元スレ魔王「俺も勇者やりたい」 勇者「は?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
202 :
ファンになったわ
頑張って
203 :
>>195 どのクラスの宿に泊まるのかな?
204 :
~魔王城~
側近「魔王様」
魔王「ぐががー……zZZ」
側近「魔王様、起きてください」
魔王「ふごごー……zZZ」
側近「…………」
側近「とっとと起きてください、魔王様」グイー
魔王「いっ、だだだ! やめて、角引っ張らないで! ひっこ抜ける!」
205 = 1 :
側近「なんだか、私が来ると、半分の確率で魔王様が寝てる気がします」
魔王「しょうがないだろぉ、慣れない事ばかりで、こっちは疲れてるんだよ」
側近「疲れたら、回復呪文を使えばいいじゃないですか」
魔王「MPの無駄遣いはあまりしたくないの! 冒険中にMP0になった時の、恐ろしさといったら……」グスグス
側近「あなた今、魔王なんですから、そんな心配は無意味ですよ。仕方が無い――」
まおうのそっきんは じゅもんをとなえた!
まおうの たいりょくが かいふくした! ▼
魔王「あ、疲れがとれた」
側近「回復魔法ぐらい、下々の者でも使えます。いつでも頼りにしてください」
魔王「そっか、……ありがとな」
側近「側近ですから当然です。ところで、魔王様、夕食の準備が出来たそうですが……」
魔王「おおおお! 飯ーー! 行く行く! 食べるーーーっ!!」
側近(……気のせいか、呪文かけた時より、元気が出てるような)
206 = 1 :
~村~
魔法使い「はーい、到着ー」
戦士「おー、もう夕焼けが」
僧侶「迷宮にいた時は気づかなかったですけど、けっこう時間が経ってたんですね」
勇者「ところで魔法使い。ここは、先ほどの街ではないようだが?」
魔法使い「ん? 宿に泊まるってだけだから、あたしの独断で移動先決めたんだけど」
勇者「……普通そういうことは、相談してから決めてほしいんだが」
魔法使い「まーまー、細かいこと気にしない」
勇者(適当すぎるというのも、難のある性格だな……)
魔法使い「ちなみにこの村、温泉が有名で、宿屋にも露天風呂がついてるってさ」
勇者「素晴らしい働きぶりだぞ、魔法使い」グッ
僧侶(勇者様が、真顔でサムズアップを……!)
207 = 1 :
戦士「にしても、なつかしいなー」
僧侶「この村に来た時は、冒険の中盤でしたっけね」
戦士「あ、そういう意味じゃなくてさ。おれ、この辺の生まれなんだよね」
魔法使い「あらそうなの、初耳ね」
戦士「ちょうど、この村の隣町に住んでたんだけど、もう町は無くなったんだ」
僧侶「え、どうしてですか?」
戦士「魔物の大群に襲われたんだよ」
208 = 1 :
戦士「おれが7つの時だから、20年前のことだったかな」
戦士「近くに住んでた大賢者が助けに来てくれたから、死傷者は少なかったけど、……」
戦士「町の9割は壊滅、毒を使う魔物が多かったから、戦闘で毒沼がいっぱいできちゃって……」
戦士「毒沼の埋め立ては、技術的にまだ不可能。だから、町の再建もあきらめて……」
戦士「生き残った人達は、おれを含め、別の所に引っ越していったよ」
勇者「…………」
勇者(20年前の襲撃作戦か。確かに、そんなこともあったな)
勇者(その時の生き残りが、こうして勇者の仲間になっているとは……)
勇者(偶然か、はたまた運命か……)
戦士「っと、辛気臭い話になって悪かったな。さ、宿泊まろうぜ、宿! 温泉ー!」
209 = 1 :
僧侶「戦士さん、ご苦労されてたんですね……」
魔法使い「……あー」
僧侶「でも、あんなに明るく振舞って……」
魔法使い「うーん……」
僧侶「あ、すみません、ちょっと涙が……」グスッ
魔法使い「……ってことはぁ」
僧侶「……魔法使いさん? 何をそんなに一生懸命考えてるんですか?」
魔法使い「――え? ああ、いやいやいや、べっつにー」
魔法使い(……まさか、ね)
210 = 1 :
~宿屋~
主人「一晩60Gですが、お泊りになりますか?」
勇者「はい」
主人「では、ごゆっくりお休みください」
魔法使い「あ、御主人さん。露天風呂は何時までやってますかー?」
主人「夜の間は何時でもどうぞ。うちは、朝食時に大浴場の掃除をしていますので」
魔法使い「ありがたいねぇ、どうもー」
主人「では、こちらお部屋の鍵になります」ジャラジャラ
勇者(……二つ?)
魔法使い「じゃあ、こっちのもーらい!」ヒョイ
僧侶「それでは、勇者様、戦士さん、また明日……」
勇者(……ああ、男女で部屋を分けてるのか)
211 = 1 :
~宿屋・男部屋~
戦士「っはー、疲れたー」
勇者(……質素な家具に、木造の床と壁。掃除はいきわたっているらしい)
戦士「夕日も沈んじまったなぁ。風呂入る頃には、星が見えっかな?」
勇者(ベッドのスプリングはいまいち。俺の部屋のに比べたら、遥かに硬い)
戦士「……勇者、なにシーツの匂い嗅いでんの?」
勇者(洗剤の匂いと、日に干した匂いがする……。洗いたてだが、手触りはそこそこか)
勇者(これらを踏まえ、この宿屋の総合評価は――)
勇者「5点だな」
戦士「え、何点中5点?」
212 = 1 :
戦士「しかも、何の点数だよ」
勇者「この宿の評価だ。10点中5点」
戦士「100点中じゃなくて良かった……。ていうか、露天風呂に入る前に、評価決めるなよ!」
勇者「そうか、そういえばまだ風呂に入ってなかった」
戦士「というわけで、一緒に行こうぜ勇者。いやー、楽しみだなー、温泉」
勇者「ああ、じゃあ身体洗うの頼む」
戦士「はぁ? なんで? しかも俺が?」
勇者「なぜって……」
勇者「風呂に入る時は、下々の者が身体を洗ってくれるのだろう?」
戦士「なんなのその王子様発言」
213 = 1 :
戦士「16にもなって甘えたことを抜かすな! 自分でやるんだぞ! いいな!」
勇者(……そうか、人間界ではそういうことになっているのか)
勇者(となると、こいつが身体を洗うところを見て、覚えるしかないな)
勇者(まさか、勇者と入れ換わって、こんなことを学ぶはめになるとは思わなかった……)
勇者(しかし、人間界の温泉は初めてだな)
勇者(魔界のはいくつか行ったことがあるが、さて、どれほどのものか)
勇者(…………♪)
戦士「お、着いたぜー」
214 = 1 :
~露天風呂・男湯~
戦士「おお、いいねぇ。岩風呂じゃん」
勇者(湯が、無色透明……)
戦士「さっさと脱いで、浸かろうぜー。お、ここに効能書いてある。泉質はアルカリ性単純温泉……」
勇者(硫黄の匂いが、魔界に比べてはるかに薄い。あのむせ返るような匂いが好きだったんだが……)
戦士「へー、疲労回復や美容、切傷とか擦り傷の外傷にも効くってよー」
勇者(……温度は、41~2度くらいか。ぬる過ぎる。湯どころか水じゃないか)チャプ
戦士「お、湯加減見てるのか? 勇者ー」
勇者(何より、最も納得いかないことが一つ……)
勇者「なぜ、溶岩風呂じゃないんだ……っ」
戦士「勇者、ここは地獄じゃねえぞ」
215 = 1 :
~宿屋・女部屋~
魔法使い「いやっほー! ベッドー!」ボフン
僧侶「魔法使いさん、乱暴に使ったらベッド壊れちゃいますよ」
魔法使い「いいじゃないのよー。無礼講ー」
僧侶「それにしても、一人15Gはけっこうしますね……」
魔法使い「でも、露天風呂つきと思ったら、けっこう安い方じゃない?」
僧侶「わざわざ露天風呂つきの宿屋に、泊まる必要はないような……」
魔法使い「たまには、こういうのもいいでしょ? 心身ともに疲れをほぐすみたいなさ」
僧侶「しかし……」
魔法使い「僧侶ちゃん、そんなお堅い頭じゃ、大好きな勇者ちゃんを振り向かせられないよ?」
僧侶「ぅひゃい!?」ビビクッ
魔法使い「ふむ、図星からの奇声とみた」
216 = 1 :
僧侶「そ、そそそそんなことありません!」
魔法使い「きゃはは、僧侶ちゃん、分っかりやすーい」
僧侶「私は神に仕える身です! そ、そのような不埒な色恋沙汰など……!」
魔法使い「でも、僧侶ちゃんが勇者を見てる時って、ザ・恋する乙女の眼してるよ?」
僧侶「はうっ!」
魔法使い「まあ、あたしは、かなり序盤で気づいてたけどね」
僧侶「そ、そんな昔から……!」
魔法使い「あははっ、僧侶ちゃん、顔まっかー」
僧侶「からかわないでください!」
217 = 1 :
僧侶「だいたい、なんでこんな時に、そんなことを……」
魔法使い「だって、もう魔王戦よ?」
僧侶「それとこれと、何の関係が……」
魔法使い「――魔王を倒せば、冒険が終わる」
僧侶「……!」
魔法使い「冒険が終わったら、このパーティーも解散よね。きっと」
僧侶「ゆ、勇者様と離れ離れ……!」
魔法使い「だからさ、離れる前に、自分の気持ちを素直に伝えた方がいいんじゃない?」
僧侶「…………」
218 = 1 :
魔法使い「まあ、確認したいことがあったら、事前に聞いておくのも手よ?」
僧侶「それは、つまり、例えば……?」
魔法使い「うーん、そうねぇ……」
魔法使い「『勇者様は彼女いますか?』とか」
僧侶「~~~~っ!? き、聞けるわけがありませんっ!」
魔法使い「えー、告白前の常套句でしょうに」
219 = 1 :
僧侶「もう! 私、お風呂入ってきますからね!」
魔法使い「はーい、いってらっしゃーい」
僧侶「……? 魔法使いさんは、行かないんですか?」
魔法使い「あたしはもうちょい、夜が更けてからでいいや。ちょっと済ませたい用事もあるし」
僧侶「……そうですか」
魔法使い「あ? 一緒に入りたい? 温泉に浸かりながら、恋の悩み相談でも……」
僧侶「け、けっこうです! 間にあってます!」
バタンッ!
魔法使い「あーあー、行っちゃった。いやー、それにしても面白かったなー」
魔法使い「…………」
魔法使い「――さて、私も行かなきゃ」
220 = 1 :
もう今週来れないかなと思ったら、運よく来れました。
本日はここまでです。
読んで下さった方、コメント&乙くださった方、有難う御座います。
それでは、また来週。
223 :
宿はthree starですね。
レストランイン?食事楽しみ…
224 :
サンスター
225 :
おっつん
226 :
~魔王城~
魔王「っはー、大満足だったー……」
側近「喜んでいただけたようで何よりです」
魔王「夕食はさらにボリュームがあったなー。あれなんだっけ? あのメインディッシュ……」
側近「暗黒牛のシャリアピンステーキ、真紅ワインソースですね」
魔王「そうそう、それそれ! あれマジ最高だった。肉柔らかすぎて、超感動」
側近「お気に召されたのなら、また次回作らせますよ」
魔王「おお! 頼む! あ、それとさ、側近」
側近「はい、何か?」
魔王「少し、気になったことがあるんだけど……」
227 = 1 :
側近「――なるほど、会議中の殺気ですか」
魔王「ああ、誰のか分かんなかったから、少し気になってて……」
側近「…………」
魔王「むしろ、なんで殺気持たれなきゃいけないのか分かんないし」
側近「そうですか。分からないのならば、説明をする必要がありますね」
魔王「うん……、ん?」
側近「――魔物の中には、魔王様の座を狙っているものが多数います」
魔王「……え?」
側近「分かりませんか? 上昇志向、支配欲、出世欲、功名心、野心ってやつですよ」
魔王「はあ……」
側近「魔物や魔族といった輩は、そういった願望が、ひときわ強いんです」
魔王「……」
側近「だから魔王様は狙われやすいのです。同胞である魔物や、魔族からも……」
228 = 1 :
側近「幹部ともなれば、そういう野望を心に抱えながら、仕える者もいるでしょう」
側近「なので、普段から用心をお願いしますよ、魔王様」
側近「魔王様の寝首を掻いて、のしあがろうと企む輩は二百といますから」
魔王「…………」
魔王(魔王の奴、そんな環境で魔王なんかやってたのか……)
魔王(どんくらい魔王やってるって言ってたけ、たしか500年?)
魔王(……なんか、可哀そうだな)
魔王(あいつの周りに、心から信じられる奴って、どれくらい居たんだろう……)
魔王「なぁ、側近」
側近「何でしょうか」
魔王「魔王はいつから魔王やってたんだ?」
側近「5歳ですよ」
魔王「へー、5歳……。……5歳っ!?」
229 = 1 :
側近「魔王様が5歳の時に、魔王様のご両親は人間に殺されました」
魔王「…………」
側近「なので、幼いとはいえ、止む負えず一人息子を、魔王にする必要があったのです」
魔王「……そうか」
側近「ところで、魔王様は、魔王に飽きたから勇者をやりたい、とおっしゃったんですよね?」
魔王「ん、ああ。そうだけど?」
側近「昼間に聞いた時は、びっくりしましたが、今なら納得できます」
魔王「……というと?」
側近「魔王様はきっと、魔王以外の生活がしたかったんだと思います」
魔王「……うん。5歳の時から魔王やってたら、そりゃ飽きるし、他の事したくなるよな」
側近「…………」
側近(……本当は、すぐにでも城に帰ってきてほしいですが、)
側近(魔王様の気が済むまで、羽を伸ばしてもらいたいのも、本心ね……)
側近(……魔王様、今頃どうしてるかしら?)
230 = 1 :
~露天風呂・男湯~
戦士「よーし、旅の疲れを癒すぞー」ザバッ
勇者(……なるほど、最初に頭から湯をかぶる、と)ザバッ
戦士「露天風呂だと、テンションあがるなぁ」
勇者(シャンプーを適量手にとり、手の平を擦り合わせて泡だてて……)
戦士「……勇者、さっきから何でこっち見てるんだ?」
勇者(……しまった、不審に思われたか。なんとか別の話に切り変えないと……)
勇者「……その、戦士はどうして、戦士になろうと思ったんだ?」
戦士「え、おれ? いやー、話すと長くなるんだけどさー」
勇者(……しまった、面倒くさいことを聞いてしまったようだ)
231 = 1 :
戦士「おれ、元々は戦士じゃなかったんだよ。城に仕えてた兵士だった」ワシャワシャ
勇者(指を立てて、泡だてたシャンプーで髪を洗う、と……)ワシャワシャ
戦士「子供の時から力自慢で、町のガキ大将みたいなこともしてたんだよ、おれ」ワシャワシャ
勇者(前髪、側頭部、後頭部、耳の裏……)ワシャワシャ
戦士「だから、こういう仕事合ってるかなーと思ったんだけど……」ワシャワシャ
勇者(……自分で頭を洗うと、人にやってもらう時ほど、そんなに気持ちよくないな)ワシャワシャ
戦士「上司と喧嘩しちまって、退職処分になったんだよね」ザバー
勇者(充分洗えたら、桶の湯をかぶって、泡を洗い落とす)ザバー
232 = 1 :
戦士「それからは、傭兵もどきでもやろうかなーって酒場に行ったんだけど」
勇者(次はリンスを出して……、リンスは泡立たないのか)
戦士「全然仕事来なくて、酒に溺れる生活になって……」ワシャワシャ
勇者(シャンプーと同じ要領で洗う……)ワシャワシャ
戦士「そんな時に、おまえに会ったんだよな」
勇者(よし、頭の洗い方をマスターしたぞ!)
233 = 1 :
――――――――――
―――――…
―……
「なぁ」
戦士「……ん」
「おっさん、飲みすぎはよくないぜ」
戦士「だぁれが、おっさんだー……。おれはまだ、27だ」
「そっか、ちなみにオレは今日16になったんだ」
戦士「はっ、酒も飲めねぇ餓鬼が、酒場なんか来るなよ……。とっとと帰れ」
「そういうわけにはいかないんだ」
戦士「あぁ?」
勇者「オレ、仲間を探してるんだよ。魔王を一緒に倒すために」
234 = 1 :
戦士「……するってぇと、お前が噂の勇者か」
勇者「ああ、そういうことだ」
戦士「世も末だなぁ。こーんな餓鬼に、世界を託すなんてよ」グビッ
勇者「だーかーらー、もう飲むなって。オレだって、一人じゃ無理だと思うから、仲間探してるんだよ」
戦士「一人でも百人でも無理なもんは無理だ。あきらめろ、餓鬼ぃ」
勇者「――まだ始まってもないのに、あきらめられるかよ」
戦士「…………」
勇者「オレだって、魔王と闘うなんて、正直怖いよ」
勇者「でも、誰かが闘わなきゃ、平和は訪れないんだ」
勇者「オレはこの世界に住むみんなを助けたい。でも、それは、オレの力だけじゃできない」
勇者「力を貸してくれないか? あんたみたいな強い人の力が、必要なんだ」
戦士「…………」
235 = 1 :
勇者「…………」
戦士「…………」
勇者「…………」
戦士「……」グビーッ
勇者「だからもう飲むなって!」
戦士「プハ……、そんな怖い顔すんなよ。こいつは最後の一杯だ」
勇者「へ?」
戦士「つまり、この酒場で酒に溺れる生活も、もうおさらばってことだ」
勇者「……ってことは」
戦士「行こうぜ、勇者。魔王を倒すんだろ?」
勇者「……! おうっ!」
―……
―――――…
――――――――――
236 = 1 :
戦士「……あれから2カ月かぁ。長かったような、短かったような」
勇者「…………」
戦士「なんにせよ、魔王を倒したら、もうこんな生活もおしまいだな」バシャァ
勇者「…………」
戦士「けっこう楽しかったんだけど、しゃあないよなー」
勇者「……おい」
戦士「ん、なに?」
勇者「リンスが目に入った時は、どうしたらいいんだ? 痛くて困る」
戦士「おまっ!? そういう時は我慢しないで、洗い流すんだってば!」バシャバシャ
237 = 1 :
~村はずれの小屋~
……コンコンコン
???「どうぞ」
魔法使い「ちわー、お久しでーす」
???「こんな夜更けに誰かと思ったら、貴女でしたか。大きくなりましたねぇ」
魔法使い「ざっと20年ぶりかしら。大賢者様もとい師匠も、元気そうで何よりね」
大賢者「ええ。すこぶる元気ですよ。それより、今宵はどのような用件ですか?」
238 = 1 :
魔法使い「近くまで来たから寄っただけよ」
大賢者「ああ、故意に近くまで来たんですよね。古代の迷宮から、呪文を使って……」
魔法使い「……何で知ってんのよ」
大賢者「各地に使い魔を飛ばしてるので」
魔法使い「のぞきは最低よ」
大賢者「老後のささやかな楽しみですよ。ご堪忍」
魔法使い「それより、まだ魔法で若作りなんかしてんの?」
大賢者「この姿だとけっこう便利ですから」
魔法使い「いい加減あきらめて、実年齢で生活したらいいのに」
大賢者「そう言われましても、わたし永遠の“ナインティーン”ですし」
魔法使い「“ナインティ”の間違いでしょ?」
大賢者「これは一本取られましたね」
239 = 1 :
大賢者「それにしても、本当に大きくなりましたね。あの頃とは見違えるようです」
魔法使い「20年も経ったら嫌でもそうなるわよ」
大賢者「あの頃……、あなたは確か10歳。泉の近くで泣きべそかいてたのを良く覚えてます」
魔法使い「どうかしてたね、私も。男の子との喧嘩に負けたーって大泣きして」
大賢者「そこを、わたしに見つかって、『仕返ししたいから魔法おしえて』ってなって……」
魔法使い「なんでそんなによく覚えてるのよ」
大賢者「これでも賢者ですから」
魔法使い「相変わらず、喰えないじじいね」
シュンシュン……
大賢者「あ、ぐっどたいみんぐ。お茶が沸きましたよ」
魔法使い「私が来ると分かってたから、沸かしてたんでしょ。白々しくて腹立つわ」
240 = 1 :
……コポコポコポ
大賢者「……しかし、その時の男の子どうしてますかね」
魔法使い「…………」
大賢者「隣町に住んでた子でしたっけ。この村でも有名なガキ大将だったような」
魔法使い「…………」
大賢者「あの魔物達の襲撃以来、みんなバラバラに移動してしまったから、再会の見込みは薄いですね」
魔法使い「…………」
魔法使い(……どっこい、かなり近いところにいたんだけどね)
魔法使い(さっき意識して見るまで、気づかなかったわ。まさか、あんなにでかくなってるとは)
戦士「べーっきしょん!!」
勇者「どうした、戦士。風邪か?」
241 = 1 :
大賢者「はい、お茶どうぞ」
魔法使い「ありがと……。……あ、この匂い」
大賢者「わたしのオリジナルブレンドの薬草茶ですよ」
魔法使い「懐かしいわ。私が子供のときにも、出してくれたっけ」
大賢者「ええ。少々苦味が残るので、あの時はよく『不味い』と連呼してくれましたよね」
魔法使い「師匠って、本当に細かいことばかり覚えてるわよね」
大賢者「これでも賢者ですから。それで、お味の方は?」
魔法使い「美味しいわ。もう砂糖無しで飲めるほど、大人になっちゃったんだね、私……」
242 = 1 :
大賢者「それで、今宵訪問した本当の用件は何ですか?」
魔法使い「ああ、それね。どうしても大賢者で博識な師匠に、聞きたいことがあったのよ」
大賢者「わたしで助けられることなら、なんなりと。短かったにしろ、師弟関係でしたからね」
魔法使い「助かるわ」
大賢者「で、何を聞きたいんですか?」
魔法使い「――勇者が本物か偽物か、確かめる方法を、知りたいんだけど」
243 = 1 :
本日はここまでです。
いつも読んでくださり有難う御座います。
感想とか乙とかも書きこんで下さって、有難う御座います。
また今週来ます。
246 :
魔法使いちゃんやめてー!
247 :
パチモノ勇者に魔(法使い)の手が迫る!
248 :
~露天風呂・女湯~
僧侶「…………」チャプ
僧侶「…………」
僧侶(……魔王戦が終わったら、勇者様と離れ離れ)
僧侶(……そんなの、さみしすぎる)ポロ…
僧侶「あ、駄目! 泣いちゃ駄目です、私!」ゴシゴシ
僧侶「…………」
僧侶(やっぱり、はっきりと言うべきでしょうか、私の気持ちを……)
僧侶(……でも、勇者様は私のことどう思ってるかな)
僧侶(……も、もし嫌いだったとしら……、すごく泣くんだろうな、私)
僧侶(でも、もし万が一好きって言われたら……!!!)
僧侶「……キャー…」カァアア
249 = 1 :
~村はずれの小屋~
大賢者「……それは、とどのつまり、どういうことなんですか?」
魔法使い「そのままの意味よ。今の勇者は偽物じゃないかと、私は疑っているの」
大賢者「偽物……? そこに至るまでの経緯を聞きたいのですが」
魔法使い「そういう、説明がめんどいところこそ、覗き見しといてよ」
大賢者「まあまあ、そう言わずに」
魔法使い「はいはい。――昨日の魔王戦以降、勇者の様子がおかしいのよね」
250 = 1 :
大賢者「具体的に、どんな風におかしいんですか?」
魔法使い「うーん、うちの勇者って、基本熱血系なんだけど。今日になって、かなり冷めてるのよ」
大賢者「ははあ。態度が激変したと」
魔法使い「うん。生き返って一言二言交わした時に、『変だなー』ってまず思ったわ」
大賢者「ですね。例えるなら、あなたが一晩で、完璧な淑女らしさをマスターしてるといったところですか……」
魔法使い「私をなんだと思ってるのよ」
大賢者「いやあ、そりゃあさすがに変とも思いますよねー」
魔法使い「なんで質問スルーしてんのよ」
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