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    元スレ利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」

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    351 = 1 :

    提督「──さて、そろそろ寝るか利根」

    利根「…………」

    提督「……ん?」

    利根「……提督よ、我輩は少し星を見てくる。先に寝ておいてくれぬか」スッ

    提督「珍しいな。どうしたんだ?」

    利根「我輩もそういう気分というものがあるのじゃ」トコトコ

    提督「……ふむ。暗いから気を付けるんだぞ」

    利根「うむ……」トコトコ

    利根「…………」トコトコ

    利根「……………………」トコトコ

    利根「…………」チラ

    利根「……そりゃあ、来ぬよな」

    利根「砂は……うむ、乾いておる」コロン

    利根「…………はぁ……」

    利根「我輩、何かおかしいぞ……。いや、普通ではないのはずっと前から分かっておるのじゃが……なんであの三人が提督とベタベタしておると、胸がチクチクするのじゃ」

    利根「トゲなぞ無いのは何回も確認しておるし、むしろ何か体内にトゲがあるような感じじゃし……何かの病気なのじゃろうか……」

    利根「……まあ、こんな島で何年も居れば病気の一つや二つなってもおかしくはないかのう?」

    利根「はぁ……。なんじゃろうかのう……月と星が、やたらと寂しがっておるように見える。……いや、寂しいと思ってるのは我輩かの?」

    利根「提督……」

    利根「……………………」

    352 = 1 :

    ──トコトコ

    利根「……む?」

    「あ、居た。こんな所に居たんだね」

    利根「響? どうしたのじゃ?」

    「二人と一緒に寝ようと思って二人の部屋に行ったんだけど、利根さんが外に行ったって言ってたから来たんだ」

    利根「ふむ。……金剛と瑞鶴はどうしたのじゃ?」

    「二人は私達の部屋だよ。流石に、一人は子供じゃないとベッドに三人は入れないからね」

    利根「なるほどのう」

    「──利根さんは星が分かるの?」

    利根「ん? 星座の事ならば我輩はあまり分からぬのう。ただぼんやりと見ていただけじゃ」

    「そっか」コロン

    利根「砂が付いてしまうぞ」

    「説得力が皆無だね」

    利根「む。そういえば我輩も寝転がっておったのじゃった」

    「……時々思うけれど、利根さんって不思議だよね」

    利根「そうじゃのう。お主達がここへ来てから自分が普通ではないと改めて認識したのう」

    「それもあるけど、もっと別の何かだよ」

    利根「ふむ?」

    「なんというか、私と似てる気がする」

    利根「響と?」

    「うん。何が似てるのか良く分からないんだけどね」

    353 = 1 :

    利根「ふむう……言われてみれば、何か似ているような気もするのじゃが……」

    「利根さんもそう思う?」

    利根「んーむ。なんとなくなのじゃがのう。今言われて初めて気付いたくらいじゃし」

    「そっか」

    利根「ああそうじゃ。似ていると言えば、響に少し聞いてみたい事が出来たぞ」

    「私に? なんだい?」

    利根「響は胸がチクチクする事はあるかの? なんというか、身体の奥にトゲがあるような感じじゃ」

    「……無い、かな。今までそんな事は無かったよ」

    利根「うーむ……」

    「そんな痛みがあるんだ? ……そういえば、前にもそんな事があったよね?」

    利根「うむ。あの時と同じ痛みなのじゃが、今回は少しだけ違うのう」

    「どんな風に?」

    利根「前はすぐにチクチクが無くなったのじゃが、今回は全く消えぬ。多少治まったりする事はあるのじゃが、ふとした拍子にチクチクが戻ってくるのじゃ」

    「……何かの病気?」

    利根「やはり響もそう思うかの? んーむ……じゃが、ここでは診察など出来ぬしのう……」

    「一回だけ戻ってみる?」

    利根「……横須賀の事を言っておるのならば嫌じゃ」

    「そっか……」

    利根「提督から聞いておると思うが、我輩は壊れておる」

    「…………」

    利根「本当ならば今すぐにでも沈んで、あの三人にお詫びを言いたいくらいじゃ。それに、他の皆にも会わせる顔も無い」

    354 = 1 :

    「……ねえ、少し思ってたんだけど良いかな」

    利根「うん?」

    「私と金剛さんと瑞鶴さんって、利根さんを命懸けで助けた三人と似てるの?」

    利根「……そうじゃのう。違いはある。金剛はもっと元気が一杯じゃった。事あるごとに提督提督と言って、笑顔を振舞っていたのう」

    「へぇ。そっちの金剛さんはそんな感じだったんだ」

    利根「うむ。……ああ、そういえば今日の金剛はどことなく似ておったのう」

    「そうなの?」

    利根「どことなく、じゃがな」

    「ふぅん? ──瑞鶴さんはどう?」

    利根「瑞鶴は金剛と逆じゃな。こっちの瑞鶴の方が元気が良いように思う。いや、本当に少ししか違わぬのじゃが」

    「どういう事?」

    利根「提督はお仕置きで天井から吊るすじゃろう?」

    「うん」

    利根「あれが怖くて怖くて仕方が無かったらしくてのう。子犬のように絶対服従じゃったよ」

    「……子犬?」

    利根「うむ。普段はこっちの瑞鶴と変わらんのじゃが、叱られそうになった時はビクビクと身体を震えさせていてのう。──ああそうじゃ。そういう時だけ臆病になっていたんじゃ」

    「……あんまり、そっちの瑞鶴さんと変わらないような気がする」

    利根「ほう、そうなのかの?」

    「うん。向こうの鎮守府でも、瑞鶴さんって怒られてる時はビクビクしてたし。ほら、提督は私達を叱る事がほとんど無いから分からないだけだと思うよ」

    利根「なるほどのう」

    「それで、私はどうなのかな」

    利根「響は……そうじゃのう。本当に似ておる」

    「そうなの?」

    利根「うむ。強いて言うならば、お主よりももっと積極的だったように思う。提督に影響をされたのか、頑固でのう。自分が納得できる反論や代替案がなければ頑なに首を横に振っておった。今日、我輩がマッサージをし貰っていた時のお主がいつもの響じゃった」

    「艦娘はどこも似たようなのかもしれないね」

    利根「そうじゃのう。基本的な事は同じで、後は環境の違いによるものだけなのじゃろう」

    355 = 1 :

    「じゃあ、考えてる事も似てるかもね」

    利根「かもしれぬのう」

    「……一つ、良いかな」

    利根「うん?」

    「少し嫌な事を聞くから、嫌だと思ったら正直に言ってね」

    利根「うむ」

    「もし、私が利根さんを生き延びさせる為に囮となったら、今の利根さんを見て私は……」

    利根「…………」

    「…………」

    利根「……構わぬぞ」

    「ん。……一人だけでも生き残ってくれたのなら、逃げてって言った甲斐があった。けど、今こうして死んだも同然の事をするのなら、何の為に私は沈んだのか分からなくなる」

    利根「……………………厳しいのう……」

    「たまに言われるよ」

    利根「……そうか。我輩、今は死んだも同然の事をしているように見えるのか」

    「見えるね。死人はそこで止まる。生きた者は未来へ向かって進み続ける。……これは私達の元司令官の言った言葉から思った事なんだけどね」

    利根「……なるほどのう。生きているのにも関わらず、過去に捕らわれて前に進まないから死んだも同然、か」

    「うん。提督も同じだよね」

    利根「割と心にくる言葉じゃのう……何も言い返せぬ……」

    「…………」

    利根「……のう、響。どういう言葉でそれを思い付いたのじゃ?」

    「死んだ艦娘は止まって沈む。お前らは動いているから生きている。止まるまで撃ち続けろ……だったかな」

    利根「なんじゃそれは……」

    「つまるところ、そういう司令官だよ」

    356 = 1 :

    利根「…………」ムクリ

    「?」

    利根「お主も、苦労したんじゃのう……」ナデナデ

    「ん。くすぐったい」

    利根「嫌だったかの」

    「ううん。好きだよ。頭を撫でてくれるのって、好き」

    利根「うむ。我輩も撫でられるのは好きじゃ」ナデナデ

    「似てるね」

    利根「ハハ。そうじゃのう」ナデナデ

    利根「……のう、響よ」

    「なに?」

    利根「響は、提督の事をどう思っておる?」

    「唐突だね。──んっと、なんというか……お父さんみたい、かな」

    利根「ふむ。父親とな?」

    「ただなんとなくだけどね」

    利根「父親か……」

    利根(……ああ、なんとなく父親に甘える娘にも見えない事もなかったのう)

    「? どうしたの?」

    利根「いや、確かにそれっぽいと思っただけじゃ」

    「そっか」

    利根「さて、そろそろ寝るとするかのう」スッ

    「うん、そうしよっか」スッ

    利根「ところで、提督が父親で響が娘とするならば、今日は我輩が母親になるのかの?」

    「利根さんは母親っていうよりもお姉ちゃんって感じだよね」

    利根「むう……そうか」

    利根(……まあ、それも悪くないかのう?)

    利根「む?」

    「?」

    利根「ああいやすまぬ。なんでもない」

    「…………?」

    利根(……何が悪くないのじゃ?)

    ……………………
    …………
    ……

    357 = 1 :

    ちょっと用事が出来たので今回はここまでです。また明日……に来れるかは分からないですけど、またいつかきますね。
    次は深海棲艦を出す予定。

    360 :

    おつ

    ぶっちゃけ、お前らって艦これは「強くするゲーム」と「育てるゲーム」2択ならどっちだと考えてる?
    前者はたぶん大艦隊率いてるほうの提督に近いんだろうね。後者は……少なくともここの提督ではないな

    俺?……ゴーヤァ!オリョクル行くぞォ!

    361 :

    扶桑山城との愛を育てるゲーム

    362 :

    男女間のアレコレに興味はあるのにいつまで経っても恋愛事に疎いまま足柄さんと縮まりそうで縮まらない距離感を保ちながらコミュニケーションをとり続けるゲームだろ?

    363 :

    >>360
    キモ

    364 :

    提督「さて利根。そろそろ戻る時間じゃないか?」

    利根「ぐぬぬぬぬ……」

    提督「釣果は私が七匹と鋼材の入ったドラム缶。利根が四匹。鋼材を抜いても私の勝ちはほぼ確定だな」

    利根「ま、まだじゃ……! これから連続で釣れるかもしれんではないか……!」

    提督「今まで一回でもそんな事があったか」

    利根「うぐっ……」

    提督「さて、そろそろ片付けだ」

    利根「む、むぅぅ……────おお?」ピクン

    提督「む」

    利根「きたぞ! せやぁ!!」グイッ

    利根「……………………」

    提督「餌だけ食われたようだな」

    利根「むがー! 早かったかぁ!!」

    提督「流石に焦り過ぎたな。釣りはじっくりとやるものだ」

    利根「うーむ……。じゃが、待ち過ぎてもダメじゃし……むぅ……」

    提督「お前はその時によって釣れる釣れないが激しいな。未だにタイミングが掴めないか?」

    利根「食い付き方で変えるなど面倒で仕方が無くてのう……」

    提督「それが釣りというものだ。さて、帰る準備を──」

    利根「む──」

    提督「…………あれは……見えるか、利根?」

    利根「……うむ。見えるぞ。どう見ても深海棲艦じゃ」

    365 = 1 :

    提督「しかし珍しいな。どう見ても二隻しか居ないぞ」

    利根「じゃのう。こんな珍しい事もあるものじゃな」

    提督「……む。あれは艦載機か?」

    利根「という事は空母か。……こっちに飛んできておらぬか?」

    提督「一応隠れて……いや、もう遅いか」

    利根「ほう。これもまた珍しい艦載機じゃな。たこ焼きじゃぞ。新型のようじゃな」

    提督「なぜお前達はたこ焼きと言うんだ……私はいつも髑髏と言っているのに……」

    利根「だって完全にたこ焼きじゃろ?」

    提督「緊張感が無いだろ……」

    利根「今ならば良かろう?」

    提督「まったく……」

    利根「ふむ。帰っていったのう」

    提督「やはり攻撃してこないな。艦娘が居るというのに、本当に不思議なものだ」

    利根「じゃのう」

    提督・利根「……………………」

    利根「……提督よ。あの二隻、近付いてきておらぬか?」

    提督「……そうだな。確実に近付いてきているな」

    提督・利根「……………………」

    利根「流石に、マズくないかの……?」

    提督「マズいかもしれんな……」

    利根「どうしようかのう……」

    提督「まあ……様子だけ見てみようか。こっちは手出しも出来んしする気も無い。攻撃の意思があるのならば既にやっていてもおかしくない。もし接近されても、金剛達に気付かれないよう岩場の方まで寄っておこう」スタスタ

    利根「うむ」トコトコ

    366 = 1 :

    提督・利根「……………………」

    提督「……しかし、本当に不思議だ。前は無視されていたよな?」

    利根「うむ……。前が特殊だっただけなのかの?」

    提督「さて、それは分からん」

    利根「……むう? のう、提督よ。あの深海棲艦の艦種なのじゃが……」

    提督「ああ……。あまり出会いたくない奴だな」

    利根「じゃのう……。我輩、あやつに何回大破させられたのか分からぬぞ……」

    提督「私も何回冷や汗を掻かされたか分からん……」

    利根「制空権を取っていても問答無用でこっちを攻撃してくるから、我輩はあやつが苦手じゃ……」

    提督「下手をすればその状態で大破させられたな……」

    ヲ級「……ヲ」

    空母棲姫「……………………」

    利根「…………」

    提督「……会話は出来るのか?」

    空母棲姫「ああ」

    ヲ級「…………」コクコク

    提督「そうか、良かった。それで、こんな島に何か用か?」

    空母棲姫「人間と艦娘が見えたのでな。攻撃をしようと思ったのだが、どうも様子がおかしかったから拝見しようと思っただけだ」

    提督「ほう。そんな事もあるのか。……では聞こう。お前達から見て私達はどう見える?」

    空母棲姫「…………」チラ

    ヲ級「…………」ジー

    利根「…………?」

    367 = 1 :

    ヲ級「よく、分からない」

    空母棲姫「……不思議な連中だというのだけは言える。それ以外はなんとも言えん」

    提督「そうか」

    空母棲姫「こっちも質問させて貰う。私達を見てどう思う」

    提督「そんな服装で恥ずかしくないのかと思っている。中破でもしたのか?」

    利根「良く見るとそのマント、格好良いのう……」

    ヲ級「カッコ良い……」

    空母棲姫「……変な奴らだな」

    提督「よく言われる」

    空母棲姫「変と言えば、なぜ艦娘に艤装を持たせていない。襲われたら死ぬぞ」

    利根「邪魔じゃからもう何年も付けておらんぞ? この島で暮らすのに艤装はただただ邪魔なだけじゃ」

    提督「その艤装も修理に使ってもう無い。潮風に煽られて錆付いていたからどっちみち使えなかっただろう」

    ヲ級「えー……」

    空母棲姫「本当に……変な奴らだな……」

    提督「変なのはお前達もだろう。こっちでは勝手にお前たち二人を空母棲姫、ヲ級と呼んでいるが、たった二隻で動いているのは初めて見たぞ」

    空母棲姫「……ふん」

    利根「ぬ? 拗ねた?」

    ヲ級「艦娘に、襲われた。仲間、沈んで、私達だけ、残った」

    提督「ああ……そういう事か」

    利根「その割にヲ級は無傷じゃのう?」

    ヲ級「攻撃、来なかった」

    利根「なるほどのう」

    368 = 1 :

    空母棲姫「……………………」

    提督「……しかし、敵とはいえ普通に話せると哀れに思ってくる」

    空母棲姫「哀れ、だと?」ピクッ

    提督「傷付いてその状態だと仮定すると、お前は一刻も早く修理しなければならない状態だ。だというのにこうして道草を食っているという事は、修理をする手段が無いと私は思った」

    空母棲姫「…………」

    提督「艦娘と同じように修理しなければ服も直せないのならば……まあ、なんだ。その肌が露わになった状態でずっと居なければならないのは哀れだ、とな」

    空母棲姫「……無駄に察しが良いな、お前」

    提督「そうでもないだろ」

    利根「我輩は単純にこれが通常なのかと思うたぞ?」

    提督「滑走路が壊れているようだからそれは無い」

    利根「あ、本当じゃ」

    提督「それくらいは気付こうか、利根」

    利根「そういう事もあるじゃろうて」

    ヲ級「…………」チョンチョン

    空母棲姫「! どうした」

    ヲ級「この二人、本当に、敵?」

    空母棲姫「…………本当は敵のはずなんだが……」

    提督「単純に攻撃手段が無い」

    ヲ級「あったら、攻撃、する?」

    提督「せんよ」

    空母棲姫「ほう。それはどうしてだ?」

    提督「こっちも単純だ。私はもはや提督ではない」

    369 = 1 :

    空母棲姫「仕事ではないからしない、か」

    提督「そうだ。私は好き好んで個人的な戦争などしない」

    利根「……あれ? もしかして我輩、存在理由が否定されておるのかの?」

    提督「今気付いたのか。戦う為の存在である艦娘から戦いを奪えばどうなるか分かるだろう」

    利根「おー……。まあ、それも良いかのう」

    ヲ級「……良いの?」

    利根「別に構わぬ」

    ヲ級「……不思議」

    空母棲姫「随分とのんびりしているな」

    提督「のんびりしなければならない事もあるものだ」

    空母棲姫「ただの怠慢だろ」

    提督「そうとも言う」

    空母棲姫「……私が言うのもおかしいが、お前の艦娘は不幸だな」

    利根「ぬ? 我輩か?」

    空母棲姫「お前ではない。他の艦娘だ。──何年も前から艤装を付けていないという事から、お前達はここに何年も居るという事だ」

    提督「……ああ、そうだ」

    空母棲姫「残された艦娘は今、どう思っているんだろうな。延いては、沈んだ艦娘もどういう気持ちでお前を見ているのか……」

    提督「…………お前なら、どう思う」

    空母棲姫「ふざけるな、としか言いようがない。亡霊となったら真っ先にお前を祟るだろう」

    提督「……そうか」

    空母棲姫「お前の為に沈んだ艦娘が、何を思うかを考えると良い」

    提督「……………………」

    提督(……金剛、瑞鶴、響が何を思うか……か)

    370 = 1 :

    金剛『テートクー! いつまで私達の事を引き摺っているデスか!』

    提督(ああ……言いそうだな……)

    瑞鶴『辛いのは分かるけど、乗り越えなきゃダメよ?』

    『もう居ない私達ばかり見ていても、前には進めないよ』

    金剛『テートクなら、必ず立ち直れマス。私はそう信じているネ。……ただ──』

    提督(……………………)

    金剛『──私達の事、忘れないで下さいね?』

    提督「…………」

    利根「……どうして泣いておるのじゃ、提督」

    提督「……すまん」グイッ

    空母棲姫「……………………」

    空母棲姫(沈んだ艦娘を想って泣いている……。このような人が提督ならば、私も深海棲艦にならずに済んだのかもしれないわね……)

    提督「……感謝する」

    空母棲姫「私は何もしていない。お前が勝手に何かを想っただけだ」

    提督「……そうか」

    ヲ級「? ??」

    提督「では、せめて塩を送らせてくれ」

    空母棲姫「……何をする気だ?」

    提督「不器用だが私は艦娘を修理する事が出来る。もしかすると、お前も修理を施せるかもしれん」

    空母棲姫「お前の得にならないだろ」

    提督「お前の得にはなるだろう」

    空母棲姫「戦争をしている相手を援助するのはどうなんだ?」

    提督「お前こそ戦う気力を失った敵を激励している」

    空母棲姫「修理と称して殺すんじゃないのか?」

    提督「恩を仇で返す事などせんよ」

    空母棲姫「信用できないと言えばどうする」

    提督「その空母を監視に就かせるか海に出るかを選べば良い」

    空母棲姫「…………」

    提督「…………」

    371 = 1 :

    空母棲姫「……艦娘のお前はどう思っている」

    利根「うん? 提督に任せるぞ。よくは分からぬが、提督はお主に感謝しているようじゃしの」

    ヲ級「据え膳。据え膳」

    空母棲姫「意味がかなり違う。静かにしていなさい」

    ヲ級「ヲ……」

    空母棲姫「……修理はどこでやるつもりだ?」

    提督「そこの工廠紛いの小屋だ」

    空母棲姫「……変な事はするなよ」

    提督「約束する」

    …………………………………………。

    372 = 1 :

    空母棲姫「……ふむ。直る事は直った、か」

    提督「完全には直らなかったがな。鋼材が足りなかった」

    空母棲姫「これだけ直れば充分だ。……その、だな」

    提督「ん?」

    空母棲姫「…………」

    提督「どうした」

    空母棲姫「……感謝、する」

    提督「私が勝手に直しただけだ」

    空母棲姫「私の真似か、それは」

    提督「さて、どうかな」

    空母棲姫「食えない奴だ」

    ヲ級「ヲ。直ってる」ヒョコッ

    利根「おお、本当じゃ」ヒョコッ

    空母棲姫「ん、ああ。完全ではないが、充分に直った」

    ヲ級「裸、見られた?」

    空母棲姫「……どうしてお前はそう反応に困る事ばかり言う」

    ヲ級「どうだった?」

    提督「私に聞くな。言ったら失礼だ」

    ヲ級「ヲ……」

    空母棲姫「まったく……」

    利根「深海棲艦も大変なんじゃのう」

    空母棲姫「人間と艦娘程ではない」

    ヲ級「ヲー……」

    空母棲姫「……さて、私達はそろそろ海へ戻る」

    提督「そうか。気を付けろよ」

    空母棲姫「……敵にその言葉を言うのは間違っていないか?」

    提督「社交辞令と思ってくれ」

    空母棲姫「敵に社交辞令というのもおかしいと思うが……まあ、お前がおかしいのは今に始まった事ではないか」

    提督「これからはなるべくマトモになるようにしよう」

    空母棲姫「……では、次は戦場で会おう」スッ

    提督「会ったら、だがな」

    空母棲姫「せいぜい死ぬなよ。人間、艦娘」

    提督「そっくりそのまま返してやろう。深海棲艦」

    …………………………………………。

    373 = 1 :

    金剛「深海棲艦と会ったデスって!?」

    瑞鶴「そのまま話して帰ったって……どういう事なのそれ……」

    「……私の頭か耳がおかしくなったのかな」

    提督「そのままの意味だ。響は何もおかしくなっていないから安心しろ」

    金剛「本当に大丈夫なのデスか? 危害は加えられまセンでシタか?」

    提督「ああ。この通り元気だ」

    利根「我輩も怪我一つしておらんぞ」

    瑞鶴「……提督さんは人間だからまだ分からないでもないけど、利根さんも大丈夫だったって何があったのかしら」

    利根「さあのう……不思議な連中とは言われたが、艤装を付けていたとかの関係があるのかの、提督?」

    提督「さあな。それは私にも分からない。ただ一つ言える事は、戦場で会ったら敵同士だという事だ」

    「……私達も会っていたらどうなっていたのかな」

    提督「さて。それも分からん。もしかすると変わらなかったかもしれんし、攻撃されたのかもしれん」

    金剛「とりあえず、私達はあまり外に出ない方がベターのようデス……」

    提督「そうだな。これからも家の中の事は三人に頼む」

    「……本当にこれだけの事しかしていないのに良いの?」

    提督(──ああ。三人と私は、さっきの私と空母棲姫みたいなものか)

    提督「構わんよ。……だが、何かをしたいと思ってくれるのは嬉しい事だ。だが、これからも利根のマッサージをお願いして良いか?」

    金剛「オッケーデース」

    利根「うん? 良いのかの?」

    提督「お前は私と違って身体が凝っていただろう。良い機会だから柔らかくなるまで解して貰え」

    利根「ふむ。三人共、頼んでも良いかの?」

    金剛「勿論デース」

    瑞鶴「任せてね」

    「私も頑張るよ」

    利根「……ありがたいのう」

    提督(……さて、三人に聞きたい事があるから後で聞いておこう)

    …………………………………………。

    374 = 1 :

    今回はこれで投下終了です。またいつか、来ますね。

    途中で深海棲艦の二人を島で暮らさせようかと考えたけど、そうしたらまた終わりが遠退いてしまったのでボツ。
    圧倒的に一日の時間が足りないなぁ。

    376 :

    乙乙乙

    377 :



    もーっと長引いてもいいのよ?

    378 :

    3スレ分ぐらい書いてくれてもいいのよ?

    379 :

    380 :

    深海棲艦の二人を島で暮らさせる…
    いいじゃないか

    381 :

    住んじゃってもいいのよ?

    382 :

    連合艦隊の攻勢でもあったか、そのうち放浪した挙句同じような境遇の仲間連れて戻ってきそう。

    空母棲姫が元加賀、ヲ級が翔鶴
    追加で戦艦棲姫で比叡、駆逐棲姫が暁で登場してくれないかな

    383 :

    お前キモい

    384 :

    あえて言わないでおいたことをズバッと言いやがって

    385 :

    おつおつ
    てか艦これの敵って元は味方の艦娘だったって設定なの?

    386 :

    そうだよ

    387 :

    確定はしてないけどその考え方が一般的ってだけでは?

    388 :

    一般的なんだ…

    389 :

    追いついた
    利根のチクチクチクチク…がチクマチクマチクマチクマ…に見えた

    390 :

    一般的というより圧倒的多数派って感じかな?
    連合国軍派もいるみたいだけど、二次創作では元艦娘派しか見たことないや

    391 :

    圧倒的多数派って言うなら、元艦娘というよりは「艦娘が持って無い負の側面(怨念的な)」の方が多数派じゃね?
    艦娘=船魂、深海棲艦=船幽霊みたいな。

    392 :

    まあ今までは憶測やそこで沈んだ艦がモチーフ程度の域を超えないくらいだったけど悪雨ちゃんというあからさまなのが登場しちゃったからね
    あれで深海と艦娘の何らかの繋がりはくっきり見えてしまった

    次の冬イベでも艦娘まんまっぽい姫が出てくるかもしれんし
    アニメが悪乗りして如月を深海化させる可能性すらある、まさに悪乗りだからそんな事したら大荒れだけど

    393 = 391 :

    悪雨ちゃんはなんつうか、あそこで沈んだ船が春雨だけだし、しょうがないんじゃね?
    「春雨の怨念や無念」を核にして深海化した……みたいな。

    394 :

    俺の好きな娘ばっかでてるヤッター
    続き楽しみ~

    395 :

    利根「くー……」

    提督(ふむ、寝たか。それでは、行くとしようか)ソロソロ

    利根「んー……」

    提督「!」

    利根「むにゃ……」

    提督(……起きていないよな?)

    利根「……くー」

    提督(……良し。今度こそ行くか)ソロソロ

    利根「……………………」

    提督(…………)ソロソロ

    瑞鶴「──とかどうなってるのかしら」

    金剛「それは私達には分からない事デスね……」

    提督(……何か雑談していたのか。邪魔をしてしまうが許してくれよ)コンコン

    瑞鶴「……え、誰? 中将さん?」

    提督「ああそうだ。少し話したい事があるんだが、入れてもらって良いか」

    「うん。鍵は掛かってないよ」

    ガチャ──パタン

    提督「夜中にすまん」

    金剛「ノープロブレムです。ケド、どうかしたのデスか? とても珍しいネ」

    提督「……ああ」

    「真剣な話のようだね。……座る?」ポンポン

    396 = 1 :

    提督「気持ちだけ受け取っておく。椅子に座っても良いか?」

    瑞鶴「良いけど、何も言わずに座っても良かったのよ?」

    提督「失礼する。──この部屋はお前達のものだ。ならば訊ねるのが礼儀だろう」スッ

    瑞鶴「そっか。ありがと」

    「それで、話ってなんだい?」

    提督「ああ……迷惑な話かもしれんが、どうしても聞きたい事がある」

    金剛「?」

    提督「……私と利根がこの島に居る経緯は憶えているか?」

    金剛「イエス。……今回のお話はその事についてデスか?」

    提督「……ああ。お前達が、あの子達だったとして考えて欲しい。今の私や利根を見て、どう思うかを教えて欲しいんだ」

    瑞鶴「う、うーん……? 結構難しいわね……」

    提督「無理にとは言わない。分からなかったら正直にそう言ってくれ」

    瑞鶴「……頑張る」

    「どう思ったのかも正直に言って良いの?」

    提督「ああ。頼めるか?」

    「ん。大丈夫だよ」

    金剛「私もイメージしてみマス」

    提督「ありがたい」

    金剛・瑞鶴「……………………」

    「…………」ジー

    提督(…………? 響は私の顔を見て想像しているのか?)

    397 = 1 :

    「…………」

    提督(……月明かりのみで暗いのせいか、少しだけ悲しそうな顔に見えるな。いや、本当に悲しそうにしているのか……? 分からん……)

    「…………」ジッ

    提督「…………」

    「…………」チラ

    金剛・瑞鶴「…………」ウーン

    提督(……ふむ)

    「…………」ジー

    提督「…………」コクン

    「…………」コクン

    「…………」スッ

    金剛「? どうしまシタか、響?」

    「どう思うのかを提督に話すだけだよ。二人に聞かせたら、何か影響を与えちゃうかもしれないからね」

    瑞鶴「なるほどね」

    「さ、提督。耳を貸して」

    提督「ああ」ソッ

    「…………」コショコショ

    提督「…………」

    「…………」コショコショ

    提督「……そうか」

    「うん」スッ

    提督「……………………」

    瑞鶴(……すっごく悲しそうにしてる。初めて見たかもしれない)

    提督「…………」ナデナデ

    「んっ……」

    提督「……ありがとう、響」

    「役に立てた?」

    提督「ああ……」

    「それなら良かったよ。もっと撫でて」

    提督「いくらでも撫でてやる」ナデナデ

    「スパシーバ」

    …………………………………………。

    398 = 1 :

    提督「さて……時間も大分経ってしまったな」

    金剛「ソーリィ……。もう少しで思い付けそうなのデスが……」

    瑞鶴「私ももうちょっと……のような、気が……」

    提督「無理はしなくて良いと言っただろう?」

    金剛「ノー。絶対にノーアイディア以外の答えを出してみせマス」

    瑞鶴「私もよ。だって、中将さんにとって大事な事なんでしょ?」

    提督「だが──」

    金剛「私達がそうしたいと思っているだけデス。……これならオーケーですか?」

    提督「……段々と私の扱い方を覚えられている気がするな」

    瑞鶴「ヤだった?」

    「…………」ジー

    金剛『────────────』

    瑞鶴『────────』

    『────』

    提督「…………いや、そんな事はないぞ」

    瑞鶴「うん、良かった!」

    提督「……さて、そろそろ寝るとしよう。邪魔をしてしまった」スッ

    金剛「そんな事ありまセン。……また明日も来てくれマスか?」

    提督「またこんな時間になっても構わないのならば」

    瑞鶴「じゃあ待ってるわね」

    「楽しみにしているよ」

    提督「何を楽しみにするのやら……」

    金剛「提督には本当に何もお返しが──」

    提督「だからそれは──」

    瑞鶴「でも、私達は利根さんだけじゃなく──」

    「だったら──」

    四人「────」

    利根(……………………)

    ……………………
    …………
    ……

    399 = 1 :

    提督「…………」ボー

    利根「…………」ギュー

    「…………」チョコン

    瑞鶴「なんか、今日はいつもとちょっと違うわね?」

    利根「……んぅ?」

    金剛「響が提督の足に座っているのもそうデスが、利根も提督の背中にピッタリと張り付いていマス」

    利根「いつもではないか?」

    瑞鶴「なんというか……密着度が違うような? そんな感じがする」

    利根「ふむ……?」

    提督「そうだな。今回はくっついているというよりも抱きつかれていると言った方が正しい」

    利根「嫌じゃったかの?」

    提督「お前にはそう見えるのか」

    利根「全く見えぬな」ギュー

    提督「そういう事だ」

    「…………」ジー

    提督「…………」ナデナデ

    「…………♪」

    金剛「懐かれていマス」

    瑞鶴「完全に懐かれてるわね」

    提督「本当、どうしてだろうな」

    「少しは自覚した方が良いんじゃないのかな」

    提督「気が向いたらな」

    金剛「…………」チラ

    金剛(私が提督の金剛だったら、どう思うかデスか)

    金剛(……どう、思うのデスかね。私だったら──)

    …………………………………………。

    400 = 1 :

    超少ないけど、今回はここまでです。またいつか来ますね。

    終わりが近いように見えるだろ? とある理由でまた終わる気配が消え失せたんだぜ、これ……。
    ゆっくりのんびりと更新していくので、次の更新までお待ち下さいませ。お仕事でちょっと忙しくなってます。


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