元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
1 :
勇者「魔王も倒して、世界を闇から救ったはいいけど」
勇者「勇者的にはやることがもうなくなってしまった」
勇者「用心棒とかは『いやいや、勇者様には!』とか言われるし……」
勇者「定番の国の姫と結婚とかは、隣国の王子との婚約が決まってるとかで出来ず……」
勇者「褒美をもらって、ぐーたらしていたら、白い目で見られ始めたし」
勇者「パーティーも解散しちゃったしなぁ」
勇者「実家に帰っても、ごろごろしていたら、母さんに怒られたし」
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2 :
<注意点>
・同ネタ多数は承知の上。
・オチが弱いのもいつもどおり。
・のんべんだらりと読んでください。
・地雷臭を感じたら退避。
それではどうぞ。
3 = 1 :
勇者「身分を隠して、どこかの闘技場にでも出るかなぁ」
勇者「つーか、勇者って職業じゃないから、転職できないんだよな……」
勇者「山でウサギでもとって暮らすか?」
勇者「ほら、結構世界を救った勇者って山で隠遁生活を」
勇者「ああ、でもなー、俺まだそんなじじい暮らしするほど老いてないし……」
勇者「褒美の半分くらいは実家に預けちゃったけど、まだお金残ってるしな」
勇者「……」
勇者「あ、そうだ。パーティーのみんなに会いに行くか」
勇者「そんで、あわよくば再就職先を斡旋してもらおう」
4 = 1 :
田舎の村。
勇者「この辺に戦士が住んでいるって聞いたけど」
村人「おお、あなたは勇者様ではありませんか」
勇者「お、おう」(知らん人から話しかけられた)
村人「もしや、戦士殿に会いに?」
勇者「そ、そのとおりだ」
村人「……すみませんが、それはやめていただけますか」
勇者「ど、どうして?」
村人「戦士殿はこの村で結婚もされ、畑を耕し、自警団長としても活躍されておりまして……」
勇者「はぁ」
村人「この村の大切な一員なのです」
勇者「……?」
5 = 1 :
勇者「それがどうかしたんですか」
村人「いや、ですから、また冒険へと連れて行かれては……」
勇者「ち、違うって! 久しぶりに会いに来ただけですから!」
村人「そ、そうでしたか! それは失礼いたしました」
勇者「よければ、呼んでもらえますか?」
村人「それでは、早速、戦士殿を呼んできます! お待ちくださいね」タタタッ
勇者(勇者って冒険しかしてないイメージなのかな)
勇者「ううん、そうなると、この村で働くとかは」
戦士「おーい! 勇者!」
6 = 1 :
戦士「久しぶりだな! この村に来ていたのか」
勇者「おう、戦士! 聞いたぞ、結婚もしたんだって?」
戦士「お、おう。すまんな、式にも招待せず」
勇者「あー、いいっていいって。それにしてもこの村は」
戦士「ああ、俺の故郷だ。錦を飾るってやつでな」
勇者「ふ、ふ~ん」
戦士「今日は泊っていくんだろ?」
勇者「そうだな……積もる話もあるだろうし」
戦士「よし、妻に話しておくぜ」
勇者(奥さんか……)
7 = 1 :
戦士宅。
勇者「お邪魔します」
戦妻「あらあら、どうぞいらっしゃいました」
戦士「そんな畏まらなくていいんだぞ」
戦妻「もう、あなたったら。せっかくのお客様でしょ?」
戦士「バカ。よし、一番いい酒出しておくれ」
戦妻「はーい」テッテッテ
勇者(すげぇ巨乳)
戦士「ちょっと猫被ってるんだあいつ」
勇者「そ、そうなのか? ちなみにどういう関係で」
戦士「ああ、同じ村の出身でな」
勇者(お、幼馴染かよッ)
8 = 1 :
戦士「……どうだ、世界の方は」
勇者「ん? ああ、気抜けするくらい平和だよ。少なくとも、俺の実家も」
戦士「そうか。俺はもう、たくさん稼いだしな、いろいろ教えてくれ」
勇者(地に脚つけてる感じでうらやましいんだが)
勇者「ち、ちなみに、畑仕事しているって聞いたけど」
戦士「まあな。元々村全体が、魔物も来ないような貧弱な土地だったから、なんとかしてやりたくて」
勇者「ああ、そういや、賢者にいろいろ聞いていたな」
戦士「おう。肥料に品種改良、新しい農具の考案書まで作ってもらったぜ」
勇者「お前の口から聞きなれない言葉が……」
戦士「うるせぇ!」
9 = 1 :
勇者「でも、それだけじゃないんだろ?」
戦士「ああ、聞いていたのか。いやなに、名前を売り出してあちこちに野菜の売買の交渉をしていたら、剣術を教えてくれって連中が集まってしまってな」
勇者(そ、それは聞いてない)
戦士「体力をつけて、いい武具を装備すれば勝てる! って言って適当に追い払ってたんだが」
勇者「いやあ、お前の場合はそれだけじゃないだろ」
戦士「そうかなぁ」
勇者「そういえば、冒険で来たときより、すごい人がいたな」
戦士「住み着いちまったやつもいる。道場を開かされる羽目になったよ」
勇者(こりゃ村の救世主になるわけだ)
10 = 1 :
戦妻「うふふ、盛り上がってますね」
勇者「あ、すみません、奥さん」
戦妻「この人ったら、何でもほいほい引き受けちゃうから」
戦士「う、うるせぇな」
勇者「ああー。俺が最初にメンバーを集めようとしたときもね、そのときはガキだったから結構断られてたんだけど、戦士がまず引き受けてくれて」
戦妻「あら、見る目があったのね」
戦士「そ、そういうことだ」
勇者「なんで俺がって言ってたぞ」
戦士「なんで覚えてるんだよ!」
11 = 1 :
勇者「おおー、これは戦士の名前入りワイン」
戦士「生産者の名前を出すってのが流行ってるらしい。つっても、俺はワインなんか作ってないんだけどなぁ」
勇者「じゃあ、何したんだよ」
戦士「一番うまいワインを選んでくれって試飲会を」
勇者「うわぁ……」
戦妻「あの時は、そんなに酔っ払わなかったけど、お腹がたぽたぽになったって」
勇者「十分、いやな話だろ」
勇者(ん……そうか、勇者ご推薦の商品とかだったら商売できる?)
12 = 1 :
戦士「そういや、何かあったのか?」
勇者「ん?」
戦士「久しぶりにやってきたから、何事かと思ったからさ」
勇者「お、おう」
戦妻 ニコニコ
勇者(やべぇ、奥さんのいる前で仕事の斡旋をしてくれとは言いづらい……)
勇者「い、いやまあ、その、な」
戦妻「あら、男同士の話かしら。なら、少し果物を切ってきますね」
勇者「あ、いや、すみません」
勇者(うおー気遣いできる幼馴染妻とか最高すぎる)
戦士「なんだ、そんな気を使わなくても」
勇者「お前はちょっとは察しろ」
13 = 1 :
戦士「……なんだなんだ、何かあったのか」
勇者「いやー、実はな。世界が平和になったせいで、仕事がな……」
戦士「あん?」
勇者「だ、だからな、仕事がほしいんだよ」
戦士「仕事がほしいって、勇者なら引く手数多だろうが」
勇者「ねーよ! そんなもん!」
戦士「お、おう」
勇者「用心棒や剣術指南は『間に合ってる』か『恐れ多い』でお断りだよ!」
戦士「うーん、そんなもんかな」
勇者「逆玉とか狙ったけど失敗したし!」
戦士「じ、実家はどうなんだ」
勇者「お前と違って、俺は元々勇者になる修行しかしてなかったから、実家の仕事とかもないんだよ」
戦士「お前、農村出をバカにしてんのか」
14 = 1 :
勇者「とにかく、仕事がない。マジで、ない」
戦士「いやしかし、褒美だってもらっただろ?」
勇者「もらったけど、あれでごろごろしろってか?」
戦士「いやそれを元手に事業を始めるとかさ」
勇者「じ、事業ってなんだよ」
戦士「それは俺にはわからんが……」
勇者「はぁー、そりゃ周りが慕ってくれてるお前なら、何か起こせるだろうけどよ」
戦士「いやいや、お前ほどの才覚のあるやつ、どこでも欲しがると思うんだがな」
勇者「……」
戦士「言われたことがないのか?」
勇者「うるせぇー!」
15 = 1 :
勇者「なんだよー、あんな巨乳でかわいい奥さんまでいてさー」
戦士「ば、バカ。それにああ見えてじゃじゃ馬なんだぞ、あいつ」
勇者「巨乳幼馴染でツンデレ妻とかいい加減にしろよ!」
戦士「あのなー」
勇者「……もしかして、子どもも?」
戦士「……ああ、3ヶ月だ」
勇者「くそっ、ふざけるな!」
戦士「うおっ、からみ酒だったっけ? こいつ」
16 = 1 :
戦士「大体、俺みたいなやつより、僧侶とか賢者とかに聞いたほうがいいんじゃないのか」
勇者「……」
戦士「奥さんで言うなら、あの二人なんかお前に気があったと思うし」
勇者「いや、それはない」
戦士「ええー? そうかな」
勇者「僧侶さんは、信仰に篤くてまったくその気がないし、あー、賢者はクズだしな」
戦士「お前、仲が良くなかったからって、賢者をそんな風に」
勇者「それに、賢者は魔王を倒した後、どっかに行っちまったじゃないか」
戦士「そうだったっけかな」
勇者「……よし、戦士。勇者ブランドをつくろう」
戦士「は?」
17 = 1 :
勇者「だから、このワインみたいにさ、ここで勇者ブランドをつくって、売り出すんだよ」
戦士「いやお前、この村に住むってことか?」
勇者「そりゃそうよ! 農業なんて初めてだな~」
戦士「お前はやめたほうがいいと思うぜ」
勇者「な、なんでだよ」
戦士「こう言っちゃなんだが、場当たり的だろ、お前」
勇者「それがどうした」
戦士「冒険の時も、俺と賢者でフォローしてたしな」
勇者「お前らが慎重すぎるだけなんだよー」
戦士「いやいや。だから、そういうんじゃ村では歓迎されないし、大体、農業は天に頼る仕事だ。飽きて放り出したりできないんだぞ」
勇者「う、うるせぇな。やってみなくちゃ分からんだろ」
戦士「分かるよ。お前は勇者らしいんだろうが、無計画すぎる」
18 = 1 :
勇者「……」
戦士「冒険者だってちゃんと計画立てるだろうに、薬草の数が足りなくて死に掛けたことも覚えているぞ俺は」
勇者「あ、あの時は、武器がどうしても欲しくて」
戦士「だったらもう少し稼げばよかったろうに。道具を全部売って武器を買うバカがどこにいるんだ」
勇者(正論だな……)
戦士「……ふむ。なるほどな」
勇者「な、なんだよ」
戦士「どこでも欲しがる人材かと思っていたが、案外、平和な時は組織の邪魔になってしまうんだな、お前」
勇者「れ、冷静に評論するんじゃねぇー!」
19 = 1 :
隣国。
勇者「結局、戦士にゃ仕事を紹介してもらえなかった」
勇者「こうなったら僧侶さんだ」
勇者「僧侶さんなら、教会で偉い立場についてるだろうし、いろいろ分かるだろう」
勇者「あ、すみませーん」
村人「はい?」
勇者「この辺に、勇者一行だった僧侶さんは……」
村人「あ、ああ。そういうあなたは、勇者様?」
勇者「そのとおり、勇者ですよ」エラソウ
村人「そ、そうですかぁ、僧侶さんに」
勇者「……? なにかあったんですか?」
村人「実は、僧侶さんは、わが国の教会を出て行ってしまったんですよ」
勇者「な、なんだって!?」
20 = 1 :
教会。
神父「……そうですか、僧侶にお会いしたいと」
勇者「出ていったって、何があったんですか?」
神父「うむ……実は、僧侶は旅をする途中で、多くの孤児に出会いましてな」
勇者「そ、その孤児を」
神父「さよう。いただいた褒美もすべて孤児院設立に使ってしまったそうで」
勇者「教会には戻ってきていないんですか」
神父「寄付を募ったり、孤児の働く場所を確保するために、各国を回っているうちに、もう教会には戻れないと……」
勇者「ど、どうして戻れないんですか」
神父「勇者殿、僧侶はこの国に孤児院を設置したわけではありません」
21 = 1 :
神父「他国では、わが教会と関わらない土地もある。そのようなところで、孤児院や作業場などを作ろうとすると、その承認や手続きのため、大変な苦労が必要なのです」
勇者「はぁー、なるほど」
神父「教会から他国に口を出すなどすれば、大変なことになりましょう」
勇者「はぁ……なるほど」
神父「したがって、一市民として、建設に携わると……」
勇者「僧侶さんらしいなぁ」
神父「一応、支援は行っているのですが」
勇者「じゃあ、居場所は分かるんですか」
神父「ええ、まあ。勇者殿の方がお詳しいかと思っておりましたが」
勇者(実家でごろごろしてたとは言えねぇ……)
22 = 1 :
孤児院。
男子1「せんせー、遊んでー」
女子1「せんせー、お腹すいたー」
女子2「うえぇぇん、男子くんがぶったぁああああ」
男子2「せんせー、俺、わるくない!」
僧侶「はいはい、みんな、もうお昼だから、ケンカしちゃだめですよ」
わいわい、がやがや。
トントン
僧侶「は、はい!」
勇者「あのー……」
僧侶「ゆ、勇者様!?」
23 = 1 :
強烈に眠い。書き溜めはしてあるので、明日にでも全部投稿します。
今日は失礼。
28 :
10時頃からになりそうです。
がんばります。
30 :
僧侶「す、すみません、ばたばたしてしまって」
勇者「いやいや、お昼時に申し訳ないことを」
僧侶「……元気でしょう、子どもたちが」
勇者「そうですねー。まさか、孤児院を建てていたなんて知りませんでしたよ」
僧侶「ええ。魔王征伐の旅の途中では、それどころではありませんでしたから」
勇者「がんばったんですね」
僧侶「はい。子どもたちの笑顔が、見たかったんです」ニコッ
勇者(僧侶さんの笑顔もステキだあああ!)
僧侶「ど、どうしました、勇者様」
勇者「あ、ああ、いやいや」
31 = 1 :
勇者「せっかく僧侶さんなら、教会でも重要な地位につけると思ったんですけど」
僧侶「私には向いておりません。現場で誰かを救う方が好きなのです」
勇者(ええ娘や~)
僧侶「そういえば、勇者様はどうしてこちらに?」
勇者「うっ」
僧侶「確か、最後に立ち寄った王国に客人の身分で滞在なさっていると」
勇者(実家帰ってごろごろしてましたぁあああああ!)
僧侶「ま、まさか、再び闇がこの世界をっ」
勇者「いーやいやいや、そういうんじゃないですよ!」
僧侶「そ、そうですか」ホッ
勇者「ただちょっと、僧侶さんの顔が見たくて」
僧侶「そ、そうですか?」ポッ
32 = 1 :
勇者「その、戦士は故郷帰ってたから、僧侶さんはどうしてるかなって」
僧侶「わ、私はその、こうして、子どもたちのために生きています」
勇者「でも、戦士なんかかわいい幼馴染と結婚してるんですよ?」
僧侶「え! それは喜ばしいことです」
勇者「しかも巨乳で妊娠三ヶ月」
僧侶「あら、おめでたいですわ!」
勇者「……僧侶さん?」
僧侶「お祝いを言えなかったのが残念です……」
勇者「な、なんだったら、俺が伝えておきますよ」
僧侶「まあ、でも、そんな悪いです」
33 = 1 :
勇者「それとも、あれですか、俺とその……して、戦士のところに行くって言うのでも」
僧侶「……」
勇者「僧侶さん?」
僧侶「それは、できませんわ」
勇者「どうしてですか?」
僧侶「私は、ここにいる子どもたちを置いてはいけません」
勇者(くっ、僧侶さんのヒモになる計画が!)
僧侶「た、確かに、その、男手がほしいと思うときもありますけれど」
勇者「! じゃあ、俺」
バタン
貴族「僧侶さんはいらっしゃいますか!」
34 = 1 :
勇者「お、おお?」
貴族「うん? なんだ、貴様!」
僧侶「あら、貴族様ではありませんか」
貴族「そ、僧侶さん、この男は何者ですかっ!」
僧侶「その方は、私と一緒に旅をした勇者様です」
貴族「な、なんだと……この冴えない男が」
勇者「おいてめー、いい度胸してるじゃねぇか」
僧侶「あら、お客様が増えたなら、お茶をお入れしますね」パタパタ
貴族「―――き、貴様、本当に勇者だというのか」
勇者「正真正銘、俺が勇者だ! なんなら試してみるかい?」チャッ
35 = 1 :
貴族「ふん、こんなところまで何をしにきた」
勇者「かつての仲間に会いに来ちゃいけないっていうのかい」
貴族「会ってどうするつもりだ。ま、まさか、また何か大きな闇がっ!」
勇者「いや、違うけど」
貴族「そ、そうか。僧侶さんはここの子どもたちを置いてはいけないからな」ホッ
勇者(大げさなやつだな。こいつも)
貴族「では、それ以外で何か用だというのか」
勇者「そういう俺のほうこそ聞きたい。貴族が孤児院に何の用だ」
貴族「そ、それは……」
僧侶「お茶を淹れなおしましたよ~」
貴族「あ、ありがとう!」パァッ
勇者(なるほど)
36 = 1 :
貴族「いや、僧侶さんの淹れたお茶はすばらしい」
僧侶「そんなこと、貴族様がいつもよい葉をご用意していただけるからですわ」
勇者(うおお、そこまでモーションかけてんのか)
貴族「いやいや、お茶は、淹れる人の心が出てくるものなのだ」
僧侶「まあ、お上手ですわ」ウフフ
貴族「う、うむ」カァッ
勇者「きざっ」
貴族「な、なんだ、その言葉は」
僧侶「勇者様は貴族様をご存知でないでしょう? 紹介いたしますわ」
貴族「う、うむ。わが国きっての名門、貴族である」
僧侶「孤児院設立のために、尽力された方なのです」
勇者(下心で協力したようにしか見えん)
37 = 1 :
僧侶「それだけではなくて、度々、こうしてお出でくださって、お手伝いまで」
貴族「いやなに、わが国の領民を守るためだ。むしろ、僧侶さんには頭の下がる思いだよ」ハッハッハ
勇者「頭上げてんじゃん」
貴族「な、なんだと」
勇者「頭が下がるってんなら、孤児院に援助くらいしてるんだろうな」
貴族「ふん、それどころか、ひと働きしているくらいだ」
僧侶「……でしたら勇者様も、貴族様とご一緒に、薪割りをしてくださいますか」
勇者「ま、薪割り……あんたそんなことまで」
貴族「ふははは! 勇者殿にはちとキツイ仕事かな?!」
勇者「なんで偉そうなんだよ」
38 = 1 :
一時間後。
勇者「はぁーっ、はぁーっ、つ、疲れた」
貴族「だ、だらしがないですな、勇者殿」
勇者「ひ、久しぶりになたなんか振るったからな」
貴族「ふ、ふふふ、女性の身でもやっているんだぞ、僧侶さんは」
勇者「あんた、いつもこんなことやってんのか」
貴族「こ、今回は割とハードな仕事だったが、大工仕事とか、洗濯をしたりとか」
勇者「あんた、本当に貴族なのかよ」
貴族「その通りだとも。領民を監督するのは領主の務め」
勇者「でも、僧侶さんを狙ってんだろ」
貴族「ねらっ……確かに結婚を申し込んだことはある」
勇者「あるんじゃん」
39 = 1 :
貴族「しかしだな、元々は僧侶さんが私を尋ねてこられたのだ」
勇者「それは孤児院設立のために、協力者を探していたからだろ?」
貴族「うむ。彼女の熱弁を聞いて、私も気づいたのだ……わが国がなぜ魔物に押されていたのか」
勇者「へぇ」
貴族「要するに、民生に対する意識が低かったのだ。大臣、兵士は王室しか守らない」
勇者「はぁ」
貴族「その結果があのようなあふれるほどの戦災孤児だ」
勇者「ふーん」
貴族「私は、王政の改革を行いたいと思っている。しかし、そうなれば混乱が生まれるかもしれない」
勇者「そんで?」
貴族「まじめに聞いてもらえぬか?」スラッ
勇者「聞いてるじゃねぇか! 剣を抜くな!」
40 = 1 :
貴族「つまりだな、僧侶さんに安全でいてもらうために、結婚を申し込んだのだ」
勇者「勝手なやつだなー」
貴族「何を!」
勇者「大体、僧侶さんはあんたより強いぜ?」
貴族「そ、そのようなことはない」
勇者「まあ、でも、俺もなまってるからなー」チャッ
貴族「ぬ……」
勇者「相手になるぜ。腕の一本くらいは覚悟しているんだろ?」
貴族(なんだ、こいつ。剣を構えた途端に雰囲気が変わったぞ……!)
勇者「剣を構えると人格が変わるんだ」
貴族「危険人物ではないかっ」
41 = 1 :
僧侶「お二人とも、薪は……って」
勇者「おー、僧侶さん。ちょっと一本試合をするから、待っててくれ」
僧侶「だ、ダメです! 勇者様! その方は大事なお客人なんですよっ」
貴族「そ、僧侶さん……なに、このような腑抜けに遅れは取りません」
僧侶「ダメですー!」ブン
勇者「うわっ、洗濯桶か」
貴族「おうっ」ゴン
僧侶「きゃー!」
勇者「僧侶さんが本気を出していたら死んでいたな」
42 = 1 :
僧侶「もう、お二人とも、はしゃぎすぎです! 貴族さんは気絶してしまうし」プンプン
勇者「いや、それは僧侶さんが……」
少女「……」ジーッ
勇者「お、おう。どうした」
少女「弱そう」
勇者「おい、くそがき」
少女「逃げろーっ」タタタッ
勇者「……教育がなっていないんじゃないですか? 僧侶さん」
僧侶「い、いえ、どの子も、寂しいだけかと」
43 = 1 :
僧侶「そ、そういえば、肝心なことを聞き忘れていましたね」
勇者「なんでしたっけ」
僧侶「その、勇者様は、どうしてこちらに?」
勇者「あ、あー……」
勇者(仕事を求めてとか言うべきか)
僧侶「私のことでしたら、お気になさらずに」
勇者「いや、僧侶さんに、相談したいことは、あったんですけど」
僧侶「まあ、何かしら」
勇者「でも、あの貴族とかもいるんだったら、特に心配はないですかね」
僧侶「よろしいのですか?」
勇者「ええまあ。困ったことがあったら、言ってくださいよ」
僧侶「え、ええ」
44 = 1 :
帰り際。
勇者「参ったな。この調子だと、仕事を見つけるなんて出来そうもないぜ」
貴族「……待て!」
勇者「……なんだよ」
貴族「貴様に一つだけ言っておきたい」
勇者「手短にしてくれないか」
貴族「もし、私が蜂起したとき、国王に味方しないでほしいのだ」
勇者「いや、俺もあのおっさんに味方したりはしないけど」
貴族「しかし、わが国王と貴様の国の王は友人関係にある。そしてそこには貴様の母上殿も、いる」
勇者「……母さんを人質にする可能性もあるってことか?」
貴族「そうだ。まあ、戦争が長引けば、の話だが」
45 = 1 :
勇者「バカらしい、仮にも英雄の家族をそんな風に扱うかね」
貴族「どうかな。我が家も建国からの名門であるが、いまやないがしろにされつつある」
勇者「……あっ、それより、俺を雇うとかってのはどうよ!?」
貴族「はぁ?」
勇者「いやあ、いま、仕事を探しててさ」
貴族「確かに、救世主が我が方についたとなれば、断然有利だが」
勇者「だろ? まあ、世界を救う次が、反体制軍ってのも格好悪いかもしれんが」
貴族「……いや、しかしな。貴様はこの国に骨を埋めてくれるのか?」
勇者「え?」
46 = 1 :
貴族「王政の改革などと言っても、戦乱の後には保守派との長い地味な政治対決が待っている」
勇者「そ、それは任せるけどさ」
貴族「つまり、貴様は戦が終われば離れてしまうのだろう?」
勇者「……まあ」
貴族「貴様が我が方に入れば、それは反体制の核になる。しかし、長い政治の戦いで核が抜けては何の意味もないのだ」
勇者「えーっと……」
貴族「国を変えるのに英雄はいらないのだ。僧侶さんのような人こそが、求められる」
勇者「お前、俺をdisりやがって」
貴族「申し出は、感謝する」ペコ
勇者(いや、感謝より仕事くれよ)
47 = 1 :
少女「あっ、弱そうなやつ!」
勇者「ああん?」
少女「もう帰るの?」
勇者「そうだよ。ここに俺の居場所はなさそうだからな」
少女「……弱いのに無理するから」
勇者「弱くねぇよ! 俺は世界を救ったんだよ!」
少女「大人は口だけだから」
勇者「てめぇ……」
―――ハハハッ
少女「!」
勇者「なんだぁ?」
少女「隠れて、隠れて」
勇者「おい、ちょっと」
48 = 1 :
兵士A「こんなところに孤児院なんて作ったのか」
兵士B「元勇者の一行らしいぜ」
兵士C「ケッ、いけすかねぇな。大体、勝手に死んだ連中のガキを集めてどうしようってんだ」
兵士A「それがな、どうも反王政派の大物が出入りしてるんだってよ」
兵士B「じゃあ、テロリストのアジトか!」
兵士C「テロリストの養成所ってわけだな……」
兵士A「なに、そのうち……」
兵士B「そういや、元勇者パーティーの戦士が……」
兵士C「マジか? 隊長に……」
少女「……」
勇者「おい、苦しいぞ」
少女「も、もういいよ」
49 = 1 :
勇者「なんだってんだ、あいつら。僧侶さんをこき下ろしやがって」
少女「あいつら、私のお父さんが助けを呼んだのに、助けてくれなかったんだ」
勇者「話が見えん」
少女「だから、魔物が来ても、村を助けてくれなかったの」
勇者「ふーん、そんなやつらだったのか」
少女「私も、早くこんな国出て行きたい……」
勇者「じゃあ、出ちゃえばいいじゃん」
少女「ダメ、弱いから」
勇者「だったら、強くなれや」
少女「弱いくせにえらそうだよ?」
勇者「俺は強いの!」
50 = 1 :
故郷。
勇者「くそっ、どいつもこいつも役立たずだな! まあ、俺が一番の役立たずって説もあるが」
勇者「ん、人だかりだな」
ざわざわ、ざわざわ
勇者「どうかしたんですか?」
村人「あ、勇者様! いやあ、実は、王様が魔物がいた土地に探検隊を出そうと」
勇者「ほ~……」
村人「なんでも、商人やら富豪やらに金を出させて、隊を作るって話ですよ」
勇者「た、探検隊かー。冒険なら得意だったし、俺にぴったりじゃん」
村人「あ、そういえば、その企画立案に、魔法使いさんも関わっていると」
勇者「魔法使い?」
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