元スレ提督「バンドがしたぁい!」
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351 = 1 :
ジャンジャンギャー!ジャンジャンギャー!
舞風「んー?ギターの音…なんか聞いたことあるなーこの曲」
早霜「こっちから聞こえるわね」
舞風「ちょっと行ってみよっか」
早霜「ええ」
………屋根のついた中庭
舞風「ここかな?」
早霜「そうね…誰かしらあの人たち。海外艦の方?…あの人たちが弾いてたみたいだけど」
352 = 1 :
アイオワ「だから違うって!!Jimiの弾くFoxey Ladyはこうよ!!」E:FenderUSA Stratocaster
ビスマルク「原曲通りに弾いたって何の意味もないわよ!!その時の情熱に身を委ねないとロックじゃないわ!!」E: Duesenberg Double Cat
アイオワ「情熱以前にアンタ下手くそなのよ!!いつになったら初心者卒業するわけ!?大体そのギター趣味悪すぎでしょ!!フェンダー使いなさいよフェンダー!!」
ビスマルク「は、はァー!?かわいいでしょこれ!!あんたデューセンバーグを知らないって…我が国が誇る世界最高峰のメーカーよ!!それを趣味が悪いですって!?」
ギャーギャー!
ガングート「…またか」ハァ…
舞風「えーっと、取り込み中…?」
353 = 1 :
ガングート「いや、そういう訳ではないのだが…さっきからこの二人、言い合いばっかりでな…仲が良いのか悪いのか…」E:FenderUSA Jazz Bass
早霜「あー…確かにいるわねそういう人たち…」
ガングート「話してみたら二人とも良いギタリストみたいだから良いセッションができると思ったんだが…」
アイオワ「大体あんた運指がなってないのよ!!いつになれば初心者卒業するわけ!?」
ビスマルク「うるさいわね!!アンタだって人のギターを悪趣味って言うその視野の狭さを…」
ギャーギャー!
ガング―ト「さっきからずっとこの調子でな…」ハァ…
舞風「こ、こりゃ大変そうだね…あ、誰かギター持ってきたよ」
早霜「ホントね…何あのギター…」
ガングート「ん、ギタリストか。ちょうどいいな」
354 = 1 :
ウォースパイト「Hello!! 失礼します。お二人とも、穏やかではないようですが…ギタリストなら口では無くギターで語り合うべきでは?」E:ZEMAITIS PEARL FRONT
ガングート「やあ、君もギターを弾くのか。よかったら一緒に私と…」
アイオワ&ビスマルク「「うわ…もっと趣味悪いの来た…」」
ガングート「…」
ウォースパイト「しゅっ…」カチン
ウォースパイト「あんたらねぇ、このギター幾らしたと思ってるのよ!!上品でかっこいいでしょ!!」ギャーギャー!
ガング―ト「無視された…」ズーン
舞風「まあまあ…」
早霜「また似たような人が増えたわね…」
355 = 1 :
アイオワ「いや…ゼマイティスはちょっと流石に…」チラッ
ビスマルク「なぁ…?」チラッ
ウォースパイト「何よ初対面の相手に向かって散々………こうなったら私が本場のUKロックってのを叩き込んで何も言えなくしてやるわ!覚悟しなさい!!」ジャラーン
アイオワ「何言ってるの!?ロックの本場はアメリカでしょ!!こっちこそ返り討ちにしてやるわ!!ビスマルク、シールド借りるわよ!!」ヒョイッ
ビスマルク「あっおい!私のシールド返せ!!」ギャーギャー!
キュイィィィン!!ギャッギョッギャァァァン!!マダマダヨ!!グヌヌ…
ガングート「…」ハァ…
舞風「に、賑やかだね…」アハハ
ガングート「あの人たちはウチの艦では無いんだが…自分の鎮守府の外でこんなに騒げる根性は見上げたものだな」
舞風「ん?ここの人じゃないんだあの人たち。お姉さんは?」
ガングート「私は正真正銘ココの戦艦だよ。さっきから居た二人は大湊の所属みたいだ。…いま来たゼマイティスの人は知らんが」
早霜「どうも初対面みたいだし…あの人は単冠かしらね」
舞風「ウチでは見たことないし多分そうだね」
356 = 1 :
ジャカジャァァン!!
ウォースパイト「な…なかなかやるじゃない」
アイオワ「あんたこそ…思ってたよりごくごくちょっぴりできるようね」
ウォースパイト「ねえ、あんた達がさっき弾いてたの…Jimi HendrixのFoxey Ladyよね?」
ビスマルク「ん、そうだけど…」
ウォースパイト「あの曲は私も覚えてるからちょっと一緒にやってみましょう?アンタならうまいこと私の引き立て役になってくれる気がするわ」
アイオワ「奇遇ね…私も同じこと思ってたのよ。アンタならハンバーガーについてくるポテトくらいにはなれるかもしれないし?」
ウォースパイト「はっ、下品な啖呵ね!!さっさとやるわよ!!」
ビスマルク「じゃあ手が空いたところで私が歌ってやろう。歌には自信があるんだ」フフン
ガングート「…ようやくマトモなセッションができそうだな」ホッ
ウォースパイト「Guitar Guitar Bass Vocal...Drumsが欲しいわね」
357 = 1 :
舞風「あ、じゃあ私ドラム叩こうか?さっきの曲なら知ってるし多分いけるよ!!」
早霜「えっ、大丈夫なの?ほとんど即興みたいなもんなのに」
舞風「多分あの曲は普通の8ビートをちょっとギターに合わせていじくればそれっぽくなるから…いけるいける!!」
ビスマルク「あら、あなたドラム叩けるのね」
舞風「最近始めたばっかだから期待はあんまりしないでね…よっと」ドムドムドム
ガングート「ん、そうだったのか。今ちょうどドラムを叩ける奴が出払っててな、助かるよ」ブゥゥゥン…
舞風「あんま期待しないでってば…それじゃあ行くよ!!ワン、ツー、スリー、フォー!!」チッチッチッチッ
358 = 1 :
-Foxey Lady-
Songs&lyrics:Jimi Hendrix
Play:Bismarck Гангут Iowa Warspite 舞風
タタドド!
ウォースパイト「…」ジャンジャンギャァァン!ジャンジャンギャァァン!!
アイオワ「…」ディィンテロリロ~
舞風(なんか足りない?ちょっと激しめにしてみよっと)ドンドンタドドタ
ガングート(シンバルとスネアがちょっと物足りないな。スラップでアクセントをつけるか)ベンベペベンペッ
早霜「あら、良い感じね」
夕雲「そうね…でもこの曲にはフルートでは入れる余地がないわ」
早霜「夕雲姉さん…?いつからそこに…」
夕雲「そんなことどうでもいいじゃない」
359 = 1 :
ビスマルク「You know…you are a cute little heartbreaker♪」E:Shure SM58
舞風(…!なんて力強いボーカル!!)ビリビリ!
ウォースパイト(存在感のある声ね…!でもこっちも負けないわよ!!)ギャィィンキロリロ
ガングート(おっと…ちょっと崩れたな。まあこういうのを支えるのも楽しいんだけどな)ベベボパッ
ビスマルク「And you know you’re… a sweet love maker♪」
ギュイィィン…キャラララ
早霜「すごいボーカル…」
夕雲「これは…すごい存在感ね。でもギターも頑張ってるわ」
360 = 1 :
ビスマルク「I wanna take you home!!」
舞風(ここで確か…ハイハットを開く!!)チンチンダンタン!
ガングート(ん、上げてきたな。ちょっと抑えるか)ベンベンボボ
キュィィン!!ギャギャギャッ!
ビスマルク「You’ve got to be all mine!!…all mine」
ガッ!!
ビスマルク「Ohhh…shit!! Foxey Lady…」
舞風「…」チッチッチッチッ
ギュゥィィン!!キロリラァ!!
361 = 1 :
夕雲「ん、集まってきたわね」
早霜「え…あ、ほんとだ。いろんな人たちが来たわね」
ザワザワザワ…
「お、ロック?イカしてんじゃん!!」
「ガングートさんやっぱベースうまいなぁ…」
「っていうかあのボーカルの人めっちゃかっこよくない!?」
ザワザワワイワイ…
舞風(うわー!…ちょっとだけやるつもりだったのになんかすごいギャラリーが…!)ドタタタ
ビスマルク(多くの人に見られて歌うのもなかなか気分が良いわね!!)
アイオワ(いい感じじゃない!!)ジャンジャン
ウォースパイト(盛り上がってきたわ!!)ギャァァン
………
362 = 1 :
………後日、横須賀鎮守府、プレハブ小屋のスタジオ
舞風「ってなことがあってねー」
雲龍「あら、じゃあ舞風ちゃんはもうライブデビューしたのね」
舞風「別にライブって程大規模じゃないけど…ほとんど即興だったから緊張したなぁ…」
長月「なんだそれ羨ましいぞ!!私も前段作戦に参加すればよかった…」
吹雪「その辺は司令官が決めるからまあ仕方ないよ…」
武蔵「でも、その分ならいけそうだな」
舞風「へ?何がー?」
363 = 1 :
武蔵「ライブについてだよ。向こうの艦隊にも音楽をやる艦娘がいるなら案外何とかなるんじゃないか?」
雲龍「…どういうこと?」
武蔵「そいつらにライブを一緒にやろうって誘うんだよ。向こうの提督も流石に自分の艦娘がやりたいって言ってることを無視はできないだろうさ」
早霜「あ、確かにそれいけるかもしれないわね」
武蔵「だろ?ちょっとそいつらと連絡とってみたらどうだ?」
舞風「あー…そういやあの人たちと連絡先交換するの忘れてたわ…」
武蔵「…そいつはやらかしたな」
舞風「ゴメンゴメン…またどうせ会うかなって思ってたから…」
武蔵「なら…私たちが今度幌筵に行ったときにどうにか探してみるか」
吹雪「そうですね。話を聞く限りでは目立つ人たちみたいですし…」
長月「なーなー、そろそろ合わせないか?」キュルル
雲龍「ん、そうね。話の続きはその後にしましょうか」
武蔵「そうだな。こっちはもう準備できたぞ」ブゥゥン
吹雪「こっちもオーケーです!!」ブゥゥン
舞風「りょうかーい。それじゃあ行くよ?ワン、ツー、スリー…」
ジャーンジャカッ…
………
364 = 1 :
というわけで若干短いですが以上。ちなみに>>1はUSロックよりUKロック派。
それではあとは用語解説を投下します。
365 = 1 :
用語解説
・FenderUSA Stratocaster
当SSにおけるアイオワの愛機。
アメリカ製のフェンダー・ストラトキャスター。ストラトといえば基本はコレを指す。
古今東西様々なギタリストが使用していて、ロックギターと言えば、Gibsonのレスポールと並んでコレ。
実はちょっと作りが雑なので>>1は国産のほうが好き。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/231222/
・Duesenberg Double Cat
ドイツの老舗メーカー、デューセンバーグのギター。当SSにおけるビスマルクの愛機。
かわいい見た目と実用的な音や機能が特徴。日本で使ってる人はほとんど見たことがないが、ストラトに良い感じに温かみを足した普通に「使える」音をしている。正直かなり良いギターだが高い(20万以上)。
http://shop.miyaji.co.jp/SHOP/ka-g-78348.html
・FenderUSA Jazz Bass
アメリカ製のフェンダー・ジャズベース。当SSにおけるガングートの愛機。
エレキベースといえば武蔵のプレシジョンベースと並んでコレ。ジャズベースとは言うが別にジャズ以外にも使える。
プレべに比べて繊細な音でスラップがよく乗り、ネックが細くて引きやすいのが特徴。プレべよりこっちのほうが使ってる人は多い。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/231254/
・ZEMAITIS PEARL FRONT
当SSにおけるウォースパイトの愛機。イギリス製。
最高クラスの厳選された木材と、過剰なまでの装飾が特徴な「ゼマティス・ギター」の白いほう。
コレと並ぶゼマティスの定番としてMETAL FRONTというのもある。
芸術品のような美しい装飾に目が行きがちだが、かなり良い木材を使っているので音もかなり良い。
レスポールシェイプだがレスポールとはまた違った音がする。
ちなみにだがギター界のロールス・ロイスとも称されるほど高価(普通に定価で100万行ったりする)なので、使ってる人はかなり少ない。その装飾は人によっては悪趣味だともいわれる。
http://rebel-guitars.com/1987-zemaitis-pearl-front/
366 = 1 :
・ロックの本場
基本的にはアメリカかイギリスを差す。メタルなんかは北欧も本場に入る。
しかし、どっちが本場という話については多人種文化という特殊な国民性を土台にしてロックを生み出し、ジミヘンやニルヴァーナなどの伝説的なミュージシャンを数多く輩出してきたアメリカか、ビートルズやエリック・クラプトンなどのロックを世界に広めたミュージシャンを輩出し、グラストンベリーのような大規模なフェスを開催しているイギリスかは人によって意見が分かれる。
・Jimi
言わずと知れたギターの神、Jimi Hendrixのこと。日本ではジミヘンって呼ばれることが多い。
ブルースを基調にしたエキセントリックな楽曲と、ギターを燃やしたりするなどの過激なステージパフォーマンスで数多くの伝説を生み出しており、今日まで全てのギタリストに敬愛される正真正銘のギターの神様。
エレキギター草創期のミュージシャンながらエレキギターの可能性を限界まで追求し続け、エレキギターを用いた数多くの奏法を生み出している。おそらく彼の影響を全く受けていないロックギタリストは一人もいないだろう。
代表曲「Purple Haze」「Foxey Lady」
・Foxey Lady
ジミヘンの曲の中でも特に人気が高い曲で、現在までロックの伝説として語り継がれている曲の一つである。
若い人の事情は知らないが、たぶん聞いたことない人いないんじゃないかな。
CD音源も確かに良いがライブでの奇想天外なギタープレイこそ見どころの曲である。
というかジミヘンの曲って全部そう。ちなみにセッションはしようとすると相当難しい曲なのでリアルでビスマルクたちの真似をすると痛い目に合う。
http://www.youtube.com/watch?v=_PVjcIO4MT4
367 = 1 :
以上です。ジミヘンは神。
余談ですがウォースパイトさんに持たせるギターをメタルフロントかパールフロントのどっちにするかは相当悩んだ。でもたぶん両方似合う。
368 :
乙
ビス子ちゃん裏で発音のダメ出しされてそう…
369 :
ビス子は歌うと声が変わるからなあ
乙
370 :
乙です。
とりあえずフルートで駆けつける夕雲姉さん流石です、てっきり誰かしら乱入するかと思ってたわ。
371 :
いうてギター3本にベースドラムとすでにだいぶやかましいからなぁ…
372 :
フラッシュモブ的に楽器持って何人も何人も集まってきたら本当にうるさそうだ
373 :
………数週間後、横須賀鎮守府
提督「悪いな。吹雪がいない分仕事を押し付けてしまった」カリカリ
早霜「いえ…この程度ならいくらでも申し付けください」カリカリ
提督「助かるよ。はぁ、作戦中ってのになんて書類の多さだ…ん、電話か」RRRRR!!
早霜「私が取りますね」
提督「おう、頼んだ」
早霜「はい、こちら横須賀鎮守府執務室です…はい…はい…」ガチャ
早霜「…」
提督「…」カリカリ
早霜「はい、承りました。確認してから折り返しまたご連絡させていただきますので…」
早霜「はい、失礼します」ガチャ
提督「誰からだ?」
早霜「海軍兵学校からです。なんでも講演の依頼とかで…」
提督「はぁ?」
374 = 1 :
提督「海軍兵学校からの講演の依頼だと?」
早霜「はい。なんでも生徒からの熱烈な希望により、ぜひとも提督に、艦隊指揮と実戦についての講演を…とのことです」
提督「日時は?」
早霜「三日後だそうです」
提督「急だなオイ…一応大規模作戦中なんだけどな…まあ、吹雪たち本隊はもう前線に派遣したから良いか」
早霜「それでは…出席を?」
提督「そうだな、五年ぶりに母校の姿ってやつを拝んでやるとするよ。早霜もついてこい、護衛の代わりだ」
早霜「はい、かしこまりました」
375 = 1 :
………三日後、海軍兵学校
提督「以上をもって、私の講演とさせていただく!横須賀鎮守府提督、神津ヒロシ海軍大将!!」
パチパチパチパチ…ザワザワザワ…
提督「ふぅ…こんなもんか」
早霜「ふふふ、良い講演でしたよ」
提督「良いものか、1時間で考えたんだぞアレ」
早霜「…そんなに適当だったんですか」
提督「なに、バレなければ良い」
376 = 1 :
担任「へーそうだったんだー…聞いちゃったぜー」ニヤニヤ
提督「うわっ!!この声は…新島教官!?」ビクッ
担任「ようヒロシ!久しぶりだな!!」
提督「お、お久しぶりです…」
早霜「…提督?この方は?」
提督「…学生だった頃、俺の担任をしていた新島教官だ」
担任「おう、よろしくな…まあヒロシ、ここじゃあ何だ、ちょっと場所変えるぞ」
提督「は、はい」
377 = 1 :
………応接室
担任「ぶはっはっはっは!!お前本当にアレ一時間しかかけてねえのかよ!!」ゲラゲラ
提督「ええ…考えてみればそんなに話す内容もなかったですし…」
担任「それ聞いたら生徒が泣くぞ?結構生徒が楽しみにしてたんだからな?」
提督「そうなんですか?」
担任「おう。お前やたらと生徒から人気だからな。「横須賀の軍神」やら「東郷平八郎以来の天才」やら…仰々しい渾名で神のごとく崇められてるんだぜ?笑っちまうよなぁ」
提督「ふっ、冗談でしょう?ちょっと面白いですね」クスクス
担任「だろ?お前学生時代はギターばっか弾いてたのにな」
早霜「あ、やっぱりそうなんですね」
担任「やっぱりって…お前、今でも音楽やってんのか?」
提督「はい…まあ少しは」
担任「お前らしいというかなんというか…ま、機会があったらまた聞かせてくれよ?俺、お前の歌は結構好きだったんだ」
提督「そうだったんですか?学生時代は、そんなこと一言も…」
担任「ったりめーだ。甘やかしてたらお前今頃バンドマンになってただろうが」
提督「ははは、そりゃそうかもしれませんね」
378 = 1 :
担任「で、お前この後どうすんの?すぐ帰るわけでもねえだろ?学校回ってくか?」
提督「良いんですか?」
担任「卒業生だっつーのに断る理由もねえだろ。立派な護衛もいるみてえだしな」
早霜「…」ペコリ
提督「ははは、それではお言葉に甘えさせていただきます」
担任「あ、待った」
提督「どうしました?」
担任「女子寮だけには行くなよ?」
提督「行きませんよ!!」
379 = 1 :
………廊下
提督「…」テクテク
早霜「あの…さっきから歩いてばかりですが、どちらに行かれるのですか?」
提督「んー、とりあえずは寮かな」
早霜「寮…校舎は回られないのですか?」
提督「うーん…俺がここで青春の大部分を過ごしたのはあの寮の防音室だからな。別にそれ以外はこれと言って…」
早霜「寮に防音室がついているのですね。昔の兵学校では考えられませんが…」
提督「あー、違うんだ」
早霜「?」
提督「使われてない地下室を改造して自分たちで作ったんだよ。材料とかいろんなところからくすねてきてな。取り壊されたりしてねえかなあそこ…」
早霜「はぁ…楽しそうですが…それ大丈夫だったんですか?」
提督「まーこっぴどく叱られたな。それでもなぜか取り壊されはしなかったよ…ん、何だこの音」…ドドンタドドタン
早霜「バンドの音ですかね…?」
提督「校内ではこの類の演奏は固く禁じられていたはずだが…ちょっと行ってみるか」
380 = 1 :
………端の教室
ギャーギャッギャッ…ジャカジャーン!
提督「ここみたいだな」ガラガラ
早霜「と、戸惑いなく入りますね。…失礼します」
ドラム「…」ドドタンドドタン
ギター「…」ギュギャギョーン
ベース「…」ベベベンボ
ボーカル「~!」
早霜「気づいてない…」
提督「あんだけでかい音で演奏してりゃあな。後輩共め、粗削りだが良い演奏をするじゃないか」
381 = 1 :
ジャァァァン!!!
ボーカル「うし、良い感じじゃん!!あとはこのまま完成度を高めていって…」
ドラム「うーん…ギターはもうちょっとベース上げたほうがいいんじゃないか」
ギター「そうね、ちょっと軽い感じが…ってウワワワー!!」ビクッ
ベース「どうした?ってうわっ!!こ、神津大将!!」ビクッ
ボーカル「…は?ってうわっ、マジだ!!し、失礼しました」ビシッ
提督「うむ、苦しゅうない」ビシッ
早霜「何やってんですか…」
提督「一回言ってみたかったんだよコレ」
382 = 1 :
ボーカル「あの…どうしてここに?」
提督「ん?バンドの音が聞こえたからな。俺がいた頃はこういう類の演奏は校内では禁止だったから…ちょっと気になったんだ」
ボーカル「あーなるほど。自分が入学した頃にはもうこういう活動は認められてましたよ」
提督「何…?そうなのか?」
ギター「はい、今五回生の三上サンって先輩が頑張ってくれたんすよ」
ベース「そうそう。なんでも三上サンの4つ上にデビュー寸前まで行ったすげえ先輩がいたとかで、その先輩に触発されて学校相手に色々やったらしーっすね。俺たちが入学する前の話なんで詳しくは知りませんが」
提督「三上!?あの小僧か!!そうか、あいつが…」
ボーカル「あ、三上さんと知り合いなんですか?まあ、それでこの教室を活動場所として使わしてもらえるようになったんですよ。ココ、昔は吹奏楽とかやってた教室みたいですね」
早霜「ほんとね。古い賞状とかが飾ってあるわ」
賞状「全日本サクソフォンコンクール 最優秀賞」
提督「本当だ…こんな場所があったのか。知らなかったぞ」
383 = 1 :
ベース「ここ、三上サンが使用許可とるまでは開かずの教室で、何があるか分からなかったらしいっすね。あ、そういや大将、三上サンと知り合いなんすか?」
提督「ああ。俺が五回生の時にあいつが一回生だったか。すぐ卒業しちまったから一年しか一緒じゃなかったけどな」
ベース「え?じゃあもしかして例の先輩と同期っすか?あのデビュー寸前までいったっていう…」
ボーカル「そういや寮の地下の防音室作ったのその先輩なんだろ?ヤバいよな」
提督「さぁ…いったい誰だろうな」シレッ
早霜「そうですね…」
384 = 1 :
提督「そういや寮の地下防音室ってまだあるのか」
ギター「あ、はい。まだ男子寮の地下にありますよ。三上サンもそこにいるんじゃないかな」
提督「そうか、それじゃあちょっと行ってみるかな」
ボーカル「自分たちもついていきましょうか?」
提督「いや、よく場所も覚えてるし、護衛の艦娘もついてるから大丈夫だよ。練習を邪魔して済まなかったな」
ベース「あ、いや、とんでもねえっす。お気をつけてください」
385 = 1 :
………男子寮、地下防音室
提督「ここだ」
重厚な扉「」デデン
早霜「鉄扉ですか…?ずいぶん威圧的ですね」
提督「防音といえば鉄扉っていう安易な考えで設置したんだが…これが重くてな。もう少し軽い素材にしておけばよかったよ。よっと」ギィィ
キャラリロリィン…キャキャッギャッ
三回生「…あ、三上サン、誰か来ましたよ」ベベボボッ
後輩「…ん?誰だ?」ギャギャッキャラッ…キュルル
提督「よう」ヌッ
早霜「…お邪魔します」
後輩「えっ…うわっ!!ヒ、ヒロシ先輩!!」
386 = 1 :
………
後輩「いやぁ…久しぶりっすねえ!!まさか本当に来てくれるとは思いませんでしたよ!!」
三回生「よ…横須賀の軍神…本物だ…」プルプル
提督「俺本当にそんなあだ名で呼ばれてたのかよ…」
後輩「勿論っすよ!!俺が広めてやりましたから!!」グッ
提督「何やってんだ!」ポカリ
後輩「あいて!」
三回生「でも神津大将といえば、戦争の形勢を一人で逆転させた英雄として尊敬されていますよ?少なくとも名前を知らない生徒は一人もいません」
提督「大袈裟だなオイ…俺は何もしてねえのによ。頑張ったのは俺じゃなくて艦隊の皆のはずだぞ?」
早霜「提督、それはご謙遜ですよ」クスクス
後輩「ほら!艦娘にもこう言われてるじゃないっすか!!」
早霜「提督は本当に真面目に頑張ってくれていますから。ちょっと前までは仕事以外のことには興味の無い堅物だと思われてたんですよ?」
後輩「え?マジすか?あの縦横無尽なヒロシさんが?」
提督「俺も大人になったんだよ…そういうことにしといてくれ」
387 = 1 :
提督「そういや三上も頑張ったみたいじゃないか。校内でのバンド練習が許可されるなんてな、思ってもいなかったよ」
後輩「そりゃあ…新歓で先輩のギンッギンなライブ聞いてからもう俺はロックの虜っすからね。自分の後に入学する後輩たちにもこういう音楽に触れれる場を作ってやりたいって思って…そっからは結構頑張ったんすよ?いろんなコンテスト出て実績作ったりして」
提督「ほー、コンテストとかにも出てたのか。俺は単純にハコ回るだけでそういうのには興味がなかったからな」
三回生「えーっと先輩、水を差すようで悪いんですけど、神津大将も音楽をされていたんですか…?」
後輩「おまっ…ヒロシさんがこの防音室も作ったんだぞ!?いくつか大手のレーベルから声も掛かってたんだからな!!」
提督「…」シレッ
三回生「え、じゃあ神津大将が例の…」
後輩「そういうことだよ!!確かここらへんに…あったあった!!」ゴソゴソ…
早霜「何かしら?」
388 = 1 :
後輩「これ!センパイが受けたインタビューが載ってる号のロッキンっすよ!!「次世代アーティスト特集!」とかで!!」バッ
雑誌「実力は若手ナンバーワン!インディーズロックバンド、「Groove Barrett」Vo.Hiro 衝撃の二万字インタビュー!!」
提督「うわ懐かしいなぁコレ…よく取っといてたなコレ」
三回生「マジだ…マジでロキノンに載ってる…すげえ…」
早霜「提督…この写真と比べると若干老けましたか?」
提督「言うな。少し気にしてるんだ」
389 = 1 :
三回生「でも…こんなに売れてんならどうしてデビューしなかったんです?」
後輩「その理由がまたかっこいいんだよ!!このインタビューの後ろのほう見てみろよ!!」
――――ワンマンもSOLD OUTになるほど人気も絶頂の「Groove Barrett」ですが、デビューはしないんですか?
Hiro「いや、デビューは全く考えてないですね。ほら、自分って海兵(海軍兵学校)の生徒じゃないですか。やっぱ国を守りたくて海兵に入ったみたいなところあるんで、それを投げてまでミュージシャンやろうとは思わないんです。自分の仕事はあくまで国を守ることですから。あ、でも別にプロのミュージシャンにまったく興味がないわけじゃないですよ?もし戦争を終わらせることができたなら、そん時はプロを目指すかもしれないっすね(笑)」
三回生「か…かっけえ」プルプル
後輩「だろ!?だろ!?」
早霜「提督…感動しました…」
提督「帰りてえ…中学時代の黒歴史ノート見せられてる気分だ…」
390 = 1 :
三回生「俺…実はこのまま海兵やめて音楽でプロ目指そうと思ってたんですけど…この記事見ると揺れるなぁ…」
提督「うーん…まあ別に止めはしねえけどな。軍学校やめてプロになったやつも知り合いにいるし…」
後輩「え!?田中さんたち誰かプロになったんっすか!?」」
提督「あ、いや、あいつらじゃなくてな、陸軍士官学校のほうだ。俺とタメの横澤リョウってヤツで…昔よく対バンしたんだが…」
三回生「えっ…まさかあの「OLEN」の横澤リョウ…!?大人気バンドじゃないですか!!」
後輩「マジで!?あのOLENのボーカルと知り合いだったんすか先輩!?」
提督「ん、ああそいつだそいつ。あいつ今人気出たのか?最近は音楽情報チェックして無くてな」
後輩「今の若手の中では一番勢いあるバンドっすよ!!この間のシングルがオリコンで週間6位とかでしたよ!!」
三回生「俺ワンマンのチケット取れなかった…」
提督「マジか。すげえなあいつ」
391 = 1 :
三回生「それにしても…横澤リョウって陸士の出身だったんですね」
提督「おう。元々俺とは違ってあんまり国を守るって意思はなかったみたいでな、単純に学費がかからなくて安定してるから軍人を目指したらしい。でも卒業の直前に大手レーベルから声がかかって、それで退学してそのままデビューしてるはずだ」
後輩「へー…」
提督「まあ、だから別にそこまで強く軍人になりたいって思いがなければプロを目指してみるのもアリだと思うぜ。腕に自信があればだけどな」
三回生「そうか…もうちょっと悩んでみます」
提督「おう、時間はあるんだしたっぷり悩めよ」
392 = 1 :
早霜「あ、そういえば三上さん…これ借りていいですか?うちの鎮守府の子たちにも提督のインタビューを見せたくて」スッ
提督が載ってる号のロッキン「」デデン
提督「ダメだ。絶対ダメ。」
後輩「勿論良いっすよ!!見せてやってください!!」
早霜「ありがとうございます!」パァァ
提督「おい」
393 = 1 :
………一方その頃、某海域
吹雪「当たってくださぁい!!」バシュン!!
長月「食らえぇぇぇぇ!!」バシュン!!
ドォォン!!!
中間棲姫「ソンナ……」撃沈
長月「よし、ついにやったか!!」
吹雪「ふぅ…しぶとかったね」
武蔵「そうだな…まさか夜戦までもつれ込むとは思わなかったぞ」
ガングート「君たち、よくやったな。母港までは私が先導するからついてきてくれ」スッ
吹雪「あ、はい。ありがとうございます。…えーっと、あなたは?」
ガングート「幌筵所属、決戦支援艦隊旗艦のガングートだ。行くぞ」
長月「…ん?日本の軍艦じゃないのか。おい武蔵、こいつ」
武蔵「ああ。もしかしたら舞風が言っていた奴かもしれんな」
394 = 1 :
………幌筵泊地
ガングート「じゃあ、君たちが舞風の言っていた一緒にバンドを組んでいた人たちなのか」
武蔵「ああ。うちのが世話になったみたいだな」
ガングート「いやいや、少し粗いが良いドラマーだったよ」
吹雪「それで…一緒にギターを弾いてたって人たちは?」
ガングート「ビスマルク達か。あいつらなら今はここにはいないが…どうした、何か用でもあるのか」
長月「用というか…かくかくしかじかでな…」
395 = 1 :
………
ガングート「なるほどな、奴らと一緒にライブをやれば大湊の提督も納得してくれるのではないかということか」
長月「ああ」
ガングート「そういうことならあいつらに言っておこう。あいつらの連絡先、いるか?」
武蔵「貰えると助かる。うちの舞風のも渡そう」
ガングート「…面倒くさいからlineでグループを作るぞ。後で舞風たちも招待してくれ」
長月「了解だ」
396 = 1 :
本日の更新は以上。何か寂しいと思ったら今回はセッションの描写がなかったのね。次回は入れたい。
ちなみに今回の投下で出たバンド名と人物はすべて架空です。
397 = 1 :
用語解説
・自作の防音室
たまに作っている強者がいる。
自宅に防音室がほしいときは、よほどDIYに自信がない限りは普通にYAMAHAの簡易防音室的なのを買うといいだろう。ちょっと頑張れば手が届く程度の値段。
地下室を業者さんに頼んで防音室に改装している人もいるが、ここまでしようとするとまとまった貯金がないとしんどい。
398 = 1 :
すまんミスって途中で投下してた
用語解説
・自作の防音室
たまに作っている強者がいる。
自宅に防音室がほしいときは、よほどDIYに自信がない限りは普通にYAMAHAの簡易防音室的なのを買うといいだろう。ちょっと頑張れば手が届く程度の値段。
地下室を業者さんに頼んで防音室に改装している人もいるが、ここまでしようとするとまとまった貯金がないとしんどい。
・ロッキン、ロキノン
貴重な邦楽雑誌、ROCKIN'ON JAPANのこと。若者がよく読んでいる印象。
ロックだけじゃなく割と幅広いジャンルのミュージシャンを扱っている。
現在の音楽業界を支える重要な一端で、ブームを自ら創出したりしている。
また、大規模野外フェス、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を開催したりもしている。
・ワンマン
一つのバンドがライブハウスを貸し切って行うワンマンライブのこと。
かなり人気がないと開催できないし、人気がないうちにやろうとしてもまずハコから許可が出ない。
これをできるかどうかが人気かどうかの判断の一つの基準になる。プロ以外でワンマンをソールドアウトできるバンドはかなり人気。
・インディーズ
日本レコード協会に所属しているレーベル以外からCDを出しているバンドのこと。つまり、言うところのメジャーデビュー前。
メジャーデビューしていないからと言って売れてないバンドだけなわけではない。
メジャーの方向性を嫌って自分の個性を出すためにインディーズで頑張っているミュージシャンも大勢いる。
アメリカではまた意味が違うが、このSSでは基本的にこの意味で扱う。
・オリコン
Mステとかで毎週発表しているアレ。たいていのバンドはまずは圏内(200位以内)に入るのが目標となる。
ちなみにV系とかのバンドはメンバーごとに固定ファンがついており、ライブでファンがそれぞれのメンバーのグッズを買う、という商売をしている。
そういう稼ぎ方をしているバンドはコレの順位が高くなくても普通に食えているバンドもある。
399 = 1 :
以上。
ちなみに自分のインタビューとかの類は後で見返すとめちゃくちゃ恥ずかしい。音楽雑誌ってなんであんな恥ずかしい書き方するんだろうね
400 :
乙です。
ん?てことは>>1もインタビュー経験者?色々出来ると言ってたからそれなりなのかとは思ってたが。
しかし全て避けて全て当てるを地で行くこの古参の変態達の夜戦……想像したくもないな……。
みんなの評価 :
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