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    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

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    151 = 1 :

    勇者「でもよ、魔物的にはチャンスもあるんじゃないのか?」

    魔物「……何がだ?」

    勇者「だって魔物がいなくなって逆に、人間同士が争っているんだぜ」

    魔法使い「このアホ!」ボッ

    勇者「やめろ! 燃やすな!」

    魔法使い「そういう余計な情報を与えてどうするのよっ!」

    魔物「……なぜ人間同士で争うのだ? 集まって生きるのがお前たちの生き方ではないのか」

    勇者「いやそれがさ」

    魔法使い「……燃え滾る炎に、身を焦がし……」

    勇者「分かったから!」

    152 = 1 :

    魔物「……だとすると、われわれ以外の魔物がいまだ暗躍しているのかもしれん」

    勇・魔「!」

    勇者「……その発想はなかったな」

    魔法使い「確かに。でも、こうして魔物がいるってことは、考えられなくはないわね」

    勇者「まあ、単に強欲な連中同士で争ってる可能性も否めないが」

    魔法使い「政治的な解決策以外も視野に入れるべき、というわけよ」

    魔物「……おい」

    勇者「な、なんだ?」

    魔物「もう一つ、これはお願いになるのだが……」

    魔物「もし、他に魔物がいて、戦わずに済んだなら、ここに連れてきてくれないか」

    魔法使い「……」

    勇者「そりゃまた、でかいお願いだな」

    153 = 1 :

    魔法使い「いいわよ」

    勇者「い、いいのか?」

    魔法使い「私たちにとっちゃ、不可侵条約さえ守ってもらえればいいわけだからね」

    魔物「……助かる」

    魔法使い「ただし、兵力が増えたーって調子に乗ってると、ひどい目にあうからね」

    魔物「……」

    勇者「うんって言っとけ。ああ言ったら、本当にひどい目にあわせるからな、やつは」

    魔法使い「あんた、どっちの味方よ」

    魔物「ついでに、この装備品は」

    魔法使い「金にならないからノーサンキュー」

    魔物「……そうなのか? 強力な装備だが」

    魔法使い「呪われている装備なんて、誰も欲しがらないのよ」

    154 = 1 :

    魔物「しかし、そういう装備以外にお前たちに得るものは……」

    勇者「いやいや、最初はこの魔王城を新しい町にしようかと思ってたんだけど」

    魔物「……そうなのか?」

    魔法使い「だからパスよ、パス。少し離れたところに町を作るわ」

    魔物「……ふむ」

    勇者「何かあるのか?」

    魔物「いや、それならばここから北へ行くと、多少開けたところが出てくる。海も近いし、移動しやすいだろう」

    魔法使い「あら、気が利くわね」

    魔物「お互い様と言っておこう」


    魔法使いと魔物は、互いににやりと笑って見せた。

    155 = 1 :

    ―――しばらくして。

    側近「……ん、んう」

    魔物「……」

    側近「すみません……魔王様……プリンを勝手に食べたのは、私じゃなくて……魔物……」

    魔物(寝言がひどい)

    側近「はっ!」ガバッ

    魔物「……お目覚めですな」

    側近「ゆ、勇者は!?」ジュル

    魔物「追い返してやりましたよ」

    側近「お、追い返してどうするのよ! 首を取らなきゃ」

    魔物「そう簡単に倒せるものではないでしょ」

    156 = 1 :

    側近「くっ、勇者を倒していたら、一気に上役ゲットできたのに!」

    魔物「……魔界に帰れたら、の話でしょ?」

    側近「そ、そうかもしれないけどぉ」

    魔物「取引をして、やつらから手出ししないようにしました。まずは魔界に通じる封印を解くことに専念してはいかがです?」

    側近「まあ、退路を確保するのは重要だけどさー」

    魔物(そういう言葉は知っているのか)

    側近「でも、あんただって勇者を倒したらとか言ってたじゃない」

    魔物「側近殿がノープランすぎたので」

    側近「わ、私が無計画だって言いたいの!?」

    魔物「……違うんですか?」

    側近「ふ、ふん! 多少はそうだったかもしれないわね」

    魔物(まだ言うか)

    157 = 1 :

    魔物「こちらからも手出しはしなければ、各地で魔物を見つけたら、ここに集まるよう呼びかけてくれるそうです」

    側近「くっ、なめられてるわね」

    魔物「……そうですか? まあ、お互い利用しあえばいいではありませんか」

    側近「そ、そうね。相手が手を出さないなら、こちらもじっくり準備できるわけだし」

    魔物「そうそう」

    側近「あ、それならまずはスライムとか呼び寄せちゃう?」

    魔物「は?」

    側近「弱いけど、数をそろえるのにはまず便利でしょ」

    魔物「……まあ、やつらは勝手に増えますけど」

    側近「あんた、スライム飼ってたんでしょ? ちょうどいいじゃない」

    魔物「……そっすね」

    158 = 1 :

    こちら、勇者一行。

    勇者「でも、意外だなー。お前が魔物と取引なんて」

    魔法使い「そりゃあね、あの魔物、知恵はあるし、話の分かるやつだったから」

    勇者「そうは言うが……何かたくらんでないか?」

    魔法使い「実を言うと、切り札としても考えているわ」

    勇者「切り札?」

    魔法使い「もし、政治的にあんたが孤立した場合よ。魔物と手を組むという選択肢があってもいいじゃない?」

    勇者「お前、本気でそんなことを考えていたのかよ……」

    魔法使い「もちろん、最悪の場合よ。実行しなくても、選択肢をちらつかせるだけで、圧力になる」

    勇者「恐ろしいこって」

    魔法使い「恐ろしいと思うなら、きりきり働きなさい」

    勇者「くそっ、再就職、再就職のため……!」

    159 = 1 :

    魔法使い「……それと、いい加減、その背負ってる子も起こしなさいよ」

    勇者「お前が寝かしたんだろうが。物理的に」

    魔法使い「うるさいわね」

    勇者「大体、年頃の女の子の頭を杖でぶっ叩くとか」

    魔法使い「余計なことするからでしょ?」

    勇者「お前なー、魔物にトラウマのある子が、争いはやめろって飛び出したんだぞ」

    魔法使い「……」

    勇者「デリカシーがないよな」

    魔法使い「その言葉、そっくり返してやりたいわ。マジで」

    勇者「な、何でだよ!」

    「ん……うゆ……」

    160 = 1 :

    勇者「お、起きたか?」

    「あたま、いたい……」

    勇者「あまり無理するなよ」

    魔法使い「……」

    「あ、えっと」

    勇者「よしよし。そろそろキャンプ地にするからな」

    「り、竜のおじちゃんは」

    勇者「大丈夫だ、一応、戦わなかったぞ」

    「よ、よかった」ホッ

    魔法使い「甘いわね」

    「な、なに」

    161 = 1 :

    魔法使い「あの時はたまたまタイミングよく私が気絶させたから良かったようなものを」

    勇者「良かったのかよ」

    魔法使い「もしあそこで、勇者が攻撃されていたら、大ピンチだったのよ」

    「う……」

    魔法使い「魔王が滅びたとはいえ、私たちの一挙手一投足は監視されている」

    「い、いっきょしゅ……?」

    勇者「要するに行動の一つ一つが注目されているってことだ」

    「お兄ちゃん、頭いいんだね」

    勇者「まあな」エラソウ

    魔法使い「要するに!」

    魔法使い「……隙を見せれば、総崩れになりかねないのよ」

    「……」

    魔法使い「そうなった時、責任が取れるの? あなたは」

    162 = 1 :

    「そ、そんなこと……」

    魔法使い「仮にも、勇者のパートナーになりたいって言うなら、そこを自覚しないでどうするの?」

    「うっ……」グス

    魔法使い「とりあえず、背中から降りて、自分の足で立ちなさい」

    勇者「お、おう。大丈夫か?」

    「ん、は、い」トッ

    魔法使い「……とりわけ、これからは魔王を倒すという明確な目的があるわけでもない」

    魔法使い「だからこそ、余計に判断が難しくなるのよ」

    魔法使い「分かっているの!?」

    「う」ビクッ

    魔法使い「逃げるな!」

    「ふ、ふぇ……」

    163 = 1 :

    魔法使い「分かったなら、さっさとテント張る準備しなさい」

    「は、い……」グスグス  テッテッテ……

    魔法使い「……」

    勇者「うーん」

    魔法使い「何か言いたいことでもある?」

    勇者「いや、お前が俺のパートナーという自覚があったとはな」

    魔法使い「誰があんたのパートナーよ!」

    勇者「いやでも、パートナーとしての心得を話すってことは、少女ちゃんを牽制しているってことだろ? 勇者のパートナーは私よ、的な」

    魔法使い「あんたね……」

    勇者「でも、確かに戦士は結婚したし、お前も適齢期だもんな」ウンウン

    魔法使い「おい、お前」

    164 = 1 :

    勇者「でもよ、一つ言わせてもらうが、お前って俺のこと嫌ってるだろ?」

    魔法使い「はあ?」

    勇者「やっぱり、義務感で結婚してやるって言うんじゃ俺も納得できないしな」

    魔法使い「……なんで私が義務感であんたと結婚するのよ」

    勇者「いやでも」

    魔法使い「そうじゃなくて! あの子があんたと結婚したいなんて奇特なことを言うから、指導してやっているだけよ!」

    勇者「嫉妬じゃないよな」

    魔法使い「……頭痛くなってきたわ、マジで」

    勇者「実は俺のこと好きなのか?」

    魔法使い「別に嫌いでも好きでもないわよ……」

    165 = 1 :

    魔法使い「あのねぇ、あんた、お姫様も牽制があって結婚できなかったって、前に教えたでしょ」

    勇者「ああ、そうだっけ」

    魔法使い「そうよ。もしそういう人とも出来るとしたら、あんたが一国一城主になるということ」

    勇者「ふーん、これから町を作るし、可能性は出るかもな」

    魔法使い「そうよ……勇者が政治の表舞台に出るとなれば、同盟を結ぶために、こぞって女性が迫ってくるでしょうね」

    勇者「いやな迫られ方だな」

    魔法使い「ということはね、下手すると、そういう争いにあの子も巻き込まれるわけ」

    勇者「ほうほう」

    魔法使い「心構えは必要でしょ? 牽制とかじゃないわ」

    勇者(言い訳くさいな)

    166 = 1 :

    勇者「じゃあ、お前の気持ちはどうなんだよ」

    魔法使い「はあ?」

    勇者「お前だって、俺に付き合わんでも良かったじゃないか」

    魔法使い「そうね……」

    勇者「事務所も放り出しちまったし」

    魔法使い「そうねぇ……」

    勇者「探検隊の仕事も最後まで確認できなくなったし」

    魔法使い「そうねぇえ……」

    勇者「そうまでして俺についてくるってことは、実は惚れてるんじゃないのか」

    魔法使い「なんか腹立ってきたから、ぶちのめしていいかしら」

    勇者「おい!? 愛情表現にしちゃ痛いぞ!」

    167 = 1 :

    勇者「あ!」

    魔法使い「何よ」

    勇者「よくよく考えたら、お前も今、無職じゃん!?」

    魔法使い「……」

    勇者「わははは! 無職、無職ー!」

    魔法使い「……」

    勇者「いろいろ投資したのに回収できねぇでやんの!」

    魔法使い「ねえ」

    勇者「わはは……は?」

    魔法使い「そこまで言うなら、あんた30年くらいタダ働きでいいわよね」

    勇者「さ、さんじゅう?」

    魔法使い「私の投資分を回収できるまで、あんたをこき使っていいのよね」

    勇者「……」

    168 = 1 :

    勇者の故郷。

    商人「……探検隊に投資したら、生活費がなくなってしまったでござる」

    商人「やべー、やべーよ。そりゃ商売なんてやったことなかったからだけどさ」

    商人「配当金が出るのが一年後ってどういうことだよ」

    商人「大体、退職金をほとんど全部突っ込んだらそりゃ生活できるわけねーもんよ」

    商人「くっそ、マジでやべーよ。そりゃ城の裏門なんか、魔物がいなくなったら常駐させとく必要ないけど」

    商人「せめて倉庫番とかで食らいついておくべきだったよなー」

    商人「どうすんだよ、もう実家は頼れないし」

    169 = 1 :

    商人「大体、おかしいと思ったんだよなー」

    商人「門番を退職した直後に、探検隊募る! とか言い始めて」

    商人「冒険の経験がないって言ったら、お金を投資するだけでもよし、とかさ」

    商人「あれ、絶対、退職金を回収するつもりで出した手だったんだよ」

    商人「国の財政的には、人件費を削減できるし、放出も少ないし、そりゃうまい手だよ」

    商人「ペーペーの元門番が手を出せる世界じゃなかったんだよ」

    商人「どうすんだよ、マジでやべーよ」

    商人「もう元手がないし、いつまでも宿には泊れないし」

    商人「くそ、酒場にでも行くか!」(職探し的な意味で)

    170 = 1 :

    商人「ちはーっす」

    マスター「あら、商人君ね。こんな昼間から」

    商人「へへへ、ども」

    マスター「何を飲むつもりなの?」

    商人「いやいや、もう飲むお金なんかないっすよ。水とかで……」

    マスター「もう、毎回それね」

    商人「お、お金を突っ込んじゃって……なんか仕事がないかなってー」

    マスター「悪いけど、そう景気のいい話はないわ」

    商人「またまた、結構儲かってるんでしょ?」

    マスター「うーん、魔物が活発だった時代は、勇者さんが仲間を探したり、冒険者でパーティー組んだり、それなりにここも賑わっていたんだけどねー」

    商人「そうなんすか」

    171 = 1 :

    マスター「安心して飲めるようになった代償なのかしらね」

    商人「……じゃあ、ここのお店で雇ってもらうってわけにも」

    マスター「今はウェイターも募集してないの」

    商人「まいったなー」

    マスター「ごめんなさいね」

    商人「あ、そうだ! せっかく勇者さんの故郷なんだから、勇者が好きな酒とかで売り出したらどうっすか?」

    マスター「え?」

    商人「勇者さんのサインとかもらってきて、売るんすよ。いやー、俺って頭いいかも」

    マスター「え、でも、それは」


    商人「……バカの極みね」

    172 = 1 :

    商人「な、なんだと。ていうか、あんた誰だ」

    マスター「あら、商人君は知らないの? この人は、女商人さん。あちこち回ってるんだけど、うちのお酒の仕入れもお願いしてるの」

    商人「……最近、浮浪者が酒場に来ているって聞いてたけど」

    商人「誰が浮浪者だ! 俺もあんたと同じ、商売人だ」

    商人「商売人が聞いて呆れるわ」

    商人「なんだと……」

    マスター「あのね、商人君。女商人さんは、昔、勇者さんのパーティーにいたこともあったのよ」

    商人「え、マジすか!?」

    商人「……」

    商人「そ、そうとは知らず、失礼しました」

    商人「今、あんたは三つ無能を晒したわ」

    173 = 1 :

    商人「……は?」

    商人「一つは、相手を知らずになめた態度を取ったこと。もし顔の知らない取引先だったらどうなってた?」

    商人「う、おう」

    商人「一つは、自分の儲け話を垂れ流したこと。うまく行くならさっさとやってるはずだから、自分には実行力がありません、と宣伝しているようなもんだわ」

    商人「お、おう」

    商人「最後に、その肝心の儲け話が大間抜けだってこと」

    商人「な、なんだと?」

    マスター「お、女商人さん、何もそんなこと言わなくても」

    商人「……それもそうですね。マスター、これ、『戦士の村のおいしいワイン』です」ドン

    マスター「あらぁ~、いつもありがとう」

    174 = 1 :

    商人「お、おい! おい!」

    商人「何かしら」

    商人「大間抜けって言ったけど、戦士ってあの勇者一行の戦士だろ? 戦士のブランドがあるなら、勇者のブランドがあってもいいじゃねぇか!」

    商人「……はぁ~」

    商人「な、なんだよ。間違ってるか!?」

    商人「戦士さんと勇者さんの違いって分かる?」

    商人「はあ? そんなの、あれだ。勇者はリーダーで、戦士は……」

    商人「……戦士さんは、郷里で農業を営んでいるのよ」

    商人「確かにワインは彼の仕事と直接関係がないけれど、世界を救った仲間が作ったおいしい野菜と、その村の名前を売り出してきたわ」

    商人「つまり、戦士さんのブランドは、かつての勇者一行であることと、実際に優れた農業を行っている両面によって作られたものなの」

    商人「お、おう」

    175 = 1 :

    商人「一方の勇者さんは? 世界を救った以後、雨後のたけのこのように、勇者グッズの店が世界中に広がったわ」

    商人「今でも新しくオープンしている。けれど、そんなもの、いずれ忘れられてしまう」

    商人「世界を救ったこと以外、彼は他に何の業績もないもの」

    商人「そ、そんなことはないだろ」

    商人「あるのよ。確かに世界で多くの魔物と戦ったわ。けれど、多くの人にとって、勇者さんの価値は、魔王を倒して世界を救ったことだけ」

    マスター「……そうね。色紙のサインはお店に飾ってあるけど、もう、物珍しさはないわね」

    商人「……」

    商人「もちろん、彼がどこかの王様にでもなれば別よ? 世界の英雄が、国の指導者になる。ビッグチャンスと言っていいわ」

    商人「だ、だったら」

    商人「でも、彼は滞在していた国を出て以来、ふらふらと世界を回っているだけ……そういえば、どうやってサインをもらうつもりだったの? 場所も知らないのに」

    商人「……」

    176 = 1 :

    マスター「……私も、勇者がパーティーを組んだ酒場! とかやってたけど、もうそれも難しいかしらね」

    商人「そうですね、あの、お城からのまとめ買いは」

    マスター「それは大きいわ。けど、たとえばこのワインも、戦士さんの村と直取引した方が安いんじゃないかって意見もあるらしくって……」

    商人「ふむ……」

    マスター「女商人さん、もし、いいアイデアがあったら教えてくれないかしら」

    商人「そうですね……これまでの冒険者たちとのつながりはあるんですよね」

    マスター「ええ、名簿にして持っているわ」

    商人「でしたら、それを元に……たとえば、彼らの地元のお酒や物産を集めてもらうのもいいかもしれません」

    マスター「あら、それならお酒の品評会なんかもいいかもしれないわね」

    商人「いいアイデアです。私も知り合いに声かけをしてみましょうか」

    マスター「本当~? 助かるわ」

    商人「……」

    177 = 1 :

    商人「よっと。それじゃあ、私はこれで」

    マスター「またお願いよ?」

    商人「ええ、それでは」

    商人「ま、待ってくれ!」

    商人「……」

    商人「頼む、俺も連れて行ってくれないか」

    商人「どうして?」

    商人「あんたの言っていることに感動したんだ。俺を、あんたの弟子にしてくれ!」

    商人「嫌よ」

    商人「頼む、荷物持ちでも何でもする! 俺は駆け出しだから、何をどうしていいのか分からないし」

    商人「そのくらい、自分で考えなさい」

    178 = 1 :

    商人「お願いだ。あんたの言葉で目が覚めたんだ!」

    商人「……ちっ」

    マスター「女商人さん、私からもお願いできないかしら」

    商人「マスターまで……」

    マスター「なんとも思っていないなら、あなたも彼にあんな話をしなかったでしょう?」

    商人「……」

    商人「頼む! このとおりだ!」ゲザー

    商人「……その軽い感じ」

    商人「……え?」

    商人「そういうところが、なんか勇者さんに似ているのよ、あんた」

    商人「俺がぁ?」

    商人「だから、お断りするわ」バタン

    179 = 1 :

    マスター「あ、女商人さん!」

    商人「……くそ! こうなったら意地でもついていってやる!」

    マスター「あ、商人君まで」

    商人「おい、おーい……!」バタバタ

    マスター「行っちゃった……」

    マスター「……」

    マスター「新しい冒険の時期なのかしらね」

    マスター「冒険者は集まってこないけど、何かが始まりそうな感じ」

    マスター「不穏な噂もあるし……」

    マスター「……よし。とりあえず、連絡の取れそうな人に、片っ端から手紙を書くわよー」

    180 = 1 :

    といったところで、今回は投下終了。

    次回はしばらく空きそうです。週刊とかで考えてもらえれば。
    なお、現在の要望達成表。目安です。目安。

    勇者土地を探す ○(ほぼ達成)
    勇者ブランド ×(売れないことが判明)
    勇者世界征服 ?
    勇者嫁を探す ?(本人にその気があるか不明)
    勇者結婚 ?(同上)
    さらば勇者 ?
    トレジャーハンター ?
    魔王 ?
    仲間になったモンスター ?(なんか仲間にする?)
    魔王軍の残党 ○
    魔法使いルート △(魔法使いルートみたいなもんだが)
    隠者ルート ?(鬱展開も考えるか)
    城の裏門の門番 ○(商人になってるけど)

    181 :

    魔物はイケメンなの?

    182 :

    期待
    ガンガン書こうぜ

    183 :

    >>181
    竜族の中ではブサです。

    184 :

    今日もなくてすみません……
    明日には投下したいと思います。

    185 :

    楽しみにしてます

    186 :

    ワクワク

    187 :

    >>186
    落ち着くんだ!

    188 = 186 :

    >>187
    酉取り忘れとか動揺してました
    陳謝

    189 :

    どこの侍か特定したwwwwww

    190 = 186 :

    酉ついてるから特定楽だろwwwwww
    したいならしておくれwwww

    191 = 189 :

    >>190
    「武器を下ろせ。このスレの住人と戦う気はない」
    こうですか?わかりませんwwww

    どうもすみませんでした以降ROMってるので許してつかぁさい

    193 = 1 :

    魔王城の北。

    勇者「さて、候補地が決まったわけだが」

    魔法使い「町をつくるには、そうね、大工さんも必要だけど」

    勇者「やっぱり商人が必要だよなー」

    「……?」

    魔法使い「女商人ちゃん辺りはどうかしら。経験があるし」

    勇者「えー? でも、あの子も俺のこと嫌ってるしなー」

    「ね、ねえねえ」

    勇者「おう、どうした」

    「どうして町をつくるのに、商人さんが必要なの?」

    勇者「そりゃ、商人だからな、ほら、人買い……とか……?」

    「え」

    魔法使い「……人を集めるのが得意だからよ」

    194 = 1 :

    魔法使い「村っていうのは、食べ物が作れるところに人が集まって出来るものでしょ?」

    魔法使い「同じように、町っていうのは、人がたくさん行き来するところに出来るものなの」

    「人がたくさん行き来する……」

    魔法使い「これまで、魔王城に近いということもあって、この周辺には人が近寄れなかったわ」

    魔法使い「でも、これからはこの周辺にも人が入ってこれるでしょう」

    魔法使い「……あとは、名産品になりそうなものがあればいいんだろうけど」

    勇者「ふむ。どうだ、この辺に孤児院も引っ越してくるのは」

    「う、うん」

    勇者「これから町をつくるとなれば、お前らだって働き手だ」

    魔法使い「確かに、それは妙案かもしれないわ。あの国で苦労するより」

    勇者「そうなったら、ゆくゆくはここで結婚して、子どもつくってってなるだろうし」

    「そうかぁ……」

    195 = 1 :

    少女は目をきらきらさせながら、辺りを見回した。

    木々が途切れている野原の先には、海も向こうに見えている。
    風がすっと通り抜けてきて、ようやく彼女はこの土地の自然に目を向けた。

    打ち捨てられて、必死に生きて、ここまでもずっと歩いてきた。

    きっとこれからは―――


    「うん! いいかも」

    勇者「うっし、そうと決まれば、僧侶さんに連絡を取ってー、あとどうする?」

    魔法使い「そうね、酒場のマスターに冒険者たちから商人を紹介してもらうのがいいかも」

    「ねえ、私はどうしたらいい?」

    魔法使い「その辺で遊んでなさい」

    「は?」

    196 = 1 :

    魔法使い「これから、まず人手を集めて、地味~な仕事をしないといけないの」

    「でも……私、字だって書けるよ?」

    魔法使い「ああそう。じゃあ、酒場のマスターと僧侶に手紙を書いて頂戴」

    「ええと、僧侶のお姉ちゃんは知ってるけど……」

    勇者「こらこら、無茶ぶりするでねえだ」

    魔法使い「……そうね」

    勇者「とりあえず、少女ちゃんは遊んでてもらってええかい」

    「ぶー」

    197 = 1 :

    「……お兄ちゃんはついてきていいって言ったけど」

    「やっぱり、私、足手まといなのかな」

    「よく考えたら、孤児院でもあまりすることなかったし……」

    「……」

    「わ、私、ニート!?」

    「いやいや、お兄ちゃんのお嫁さんになるとかあるし……」

    「……仕事仲間とお嫁さんは違うよね?」

    「ああ、でも、役立たずは消えろ的なオーラが」

    がさっ

    「ひゃあああああああ!」

    198 = 1 :

    竜魔物「む」

    「ひっ」

    竜魔物「……人間っすか」

    「あ、あ、あのときの、魔物さん」

    竜魔物「……? ああ、こないだ勇者と一緒にいた人間か」

    さささっ

    「ゆ、ゆ、勇者さんを呼びますよっ」

    竜魔物「なるほど。こんなところまで来てしまったか」

    「……」ドキドキ

    竜魔物「……勇者が近くにいるのだろう。ほれ」ぽいっ

    「こ、これは?」カサカサ

    竜魔物「乾燥スライム」

    「ひゃあああああああ!」

    199 = 1 :

    竜魔物「……みやげにと思ってな。けっこうおいしいぞ」カミカミ

    「き、気持ち悪いよっ」

    竜魔物「……スライムは飼えばなつくし、食えばうまいぞ」

    「か、飼う?」

    竜魔物「うむ。魔界でも飼っていたんだが」

    「……」ジーッ

    竜魔物「……一匹分けてやろうか」

    「い、いらない」

    竜魔物「便利だぞ。放っておいても増えるし、教えればいろいろ仕事するし」

    「……! 仕事?」

    竜魔物「……ああ。大きくなれば乗ったりできるしな」

    「よ、よし。教わってやろう」

    竜魔物(人間は偉そうだな)

    200 = 1 :

    竜魔物「まずは、ほら、そこにいるから、ぶん殴って勝ってみろ。魔物は強いものに従う」

    「お、おお」


    少女はその辺の棒を装備した。


    スライム「ぴー」

    「てやーっ!」


    竜魔物(こけた。あ、思い切り当たった)


    スライム「ピキー! ピキー!」

    「よ、よし、これでどう!?」

    竜魔物「そこですかさずこのモンスターボールを」

    「これね!?」


    ボールはスライムに当たった! スライムは倒れた!


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