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元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」
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勇者「魔王も倒して、世界を闇から救ったはいいけど」
勇者「勇者的にはやることがもうなくなってしまった」
勇者「用心棒とかは『いやいや、勇者様には!』とか言われるし……」
勇者「定番の国の姫と結婚とかは、隣国の王子との婚約が決まってるとかで出来ず……」
勇者「褒美をもらって、ぐーたらしていたら、白い目で見られ始めたし」
勇者「パーティーも解散しちゃったしなぁ」
勇者「実家に帰っても、ごろごろしていたら、母さんに怒られたし」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1327325196(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
勇者「勇者的にはやることがもうなくなってしまった」
勇者「用心棒とかは『いやいや、勇者様には!』とか言われるし……」
勇者「定番の国の姫と結婚とかは、隣国の王子との婚約が決まってるとかで出来ず……」
勇者「褒美をもらって、ぐーたらしていたら、白い目で見られ始めたし」
勇者「パーティーも解散しちゃったしなぁ」
勇者「実家に帰っても、ごろごろしていたら、母さんに怒られたし」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1327325196(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<注意点>
・同ネタ多数は承知の上。
・オチが弱いのもいつもどおり。
・のんべんだらりと読んでください。
・地雷臭を感じたら退避。
それではどうぞ。
・同ネタ多数は承知の上。
・オチが弱いのもいつもどおり。
・のんべんだらりと読んでください。
・地雷臭を感じたら退避。
それではどうぞ。
勇者「身分を隠して、どこかの闘技場にでも出るかなぁ」
勇者「つーか、勇者って職業じゃないから、転職できないんだよな……」
勇者「山でウサギでもとって暮らすか?」
勇者「ほら、結構世界を救った勇者って山で隠遁生活を」
勇者「ああ、でもなー、俺まだそんなじじい暮らしするほど老いてないし……」
勇者「褒美の半分くらいは実家に預けちゃったけど、まだお金残ってるしな」
勇者「……」
勇者「あ、そうだ。パーティーのみんなに会いに行くか」
勇者「そんで、あわよくば再就職先を斡旋してもらおう」
勇者「つーか、勇者って職業じゃないから、転職できないんだよな……」
勇者「山でウサギでもとって暮らすか?」
勇者「ほら、結構世界を救った勇者って山で隠遁生活を」
勇者「ああ、でもなー、俺まだそんなじじい暮らしするほど老いてないし……」
勇者「褒美の半分くらいは実家に預けちゃったけど、まだお金残ってるしな」
勇者「……」
勇者「あ、そうだ。パーティーのみんなに会いに行くか」
勇者「そんで、あわよくば再就職先を斡旋してもらおう」
田舎の村。
勇者「この辺に戦士が住んでいるって聞いたけど」
村人「おお、あなたは勇者様ではありませんか」
勇者「お、おう」(知らん人から話しかけられた)
村人「もしや、戦士殿に会いに?」
勇者「そ、そのとおりだ」
村人「……すみませんが、それはやめていただけますか」
勇者「ど、どうして?」
村人「戦士殿はこの村で結婚もされ、畑を耕し、自警団長としても活躍されておりまして……」
勇者「はぁ」
村人「この村の大切な一員なのです」
勇者「……?」
勇者「この辺に戦士が住んでいるって聞いたけど」
村人「おお、あなたは勇者様ではありませんか」
勇者「お、おう」(知らん人から話しかけられた)
村人「もしや、戦士殿に会いに?」
勇者「そ、そのとおりだ」
村人「……すみませんが、それはやめていただけますか」
勇者「ど、どうして?」
村人「戦士殿はこの村で結婚もされ、畑を耕し、自警団長としても活躍されておりまして……」
勇者「はぁ」
村人「この村の大切な一員なのです」
勇者「……?」
勇者「それがどうかしたんですか」
村人「いや、ですから、また冒険へと連れて行かれては……」
勇者「ち、違うって! 久しぶりに会いに来ただけですから!」
村人「そ、そうでしたか! それは失礼いたしました」
勇者「よければ、呼んでもらえますか?」
村人「それでは、早速、戦士殿を呼んできます! お待ちくださいね」タタタッ
勇者(勇者って冒険しかしてないイメージなのかな)
勇者「ううん、そうなると、この村で働くとかは」
戦士「おーい! 勇者!」
村人「いや、ですから、また冒険へと連れて行かれては……」
勇者「ち、違うって! 久しぶりに会いに来ただけですから!」
村人「そ、そうでしたか! それは失礼いたしました」
勇者「よければ、呼んでもらえますか?」
村人「それでは、早速、戦士殿を呼んできます! お待ちくださいね」タタタッ
勇者(勇者って冒険しかしてないイメージなのかな)
勇者「ううん、そうなると、この村で働くとかは」
戦士「おーい! 勇者!」
戦士「久しぶりだな! この村に来ていたのか」
勇者「おう、戦士! 聞いたぞ、結婚もしたんだって?」
戦士「お、おう。すまんな、式にも招待せず」
勇者「あー、いいっていいって。それにしてもこの村は」
戦士「ああ、俺の故郷だ。錦を飾るってやつでな」
勇者「ふ、ふ~ん」
戦士「今日は泊っていくんだろ?」
勇者「そうだな……積もる話もあるだろうし」
戦士「よし、妻に話しておくぜ」
勇者(奥さんか……)
勇者「おう、戦士! 聞いたぞ、結婚もしたんだって?」
戦士「お、おう。すまんな、式にも招待せず」
勇者「あー、いいっていいって。それにしてもこの村は」
戦士「ああ、俺の故郷だ。錦を飾るってやつでな」
勇者「ふ、ふ~ん」
戦士「今日は泊っていくんだろ?」
勇者「そうだな……積もる話もあるだろうし」
戦士「よし、妻に話しておくぜ」
勇者(奥さんか……)
戦士宅。
勇者「お邪魔します」
戦妻「あらあら、どうぞいらっしゃいました」
戦士「そんな畏まらなくていいんだぞ」
戦妻「もう、あなたったら。せっかくのお客様でしょ?」
戦士「バカ。よし、一番いい酒出しておくれ」
戦妻「はーい」テッテッテ
勇者(すげぇ巨乳)
戦士「ちょっと猫被ってるんだあいつ」
勇者「そ、そうなのか? ちなみにどういう関係で」
戦士「ああ、同じ村の出身でな」
勇者(お、幼馴染かよッ)
勇者「お邪魔します」
戦妻「あらあら、どうぞいらっしゃいました」
戦士「そんな畏まらなくていいんだぞ」
戦妻「もう、あなたったら。せっかくのお客様でしょ?」
戦士「バカ。よし、一番いい酒出しておくれ」
戦妻「はーい」テッテッテ
勇者(すげぇ巨乳)
戦士「ちょっと猫被ってるんだあいつ」
勇者「そ、そうなのか? ちなみにどういう関係で」
戦士「ああ、同じ村の出身でな」
勇者(お、幼馴染かよッ)
戦士「……どうだ、世界の方は」
勇者「ん? ああ、気抜けするくらい平和だよ。少なくとも、俺の実家も」
戦士「そうか。俺はもう、たくさん稼いだしな、いろいろ教えてくれ」
勇者(地に脚つけてる感じでうらやましいんだが)
勇者「ち、ちなみに、畑仕事しているって聞いたけど」
戦士「まあな。元々村全体が、魔物も来ないような貧弱な土地だったから、なんとかしてやりたくて」
勇者「ああ、そういや、賢者にいろいろ聞いていたな」
戦士「おう。肥料に品種改良、新しい農具の考案書まで作ってもらったぜ」
勇者「お前の口から聞きなれない言葉が……」
戦士「うるせぇ!」
勇者「ん? ああ、気抜けするくらい平和だよ。少なくとも、俺の実家も」
戦士「そうか。俺はもう、たくさん稼いだしな、いろいろ教えてくれ」
勇者(地に脚つけてる感じでうらやましいんだが)
勇者「ち、ちなみに、畑仕事しているって聞いたけど」
戦士「まあな。元々村全体が、魔物も来ないような貧弱な土地だったから、なんとかしてやりたくて」
勇者「ああ、そういや、賢者にいろいろ聞いていたな」
戦士「おう。肥料に品種改良、新しい農具の考案書まで作ってもらったぜ」
勇者「お前の口から聞きなれない言葉が……」
戦士「うるせぇ!」
勇者「でも、それだけじゃないんだろ?」
戦士「ああ、聞いていたのか。いやなに、名前を売り出してあちこちに野菜の売買の交渉をしていたら、剣術を教えてくれって連中が集まってしまってな」
勇者(そ、それは聞いてない)
戦士「体力をつけて、いい武具を装備すれば勝てる! って言って適当に追い払ってたんだが」
勇者「いやあ、お前の場合はそれだけじゃないだろ」
戦士「そうかなぁ」
勇者「そういえば、冒険で来たときより、すごい人がいたな」
戦士「住み着いちまったやつもいる。道場を開かされる羽目になったよ」
勇者(こりゃ村の救世主になるわけだ)
戦士「ああ、聞いていたのか。いやなに、名前を売り出してあちこちに野菜の売買の交渉をしていたら、剣術を教えてくれって連中が集まってしまってな」
勇者(そ、それは聞いてない)
戦士「体力をつけて、いい武具を装備すれば勝てる! って言って適当に追い払ってたんだが」
勇者「いやあ、お前の場合はそれだけじゃないだろ」
戦士「そうかなぁ」
勇者「そういえば、冒険で来たときより、すごい人がいたな」
戦士「住み着いちまったやつもいる。道場を開かされる羽目になったよ」
勇者(こりゃ村の救世主になるわけだ)
戦妻「うふふ、盛り上がってますね」
勇者「あ、すみません、奥さん」
戦妻「この人ったら、何でもほいほい引き受けちゃうから」
戦士「う、うるせぇな」
勇者「ああー。俺が最初にメンバーを集めようとしたときもね、そのときはガキだったから結構断られてたんだけど、戦士がまず引き受けてくれて」
戦妻「あら、見る目があったのね」
戦士「そ、そういうことだ」
勇者「なんで俺がって言ってたぞ」
戦士「なんで覚えてるんだよ!」
勇者「あ、すみません、奥さん」
戦妻「この人ったら、何でもほいほい引き受けちゃうから」
戦士「う、うるせぇな」
勇者「ああー。俺が最初にメンバーを集めようとしたときもね、そのときはガキだったから結構断られてたんだけど、戦士がまず引き受けてくれて」
戦妻「あら、見る目があったのね」
戦士「そ、そういうことだ」
勇者「なんで俺がって言ってたぞ」
戦士「なんで覚えてるんだよ!」
勇者「おおー、これは戦士の名前入りワイン」
戦士「生産者の名前を出すってのが流行ってるらしい。つっても、俺はワインなんか作ってないんだけどなぁ」
勇者「じゃあ、何したんだよ」
戦士「一番うまいワインを選んでくれって試飲会を」
勇者「うわぁ……」
戦妻「あの時は、そんなに酔っ払わなかったけど、お腹がたぽたぽになったって」
勇者「十分、いやな話だろ」
勇者(ん……そうか、勇者ご推薦の商品とかだったら商売できる?)
戦士「生産者の名前を出すってのが流行ってるらしい。つっても、俺はワインなんか作ってないんだけどなぁ」
勇者「じゃあ、何したんだよ」
戦士「一番うまいワインを選んでくれって試飲会を」
勇者「うわぁ……」
戦妻「あの時は、そんなに酔っ払わなかったけど、お腹がたぽたぽになったって」
勇者「十分、いやな話だろ」
勇者(ん……そうか、勇者ご推薦の商品とかだったら商売できる?)
戦士「そういや、何かあったのか?」
勇者「ん?」
戦士「久しぶりにやってきたから、何事かと思ったからさ」
勇者「お、おう」
戦妻 ニコニコ
勇者(やべぇ、奥さんのいる前で仕事の斡旋をしてくれとは言いづらい……)
勇者「い、いやまあ、その、な」
戦妻「あら、男同士の話かしら。なら、少し果物を切ってきますね」
勇者「あ、いや、すみません」
勇者(うおー気遣いできる幼馴染妻とか最高すぎる)
戦士「なんだ、そんな気を使わなくても」
勇者「お前はちょっとは察しろ」
勇者「ん?」
戦士「久しぶりにやってきたから、何事かと思ったからさ」
勇者「お、おう」
戦妻 ニコニコ
勇者(やべぇ、奥さんのいる前で仕事の斡旋をしてくれとは言いづらい……)
勇者「い、いやまあ、その、な」
戦妻「あら、男同士の話かしら。なら、少し果物を切ってきますね」
勇者「あ、いや、すみません」
勇者(うおー気遣いできる幼馴染妻とか最高すぎる)
戦士「なんだ、そんな気を使わなくても」
勇者「お前はちょっとは察しろ」
戦士「……なんだなんだ、何かあったのか」
勇者「いやー、実はな。世界が平和になったせいで、仕事がな……」
戦士「あん?」
勇者「だ、だからな、仕事がほしいんだよ」
戦士「仕事がほしいって、勇者なら引く手数多だろうが」
勇者「ねーよ! そんなもん!」
戦士「お、おう」
勇者「用心棒や剣術指南は『間に合ってる』か『恐れ多い』でお断りだよ!」
戦士「うーん、そんなもんかな」
勇者「逆玉とか狙ったけど失敗したし!」
戦士「じ、実家はどうなんだ」
勇者「お前と違って、俺は元々勇者になる修行しかしてなかったから、実家の仕事とかもないんだよ」
戦士「お前、農村出をバカにしてんのか」
勇者「いやー、実はな。世界が平和になったせいで、仕事がな……」
戦士「あん?」
勇者「だ、だからな、仕事がほしいんだよ」
戦士「仕事がほしいって、勇者なら引く手数多だろうが」
勇者「ねーよ! そんなもん!」
戦士「お、おう」
勇者「用心棒や剣術指南は『間に合ってる』か『恐れ多い』でお断りだよ!」
戦士「うーん、そんなもんかな」
勇者「逆玉とか狙ったけど失敗したし!」
戦士「じ、実家はどうなんだ」
勇者「お前と違って、俺は元々勇者になる修行しかしてなかったから、実家の仕事とかもないんだよ」
戦士「お前、農村出をバカにしてんのか」
勇者「とにかく、仕事がない。マジで、ない」
戦士「いやしかし、褒美だってもらっただろ?」
勇者「もらったけど、あれでごろごろしろってか?」
戦士「いやそれを元手に事業を始めるとかさ」
勇者「じ、事業ってなんだよ」
戦士「それは俺にはわからんが……」
勇者「はぁー、そりゃ周りが慕ってくれてるお前なら、何か起こせるだろうけどよ」
戦士「いやいや、お前ほどの才覚のあるやつ、どこでも欲しがると思うんだがな」
勇者「……」
戦士「言われたことがないのか?」
勇者「うるせぇー!」
戦士「いやしかし、褒美だってもらっただろ?」
勇者「もらったけど、あれでごろごろしろってか?」
戦士「いやそれを元手に事業を始めるとかさ」
勇者「じ、事業ってなんだよ」
戦士「それは俺にはわからんが……」
勇者「はぁー、そりゃ周りが慕ってくれてるお前なら、何か起こせるだろうけどよ」
戦士「いやいや、お前ほどの才覚のあるやつ、どこでも欲しがると思うんだがな」
勇者「……」
戦士「言われたことがないのか?」
勇者「うるせぇー!」
勇者「なんだよー、あんな巨乳でかわいい奥さんまでいてさー」
戦士「ば、バカ。それにああ見えてじゃじゃ馬なんだぞ、あいつ」
勇者「巨乳幼馴染でツンデレ妻とかいい加減にしろよ!」
戦士「あのなー」
勇者「……もしかして、子どもも?」
戦士「……ああ、3ヶ月だ」
勇者「くそっ、ふざけるな!」
戦士「うおっ、からみ酒だったっけ? こいつ」
戦士「ば、バカ。それにああ見えてじゃじゃ馬なんだぞ、あいつ」
勇者「巨乳幼馴染でツンデレ妻とかいい加減にしろよ!」
戦士「あのなー」
勇者「……もしかして、子どもも?」
戦士「……ああ、3ヶ月だ」
勇者「くそっ、ふざけるな!」
戦士「うおっ、からみ酒だったっけ? こいつ」
戦士「大体、俺みたいなやつより、僧侶とか賢者とかに聞いたほうがいいんじゃないのか」
勇者「……」
戦士「奥さんで言うなら、あの二人なんかお前に気があったと思うし」
勇者「いや、それはない」
戦士「ええー? そうかな」
勇者「僧侶さんは、信仰に篤くてまったくその気がないし、あー、賢者はクズだしな」
戦士「お前、仲が良くなかったからって、賢者をそんな風に」
勇者「それに、賢者は魔王を倒した後、どっかに行っちまったじゃないか」
戦士「そうだったっけかな」
勇者「……よし、戦士。勇者ブランドをつくろう」
戦士「は?」
勇者「……」
戦士「奥さんで言うなら、あの二人なんかお前に気があったと思うし」
勇者「いや、それはない」
戦士「ええー? そうかな」
勇者「僧侶さんは、信仰に篤くてまったくその気がないし、あー、賢者はクズだしな」
戦士「お前、仲が良くなかったからって、賢者をそんな風に」
勇者「それに、賢者は魔王を倒した後、どっかに行っちまったじゃないか」
戦士「そうだったっけかな」
勇者「……よし、戦士。勇者ブランドをつくろう」
戦士「は?」
勇者「だから、このワインみたいにさ、ここで勇者ブランドをつくって、売り出すんだよ」
戦士「いやお前、この村に住むってことか?」
勇者「そりゃそうよ! 農業なんて初めてだな~」
戦士「お前はやめたほうがいいと思うぜ」
勇者「な、なんでだよ」
戦士「こう言っちゃなんだが、場当たり的だろ、お前」
勇者「それがどうした」
戦士「冒険の時も、俺と賢者でフォローしてたしな」
勇者「お前らが慎重すぎるだけなんだよー」
戦士「いやいや。だから、そういうんじゃ村では歓迎されないし、大体、農業は天に頼る仕事だ。飽きて放り出したりできないんだぞ」
勇者「う、うるせぇな。やってみなくちゃ分からんだろ」
戦士「分かるよ。お前は勇者らしいんだろうが、無計画すぎる」
戦士「いやお前、この村に住むってことか?」
勇者「そりゃそうよ! 農業なんて初めてだな~」
戦士「お前はやめたほうがいいと思うぜ」
勇者「な、なんでだよ」
戦士「こう言っちゃなんだが、場当たり的だろ、お前」
勇者「それがどうした」
戦士「冒険の時も、俺と賢者でフォローしてたしな」
勇者「お前らが慎重すぎるだけなんだよー」
戦士「いやいや。だから、そういうんじゃ村では歓迎されないし、大体、農業は天に頼る仕事だ。飽きて放り出したりできないんだぞ」
勇者「う、うるせぇな。やってみなくちゃ分からんだろ」
戦士「分かるよ。お前は勇者らしいんだろうが、無計画すぎる」
勇者「……」
戦士「冒険者だってちゃんと計画立てるだろうに、薬草の数が足りなくて死に掛けたことも覚えているぞ俺は」
勇者「あ、あの時は、武器がどうしても欲しくて」
戦士「だったらもう少し稼げばよかったろうに。道具を全部売って武器を買うバカがどこにいるんだ」
勇者(正論だな……)
戦士「……ふむ。なるほどな」
勇者「な、なんだよ」
戦士「どこでも欲しがる人材かと思っていたが、案外、平和な時は組織の邪魔になってしまうんだな、お前」
勇者「れ、冷静に評論するんじゃねぇー!」
戦士「冒険者だってちゃんと計画立てるだろうに、薬草の数が足りなくて死に掛けたことも覚えているぞ俺は」
勇者「あ、あの時は、武器がどうしても欲しくて」
戦士「だったらもう少し稼げばよかったろうに。道具を全部売って武器を買うバカがどこにいるんだ」
勇者(正論だな……)
戦士「……ふむ。なるほどな」
勇者「な、なんだよ」
戦士「どこでも欲しがる人材かと思っていたが、案外、平和な時は組織の邪魔になってしまうんだな、お前」
勇者「れ、冷静に評論するんじゃねぇー!」
隣国。
勇者「結局、戦士にゃ仕事を紹介してもらえなかった」
勇者「こうなったら僧侶さんだ」
勇者「僧侶さんなら、教会で偉い立場についてるだろうし、いろいろ分かるだろう」
勇者「あ、すみませーん」
村人「はい?」
勇者「この辺に、勇者一行だった僧侶さんは……」
村人「あ、ああ。そういうあなたは、勇者様?」
勇者「そのとおり、勇者ですよ」エラソウ
村人「そ、そうですかぁ、僧侶さんに」
勇者「……? なにかあったんですか?」
村人「実は、僧侶さんは、わが国の教会を出て行ってしまったんですよ」
勇者「な、なんだって!?」
勇者「結局、戦士にゃ仕事を紹介してもらえなかった」
勇者「こうなったら僧侶さんだ」
勇者「僧侶さんなら、教会で偉い立場についてるだろうし、いろいろ分かるだろう」
勇者「あ、すみませーん」
村人「はい?」
勇者「この辺に、勇者一行だった僧侶さんは……」
村人「あ、ああ。そういうあなたは、勇者様?」
勇者「そのとおり、勇者ですよ」エラソウ
村人「そ、そうですかぁ、僧侶さんに」
勇者「……? なにかあったんですか?」
村人「実は、僧侶さんは、わが国の教会を出て行ってしまったんですよ」
勇者「な、なんだって!?」
教会。
神父「……そうですか、僧侶にお会いしたいと」
勇者「出ていったって、何があったんですか?」
神父「うむ……実は、僧侶は旅をする途中で、多くの孤児に出会いましてな」
勇者「そ、その孤児を」
神父「さよう。いただいた褒美もすべて孤児院設立に使ってしまったそうで」
勇者「教会には戻ってきていないんですか」
神父「寄付を募ったり、孤児の働く場所を確保するために、各国を回っているうちに、もう教会には戻れないと……」
勇者「ど、どうして戻れないんですか」
神父「勇者殿、僧侶はこの国に孤児院を設置したわけではありません」
神父「……そうですか、僧侶にお会いしたいと」
勇者「出ていったって、何があったんですか?」
神父「うむ……実は、僧侶は旅をする途中で、多くの孤児に出会いましてな」
勇者「そ、その孤児を」
神父「さよう。いただいた褒美もすべて孤児院設立に使ってしまったそうで」
勇者「教会には戻ってきていないんですか」
神父「寄付を募ったり、孤児の働く場所を確保するために、各国を回っているうちに、もう教会には戻れないと……」
勇者「ど、どうして戻れないんですか」
神父「勇者殿、僧侶はこの国に孤児院を設置したわけではありません」
神父「他国では、わが教会と関わらない土地もある。そのようなところで、孤児院や作業場などを作ろうとすると、その承認や手続きのため、大変な苦労が必要なのです」
勇者「はぁー、なるほど」
神父「教会から他国に口を出すなどすれば、大変なことになりましょう」
勇者「はぁ……なるほど」
神父「したがって、一市民として、建設に携わると……」
勇者「僧侶さんらしいなぁ」
神父「一応、支援は行っているのですが」
勇者「じゃあ、居場所は分かるんですか」
神父「ええ、まあ。勇者殿の方がお詳しいかと思っておりましたが」
勇者(実家でごろごろしてたとは言えねぇ……)
勇者「はぁー、なるほど」
神父「教会から他国に口を出すなどすれば、大変なことになりましょう」
勇者「はぁ……なるほど」
神父「したがって、一市民として、建設に携わると……」
勇者「僧侶さんらしいなぁ」
神父「一応、支援は行っているのですが」
勇者「じゃあ、居場所は分かるんですか」
神父「ええ、まあ。勇者殿の方がお詳しいかと思っておりましたが」
勇者(実家でごろごろしてたとは言えねぇ……)
孤児院。
男子1「せんせー、遊んでー」
女子1「せんせー、お腹すいたー」
女子2「うえぇぇん、男子くんがぶったぁああああ」
男子2「せんせー、俺、わるくない!」
僧侶「はいはい、みんな、もうお昼だから、ケンカしちゃだめですよ」
わいわい、がやがや。
トントン
僧侶「は、はい!」
勇者「あのー……」
僧侶「ゆ、勇者様!?」
男子1「せんせー、遊んでー」
女子1「せんせー、お腹すいたー」
女子2「うえぇぇん、男子くんがぶったぁああああ」
男子2「せんせー、俺、わるくない!」
僧侶「はいはい、みんな、もうお昼だから、ケンカしちゃだめですよ」
わいわい、がやがや。
トントン
僧侶「は、はい!」
勇者「あのー……」
僧侶「ゆ、勇者様!?」
強烈に眠い。書き溜めはしてあるので、明日にでも全部投稿します。
今日は失礼。
今日は失礼。
僧侶「す、すみません、ばたばたしてしまって」
勇者「いやいや、お昼時に申し訳ないことを」
僧侶「……元気でしょう、子どもたちが」
勇者「そうですねー。まさか、孤児院を建てていたなんて知りませんでしたよ」
僧侶「ええ。魔王征伐の旅の途中では、それどころではありませんでしたから」
勇者「がんばったんですね」
僧侶「はい。子どもたちの笑顔が、見たかったんです」ニコッ
勇者(僧侶さんの笑顔もステキだあああ!)
僧侶「ど、どうしました、勇者様」
勇者「あ、ああ、いやいや」
勇者「いやいや、お昼時に申し訳ないことを」
僧侶「……元気でしょう、子どもたちが」
勇者「そうですねー。まさか、孤児院を建てていたなんて知りませんでしたよ」
僧侶「ええ。魔王征伐の旅の途中では、それどころではありませんでしたから」
勇者「がんばったんですね」
僧侶「はい。子どもたちの笑顔が、見たかったんです」ニコッ
勇者(僧侶さんの笑顔もステキだあああ!)
僧侶「ど、どうしました、勇者様」
勇者「あ、ああ、いやいや」
勇者「せっかく僧侶さんなら、教会でも重要な地位につけると思ったんですけど」
僧侶「私には向いておりません。現場で誰かを救う方が好きなのです」
勇者(ええ娘や~)
僧侶「そういえば、勇者様はどうしてこちらに?」
勇者「うっ」
僧侶「確か、最後に立ち寄った王国に客人の身分で滞在なさっていると」
勇者(実家帰ってごろごろしてましたぁあああああ!)
僧侶「ま、まさか、再び闇がこの世界をっ」
勇者「いーやいやいや、そういうんじゃないですよ!」
僧侶「そ、そうですか」ホッ
勇者「ただちょっと、僧侶さんの顔が見たくて」
僧侶「そ、そうですか?」ポッ
僧侶「私には向いておりません。現場で誰かを救う方が好きなのです」
勇者(ええ娘や~)
僧侶「そういえば、勇者様はどうしてこちらに?」
勇者「うっ」
僧侶「確か、最後に立ち寄った王国に客人の身分で滞在なさっていると」
勇者(実家帰ってごろごろしてましたぁあああああ!)
僧侶「ま、まさか、再び闇がこの世界をっ」
勇者「いーやいやいや、そういうんじゃないですよ!」
僧侶「そ、そうですか」ホッ
勇者「ただちょっと、僧侶さんの顔が見たくて」
僧侶「そ、そうですか?」ポッ
勇者「その、戦士は故郷帰ってたから、僧侶さんはどうしてるかなって」
僧侶「わ、私はその、こうして、子どもたちのために生きています」
勇者「でも、戦士なんかかわいい幼馴染と結婚してるんですよ?」
僧侶「え! それは喜ばしいことです」
勇者「しかも巨乳で妊娠三ヶ月」
僧侶「あら、おめでたいですわ!」
勇者「……僧侶さん?」
僧侶「お祝いを言えなかったのが残念です……」
勇者「な、なんだったら、俺が伝えておきますよ」
僧侶「まあ、でも、そんな悪いです」
僧侶「わ、私はその、こうして、子どもたちのために生きています」
勇者「でも、戦士なんかかわいい幼馴染と結婚してるんですよ?」
僧侶「え! それは喜ばしいことです」
勇者「しかも巨乳で妊娠三ヶ月」
僧侶「あら、おめでたいですわ!」
勇者「……僧侶さん?」
僧侶「お祝いを言えなかったのが残念です……」
勇者「な、なんだったら、俺が伝えておきますよ」
僧侶「まあ、でも、そんな悪いです」
勇者「それとも、あれですか、俺とその……して、戦士のところに行くって言うのでも」
僧侶「……」
勇者「僧侶さん?」
僧侶「それは、できませんわ」
勇者「どうしてですか?」
僧侶「私は、ここにいる子どもたちを置いてはいけません」
勇者(くっ、僧侶さんのヒモになる計画が!)
僧侶「た、確かに、その、男手がほしいと思うときもありますけれど」
勇者「! じゃあ、俺」
バタン
貴族「僧侶さんはいらっしゃいますか!」
僧侶「……」
勇者「僧侶さん?」
僧侶「それは、できませんわ」
勇者「どうしてですか?」
僧侶「私は、ここにいる子どもたちを置いてはいけません」
勇者(くっ、僧侶さんのヒモになる計画が!)
僧侶「た、確かに、その、男手がほしいと思うときもありますけれど」
勇者「! じゃあ、俺」
バタン
貴族「僧侶さんはいらっしゃいますか!」
勇者「お、おお?」
貴族「うん? なんだ、貴様!」
僧侶「あら、貴族様ではありませんか」
貴族「そ、僧侶さん、この男は何者ですかっ!」
僧侶「その方は、私と一緒に旅をした勇者様です」
貴族「な、なんだと……この冴えない男が」
勇者「おいてめー、いい度胸してるじゃねぇか」
僧侶「あら、お客様が増えたなら、お茶をお入れしますね」パタパタ
貴族「―――き、貴様、本当に勇者だというのか」
勇者「正真正銘、俺が勇者だ! なんなら試してみるかい?」チャッ
貴族「うん? なんだ、貴様!」
僧侶「あら、貴族様ではありませんか」
貴族「そ、僧侶さん、この男は何者ですかっ!」
僧侶「その方は、私と一緒に旅をした勇者様です」
貴族「な、なんだと……この冴えない男が」
勇者「おいてめー、いい度胸してるじゃねぇか」
僧侶「あら、お客様が増えたなら、お茶をお入れしますね」パタパタ
貴族「―――き、貴様、本当に勇者だというのか」
勇者「正真正銘、俺が勇者だ! なんなら試してみるかい?」チャッ
貴族「ふん、こんなところまで何をしにきた」
勇者「かつての仲間に会いに来ちゃいけないっていうのかい」
貴族「会ってどうするつもりだ。ま、まさか、また何か大きな闇がっ!」
勇者「いや、違うけど」
貴族「そ、そうか。僧侶さんはここの子どもたちを置いてはいけないからな」ホッ
勇者(大げさなやつだな。こいつも)
貴族「では、それ以外で何か用だというのか」
勇者「そういう俺のほうこそ聞きたい。貴族が孤児院に何の用だ」
貴族「そ、それは……」
僧侶「お茶を淹れなおしましたよ~」
貴族「あ、ありがとう!」パァッ
勇者(なるほど)
勇者「かつての仲間に会いに来ちゃいけないっていうのかい」
貴族「会ってどうするつもりだ。ま、まさか、また何か大きな闇がっ!」
勇者「いや、違うけど」
貴族「そ、そうか。僧侶さんはここの子どもたちを置いてはいけないからな」ホッ
勇者(大げさなやつだな。こいつも)
貴族「では、それ以外で何か用だというのか」
勇者「そういう俺のほうこそ聞きたい。貴族が孤児院に何の用だ」
貴族「そ、それは……」
僧侶「お茶を淹れなおしましたよ~」
貴族「あ、ありがとう!」パァッ
勇者(なるほど)
貴族「いや、僧侶さんの淹れたお茶はすばらしい」
僧侶「そんなこと、貴族様がいつもよい葉をご用意していただけるからですわ」
勇者(うおお、そこまでモーションかけてんのか)
貴族「いやいや、お茶は、淹れる人の心が出てくるものなのだ」
僧侶「まあ、お上手ですわ」ウフフ
貴族「う、うむ」カァッ
勇者「きざっ」
貴族「な、なんだ、その言葉は」
僧侶「勇者様は貴族様をご存知でないでしょう? 紹介いたしますわ」
貴族「う、うむ。わが国きっての名門、貴族である」
僧侶「孤児院設立のために、尽力された方なのです」
勇者(下心で協力したようにしか見えん)
僧侶「そんなこと、貴族様がいつもよい葉をご用意していただけるからですわ」
勇者(うおお、そこまでモーションかけてんのか)
貴族「いやいや、お茶は、淹れる人の心が出てくるものなのだ」
僧侶「まあ、お上手ですわ」ウフフ
貴族「う、うむ」カァッ
勇者「きざっ」
貴族「な、なんだ、その言葉は」
僧侶「勇者様は貴族様をご存知でないでしょう? 紹介いたしますわ」
貴族「う、うむ。わが国きっての名門、貴族である」
僧侶「孤児院設立のために、尽力された方なのです」
勇者(下心で協力したようにしか見えん)
僧侶「それだけではなくて、度々、こうしてお出でくださって、お手伝いまで」
貴族「いやなに、わが国の領民を守るためだ。むしろ、僧侶さんには頭の下がる思いだよ」ハッハッハ
勇者「頭上げてんじゃん」
貴族「な、なんだと」
勇者「頭が下がるってんなら、孤児院に援助くらいしてるんだろうな」
貴族「ふん、それどころか、ひと働きしているくらいだ」
僧侶「……でしたら勇者様も、貴族様とご一緒に、薪割りをしてくださいますか」
勇者「ま、薪割り……あんたそんなことまで」
貴族「ふははは! 勇者殿にはちとキツイ仕事かな?!」
勇者「なんで偉そうなんだよ」
貴族「いやなに、わが国の領民を守るためだ。むしろ、僧侶さんには頭の下がる思いだよ」ハッハッハ
勇者「頭上げてんじゃん」
貴族「な、なんだと」
勇者「頭が下がるってんなら、孤児院に援助くらいしてるんだろうな」
貴族「ふん、それどころか、ひと働きしているくらいだ」
僧侶「……でしたら勇者様も、貴族様とご一緒に、薪割りをしてくださいますか」
勇者「ま、薪割り……あんたそんなことまで」
貴族「ふははは! 勇者殿にはちとキツイ仕事かな?!」
勇者「なんで偉そうなんだよ」
一時間後。
勇者「はぁーっ、はぁーっ、つ、疲れた」
貴族「だ、だらしがないですな、勇者殿」
勇者「ひ、久しぶりになたなんか振るったからな」
貴族「ふ、ふふふ、女性の身でもやっているんだぞ、僧侶さんは」
勇者「あんた、いつもこんなことやってんのか」
貴族「こ、今回は割とハードな仕事だったが、大工仕事とか、洗濯をしたりとか」
勇者「あんた、本当に貴族なのかよ」
貴族「その通りだとも。領民を監督するのは領主の務め」
勇者「でも、僧侶さんを狙ってんだろ」
貴族「ねらっ……確かに結婚を申し込んだことはある」
勇者「あるんじゃん」
勇者「はぁーっ、はぁーっ、つ、疲れた」
貴族「だ、だらしがないですな、勇者殿」
勇者「ひ、久しぶりになたなんか振るったからな」
貴族「ふ、ふふふ、女性の身でもやっているんだぞ、僧侶さんは」
勇者「あんた、いつもこんなことやってんのか」
貴族「こ、今回は割とハードな仕事だったが、大工仕事とか、洗濯をしたりとか」
勇者「あんた、本当に貴族なのかよ」
貴族「その通りだとも。領民を監督するのは領主の務め」
勇者「でも、僧侶さんを狙ってんだろ」
貴族「ねらっ……確かに結婚を申し込んだことはある」
勇者「あるんじゃん」
貴族「しかしだな、元々は僧侶さんが私を尋ねてこられたのだ」
勇者「それは孤児院設立のために、協力者を探していたからだろ?」
貴族「うむ。彼女の熱弁を聞いて、私も気づいたのだ……わが国がなぜ魔物に押されていたのか」
勇者「へぇ」
貴族「要するに、民生に対する意識が低かったのだ。大臣、兵士は王室しか守らない」
勇者「はぁ」
貴族「その結果があのようなあふれるほどの戦災孤児だ」
勇者「ふーん」
貴族「私は、王政の改革を行いたいと思っている。しかし、そうなれば混乱が生まれるかもしれない」
勇者「そんで?」
貴族「まじめに聞いてもらえぬか?」スラッ
勇者「聞いてるじゃねぇか! 剣を抜くな!」
勇者「それは孤児院設立のために、協力者を探していたからだろ?」
貴族「うむ。彼女の熱弁を聞いて、私も気づいたのだ……わが国がなぜ魔物に押されていたのか」
勇者「へぇ」
貴族「要するに、民生に対する意識が低かったのだ。大臣、兵士は王室しか守らない」
勇者「はぁ」
貴族「その結果があのようなあふれるほどの戦災孤児だ」
勇者「ふーん」
貴族「私は、王政の改革を行いたいと思っている。しかし、そうなれば混乱が生まれるかもしれない」
勇者「そんで?」
貴族「まじめに聞いてもらえぬか?」スラッ
勇者「聞いてるじゃねぇか! 剣を抜くな!」
貴族「つまりだな、僧侶さんに安全でいてもらうために、結婚を申し込んだのだ」
勇者「勝手なやつだなー」
貴族「何を!」
勇者「大体、僧侶さんはあんたより強いぜ?」
貴族「そ、そのようなことはない」
勇者「まあ、でも、俺もなまってるからなー」チャッ
貴族「ぬ……」
勇者「相手になるぜ。腕の一本くらいは覚悟しているんだろ?」
貴族(なんだ、こいつ。剣を構えた途端に雰囲気が変わったぞ……!)
勇者「剣を構えると人格が変わるんだ」
貴族「危険人物ではないかっ」
勇者「勝手なやつだなー」
貴族「何を!」
勇者「大体、僧侶さんはあんたより強いぜ?」
貴族「そ、そのようなことはない」
勇者「まあ、でも、俺もなまってるからなー」チャッ
貴族「ぬ……」
勇者「相手になるぜ。腕の一本くらいは覚悟しているんだろ?」
貴族(なんだ、こいつ。剣を構えた途端に雰囲気が変わったぞ……!)
勇者「剣を構えると人格が変わるんだ」
貴族「危険人物ではないかっ」
僧侶「お二人とも、薪は……って」
勇者「おー、僧侶さん。ちょっと一本試合をするから、待っててくれ」
僧侶「だ、ダメです! 勇者様! その方は大事なお客人なんですよっ」
貴族「そ、僧侶さん……なに、このような腑抜けに遅れは取りません」
僧侶「ダメですー!」ブン
勇者「うわっ、洗濯桶か」
貴族「おうっ」ゴン
僧侶「きゃー!」
勇者「僧侶さんが本気を出していたら死んでいたな」
勇者「おー、僧侶さん。ちょっと一本試合をするから、待っててくれ」
僧侶「だ、ダメです! 勇者様! その方は大事なお客人なんですよっ」
貴族「そ、僧侶さん……なに、このような腑抜けに遅れは取りません」
僧侶「ダメですー!」ブン
勇者「うわっ、洗濯桶か」
貴族「おうっ」ゴン
僧侶「きゃー!」
勇者「僧侶さんが本気を出していたら死んでいたな」
僧侶「もう、お二人とも、はしゃぎすぎです! 貴族さんは気絶してしまうし」プンプン
勇者「いや、それは僧侶さんが……」
少女「……」ジーッ
勇者「お、おう。どうした」
少女「弱そう」
勇者「おい、くそがき」
少女「逃げろーっ」タタタッ
勇者「……教育がなっていないんじゃないですか? 僧侶さん」
僧侶「い、いえ、どの子も、寂しいだけかと」
勇者「いや、それは僧侶さんが……」
少女「……」ジーッ
勇者「お、おう。どうした」
少女「弱そう」
勇者「おい、くそがき」
少女「逃げろーっ」タタタッ
勇者「……教育がなっていないんじゃないですか? 僧侶さん」
僧侶「い、いえ、どの子も、寂しいだけかと」
僧侶「そ、そういえば、肝心なことを聞き忘れていましたね」
勇者「なんでしたっけ」
僧侶「その、勇者様は、どうしてこちらに?」
勇者「あ、あー……」
勇者(仕事を求めてとか言うべきか)
僧侶「私のことでしたら、お気になさらずに」
勇者「いや、僧侶さんに、相談したいことは、あったんですけど」
僧侶「まあ、何かしら」
勇者「でも、あの貴族とかもいるんだったら、特に心配はないですかね」
僧侶「よろしいのですか?」
勇者「ええまあ。困ったことがあったら、言ってくださいよ」
僧侶「え、ええ」
勇者「なんでしたっけ」
僧侶「その、勇者様は、どうしてこちらに?」
勇者「あ、あー……」
勇者(仕事を求めてとか言うべきか)
僧侶「私のことでしたら、お気になさらずに」
勇者「いや、僧侶さんに、相談したいことは、あったんですけど」
僧侶「まあ、何かしら」
勇者「でも、あの貴族とかもいるんだったら、特に心配はないですかね」
僧侶「よろしいのですか?」
勇者「ええまあ。困ったことがあったら、言ってくださいよ」
僧侶「え、ええ」
帰り際。
勇者「参ったな。この調子だと、仕事を見つけるなんて出来そうもないぜ」
貴族「……待て!」
勇者「……なんだよ」
貴族「貴様に一つだけ言っておきたい」
勇者「手短にしてくれないか」
貴族「もし、私が蜂起したとき、国王に味方しないでほしいのだ」
勇者「いや、俺もあのおっさんに味方したりはしないけど」
貴族「しかし、わが国王と貴様の国の王は友人関係にある。そしてそこには貴様の母上殿も、いる」
勇者「……母さんを人質にする可能性もあるってことか?」
貴族「そうだ。まあ、戦争が長引けば、の話だが」
勇者「参ったな。この調子だと、仕事を見つけるなんて出来そうもないぜ」
貴族「……待て!」
勇者「……なんだよ」
貴族「貴様に一つだけ言っておきたい」
勇者「手短にしてくれないか」
貴族「もし、私が蜂起したとき、国王に味方しないでほしいのだ」
勇者「いや、俺もあのおっさんに味方したりはしないけど」
貴族「しかし、わが国王と貴様の国の王は友人関係にある。そしてそこには貴様の母上殿も、いる」
勇者「……母さんを人質にする可能性もあるってことか?」
貴族「そうだ。まあ、戦争が長引けば、の話だが」
勇者「バカらしい、仮にも英雄の家族をそんな風に扱うかね」
貴族「どうかな。我が家も建国からの名門であるが、いまやないがしろにされつつある」
勇者「……あっ、それより、俺を雇うとかってのはどうよ!?」
貴族「はぁ?」
勇者「いやあ、いま、仕事を探しててさ」
貴族「確かに、救世主が我が方についたとなれば、断然有利だが」
勇者「だろ? まあ、世界を救う次が、反体制軍ってのも格好悪いかもしれんが」
貴族「……いや、しかしな。貴様はこの国に骨を埋めてくれるのか?」
勇者「え?」
貴族「どうかな。我が家も建国からの名門であるが、いまやないがしろにされつつある」
勇者「……あっ、それより、俺を雇うとかってのはどうよ!?」
貴族「はぁ?」
勇者「いやあ、いま、仕事を探しててさ」
貴族「確かに、救世主が我が方についたとなれば、断然有利だが」
勇者「だろ? まあ、世界を救う次が、反体制軍ってのも格好悪いかもしれんが」
貴族「……いや、しかしな。貴様はこの国に骨を埋めてくれるのか?」
勇者「え?」
貴族「王政の改革などと言っても、戦乱の後には保守派との長い地味な政治対決が待っている」
勇者「そ、それは任せるけどさ」
貴族「つまり、貴様は戦が終われば離れてしまうのだろう?」
勇者「……まあ」
貴族「貴様が我が方に入れば、それは反体制の核になる。しかし、長い政治の戦いで核が抜けては何の意味もないのだ」
勇者「えーっと……」
貴族「国を変えるのに英雄はいらないのだ。僧侶さんのような人こそが、求められる」
勇者「お前、俺をdisりやがって」
貴族「申し出は、感謝する」ペコ
勇者(いや、感謝より仕事くれよ)
勇者「そ、それは任せるけどさ」
貴族「つまり、貴様は戦が終われば離れてしまうのだろう?」
勇者「……まあ」
貴族「貴様が我が方に入れば、それは反体制の核になる。しかし、長い政治の戦いで核が抜けては何の意味もないのだ」
勇者「えーっと……」
貴族「国を変えるのに英雄はいらないのだ。僧侶さんのような人こそが、求められる」
勇者「お前、俺をdisりやがって」
貴族「申し出は、感謝する」ペコ
勇者(いや、感謝より仕事くれよ)
少女「あっ、弱そうなやつ!」
勇者「ああん?」
少女「もう帰るの?」
勇者「そうだよ。ここに俺の居場所はなさそうだからな」
少女「……弱いのに無理するから」
勇者「弱くねぇよ! 俺は世界を救ったんだよ!」
少女「大人は口だけだから」
勇者「てめぇ……」
―――ハハハッ
少女「!」
勇者「なんだぁ?」
少女「隠れて、隠れて」
勇者「おい、ちょっと」
勇者「ああん?」
少女「もう帰るの?」
勇者「そうだよ。ここに俺の居場所はなさそうだからな」
少女「……弱いのに無理するから」
勇者「弱くねぇよ! 俺は世界を救ったんだよ!」
少女「大人は口だけだから」
勇者「てめぇ……」
―――ハハハッ
少女「!」
勇者「なんだぁ?」
少女「隠れて、隠れて」
勇者「おい、ちょっと」
兵士A「こんなところに孤児院なんて作ったのか」
兵士B「元勇者の一行らしいぜ」
兵士C「ケッ、いけすかねぇな。大体、勝手に死んだ連中のガキを集めてどうしようってんだ」
兵士A「それがな、どうも反王政派の大物が出入りしてるんだってよ」
兵士B「じゃあ、テロリストのアジトか!」
兵士C「テロリストの養成所ってわけだな……」
兵士A「なに、そのうち……」
兵士B「そういや、元勇者パーティーの戦士が……」
兵士C「マジか? 隊長に……」
少女「……」
勇者「おい、苦しいぞ」
少女「も、もういいよ」
兵士B「元勇者の一行らしいぜ」
兵士C「ケッ、いけすかねぇな。大体、勝手に死んだ連中のガキを集めてどうしようってんだ」
兵士A「それがな、どうも反王政派の大物が出入りしてるんだってよ」
兵士B「じゃあ、テロリストのアジトか!」
兵士C「テロリストの養成所ってわけだな……」
兵士A「なに、そのうち……」
兵士B「そういや、元勇者パーティーの戦士が……」
兵士C「マジか? 隊長に……」
少女「……」
勇者「おい、苦しいぞ」
少女「も、もういいよ」
勇者「なんだってんだ、あいつら。僧侶さんをこき下ろしやがって」
少女「あいつら、私のお父さんが助けを呼んだのに、助けてくれなかったんだ」
勇者「話が見えん」
少女「だから、魔物が来ても、村を助けてくれなかったの」
勇者「ふーん、そんなやつらだったのか」
少女「私も、早くこんな国出て行きたい……」
勇者「じゃあ、出ちゃえばいいじゃん」
少女「ダメ、弱いから」
勇者「だったら、強くなれや」
少女「弱いくせにえらそうだよ?」
勇者「俺は強いの!」
少女「あいつら、私のお父さんが助けを呼んだのに、助けてくれなかったんだ」
勇者「話が見えん」
少女「だから、魔物が来ても、村を助けてくれなかったの」
勇者「ふーん、そんなやつらだったのか」
少女「私も、早くこんな国出て行きたい……」
勇者「じゃあ、出ちゃえばいいじゃん」
少女「ダメ、弱いから」
勇者「だったら、強くなれや」
少女「弱いくせにえらそうだよ?」
勇者「俺は強いの!」
故郷。
勇者「くそっ、どいつもこいつも役立たずだな! まあ、俺が一番の役立たずって説もあるが」
勇者「ん、人だかりだな」
ざわざわ、ざわざわ
勇者「どうかしたんですか?」
村人「あ、勇者様! いやあ、実は、王様が魔物がいた土地に探検隊を出そうと」
勇者「ほ~……」
村人「なんでも、商人やら富豪やらに金を出させて、隊を作るって話ですよ」
勇者「た、探検隊かー。冒険なら得意だったし、俺にぴったりじゃん」
村人「あ、そういえば、その企画立案に、魔法使いさんも関わっていると」
勇者「魔法使い?」
勇者「くそっ、どいつもこいつも役立たずだな! まあ、俺が一番の役立たずって説もあるが」
勇者「ん、人だかりだな」
ざわざわ、ざわざわ
勇者「どうかしたんですか?」
村人「あ、勇者様! いやあ、実は、王様が魔物がいた土地に探検隊を出そうと」
勇者「ほ~……」
村人「なんでも、商人やら富豪やらに金を出させて、隊を作るって話ですよ」
勇者「た、探検隊かー。冒険なら得意だったし、俺にぴったりじゃん」
村人「あ、そういえば、その企画立案に、魔法使いさんも関わっていると」
勇者「魔法使い?」
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