のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,858人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 就活 ×2+ - 勇者 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    501 = 1 :

    貴族「そういえば……ゆ、勇者殿は、魔物と手を結ばれたのですか」

    勇者「ああ、その話? 魔王がいないなら、戦う理由もないって相手が言うからさ」

    貴族「し、しかし、あの虎はこちらに戦いを挑んできましたぞ!」

    勇者「それもそうだ。なんで、あの虎は戦いを挑んできたんだろうな?」

    貴族「それは……魔物は人を襲う性質だからでしょう」

    勇者「それなら、俺が魔物と不可侵条約を結べたわけがないだろ」

    商人「なんすか、それ」

    勇者「あー、お互いに手を出し合うのはやめようって約束だ」

    商人「へぇ。魔物にも知恵が回るやつがいるんすね」

    勇者「知恵が回る、ねぇ?」

    貴族「……大体、魔物は生来凶暴な性質を持つとよく知られています」

    勇者「そうでもないんじゃねぇか」

    502 = 1 :

    勇者「そのー、俺が会ったのは竜の魔物だったな」

    商人「はあ」

    勇者「そいつが言うことには、魔物は人を一人襲うごとに、給料が入ると」

    商人「歩合制っすか」

    勇者「うん、確かにそう言ってた。だから人を襲っていたと」

    商人「……仕事だから人を襲うってのも、嫌な話っすね」

    貴族「そんなばかな話があるか!」

    勇者「だって、魔物自身が言ってたんだもの」

    商人「他に何か言ってました?」

    勇者「後は、そうだな、魔界に戻れなかったら、いくらここで成績を上げてもなーとか、顔より年収とか言ってたぜ」

    商人「ダメな勤め人かよ……」

    503 = 1 :

    貴族「ならば、あの虎の魔物はなんだというのです」

    商人「虎の魔物ってのは?」

    勇者「なんか北の軍から逃げる途中で、僧侶さんを襲っててよ。そこそこ強かったぜ。ま、俺が追い払ったんだけど」

    貴族「つまり、襲ってきたわけでしょう!」

    勇者「あいつ、なんか言ってたっけ?」

    貴族「……確か、勇者殿の仲間を探していました」

    勇者「ふーん」

    商人「それって、あれっすね。なんか、北国を手助けしているみたいな」

    貴族「……もしや」

    勇者「なるほど」

    商人「え、え?」

    504 = 1 :

    勇者「つまり、北国は魔物を雇ったわけだな」

    貴族「ど、どうしてそうなるのです! 魔物に支配されていると考えるのが筋でしょう!」

    商人「……いや、どっちでもよくないっすか?」

    勇者「そうだな。どちらにしても、魔物と北国が何かつながってることはありうるわけだ」

    商人「仕事でやってるってことっすか」

    貴族「くそっ! 王軍に魔物も加わっては、もう勝ち目がないぞ!」

    僧侶「……勇者様、貴族様」

    勇者「おお、僧侶さん。何か分かった?」

    僧侶「ええ。まず、魔法使いさんの方ですが……」

    勇者「なんて書いてあった?」

    僧侶「それがですね……」

    505 = 1 :

    魔法使い『僧侶へ。おそらく、このままではあんたたちは負ける』

    魔法使い『孤児院の襲撃を大々的に報道してもらって、北国を不利に追いやるはずだったのに、効いていない』

    魔法使い『それどころか東国まで介入してきた。あそこには教会があり、そこから孤児院に支援も出ていたはず』

    魔法使い『それを振り切ったということは、相当な力関係が働いているということ』

    魔法使い『私の推測だけど、これは北国の方で何か裏があるとしか思えない』

    魔法使い『私はこれから、魔物の残党の線で当たるけれど、新聞などの情報発信の部分が握られている可能性がある』

    魔法使い『マイナスイメージが流されては、下手を打てば日に日に悪くなるばかり』

    魔法使い『だから、この際、北国の国王を暗殺するくらいしかない』

    魔法使い『あなたは嫌でしょうけど、正々堂々はもう無理に近い』

    魔法使い『一応、使えそうな人間に当たってみるけど、考えておくこと』

    506 = 1 :

    一同『……』

    勇者「要するに、正面からじゃなくて、暗殺しろってことだよな」

    商人「ドン引きだよ!」

    貴族「承服しかねる!」

    僧侶「でも、確かに私たちは追い詰められています」

    勇者「ま、まあな~、いくら俺でも、東国も含めれば数千人の兵隊だしな~」

    貴族「完全にテロを推奨しているではないか!」

    勇者「まあまあ。でも、俺らが魔王城を攻めたやり口も、言っちまえばテロだったしな」

    僧侶「神の裁きですよ!」

    商人「そ、そうっすか」

    勇者「で、で、女商人からも、来てるんだろ?」

    僧侶「はい。こちらが、女商人さんからの、手紙です」

    507 = 1 :

    商人『手短に。南国も動き出しました。勇者一行を相手に、このような動きは異常です』

    商人『おそらく、魔王を倒した数ヶ月の間に、勇者を排除する動きが作られたのでは』

    商人『戦後処理のための三国会談の参加者は、北国の国王、東国の王子、南国の大臣』

    商人『現在、積極的に動いている連中と一致します』

    商人『それでも勇者を排除することを可能にするためには、武力が必要』

    商人『つまり、それが魔物ではないかと思います』


    貴族「魔王を倒した勇者殿を、魔物の力で追い払うなどと……!」

    勇者「やっぱりな」

    商人「やっぱりって、あんた」

    勇者「でも、これってさ、魔物と手を組んだから、遠慮なく滅ぼしてくれってことじゃね?」

    僧侶「そうなりますね」

    貴族「そ、僧侶さん?」

    508 = 1 :

    商人『北国のお城へ行く、裏のルートを記します。これは敵方にもあまり知られていないでしょう』

    商人『私も、魔法使いと同じように、北の城を直接攻撃することをオススメします』


    商人「あー、この人もテロ推奨だよ」

    貴族「ど、どいつもこいつも……!」

    勇者「まあ待てよ、貴族」

    商人「何か秘策でもあるんすか?」

    勇者「元からお城に近づくつもりだったんだろ、それは間違ってないじゃねーか」

    貴族「それは、確かに……」

    勇者「その後、どうするつもりだったんだ?」

    貴族「そ、それは、国王に不正義を認めさせ、退位していただくと」

    商人「ふわっとしてんなー」

    貴族「黙れ! では、他にどんな策があるというのだ」

    509 = 1 :

    勇者「……」

    僧侶「魔法使いさんなら、なんて考えるでしょうか……」

    勇者「……これはチャンスだって言うだろうな」

    貴族「ど、どこがチャンスだと言うのだ」

    勇者「要するに、頭を使えってことだよ。北国と魔物は手を組んでいる」

    僧侶「そうですわね」

    勇者「だったら、お城に行く裏ルートで全速力で近づけば、どこかで魔物に出くわすわけだ」

    僧侶「はい」

    勇者「じゃあ、魔物に会ったらそいつを倒して……」

    勇者「その魔物と北国がつながっていたことを大宣伝する、ってのはどうだ」

    貴族「!」

    商人「なるほど、自分が魔物と組んでたなら、正当性もないっすからね」

    貴族「し、しかし、国王が認めるかどうか……」

    勇者「それこそ、そのくらい認めさせなければ、退位なんか無理だろ?」

    貴族「……」

    510 = 1 :

    商人「でも、倒すっていうけど、もし魔物に会えなかったらどうするんすか」

    勇者「そんときゃ、王殺しでも何でもやればいいさ」

    商人「バイオレンスだなぁ」

    貴族「……」

    僧侶「貴族様、ご決断ください」

    貴族「む、うむ」

    勇者「国を変えるのに、英雄はいらんって言ったよな、お前」

    貴族「そうだ……」

    勇者「英雄として言わせてもらうが、英雄なんか利用すればいいんだよ」

    貴族「……」

    勇者「どうせ、その後の『長い政治の戦い』をやるのはお前だ」

    貴族「……分かった」

    511 = 1 :

    商人「よっしゃ! そうと決まれば、後は武器を売って、俺は帰りますよ」

    勇者「は? 帰る?」

    商人「な、なんで不思議そうに聞くんだよ」

    勇者「いや、ここから無事に帰れるわけがないだろ」

    貴族「その通りだ。アジトの場所は知られているんだぞ?」

    勇者「出て行ったら、途中でとっ捕まるな」

    商人「で、でも、俺はなんか分かったら、情報を持ってこいって女商人に言われてるんすよ」

    勇者「完全に使いっ走りじゃねぇか……」

    商人「か、帰るまでが修行の一環ってなわけでさ」

    僧侶「……商人様、今は一人でも力がほしいのです」

    僧侶「ぜひとも、力をお貸しいただけないでしょうか」

    商人「そ、それは……」

    勇者「まあ、どの道このクーデターが成功しなけりゃ、殺されるんだ」

    貴族「あきらめるがよい」

    商人「うおおお!? いつの間に道を誤ったー!」

    勇者(どう考えても最初から女商人の生贄ルートだったろ……)

    512 = 1 :

    ―――海上。

    子1「海だー!」

    子1「うーみ、うーみっ」

    子2「うええっっぷ」

    子2「大丈夫?」

    「水着、持ってくれば良かったかな」

    武闘家「やれやれ、そんな暇はありませんよ」

    弟子C「……大丈夫だ。順調に、進んでいる」

    弟子D「船を操るのは初めてだが、まあ、なんとかなるんでは?」

    スラ「ぴきーっ!」 ぴょいん

    「うんうん、スラちゃんもいるしね」

    武闘家「はあ……まったく、あの人が頼む仕事は面倒ばかりなんだから」

    513 = 1 :

    「あの人って、あのおばさんのこと?」

    武闘家「お、おばさん? いやほら、魔法使いさんですよ」

    「ふーん、私、あのおばさん、嫌い」

    武闘家「ま、まあまあ。魔法使いさんは僕より年下ですし」

    「じゃあ、あんたはおじさん?」

    武闘家「あ、あのですね……」

    弟子C「……生意気盛りの年頃だ」

    弟子D「容赦なく大人をけなすのは子どもの特権みたいなもんでしょ」

    「むー、生意気とかじゃないもん!」

    スラ「ぴっぴーっ」

    武闘家「あははは……」

    514 = 1 :

    弟子C「……おい、武闘家」

    弟子D「ちょっと気になるんですがね」

    武闘家「な、なんでしょうか」

    弟子C「……この辺は、船の行き来はあるのか」

    弟子D「要するに、航路になってるかどうかってことっす」

    武闘家「いえ、西の方角は魔王の居城があった方角ですから、まだまだ開拓されてないはずです」

    弟子C「……なるほど」

    弟子D「そりゃまずいっすね」

    武闘家「な、なんですか?」

    弟子C「……右方、船影が」

    弟子D「しかもこっちに向かってきてるし」

    武闘家「う、うわわ」

    515 = 1 :

    武闘家「と、とにかくまずは子どもたちに伝えないと……!」

    「敵なの?」

    武闘家「う、うわあ! お嬢さん、びっくりさせないでくださいよ」

    「敵なのね?」

    武闘家「まあ、おそらく。安全のため、隠れてもらわないと」

    「分かったわ、みんなに伝えてくる」

    スラ「ピキーッ!」

    武闘家「つ、伝えてくるって」

    「みんなー! 全員隠れて行動する準備よ!」

    子どもたち『おおーっ!』

    武闘家「良かった、ちゃんと隠れてくれる気らしい……」

    「後の事は、私とおっさんどもに任せなさい!」

    子どもたち『了解しました!』

    武闘家「!?」

    516 = 1 :

    武闘家「お、お嬢さん? 一緒に隠れてもらわないと」

    「大丈夫よ! 私にはスラちゃんもいるし」

    スラ「ぴーっ、ぴーっ」

    武闘家「いやいやいや! それとこれとは別ですよ!」

    「私ががんばるんだもん! 私がリーダーだし!」

    武闘家「あ、あのね」

    弟子C「……来るぞ」

    弟子D「右舷に骸骨だ、やはり魔物の船だな!」

    武闘家「ええいっ」ダッ


    武闘家は、船の縁に駆け寄って、先にかかった白骨の手を叩き落した。


    武闘家「もう、魔物は滅びたんじゃないんですかっ」

    517 = 1 :

    弟子C「……俺が舵を取る」

    弟子D「後方を守る! そっちは頼んだぜ」ダッ

    武闘家「分かりました!」


    武闘家は息を吐いた。

    これでも元は冒険者の端くれだ。
    幸いにして、魔物は弱い。
    船上ながら、顎を突き出してきた骸骨に蹴りを放てば、会心の当たりだった。

    だが、近づいてくる船影をにらむと、その甲板には、出番を待つ青白い光が満載されていた。
    後に控えた骨の海賊たちもいる。


    武闘家「ひ、人魂も!? 私の拳で、通じるのかな」


    どぉおおんっ!


    叫んだ途端、何かがぶつかる音と、激しい衝撃。
    思わず武闘家はバランスを崩した。


    弟子C「……砲撃だ!」

    弟子D「だ、大丈夫かあーっ」

    武闘家「くそっ」

    518 = 1 :

    武闘家が悪態をつく。
    嫌な記憶がよぎる、仲間を失ったときの。

    揺れる船の船室から、子どもたちが叫ぶ声がする。
    武闘家は、船にしがみつきながら、なんとか立ち上がろうとした。

    その瞬間、武闘家の横に、影が追いついた。


    「スラちゃん!」

    スラ「ぴいっ!」

    武闘家「お、お嬢さん……!」

    「あいつらを追っ払って!」


    脇に抱えたスライムが、大きく息を吸い込む。
    ぼうっという音がする。
    その透き通った身体に火がともったように見えたのは、見間違いではなかった。

    ―――激しい炎がスライムから吐き出された!

    519 = 1 :

    熱で、武闘家は思わず顔を背けた。

    こちらの船に乗り出していた白骨は、炎をもろに食らって海に投げ出された。

    近づいてきた船に、炎が移る。
    待機していた人魂が、炎の勢いを食らって吹き飛ぶ。
    骸骨たちは大慌てで、焼ける船の帆から、火の粉を払い出した。


    弟子C「……チャンスだ!」

    弟子D「全力で振り切れ、舵を切れ! みんな船につかまれーっ!」

    武闘家「お嬢さん!」

    「ひゃああ!」

    スラ「ぴ、ぴーっ!?」


    武闘家は、身を乗り出していた少女を引きずり倒した。
    激しい揺れとともに、左方へと大きく船が曲がる。

    勢いのついた船が、そのまま波に乗って、魔物の船を引き離していく。

    520 = 1 :

    武闘家「はあっ、はあっ」

    弟子C「……よし!」

    弟子D「なんとか、なったかぁー?」

    弟子C「……追っ手は離れてきている」

    弟子D「ふう、はあ、助かったか……」

    「……へへへ」

    スラ「ぴぃ、ぴきーっ」

    武闘家「……」

    「私とスラちゃんのおかげだよね、これは」

    スラ「ぴいっ!」

    武闘家「お嬢さん」

    「なに?」


    ぱちん。

    521 = 1 :

    「え、え……」

    武闘家「どうして前に出てきたんですか」

    「だって、私」

    武闘家「あなたはね、船室で隠れてる子たちのまとめ役でしょう」

    「で、でも」

    武闘家「あなたが死んだら、あの子たちをどうするつもりだったんですか!?」

    「だって、私、役に立たなくちゃって……」

    スラ「ぴいっ、ぴいーっ!」

    武闘家「……船が大きく揺れて、ケガした子がいるかもしれません」

    「!」

    武闘家「早く、見に行ってあげなさい」

    「はい……」

    522 = 1 :

    「あ、あの」

    武闘家「……」

    「ごめん、なさい」

    武闘家「……最初に、みんなを隠したのは、正しい判断です。それに、あの炎を指示したことも間違ってませんでした」

    「……」

    武闘家「でも、ああいうことができるなら、ちゃんと教えてください」

    「……分かりました」タタッ


    スラ「ぴきーっ!」

    武闘家「はいはい、君は殊勲賞でしたよ」

    弟子C「……キツすぎんか」

    弟子D「かわいそうになー」

    武闘家「知ってますよ」

    523 = 1 :

    知ってても言わずにはいられなかった。
    手柄がたてたくて、前のめりに飛び込んで、仲間を死に追いやった自分に重なって見えたからだ。


    勇者『誰かの役に立ちたかった? 認められたかった、の間違いだろ。お前は』


    頭の中に、はっきりと勇者の顔が思い浮かぶ。
    後にも先にも、勇者の軽蔑した顔を見れたのは自分くらいだろう、と武闘家は思った。


    武闘家「でも、勇者さんじゃないんだから、あんなに前に出過ぎなくていいんです。僕らは」

    弟子C「……それは納得」

    弟子D「ま、確かにな」

    武闘家「それはそれとして、やっぱりすごかったですよねぇ。あの度胸は」

    弟子C「……ただの女の子にしておくには勿体ない」

    弟子D「立派な魔物使いになれそうだよな」

    武闘家「あ、村が見えてますよ!」

    弟子C「……よし、近づくぞ」

    弟子D「おう、準備するぞ!」

    524 = 1 :

    今夜はここまで。

    525 :

    乙でした

    531 :

    おまけ。本日更新不可。

    勇者人物評。

    魔法使い「あいつ見てると何か思い出すのよね。バーサーカーとか首狩り族とか」

    戦士「……まあ。いいやつ、じゃないか?」

    僧侶「悪知恵、悪巧みさえなければ理想の御方なのですけど」

    商人「私は嫌いですけど、良い人なんじゃないですか? 私は嫌いですけど」

    「かっこいいよ? 少しは…」

    竜魔物「底の見えない人間だ」

    側近「割りと魔王様に似てるわよねー」

    遊び人「むかーし、一緒に飲んだんです。懐かしいなあ」

    武闘家「 僕に似てませんか?」

    盗賊「話の通じないやつよね。仲間がいなかったらどうなってたか」

    「かっこいいです……」

    勇者「全世界のあこがれだよな!」

    532 :

    最後おいww

    534 :

    全世界のあこがれだよ!wwwwww

    535 :

    仮設「勇者の村」。


    竜魔物「……誰か来たぞ」

    盗賊「ホントね。馬車が一台、こっちに向かってくるわ」

    遊び人「敵でしょうか?」

    魔法使い「あれは女商人の馬車ね」

    盗賊「女商人ねぇ」

    魔法使い「含みがあるわね」

    盗賊「私、ああいう頭が固そうな子って苦手なの」

    遊び人「あはは、盗賊さんも固そうですからね」

    盗賊「あんた、ところどころで私にきつくない?」


    マスター「……到着しましたよ~」

    勇者「あらまあ、ずいぶん早く着いちゃったわ」

    魔法使い「酒場のマスター、それに勇者のお母さんも! よく来てくれました」

    マスター「ええ。結局、来ることにしたわ」

    536 = 1 :

    魔法使い「でも、女商人が見当たらないですね」

    マスター「え、ええ。彼女、南国に残って情報収集を続ける、と」

    魔法使い「情報収集ね……」

    マスター「はい、代わりにお手紙」

    魔法使い「ありがとうございます」

    盗賊「……マスター、お久しぶり」

    マスター「やだ、盗賊ちゃんじゃない!」

    盗賊「ちゃんづけやめて!」

    遊び人「お久しぶりです、マスター」

    マスター「やだぁ、いかがわしい遊び人君じゃない!」

    遊び人「それ、そのまくら言葉、いい加減はずしてくれませんか?」

    マスター「でも……相変わらずやってるんでしょ?」


    遊び人は、ぐっと親指を立てた。

    537 = 1 :

    マスター「それで、魔法使いさん」

    魔法使い「なんですか? できれば手紙を読んでおきたいんですが」

    マスター「まあ、その前に。ここで酒場を作ってもいいって話を聞いてたんだけど」

    魔法使い「ええ。『勇者の町』になる予定ですから」

    マスター「それはいいのだけれど、ほっとんど何もないわよね、ここ」

    魔法使い「……」

    マスター「ただの野っ原よね、ここ」

    魔法使い「こんな広い土地を無料で使い放題なんてすごいと思いませんか?」

    マスター「誰が酒場を建ててくれるのよぅ!」

    魔法使い「男勢がちょっと足りないんですよねー」

    マスター「もう、女商人さんに言いくるめられちゃったわ」

    魔法使い「あと、孤児院の子どもたちが十数名来て、一生懸命働くと」

    マスター「児童労働させる気満々じゃない……」

    538 = 1 :

    魔法使い「そういえば、男勢いますよ」

    マスター「いかがわしい遊び人君? ちょっと大工仕事は頼りないのよねぇ」

    遊び人「あはは、こう見えても、現場で肉体労働していたことはあるんですがね」

    盗賊「……肉体で接待する労働の間違いじゃないの?」

    遊び人「溜まってるお客さんが結構いるんですよね~」

    盗賊「否定しなさいよ、あんたは」

    魔法使い「そうじゃなくて、ほら、挨拶しなさい、あんた」

    竜魔物「……」ペコリ

    マスター「ま、魔物!?」

    竜魔物「……魔王軍に所属していた、元兵士の竜です。故あってこちらで働かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」

    マスター「ご、ご丁寧にどうも……」

    竜魔物「その他、スライム隊も、土木工事に参加させていただいております」

    スライム隊『ぴっぴきぴーっ!』

    マスター「あ、かわいい」

    539 = 1 :

    マスター「……いやいやいや、どういうことなのよ」

    魔法使い「なかなか人手が足りませんので、基礎工事をお願いしています」

    マスター「だ、だから、どういう経緯でこうなったの!?」

    魔法使い「……あ、もう一匹、あそこにいる露出の高い悪魔も、働き手で」

    側近「ん? ちはー」

    マスター「あ、こんにちは……」

    魔法使い「ちょっと顔色が悪いけど、魔王がいた頃はそれなりの地位にいたらしいから、大目に見てください」

    マスター「何を大目に見たらいいのか分からないのだけれど」

    魔法使い「……側近、あんたちゃんと挨拶しなさい。この町でお酒を売ってくれる人なのよ?」

    側近「何よ、もう! 私はお酒よりもお菓子の方が好きだもん!」

    マスター「クッキーならあるけど」

    側近「かつては魔王様に仕えた身、しかしながら、これよりはあなたの従順なる僕となりましょう」

    マスター「安い子ねぇ」

    540 = 1 :

    マスター「よく分からないんだけど、やっぱりよく分からないわ」

    側近「うまうま」

    魔法使い「魔王が死んで、魔界にも帰れなくなった。だから、もうここで生計を立てようということらしいです」

    側近「らしいって何よ! あんたの提案に私は乗ってあげただけなんだからね!」

    魔法使い「こいつは何の役に立つか分かりませんが、竜の方は力仕事で早速発揮してくれてまして」

    側近「こいつって、おい!」

    マスター「はぁ……魔物とも仲良くしようってことかしら?」

    魔法使い「協力できるなら、種族は問わないということです」

    側近「敵対するなら、同族でも容赦しないってことよね、それ」

    マスター「……なんとなく、分かったわ」

    魔法使い「酒場はすぐに用意できなくても、調理場はすぐにでも作って使っていただければいいなと」

    マスター「うん、分かったわ」

    541 = 1 :

    側近「ね、ねぇ。そこの酒の人間」

    マスター「私? 私はマスターでいいわよ」

    側近「ま、マスター。クッキーって、もうないのかしら」

    マスター「なに、お菓子がほしいの?」

    側近「ええ。素朴な味だけど、とってもおいしかったわ」

    マスター「……素朴な味」

    側近「魔界では魔界タワーの30階にスイーツバイキングがあるのよ! でも、もうこっちの世界に来たら、スイーツなんて二度と口に出来ないと思ってたわ」

    マスター「ふふっ、まあ、調理場が出来れば、いろいろ作ってあげるわ」

    側近「やったわ! ほら、竜! とっとと調理場を作るのよ!」

    竜魔物「……まだ基礎工事だって言ってんでしょ?」

    側近「マスター! 酒で作ったゼリーとかいいわよね!?」

    マスター「はいはい」

    542 = 1 :

    側近「そういえば、魔法使いの人間」

    魔法使い「普通に、魔法使いでいいわよ」

    側近「どうでもいいけど、海の方からも船が来てるわ」

    魔法使い「何の旗を立ててるか分かる?」

    側近「太陽のマークだったわ」

    魔法使い「じゃあ、私の船だわ。きっと武闘家とかだ」

    側近「どうするー? 沈めるー?」

    魔法使い「私の船だっつってんでしょうが。準備に手間取るから、来るまで待ちましょう」

    側近「はーい」スタスタ

    魔法使い「さて、じゃあ、手紙を……」

    勇者「うふふ~、魔法使いちゃん」

    魔法使い「あ、勇者のお母様」

    543 = 1 :

    勇者「もう、こんな大事なこと、どうして黙っていたのよ~」

    魔法使い「はあ、すみません……どう転ぶか、分かりませんでしたので」

    勇者「まあ、そうよねぇ」

    魔法使い「……?」

    勇者「それで、勇者はどうしているのかしら?」

    魔法使い「ちょっと、仲間のところに飛んでしまって……」

    勇者「まあ、そうよねぇ。みんなに知らせないと行けないわよねぇ~」

    魔法使い「はぁ」

    勇者「でも、勇者のお母様だなんて、そんな他人行儀に言わなくていいのよ~」

    魔法使い「はぁ?」

    勇者「息子をよろしくね」

    魔法使い「……は?」

    勇者「式の日取りはいつになるのかしら~」

    魔法使い「……」

    勇者「女商人さんから聞いたのよ~」

    544 = 1 :

    ……魔法使いは手紙を読み始めた。


    商人『魔法使いへ。おひさ』

    商人『魔法使いが頭を下げるなんて、初めてだよねv』

    商人『ぶっちゃけ~引き受けたくなかったんだけどぉ、しょーがないからやったげるよ』


    魔法使い(イラッ……)


    商人『それでぇ、分かったことなんだけどぉ』

    商人『北、調査中。勇者との合流を確認。東の危険度は薄い。南、姫の侍女と接触』

    商人『南大臣が魔物に? 詳細をさらに確認すべく城内に潜入』

    商人『探検隊の計画、魔法の儀式、研究者を集めている。詳細不明』


    魔法使い(やっぱり、私は行くべきかしら……)


    商人『それとぉ、マスターと勇者のお母様がそっちに行くから、よ・ろ・し・く♪』

    商人『それでねぇ、お母様がちょっと動きそうになかったから、魔法使いと勇者が結婚したからお祝いに来てって言っちゃった(汗 ごめりんこ』

    商人『でも、あんたたち、どの道するからいいわよね☆』

    商人『むしろ素直になれないあんたたちを後押ししてあげた私ってキューピッド?』

    商人『そんじゃあね。女商人より?』


    魔法使い「……」びりぃっ ぼっ

    545 = 1 :

    勇者「それでね~、もし良かったらと思って~」

    勇者「私のドレスも持ってきちゃった~」

    勇者「魔法使いちゃんも、若い頃の私の体型に似ているっていうか~」

    魔法使い「しばらく待っていただけますか」

    勇者「え?」

    魔法使い「私も、呼ばないと行けない人がいますので」

    勇者「そうなの~? まあ、しょうがないわね~」

    魔法使い「では……」ダッ


    魔法使い「ふざけんじゃねーよ、あの女ァ!」

    側近「な、なによ」ビクッ

    遊び人「ど、どうかしましたか」ビクッ

    魔法使い「お前ら、後は任せたからな! これ、計画書!」バサッ

    盗賊「うわっぷ」


    魔法使いは移動呪文を唱えた!

    546 = 1 :

    今夜はここまで。

    549 :

    いいなほんと

    550 :

    盗賊「任せたってどーすんのよ……」

    遊び人「計画書ってこの束ですか?」

    側近「大体、私らがすることって、もう土木工事くらいじゃない?」

    竜魔物「……分かってるんなら、ちょっとは手伝ってくださいっすよ」

    側近「え? 何?」

    竜魔物「……」


    タッタッタ……


    「おーい……!」

    武闘家「みなさーん! 魔法使いさーん!」

    側近「あ、おー、ちびっ子ー!」

    「悪魔のお姉ちゃん!」

    側近「何よ、ちょっとの間に背とか伸びちゃった?」

    スラ「ぴきーっ!」

    側近「やん、スライムもいる~」

    竜魔物「……」

    「竜のおじさんも」

    竜魔物「久しぶりだな、人間の少女よ」


    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 就活 ×2+ - 勇者 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について