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    元スレ勇者「すごい美人で有能な僧侶と魔法使いをお願いします」

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    851 = 842 :

    「うぅ……ここで……終わるか……」

    勇者「王!!」

    「な……なんと……いかんな……走馬灯か……」

    勇者「いや。幻ではありません」

    「おぉぉ!!奇跡か……!!」

    勇者「到着が遅くなり申し訳ありません。人民に多大なる被害が……」

    「いや……それよりも娘はどうした……?」

    勇者「無事です。王もこの薬草を使ってください。応急処置ぐらいにはなるはずです」

    「ああ……すまない……。また助けてもらったな……」

    勇者「それが自分の務めです」

    「勇者よ……娘を……たの……む……」

    勇者「ちょっと!!しっかりしてください!!目を閉じるな!!!」

    「たの……む―――」

    勇者「王!?王!!!」

    勇者「くそっ!!」

    852 = 842 :

    ―――城下町

    ドラゴン「―――ぬんっ!!!」ドゴォ

    魔物「ぐえ!?」

    キマイラ「くっ……!?」

    ドラゴン「次はどいつだ?」ポキポキ

    キマイラ「くそ……」

    魔物「ギギギギ!!!!」

    キマイラ「―――なに?勇者だと?ふふ……分かった」

    ドラゴン「ん?」

    キマイラ「ここは潔く撤退しましょう。全滅するぐらいならば、退けと魔王様には常々言われている」

    ドラゴン「相手にもそれなりの傷を与えてから、だろう?よく知っている。その命令の所為で部下を多く失ったかなら」

    キマイラ「その通り。部下は捨て駒に過ぎない。―――そしてニンゲンは餌に食いつく」

    ドラゴン「どういう意味だ?」

    キマイラ「ドラゴン様。ニンゲンの弱さを間もなく目にするでしょう。楽しみにしていてくださいね」ダダッ

    ドラゴン「ま、まて!!」

    853 = 842 :

    勇者「姫様」

    「……お……父様は……」

    勇者「申し訳ありません。出来る限りのことはしたのですが……出血が酷く……」

    「あぁぁ……」ガクッ

    勇者「姫様!!」

    「お父様……お父様……」

    勇者(俺が治癒の魔法を使えれば……こんなことには……!!)

    「うぅぅ……!!うぅぅ……お父様ぁ……!!!」

    勇者「姫様、逃げましょう。ここに居てはいずれ魔物に―――」

    キマイラ「―――手遅れだな」

    勇者「……?!」

    「ひぃ?!」

    キマイラ「ドラゴン様を誑かせたな……ニンゲンの分際で……」

    勇者「大人しく尻尾を巻いて帰ればいいものを……!!」

    キマイラ「手土産の一つもなく魔王様のところへは戻れないのでな」

    854 = 842 :

    キマイラ「こい!!」グイッ

    「いやぁぁ!!!」

    勇者「貴様!!!姫様に触れるな!!」

    キマイラ「取引だ」

    勇者「なに?」

    キマイラ「ドラゴン様と貴様の命を差し出せ。そうすればこのニンゲンの命だけは助けてやろう」

    勇者「……」

    「ゆ、勇者さま……わ、わたしのことは……!!」

    勇者「なら、さっさと俺を殺せ」

    キマイラ「お前、このニンゲンのために死ぬのか?」

    勇者「勿論だ。その人は俺にとって大事な人だからな」

    「勇者さま!!!」

    キマイラ「なーっはっはっはっはっは!!!いいだろう!!ならば、死ね!!」

    勇者「……」

    「やめてください!!勇者さまぁ!!!」

    855 = 842 :

    キマイラ「はぁー!!!」

    「ゆうしゃさまぁぁぁぁ!!!!」

    勇者「……っ」

    ドラゴン「―――ドラゴンキック!!!」ドゴォ

    キマイラ「ごほぉ!?」

    勇者「ナイスタイミングだ!!」

    ドラゴン「だろ?少し物陰から様子を伺っていたからな」

    勇者「なんて勝手なやつだ。側室度を6ポイント下げておくか」

    「ド、ドラゴンまで……もう……だめ―――」ガクッ

    ドラゴン「どうした?おい」

    勇者「気絶したようだ。……姫様は少し寝ていたほうがいいかもしれないな」

    ドラゴン「怪我人の手当ては順調だ。侵攻してきた魔物たちは撤退を始めている」

    勇者「じゃあ、あとは……そこの珍獣だけか」

    キマイラ「くっ……ドラゴンさま……!!」

    ドラゴン「敬称はよせ。俺はお前の敵だ」

    856 = 842 :

    キマイラ「魔王様の側近でもあるあなたが……」

    ドラゴン「魔王様にとっては側近も足軽も同じ駒だ。捨てるときは捨てる。俺はそんな指揮官の下では戦えない」

    キマイラ「世迷いごとを……魔王様の決断で一体どれだけの戦果があったか……わかっていないのか?!」

    ドラゴン「なんとでも言うがいい。俺はもうお前たちと勝利の美酒に酔うことはない」

    キマイラ「……」

    勇者「魔王に伝えろ。お前の恐れる最悪の事態が起こったとな」

    キマイラ「ニンゲンに味方する者は敵だ……!!」

    ドラゴン「だから、そういっているだろう」

    キマイラ「必ず……葬ってやる……!!」

    勇者「帰る時は海上からの砲撃に気をつけろよ」

    キマイラ「殺す!!殺してやる……!!ニンゲンがぁ!!!」

    ドラゴン「早く行け」

    キマイラ「ちっ―――」ダダダッ

    ドラゴン「まさか、魔物も王族専用の避難路を知っていたとはな」

    勇者「もっと早く到着できていれば……こんなことには……」

    857 = 830 :

    側室ポイントってあれかな。勇者ポイントみたいに伏線あるのかな?

    858 = 842 :

    ―――城内 医務室

    兵士長「そうですか……王は……姫様を守る為に……」

    勇者「はい。立派なお姿でした」

    兵士長「勇者殿に看取られて、王も嬉しかったと思います」

    勇者「……」

    魔法使い「姫様は?」

    僧侶「外傷は殆どありませんでした。ですが、姫様の心労のほうが不安です……」

    勇者「弁明の余地などないですね。僕が……迅速にここへ着けていれば問題はなかったのに」

    「あ、あれが全速力だったんだ。俺はがんばって空を飛んだぞ」

    エルフ「誰の所為でもないよ……。いや……もしかしたら……」

    勇者「人間にも問題はありますよ」

    エルフ「そう……」

    「ここでの用は済んだな。すぐに戻るか?」

    勇者「いえ、休憩してから戻りましょう。皆さんも多くの怪我人を看て疲れているでしょう?」

    僧侶「そ、そうですね……時間はあまりないですけど、できるだけ体調は整えたほうがいいですから」

    859 :

    >>857
    勇者ポイントってあの旅のエグい実態を勇者がスピーチするやつ?
    そうならもう一回読みたいからスレタイ教えてくれないか?

    私事でスマン

    860 :

    勇者「魔王倒したし帰るか」

    861 :

    ドラゴンキック・・・
    もはやノリノリですね

    862 :

    悪いと思ってるならぐぐれよド低能

    863 :

    >>860
    これまた読んできたけどやっぱ胸が痛くなるな
    でも多分、これが人間という生き物なんだろうな

    864 :

    なんで関係ないSSの話してんの

    866 :

    >>792
    面白いと思ってやってることより、自分が面白いと思ったことは絶対誰でも面白がる、と思い込んでいる幼稚さが大問題だろうな。

    868 :

    その時歴史が動いた

    869 :

    つづきまってる

    870 :

    亀すぎだろ

    871 :

    ドラゴンはFEのチキ様に違いないprpr

    続き待ってます

    872 :

    待っている。

    873 :

    いちおつ舞ってる

    874 :

    のんびり待ってます

    876 :

    ―――夜

    「生き残りは?」

    「こちらの部隊は10名ほどしか」

    「分かった。できるだけ守衛に回してくれ」

    「了解」

    僧侶「兵士さんたち忙しそうですね」

    魔法使い「これだけ派手にやられたらね」

    エルフ「でも国民の殆どは隣国に逃げられたって聞いたよ?」

    僧侶「そうなのですか?」

    エルフ「王様が巧くしたって。でも、王まで逃げると感付かれるかもしれないから残ったみたいだね」

    僧侶「そうだったのですか」

    魔法使い「もしかして姫様もなの?」

    エルフ「だと思うよ」

    僧侶「姫様……お辛いでしょうね……」

    魔法使い「アイツも。変に自分を追い込んでなきゃいいけど……。前にも似た様なことあったし……」

    877 = 876 :

    ―――姫の自室

    勇者「失礼します」

    「勇者さま……」

    勇者「目が覚めたと聞きまして」

    「ありがとうございます」

    勇者「……」

    「申し訳ありません」

    勇者「え?」

    「お父様を救おうとしていただいたのに、満足にお礼もできないで」

    勇者「何を言いますか。貴女が無事なことが自分にとってなによりも―――」

    「勇者さま……」

    勇者「はい」

    「お父様は民を守る為に最後まで城に残っていました」

    勇者「はい。聞き及んでいます」

    「……それは失策だと思いますか?」

    878 = 876 :

    勇者「いいえ。思いません。王の判断は的確でした」

    「私は違うと思います」

    勇者「姫様……」

    「確かに民を守ることが王族としての責務だと思います。けれど、それは果たして命をかけるまでのことでしょうか?」

    勇者「姫様、なんてことを……」

    「私は最後まで城に残りたくはありませんでした。でも、お父様に残れと……言われて……」

    勇者「……」

    「私は……民のために……赤の他人のために命を差し出すことができませんでした……」

    勇者「姫様、それは……当然のことです」

    「違います!!」

    勇者「……」

    「私は王族……保身を第一に考えてしまうなんて……私は自分が恐ろしいです……」

    勇者「……自分も同じです」

    「え……?」

    勇者「自分も勇者の身でありながら他人のために命を投げ出すことには躊躇しますよ?」

    879 = 876 :

    「そんなの嘘です!!だって、勇者さまは私のために命を―――」

    勇者「それはそれだけ貴女のことが大切だからです」

    「勇者さま……」

    勇者「自分の命よりも大事なものが目の前で崩れそうになっているなら、なんとしても守ろうとします」

    「あ……の……」

    勇者「私の命で貴女が生き長らえることができるなら、安いものですよ」

    「あ、ありがとうございます……」

    勇者「無論、貴女だけが命よりも大事というわけではありませんが」

    「……」

    勇者「姫様?」

    「勇者さま……」

    勇者「なんですか?」

    「こんな私でよければ……娶ってもらえませんか?」

    勇者「え……いや……」

    「今、分かりました……きっと勇者さまこそ、国を統べるお方なのだと……」

    880 = 876 :

    勇者「姫様……あの……」

    「ダメですか?」

    勇者「待ってください。結婚の約束は既に済ませているはず。何も今更……」

    「本当に私と婚姻を?」

    勇者「側室としてですけど」

    「側室……」

    勇者「はい」

    「……」

    勇者「私は残念ながら貴女を正妻に迎えるつもりは―――」

    「わかりました」

    勇者「え?」

    「でも、政治的なことになりますが、私が側室であることは公表できません。よろしいですか?」

    勇者「あの……え?」

    「勇者さまと添い遂げることができるなら私は側室であろうと構いません。王族も抜けましょう」

    勇者「まさか……姫様……僕に……」

    881 = 876 :

    「玉座に誰も座らないのは、国として終わりですから」

    勇者「僕に王になれと!?」

    「私ではお父様を継ぐ事はできません。だから、勇者さまに……」

    勇者「ま、待ってください!!それは……!!」

    「大役なのは分かっています。ですが、私を側室として迎えいれるのでしたら……」

    勇者「まあ、あの……王族の方がいなくなりますものね」

    「はい。側室の王になど、民はついてきませんから」

    勇者「……」

    「勇者さま……」

    勇者「か、考えさせてください」

    「分かりました」

    勇者「確かに王からは貴女のことを頼むとも言われましたが……」

    「不束者ですが、よろしくお願いします」

    勇者「いや……」

    「ところで側室とはどのようなことをすればよろしいのですか?何分、勉強不足でして……窓拭き?」

    882 = 876 :

    ―――廊下

    勇者「はぁ……」

    「どうした?随分と陰鬱な顔で出てきたな」

    勇者「姫様に王にならないかといわれのです」

    「すごいな。お前が一国の主か。見てみたい気もする」

    勇者「いや、側室をいっぱい作るなら王族になったほうが好都合といえば好都合ではあるけど」

    「……」

    勇者「んー」

    「おい」

    勇者「なんです?」

    「ただ責任を感じて、あの姫に同情しているだけなら断ったほうがいい」

    勇者「同情では……」

    「お前に民を導く才能があるかどうかは俺にはわからない。だが、それだけの理由で王の座に着くと後悔するぞ?」

    勇者「分かっています」

    「気負うな。まだ、これからが本番なのだからな」

    883 = 876 :

    勇者「……」

    「じゃあな」

    勇者「待ってください」

    「なんだ?」

    勇者「ありがとうございます」

    「か、勘違いするな。俺はお前がしゃきっとしないと……色々困るだけだ」

    勇者「ちょっと付き合ってもらえませんか?」

    「どこに連れ出そう気だ?」

    勇者「貴女とは二人きりで談話をしてみたいと思っていたところです」

    「……」

    勇者「ふふ……」ジリジリ

    「よ、よるな……ケダモノが」ジリジリ

    勇者「ドラゴンの貴女に言われたくないですね」

    「それもそうか」

    勇者「さあ、夜のデートと行きましょうか」

    884 = 876 :

    >>883
    「どこに連れ出そう気だ?」

    「どこに連れ出す気だ?」

    885 = 876 :

    ―――中庭

    「ここは……」

    勇者「ここが無事でよかった」

    「なんでこの場所に来た?」

    勇者「ここ、いいところでしょう?」

    「ま、まあな」

    勇者「今ならドラゴンに戻っても騒ぎにはなりませんよ?この場所は大丈夫です」

    「馬鹿言うな。この姿でなければパニックになるだろうが」

    勇者「嫌なんでしょう?」

    「お前……」

    勇者「もう割り切ったみたいな態度でいますけど、本当は人間の姿になんかなりたくないんですよね?」

    「余計なお世話だ」

    勇者「僕らでいうなら足を骨折して不自由になったみたいな感じでしょう?」

    「よくわからんが」

    勇者「ほらほら、ここなら大丈夫ですって」

    886 = 876 :

    ドラゴン「―――ふぅ」

    勇者「星が綺麗ですね。―――君が変身する女の子の姿が一番綺麗だけどね」

    「……そうか」

    勇者「ああ、嘘です。ドラゴンの姿も十二分に魅力的です」

    ドラゴン「……」

    勇者「この尻尾が特にかっこいいですよねー」モミモミ

    ドラゴン「で、なんの話だ?」

    勇者「魔王は今、どこに?」

    ドラゴン「恐らく、孤島にある城にいるだろう。そこで魔法銃の対策、そして俺への対抗策を練っている」

    勇者「ずっと疑問だったことがある」

    ドラゴン「なんだ?」

    勇者「魔王はどうしてそこまで用心深いのか……」

    ドラゴン「……」

    勇者「たかが人間に対して、前線にも出てこず、全ては部下任せ。何かあるのか?」

    ドラゴン「……魔法銃が全ての原因だ」

    887 = 876 :

    勇者「魔法銃が?」

    ドラゴン「魔法銃により魔王様は重症を負った」

    勇者「みたいだな」

    ドラゴン「魔法様はそれまでニンゲンという下等生物など害虫同然だと思っていた。なのに、その害虫に深手を負わされた」

    勇者「もしかして……その一敗で魔王は慎重派に?」

    ドラゴン「絶対の勝利に拘り始めたのは間違いなく、その敗戦が原因だろう」

    勇者「数百年前の敗戦は魔王にとってよほどショックだったのか」

    ドラゴン「そうでなくても魔王様の力は衰え始めていたからな。自身の老いを目の当たりにしてしまったのかもしれない」

    勇者「なに……?」

    ドラゴン「古代においては神と魔族の戦いもあり、常に次代の魔王様が用意されていたみたいだが……」

    勇者「ここ何千年は住み分けがきちんとでき、不文律があった」

    ドラゴン「ああ。故に魔王様の交代もなかった。急に起こった戦争のために次の魔王様はいなかった」

    ドラゴン「平和ボケしていたと言われればそれまでだがな」

    勇者「この数百年の間に次代を担う魔王は現れなかったのか?」

    ドラゴン「候補はいた。だが、魔王になるまでには至らない者たちばかりだ。何千年も戦ってこなければ当然だな」

    888 = 876 :

    勇者「もしかして、貴女も候補?」

    ドラゴン「どうだったかな。とにかく魔族は過去の力を取り戻しつつある」

    勇者「それはキラちゃんのあれ?」

    ドラゴン「その通りだ。あの魔道士が開発した生命エネルギーの抽出が役に立っている」

    勇者「国民を皆殺しにするのは、そのエネルギーを手っ取り早く回収するためか」

    ドラゴン「いや、あの人形は相手を殺すことでエネルギーを吸収していたが、俺たちにはそういうことはできない」

    勇者「じゃあ、拉致か?」

    ドラゴン「植民地化していた土地でニンゲンを生かしていた。今はもう崩壊してしまったが」

    勇者「まさか!!あの魔道士!!」

    ドラゴン「そう。あの魔道士の役目はニンゲンを集めることにある。集めたニンゲンの8割は魔王様の下に送られていた」

    勇者「なら、どうして装置を持って攻めてこない?」

    ドラゴン「エネルギーを吸い上げる装置は持ち運べず、また破壊されては事だ。それができるなら魔道士もやっていただろう」

    勇者「一気に大人数を捕らえることはしなかったのか?」

    ドラゴン「それは魔道士の仕事だった。魔王様はニンゲンと小競り合いを続けて、魔道士のことをニンゲンに気づかせないようにしていただけだからな」

    勇者「戦争をやっていれば人身売買や拉致はあまり注目されないからな。戦争を魔族復古のためのカモフラージュにしていたのか」

    889 = 876 :

    ドラゴン「そういうことになる」

    勇者「なるほど……。過去の勇者たちもそのことに気づいていれば……」

    ドラゴン「もしかしたら、魔王様は倒されていたかもしれないな」

    勇者「部下を簡単に切り捨て、自分だけが生き残る戦いをするのはそういう理由もあったわけだ」

    ドラゴン「魔王様が前線に出てきたとき、それは全てが完了したということだろう」

    勇者「だが、今は人間を集める術は……」

    ドラゴン「魔道士がいなくなったことは報告済みだ。そろそろ代替案を実行してくる可能性もある」

    勇者「代替案?」

    ドラゴン「海には大勢のニンゲンが浮いている」

    勇者「海賊艦隊を狙うのか」

    ドラゴン「一人残らず生け捕りにすることはできなくても、あれだけの規模だ。2割も捕らえる事が出来れば相当な栄養素になる」

    勇者「魔王が今まで海賊に手出ししなかったのは……」

    ドラゴン「海賊が帰還せずとも海で散ったとしか思わないだろう。拉致して戦力に変えるなど想像すらしないはずだ」

    勇者「なら、早く戻らないといけないか」

    ドラゴン「焦る必要はない。あれだけの数を捌くのは、それなりの日数がかかる」

    890 = 876 :

    勇者「そうだな……。キャプテンたちも弱くないわけだし」

    ドラゴン「お前が勝てなくても誰も責めはしない。心配するな」

    勇者「負ければ誰も側室にできないだろう?それはちょっとなぁ」

    ドラゴン「言っていろ」

    勇者「……」

    「―――そろそろ戻る。寝坊するなよ?」

    勇者「分かりました。ありがとうございます。愛してますよー」

    「黙れ。軟派者めが」

    勇者「えへへ」

    「褒めてないっ!!」

    勇者「おやすみなさい」

    「ふんっ」スタスタ

    勇者「……ふぅ……」

    勇者「力を取り戻しているとすれば……」

    勇者「よし……」

    891 = 876 :

    ―――姫の自室

    勇者「よろしいですか?」

    「どうぞ」

    勇者「姫様。夜分遅くに申し訳ありません」

    「いえ」

    勇者「姫様。先ほどの問いに対する答えを出しにきました」

    「なんでしょうか?」

    勇者「約束はできません」

    「……」

    勇者「僕は貴女を側室にしたい。心からしたい。もう今すぐにでもしたいぐらいです」

    「勇者さま……」

    勇者「でも、王になる約束だけはできません」

    「どうしてですか?」

    勇者「僕はただの平民です。王の器ではありません。勇者というのも称号に過ぎません。だから、王にはなれないと思うのです」

    「でも、私を側室にするというのなら……」

    892 = 876 :

    勇者「姫様を側室にしたい。でも、王にはなりたくない。―――それって身勝手ですか?」

    「はい」

    勇者「ふふ……ですよね」

    「しかし、私に勇者さまを批判するだけの資格はありません。私もまた身勝手な姫だったのですから」

    勇者「……」

    「国民のために……国のために……そういう心構えができません」

    「可愛い服を着たい。友人とお茶を飲みながら話したい。殿方と恋がしたい」

    勇者「姫様……」

    「そういう想いのほうが強いのです」

    勇者「そうですか」

    「最低な王族ですね……私は……」

    勇者「嫌ならやめてしまいしょう」

    「……へ?」

    勇者「王族を捨てると言ったではないですか」

    「そ、それは……勇者さまが王としてこの国を支えてくれるならという意味で……」オロオロ

    893 = 876 :

    勇者「僕は魔王を倒し、世界の英雄となります。そのときまでに決めておいてもらえますか?」

    「な、なにをですか?」

    勇者「僕の側室になるか。それとも王族として生きるか」

    「……!」

    勇者「でも、答えは分かりきっていますが」

    「勇者さま……」

    勇者「姫様。次に会うときは大英雄ですからね」

    「あ……」

    勇者「では、おやすみなさい」

    「勇者さま!!」タタタッ

    勇者「え―――」

    「もう行ってしまうのですね……」ギュッ

    勇者「姫様……」

    「戻ってきてとはいいません。ですが……私は貴方のことを愛しています……それだけは覚えていてください……」

    勇者「ありがとうございます……姫様……」

    894 :

    爆発しろ

    895 = 876 :

    「勇者さま……今夜は……ここで……」

    勇者「姫様」バッ

    「そう……ですか……」

    勇者「次に会うときまで生きていてください。姫様を必ず側室にしてみせます」

    「……では、勇者さまが戻ってくるまで私はこの国と生きていきます」

    勇者「ええ。それがいいでしょう。―――それでは」

    「勇者さま!!」

    勇者「……」

    「……」

    勇者「行ってまいります」

    「旅の無事を祈っています」

    勇者「この上ない誉れです」

    「行って……らっしゃいませ……」

    勇者「貴女は素晴らしい女性だ。誰が手放すものですか」ニヤッ

    「……うそつき……」

    896 = 876 :

    ―――廊下

    勇者「……」

    「あ、いたいた」

    勇者「くそっ!!!」ガンッ

    「ど、どうした?」

    勇者「え?いや……ちょっとかっこつけすぎたと思いまして」

    「ほう?断ったのか」

    勇者「僕はあの王様のようにはなれないと思います」

    「どうしてだ?」

    勇者「王が国にいる全ての美女を側室にしちゃまずいでしょ?」

    「ああ、そうだな」

    勇者「というわけで、魅力的なお誘いでしたがやめておきます。―――で、貴女はこんなところでなにを?」

    「寝室が分からない。案内してくれ」

    勇者「……じゃあ、こっちです。楽しみましょう」グイッ

    「やめろ!!貴様!!違う場所に連れ込む気だろうが?!」

    897 = 876 :

    ―――翌朝

    勇者「いててて……」

    僧侶「もう朝から怪我なんて何があったんですか?」ギュッ

    勇者「ぬほほぉ……いや、猛獣に殴られまして」

    僧侶「猛獣?」

    魔法使い「おはよう」

    「……」

    エルフ「どうしたの?機嫌悪そうだけど」

    「なんでもない……」

    勇者「まさか、あれほど暴れるとは思いませんでした」

    「……ふんっ」

    魔法使い「……ねえ?」

    勇者「なんですか?」

    魔法使い「何かあったの?」

    勇者「え?別になにもありませんが?―――ちょっとした身体検査をしただけですよ、はい」

    898 = 876 :

    魔法使い「身体検査って―――」

    兵士長「勇者殿!!」

    勇者「どうしました?」

    兵士長「これを」スッ

    勇者「これは……手紙?」

    兵士長「ご武運を」

    勇者「はい」

    僧侶「誰からですか?」

    勇者「この匂いは……」クンクン

    エルフ「犬みたいなことやめなよ」

    勇者「姫様からの手紙ですね」キリッ

    僧侶「きっとラブレターですよ!!」

    勇者「ふっ。もしかしたら婚姻届かもしれませんね」

    魔法使い「アンタねえ?!一国の姫様になにしてんのよ?!」

    勇者「姫様は肉親を失った身。僕だけでも優しく包んであげないといけないでしょう?優しくしてどこに問題があると?いや、ないですよね?」

    899 = 876 :

    「早く出発したほうがいいぞ?」

    勇者「ですね」

    ドラゴン「―――乗れ」

    魔法使い「……」

    僧侶「勇者様!ラブレター読んでください」

    勇者「乙女の秘密でしょうし、今は時間が惜しいです」ペラッ

    エルフ「あ、読むんだ」

    魔法使い「……」ソーッ

    ドラゴン「飛ぶぞ!!」バサッバサッ

    勇者「ふむふむ……なるほど……」

    魔法使い「なんて書いてあるのよ?」

    勇者「貴方のことを想うと股間が大洪水になります。早く、この火照った体を冷ましにきてーあっはーん―――と書いてますね」

    エルフ「へー。顔に似合わず淫乱なんだ」

    勇者「もうね、エロエロです」

    魔法使い「嘘いうな!!!あの姫様がそんなこと書くわけないでしょうがぁ!!!」

    900 = 876 :

    勇者「僕の側室になる女性はエロくなくてはいけません」

    僧侶「そ、そうなのですか?!」

    勇者「オフコース」

    僧侶「あぁ……そ、そんなぁ……」ガタガタ

    ドラゴン「怖いならしっかり捉まっていろ」

    魔法使い「またいい加減なことを……」

    エルフ「いやらしい女じゃないとダメってこと?」

    勇者「エッチな女性って……素敵やん?」

    僧侶「あぁ……エッチな女性なんて……どうしたら……」オロオロ

    魔法使い「馬鹿じゃないの?気持ち悪いこといわないで」

    勇者「しかし、性に貪欲なほうがこっちも嬉しいですね」ニコッ

    ドラゴン「ニンゲンのオスはそういうメスが好きなのか」

    勇者「だーいすきです」

    エルフ「性欲あるほうが面倒だと思うけどなぁ」

    勇者「はぁぁぁぁ?!―――もう一度言います。はぁぁぁぁぁぁ!?」


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