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    元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」

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    1 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:26:36.86 ID:whtp64qH0 (+125,+30,-205)
    勇者「魔王も倒して、世界を闇から救ったはいいけど」

    勇者「勇者的にはやることがもうなくなってしまった」

    勇者「用心棒とかは『いやいや、勇者様には!』とか言われるし……」

    勇者「定番の国の姫と結婚とかは、隣国の王子との婚約が決まってるとかで出来ず……」

    勇者「褒美をもらって、ぐーたらしていたら、白い目で見られ始めたし」

    勇者「パーティーも解散しちゃったしなぁ」

    勇者「実家に帰っても、ごろごろしていたら、母さんに怒られたし」

    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1327325196(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
    2 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:28:46.40 ID:whtp64qHo (+24,+29,-42)
    <注意点>

    ・同ネタ多数は承知の上。
    ・オチが弱いのもいつもどおり。
    ・のんべんだらりと読んでください。
    ・地雷臭を感じたら退避。

    それではどうぞ。
    3 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:29:19.99 ID:whtp64qHo (+95,+30,-193)
    勇者「身分を隠して、どこかの闘技場にでも出るかなぁ」

    勇者「つーか、勇者って職業じゃないから、転職できないんだよな……」

    勇者「山でウサギでもとって暮らすか?」

    勇者「ほら、結構世界を救った勇者って山で隠遁生活を」

    勇者「ああ、でもなー、俺まだそんなじじい暮らしするほど老いてないし……」

    勇者「褒美の半分くらいは実家に預けちゃったけど、まだお金残ってるしな」

    勇者「……」

    勇者「あ、そうだ。パーティーのみんなに会いに行くか」

    勇者「そんで、あわよくば再就職先を斡旋してもらおう」
    4 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:29:54.97 ID:whtp64qHo (+95,+30,-144)
    田舎の村。

    勇者「この辺に戦士が住んでいるって聞いたけど」

    村人「おお、あなたは勇者様ではありませんか」

    勇者「お、おう」(知らん人から話しかけられた)

    村人「もしや、戦士殿に会いに?」

    勇者「そ、そのとおりだ」

    村人「……すみませんが、それはやめていただけますか」

    勇者「ど、どうして?」

    村人「戦士殿はこの村で結婚もされ、畑を耕し、自警団長としても活躍されておりまして……」

    勇者「はぁ」

    村人「この村の大切な一員なのです」

    勇者「……?」
    5 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:30:25.20 ID:whtp64qHo (+95,+30,-131)
    勇者「それがどうかしたんですか」

    村人「いや、ですから、また冒険へと連れて行かれては……」

    勇者「ち、違うって! 久しぶりに会いに来ただけですから!」

    村人「そ、そうでしたか! それは失礼いたしました」

    勇者「よければ、呼んでもらえますか?」

    村人「それでは、早速、戦士殿を呼んできます! お待ちくださいね」タタタッ

    勇者(勇者って冒険しかしてないイメージなのかな)

    勇者「ううん、そうなると、この村で働くとかは」

    戦士「おーい! 勇者!」
    6 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:30:55.53 ID:whtp64qHo (+95,+30,-143)
    戦士「久しぶりだな! この村に来ていたのか」

    勇者「おう、戦士! 聞いたぞ、結婚もしたんだって?」

    戦士「お、おう。すまんな、式にも招待せず」

    勇者「あー、いいっていいって。それにしてもこの村は」

    戦士「ああ、俺の故郷だ。錦を飾るってやつでな」

    勇者「ふ、ふ~ん」

    戦士「今日は泊っていくんだろ?」

    勇者「そうだな……積もる話もあるだろうし」

    戦士「よし、妻に話しておくぜ」

    勇者(奥さんか……)
    7 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:31:53.34 ID:whtp64qHo (+93,+30,-127)
    戦士宅。

    勇者「お邪魔します」

    戦妻「あらあら、どうぞいらっしゃいました」

    戦士「そんな畏まらなくていいんだぞ」

    戦妻「もう、あなたったら。せっかくのお客様でしょ?」

    戦士「バカ。よし、一番いい酒出しておくれ」

    戦妻「はーい」テッテッテ

    勇者(すげぇ巨乳)

    戦士「ちょっと猫被ってるんだあいつ」

    勇者「そ、そうなのか? ちなみにどういう関係で」

    戦士「ああ、同じ村の出身でな」

    勇者(お、幼馴染かよッ)
    8 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:32:28.48 ID:whtp64qHo (+95,+30,-160)
    戦士「……どうだ、世界の方は」

    勇者「ん? ああ、気抜けするくらい平和だよ。少なくとも、俺の実家も」

    戦士「そうか。俺はもう、たくさん稼いだしな、いろいろ教えてくれ」

    勇者(地に脚つけてる感じでうらやましいんだが)

    勇者「ち、ちなみに、畑仕事しているって聞いたけど」

    戦士「まあな。元々村全体が、魔物も来ないような貧弱な土地だったから、なんとかしてやりたくて」

    勇者「ああ、そういや、賢者にいろいろ聞いていたな」

    戦士「おう。肥料に品種改良、新しい農具の考案書まで作ってもらったぜ」

    勇者「お前の口から聞きなれない言葉が……」

    戦士「うるせぇ!」
    9 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:33:32.60 ID:whtp64qHo (+95,+30,-188)
    勇者「でも、それだけじゃないんだろ?」

    戦士「ああ、聞いていたのか。いやなに、名前を売り出してあちこちに野菜の売買の交渉をしていたら、剣術を教えてくれって連中が集まってしまってな」

    勇者(そ、それは聞いてない)

    戦士「体力をつけて、いい武具を装備すれば勝てる! って言って適当に追い払ってたんだが」

    勇者「いやあ、お前の場合はそれだけじゃないだろ」

    戦士「そうかなぁ」

    勇者「そういえば、冒険で来たときより、すごい人がいたな」

    戦士「住み着いちまったやつもいる。道場を開かされる羽目になったよ」

    勇者(こりゃ村の救世主になるわけだ)
    10 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:34:13.54 ID:whtp64qHo (+95,+30,-133)
    戦妻「うふふ、盛り上がってますね」

    勇者「あ、すみません、奥さん」

    戦妻「この人ったら、何でもほいほい引き受けちゃうから」

    戦士「う、うるせぇな」

    勇者「ああー。俺が最初にメンバーを集めようとしたときもね、そのときはガキだったから結構断られてたんだけど、戦士がまず引き受けてくれて」

    戦妻「あら、見る目があったのね」

    戦士「そ、そういうことだ」

    勇者「なんで俺がって言ってたぞ」

    戦士「なんで覚えてるんだよ!」
    11 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:34:58.71 ID:whtp64qHo (+95,+30,-128)
    勇者「おおー、これは戦士の名前入りワイン」

    戦士「生産者の名前を出すってのが流行ってるらしい。つっても、俺はワインなんか作ってないんだけどなぁ」

    勇者「じゃあ、何したんだよ」

    戦士「一番うまいワインを選んでくれって試飲会を」

    勇者「うわぁ……」

    戦妻「あの時は、そんなに酔っ払わなかったけど、お腹がたぽたぽになったって」

    勇者「十分、いやな話だろ」

    勇者(ん……そうか、勇者ご推薦の商品とかだったら商売できる?)
    12 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:35:42.22 ID:whtp64qHo (+95,+30,-144)
    戦士「そういや、何かあったのか?」

    勇者「ん?」

    戦士「久しぶりにやってきたから、何事かと思ったからさ」

    勇者「お、おう」

    戦妻 ニコニコ

    勇者(やべぇ、奥さんのいる前で仕事の斡旋をしてくれとは言いづらい……)

    勇者「い、いやまあ、その、な」

    戦妻「あら、男同士の話かしら。なら、少し果物を切ってきますね」

    勇者「あ、いや、すみません」

    勇者(うおー気遣いできる幼馴染妻とか最高すぎる)

    戦士「なんだ、そんな気を使わなくても」

    勇者「お前はちょっとは察しろ」
    13 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:36:23.64 ID:whtp64qHo (+93,+30,-178)
    戦士「……なんだなんだ、何かあったのか」

    勇者「いやー、実はな。世界が平和になったせいで、仕事がな……」

    戦士「あん?」

    勇者「だ、だからな、仕事がほしいんだよ」

    戦士「仕事がほしいって、勇者なら引く手数多だろうが」

    勇者「ねーよ! そんなもん!」

    戦士「お、おう」

    勇者「用心棒や剣術指南は『間に合ってる』か『恐れ多い』でお断りだよ!」

    戦士「うーん、そんなもんかな」

    勇者「逆玉とか狙ったけど失敗したし!」

    戦士「じ、実家はどうなんだ」

    勇者「お前と違って、俺は元々勇者になる修行しかしてなかったから、実家の仕事とかもないんだよ」

    戦士「お前、農村出をバカにしてんのか」
    14 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:36:52.96 ID:whtp64qHo (+95,+30,-165)
    勇者「とにかく、仕事がない。マジで、ない」

    戦士「いやしかし、褒美だってもらっただろ?」

    勇者「もらったけど、あれでごろごろしろってか?」

    戦士「いやそれを元手に事業を始めるとかさ」

    勇者「じ、事業ってなんだよ」

    戦士「それは俺にはわからんが……」

    勇者「はぁー、そりゃ周りが慕ってくれてるお前なら、何か起こせるだろうけどよ」

    戦士「いやいや、お前ほどの才覚のあるやつ、どこでも欲しがると思うんだがな」

    勇者「……」

    戦士「言われたことがないのか?」

    勇者「うるせぇー!」
    15 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:37:24.78 ID:whtp64qHo (+93,+30,-87)
    勇者「なんだよー、あんな巨乳でかわいい奥さんまでいてさー」

    戦士「ば、バカ。それにああ見えてじゃじゃ馬なんだぞ、あいつ」

    勇者「巨乳幼馴染でツンデレ妻とかいい加減にしろよ!」

    戦士「あのなー」

    勇者「……もしかして、子どもも?」

    戦士「……ああ、3ヶ月だ」

    勇者「くそっ、ふざけるな!」

    戦士「うおっ、からみ酒だったっけ? こいつ」
    16 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:38:00.73 ID:whtp64qHo (+95,+30,-200)
    戦士「大体、俺みたいなやつより、僧侶とか賢者とかに聞いたほうがいいんじゃないのか」

    勇者「……」

    戦士「奥さんで言うなら、あの二人なんかお前に気があったと思うし」

    勇者「いや、それはない」

    戦士「ええー? そうかな」

    勇者「僧侶さんは、信仰に篤くてまったくその気がないし、あー、賢者はクズだしな」

    戦士「お前、仲が良くなかったからって、賢者をそんな風に」

    勇者「それに、賢者は魔王を倒した後、どっかに行っちまったじゃないか」

    戦士「そうだったっけかな」

    勇者「……よし、戦士。勇者ブランドをつくろう」

    戦士「は?」
    17 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:38:51.76 ID:whtp64qHo (+95,+30,-192)
    勇者「だから、このワインみたいにさ、ここで勇者ブランドをつくって、売り出すんだよ」

    戦士「いやお前、この村に住むってことか?」

    勇者「そりゃそうよ! 農業なんて初めてだな~」

    戦士「お前はやめたほうがいいと思うぜ」

    勇者「な、なんでだよ」

    戦士「こう言っちゃなんだが、場当たり的だろ、お前」

    勇者「それがどうした」

    戦士「冒険の時も、俺と賢者でフォローしてたしな」

    勇者「お前らが慎重すぎるだけなんだよー」

    戦士「いやいや。だから、そういうんじゃ村では歓迎されないし、大体、農業は天に頼る仕事だ。飽きて放り出したりできないんだぞ」

    勇者「う、うるせぇな。やってみなくちゃ分からんだろ」

    戦士「分かるよ。お前は勇者らしいんだろうが、無計画すぎる」
    18 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:39:28.06 ID:whtp64qHo (+93,+30,-126)
    勇者「……」

    戦士「冒険者だってちゃんと計画立てるだろうに、薬草の数が足りなくて死に掛けたことも覚えているぞ俺は」

    勇者「あ、あの時は、武器がどうしても欲しくて」

    戦士「だったらもう少し稼げばよかったろうに。道具を全部売って武器を買うバカがどこにいるんだ」

    勇者(正論だな……)

    戦士「……ふむ。なるほどな」

    勇者「な、なんだよ」

    戦士「どこでも欲しがる人材かと思っていたが、案外、平和な時は組織の邪魔になってしまうんだな、お前」

    勇者「れ、冷静に評論するんじゃねぇー!」
    19 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:40:04.36 ID:whtp64qHo (+95,+30,-248)
    隣国。

    勇者「結局、戦士にゃ仕事を紹介してもらえなかった」

    勇者「こうなったら僧侶さんだ」

    勇者「僧侶さんなら、教会で偉い立場についてるだろうし、いろいろ分かるだろう」

    勇者「あ、すみませーん」

    村人「はい?」

    勇者「この辺に、勇者一行だった僧侶さんは……」

    村人「あ、ああ。そういうあなたは、勇者様?」

    勇者「そのとおり、勇者ですよ」エラソウ

    村人「そ、そうですかぁ、僧侶さんに」

    勇者「……? なにかあったんですか?」

    村人「実は、僧侶さんは、わが国の教会を出て行ってしまったんですよ」

    勇者「な、なんだって!?」
    20 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:40:58.69 ID:whtp64qHo (+95,+30,-211)
    教会。

    神父「……そうですか、僧侶にお会いしたいと」

    勇者「出ていったって、何があったんですか?」

    神父「うむ……実は、僧侶は旅をする途中で、多くの孤児に出会いましてな」

    勇者「そ、その孤児を」

    神父「さよう。いただいた褒美もすべて孤児院設立に使ってしまったそうで」

    勇者「教会には戻ってきていないんですか」

    神父「寄付を募ったり、孤児の働く場所を確保するために、各国を回っているうちに、もう教会には戻れないと……」

    勇者「ど、どうして戻れないんですか」

    神父「勇者殿、僧侶はこの国に孤児院を設置したわけではありません」
    21 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:41:32.88 ID:whtp64qHo (+95,+30,-190)
    神父「他国では、わが教会と関わらない土地もある。そのようなところで、孤児院や作業場などを作ろうとすると、その承認や手続きのため、大変な苦労が必要なのです」

    勇者「はぁー、なるほど」

    神父「教会から他国に口を出すなどすれば、大変なことになりましょう」

    勇者「はぁ……なるほど」

    神父「したがって、一市民として、建設に携わると……」

    勇者「僧侶さんらしいなぁ」

    神父「一応、支援は行っているのですが」

    勇者「じゃあ、居場所は分かるんですか」

    神父「ええ、まあ。勇者殿の方がお詳しいかと思っておりましたが」

    勇者(実家でごろごろしてたとは言えねぇ……)
    22 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:41:59.42 ID:whtp64qHo (+95,+30,-153)
    孤児院。

    子1「せんせー、遊んでー」

    子1「せんせー、お腹すいたー」

    子2「うえぇぇん、男子くんがぶったぁああああ」

    子2「せんせー、俺、わるくない!」

    僧侶「はいはい、みんな、もうお昼だから、ケンカしちゃだめですよ」

    わいわい、がやがや。

    トントン

    僧侶「は、はい!」

    勇者「あのー……」

    僧侶「ゆ、勇者様!?」
    23 : ◆WPwc2p - 2012/01/23(月) 22:42:53.02 ID:whtp64qHo (+89,+29,-9)
    強烈に眠い。書き溜めはしてあるので、明日にでも全部投稿します。

    今日は失礼。
    24 : VIPにかわりま - 2012/01/23(月) 22:50:40.68 ID:kB75EGYW0 (-6,+8,-3)
    乙!支援するぜ
    25 : VIPにかわりま - 2012/01/23(月) 23:23:01.79 ID:y8JV+lmIo (-22,-10,-2)
    支援
    26 : VIPにかわりま - 2012/01/23(月) 23:52:44.46 ID:p3k6huK20 (-17,-5,-2)
    超支援
    27 : VIPにかわりま - 2012/01/24(火) 12:24:49.63 ID:IrvZqLtWo (-22,-10,-2)
    支援
    28 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 18:10:11.59 ID:PADtEUVIO (+24,+29,-3)
    10時頃からになりそうです。
    がんばります。
    29 : VIPにかわりま - 2012/01/24(火) 18:59:41.70 ID:qHcb2XBvo (-12,+2,-3)
    期待
    30 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:17:48.37 ID:Ccd+oFHRo (+30,+30,-174)
    僧侶「す、すみません、ばたばたしてしまって」

    勇者「いやいや、お昼時に申し訳ないことを」

    僧侶「……元気でしょう、子どもたちが」

    勇者「そうですねー。まさか、孤児院を建てていたなんて知りませんでしたよ」

    僧侶「ええ。魔王征伐の旅の途中では、それどころではありませんでしたから」

    勇者「がんばったんですね」

    僧侶「はい。子どもたちの笑顔が、見たかったんです」ニコッ

    勇者(僧侶さんの笑顔もステキだあああ!)

    僧侶「ど、どうしました、勇者様」

    勇者「あ、ああ、いやいや」
    31 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:18:23.62 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-232)
    勇者「せっかく僧侶さんなら、教会でも重要な地位につけると思ったんですけど」

    僧侶「私には向いておりません。現場で誰かを救う方が好きなのです」

    勇者(ええ娘や~)

    僧侶「そういえば、勇者様はどうしてこちらに?」

    勇者「うっ」

    僧侶「確か、最後に立ち寄った王国に客人の身分で滞在なさっていると」

    勇者(実家帰ってごろごろしてましたぁあああああ!)

    僧侶「ま、まさか、再び闇がこの世界をっ」

    勇者「いーやいやいや、そういうんじゃないですよ!」

    僧侶「そ、そうですか」ホッ

    勇者「ただちょっと、僧侶さんの顔が見たくて」

    僧侶「そ、そうですか?」ポッ
    32 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:18:54.08 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-180)
    勇者「その、戦士は故郷帰ってたから、僧侶さんはどうしてるかなって」

    僧侶「わ、私はその、こうして、子どもたちのために生きています」

    勇者「でも、戦士なんかかわいい幼馴染と結婚してるんですよ?」

    僧侶「え! それは喜ばしいことです」

    勇者「しかも巨乳で妊娠三ヶ月」

    僧侶「あら、おめでたいですわ!」

    勇者「……僧侶さん?」

    僧侶「お祝いを言えなかったのが残念です……」

    勇者「な、なんだったら、俺が伝えておきますよ」

    僧侶「まあ、でも、そんな悪いです」
    33 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:19:17.53 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-161)
    勇者「それとも、あれですか、俺とその……して、戦士のところに行くって言うのでも」

    僧侶「……」

    勇者「僧侶さん?」

    僧侶「それは、できませんわ」

    勇者「どうしてですか?」

    僧侶「私は、ここにいる子どもたちを置いてはいけません」

    勇者(くっ、僧侶さんのヒモになる計画が!)

    僧侶「た、確かに、その、男手がほしいと思うときもありますけれど」

    勇者「! じゃあ、俺」

    バタン

    貴族「僧侶さんはいらっしゃいますか!」
    34 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:19:50.21 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-235)
    勇者「お、おお?」

    貴族「うん? なんだ、貴様!」

    僧侶「あら、貴族様ではありませんか」

    貴族「そ、僧侶さん、この男は何者ですかっ!」

    僧侶「その方は、私と一緒に旅をした勇者様です」

    貴族「な、なんだと……この冴えない男が」

    勇者「おいてめー、いい度胸してるじゃねぇか」

    僧侶「あら、お客様が増えたなら、お茶をお入れしますね」パタパタ

    貴族「―――き、貴様、本当に勇者だというのか」

    勇者「正真正銘、俺が勇者だ! なんなら試してみるかい?」チャッ
    35 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:20:22.73 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-264)
    貴族「ふん、こんなところまで何をしにきた」

    勇者「かつての仲間に会いに来ちゃいけないっていうのかい」

    貴族「会ってどうするつもりだ。ま、まさか、また何か大きな闇がっ!」

    勇者「いや、違うけど」

    貴族「そ、そうか。僧侶さんはここの子どもたちを置いてはいけないからな」ホッ

    勇者(大げさなやつだな。こいつも)

    貴族「では、それ以外で何か用だというのか」

    勇者「そういう俺のほうこそ聞きたい。貴族が孤児院に何の用だ」

    貴族「そ、それは……」

    僧侶「お茶を淹れなおしましたよ~」

    貴族「あ、ありがとう!」パァッ

    勇者(なるほど)
    36 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:21:04.01 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,+0)
    貴族「いや、僧侶さんの淹れたお茶はすばらしい」

    僧侶「そんなこと、貴族様がいつもよい葉をご用意していただけるからですわ」

    勇者(うおお、そこまでモーションかけてんのか)

    貴族「いやいや、お茶は、淹れる人の心が出てくるものなのだ」

    僧侶「まあ、お上手ですわ」ウフフ

    貴族「う、うむ」カァッ

    勇者「きざっ」

    貴族「な、なんだ、その言葉は」

    僧侶「勇者様は貴族様をご存知でないでしょう? 紹介いたしますわ」

    貴族「う、うむ。わが国きっての名門、貴族である」

    僧侶「孤児院設立のために、尽力された方なのです」

    勇者(下心で協力したようにしか見えん)
    37 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:24:06.35 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-295)
    僧侶「それだけではなくて、度々、こうしてお出でくださって、お手伝いまで」

    貴族「いやなに、わが国の領民を守るためだ。むしろ、僧侶さんには頭の下がる思いだよ」ハッハッハ

    勇者「頭上げてんじゃん」

    貴族「な、なんだと」

    勇者「頭が下がるってんなら、孤児院に援助くらいしてるんだろうな」

    貴族「ふん、それどころか、ひと働きしているくらいだ」

    僧侶「……でしたら勇者様も、貴族様とご一緒に、薪割りをしてくださいますか」

    勇者「ま、薪割り……あんたそんなことまで」

    貴族「ふははは! 勇者殿にはちとキツイ仕事かな?!」

    勇者「なんで偉そうなんだよ」
    38 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:25:01.42 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-291)
    一時間後。

    勇者「はぁーっ、はぁーっ、つ、疲れた」

    貴族「だ、だらしがないですな、勇者殿」

    勇者「ひ、久しぶりになたなんか振るったからな」

    貴族「ふ、ふふふ、女性の身でもやっているんだぞ、僧侶さんは」

    勇者「あんた、いつもこんなことやってんのか」

    貴族「こ、今回は割とハードな仕事だったが、大工仕事とか、洗濯をしたりとか」

    勇者「あんた、本当に貴族なのかよ」

    貴族「その通りだとも。領民を監督するのは領主の務め」

    勇者「でも、僧侶さんを狙ってんだろ」

    貴族「ねらっ……確かに結婚を申し込んだことはある」

    勇者「あるんじゃん」
    39 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:25:51.77 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-292)
    貴族「しかしだな、元々は僧侶さんが私を尋ねてこられたのだ」

    勇者「それは孤児院設立のために、協力者を探していたからだろ?」

    貴族「うむ。彼女の熱弁を聞いて、私も気づいたのだ……わが国がなぜ魔物に押されていたのか」

    勇者「へぇ」

    貴族「要するに、民生に対する意識が低かったのだ。大臣、兵士は王室しか守らない」

    勇者「はぁ」

    貴族「その結果があのようなあふれるほどの戦災孤児だ」

    勇者「ふーん」

    貴族「私は、王政の改革を行いたいと思っている。しかし、そうなれば混乱が生まれるかもしれない」

    勇者「そんで?」

    貴族「まじめに聞いてもらえぬか?」スラッ

    勇者「聞いてるじゃねぇか! 剣を抜くな!」
    40 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:26:23.09 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-225)
    貴族「つまりだな、僧侶さんに安全でいてもらうために、結婚を申し込んだのだ」

    勇者「勝手なやつだなー」

    貴族「何を!」

    勇者「大体、僧侶さんはあんたより強いぜ?」

    貴族「そ、そのようなことはない」

    勇者「まあ、でも、俺もなまってるからなー」チャッ

    貴族「ぬ……」

    勇者「相手になるぜ。腕の一本くらいは覚悟しているんだろ?」

    貴族(なんだ、こいつ。剣を構えた途端に雰囲気が変わったぞ……!)

    勇者「剣を構えると人格が変わるんだ」

    貴族「危険人物ではないかっ」
    41 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:26:49.64 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-206)
    僧侶「お二人とも、薪は……って」

    勇者「おー、僧侶さん。ちょっと一本試合をするから、待っててくれ」

    僧侶「だ、ダメです! 勇者様! その方は大事なお客人なんですよっ」

    貴族「そ、僧侶さん……なに、このような腑抜けに遅れは取りません」

    僧侶「ダメですー!」ブン

    勇者「うわっ、洗濯桶か」

    貴族「おうっ」ゴン

    僧侶「きゃー!」

    勇者「僧侶さんが本気を出していたら死んでいたな」
    42 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:27:20.70 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-140)
    僧侶「もう、お二人とも、はしゃぎすぎです! 貴族さんは気絶してしまうし」プンプン

    勇者「いや、それは僧侶さんが……」

    「……」ジーッ

    勇者「お、おう。どうした」

    「弱そう」

    勇者「おい、くそがき」

    「逃げろーっ」タタタッ

    勇者「……教育がなっていないんじゃないですか? 僧侶さん」

    僧侶「い、いえ、どの子も、寂しいだけかと」
    43 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:27:50.57 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-199)
    僧侶「そ、そういえば、肝心なことを聞き忘れていましたね」

    勇者「なんでしたっけ」

    僧侶「その、勇者様は、どうしてこちらに?」

    勇者「あ、あー……」

    勇者(仕事を求めてとか言うべきか)

    僧侶「私のことでしたら、お気になさらずに」

    勇者「いや、僧侶さんに、相談したいことは、あったんですけど」

    僧侶「まあ、何かしら」

    勇者「でも、あの貴族とかもいるんだったら、特に心配はないですかね」

    僧侶「よろしいのですか?」

    勇者「ええまあ。困ったことがあったら、言ってくださいよ」

    僧侶「え、ええ」
    44 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:28:30.48 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-228)
    帰り際。

    勇者「参ったな。この調子だと、仕事を見つけるなんて出来そうもないぜ」

    貴族「……待て!」

    勇者「……なんだよ」

    貴族「貴様に一つだけ言っておきたい」

    勇者「手短にしてくれないか」

    貴族「もし、私が蜂起したとき、国王に味方しないでほしいのだ」

    勇者「いや、俺もあのおっさんに味方したりはしないけど」

    貴族「しかし、わが国王と貴様の国の王は友人関係にある。そしてそこには貴様の母上殿も、いる」

    勇者「……母さんを人質にする可能性もあるってことか?」

    貴族「そうだ。まあ、戦争が長引けば、の話だが」
    45 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:28:59.72 ID:Ccd+oFHRo (+93,+30,-210)
    勇者「バカらしい、仮にも英雄の家族をそんな風に扱うかね」

    貴族「どうかな。我が家も建国からの名門であるが、いまやないがしろにされつつある」

    勇者「……あっ、それより、俺を雇うとかってのはどうよ!?」

    貴族「はぁ?」

    勇者「いやあ、いま、仕事を探しててさ」

    貴族「確かに、救世主が我が方についたとなれば、断然有利だが」

    勇者「だろ? まあ、世界を救う次が、反体制軍ってのも格好悪いかもしれんが」

    貴族「……いや、しかしな。貴様はこの国に骨を埋めてくれるのか?」

    勇者「え?」
    46 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:29:46.20 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-244)
    貴族「王政の改革などと言っても、戦乱の後には保守派との長い地味な政治対決が待っている」

    勇者「そ、それは任せるけどさ」

    貴族「つまり、貴様は戦が終われば離れてしまうのだろう?」

    勇者「……まあ」

    貴族「貴様が我が方に入れば、それは反体制の核になる。しかし、長い政治の戦いで核が抜けては何の意味もないのだ」

    勇者「えーっと……」

    貴族「国を変えるのに英雄はいらないのだ。僧侶さんのような人こそが、求められる」

    勇者「お前、俺をdisりやがって」

    貴族「申し出は、感謝する」ペコ

    勇者(いや、感謝より仕事くれよ)
    47 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:30:15.96 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-99)
    「あっ、弱そうなやつ!」

    勇者「ああん?」

    「もう帰るの?」

    勇者「そうだよ。ここに俺の居場所はなさそうだからな」

    「……弱いのに無理するから」

    勇者「弱くねぇよ! 俺は世界を救ったんだよ!」

    「大人は口だけだから」

    勇者「てめぇ……」

    ―――ハハハッ 

    「!」

    勇者「なんだぁ?」

    「隠れて、隠れて」

    勇者「おい、ちょっと」
    48 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:30:44.57 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-266)
    兵士A「こんなところに孤児院なんて作ったのか」

    兵士B「元勇者の一行らしいぜ」

    兵士C「ケッ、いけすかねぇな。大体、勝手に死んだ連中のガキを集めてどうしようってんだ」

    兵士A「それがな、どうも反王政派の大物が出入りしてるんだってよ」

    兵士B「じゃあ、テロリストのアジトか!」

    兵士C「テロリストの養成所ってわけだな……」

    兵士A「なに、そのうち……」

    兵士B「そういや、元勇者パーティーの戦士が……」

    兵士C「マジか? 隊長に……」


    「……」

    勇者「おい、苦しいぞ」

    「も、もういいよ」
    49 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:31:24.40 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-141)
    勇者「なんだってんだ、あいつら。僧侶さんをこき下ろしやがって」

    「あいつら、私のお父さんが助けを呼んだのに、助けてくれなかったんだ」

    勇者「話が見えん」

    「だから、魔物が来ても、村を助けてくれなかったの」

    勇者「ふーん、そんなやつらだったのか」

    「私も、早くこんな国出て行きたい……」

    勇者「じゃあ、出ちゃえばいいじゃん」

    「ダメ、弱いから」

    勇者「だったら、強くなれや」

    「弱いくせにえらそうだよ?」

    勇者「俺は強いの!」
    50 : ◆WPwc2p - 2012/01/24(火) 22:32:02.56 ID:Ccd+oFHRo (+95,+30,-238)
    故郷。

    勇者「くそっ、どいつもこいつも役立たずだな! まあ、俺が一番の役立たずって説もあるが」

    勇者「ん、人だかりだな」

    ざわざわ、ざわざわ

    勇者「どうかしたんですか?」

    村人「あ、勇者様! いやあ、実は、王様が魔物がいた土地に探検隊を出そうと」

    勇者「ほ~……」

    村人「なんでも、商人やら富豪やらに金を出させて、隊を作るって話ですよ」

    勇者「た、探検隊かー。冒険なら得意だったし、俺にぴったりじゃん」

    村人「あ、そういえば、その企画立案に、魔法使いさんも関わっていると」

    勇者「魔法使い?」
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