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    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

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    751 = 1 :

    「……侍女さん? どういうことですか?」

    「あ、いや~その~」

    商人「ここに入れさせていただく条件として、あなたの身の安全を確保することを求めらていました」

    「まあ」

    「……だって! 私は姫様には無事でいてもらいたいんですよ」

    「そのお気持ちは、本当にありがたいですわ」

    「ひめさまぁ」

    「けれど、私はここに残ると決めたのです」

    商人「……私としても、逃げてもらった方がありがたいですね」

    「そのようなこと!」

    商人「私たちの、いや、勇者の行動の障害になるかもしれませんし」

    「あ、う……」

    「失礼だぞ!」

    商人「事実ですから」

    752 = 1 :

    商人「……南大臣が魔物とつながっているとのお話はご存知で」

    「侍女から聞きました」

    「あいあい」

    商人「私はそれだけではないと確信しています」

    「どういう意味ですか?」

    商人「仮に南大臣が魔物と結託して勇者を討とうとしているとしましょう」

    「え、ええ」

    商人「魔王を倒した人間を、どうやって討ち取ると言うのですか」

    「!」

    商人「仮に勇者のパーティーを分断して、世論誘導をすれば勝算がある、と誤認したとしても、不自然極まりないと思いませんか」

    「しかし、現に勇者様たちは迫害されて……」

    商人「あの程度なら、おそらく勇者は切り抜けてしまうでしょう」

    「そ、そうですわよね」

    753 = 1 :

    商人「まあ、感情的に勇者が嫌いだから、という理由で行動する人物だと考えることもできますが」

    「あのハゲオヤジはそういうタイプでないね~」

    商人「私もそう思います。勇者が嫌いだということは間違いないでしょうが」

    「……そもそも、南大臣が本当に怪しいのでしょうか?」

    商人「……今回の事件、非常に問題だったのは、三国がほぼ同時に連動して動いたことです」

    商人「新聞紙上でもそう。勇者を非難する記事はあっという間に広がった。いくらなんでも早すぎる」

    商人「つまり、三国には勇者外しでつながっていたということになる」

    商人「さて。北国、東国を結んで、南国の外交を取り仕切っているのは、南大臣です」

    「も、もう分かりました!」

    商人(もっとしゃべらせてくれてもいいのに)

    「こら、話が長すぎでござる」

    商人「要するに、状況的に南大臣が噛んでないとおかしいわけです」

    754 = 1 :

    商人「それで、姫様。南大臣は魔物に脅されて行動しているのでしょうか、それとも自分の意思で?」

    「そ、それは……」

    「自分の意思に一票ですな」

    「そんな! 魔王の手先と手を組むなど!」

    「だってー、あの鉄面皮のオッサンが脅されて従うくらいなら、自殺してるかなーって」

    「ちょっと分かりますけど……」

    商人「彼がどういう理由で手を組んでいるかはしれませんが、私も自分の意思だろうと思います」

    「でも、それが何の得になると言うのです!」

    商人「南大臣は何らかの得を見つけたのです」

    商人「それが魔物と手を組ませ、勇者を葬る計画につながったと、そう推測できます」

    「そんな……」

    755 = 1 :

    商人「私が聞きたいのは、その点で姫様が何か心当たりがないかということなんですが」

    「心当たり……?」

    商人「南大臣の得になりそうなことですよ……その様子では、あまりなさそうですが」

    「……南大臣は、真面目な方です」

    「真面目って頭固いってことでっせ」

    「ですから、その、直接聞くしかありません!」

    「えっ?」

    商人「えっ?」

    「つまり、こそこそ隠れて探るのは、王族に相応しくないというか」

    「姫様は混乱している!」

    商人「いや、それは直接聞いて話してくれるならいいですけど」

    「で、では、い、行きましょう!」バン

    商人「は、ちょ?」

    756 = 1 :

    「とにかくその、ちょっと探りを入れてみるのが必要というか」カッカッカッ

    商人「ちょちょちょっと待ってください!」

    「私もまずいなーって思いますよ?」

    「どうしてですか! 王族に危害を与えるほど、南大臣は愚かではないと……」


    南将軍「貴様! なぜ陛下を!」

    南大臣「……」


    「帰りましょう」

    「あいあい」

    商人「いやいやいや」

    「お、お父様が……!?」

    商人「と、とにかく様子を見ましょう……!」

    「姫様、ここはこらえて」

    757 = 1 :

    南大臣「陛下はお休みいただいているだけだぞ。大声を出さないで頂きたい」

    南将軍「何を言う! もう臥せって数日だぞ!」

    南大臣「陛下もお年ですからな、しばらくお休みすることも……」

    南将軍「ふざけるな、貴様が戦士殿の村に軍を差し向けた日からお休みになるなど、都合が良すぎるわ!」

    南大臣「……そんなことで私を問い詰めに来たと?」

    南将軍「それだけではない! これだ」

    南大臣「ほう、その紙切れが何か」

    南将軍「我が国が『魔王の復活』を目論んでいる、というビラだ!」

    南大臣「はっは、それは勇者側の捏造だろう」

    南将軍「馬鹿を言うな!? 勇者が中傷するなら北国のことだろうが! なぜ我が国を名指ししている!」

    南大臣「そこまでは分からんが」

    南将軍「お前が何かを噛んでいるのだろう!」

    南大臣「……」

    758 = 1 :

    南大臣「将軍、率直に申し上げるが、滑稽にすぎるぞ」

    南将軍「滑稽を通り越している! 戦士の村へも派兵しただろう。いくら権限があるからとはいえ、私に断りなく軍を動かした」

    南大臣「緊急時だったからな」

    南将軍「陛下との面会を拒絶し、私に一言もない!」

    南大臣「貴方がご実家に帰られていたからな。伝え遅れていただけだ」

    南将軍「……貴様が、魔物とつながっているという目撃情報もあるのだ!」

    南大臣「見間違いだろう」

    南将軍「大臣、今が緊急時なのだぞ!?」

    南大臣「だからなんだと言うのだ?」

    南将軍「ふざけている場合ではないのだ……! せめてまともな釈明をせよ!」

    南大臣「きわめて真剣なのだが」


    南将軍は、すらり、と刀を抜いた。


    南将軍「では、私も真剣で相手をすべきなのだな……!」

    南大臣「待て、落ち着け」

    759 = 1 :

    「ま、待ちなさい! 将軍!」

    南将軍「ひ、姫様!?」

    「何で出てきちゃうんすかねー」

    南大臣「これはこれは」

    「将軍、刀を納めてください。そ、そして、大臣、『魔王の復活』とはどういうことです?」

    南大臣「嫌がらせでしょう、我が国への」

    南将軍「まだ、言うか!」

    「大臣……ここにいる侍女が、貴方が魔物と会っているのを目撃しているのですよ!」

    「えっ、情報提供者の保護……」

    南将軍「ひ、姫様……」

    南大臣「……」


    商人(参りましたね……)

    760 = 1 :

    「ど、どう申し開きするつもりですか!?」

    南大臣「申し開きも何も……あらぬ疑いをかけられているとしか申し上げられません」

    南将軍「ひ、姫様もこう言っておられるのに、貴様!」

    「……勘弁してください、姫様」

    「……認めさせたものが勝つのですよ」

    「どうやって認めさせるんですか」

    南大臣「……」

    南将軍「……仮に、貴様がなんら魔物と関わっていないとしても、だ」

    南大臣「なんですかな」

    南将軍「勇者殿と敵対するなど、どうかしている!」

    南大臣「……」

    南将軍「確かに彼は英雄でありながら、我が国の負担ともなっていた。だが、あからさまな対決など!」

    南大臣「将軍。それが良くないのだ」

    南将軍「なんだと」

    761 = 1 :

    南大臣「我々は勇者殿を政治と関わらせずに置こうと決めたはずだ」

    南将軍「う、うむ……」

    南大臣「ところが、勇者殿の仲間の一人が他国で反乱を起こし、勇者殿も加担したと聞く」

    南将軍「そ、それは」

    南大臣「原則に外れたのは勇者殿の方だ。同盟を結んだ友国を助けるのは当然の道理であると言うのに」

    南将軍「……我々は、勇者殿に指図できる立場にない!」

    南大臣「それは魔王がいた時代に限る。秩序ある時代に、自由すぎる存在は毒にしかならぬ」

    「黙って聞いて入れば、大臣!」

    南大臣「姫様にもこの際、申し上げます。勇者殿に限らず、冒険者の存在が世界を混乱に陥れているのは明白ではありませんか」

    「どこがですか!」

    南大臣「我が王宮にもどうもネズミが入り込んでいる様子。秩序を乱そうとしている輩です」


    商人(……バレているんですかね)

    762 = 1 :

    南将軍「しかし、我が国は冒険者によって……」

    南大臣「さよう。我が国は冒険者を集めることで成り立っては来た。しかし、その結果は財政難に軍の弱体化です」

    南将軍「それは……」

    南大臣「勇者を輩出しても、彼らに払った莫大な報酬で国の財政が吹っ飛びかけた。兵士の弱さは言うまでもない」

    南大臣「冒険者頼みの経済と軍事政策で、どうやってこの先を戦っていくおつもりか」

    南将軍「世界は平和になって」

    南大臣「まことに大嘘つきだな。北国は反乱に浮き立ち、勇者たちが暗躍する。我々は国を強くせねばならぬのだ!」

    「だから、だから、勇者様を攻撃するのですかっ?」

    南大臣「姫様。我々は約定を守っているだけに過ぎません。秩序や平和を破っているのは勇者の方なのです」

    「ま、そーかもしれまーせんけど」

    763 = 1 :

    商人「……まずいですね」

    商人「大臣が、ボロを出してくれるかと期待していたのですが」

    商人「おそらく、あれは本心なのでしょう。そうなると、魔物との関係は隠したまま、言いくるめられる恐れも……」

    商人「ここは一度、脱出しましょう」コソコソ


    女商人は、広間の柱の影から身を離した。

    四者は白熱しているため、身を隠している女商人に気づきもしなかった。
    同じところにいた二人ですら、彼女の存在を記憶の片隅にも置いていなかったのだ。

    それは女商人側も同じことだ。
    意識は、四者に気づかれないように出ていくことに振り向けられていた。

    だから、それに出くわした瞬間に、頭が真っ白になってしまったのだ。


    鳥魔物「に、人間!?」

    商人「えっ、きゃあっ!」

    764 = 1 :

    しりもちをついた女商人は、動転する頭を回転させた。
    背に負ったバッグをとっさに目の前に持ってくると、激しく突き刺さる音がした。

    鳥の魔物が放つ羽の攻撃。
    間一髪でそれをバッグで受け止めた、と女商人は思った。
    しかし、かすった傷から力が抜けていくのを感じた。


    商人(ど、毒!)


    女商人は、あわてて転がった。
    隠れられる場所まで走ろうと試みる。

    せめて柱の影まで! そう思う彼女の背を、風の鎌のようなものが切りつける。

    痛みを感じて、女商人は息を吸った。
    こうなったら、この手段しかない。


    商人「いやああああっ、魔物がいる! 殺される!」

    765 = 1 :

    一斉にこちらを向く人々の顔。
    女商人はそれを見ながら、柱に転がり込んだ。
    バッグをあさって毒消し草を引っ張り出すと、口に含んで摂取する。


    商人(戦闘、久しぶりでしたから……)


    荒い息を吐くと、防御策として身を低くする。
    いや、それ以前に、傷の痛みで経っていられなかった。
    鳥魔物はこちらを見つけた四人の方へ飛んだようだ。

    しまった、姫も侍女も残した、と思った女商人が見やると、南将軍が二人を抱えて離れたのが見える。
    そして、それらに適当に羽を撒き散らしながら、鳥魔物が大臣に迫る。


    商人(薬草、くっ、落としたか……)

    766 = 1 :

    南大臣「……間が悪いことだ」

    鳥魔物「……ハゲ。『魔王の復活』を知っているのはお前ですね!」

    南大臣「……」

    鳥魔物「答えなければ殺しますよ」

    南大臣「その通りだ。骨の魔物から聞いていなかったのか?」

    鳥魔物「せ、船長が生きていたというのですか!」

    南大臣「それすらも知らないとは、魔王軍といえど、ひとたび軍が崩壊すればこんなものか」

    鳥魔物「我々を侮辱する気ですか」

    南大臣「滅相も無い。だが、ここへ来たということは北国もいよいよ追い詰められているのかな」

    鳥魔物「……答える義務はありませんね」

    南将軍「だ、大臣……魔物と何を話している!?」

    南大臣「……」

    南将軍「答えよ!」

    南大臣「魔物には学ぶべきところがある」

    南将軍「き、貴様!」

    767 = 1 :

    南大臣「事実だ。彼らは魔王軍として規律に基づき行動していた」

    南大臣「我々が魔物にしばしば敗れたのは、彼らの士気の高さ、指揮能力の高さによる。もちろん、身体能力それ自体も大きかったがな」

    南将軍「しかし、勇者殿に魔王は敗れた!」

    南大臣「つまり、人間は勇者がいなければ何もできない愚者に成り果てているのではないだろうか」

    「さすがに無理ありまくりっすよ」

    南大臣「そうでなくとも、英雄を待望して自身を鍛えない兵士。魔物の襲撃を言い訳に生産能力を落としている農村漁村」

    南大臣「人間は勇者の存在のために、意欲を失っている。人間は勇者を乗り越えなければならん」

    「そのために、魔物と手を結ぶ……と?」

    南大臣「魔物は良い契約相手です。合理的に説明すれば、こちらに危害を加えてくることもないのです、姫様」

    「た、たった今、危害を加えたではありませんか!」

    鳥魔物「あれは自己防衛に過ぎませんが?」

    768 = 1 :

    言い争っているところへ、骨の魔物が、すうっと姿を現した。


    鳥魔物「船長! ……では、ありませんね」

    骨魔物「船長は勇者に倒された。私は幽霊船の副長を務めていた骨だ」

    鳥魔物「まさか、友軍に再び会えるとは思いませんでした」

    骨魔物「私は多少、動向を探っていた。虎の魔物と行動を共にしているはずでは?」

    鳥魔物「置いてきました。それより、魔王様の復活とは!?」

    骨魔物「さえずるな。それに、どうやら、知られたくない相手がいるようではないか」


    「あ、あいつですよ! 大臣と喋っていたの!」

    南将軍「もう言い逃れはできんぞ、南大臣!」

    南大臣「言い逃れをする必要などないのだ。陛下も魔物と同盟を結ぶ路線で一致しているのだからな」

    「そ、そんな……!」

    769 = 1 :

    南大臣「衝撃を受けると思って公表を避けていたが、いずれ発表するつもりだった」

    南大臣「我々は魔王軍のノウハウを受け、彼らは保護を受ける。対等な契約ではないか」

    「なんてバカなことを!」

    南大臣「強力な存在とはいえ、敵軍を根絶やしにすることの方が狂気ですよ」

    南将軍「……もう、ガマンできん!」

    「あ、ちょっと!」


    南将軍が刀を構え直した。
    一直線に距離を縮めて、南大臣と魔物たちへと斬りかかる。
    だが、気迫空しく、振り下ろされた刀は空を切る。

    ……骨魔物が放った銃撃に、鎧ごと貫かれたからである。


    「し、将軍―――!」

    770 = 1 :

    南大臣「哀れな男だ」

    「大臣……」

    骨魔物「人間よ、これは正当防衛である」

    鳥魔物「ふん」

    「大臣、あなたは、この国をどうするつもりなのですか」

    「ひめさま、も、逃げましょう……」

    南大臣「無論、強くするつもりです。この国も、人間も」

    「それが、勇者様を半ば追放し、将軍を殺させる理由だというのですか」

    南大臣「意見が相容れないばかりか、襲い掛かってきたのは彼らですからな。我々は何も間違ったやり方をしていない」

    「……あなたは、恥知らずです」

    南大臣「姫様、お部屋にお戻りください。あなたを傷つけるつもりも、ありません」

    「お断りします!」

    「姫様!? 無理がありますってー!」

    南大臣「……魔物たちよ、今後の件で協議する必要がある。時間は取れるか」

    骨魔物「承知した」

    鳥魔物「良いでしょう」

    「無視する気ですか!?」

    771 = 1 :

    ……騒ぎ立てる女性陣を遠巻きに、女商人はずりずりと床を這っていた。
    背中の傷が思ったよりも深く、立ち上がれない。


    商人(しくじった……思ったより、深入りしてしまっていた)

    商人(『魔王の復活』……誰か、口を滑らすと、思っていたのに……)

    商人(あと、少しで、核心に、迫れるのに……)

    商人(……)

    商人(今度は、失敗しないようにって……)

    商人(決めたのに……)

    商人(……ゆうしゃ)


    女商人は次第に意識が遠ざかり、自分がどうなっているのかもわからなくなっていた。
    自分の呼吸だけははっきりと聞こえるのに、周りの音が小さくなる。

    その体に、不意に魔法がかかってきた。
    回復の魔法―――女商人の意識が呼び戻されて、代わりに痛みが再び襲い掛かってくる。

    女商人は、顔を上げた。


    魔法使い「あれ? 全回復してないわね」

    772 = 1 :

    今夜はここまでで。

    774 :

    勇者のハーレムが完成しそうだな

    776 :

    職人技だね

    777 :

    勇者にハーレム作る気はなさそーですがねぇそこまでスレが続いてしまったら考えます


    一応適当に設定。変わることはあり得ます。

    乳比べ
    戦妻>マスター>>盗賊>姫=魔法使い=勇者母>北大臣=僧侶>侍女=側近>>鳥魔物=少女>女商人(>遊び人)

    戦妻が巨乳、魔法使いがそこそこの乳、僧侶が普通、側近が控えめ、女商人が哀というイメージで。

    778 :

    >>777
    遊び人をちゃっかり入れるなwwww

    780 :

    遊び人よりは女商人の方がデカいのか・・・

    781 :

    >>780
    女の子の胸のカップが男以下なんてありえないだろ!
    注:胸囲ではない

    783 :

    鳥は♀か

    人面に嘴付いたみたいなんと思ってたけど
    考えを改めないかんね

    784 = 781 :

    くちばし系女子だっていいじゃない!

    785 :

    鶏冠系女子でおながいしまふ

    786 :

    クチバシつけた貧乳鳥女か
    きっとサイズは72cmだな

    787 :

    万象フロンティアやっててモルガンさん的なのを考えました。もっとモンスター寄りな方がお好みなのね……

    788 :

    遊戯王のハーピィみたいなのを想像してたわ

    789 :

    侍女好きだぜー

    790 :

    フロンティアやってるんか、もるもるかわいいよね

    791 :

    商人「か、回復魔法は魔力を惜しまないでと言ったでしょう」

    魔法使い「癒しの力よ……」


    女商人の傷がみるみるうちに癒えていく。


    魔法使い「魔法使いの生命線は魔力よ、惜しまなくてどうするの」

    商人「そんなことだから、いつもぎりぎりの戦いを強いられるのです」

    魔法使い「うるさい。助けられたんだから、素直にお礼を言いなさい」

    商人「いやです」

    魔法使い「……そういえば、あんた、誰と誰が結婚したって?」

    商人「おめでとうございます。仲人を引き受けてもいいですよ?」


    魔法使いは女商人の首を締め上げた。


    商人「ふぐぐ」

    792 = 1 :

    魔法使い「手紙も読みにくくするためとはいえ、くっそふざけた文体で書き殴って!」

    魔法使い「虫唾が走るわっ! 怒りのあまり、ここまですっ飛んできちゃったじゃないの!」

    商人「し、知りませんよ、そんなこと」

    魔法使い「ええ? 大体、あんたの方こそ勇者にコンプレックス持ってるくせに、私に押し付けるとかどういう了見よ!?」

    商人「だ、誰がコンプレックス……」

    魔法使い「『私は勇者なんか嫌いなんですっ!』」キリッ

    商人「そりゃそうでしょう! あんな何も考えてないバカを!」

    魔法使い「そのバカに叱られたのがそんなにショックだったわけ?」

    商人「……そんなことありません」

    魔法使い「あんたを釈放させるために、あいつがめちゃめちゃ奔走したってのを聞いて、ボロ泣きしてたくせに~」

    商人「自分の不甲斐なさを呪っただけです」

    魔法使い「『ぐすっ、こんな大きい借り、返しきれな』」

    商人「わあああああ! なぜ知ってるんですか!」

    793 = 1 :

    商人「はぁ、はぁ」

    魔法使い「当て付けなんかせずに、本心を言えばよかったのよ」

    商人「ほ、本心?」

    魔法使い「『勇者と結婚させてください』って」

    商人「……はっ、それはあなたの願望でしょうに」

    魔法使い「ノーよ。確かにあいつは優秀なカードね。けど、パートナーにするには自覚が足りないもの」

    商人「要するに、もっと大人になったら結婚してってことでしょう?」

    魔法使い「曲解しないでくれる? それに大人になれって思ってるわけじゃないもの」

    商人「……」

    魔法使い「だから―――」


    ひゅばっ、という風切り音が、二人の間を刺し貫いた。

    魔法使いは杖を持ち直して女商人の方を向く。


    魔法使い「状況は?」

    商人「毒の羽! 大臣と王もグル!」

    鳥魔物「ぎゃあぎゃあとやかましい人間どもですね」

    794 = 1 :

    魔法使い「『魔王の復活』については?」

    商人「前、前! 羽に触れただけで、毒が」


    鳥がぐっと身を縮める。
    その体を一気に広げると、無数の羽が二人へ向けて発射された!

    しかし、対する魔法使いは杖をかざして一言のみ。


    魔法使い「真空竜巻呪文」


    勢いよく飛び出した羽が、強烈な魔法の風にさえぎられて、あえなく吹き散らされてしまう。
    魔法使いはマントを探ってこぶし大の球を取り出し、相手が驚く間にそれをぶん投げた。

    到着する直前に、ぼふっという大きな音。
    破裂した球の中から、茶色けた煙と粘性の泥状の物体が噴出したのだ。
    鳥の魔物は思わず腕で身を守っていたものの、まともに泥を被って悲鳴を上げる。

    臭い。
    その泥は、ぬるぬるするだけではなくて、強い異臭を放っていたのである。

    ……魔法使いは鳥がひるんだ隙に女商人の手を取ると、即座に迂回路を取った。

    795 = 1 :

    いつの間に攻撃を受けたのか、将軍の横で倒れている姫と侍女が倒れている。
    魔法使いはそれを見付けると、女商人をそちらに走らせて、自らは広間の奥、会議室の方へ駆け出した。

    南大臣と骨の魔物はすでにそこに入る途中だった。
    相手方の気は姫たちを助けに入った女商人に向けられている。
    ―――当然、骨魔物の銃口も。


    魔法使い「……闇の底に膨れ上がる大地の怒りは、瞬く間に噴き上がるだろう!」


    魔法使いが呪文を唱えながら飛び出してきたのを見て、骨魔物はあわてて銃を構えなおす。
    しかし、それを制して南大臣は扉をばたんと閉めてしまった。


    魔法使い「溶岩噴出呪文!」


    ぼごおっ、と勢いよく灼熱が広間のカーペットから噴き出した。
    しかし、雪崩を打ってぶつかった扉は、ばちばちっと音を立てて、溶岩をはじいてしまう。
    跳ね返った溶岩は、玉座を飲み込んでそれを焼き尽くしていく。


    魔法使い「結界!? 本気すぎて笑えねーわよ!」

    796 = 1 :

    鳥魔物「く……くっさいです! これ臭いんですが!」


    魔法使い「ちっ……こいつを締め上げるか?」

    商人「魔法使い! 姫様と侍女の手当てをお願いします!」

    魔法使い「毒を食らってるだけでしょ!?」

    商人「あ……! 毒消し草、毒消し草」

    魔法使い「……」


    魔法使いは鳥魔物の方へ杖を振り向けると、泥に苦しんでいる彼女に毒針を投げつけた。

    当たれば―――しかし、鳥は肉体に当たるより先に、膨らんだ羽の先で、毒針を叩き落した。
    そのまま勢いよく全身を震わせて、びちゃびちゃと泥を振り払う。
    取りきれない泥を壁にこすり付けるようにするが、臭いはなおも残る。

    魔法使いは隙をついて魔法を唱えようとしたが、女商人との距離を見て考え直した。
    彼女らの方に走りながら、鳥と対峙する位置に回る。


    鳥魔物「に、人間ども―――」

    魔法使い「いいの? お味方は奥の間に行ってしまったようだけど」

    鳥魔物「どいつもこいつも!」

    797 = 1 :

    魔法使い「あら? そういえばあんた、北国で活動していたバードってやつ?」

    鳥魔物「……!」

    魔法使い「なるほどね。北国でタイガーがやられたから、こっちに逃げてきたわけ」

    鳥魔物「……虎がやられたというのですかっ」

    魔法使い「ええ。北国から報せが届いたわ」

    鳥魔物「そんなはずはありません!」

    魔法使い(まだよく知らないけど。勇者が行ってるなら何かしてるでしょ)

    鳥魔物「……待ちなさい、そういえば、その呼び方、誰から聞いたのです?」

    魔法使い「は?」

    鳥魔物「その腹立たしい呼び方、それは、あの、悪魔族の馬鹿がしていたものにそっくりです」

    魔法使い「側近のことかしらね」

    鳥魔物「あの女も生きていたのですか!? 魔王城にいたのに!」

    魔法使い「……」

    798 = 1 :

    鳥魔物「あの女……! 魔王様が敗れたというのに、生き残っていたんですか!」

    魔法使い「……」

    鳥魔物「それもべらべらと私達の素性まで……!」

    魔法使い(同盟を組んでるとか言ったら血管でも切れそうね、こいつ)

    鳥魔物「答えなさい、人間! あの女は魔王様に殉ぜず、おめおめと生き残り―――」

    魔法使い「それってあんたも同じよね」

    鳥魔物「に、人間」プルプル

    商人「どうして煽るんですか! あと、毒消しじゃ効きませんよ!?」

    魔法使い「頭を使いなさい!」

    鳥魔物「……あの女は、人間と手を結んだ、ということですか。魔王様を殺した人間と―――」

    魔法使い「それもあんたと同じよね」

    鳥魔物「……」プルプル

    商人「万能薬、持ってるでしょう!?」

    魔法使い「ああ、うるさい」ポイッ

    799 = 1 :

    魔法使い「あんたに聞きたい事はあるわ」

    鳥魔物「私にはありません」

    魔法使い「あんたは側近から、一番の魔王崇拝者と聞いたわ」

    鳥魔物「……その通りですが?」

    魔法使い(頭の良い振りして、やっぱりこいつもアホね)

    魔法使い「そのあんたが、あのハゲジジイの『魔王の復活』に加担するつもり?」

    鳥魔物「何を言っているのか―――魔王様の復活など、我が悲願に他ありません!」

    魔法使い「……」

    鳥魔物「私が……」

    魔法使い「ん?」

    鳥魔物「私が、闇の力がこの世界から失われていくのに気づいて……」

    魔法使い「……」

    鳥魔物「どれほど、絶望したか……」

    魔法使い「そうね。四天王なんだし、魔王の前にあんたも倒すべきだったかもね」

    800 = 1 :

    魔法使い「でも、知らないのよね? あのハゲジジイの言う『魔王の復活』は」

    鳥魔物「聞く必要はありません」

    魔法使い「いや、あの」

    鳥魔物「側近、あの女と通じて、何を吹き込まれたか知りませんが」

    魔法使い「……」

    鳥魔物「お前達の数匹など、造作なくひねりつぶせるのです」

    魔法使い「聞きなさいよ」


    鳥は羽の腕を振り上げて、顔の前で交差させた。
    人の顔に程近かったそこに、見る見るうちに金のくちばしが盛り上がる。
    肩肉が、胸が、筋肉で膨れ上がってくる。


    魔法使い「ちっ」

    鳥魔物「あの人間も言っていましたね……私達と取引などと」

    鳥魔物「勇者ならいざ知らず―――」

    鳥魔物「お前達ごときが、愚かな」


    くわぇっ、という一声を上げると、空気が震えた。


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