元スレ利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
552 :
乙
加賀「やりました。」
空母棲姫「頭にきました。」
ヲ級「ヲ?」
見てみたい
553 :
>>552
ヲ級「ヲ?(おなかがすきました)」
とかじゃないの?
556 :
ホワイトデーSS良かったです!
557 :
ひっそりと報告って言ったのに報告していないという無能作者。
たぶん、明日か明後日にこっちのお話を進めます。
558 :
待ってます
559 :
楽しみにしてます
560 :
毎度待たせてごめんよ。投下していきます。
561 = 1 :
夕立「加賀さん加賀さん! ちょっと聞きたい事があるっぽい!」
加賀「あら、何かしら?」
夕立「…………」クイクイ
加賀「何? 内緒話?」ソッ
夕立(四日後は第一艦隊の私達が休みよね? だから、提督さんに許可を貰ってあの島に行こうと思ってるの)ヒソヒソ
加賀(なるほどね。良いと思うわ。……メンバーは勿論あの時の六人よね?)ヒソヒソ
夕立(一応、全員には聞いて回ってみてるっぽい)ヒソヒソ
加賀「……ん? という事は、貴女が提案した事じゃないの?」
夕立「そうっぽい。飛龍さんが始めに誘ってきたよ」
加賀「そうなのね。私の返事は分かってると思うけれど──」
夕立「だよねだよね! 今から楽しみっぽいー!」
加賀「そうね。あれから忙しくて足を運べなかったものね」
夕立「夕立、提督さんと利根さんに戦果をいーっぱい自慢するっぽい!」
加賀「ええ。今までの戦果をたんと聞かせてあげましょう。二人が悔しがるくらい、ね」
夕立「それでそれで──!」
電「あれ?」
夕立・加賀「!」
電「こんにちは、なのです。夕立ちゃんと加賀さんが二人でお話しているのは珍しいですね?」
加賀「──ええ。この間、無傷の黄のオーラを纏ったタ級を一射で沈めた事を褒めていたの」
夕立「そ、そうっぽい!」
562 = 1 :
電「あ、私もそれは聞いたのです。駆逐艦でそれをするのは、本当に凄いですよねっ」
夕立「日頃の訓練の成果だよ! 電も頑張れば出来るかも?」
電「そ、そんな……! 私には出来ないのです!」
夕立「最初から無理と思っていたら、何も出来ないっぽい!」
電「流石に戦艦を一発で倒そうとするのは物凄く無謀ですよね……?」
夕立「そう? 確かに私もたまにしか出来ないけど、志は大事……っぽい?」
電「うぅ……同じ駆逐艦なのに住んでる世界が違い過ぎてる気が……」
加賀「夕立。貴女の砲撃威力はもう駆逐艦の枠組みを超えているわ。あまり自分が基準だと思わないようにしなさい?」
夕立「えーっと、褒められたっぽい?」
加賀「同時に相手も思いやりなさいと言っているの」ポン
夕立「うーん……分かったっぽい」
加賀「返事はハッキリとなさい」グイグイ
夕立「あ、あぁああ! か、髪の耳を押さえないでぇ! はっきりとした返事をしなくてごめんなさい!」
加賀「よろしい」スッ
電「……前にも思ったのですが、その耳状の髪を押さえられると嫌なのですか?」
夕立「なんだか頭の横がゾワゾワってなるから、すっごく嫌い……」
電「不思議なのです」
加賀(……さて、二人に会ったら何を話しましょうかね──)
……………………
…………
……
563 = 1 :
加賀(──なんて思っていたけれど……)
飛龍「偵察機より入電!! ウェーク島の陸に敵影発見!!」
北上「ちょ、ちょっとちょっと!? それは冗談でもキツ過ぎるんじゃない!?」
時雨「飛龍さん! それは確かなの!?」
飛龍「間違いありません! 敵の艦種は姫──空母棲姫です!」
加賀(……これは……ただ事じゃないわ)ギリッ
北上「なんで敵の空母が陸に居るのさ! 意味が分からないよ!!」
夕立「提督さんは!? 提督さんと利根さんはどうなってるの!?」
飛龍「……現在、確認できているのは空母棲姫のみ。あまり言いたくはありませんが、これはあまりにも……」
加賀「飛龍、貴女はそのまま索敵を続けてて。私は爆撃機を飛ばします」スッ
時雨「加賀さん、何を!? まだ提督は生きているかもしれないんだよ!?」
加賀「提督一人だけならばまだ可能性はあったでしょう。……けれど、あの地には艦娘が四人居るわ。間違いなく交戦──いえ、虐殺されているはず」
夕立「で、でも! 艦娘が四人も居れば戦う事だって──!!」
加賀「あんな島に弾薬があると思うの? 仮にあったとしても、空母棲姫のみ居るという事を考えればどういう意味なのかは分かるわよね」
夕立「う……そ、そうだけど……」
加賀「……ごめんなさいね。私はこの煮え滾っている感情を抑える手段を知らないの」
加賀(……正確に敵へ爆撃して、周囲にはなるべく被害を出さないようにしなければ。……せめて、二人の遺品は持って帰りたいもの)グッ
飛龍「──え? え、そ、それはどういう……!? か、加賀さんストップストーップ!!」
加賀「何? 何か異常でも発生したの?」
飛龍「そ、それが信じがたいのですが……」
加賀「報告は早くしなさい」
飛龍「す、すみません!」ピシッ
飛龍「……その、提督が建物から出てきました。今は空母棲姫の……隣に立っています」
夕立・時雨「え?」
北上「……何それ? どういう事なの?」
加賀「飛龍、今この状況で冗談を言える貴女を尊敬と同時に軽蔑するわ」
飛龍「ほ、本当ですって!! 嘘だと思うのならば加賀さんも確認してみて下さい! というよりも、加賀さんも確認して下さい……私の夢や幻なんじゃないかって思うくらいなので……」
加賀「……偵察機も一緒に飛ばします。貴女がそこまで言うのだから本当でしょうけど、流石にこれは信じられないもの」
飛龍「ええ……。どういう事なんでしょうね、これって……」
…………………………………………。
564 = 1 :
空母棲姫「なるほど。そういう事か」
提督「……まだ言っていなかったな。すまん」
空母棲姫「何を言っている。私とお前は敵同士だ。こうなるのは当然だ。しかし、私達をここまで油断させるとは大したものだ」
空母棲姫(ちっ……。やはり人間を信用などするべきではなかった……。今から逃げるのも無理な話か……)
提督「勘違いするな。攻撃などさせん」
空母棲姫「……なんだ? 捕虜という事か?」
提督「物々しく考えるな。お前達に危害を加えたり加えさせたりせんよ」
空母棲姫「……意味が分からん。どういう事だ」
提督「昔、私に付き従ってくれていた艦娘が居た。その艦娘は偶然、作戦中にこの島を見つけたんだ。……そして、その子達は時々だがこの島へ来ると言っていた」
空母棲姫「話が見えん」
提督「詰まる所、今ここに向かってきている艦娘達は純粋に私と利根へ会いに来たという事だ」
空母棲姫「……信用ならんな」
提督「構わん。直に分かる」
空母棲姫「その時は、私とあいつの最後か」
提督「そう思ってくれて構わんよ。後で拍子抜けするのはお前だ」
空母棲姫「そうなるよう、せいぜい祈っておこう」
提督「言っていなかった侘びとして、後で手の込んだ料理を作ってやるから許せ」
空母棲姫「最後の晩餐か? という事は、磔にでもするのか」
提督「私は神に祈りを奉げた事はないから知らんな」
空母棲姫「ふん。末代まで呪ってやる」
…………………………………………。
565 = 1 :
加賀「──それで、これはどういう事なの?」
提督「その前に、お前たち全員兵装を向けるな。こいつは深海棲艦ではあるが敵ではない」
飛龍「それは出来ません。提督が捕虜になっている可能性も拭えませんから」
提督「……………………」
夕立「っ!!」ビクンッ
夕立「!」ピシッ
提督「整列」
飛龍・北上・時雨「!!」ビクッ
飛龍・北上・時雨「っ!」ピシッ
加賀「…………」
提督「……どうした加賀。列から乱れているようだが?」
加賀「今はその時ではありません。厳戒態勢です」
提督「ほう。私の命令が聞けないか」ジッ
加賀「…………」ジッ
加賀(……全く危機感の無い目。という事は、本当に……?)
提督(さて、信じてくれると良いのだが)
加賀「……分かりました」スッ
加賀「提督。先程の非礼を詫びます。申し訳ありません」ピシッ
提督「よろしい」
空母棲姫(……なんだ? まさか、こいつらは本当にただ会いに来ただけなのか……?)
空母棲姫(──いや、油断させてから沈めにくるかもしれない。これからは信用しない方が良い)
空母棲姫(これからは……? なんだそれは。それではまるで、今まで信用していたような言い方ではないか)
加賀「……提督、説明はして下さるのよね?」
提督「ああ。中で話そうか──」
…………………………………………。
566 = 1 :
提督「──そんな事があって、今現在はこの六人と暮らしている」
飛龍「……あの、本人の前で言うのもアレなんですけど……本当に大丈夫なんですか?」
提督「今まで無事なのが何よりも証拠だ」
空母棲姫「だから、私は何度も信用するなと言っているだろうが」
時雨「……こう言ってるみたいだけど」
提督「知らん。私は相手を見て信用するかどうかを決める。少なくとも、現状では敵どころか安定した暮らしを提供してくれる大切な存在だ」
空母棲姫「……………………」
夕立「なんか、呆れてるっぽい?」
北上「まあ……そうなるよねぇ……。私も未だに夢でも見てるんじゃないかなって思ってるくらいだし」
加賀「そうね。でも、この二人を見れば──」
ヲ級「…………」ジー
響「…………」ジー
加賀「──本当に危害を加えてこないというのは分かるわ」
飛龍「こうも無垢な目で仲良く並んで座られると、私達が悪い事をしてきたみたいに見えますね……」
利根「別にどちらも悪い事をしておらんじゃろう。堂々としておれば良いのではないか?」ノシッ
時雨「……なんというか、利根さんが提督にベッタリとしてるように見えるのは僕の気のせいかな」
夕立「良いな良いなー! 提督さん、私もくっついて良い?」
空母棲姫(……なぜだ。尻尾を振っている犬に見える)
提督「人前だ。程々にしておけよ?」
夕立「やったぁー! 提督さん! 頭撫でて撫でて~っ」ギュー
提督「ああ」ナデナデ
夕立「えへへー」ニパッ
567 = 1 :
飛龍「ところで提督。元気でやっていけてますか?」
提督「至ってのんびりと暮らしている。お前の艦載機が見えていたくらいには暇だ」
飛龍「ああ、そういう事だったんですね。なんだかちょっとおかしいなって思っていたんです。そっちの……えーっと……空母棲姫、さん? と話す為に出てきたって風には見えなかったんで。庇う為ですかね?」
加賀「私ならば爆撃するだろうとでも思ったのかしら」
提督「そういう事だ。実際に艦爆を飛ばしていただろう?」
加賀「……ちゃんと、私達の事を憶えてくれているのね」ニコ
提督「何年経っても忘れんよ。未だにお前達のやりそうな事は大体予想が付くくらいにはな」
時雨「僕達も、提督や利根さんの事を忘れた事はないよ」
提督「ありがたい話だ」
提督(……比叡が来ないのも、なんとなく予想が付いていたくらいにな)
北上「でさ、提督。あたし達は深夜くらいには戻っておかないといけないんだ。ここに居られる時間も長くはないからさ、とにかく色々と話したいんだよね。良い?」
提督「ここは遠いから仕方が無いだろう。時間が来るまでいくらでも話そうか」
夕立「じゃあ私が最初ね! 提督さん。提督さんはいつになったら帰ってくるの? 夕立達、寂しいっぽい」
提督「もう少しだけ待ってくれるか。帰られる心境になるにはもう少しだけ時間が掛かりそうだ」
夕立「むー……。それって『もう少し』をずっと続けていくパターンじゃない?」
提督「本当にもう少しだ。もしかすると、次にお前達が来た時には帰りの船を呼んでもらうかもしれん」
夕立「本当!? やったぁー!」
時雨「次からは船を用意した方が良い?」
提督「いや、まだ決まった訳ではない。その時が来るまで船を持ってくるなどという事はしないでくれ」
時雨「うん、分かった。それと、提督──」
提督「それは──」
568 = 1 :
金剛・瑞鶴・響「…………」
瑞鶴「……なんだろね。羨ましいわ」
金剛「ええ……」
響「入る隙も無いね」
金剛「響、今は皆さんに譲りまショウ。時間を割いてまで来たのデスから」
響「うん」
飛龍「ちょっと良いですか?」
瑞鶴「ん? 良いけれど、どうしたの?」
飛龍「私は三人ともお話ししたいと思ったので。──あ、隣に失礼しますね」スッ
金剛「ケド、良いのデスか? 折角の提督とのお時間が……」
飛龍「私は最後でも大丈夫です。……というよりも、今は提督を取り合いっこしていますから、少し遠慮している形です」
響「なるほどね」
金剛「──あ、皆さんには謝らないといけない事があるデス……」
飛龍「え? 何ですか?」
金剛「下田鎮守府まで送って下さったのに、またここへ戻ってきてしまってすみまセン……」ペコッ
飛龍「いえいえ、仕方の無い事ですって。悪いのは貴女達じゃないですから」
金剛「ありがとうございマス……」
飛龍「それよりも、提督の事を聞いても良いですか?」
瑞鶴「中将さんの事? それなら私達よりも飛龍さん達の方が良く分かってるんじゃ?」
飛龍「いえ、この島での提督の事は利根さんと三人以上に知っている人は居ません。……特に、前に来た時は帰らないって言ったのに、今はもう少しすれば帰るって言った事が気になります。何かあったのですか?」
瑞鶴「……アレ、かなぁ」チラ
金剛「そうとしか思えまセンね」
響「だよね」
飛龍「お聞きしても良いですか?」
瑞鶴「んっとね、中将さんに頼まれた事なんだけど……今の中将さんと利根さんの姿を、沈んだ三人の視点で見たらどう思うか──っていうのを答えたの。考えられるのはそれくらいしかないかな」
飛龍「沈んだ三人で見れば……ですか」
響「気になる?」
飛龍「……ええ。お願いします」
響「いつまでも後ろに居る私達に目を向けていたら、いつまでも前に進めない。ちゃんと前を見て進んで──って言ったよ」
瑞鶴「辛いのは分かるけど、私達はもう居ないの。捕らわれないで、ちゃんと乗り越えてよね……なんて言ったかしら」
金剛「私は、提督と利根が早く立ち直って欲しいと思いまシタ。……ケド、頭の片隅でも構わないので忘れないで欲しいとも思いまシタ」
飛龍(…………ああ……あの三人なら、本当にそう言うんだろうなぁ……)
飛龍「……なるほど。それで提督はこの島を出ようと思っているんですね」
飛龍(それにしても、ちょっとだけ懐かしい気分になりますね……。空の向こうに居る三人は今、どう思っているんだろ……)
…………………………………………。
569 = 1 :
夕立「んー! 楽しかった!」
時雨「夕立は終始甘えていたね」
夕立「だってだって! 次にまた来れるのはいつになるか分からないだもん!」
北上「まあ、そうだよねぇ。夕立がああしなかったら、たぶんあたしがやってたし」
飛龍「え……? それ本当ですか……?」
北上「冗談だよ冗談」
加賀「貴女の場合、本当か冗談なのか分からない所があるから怖いわ」
時雨「本当、掴み所のないマイペースな性格だよね」
北上「ふふん。それがあたしの良い所だから」
加賀「同時に欠点でもあるわよ。分かりにくいもの」
飛龍「あ、あはは……。──ん、索敵機より入電。……敵艦隊見ゆとの事!」
加賀「──総員、戦闘態勢に入りなさい。敵の艦種は?」
飛龍「戦艦ル級が二隻、重巡リ級が一隻、雷巡チ級が一隻、駆逐ハ級が二隻! いずれも赤と黄のオーラを纏っています!」
加賀「……勝てない事はないけれど、戦力的に見ればこちらが少し乏しいわね。後の事もあります。ここは無理をせず迂回しましょう」
飛龍「ええ。向こうの索敵機は全て落としました。こちらの位置は知られていませんし、そうしましょう」
加賀「流石ね。……気付かれないように進むわよ」
四人「はいっ!」
加賀(少し胸騒ぎがするのだけれど、大丈夫かしらね……)
……………………
…………
……
570 = 1 :
今回はここまでです。また一週間後くらいに会いましょう。
空母棲姫からの信用が落ちた事がどう動くかな。あと、胸騒ぎはどうなるかな。
571 :
乙
ほのぼので終わるんですよね…
572 :
乙乙
まあ油断させてとかなら滅茶苦茶機会多かったし大丈夫だよね(フラグ)
573 :
乙
逆に索敵に引かかっているル級とかが島に接近してきたら空母棲姫はどう動くんだろう
574 :
乙
加賀さん……おっぱい痒いのかな?
576 :
乙です。1のペースでおなしゃす。
あと、ここウェーク島だったんかい。
577 :
ル級たちが空母棲姫の部下で
姫を探してるって逆のパターンだったら
面白そう
578 :
追いついた
続き楽しみにしてます
579 :
>>571
ほのぼので終わる予定の可能性があるような気がするかもしれないという夢を見たって電波は受け取っています。
投下していきますね。
580 = 1 :
利根「ふぃー……久々の湯じゃのう」チャポン
提督「ああ、やはり風呂というのは良いものだ」
利根「……のう提督よ」
提督「どうした」
利根「前に、艦娘は深海棲艦と変わらないのかと言ったであろう?」
提督「ああ、言っていたな」
利根「あの二人と暮らしていて思ったのじゃ。やはり、ほとんど違いが無いとな」
提督「人種の違いのように見えたのか?」
利根「うむ。我輩達と同じく艤装を付けておるし、海の上を滑れる。何よりも、我輩達と同じく感情があってしっかりと会話できるのじゃ。むしろ違う箇所を探す方が難しいぞ」
提督「ああ、私もそう思う。違いなど、ほとんど無い。生まれた場所が違うだけの同種なのかも知れないな」
利根「うむ」
提督「…………」
利根「…………」パシャパシャ
提督「……………………」
利根「……それでの、提督」
提督「ん?」
利根「ギューッと抱き締めてくれぬか」
提督「いきなりどうした」
利根「……これから話す事は少し胸が苦しくなる。だから、お願いじゃ」
提督「……そうか。無理はするなよ?」ギュゥ
利根「んっ……。うむ……大丈夫じゃ。提督がこうしてくれておる限り、我輩は安心できる。──じゃが」ソッ
提督「ん?」
利根「腕は腹に回すだけでなく、片方は胸の方へやってくれぬか」
提督「それは遠まわしに触れと言いたいのか」
581 = 1 :
利根「違うぞ。別に触れずとも良い。しっかりと抱き締めて欲しいんじゃ」
提督「……そうか。なら、これで良いか?」スッ
利根「ほう、胸の下か。……うむ。ありがたいぞ提督」ニカッ
提督(本当にいかがわしい気持ちは無いようだな)
利根「出来れば我が慎ましき下乳を腕に乗せるくらいが望ましいが、ダメかの?」
提督「これ以上は譲らん」
利根「残念じゃ」
提督(……お前、本当にいかがわしい気持ちは無いんだよな?)
利根「……それでの、提督。提督は今日、夕立に『帰るのは少し待ってくれ』と言うておったじゃろ?」
提督「ああ」
利根「我輩もな、その気持ちは分かるんじゃ。沈んでしもうた『あの三人』が何を思うておるのか……それはここに居る三人が言うてくれた。あの言葉を信じるならば我輩達は前に進まねばならぬ。進まねば……『あの三人』は浮かばれぬ」
利根「……じゃがの、同時に怖い。……提督よ、なぜか分かるか?」
提督「…………鎮守府の皆に何を言われるか分からないからか?」
利根「いや、違う。我輩が怖いのはな…………提督が、我輩から離れるのが……怖いのじゃ」
提督「どういう意味だ……?」
利根「…………」チラッ
利根「……提督、当たり前じゃが……お主と我輩はこの島から出たら、互いの距離は離れてしまうよの?」
提督「…………」
利根「もう、このように風呂を入る事も無くなる。共に布団で眠る事も無くなる。提督と共に居られる時間も短くなる。……間違ってはおらぬよな?」
提督「……ああ。違わない」
利根「我輩はそれが怖い。今のこの生活は、我輩にとって理想に一番近かったからじゃ。もう戦わずに済む。その上、提督と共に生きている。……それだけで、我輩は充分だと思うておった」
提督「……一つ聞く。お前は私の事をどう思っている」
利根「ああ、確かに言うてなかったのう。我輩は……」
提督「…………」
582 = 1 :
利根「……我輩は、お主の事を好いておる。人としてではなく、伴侶になりたい程に」
提督(……やはりか)
利根「とは言うても、最近まで自覚しておらんかった。提督が夜な夜な三人の部屋で楽しそうに話しているのを聞いてから分かったのじゃ」
提督「……そうか」
利根「だからの、提督……」
提督「……ああ、それでも私達はこの島を出なければならない」
利根「……やっぱりか」
提督「すまん。こればかりは堪えてくれ。あの三人に沈んだ事を後悔させたくないのならば、私達は乗り越えて進むべきだ」
利根「……ああ、そうじゃのう」
提督「すまん」
利根「謝るでない。本当に申し訳ないと思うのならば、向こうでも同じようにしてくれぬか」
提督「それは流石に無理だ。周りの目を気にしてくれ」
利根「むう……。ならば、我輩を秘書艦にしれくれぬか? これならば常に近くに居ようと不思議ではなかろう? あと、寝る時は共に寝たい」
提督「お前に秘書艦が務まるのか?」
利根「初めは出来ぬじゃろうな。だが、我輩は仕事の内容を覚えるぞ。金剛がやっていた事を全てじゃ」
提督「ほう。利根が金剛と同等の紅茶を淹れるか」
利根「う……」
提督「金剛の腕を超えようものならば並大抵の努力では追い付かんだろう」
利根「……頑張る。我輩は頑張るぞ、提督」
提督「冗談だ。真に受けなくて良い。だが、秘書艦にはなって貰おう」
583 = 1 :
利根「! 本当か!?」
提督「ただし、秘書艦として不充分でありながら上達が見込めない場合は降りて貰うぞ」
利根「うむ! 我輩は頑張るぞ!」
提督「さて、湯もヌルくなってきた。そろそろ出ようか」スッ
利根「あ、ちょっと待ってくれぬか」
提督「なんだ? まだ抱き締めて欲しいと言うのか?」
利根「強ち間違ってはおらぬが、違うぞ」クルッ
提督「……なんとなく言いたい事が分かった」
利根「察しの良い提督じゃ」ギュゥ
提督「やっぱりか」
利根「うむうむ。やはり背後からと正面とでは違うのう」スリスリ
提督「向こうではこんな事をするなよ?」ナデナデ
利根「うむ。分かっておる。……じゃから、今の内に堪能させてくれ」
提督「……湯が水にならないようにしろよ?」
利根「うむ……分かっておるよ……」スリスリ
提督「…………」ナデナデ
……………………
…………
……
584 = 1 :
空母棲姫「──今日は弾薬とボーキサイトの入ったドラム缶が見つかった」
ヲ級「見つけた!」
提督「ほう。珍しいな」
空母棲姫「弾薬はともかく、ボーキサイトは専用の設備でも無い限り艦載機にならんから邪魔なだけだがな」
提督「そう言うな。何かの役に立つかもしれん」
空母棲姫「ふん」
ヲ級「撫でて、撫でて」ワクワク
提督「ああ、ありがとうな」ナデナデ
ヲ級「えへー」ニパッ
空母棲姫(……無邪気なものね。今はその無邪気さが羨ましく思えるわ)
ヲ級「ひーめ。姫も頭、撫でてもらう?」
空母棲姫「……私は外へ行く」スッ
利根「なんじゃ? 何かあるのか?」
空母棲姫「馬鹿を言え。そろそろその人間の艦娘がここへやってくるはずだろう? 一週間前がそうだったようにな」
瑞鶴「…………? それが何か問題なの?」
空母棲姫「私はお前達を信用していない。一人で海を眺めている方がマシだ」スタスタ
金剛「……行っちゃったデス」
瑞鶴「そんなに邪険に扱わなくても良いのに……」
響「あの人、素直じゃないね」
提督「ああ、全くだ」
金剛「え?」
瑞鶴「どういう意味?」
585 = 1 :
提督「ヲ級を見ている目が羨ましそうだった事を考えると、恐らくだが仲良くするべきか敵と見做すか葛藤しているんじゃないだろうか」
響「どっちにも偏れないから、近くには居ないけど敵にもならないっていう微妙な位置に居るんじゃないかな?」
利根「……面倒じゃのう」
提督「意志が強いから仕方がないだろう。何かきっかけでもあればすぐに変わるものだ」
金剛「そのきっかけで何か良い案があるデスか?」
提督「きっかけは無理矢理に作るものではない。それと、きっかけが無くとも何か理由を付けて近くに居てくれるだろう」
瑞鶴「その根拠はどこにあるのよ……?」
提督「このヲ級だな」ポンポン
ヲ級「~♪」ニコニコ
瑞鶴「あー、なるほどね。思ってみれば、いつも一緒に居るもんね」
金剛「ヲ級が私達の近くに居る限りキャントリーヴという訳デスね?」
提督「そういう事だ」
響「きゃんとりーぶ……?」
金剛「放っておけない、という意味ネ」
響「スパスィーバ。勉強になったよ」
提督「なんだかんだで空母棲姫も面倒見が良いからな。自覚しているのかは知らないが」
利根「あの様子ならば気付いておらんじゃろうなぁ」
響「かもね」
瑞鶴「ところでさ、そこで乾燥させている葉っぱって何?」
提督「うん? それはハーブだ。正確にはバジルだな」
金剛「……バジリコって、こんな熱帯に生えている物なのデスか? ヨーロッパの地方にあるようなイメージなのですが……」
提督「バジルは熱帯にある植物だ。割と日本でも生えているぞ。ヨーロッパのイメージが強いのは、色々と料理に使われているからだろう」
金剛「ナルホドー」
瑞鶴「……それは分かったんだけど、バジルなんていきなりどうしたのよ?」
提督「少し前に空母棲姫と一方的に約束してな。手の込んだ料理を作る為に摘んできた」
利根「どんな料理にするつもりなのじゃ?」
提督「小さく切り分けた白身魚を、薄く水を引いた鉄板で焼いてその上にバジルを掛ける。味付けはいつもの塩で、ソテーとまではいかんだろうが不味くはならんだろう」
響・ヲ級「楽しみ」キラキラ
提督「今日の夕食はちょっと贅沢になる。……仮に不味くても文句を言ってくれるなよ?」
…………………………………………。
586 = 1 :
空母棲姫「……はぁ」
空母棲姫(私は、私が何を思っているのかが分からん。私は本当にあいつらを敵だと思っているのか? それとも、敵でも味方でもないと思っているのか?)
空母棲姫「……まったく分からん。味方ではないというのは確かなのだが……どうして私は信用していないのにも関わらず、この島で共に暮らしているんだ……」
空母棲姫「考えるのを諦めるべきか……? だが、それは思考停止になるからあまり──ん?」
空母棲姫(……艦載機? しかも我々深海棲艦の? 珍しい事もあるものだな)
空母棲姫「……いや待て。なんだあの数は……? 近くに戦闘区域でもあるのか……?」
ガガガガガガガガッッ──!!
空母棲姫「────ッ!? な……撃ってきた!? ど、どういう事!!」ザッ
空母棲姫「……ま……待って!! そっちの建物には──ッ!」
ドォオンッッ!!
空母棲姫「────────…………! 外れている……! 良かった……」
空母棲姫(でも……なぜ深海棲艦がこの島を爆撃しているの……? ……いえ、考える暇なんて無いわね。例え相手が同族であっても、危害を加えるのならば迎え撃つまでです。私の艦載機運用能力は伊達ではありません)スッ
空母棲姫「……あ…………」
空母棲姫「そう……でした……。艤装は仕舞っている上に……」
空母棲姫(私にはそもそも……残っている艦載機がありません、でした……)
空母棲姫「ぁ────」
ドォオンッッ!!
…………………………………………。
587 = 1 :
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
さて、艦娘や深海棲艦が陸で轟沈判定になったらどうなるかね。
588 :
乙です。いつも楽しみにしてます!
591 :
乙
陸じゃ沈まないからね
592 :
一週間がこれ程長いとは
593 :
ああ・・・アカン。
594 :
終わる終わる詐欺をしなくなった作者さん、本当に偉い!
本当にこの人いなくなったらなんのSS読めばいいんだYo
595 :
>>594
知るか適当に探せ
596 :
作者さんおめでとうございます。アニメ続編楽しみにしてます。
597 :
利根「────ッ!? 何なのじゃ、この爆撃音は!?」
提督「!! 深海棲艦の編隊……!? なぜそんな事が!?」
ヲ級「私も、姫も、違うよ!?」ブンブン
提督「そんな事は分かっている!! そもそも二人には艦載機が無いだろう!」
瑞鶴「じゃ、じゃあなんでこんな!?」
提督「分からん……! だが、何か目的があってこの島を爆撃しているのには違いないはずだ!」
金剛「っ!」バッ
提督「待て金剛! どこへ行こうとしているんだ!!」
金剛「艤装と弾薬を取りに行きマス!! 対空砲撃をすれば多少は──!」
提督「ダメだ!! そもそも消費の多いお前では弾薬が足りないと分かっているだろう!」
金剛「デスが! このままではきっと私達は全滅デス!!」
提督「十秒で良い! 少し考えさせろ!! 出来るだけ高い確率でこの状況を打開する術を──!」
ド──ッ!!
全員「────ッ!!」
響「……────」
ヲ級「──、…………?」
金剛「────! ……か!」
瑞鶴「も……。ひど…………ね……」
利根「いたた……。だいじょ……う、ぁ…………」
金剛「やっと耳が……。────え……?」
瑞鶴「あ、れ……? 中将、さん……?」
響「────」
ヲ級「…………」
598 = 1 :
瑞鶴「ね、ねえ! 中将さん!? 大丈夫なの!?」
提督「……………………」
瑞鶴「ねえってば!!」
利根「────────は、ハは……」
金剛(!! あの時の利根が出てきたデスか!? いけまセン! ここで余計に混乱を引き起こしては──!!)
金剛「…………っ!」スッ
金剛「……大丈夫デス。提督は生きていマス」
ヲ級「!」
響「本当……?」
金剛「脈もありマス。呼吸もしていマス。きっと、ショックで倒れただけでショウ」
金剛「だから……大丈夫デスよ、利根」
利根「──そうか。それは良かった」スッ
瑞鶴「ちょっ!? ど、どこに行くのよ!?」
利根「決まっておろう? 上の喧しい蝿共を叩き落しに行くのじゃ。──金剛、響、少しお主らの装備を借りるぞ。確か、副砲二つと機銃と電探があったはずじゃよな?」
響「……利根さん、その選択は提督が望ま──」
利根「一秒が惜しい。倉庫で確認する。全員、隠れておれ。一度爆撃した場所は比較的狙われんじゃろう」スッ
瑞鶴「で、でも──!! ……行っちゃった」
響「……私も行く」スッ
金剛「──駄目デス」グイッ
響「! ……どうしてかな、金剛さん。私には利根さんが装備できない高角砲がある。それに、駆逐艦の私は弾薬も──」
金剛「──足りまセン。いえ、きっと足りなくなりマス」
響「弾薬は比較的余ってるはずだよ。足りなくなるなんて事は──」
金剛「──違いマス。足りないのは、燃料と耐久力、そして対空能力デス」
響「…………」
金剛「少し考えれば、私も分かりまシタ……。なぜ利根が、一人で迎撃に出たのかが……」
ヲ級「? …………?」
瑞鶴「……どういう事?」
599 = 1 :
金剛「戦艦の私は論外だと言うのは分かりマスよね……。空母である二人も普段は対空砲火をメインとする事なんてあまり無いはずなので、精度に心配が残りマス……」
響「…………」
金剛「そして響は駆逐艦なので、一回も攻撃を受けてはいけないのデス……。被弾すれば、装填している弾薬が全て無駄になりかねまセン……。そもそも、響の錬度は私達に及ばないのは分かりマスよね……?」
響「それは……」
金剛「極め付けは、燃料デス。恐らく、利根に全て補給すれば空になりマス。いつまで続くか分からないこの耐久レースでは、例え燃料のほとんどを射撃管制に費やしても足りるか分かりまセン……。しばらく実践や演習をしていなくて衰えていても、身体に叩き込んだ経験が死んでいる事は無いはずデスから……」
瑞鶴「…………だから、利根さんは一人で……?」
金剛「……きっと、そうだと思いマス。悔しいデスが……適任は、利根しか居まセン……」
ヲ級「でも、数が、凄い違う……」
金剛「……これは完全に私の予測デス。もしかしたら利根は、沈んだ仲間と同じ行動を執っているのかもしれません。出来る限り、私達を──いえ、提督を生かす為に……」
響「…………っ」ギリッ
響「本当に私達は、指を咥えて……見ている事しか出来ないのかな……」
金剛「響、勇気と無謀は違いマス。……それに、私達に出来る事はジッと待つ事デス」
響「ジッと待つ事が、出来る事……? 言っている意味が分からないよ、金剛さん……!!」ググッ
金剛「抑えて下さい響。そう言いたい気持ちは分かりマス。……よく、分かりマス。ケド、今ここで私達の誰かが身を曝け出したらどうなりマスか? 仮に無事だったとシテも、響は耐え切られる可能性がありマスか?」グッ
響「…………」
金剛「物分りの良い貴女デス。その行動がどれだけ危険で、どれだけ愚かか分かりマスよね」
響「……理解は出来ても、納得は出来ない」
金剛「良いのデス。それは……私も、私達も同じデス……」ソッ
響「金剛さん……私は、無力な自分が、悔しい……!」ギリッ
金剛「……信じまショウ。それも、強さの一つデス」
瑞鶴(私に艦載機さえあれば、ここまで劣勢にならないのに……。遠慮なんてせずに、良い艦載機を持ってきていれば残ってたかもしれなかったのに……!)
ヲ級(……でも、なんで味方が、攻撃して、きたんだろ)
…………………………………………。
600 = 1 :
利根「──落ちろ──落ちろッ!! 我輩は逃げも隠れもせぬぞ!!」ドォン! ドォン!
ガガガガッ──!
利根「ぐっぅ……!! まだじゃ……我輩はこの程度ではまだ倒れぬぞ! ──陸に居る分、長く戦えるのじゃからなぁ!!」ドォン!
利根(──ははっ…………。しかし、笑ってしまうよのう。一体、何隻の空母が居るのじゃ? 本当にこの島を集っておる蝿のように見えるぞ)
利根(救いなのは対地砲撃が無い事かのう。もしされておれば、本当に為す術など無かった)
利根「──ああ、そうか」
利根(今、初めてしっかりと分かった気がする。金剛と瑞鶴、響もこんな気持ちじゃったのかな。絶対に敵わないと分かる敵の数、必死で仲間を守ろうとする想い──そして、提督を悲しませたくないと願う気持ち)
利根(なるほど……なるほどじゃ。こんな気持ちを抱いたまま沈めば、今の我輩達の姿を見れば悲しむに決まっておる)
利根「すまん金剛、瑞鶴、響……。我輩は、今の今までボンヤリとしか分かっておらなんだ……!」ドォン! ドォン!
利根(母港へ帰ったら、手向けの花を贈ってやらねばな……)
利根「────? なんじゃ……? 艦載機が帰っていっておる……? ……諦めた? いや、そんな訳があるか。何かがあるはずじゃ。警戒をするに越した事はない」
ザッ──。
利根「……空母棲姫かの? 無事だったようじゃな。すまぬが、我輩は空から目を離す事が出来ぬ。いつ、あの艦載機が反転してくるかもしれ──」
──ドォンッ!!
利根「────カ、は……っ?」
…………………………………………。
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