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    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

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    51 = 1 :

    勇者「おかしいな。魔法使いは賢者になったはずなんだが」

    勇者「……その探検隊、ちょっと見に行きたいんですけど」

    村人「あっ、今、お城で選抜をやってるそうですよ!」

    道具屋「名の知れた冒険者たちがくるって言うんだから、楽しみだぜ」

    武器屋「ああ、ここらで一儲けできそうだしな!」

    勇者「おいおいおい、呼ばれてないよー俺」

    勇者「よし、お城だな」

    勇者「すいませーん! ちょっと通してください!」

    \おお、勇者様だぞ!/ \もしかして勇者様も探検隊に?/

    勇者「うひひ。ついでにかわいい女の子も物色するか」

    魔法使い「ふざけんなバカ」ポカ

    52 = 1 :

    勇者「お、お前……魔法使い!?」

    魔法使い「嫌なタイミングで現れたわね。どこかに出かけたと聞いて、チャンスだと思ってたんだけど」

    勇者「お前、賢者にならなかったっけ?」

    魔法使い「転職したのよ」

    勇者「ふ、ふざけんな! 悟りの書返せよ!」

    魔法使い「まあまあまあ。とりあえず、酒場でお話しましょうよ」

    勇者「だ、だれが従うかそんな」

    魔法使い「ちゃんとおごるから」

    勇者「マジで!?」

    魔法使い(こいつ、ホントアホね)

    53 = 1 :

    酒場。

    勇者「それにしても、なんで魔法使いに戻っちゃったんだよー」プハー

    魔法使い「魔王を倒してから、いろいろと考えたのよ」ゴクゴク

    勇者「かわいかったのに」

    魔法使い「ウゼェ。まあ、賢者じゃあ食っていけないということを悟ったわけ」

    勇者「賢者だけにか」

    魔法使い「賢者だけに」

    勇者「つまらんよ?」

    魔法使い「……そういうあんたは、今まで何してたの?」

    勇者「そ、それは……ごろごろしてた」

    魔法使い「だと思った。みんなが今後の相談をしているときも、お姫様の尻、追っかけてお城に泊ってたし」

    勇者「あ、道理でみんなの居場所を知らなかったわけだわ」

    54 = 1 :

    勇者「でもな、一つ言わせてくれ。俺も今は、仕事を探そうと思ってがんばっているわけだよ」

    魔法使い「それ、普通の人じゃん」

    勇者「な、なんだと。じゃあ、お前は何の仕事してるんだよ」

    魔法使い「うん。賢者時代の知識を活かして、いろんな事業の企画立案なんかをやってるわ」

    勇者「何言ってるのかわかんね」

    魔法使い「……戦士や僧侶には会ったんでしょ?」

    勇者「おう、会った会った」

    魔法使い「戦士が故郷の農村を再興させたいっていうから、参考書を書いたり」

    魔法使い「僧侶が孤児院を作りたいっていうから、協力できそうな人物をリストアップしたり」

    魔法使い「お互い別れる前に、そういうことをしていたわけ」

    勇者「ああ……お前が立案者だったのか。道理でみんなよく考えているなとは思ってたけど」

    魔法使い「そうよ。で、これなら仕事になりそうってことで、転職して事務所を作ろうとしていたのよ」

    勇者「ふうん」

    55 = 1 :

    魔法使い「あんたはどうなの? 仕事は見つかった?」

    勇者「いやいや、どこもかしこもうまく行かなかったり、断られたりでさ」

    魔法使い「戦士や僧侶にも、仕事を斡旋してくれないかって行ったわけ?」

    勇者「その通りだ」

    魔法使い「……あんたは自分のことを知らなさすぎるし、他人を頼りすぎなのよ」

    勇者「なんだよそれ」

    魔法使い「いいこと、勇者ってのは、魔王を倒す最強の冒険者よ」

    勇者「そうだろ」

    魔法使い「でも、別に王国の兵士でもないし、傭兵でもないわ」

    勇者「いや、支度金と褒美はもらったけど」

    魔法使い「それはお給料じゃないでしょ。とにかく、魔王がいた頃は、この化け物みたいなやつをそこに向かわせるだけでよかったわ」

    勇者「ばけもの……」

    56 = 1 :

    魔法使い「魔王がいなくなった以上、今度は魔物対人間ではなく、人間同士の争いになるわ」

    勇者「うーん、そんなものかね」

    魔法使い「そうよ。僧侶のところに行ったんなら、内紛の火種も見てきたんじゃない?」

    勇者(あの連中か)

    魔法使い「となると、各国からすればバランスブレイカーなあんたを、誰でも味方につけたいと思うわ」

    勇者「う、ウソつけ!? どこもかしこも断られたわ!」

    魔法使い「できればお姫様も、政略のために英雄と結婚したかったんじゃないかしら」

    勇者「ええ、マジで、マジなん?」

    魔法使い「相談受けたもん」

    勇者「てめぇ、知ってたなら!」

    魔法使い「言うわけないでしょ。そんな女の子を道具扱い」

    勇者「まあ、そう考えるとかわいそうだけどよ」

    魔法使い「……そんなものなのよ」ゴクゴク

    57 = 1 :

    魔法使い「ところで、魔王の時に、どうしてどこの国でも良くしてくれたか分かる?」

    勇者「そりゃ、俺の活躍のうわさを聞きつけて」

    魔法使い「違うわ。各国は牽制的にとはいえ、お互いに連絡を取り合っていたの」

    勇者「はぁ」

    魔法使い「魔王征伐という目的でつながりあった国々は、何かひとたび事が起これば、それをどこでも察知できるようになってしまったわけ」

    勇者「ふーん」

    魔法使い「つまり、あんたがどこかの国に肩入れするとなったら、一斉に他の国が敵に回る恐れも出てくるようになった」

    勇者「おい……」

    魔法使い「人間同士の争いと言っても、すぐ戦争にまでは結びつかないわ」

    勇者「つまり……」

    魔法使い「極端な戦力はかえって政治外交、交易の邪魔」

    魔法使い「結局あんたは、味方にはほしいけど、世界征服する気でもなければ、うかつに手は出せない存在ってこと」

    勇者「なんだそりゃあ!」

    58 = 1 :

    魔法使い「マジよ、マジ。今度の探検隊の企画を持っていく過程でも、勇者の元パーティーってだけでかなり警戒されたわ」

    勇者「そ、そんなバカな話があるか」

    魔法使い「戦士は村おこしをしているだけだから、大してにらまれていないけど、僧侶はかなり危険よね。内政に踏み込みかけているもの」

    勇者「じゃあ、つまり、働けないのは、俺が勇者だからってことか」

    魔法使い「そういうこと」

    勇者「……じゃあ、仕方ないな。もう引きこもるしかない」ゴクゴク

    魔法使い「アホか、あんたは」

    勇者「だってよー、その調子だと、今度の探検隊も俺に入るなとか言っちゃうんだろ」

    魔法使い「当たり前でしょ」

    勇者「だったら何したらいいのかわかんねぇもんよー」

    59 = 1 :

    魔法使い「あんたは人を頼りすぎなのよ」

    勇者「そりゃしょうがないだろ。勇者とはいえ、人の子だ」

    魔法使い「そうじゃなくて。自分の価値を自覚したんなら、後は自分で生き方を考えればいいじゃない」

    勇者「けどな……」

    魔法使い「冒険者だって、今だから需要が高いのよ?」

    勇者「本当かよ」

    魔法使い「魔物にやられた地域や、人が入りにくかったところなんていくらでもあるわ。各国はそこを調べて、勢力を拡大したいのよ」

    勇者「……」

    魔法使い「自分の魅力をお金に変えられるかどうかは、頭を使わないとダメだわ」

    勇者「ただし、頭を使えばチャンスだらけだ、ってか?」

    魔法使い「そうそう、覚えているじゃない」

    勇者「冒険時代は、口癖だったもんな。お前の」

    60 = 1 :

    魔法使い「私は体力がなかったからね。頭を使うしかなかったのよ」

    勇者「うそつけ、冒険に最後までついてきたくせに」

    魔法使い「……言いたくないけど、あんたに背負われて山を越したのだって一度や二度じゃないでしょ」

    勇者「そりゃお前、仲間を見捨てる勇者はいないからな」

    魔法使い「ふん、私は嫌だったわ」ゴクゴク

    勇者「おいおい、ペース早くないか?」

    魔法使い「とにかく、頭は自分で使いなさい」

    勇者「……ふん」

    魔法使い「あー、バーテンさん、もう二杯持ってきて!」

    勇者「酒豪なやつだな」

    61 = 1 :

    帰ってきて。

    勇者「……」


    戦士『お前は勇者らしいんだろうが、無計画すぎる』

    僧侶『私は、ここにいる子供たちを置いてはいけません』

    貴族『国を変えるのに英雄はいらないのだ』

    魔法使い『あんたは人を頼りすぎなのよ』


    勇者「……そんなもんかねぇ」ガリガリ

    勇者「……」

    勇者「んー……」

    勇者「言われるほど、俺はがんばってないわけじゃなくね?」

    勇者「んー……」

    62 = 1 :

    いったん中断。短いので今夜中には終わります。

    64 = 1 :

    翌日。

    魔法使い「は?」

    勇者「だからさ、もう一度、四人で冒険しないかってこと」

    魔法使い「あんたね……」

    勇者「まだ行ってないところもあるだろ? 国同士の思惑も、四人パーティーなら巻き込まれづらいはずだ」

    魔法使い「昨日の私の話を覚えてる? 事務所開くって言ったんだけど」

    勇者「そうだけど、別に今度の探検隊に参加するわけでもないんだろ、お前」

    魔法使い「はぁー、アホだアホだとは思ってたけど」

    勇者「やっぱりダメか?」

    魔法使い「却下よ、口説き文句くらい、もっと練習してきなさい」

    勇者「ちえっ」

    65 = 1 :

    魔法使い「……行っちゃったか」

    魔法使い「……」

    魔法使い「まあ、故郷に帰った戦士とか、人生捧げてる僧侶に比べれば」

    魔法使い「多少はね、自由が利くのは私かもしれないけど」

    魔法使い「いやいや、何言ってるの私」

    魔法使い「さーて、仕事仕事っと」

    事務員「あ、所長!」

    魔法使い「なにかしら」

    事務員「新聞持って来てますよ!」

    魔法使い「はいはい、そこおいといてねー……って」

    66 = 1 :

    戦士の村。

    戦士「うーむ」

    勇者「どうだろう。新しいところに冒険に行けば、市場を広げるチャンスはあるだろ」

    戦士「そりゃ確かに、俺自ら別の国に行くこともあるが……」

    勇者「やっぱり、俺たちは冒険してなんぼのところはあると思わないか?」

    戦士「すまん。数週間ならともかく、身重の妻までおいて、そこまで長期間の冒険は、難しい」

    勇者「けどよ、世界を救ったって言っても、まだまだ混乱の種は残っているんだぜ」

    戦士「うん。だからこそ俺は居を構えて、この村で暮らしたいんだ」

    勇者「そうか……いや、無理なことを言って、すまなかった」

    戦士「いや……」

    67 = 1 :

    戦士「……」

    戦妻「どうしたの? お茶も飲まずに勇者さん、出て行ったみたいだけど」

    戦士「うん、たいした用事じゃない」

    戦妻「うそ。結構悩んだ顔してるわよ」

    戦士「そ、そんなことはない」

    戦妻「この村を出るときも、似たような顔してたわ。あなた、冒険に誘われたんじゃないの?」

    戦士「出たいわけじゃない。だが、あいつがやる気になるのを見ると、何か出来ないかとも思うんだ」

    戦妻「だったら、もっと相談したらいいじゃない」

    戦士「だが、お前のこともあるし……」

    戦妻「気になってるなら、最後までやればいいのよ」

    戦士「……。すまん、ちょっと行ってくる」

    戦妻「はいはい」

    68 = 1 :

    孤児院。

    ぎいん、ぎいん! がしっ、どさっ!

    貴族「くっ、貴様ら!」

    僧侶「き、貴族様! もうおやめください!」

    「うえぇぇん! うぇえぇええん!」

    隊長「貴族殿、剣をお捨てください。わが国の転覆を企てて、無事ですむはずがない」

    貴族「私は転覆など企てていない! それに、子どもや僧侶さんは関係がないはずだ!」

    隊長「元勇者の仲間とはいえ、反逆者を匿うなど、許されませんぞ」

    僧侶「あなたたち……!」

    隊長「おっと、あなたも武器を捨てなさい……おい、拘束しろ」

    兵士「はっ!」

    僧侶「親を失った子を人質に……こんな非道が許されるとでも!?」

    隊長「世界を救った御方らしい発言だ」

    69 = 1 :

    貴族「僧侶さんを離せ! 彼女は人道のために活動しているにすぎない!」

    隊長「人道のために、社会の秩序を破壊されては困る。それでは魔物と同じでは?」

    貴族「貴様……」

    隊長「勇者ならともかく、勇者の仲間程度なら大したことはあるまい」

    兵士「隊長、この女性は」

    隊長「城に連れて行く。確か異教徒だったな、城で裁いた方が良いだろう」

    兵士「了解しました!」

    僧侶「くっ……」

    貴族「僧侶さん!」

    70 = 1 :

    隊長「確か、貴族殿は建国以来の武門のお出でしたな」

    貴族「……」

    隊長「どうですか? 裁きを受ける前に、私とひと勝負というのは」

    貴族「いらん。やれば後悔するぞ」

    隊長「口は達者ですな」

    貴族「とにかく子どもを放せ。私の要求はそれだけだ」

    隊長「ちっ……」

    「お、おじちゃん……」

    貴族「……私はおじちゃんではない」

    兵士「た、隊長」

    隊長「離してやれ」

    「う、うあ……」どさ

    隊長「……おい、弓兵」

    貴族「!」

    71 = 1 :

    貴族「バカな真似はよせ!」

    隊長「魔物が消えてから、たまにはこうして訓練をしないとなまってしまうからな」

    どっ げらげらげら

    貴族「貴様ら、何が魔物だ! 貴様らの方が十分悪魔ではないか!」

    「た、助けて……」ヨロヨロ

    隊長「ちゃんと逃げられれば生かしてやる……おい、よく狙えよ」

    弓兵「はっ」 キリキリ

    「やだ、やだ……」

    貴族「やめろーッ!」

    ヒュバッ

    72 = 1 :



    ――――バシッ

    「あ、う」

    73 = 1 :

    勇者「……間に合ったか」

    隊長「だ、誰だ!?」

    兵士「隊長、陣形を突破されました! あいつ、あいつです!」

    貴族「き、貴様……」

    勇者「誰だの、あいつだの、今、世界でもっとも有名な男の名前をまだ知らんやつがいるようだな」

    「お、お兄ちゃん」

    勇者「おう! とりあえず隠れろ!」

    「う、うん」タタッ

    貴族「……なぜここに」

    勇者「べ、別にお前を助けに来たわけじゃなくて、僧侶さんに会いに来ただけなんだからね! 助けるのは本当についでなんだからね!」

    貴族「いや、それなら、仕方ないが……!」ゾクッ

    74 = 1 :

    勇者が剣を構えた。
    軽口を叩くその風体は変わらないのに、ただそれだけで、敵味方の両方が寒気を感じた。

    目の前にいるのは、人というより殺気の塊、突きつけられた刃に隊長が後ずさった。

    少女は後ろ姿を見て、自分が以前に「弱そう」とコケにした相手ということを思い出した。
    貴族は後ろ姿を見て、自分が以前に剣の試しあいで対峙した相手ということを思い出した。
    殺気の膨れたその姿には結びつかない。

    一方、貴族を狩り出しに来た部隊の長は、目の前にいる男が「魔王を殺した人間」であることを、たった今理解した。


    勇者「数百人しかいないんじゃがっかりだな」

    隊長「弓兵……!」

    勇者「雷よ!」

    びっしゃ! ばりい!


    黒こげた物体が出来上がる。

    雷の魔法は勇者のみが扱えるという魔法だ。
    ことここに至って、世界最強の人間が目の前にいることを兵士たちも理解した。

    75 = 1 :

    勇者「どうしたんだ、せっかく勇者とやりあう機会なんだぜ。大ラッキーだろ」

    隊長「うっ、くぅ、ああ……!」

    隊員「う、うわああああ!」

    どん、ばきいっ!

    戦士「おい、お前は先行しすぎなんだよっ!」

    魔法使い「無思考は無能につながるの、分かる?」

    勇者「お前らの足が遅いだけだろ!」

    貴族「こ、この方々は、勇者ご一行!」

    隊長「な、なんだと……」

    76 = 1 :

    僧侶「き、貴族様……!」タタッ

    貴族「ああ、僧侶さん!」

    戦士「とりあえず、捕まってたから助けた」

    魔法使い「僧侶! こんな内紛地帯は手を出すなって言ったでしょうに!」

    僧侶「一番困っている子どもたちのところに行ったんです!」

    魔法使い「はぁ~……とにかく、おっさん、早く隠れてなさい」

    貴族「ご、ごめんこうむる……」


    勇者「うきゃきゃきゃー! 逃げもせず、かかってもこないなら、俺が全滅させてやるよ!」ダダダッ

    隊長「や、やめろっ……!」


    魔法使い「……バーサクしてるやつを止めなくちゃ行けないから、構ってる暇ないんだけど」

    貴族「わ、分かった」

    77 = 1 :

    戦意をも失った兵士たちが、本来の力を発揮できるはずがない。
    たった四人の最強部隊が、数百人をあっという間に蹴散らしていく。

    狂ったように剣を振るう勇者を追って、戦士が殺到しかけた兵士たちの列を割る。
    密集したところへ、爆音と竜巻が炸裂する。

    わずかな時間で勝敗は決した。

    78 = 1 :

    勇者「つまらんな、魔王軍と比べたら」

    戦士「勇者とは思えん発言だな」

    魔法使い「まったくだわ」

    僧侶「もう、兵士さんを回復させる手伝いくらいしてください!」

    貴族「……これが勇者の力か」

    勇者「ふふん。四人集まれば、怖いものなしだ」

    魔法使い「私らはこいつの暴走を止めるだけよ」

    貴族「そうだな……確かに、大暴れしていたのは勇者殿だけだった」

    勇者「そうだろう!」

    戦士「ほめてないぞ」

    79 = 1 :

    貴族「しかし、よろしかったのか。こうして私を助けて」

    魔法使い「考えてるわ」

    戦士「ああ、軍隊が孤児院を襲撃、という報せを各国に飛ばした」

    勇者「そこを、通りすがりの勇者一行が助けたってわけさ」

    戦士「あんたもたまたま孤児院を助けようと飛び込んだ、そういうことにしておけば、多少は動きやすいだろ」

    貴族「……かたじけない。これを理由に反転攻勢をかけられる」

    僧侶「貴族様、では、蜂起を?」

    貴族「そのとおりだ。もちろん、あなた方の協力が得られればありがたいが」

    魔法使い「直接はバツ。ただ、内政不干渉の圧力をかけるくらいはやってもいいわ」

    戦士「俺もパスだ、一応、この国も取引先だしな」

    僧侶「私は、このような不義を許すわけには参りません!」

    勇者「ええっ」

    80 = 1 :

    勇者「……パーティ集合!」

    魔法使い「な、なによ」

    戦士「なんだ」

    僧侶「どうかなさいましたか」

    勇者「あのさー、ここまで来たんだし、一応言うけどさ」

    一同『……』

    勇者「もう一回、冒険やろうよ。四人で」

    魔法使い「私、断ったけど」

    戦士「俺もだ」

    僧侶「申し訳ありませんが、子どもたちを守るためでもありますし……」

    勇者「ちえっ。みんなして仲間外れかい」

    魔法使い「あんたね、子どもみたいなことを言ってんじゃないわよ!」

    81 = 1 :

    勇者「分かってるよ」

    魔法使い「分かってないじゃない。みんなそれぞれ、新しい生き方をしてるの! あんただって、そのために仕事を探しているんじゃないの!?」

    勇者「分かってるって」

    戦士「……すまん。だが、力にはなりたい」

    勇者「ん、まあ、本当は、もう一回くらい、みんなで集まりたかっただけだしな」

    僧侶「……勇者様」

    魔法使い「あんたね」

    勇者「いいんだよ。俺はみんなと違って、定職についたり、事務所を立ち上げても、うまくいかなそうだしな」

    魔法使い「……」

    82 = 1 :

    勇者「まあ、だからさ、今度はみんなの役に立とうと思ったわけよ」

    戦士「えーっと、そりゃどういう意味だ?」

    勇者「魔法使いが言ってた方式さ。戦士や僧侶が俺に出資して、ほしいものを言う。んで、俺が冒険してるついでにそれを持ってくる」

    僧侶「それはその……新しい孤児院の土地とかでも?」

    勇者「と、土地? うーん、まあ、なんとかなるだろ」

    魔法使い「……」

    勇者「もちろん、受ける依頼はお前ら三人からだ。これなら、国に肩入れとかじゃなくて、友達を助けるだけだろ?」

    魔法使い「そんなうまく行くわけないでしょ」

    勇者「そうかな?」

    83 = 1 :

    魔法使い「僧侶なんか、今から反乱しようとしているじゃないの」

    僧侶「私は、不義を見逃したくないだけです」

    勇者「頼む内容にもよるだろ。孤児院の新しい土地を見つけるとかなら、今ならまだありえる話さ」

    魔法使い「……あんたは、自分のやりたいことをやるってないわけ?」

    戦士「いや、それはな……」

    勇者「世界の次は、みんなに会いたいってわがままじゃん」

    魔法使い「……」

    勇者「……」

    魔法使い「バカ」

    勇者「うっせ」

    84 = 1 :

    魔法使い「頭を使いなさいよ。それならいっそ、前に作った町を、あんたの国にするとか」

    勇者「なるほど、政治的にも独立してしまえってわけか」


    貴族「……なにやら、不穏な話が聞こえたが」

    戦士「ああ、いい、いい。どうせあの二人は悪巧みをさせたら止められないんだから」

    僧侶「ああ、神よ。暴力と悪知恵が再び、正しい方向に使われますよう……」


    魔法使い「何言ってるの、貴族。ピンチこそ、頭を使えばチャンスに早変わりよ」

    勇者「ふははは、これなら正々堂々と支援もできるな!」

    魔法使い「……侵略もね」

    貴族「……勘弁して欲しい」ゾッ

    85 = 1 :

    「……お兄ちゃん」

    僧侶「あ、少女ちゃん! これから、少し移動しないといけないから……」

    「……」ギュッ

    勇者「おお? どうしたどうした」

    「ついてく」

    僧侶「!」

    魔法使い「!」

    勇者「そうかそうか! だが、俺の冒険は厳しいからなぁ」

    「がんばる……お兄ちゃん、弱く、ないもんね」

    勇者「仕方のないやつだな。僧侶さん、こいつは」

    僧侶「だ、ダメですよ!? そんな危険な!」

    魔法使い「ろーりーこん! ろーりーこん!」

    86 = 1 :

    戦士「……緊張感がねぇな」

    貴族「……魔王征伐の時もこのような?」

    戦士「もっとひどかった」


    勇者「うーっし! 仕事は自分で見つけないとな!」

    「がんばる」

    魔法使い「ダメに決まってるでしょ!」

    勇者「お前は出資だけしてくれ」

    僧侶「少女ちゃん、勇者様は危険なのよ?」

    戦士「おい、お前ら! いい加減遊んでないで、安全なところに移動するぞ!」

    一同『……おー!』

    87 = 1 :

    かくして、新たな冒険は始まった。
    勇者の行く手には、様々な困難が待ち受けている。

    しかし、必ず彼は立ち向かうだろう。
    勇気ある者、それが勇者なのだから。

    ―――たとえその困難が、無職であっても。


    おしまい。

    88 = 1 :

    というわけで、さくっと終了です。
    この種の、世界を救った後の話は結構あるかと思うんですが、
    まあ、やっぱり勇者はなんだかんだで強くて格好良いイメージを保って欲しいなぁと思って書きました。

    勇者SSはそれなりに楽しいんですが、
    少しやりつくされた感もあって大変ですね。

    次回もよろしくお願いします。

    89 :

    勇者が魅力いっぱいでおもしろい。
    続編期待しています。

    91 :

    あっさりだけど面白かった

    92 :


    やっぱり勇者SSはいいね

    93 :

    面白かった。乙様

    94 :

    これからというとこで残念……
    次作、待ってるよ

    95 :

    やべぇ。面白かった!

    96 :

    あれ?続きは?

    97 :

    何この打ち切りエンド
    起承転結の起だけ書いて満足できるの?

    続きかけください

    98 :

    ここの>1はできる子って聞いた

    99 :

    もう依頼出しちゃったもんよ(´・ω・`)

    じゃあ、取り下げてくるから、せめてネタがほしいんよ。
    世界が平和になって失職したキャラを書いてほしいんよ。

    100 :

    無理すんなよ
    これで終わりならそれでいいじゃんよ
    お前らも終わりつってんだから無理に書かすなよ

    ① 勇者土地を探すの巻
    ② 勇者自分ブランドを作るの巻
    ③ 勇者世界征服をするの巻
    ④ 勇者嫁を探すの巻
    ⑤ 勇者結婚するの巻
    ⑥ 勇者最終回の挨拶をするの巻

    べつに書けとか催促してるわけじゃないんだからね
    ただ思いついたのを列挙しただけに過ぎないんだからね
    無理して書いて欲しいなんて言ってないんだからね!!
    本当だからね!!


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