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    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

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    401 :

    今夜はおまけで。「出会い」


    勇者「たのもう!」

    マスター「あ、あら、いらっしゃい。ここは初めてかしら」

    勇者「そうです、仲間を探しに来たわけで」

    冒険者「ははっ、あんな子どもまで冒険者か」

    勇者「……勇者です、国家公認の!」


    ……どっ!


    勇者「おい、笑うとこじゃねーよ」

    マスター「あー、じゃあ勇者君、とりあえず冒険の書を見せてね」

    勇者「はいはい」

    冒険者「……ちょっと、かわいそうじゃん、仲間になってあげれば?」クスクス

    戦士「なんで俺が……」

    勇者「雑魚はいらん。魔王を倒せる素質の持ち主を探している」


    ……ぷぎゃーっはっはっはっは!


    戦士「お前ら、いい加減にしろ」

    勇者「いま笑った連中は、選ばないでください」

    戦士「お前もお前だ!」

    勇者「はい?」

    402 = 1 :

    戦士「お前は仲間を探して雇う立場にいるんだろうが」

    勇者「……そうだけど」

    戦士「仲間になってください、とお願いすべきじゃないのか? そんな態度で誰が仲間になりたいと思うんだ!」

    勇者「す、すみません」

    戦士「……いくら金を払うと言ってもな、それで本当に魔王を倒す仲間が得られるわけないだろう」

    勇者「……わかりました。お願いします」ペコリ

    マスター「じゃあ、戦士さんがまず一人目でいいかしら」

    戦士「は?」

    勇者「よろしく!」

    冒険者「付き合ってやれよ、戦士」

    冒険者「そーよそーよ」

    戦士「……」


    ばたん、ツカツカツカ。


    魔法使い「……ちょっと邪魔なんで」

    勇者「な、なんだよ」

    マスター「あら、魔法使いちゃん。今日はどうしたの?」

    魔法使い「どうしたのって、今日で私も登録できる年齢です」

    マスター「そうなの、じゃあ一応、手続きね。もしよかったら、いま、勇者君が来ているから……」

    魔法使い「勇者? 誰が?」

    勇者「俺だ」

    403 = 1 :

    魔法使い「何かの冗談でしょう」

    勇者「違うわい! 冒険の書も、ほら!」

    魔法使い「……」

    勇者「はっきり言って、本気で魔王を倒すつもりだ」

    魔法使い「ふーん。じゃあ、聞くけど、どうやって倒すつもりなの?」

    勇者「まずは仲間集めからだな。単身で旅立った連中はことごとくやられている」

    魔法使い「……それだけ? そんな無計画で魔王討伐とは笑わせてくれるわ」

    勇者「何言ってんだよ。そもそも、今、魔物が増えたせいで国交も途絶えてるじゃん。情報もないじゃん」

    勇者「一歩ずつ、現状を確認できなきゃ、討伐もクソもねぇ。魔王城の正確な位置も知ってるやつは少ないんだぞ」

    魔法使い「……あ、そ」

    勇者「って、王様が言ってた」

    魔法使い「受け売りじゃない!」

    勇者「仲間を集めれば、いい知恵も出てくるだろ」

    魔法使い「あんたがリーダーを勤めるとしたら、いい知恵を出しても無駄そうだわ。もっと頭使いなさいよ」

    勇者「言うじゃねぇか。どの道、雑魚はいらん!」

    戦士「……お前ら、ちょっと落ち着け」


    ばたーん!


    僧侶「おはようございまーす!」

    マスター「あらー、僧侶さんじゃない」

    404 = 1 :

    マスター「今日はここに来るのが遅かったわね」

    僧侶「ええ、お祈りをしていたものですから」

    勇者「……誰?」

    魔法使い「僧侶よ。東国から、この国の教会に出向してきてるの」

    僧侶「それより、聞いてください、みなさん!」

    僧侶「お祈りをしていましたら、お告げがあったのです!」

    僧侶「今日、魔王を倒し、世界を救う勇者様が、この町に現れると!!」

    戦士「……」

    魔法使い「……」

    冒険者たち『……』

    僧侶「ど、どうしたんですか? これほど喜ばしい報せはありませんよ」

    マスター「そ、そうなの。実は、今日も勇者君が一人、来ていてね」

    僧侶「ええ! どちらですか、どちらにいらっしゃるのですか!?」

    勇者「はい」

    僧侶「……」

    勇者「僧侶さんといいましたね。俺がその魔王を倒す勇者です!」

    僧侶「……まあ。そうでしたの」

    マスター「じゃあ、僧侶さんが勇者君のパーティーの二人目ね」

    僧侶「ええ!? ちょっと待ってください!」

    405 = 1 :

    勇者「あと一人くらいほしいんですが」

    マスター「じゃあ、魔法使いちゃん、入ってみない?」

    魔法使い「お断りします」

    マスター「といっても、この人、一応国家公認なのよ?」

    魔法使い「どうせ、わずかな支度金と粗末な装備しか渡されなかったんでしょう」

    勇者「宿代も安くなるぞ」

    魔法使い「悪いけど、こちらにも選ぶ権利はあるわ」

    マスター「魔法使いちゃんの条件に当てはまるパーティーは、勇者君くらいしかないわよ?」

    魔法使い「……」

    勇者「仲間にしてやってもいいぜ」

    戦士「だから、お前は」

    勇者「あ、すんません! ぜひとも、よろしくお願いしたい」ペコリ

    魔法使い「あ、あのね、私は将来性のあるパーティーにね」

    マスター「じゃあ、三人目っと」

    魔法使い「なに、勝手に決めてるんですか!」

    僧侶「わ、私も、彼がお告げに出た勇者様か、分かりませんので」

    マスター「他に、やりたい人!」


    シーン……


    マスター「いなさそうだから、決定ね~」

    406 = 1 :

    勇者「よっしゃ、これからよろしく頼むぜ!」

    魔法使い「み、認めないわよ! こんなやり方!」

    僧侶「ああ、神よ、私に苦難の道を歩めというのですか……」

    勇者「なんだと……」

    戦士「お前ら、うるさい!」

    勇・魔・僧「はい」

    戦士「……いいか。魔法使いと僧侶は冒険者名簿に登録したんだ。仕事を選り好みするんじゃねぇ」

    魔法使い「でも」

    僧侶「そ、そうですわね……」

    戦士「どうしても合わないなら、死ぬ前に辞めればいい」

    勇者「重いな、おい」

    戦士「そうだよ」

    勇者「お、おお?」

    戦士「お前は雇い主として、命を預かっていることを自覚しろ。魔王を倒すと宣言したならなおさらだ」

    勇者「……おう」

    マスター「まとまったみたいね~」


    勇者「何べんでも言うけど、俺は本気だ。よろしくお願いします」ペコリ

    戦士「まあ、仕送りできればなんでもいい」

    魔法使い「……知恵は出すわ、知恵は」

    僧侶「こうなってはあなた方を信じるほかありません。よろしくお願いします」


    ……かくして、勇者のパーティーは結成されたのだった。

    407 = 1 :

    こんなところで。
    明日から本編、がんばる。

    409 :


    こういう”出会い”みたいな感じの奴はわくわくしていいよね

    410 :

    戦士がイケメン過ぎる

    413 :

    ふぅ

    414 :

    側近「……まさか、人間の方から私を呼び寄せるとはね」

    竜魔物「何度も言いますけど。罠かもしれないっすよ」

    側近「大丈夫よ! スライム隊もいることだし」

    スライムたち『ピキーッ!』

    竜魔物(スライムだけじゃな……)

    側近「そ、それに、あんたも来てくれるんだから、なんとかなるでしょ」

    竜魔物「……失礼ですが、側近殿は本当に参謀役だったので?」

    側近「当たり前よ! 御前会議とかも出てたもん」

    竜魔物「……で、何してたんすか、会議で」

    側近「お茶くみ」

    竜魔物(それじゃメイド役だ)

    415 = 1 :

    側近「あ、でもね、魔王様の会議資料とかも整理してたよ?」

    竜魔物「それって……単なる秘書……」

    側近「参謀だもん! 頭を使うところだもん!」

    竜魔物「まあ、いいっすよ。もう交渉は私がやりますんで」

    側近「なんでよ!」

    竜魔物「不可侵条約とか、私が結んだじゃないっすか」

    側近「そ、そうかもしれないけどぉ……」

    スライムたち『ピキー、ピキー!』

    竜魔物「……いじめるなって?」

    側近「あ、もしかして、再就職のネタに狙ってるんじゃないでしょうね」

    竜魔物「……」

    416 = 1 :

    魔王城の北、仮設「勇者の町」。

    側近「……掘っ立て小屋ね」

    竜魔物「……そっすね」

    側近「なんかこう、会談するような場所じゃない気がするんだけど」

    竜魔物(……大工してくれってのはマジだったのか)


    魔法使い「来たようね」

    側近「来てやったわ! こんなボロ小屋にわざわざ!」

    魔法使い「私じゃこれが限界だったの。悪い?」ボッ

    側近「ち、ちょっと嫌味を言ってみただけじゃない、脅すのは卑怯よ」

    竜魔物「……不可侵条約は、あまり意味がなかったようだな」

    魔法使い「そうね。展開が早すぎて、私にも読めないの」

    側近「……なんのこと?」

    魔法使い「その辺も説明するわ」

    417 = 1 :

    竜魔物(せめぇ……)

    側近「汚ーい」

    魔法使い「うるさいわね、仮設だからいいのよ」

    竜魔物「これでは冬を越すこともできんぞ」

    魔法使い「……早く男手が欲しいわ」

    側近「そうよね、女が頭脳労働よね?」

    魔法使い「は?」

    側近「いやあの……と、とにかく! 私も暇じゃないのよ」

    魔法使い「そうなの?」

    竜魔物「最近は飼っているスライムの訓練に追われていてな」

    側近「いやあ、飼ってみると結構楽しいものね」

    魔法使い「スライム牧場か……ネタになりそうね……」メモメモ

    418 = 1 :

    魔法使い「そういえば、魔界に帰れそうなの? あんたたち」

    側近「ダメダメ。どうもね、ゲートが閉じたというより、穴が塞がっちゃたみたいで」

    魔法使い「塞がる?」

    側近「元々、出入口は無理やり穴を開けたような状態だったの。で、穴を閉じたら、こっちの世界の修復力でキレイに直っちゃったと」

    魔法使い「ふーん」

    竜魔物(そうだったのか……この辺は優秀なのだな)

    側近「ああ、魔界スイーツともお別れね……地獄モンブランとか、内戦始まったら絶対なくなるし」

    魔法使い「なにそのゲテモノくさいの」

    側近「げ、ゲテモノじゃないわよ! 一日一個限定の超濃厚なやつなの!」

    魔法使い「どの辺が地獄なのよ」

    側近「すんごい甘いの! 人間には耐えられないんじゃないかしら」

    魔法使い「あら? 私は甘いの大好きだけど?」

    側近「三種類の地獄産マロンクリームに魔牛の濃厚ホイップに、クッキーも散らしてあって食感もたまらないのよ」

    魔法使い「……超うまそうじゃないの」

    419 = 1 :

    側近「でっしょ!? 魔界タワーの30階にスイーツバイキングがあってね、年一で行ったもんよ」

    魔法使い「他にはどんなのがあるのよ」

    側近「魔女いちごのタルトとかー、ドラゴンブレスシャーベットとか。あの、冷気ブレスで冷やし方を調整するから、ガチもんは高級ってレベルじゃないのよねー」

    魔法使い「でも、帰れないのよね」

    側近「そうなのよ……!」

    魔法使い「あんた、冷気とか吐けないの?」

    竜魔物「はいっ?! 俺っすか」

    竜魔物(話を聞いてなかった……)

    側近「あー、ダメ。竜人タイプはブレスが苦手なのよね」

    魔法使い「残念ねー、しっかりしなさいよ」

    竜魔物「……そっすね」

    420 = 1 :

    魔法使い「そうなると、あれかしら? ここで頑張ってもしょうがないって感じ?」

    側近「そうね、まあ次期魔王選には噛めないし、次はいつゲートがつながるかも分からないし……」

    竜魔物「……待て、人間」

    魔法使い「なに?」

    竜魔物「貴様、何を聞き出そうとしている?」

    魔法使い「……」

    側近「どういうことよ」

    竜魔物「こやつ、我々から何か情報を聞き出そうとして誘導していたのです!」

    側近「え……じゃあ、スイーツ好きってのは」

    魔法使い「まあ、お菓子は好きなんだけど」

    側近「安心したわ」ホッ

    竜魔物「おい、この無能」

    側近「むのっ……無能!?」

    421 = 1 :

    魔法使い「ケンカしないで頂戴。私もあんたたち相手に聞き方が悪かったわ」

    竜魔物「どういうつもりだ。貴様、何を隠している!」

    魔法使い「どうも情報を得ていないみたいだから、簡単に説明するわ。今、人間たちはかつての勇者の仲間を攻撃して、分断しようとしている」

    側近「むのう……」

    竜魔物「それは人間共の勝手な争いに過ぎんだろう」

    魔法使い「仮にも勇者は人間側の英雄なのよ? 私はこの裏に、あんたたちの把握していない魔物がいるんじゃないかと睨んでいるわ」

    竜魔物「……つまり、残った魔物に戦いを諦めていない者がいる、ということか?」

    側近「むのうぅぅ~……」

    魔法使い「そう。私たちは、それらと戦うことになるでしょう」

    竜魔物「……」

    422 = 1 :

    竜魔物「だから何だというのだ、まさか、彼らの情報を渡せ、というのではないだろうな」

    魔法使い「まさにそれよ。あんたたちは魔王城にいたのよね? 世界で活動している魔物が、どのくらいいるのか、知っているんでしょう」

    竜魔物「断る! いくら我々が戦いを諦めたとはいえ、仲間の情報を売り渡す気はない」

    魔法使い「でも、少なくとも、ここに残っている連中は次期魔王選、かしら、そこには参加できない」

    竜魔物「……」

    側近「無能、無能って……」

    魔法使い「仮にこの世界に打撃を与えたとしても、その後の魔界の体制にも加われない、そうじゃないかしら」

    竜魔物「……」

    側近「ムノー、ムノー」

    竜魔物「……だから、何だというのだ」

    魔法使い「それでも戦う理由って何かあるの?」

    竜魔物「……私には、分からん」

    423 = 1 :

    魔法使い「私の考えを言うわ。今度の事件、三つの理由が考えられる」

    魔法使い「まず、魔王を慕って、その遺志を遂げるという名目で、勇者を攻撃している。つまり悪あがき」

    魔法使い「次に、一番悪い例だけど、魔界へ行き来することが実は可能で、再侵攻を計画している。今度の事件はその計画の一端だった、という可能性」

    魔法使い「あるいは闇の力を剥がされた世界、という劣勢をひっくり返す、方策を持っている。つまり勝算がある」

    魔法使い「いずれにしても、現時点で人間同士を割ることには成功しているわけよね」

    竜魔物「……」

    側近「……魔界に行き来するのは無理でしょうよ。私なりに調べたけど、難しいもの」

    竜魔物「あなたは……!」

    側近「いいじゃん、もう。私は無能なんでしょ?」

    魔法使い「……」

    側近「正直、私も魔王様に気に入られたから、たまたま出世したような感じだし。もう、いまさら」

    竜魔物「いや、しかし……」

    424 = 1 :

    側近「魔王様は尊敬していたけど、私は他の魔物とか嫌いだもの」

    竜魔物「……そう、っすか」

    側近「私のことを馬鹿にしていたわ。そういうの、すぐ分かっちゃうものなんだけど」

    側近「みんな、会議の時に私にお茶を零したりして、笑いものにしたりとかさ」

    側近「こんな調子で、この世界を支配することなんか、できないって思ってた」

    魔法使い「……」

    側近「魔界への道が閉ざされていた時、ちょっと安心したんだ、ああ、少なくとも、もう馬鹿にされなくて済みそうだって」

    側近「でも……やっぱり、馬鹿は馬鹿だね」

    竜魔物「……すんません」

    側近「謝らなくてもいいよ。何とか、一体でも帰せる方法が分かったら、あんたくらい、私が帰してあげるから」

    竜魔物「……いや、私も独身で、帰る家なんか」

    側近「そのくらい、いいでしょ? 人間」

    魔法使い「構わないわ」

    425 = 1 :

    魔法使い「一応、私からも提案はあるんだけど……その前に、どんな魔物が世界に派遣されてたか、聞いていいかしら」

    側近「いいわよね、竜」

    竜魔物「……お任せします」

    側近「そうねー、でも、大体あんたたちが倒しちゃったんじゃない? 極東の大きなドラゴンとか」

    魔法使い「それは倒したわ。強敵だった」

    側近「後は北極のタイガーとか、北西のバードとか」

    魔法使い「その辺は知らないわね……」

    竜魔物「……マジかよ、四天王なんだけど」

    魔法使い「そうなの?」

    側近「ジャングルのトロルとか、砂漠のシザースとか」

    魔法使い「……その辺は倒したような……」

    側近「遺跡のマシン兵とか、海軍のボーン船長とか」

    魔法使い「遺跡は行ったことあるけど、私らが来た時点で錆びて動かなくなってたわよ?」

    側近「マジで? あれ、めっちゃお金かけてたんだけど……」

    426 = 1 :

    魔法使い「大体分かったわ。闇の力が剥がされても、強力な四天王とかいうのが残ってたわけね」

    側近「むしろそこを倒してないのが驚きよ」

    竜魔物「……戦力分散しすぎてたんすね」

    魔法使い「だとしたら、ここら辺の連中が行動していてもおかしくはないわ」

    側近「あー、じゃあ、あれ、バードとか、めっちゃ魔王様崇拝してたやつとか残ってるわ」

    魔法使い「なるほど、1の理由で動いている可能性が高い、と……だとしたら、次の行動も想定できる気がするわ……」

    竜魔物「……ふむ、どうも無傷で説得というのも無理だろうな」

    魔法使い「四天王ってどのくらい強いの?」

    側近「極東のドラゴンが四天王の一角よ」

    魔法使い「うーわ。力が衰えたとはいえ、あれと同じくらい強いわけ……?」

    427 = 1 :

    側近「バード残ってるとか、ホント萎えるわ。あいつ、私が魔王様のお気に入りだったからって、いっちばん陰険な攻撃してきたもん」

    魔法使い「どんなよ?」

    側近「まず、他の連中に、私が魔王様に色目使ってるとか噂流してー、孤立させるでしょ」

    竜魔物「……陰険っすね」

    側近「でっしょ? そこから、実は人間と通じているとか、根も葉もない噂を大合唱させて、魔王様に直訴してさ」

    魔法使い「……今の状況に似ているわね」

    側近「まあ、私は、ほら、魔法関係が割りと使えたから、さ。その辺は認めてもらってたから、魔王様には」

    側近「っていうか、魔王様には信じてもらって、むしろ側近に取り立てられちゃったわけよ!」

    側近「いやあ、あの時のあいつの顔とか、今でも思い出せるわ! うひゃひゃひゃ!」

    竜魔物「女の世界は怖いっすね……」

    魔法使い「宮仕えはこれだから嫌なのよねー」

    428 = 1 :

    竜魔物「……タイガー殿も残っているのか。彼は魔王軍一の武人だからな」

    魔法使い「戦ったことはないわね。どんなやつなの」

    竜魔物「私もそうだが、魔王城にいた雑兵のほぼ全員が、一度はタイガー殿に病院送りにされた」

    魔法使い「脳筋ってわけね……」メモメモ

    側近「タイガーはちょっと素直なのよね~、僻地に行くことになっても文句も言わなかったし」

    魔法使い「なるほどなるほど。じゃあ、大体分かったから……」


    どぉん、と遠くで音がした。

    耳聡い竜の魔物がぴくりと反応すると、外に控えていたスライム達が一斉に騒ぎ始めた。
    ピキピキと合唱をやり出したのに驚いて小屋の暖簾をめくると、何かが走ってくるのが三人の目に映った。


    魔法使い「……なに?」

    竜魔物「人間っすね。先頭に二人、その奥にもいるっす」

    側近「いよいよ、ここにも敵が来たみたいね」

    魔法使い「……しょうがないわね」

    429 = 1 :

    その、先頭に走っている二人は。


    遊び人「はあっ、はあっ、隠れるとこ、ないですね!」

    盗賊「もう、だから、森か、城で、やりすごそうって……!」

    遊び人「あ、あそこ、目の前、スライム、がっ!?」

    盗賊「なんなの、よっ、もう、逃げ場、ない、じゃないっ!」


    追撃隊長「逃がすな! 追え!」


    盗賊「あ、あ、スライム、のっ、真ん中、誰か、いるっ!」

    遊び人「い、いちお、助け、呼びましょ、はっ、はっ」

    盗賊「おー――いっ!」

    遊び人「たすけてぇえええええっ!」


    だが、手を振って助けを求めた二人は、その姿がはっきりしてくると、ぎょっとした。

    一人は、おそらく人間。
    しかしもう二つの影は、つやつやとした鱗を持つ者と、青い肌にこうもりのような羽を生やしている者だったからだ。

    430 = 1 :

    魔法使い「逃げる二人と、追う部隊か。どうやら私たちが目当てじゃないみたいよ?」

    竜魔物「……そのようだな」

    側近「なんだ、つまんないの」

    魔法使い「とりあえず吹き飛ばすか」

    竜魔物「ふ、吹き飛ばすのか?」

    魔法使い「冗談よ」


    そう言って、魔法使いはスライムの集団から抜け出た。
    とんとん、と地面を杖で叩くと、がごぉっと勢いよく、埋まっていた柵が立ち上がる。

    ちょうど、逃げる二人が隙間を縫ってゴールする。


    竜魔物「こんなものを……それで小屋はボロかったのか?」

    魔法使い「用心にね。言い忘れてたけど、私に下手に襲い掛かると、周辺一帯、爆発するからね?」

    側近「危ないわよ!」

    魔法使い「魔力の節約のためよ。魔法使いにとっては、魔力切れが一番怖いんだから、あんたも気をつけなさい」

    側近「そ、そっか。そうよねー」

    431 = 1 :

    盗賊「はあ、はあ、はあ」

    遊び人「ひい、ふう、ふう」

    魔法使い「息が上がってるところ申し訳ないけど、命乞いしてもらうわ」

    竜魔物「……そこは説明ではないのか」

    魔法使い「私が認めるなら助けてあげる、救う価値がないなら放り出す」

    盗賊「こ、この、あんた、ま、まほ」

    遊び人「ま、魔法使い、さん、ですね、ぼ、僕ら、探検隊の」

    魔法使い「探検隊? ああ、そういえば、どこかで見覚えがあると思ったら……」


    追撃隊長「おい、貴様ら! なんだこの柵は、そこの二人を引き渡せ!」

    魔法使い「最初から高圧的。マイナス十点」

    432 = 1 :

    追撃隊長「そいつらは、我が隊から重要なものを盗み出した、犯罪者なのだ!」

    魔法使い「そうなの?」

    盗賊「はぁ、はぁ」ブンブン

    遊び人「ふう、ふう」ブンブン

    魔法使い「違うって」

    追撃隊長「事実だろうがー! そこは明らかに事実だろうがー!」

    魔法使い「何を盗んだわけ?」

    追撃隊長「それは、貴様に言う必要はない!」

    魔法使い「重ね重ねの無礼な態度、マイナス三十点」

    盗賊「私らは、別に、最初は、返す、つもりで」

    遊び人「とにかく、これです、読めば、分かります」サッ

    魔法使い「何コレ……」

    追撃隊長「あ、貴様ッ!」

    433 = 1 :

    魔法使い「ふむ。探検隊の計画書か」

    追撃隊長「もはや、容赦はできん! 見れば魔物も従えた魔女! 全員、柵を倒す準備にかかれっ!」

    側近「従ってないけど?」

    竜魔物「……そっすねー」

    魔法使い「いや、別にいいわ。読んだし、返す」ぽいっ

    盗・遊『はっ!?』

    追撃隊長「な、なんだと……」

    魔法使い「返したから、いいでしょ。正直、相手をしている暇がないの」

    追撃隊長「……い、いや、生かすなという命令だ、魔物もいるなら不足はない!」

    魔法使い「……」

    追撃隊長「大体、貴様のようなチビが、でかい口を叩いて……!」

    魔法使い「マイナス二十点。いくら不遜な態度を取られたからと言って、冷静にもなれずに暴言」


    魔法使いが柵を杖で叩く。

    取り外しにかかっていた隊員たちが、柵の隙間からころころと何か転がってくるのに気づく。
    一人があっと声を上げた。

    ―――爆弾石!

    434 = 1 :

    隊員1「うわああああ!」

    隊員2「にげ、逃げろおおおお!」

    追撃隊長「ば、馬鹿、逃げるな!」

    魔法使い「踏んだりして、ショックを与えすぎると、爆発するわよー」

    追撃隊長「き、貴様っ!」

    魔法使い「状況を見極められない。マイナス五十点。さあ、燃えろ」


    魔法使いが手のひら大の火球を柵の向こうに投げつける。

    瞬間、盛大に花火が上がった。

    435 = 1 :

    爆発、爆発、爆発が連鎖する。

    追撃隊の何人かが吹き飛ばされていく。
    ついでに、周りにいたスライムたちも、何匹かが吹っ飛んでいく。
    あわててプルプルと避難するスライムたち、そして、追撃隊も逆方向へ避難する。

    味方をなんとか救い出しながら、人間どもが脱出していく。
    元来た道を、罵声を叫ぶ暇もなく、隊長も逆戻りしていく。

    それを見送りながら、盗賊が叫んだ。


    盗賊「あ、あんた、計画書も吹っ飛ばしてるじゃないのよおおおおっ!」

    436 = 1 :

    遊び人「ま、魔法使いさん、お久しぶりです。ほら、砂漠の町にいた」

    魔法使い「あー、勇者と飲んでた芸人さん。お久しぶり」

    盗賊「何を再会を喜び合ってるのよっ! 吹っ飛ばす必要性なかったでしょっ!?」

    魔法使い「あれ、いらない魔法書」

    盗賊「はあ!?」

    遊び人「だろうと思いました」

    魔法使い「一応、相手の反応が見たくてね、その場ですり替えちゃった」

    盗賊「だからって……もう!」

    魔法使い「頭を使いなさいよ、誰が素直に行動してやる必要があるって言うの」

    盗賊「やっぱり、あんたは変わらないわ……」

    437 = 1 :

    遊び人「そ、それで、その隣にいるのは……」

    魔法使い「友達よ」

    盗賊「嘘つきなさいよ!」

    魔法使い「いや、これから交渉するところだったのよ、お友達になりましょうってね」


    側近「……見分けつく? 竜」

    竜魔物「ぎりぎり……♀っすよね? 全員」


    魔法使い「で、あんたたちは何で探検隊を逃げ出してきたわけ?」

    遊び人「そ、その計画書がね、気になってまして」

    盗賊「そうなの、あのね、魔王の復活が目論まれていたらしいのよ!」

    魔・側・竜『!』

    遊び人「盗賊さん!」

    盗賊「ご、ごめん、つい……」

    438 = 1 :

    魔法使い「なるほど……魔王が復活すれば、人間同士が争っている現在、魔物にとっては大チャンスが発生するわね」

    魔法使い「理由の3は、これを狙ってのことだったか」

    側近「魔王様の復活? そんなこと、ありうるわけ?」

    竜魔物「……」

    盗賊「ど、どうしよう……」

    遊び人「……とにかく、計画書を見てください」

    魔法使い「ふむ……」

    側近「……」

    竜魔物「……」

    魔法使い「あんたたちも見る?」

    側近「え、いいの? マジで?」

    魔法使い「もし、魔王が復活できたら、どうする?」

    側近「そうね……」

    439 = 1 :

    魔法使い「私は、恨みっこなしでいいわ。最終的に相容れないなら、それでも構わない」

    側近「う、うん」

    竜魔物「……良いのか。人間の未来を左右するのではないのか」

    魔法使い「あんたたちの将来もかかってるんでしょ」

    盗賊「ま、魔法使い……」

    遊び人「よく分かりませんが、彼らと取引しているんですね?」

    魔法使い「そういうこと。まあ、見てみましょう」

    側近「じゃあ、見せてもらうわ……」

    竜魔物「……難しいっすね。私には読めない」


    ―――そして、彼らはある結論に達する。

    440 = 1 :

    今夜はここまでです。

    佳境と思いきや、まだ書くことがいろいろ残ってますね……
    とりあえず、全力で失踪しますんで、よろしくお願いします

    441 :

    おつん

    442 :


    頼むから疾走してくれ

    443 = 1 :

    おう。疾走します。

    444 :

    >青い肌とコウモリのような羽
    ktkr

    445 :

    ゆっくりでいいので完結してくださいな

    446 :

    こんな感じをイメージした

    447 = 1 :

    やっぱり悪魔娘は青肌金目ですよねー
    まあ、側近さんはテンパリストなんですけど

    448 :

    魔物「ぎりぎり……♀っすよね? 全員」

    遊び人…

    449 :

    >>446
    懐かしいな

    450 :

    スライム隊想像しただけでかわいい
    プルプル避難していくとか癒されるわ


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