は、特殊な金属でできています」
大賢者「伝説の武具は、装備する者が、真の勇者か見極めることができるんです」
大賢者「まるで武具自身が意思を持っているかのようにね」
魔法使い「……なんか曰くつきの品みたいな言い方ね」
大賢者「言い得て妙かもしれませんよ? 勇者にしか装備できないという呪いがかけられた装備品」
魔法使い「伝説を呪い呼ばわりとは、師匠やるわね」
大賢者「年寄りのたわ言です」
595 = 1 :
魔法使い「しかしあの偽勇者はいったい……。勇者のお父さん、隠し子でも作ったのかな……?」
大賢者「もっと前の世代かもしれませんよ?」
魔法使い「……なんにせよ、あの偽物のことをもっと知らないとだね」
大賢者「しかし、どう尋ねたらよいか……。皆目見当つきません」
魔法使い「さすがの師匠もお手上げかぁ……。まあ、一緒に旅してたら分かるでしょう」
大賢者「おや、今回はあっさりと引き下がるんですね」
魔法使い「偽物とはいえ、勇者の素質があるからね。魔王が倒せりゃ、私はそれでいいわ」
大賢者「そうですか……」
596 = 1 :
魔法使い「あ、そうそう。これあげる」
大賢者「おや、お土産ですか?」
魔法使い「南の港町で買ったの。おさかなさんクッキー。師匠、こういうの好きでしょ?」
大賢者「はい、好物です。可愛らしいフォルムですね」
魔法使い「ドコサヘキサエン酸配合だから、食べたら頭よくなるってさ」
大賢者「DHAですね分かります。じゃあ、これを食べながら、今回の勇者の件について考えることにします」
魔法使い「また困ったら、遊びに来るわ。じゃ、私はそろそろ行くわね」
597 = 1 :
大賢者「あ、ちょっと待ってください」
魔法使い「なによ」
大賢者「――次にここへ来るときは、あなたのお友達も、全員連れてきてくださいね」
魔法使い「……!!」
大賢者「なんですか、その顔は。なにか不服でも?」
魔法使い「えー、だって気がすすまない」
大賢者「なぜです?」
魔法使い「だって、師匠と話してると素が出ちゃうんだもん」
大賢者「といいますと?」
魔法使い「勇者たちと一緒にいる時は、キャラ作ってんのよ私」
大賢者「知ってますよ。使い魔から聞いてますから」
魔法使い「この性悪……」
大賢者「あなたが他の人の前で、少しでも本当の自分が出せるように、鍛えてあげたいんですよ」
598 = 1 :
魔法使い「いつまでも、師匠面しないでほしいな。私はもう一人前よ」
大賢者「そうですか。まあ、いつでも遊びに来てください。わたし暇なんで」
魔法使い「そう言われると、むしょうに行きたい気持ちがなくなる……」
大賢者「お茶ぐらい入れてあげますよ。あ、もし良かったら、これどうぞ」
魔法使い「なにこれ?」
大賢者「わたしのオリジナルブレンドの薬草茶の茶葉です。お仲間さん達と、一緒にどうぞ」
魔法使い「あら、良い匂い。ありがとね、師匠」
大賢者「クッキーのお礼です」
魔法使い「じゃあね、師匠。また来るわ」
大賢者「ええ、楽しみにしてますよ」
――パタン
大賢者「……さて」
大賢者「まずは、どれから頂きましょうか……。あ、これはマンボウですね」
599 = 1 :
短いですけど今日はここまでです。
読んでくださりありがとうございます。
また今週来れたら来ます。
600 :
一台目勇者がかなり昔の人だったら案外人類の98%くらいは勇者の血をひいてたりして
みんなの評価 : ★
類似してるかもしれないスレッド
- 魔王「お前、実は弱いだろ?」勇者「……」 (333) - [48%] - 2016/6/11 10:15 ★
- 提督「俺の嫁艦をバカにすると言うのか?」 (218) - [47%] - 2016/3/17 7:15 ☆
- 魔王「助けてくれぇ勇者ぁ!」 (76) - [45%] - 2018/10/15 2:47
- 姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」 (815) - [45%] - 2012/7/11 15:45 ★
- 上条「そろそろ怒っていい?」 イン「ん?」 (465) - [43%] - 2011/5/30 6:31 ★★★
- 魔王「余は何をやっておるのだ……」 (827) - [42%] - 2012/1/15 14:30 ★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について