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    元スレ鳴上「月光館学園?」

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    901 = 110 :

    鳴上「何で羊?」

    チドリ「最近、誰も彼もがそう見える」

    チドリ「ここにいる人だけじゃない」

    チドリ「私も、……貴方も」

    チドリ「迷える子羊だわ」

    鳴上「羊に、見える? 周りの人が……?」


    >なんだろう……

    >つい最近、誰かも似たような事を言っていたような気がするのだが……

    >どうしてそんな風に思うのか、はっきりとした心当たりが、ない。

    >ずっとこういう事が続いている気がして、なんだか気持ち悪い。

    >どうかしてしまったとでも言うのだろうか。


    チドリ「ものの例えよ。あまり深く考えないで」

    鳴上「……」


    902 = 110 :

    >鳴上たちがいるその雑踏の中で、不意に街頭の巨大モニターからニュースが流れているのが耳に届いた。

    >どうやら、昨日の衰弱死事件の続報のようだが、はっきりとした内容までは周りの騒音のせいで頭の中に入ってこない。


    鳴上「……なあ、チドリは死ぬ夢って見た事あるか?」

    チドリ「死ぬ、夢」

    チドリ「……」

    チドリ「あるわ」

    鳴上「え……」

    チドリ「誰かを殺そうとする夢も、誰かが死ぬ夢も、そして私が死んでいく夢も、よく見る」

    チドリ「それがとてもリアルで、……」

    チドリ「っ、アタマ……いたい……」


    903 = 110 :

    >チドリは頭を両手で抱えて苦しそうにしている。


    鳴上「だ、大丈夫か!?」

    チドリ「っ……」

    チドリ「……平気」

    チドリ「今日はもう、帰る」

    鳴上「途中まで送ろうか?」

    チドリ「平気って言ってるでしょ」

    鳴上「ん……じゃあ、気をつけて、な?」


    >心配ではあったが、チドリがそのままゆっくりと去っていくのを静かに見守った。



    『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のランクが4になった


    >……駅前から去っていこうとするチドリの足が急に止まった。


    チドリ「ねえ、悠。順平は悠に何か言ってた?」

    チドリ「……私のことで」


    904 = 110 :

    鳴上「チドリのことで?」

    鳴上「えと、またチドリの話し相手になってやって欲しいって言われた事ならあるけど」

    チドリ「っ……!」

    チドリ「……どうして」

    チドリ「なんで順平が悠にそんなこと頼むの?」

    チドリ「なんで順平がっ……」

    鳴上「チドリ?」

    チドリ「……順平なんて」

    チドリ「順平なんて、死んじゃえばいいんだわ!」

    鳴上「えっ……チドリ!?」


    >チドリは走り去って行ってしまった。

    >その最後の言葉は、涙声だったような気がする……

    >追いかけようとしたが、人が多くすぐに姿を見失ってしまった。

    >心配になって辺りを探してみたが、それ以降チドリの姿を見る事はなかった。

    >……


    905 = 110 :

    【夜】


    >あの後どうする事も出来ず、仕方なく寮に戻ってから長い間PCに向かった。

    >マヨナカテレビについては相変わらず自分以外にそれらしい目撃証言がないようだ。

    >何故、自分だけがあの番組を見たのだろう……

    >そこで語られた『落ちると死ぬ夢』も、自分の中ではもはやただの噂で終わらせる事は出来そうにない。

    >不思議とそう思っていたりもした。

    >しかし、これ以上はどうやって調べればいいのかわからない。

    >残された道は、やはりパオフゥが言っていた過去に悪夢から生還したとされる『伝説の男』を探す事だろうか。

    >……彼はどうやって生き延びたのか。

    >もし、ちょっとした話だけでも聞く事が出来れば、何かのヒントになるかもしれない。

    >また、クラブ エスカペイドへいってみよう。

    『伝説の男』はそう簡単に見つからないかもしれないが、それ以外にもあそこにはまだ話を聞きたい人物がいる。

    >今夜は、ヴィンセントに会えるだろうか……


    906 = 110 :

    >……


    クラブ エスカペイド


    >店内は若者で賑わっている。

    >一度店内をぐるりと見回ってみる事にした。

    >男の客は割といるが、死地から生き延びた『伝説の』と付きそうな風体の人物はいそうになかった。


    鳴上(ここの常連客の男ってだけじゃ明らかに情報不足だもんな……)

    鳴上(パオフゥは他にその男の情報を持っていないんだろうか。また今度、聞いてみよう)

    鳴上(……ん?)


    >昨日と同じカウンターの席に、ヴィンセントの姿を見つけた。

    >彼も同時にこちらの事に気付いたようだ。


    907 = 110 :

    ヴィンセント「よう。昨日の学生」

    鳴上「こんばんは」

    鳴上「それと、俺の名前は鳴上悠です。よろしく」

    鳴上「昨日の約束、守りましたよ」

    ヴィンセント「ん? ……ああ、あれね。お前も律儀だな」

    ヴィンセント「そういう男はモテるぞ」

    鳴上「モテるとかモテないとかどうでもいいんで、貴方も約束守ってください」

    鳴上「昨日の話の続きを聞きにきました。それとドリンクを一杯、ごちそうに」

    ヴィンセント「……せっかちなのはいけないな」

    ヴィンセント「とりあえず、隣にこいよ」


    >ヴィンセントの隣の席に座った。


    908 = 110 :

    ヴィンセント「彼に同じのを」

    店員「かしこまりました」


    >目の前に、また謎の黒い液体が出てきた。


    鳴上「いただきます」

    ヴィンセント「……鳴上、って言ったか?」

    鳴上「はい」

    ヴィンセント「お前はなんであの夢の噂を気にしている?」

    ヴィンセント「どこから出たのかわからない、お伽話みたいなものを」

    鳴上「それは。……」

    ヴィンセント「魔女に呪い殺されるのは嫌か?」

    鳴上「まあ、自ら望んで殺して欲しいとは思いませんよ。そんなハードなマゾじゃないんで」

    ヴィンセント「ふーん?」


    909 = 110 :

    鳴上「だから、そんな夢を見ないで済む方法がわかるなら知りたいじゃないですか」

    ヴィンセント「そうだな。そう思うのが普通だ」

    鳴上「それで、そんな夢を見るようになる人間の条件って、魔女が呪う対象って具体的にどういう人物なんですか?」

    ヴィセント「……浮気男」

    鳴上「えっ?」

    ヴィセント「恋人がいるのに、他の女に現を抜かしているような男なんかが狙われるって話をよく聞くな」

    鳴上(なんだそのふざけた話は……)

    鳴上「なんかが……って事は、他の理由で見るようになる人間もいるんですか?」

    ヴィンセント「まあ、そういう事になるよな」


    910 = 110 :

    ヴィンセント「結局、様々だって事だ。その中でも、そういう例が割と多いっていう話」

    鳴上「……」

    ヴィンセント「鳴上は、浮気をした事は?」

    鳴上「ありませんね」

    鳴上「まず、本命がいた事がありませんから」

    ヴィンセント「へえ。きっぱり言ったな」

    ヴィンセント「聞いた話によると、男の七割は浮気の経験があるそうだ」

    ヴィンセント「お前はレアケースの方って訳だな」

    ヴィンセント「ま、十代の若い奴で浮気経験があるヤツなんて、それほどいそうにないか」

    鳴上「……ヴィンセントさんはあるんですか? 浮気の経験」


    911 = 110 :

    ヴィンセント「あるよ」

    鳴上「そっちも、きっぱり言いましたね」

    ヴィンセント「誤魔化してどうにかなる罪って訳じゃないからな、あれは」

    鳴上「罪?」

    ヴィンセント「罪だろ」

    ヴィンセント「自分の恋人の未来を、俺なんかのせいで台無しにするところだったんだ……」

    ヴィンセント「罪は拭う事は出来ても、そうしたからって綺麗に消し去る事は出来ない」

    ヴィンセント「浮気を清算した今でも、あの時の事を思い出すと自分で自分の事を殺したくなるね」

    ヴィンセント「……浮気ごときで大げさに言い過ぎだって思うか?」

    ヴィンセント「でも、俺は……」

    ヴィンセント「……」


    >ヴィンセントは、ドリンクを喉に流し込んで黙ってしまった。


    912 = 110 :

    鳴上「……」

    鳴上「ヴィンセントさんは優しい人なんですね」

    鳴上「だから、そんな風に今でも自分を責めてるんだ」

    ヴィンセント「優しかったらそもそも浮気なんてしねえよ」

    ヴィンセント「……」

    ヴィンセント「なあ、お前はさ」

    ヴィンセント「他人の未来を奪ってでも、何かを手に入れたいって思った経験……あるか?」

    鳴上「え……」

    鳴上「なんの話ですか、突然」

    ヴィンセント「誰かの可能性を摘みとるような男……」

    ヴィンセント「そんな奴に、呪いはやってくる」

    鳴上「!」


    913 = 110 :

    ヴィンセント「……って、これもどっかで聞いた話なんだけどな」

    鳴上(この人……)

    鳴上「あの、」

    ヴィンセント「さ、話はもうこれで終わりだ」

    ヴィンセント「子供はもう帰って寝る時間だぞ」

    ヴィンセント「俺もあまり遅くなったらカミさんにどやされる」

    ヴィンセント「じゃあな、よい夢を」


    >ヴィンセントは二人分のドリンク代を置いて帰っていった。


    鳴上(行ってしまった……)


    >彼はこの件について、もっと何かを知っていそうな気がする……

    >またここにやってくれば話を聞けるだろうか?

    >そんな事を考えながら、奢ってもらったドリンクを飲んだ。



    『ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント』のランクが2になった


    914 = 110 :

    >“誰かの可能性を摘みとるような男”

    >自分は今まで生きてきた中で、そんな真似をした事などないつもりだが……

    >もし仮に、気付いていないだけで誰かが自分のせいで犠牲になるような事が今まであったのだとしたら。

    >それは、呪われるに足る理由になるのだろうか。

    >……自覚がないという、それ自体が罪であるような気がする。

    >そんな事を、ふと思った。


    >…

    >……

    >………





    「あ、やっぱりここにいた♪」


    915 = 110 :




    それが罪で、これが罰だというのなら、甘んじて受けるべきなのだろうか――


    Next→

    ――stage 3 Torture Chamber


    拷問刑場――



    916 = 110 :

    >>881
    あの双子いいよね


    これで終わります

    また次回

    917 :

    乙でした

    918 :


    ちょっと番長が何言ってるかわかりません
    某4人娘に聞かせたらどういう反応するんだろうか

    919 :

    >>918
    アニメ版準拠ならひじょーに仲がよくても友達どまりだからなぁ

    920 :

    おつおつ
    菜々子の勘パネエ

    922 :

    >>918
    友愛の証としてカレーとオムライスをごちそうしてくれると思う

    923 :

    ナナちゃん怖いよw

    正妻の勘パネェw

    924 :

    しかし番長、あの夢から生きて脱出出来るってことはパズルもやれるんだな。
    こりゃアサクサのゲームセンターに行ってもらいたいぜ

    925 :

    >>924
    ステMAXの番長にはパズルなんぞ容易いんだろうさ

    926 :

    面白いアトラスオールスターですね。携帯アプリってデビルサバイバー2?
    誰かの可能性を摘みとるような男か、番長はP4で犯人(逃げ切ることもできた)とか、シャドウになりたいっていう人々の
    可能性を摘み取ってるからな。ヒーローは大変だな。

    とにかく面白かった。
    が、キャサリンの話が関わってきたあたりから番長がなにかおかしくないか?
    ペルソナ能力の制限も気になる。

    とにかく続きをお願いします

    927 :


    Night mare


    >……

    >気付くとまた石の階段や壁が自分の目の前に立ち塞がっている。


    鳴上「っ……これで、ここに来るのも三回目、か」

    鳴上「一度見たら毎晩来るようになるって話、本当だった訳か」

    鳴上「……ん? 俺、クラブに行ってからその後……いつ帰って寝たんだ?」


    >起きれば夢での事が、夢をみれば現実での事が曖昧になる。

    >こんな事がずっと続いていたら気がおかしくなってしまいそうだ……

    >しかし、ここで泣き言を吐いても何にもならない。


    鳴上「とにかく今は、少しでも上へ行く事。落ちないようにする事。これが最優先だ。そして……」

    鳴上「カテドラル……か」

    鳴上「……死んでたまるか」


    928 = 110 :

    >……


    踊り場


    >少し慣れてきた事もあるのか、第一エリアは割と簡単に越せたような気がする。

    >しかし、今回訪れた場所はその先々にトラップがしかけてある石が多く存在している。

    >上に乗ると無数の針が飛び出してくるという代物なのだが……

    >一歩間違えると簡単に串刺しにされてしまうので、決して油断は出来ない。

    >実際、一緒に登っている羊の何匹かがそうなったところをこの目で見てしまっていた。

    >……この階層はあといくつエリアがあるのだろう。

    >まだこんな危ない仕掛けがいくつも待ち受けているというのか……

    >出来る事ならば、少しでも早く多く上へと登っていきたいところだが、体力が追いつかない。


    929 = 110 :

    鳴上「夢の中なのにこんなに疲れるなんて……ホントにふざけてるな」


    >あの告解室に行くのは少し休んでからにしよう。

    >聞いてくれるかはわからないが、他の羊たちにも声をかけて少し話をしてみようか。


    「おい! そこのキノコ頭の羊!」


    >と思っていたら、向こうの方から話しかけてきた。


    鳴上「それ、俺の事?」

    「そうだよ。他に誰がいんだよ!」


    >帽子をかぶった羊がこちらに近付いてくる。


    鳴上(この帽子、どこかで見た事あるような……?)

    帽子の羊「なあ! これいったい何が起こってる訳!? 意味わかんねーんだけど!」

    鳴上「もしかして、そちらもつい最近こちらに連れて来られた口で?」

    帽子の羊「そちらもって事は、……そちらも?」

    鳴上「ああ。そうだ」


    930 = 110 :

    帽子の羊「うっわ、マジかよ……やっと話が通じそうな奴に会えたと思ったのに」

    帽子の羊「力は使えないみたいだし、お手上げ侍だぜ……」

    鳴上「力?」

    帽子の羊「あーあーいやいや、こっちの話!」

    帽子の羊「……なあ、ここって落ちたら生きて帰れないって話みたいだけど、それって」

    鳴上「嘘じゃないらしい」

    帽子の羊「……」

    帽子の羊「……チクショウ、なんでこんな事に!」

    鳴上「ここに連れてこられる理由に心当たりは?」

    帽子の羊「ねーよんなもん!」

    帽子の羊「明日やっとまたアイツのところに行けるってのに……」


    931 = 110 :

    帽子の羊「おい! どうしたらここから出れるか、お前何か知ってるか!?」

    鳴上「とにかく上へ登れって。それで、カテドラルってところまで行けばいいとか……」

    帽子の羊「は!? カテ……カテーテル!?」

    帽子の羊「よくわかんねーけど、登るしかないんだな! よし!」

    鳴上「あっ、ちょっ……!」


    >帽子の羊は走っていってしまった。


    鳴上「……。やっぱり、あの感じも何処かで……」

    鳴上「気のせい、か?」

    鳴上「俺も、あまりゆっくりはしてられないな」


    >告解室に向かう事にした。

    >……


    932 = 110 :

    告解室


    鳴上「おい、いるんだろ?」

    代行人「……ああ、待ってたぞ。まあ、まずは座れ」


    >昨夜その場所にいた代行人の声だ。


    代行人「もうこの世界にも順応してきてるみたいだな」

    鳴上「そうなる前に、ここからおさらばしたかったけどな」

    鳴上「だから、早いとこカテドラルへ行きたい」

    鳴上「あとどのくらい登れば辿り着けるんだ?」

    鳴上「まさか……三桁や四桁の階があったりはしない、よな?」

    代行人「あー、その事だけどな」

    代行人「管理者が本気で頑張ってくれてるみたいだぞ」

    鳴上「え?」


    933 :

    真Iにあったラスダンのカテドラル全マップを埋める作業のキツさは、やった人じゃないと分からないだろうな

    934 = 110 :

    代行人「昨夜まではこの上がそれはもうぐっちゃぐちゃで、300近くまで階層があって中身も見る度変わってたらしいんだが……」

    代行人「なんとか元の構造に戻りつつあるってさ」

    代行人「ここが第三階層の一つ目のエリアが終わったところだから……」

    代行人「この階層で残っているエリアはあと二つ。それが登りきれても、あと五つほど大きな階層が残っている計算になるようだ」

    代行人「でも最後まで行かなくてもいいみたいだぞ。カテドラルは大きな階層の中の第七階層目にあたる場所にあるって話だから」

    代行人「……まあそれも、ここがきちんと元通りになればの話だけどな」


    935 = 110 :

    鳴上「昨日もこの世界を修復してるとかなんとか言っていたけど、なんでそんな事してるんだ?」

    鳴上「ここは元からおかしな場所だけど……今はさらにおかしくなってるって事なのか?」

    鳴上「その管理者の手にもあまるくらいに」

    代行人「そういう事だ」

    代行人「この世界は今、ある力の影響を受けて歪んで壊れ不本意な形で再構築されてしまっている状態らしい」

    代行人「だから実を言うとここは、管理者の知っている世界とは厳密には別物になってるって訳だな」

    代行人「この先に何が起こるか……あいつにもわからないんだと」


    936 = 110 :

    鳴上「それじゃあ……」

    鳴上「カテドラルに辿り着いても、どうにもならないかもしれないって事もあるのか?」

    代行人「あるかも、な」

    鳴上「……」

    代行人「なんだ。意味がないかもしれないなら、諦めるか?」

    鳴上「……いいや」

    鳴上「進むに決まってるだろ」

    鳴上「何もなかったとしても、道自体が閉ざされてないのならな」

    鳴上「途中で何かいい方法が思い浮かぶかもしれないし」

    代行人「……へえ」

    代行人「オッケー、わかった。じゃあ、ここでの質問は飛ばして、次の告解室で聞く事にしよう」

    代行人「早く先に行きたいようだから、な?」

    鳴上「ああ」

    代行人「じゃあ、次のエリアへ行こう」


    >告解室が上昇を始めた。

    >……


    937 = 110 :

    第三階層 第二エリア


    鳴上「……なんて、アイツにあんな事を言ったのはいいけど」

    鳴上「カテドラルを目指す事が無駄だとしたら、俺は……」

    鳴上「やめよう」

    鳴上「悪い方へ考えるのは……」

    鳴上「……今回は、一段と高い場所だな。上がよく見えない」

    鳴上「……行くか」


    >……


    踊り場


    >時間はかかったが、第二エリアを無事突破し、その先の踊り場まで辿り着いた。

    >串刺しになる羊も、落下していく羊も、多くなってきている。

    >次にああなるのは自分かもしれないなんて、考えたくもなかった……

    >だが、代行人の言葉を信じるならば、この第三階層は次のエリアで終了の筈だ。

    >今夜のうちに一区切りつければいいのだが……


    鳴上「……あれ? そういえば、さっきの帽子の羊の姿がないな」

    鳴上「もうこの階層をクリアしたんだろうか」

    鳴上「それとも……」

    鳴上「……」


    >嫌な想像が後をたたない。

    >……早く、告解室へ行こう。


    938 = 110 :

    告解室


    鳴上「来たぞ」

    代行人「ああ。座れよ」

    代行人「……随分手こずってたみたいだな。こんなんで、この先の最終エリアを越せるかな」

    代行人「次はまたデカいのがやってくるぞ」


    >デカいの……

    >巨大ラブリーンと魔女犬がまた襲って来るのだろうか。

    >せめてペルソナの力があればもう少し楽に進めるのだろうが……


    鳴上「……どうしてここだと使えないんだ?」

    代行人「それは、ここが『そういう世界』だから、としか言いようがないな」


    >聞いたつもりで呟いた訳ではなかったのだが、代行人はなんの事を言っているのか理解しているようだ。


    939 = 110 :

    代行人「仮にお前以外にもあの力を持つ奴らがここに来てるとしたら、やっぱり使えてない筈だぞ」

    代行人「本来、この場所は『お前たちの世界』とは性質の異なる『別の世界』に存在するものだった」

    代行人「それが、ある人間の存在が原因で繋がってしまったというだけだからな」

    代行人「ここのルールはそのまま『別の世界』を準拠にしている訳だから、あれが扱えなくて当然だろ」

    代行人「……そうでなくとも、非常に相性が悪いようではありそうだけどな」


    >言っている意味がよくわからない。


    940 = 110 :

    鳴上「……ちょっと待った。ある人間が原因ってのはなんだ?」

    鳴上「もしかして……そいつが、この夢の元凶なのか!?」

    代行人「……そうとも言えるし、違うとも言える」

    鳴上「何だって……?」

    代行人「少なくとも、その人間にすべての責任がある訳ではない」

    代行人「彼もまたこの夢にとらわれた犠牲者のひとりだしな」

    鳴上(彼……という事は、男か?)

    代行人「お前も知ってる人間だよ」

    鳴上「!?」

    鳴上「誰なんだ!?」

    代行人「そんな事、ここで言ってもどうせ忘れるだけだ」

    代行人「聞いてばかりいないで、少しは自分の頭で考えてみたらどうだ?」

    鳴上「……」

    代行人「無駄なお喋りはやめて、忘れる前にこちらからの質問に移るぞ」

    鳴上「……ずっと忘れてればよかったのに」


    941 = 110 :

    機械的な声「第三問です」

    機械的な声「肉と野菜どちらが好きですか?」



    『肉』と『野菜』のロープが垂れ下がってきた。



    鳴上「もしかしてさ、お前の姿も羊だったりするのか?」

    代行人「ん?」

    鳴上「あまりにも悪ふざけが過ぎるなら、お前をジンギスカン鍋にしてやるからな」

    鳴上「……こっちだ」グイッ

    代行人「ふーん、そうか」

    代行人「よし。じゃあ、お待ちかねの最終エリアへ行こうか」

    代行人「グッドラック」


    >告解室が動き出した。


    >……


    942 = 110 :

    第三階層 最終エリア


    >ここを越えれば、次は第四階層だ。

    >スタートが肝心。勢いで登りきってしまおう。


    鳴上「ッ!!」


    >体に大きな振動を感じる。

    『デカいの』が来た……!


    『フフ……フフフッ……』

    鳴上「え――?」


    >やってきた『デカいの』は、昨夜現れた巨大ラブリーンと魔女犬





    >……ではなかった。


    『さあ、そこに跪きなさいッ!!』

    鳴上「あれは……トモエ……じゃない。あれは」

    鳴上「里中の、シャドウ……!?」


    >巨大な千枝のシャドウが下から迫ってくる……!


    943 = 110 :

    鳴上「ど、どうしてだ!? 里中のシャドウは里中のペルソナに生まれ変わった筈だろっ!?」

    シャドウ千枝『逃げんなぁっ!!』


    >巨大な千枝のシャドウは持っている鞭を振り下ろし、足場を崩そうとしてくる。


    鳴上「逃げんなって言われたら逃げるに決まってるだろっ!」

    鳴上(くそ……ペルソナが使えないのがこんなに不便だなんて!)


    >迫る攻撃と無数の罠の両方に気を使いながら登っていくのは至難の技だった。

    >何度も千枝のシャドウの攻撃からくる振動に足を止められ、落ちそうになり、どう避けても絶対に渡らなければならなくなるトラップが上へ行くのに比例して多くなる……

    >しかしそれは、同時にゴールが徐々に近付いているという証でもあった。

    >それを決定付けてくれる鐘の音も耳に届いてくる。

    >だからといって気は抜けない。

    >一番上にある扉に手が届くまでは……!


    944 = 110 :

    鳴上「――着いた!」


    >手に触れた、扉の取っ手を勢いよく引っ張った!


    シャドウ千枝『私の靴の味を知りなさいッ!』

    鳴上「なっ……!?」


    >千枝のシャドウの靴の裏が顔面に迫ってくる!

    >……しかしそれも、扉から放たれた光の衝撃が消し去ってくれた。


    シャドウ千枝『キャアアアアアアアア!!』


    >千枝のシャドウは完全に消滅した。





    代行人「おめでとう。これで第三階層、拷問刑場は終わりだ」

    代行人「見事な登りっぷりだな……見ていて飽きなかった」

    代行人「明日の夜、また会おう」


    >…
    >……
    >………


    945 = 110 :

    3rd day


    05/10(木) 曇り 自室


    【朝】


    鳴上「っ……!」

    鳴上「……朝、か?」

    鳴上「はあ……」


    >なんだか眠った気がしない。

    >また夢を見たようだが、やはりよく覚えていなかった。

    >良く覚えていないといえば、昨夜の事もだ。


    鳴上「俺、クラブから何時帰ったんだ……?」

    鳴上「……ハッ!?」


    >昨日の朝の似たような状況を思い出して、思わず勢いよく隣を振り返ってしまった。

    >……

    >どうやら、またあの女が隣で寝ているというような事はなかったようだ。


    946 = 110 :

    鳴上「良かった……」

    鳴上「今、何時だろう」


    >枕元にあった携帯で時間を確認した。

    >時間はいつも起きている時刻だったが、それと同時にメールが一件届いている事に気付いた。


    鳴上「里中からメール? 届いたのは昨日の、……夜か」

    鳴上「……」


    >メールを開いた。


    947 = 110 :

    from:里中千枝

    やっほー鳴上くん!突然ごめんね。

    元気してるかなーってちょっと気になっちゃってさ。

    少し前に会ったばっかりなのにね。

    この間のゴールデンウイークの疲れとか出てない?

    そういう時は肉を食べるのだ。肉を!

    時間があったら電話したいなーなんて言ってみたり。

    色々忙しいかもしれないし、大変だろうけど無茶したらダメだからね?

    なんかまとまりのない事、色々言っちゃってるかな?(汗)

    今日はこのへんにしとくね。じゃあまた!

    追伸:今日、靴を新調しました。

    今履いてるやつ、だいぶ踵がすり減っちゃてたからさー。

    たぶんこれ、花村に蹴り入れまくってたせいだよ。

    今度、花村がいかにアホかって話も聞いてね……知ってるかもしれないけどさ(笑)



    948 = 110 :

    >メールには、新しく買ったと思われる靴の画像が添付されていた。

    >陽介は今度、この靴の跡まみれにされるのだろう……

    >……

    >自分の事を気にしてくれている内容はとても嬉しいのだが、何故だか悪寒が走る。

    >何かにせっつかれるようにしながら、千枝へ差し障りのない返信メールを急いで打って送った。



    >……千枝のメールで思い出した事がひとつ出てきた。

    >部屋の隅に置いてある、また荷解きをしていない鞄を開けた。


    鳴上「結局、また持ちかえってきちゃったな。この制服」

    鳴上「叔父さんの家の部屋もあのままなんだし、あっちに置いとけばいいかと思ったんだけど……」

    鳴上「……」


    >八十神高校の制服をハンガーにかけ、月光館学園の制服の隣に吊した。

    >そんな風にもたもたしていたら、時間もなくなってしまったようだ。

    >学校へ行く準備をしなければ……


    949 = 110 :

    >テレビをつけて、ニュースを耳に入れながら、支度をした。


    『……先日お伝えした謎の連続衰弱死事件、新たに犠牲者が発生しました』


    鳴上「!!」


    >ニュースの内容は、同じような衰弱死体が新たに三件出たというものだった。

    >これで今判明しているだけで、合計七人の人間が似たような死に方をしている事になる。

    >亡くなった人物はいずれも男性で、接点らしい接点はないがあまりにも不自然な死体の状況から、事故ではなく悪質な無差別殺人の可能性もあるとしているようだ。

    >また、三年前にもこのような事件が連続して起きた事についても話にあがっており、どのチャンネルでもその話題の事ばかり報道していた……


    鳴上(桐条さんがこの事を調べているって言ってたけど、何か有力な情報を掴めたんだろうか)


    >後で聞いてみよう。

    >今は、メティスとラビリスと一緒に学校へ向かう事にした。

    >……


    950 = 110 :

    【昼休み】


    月光館学園 3-A 教室


    ラビリス「悠、ちょっとええ?」

    鳴上「ん?」

    ラビリス「メティス、悠借りるわ」

    メティス「了解しました。いってらっしゃい」

    鳴上「えっ、どうした?」


    >ラビリスに引っ張られて教室から出た。


    ラビリス「生徒会室がどこか案内して欲しいんやけど」

    鳴上「生徒会室? それならほら、あそこだぞ」


    >目の前にある生徒会室を指さした。


    ラビリス「なんや、こんな近くにあったんか!」

    ラビリス「わざわざ悠に聞く事もなかったかー、ごめんな連れ出して」



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