元スレ刹那「別世界のガンダムだと…?」
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901 :
最近見つけて読んで追い付いたが、年単位とかすごいね~
オルフェンもいれちゃう?(無茶ぶりではない)
902 :
イグルー2の死神か
結局あの死神が何だったのか今一わかんなかったな
903 :
>>894
4年もやってればね
904 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サイコ・ガンダムが発光した。頭、腹部、両手の指先、装備する全ての砲口が光り、
周囲の全てを破壊し尽くす。
ロラン「何を、やっているんだ……?」
ターンエーとAGE-1はビームを撒き散らす様を見遣る。
フリットと共に敵ではなくただ周りの建造物を破壊しているのを呆然と見てしまっていたのだった。
サイコ・ガンダムの全身を遮るものは周りに何もない。次の行動を起こした。
四肢を収納しモビルアーマー形態となって地上すれすれで滑る様に疾走する。巨大な塊の行く道程には、呆然としていた二機。
―――障害物を除き、こちらに体当たりを仕掛ける為だったのだ。
ターンエーと、AGE-1は一目散に逃げ出し、それぞれ被害の及ばない処へ飛び込んだ。
フリット「うああぁっ!」
自身の身の丈以上の、黒く巨大な塊が通り過ぎる。
通り過ぎると同時に、サイコ・ガンダムの巨体を自由に飛び回らせるミノフスキー・クラフトの“見えない力”による衝撃が来た。
尻餅を付いていたAGE-1はその勢いに機体を揺さ振られながらも、スラスターの勢いも使って立ち上がる。
視線の先には、振り向いた塊が再び迫ってくるのが見えた。
フリット「ハァ……!……もう一度来る……!」
905 = 904 :
ロラン「あのバリアーはビームだけを通さないはずだ……!」
ターンエーがサイコ・ガンダムの前に出た。
ロラン「ターンエーなら、やって見せろ!」
弾倉付きロケットランチャーを放り投げて、自身の機体のパワーに懸ける。
胸部のカバーが開き、“マルチパーパスサイロ”と呼ばれる胸の倉庫に、出撃前詰め込んだミサイルポッドが現れた。
その全てのミサイルが発射され、サイコ・ガンダムへ突き進む。
だが全て拡散メガ粒子砲の光に燃え上がった。両者の間に炎の壁が挟まれる。
一瞬、炎に焼かれて笑う真っ白な女の顔が映った気がした。
ロラン「うっ」
とても強い衝撃が咄嗟に身を屈めたターンエーへ襲い掛かった。炎を越えた黒い壁―――サイコ・ガンダムの正面とぶつかったのだ。
拡散メガ粒子砲の発射口に身を晒さないよう姿勢を低くし、迫る壁を受け止める態勢で以ってターンエーは踏ん張る。
脚部裏側のスラスター・ベーンが推進力を放出して、サイコ・ガンダムと押し合う。その勢いは見事、轢き潰そうとする黒い塊を抑え付けた。
ロラン『撃てぇーッ!!』
鋭い叫びを合図に、ロケットランチャーを捕まえていたAGE-1がロケット弾を放つ。
906 = 904 :
フリット「壊れろよ!!」
タイタスの大きい腕で上手く持ってトリガーを引き、弾倉の中身の限り撃ち続ける。
全て命中し弾が炸裂して叩いても、サイコ・ガンダムの装甲は打ち崩せない。
AGE-1は弾切れしたロケットランチャーを投げ捨てて突撃を仕掛けた。合わせるように、ターンエーもビームサーベルを抜こうとする。
その時、サイコ・ガンダムの拡散メガ粒子砲が光り、触れる者を自身ごと鋭い輝きで包む。
ロラン「…………ッ!!?」
突き刺さる眩しさは、身を屈めてようと容赦なく降り注いだ。
機体を焼く光はターンエーの力を奪っていき、そして操り糸を失った人形の様に地面へ崩れ落ちて、空へ上がる巨体を仰ぎ見た。
見上げる瞳に光は無い。
フリットは見ているしかなかった。ターンエーの様にはいかない。機体の形を留めていることだけですごいのだ。
五体は無事でも、ターンエーの様子は惨たらしく、頭や胸部の装甲がビームで溶かされた為に酷く抉れている。
細かい光が飛び散った痕として、ボツボツと小さな穴があいていた。
目の光は戻らず、仰向けに倒れたままだった。
フリット「あのガンダムは……!」
黒い塊は雲の薄い青空に浮かんでいた。ビームを噴き出していた部位が地上からも見えるくらいに火花をあげている。
接触しそうなほどの距離で放った攻撃に、自身の機体も無事とはいかなかったのだ。火花はそのままに、奥へ移動を始めた。
フリット「バリアが、破れる?」
―――《そうだ。ロラン・セアックの犠牲を無駄にするんじゃない》
頭の中に響いた女の声が、フリットの闘志をさらに燃やす。
確信は持てないが、あの無茶な攻撃でバリア機能に支障が出ているのではないかと考えたのだ。
907 = 904 :
いざ、サイコ・ガンダムを追いかけようとしたAGE-1の背後にジェスタ・キャノンが飛び込んできた。すぐに距離を取り、対面する。
そして向かい合う相手の背後に、落下しながらジェスタ・キャノンに爪先を突き出そうとするF91を見た。
後ろから首を蹴り飛ばされて、ジェスタ・キャノンの頭が飛ぶ。
怯んだ所に、AGE-1は片膝三つの放出部から出た、ビームの短い刃を突き刺した。ビームニーキックである。
そしてジェスタ・キャノン撃破による爆発を背に、ターンエーのコックピット・キャノピーにしゃがんで手を置くF91に駆け寄った。
シーブック『ロランは無事だよ。でも、ターンエーから出られないようだ』
フリット「……!?……でも、よかった」
AGE-1のカメラでよく観察するとターンエーの、人間に例えて臍近くにあるコックピットはビームの影響を受けていないことが分かった。
ガンダムが守ってくれたのだ。嬉しさと共に、すぐに亡くなったと断じてしまった自身を恥じた。
シーブック『あの黒いガンダムには死神が憑り付いている』
フリット「死神……?」
シーブック『黒い衣服を来た白い女の姿と声に注意するんだ。―――奴は僕たちの魂を食らおうとしている』
フリット「声……あ」
シーブックはサイコ・ガンダムに見た“憎しみの形”の正体を、“死神”と判断した。
コックピットに現れた女が「魂を刈り取る」という旨の言葉を発した事からである。そして、女は言葉巧みにまたはそのおぞましい幻覚で
自分たちを動かし目的を果たそうとしていて、“死神”はあの黒いガンダムと戦わせるよう仕向けて返り討ちに合わせようとしていると考えた。
さらに、“死神”の行動を助けているのはあの光を放つモビルスーツだろう、と。
彼のニュータイプの感覚は、戦いの元凶がリグ・リングであることまで突き止めたのだ。
このようなことを話すシーブックは、「自分は突拍子のないことを言っている」と恥ずかしがっていたが、
「僕も“死神”の声を聞いたんです!」とフリットは真剣に返した。
離れた所で、サイコ・ガンダムはモビルスーツ形態に変わって地上に降りていた。こちらとの対決に臨もうとしている。
シーブックはその肩に死神が立っているのを一瞥し、敵の動きに気を付けながらAGE-1と共に進んだ。
909 :
面白いな
910 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
彼らの行く先に、崩れた建物の間からジェスタ・キャノンが姿を現した。
ボロボロの装甲が目立つこの機体の、脚部両側面に装備するグレネード・ランチャーによる攻撃が対する二機の行く手を阻む。
その時、どこからかのビームの一撃がジェスタ・キャノンを爆散させた。
シロー『一機撃破!こいつらは後何機だ?』
Ez-8のものだった。サイコ・ガンダムが猛威を振るう影で、追跡し合った果ての撃破である。
シーブック『シローさん!ターンエーがやられました!ロランは無事です!』
シロー『ロランが……!どうするつもりだ』
シーブック『ロランが狙われる前に、今いる僕達で敵の指揮官を一気に叩きます!』
フリット『空に浮かぶモビルスーツです!あれが死神を操っているんですよ!』
Ez-8はエネルギー切れしたビームライフルを背負うウェポンコンテナラックに納め、100㎜マシンガンと持ち替える。
シロー『成程な。暴れ回る黒いガンダムに気を取られていたが、あの空のモビルスーツが指揮官か!……死神ってなんだよ!?』
フリット『黒いガンダムに憑りついている死神を、あの空にいるモビルスーツの放つ光で僕たちにも見せて混乱させようとしているんです!』
シーブック『黒い衣装の、黒髪の女が見えるかもしれません。言葉に耳を貸さないでください』
シロー『うん。……敵が幻覚を見せる兵器を使っているのか。分かった、気を付ける』
シーブック(全力で当たらねば、あの二機を倒す事なんて出来ないんだ)
サイコ・ガンダムへの進軍と共に心の中でロランへの謝罪は続いていた。
あの時無事を確認したと共に、ロランにはフリットのものと同じ内容を話しており、彼から自分よりも敵の撃退を優先して欲しいと頼まれていたのだ。
そして、決断をした。頭の中で囁かれる言葉に頭を満たされながら。
二人には気付いて欲しくない。
この決断が、自分の意思なのか“死神”の囁きによるものなのか、判別がつかないのだ。
僕の頭は、“死神”に苛まれ続けている。
―――《そうだ。進め。仲間の命を糧にして。生き残る為に》
911 :
迫りくるガンダム達に向かって、サイコ・ガンダムが幾重ものビームを放った。
三機はそれぞれ散り散りになって遣り過ごす。このまま戦えば、ここも焼野原となってしまうだろう。
フリット『ドモンさんは一体どこへ……通信が繋がらないんです!』
シロー『短い縁だが、そう簡単にやられる奴ではないことは十分知ってる!』
Ez-8とAGE-1はサイコ・ガンダムに向かって行く。
シロー『やるぞ皆!ロランが待ってる!シーブック、一番飛べるのはお前のガンダムだ!』
フリット『僕たちがガンダムを引き付けます!』
シーブック『頼みます!』
F91は空のリグ・リングに向かって飛び上がった。
サイコ・ガンダムはF91に頭を向け、頭部のビーム砲でF91を狙い撃とうとする。
しかし、背中からの衝撃がそれを阻んだ。
ガロード「こいつがニュータイプの乗ったガンダムか!」
戦場に追いついた、陸戦強襲型ガンタンクの砲撃だった。
擬似人型形態で挑み、続けて砲弾を撃ち込む。寸でのところで避けられ、シールドで受け止められる。
そして、反撃にビームの雨が降る。
無限軌道、特異な脚部による機動性は著しい悪路でも発揮され、襲い掛かる攻撃を何とか躱してみせた。
その命の攻防が、ガロードにサイコ・ガンダムのパイロットを意識させた。
ガロード「こっちの動きが読まれてる……!あのガンダムのパイロットの“力”なのか!?」
シロー『ガロード!あのガンダムはビームを通さないバリアーを持っている!ガンタンクの装備が頼りだ!』
ガロード「わかった!……お前を倒さなきゃ、みんなが無事に進めないんだ」
フリット『ガロード・ランさん!僕も一緒に戦います!』
ガロード「おう!行くぜ、新入り!」
陸戦強襲型ガンタンクの、背部スラスターや後頭部の傍についているドラム缶の様なものを留めるストッパーが開き、AGE-1が拾い上げた。
ガロード「一気に燃えるぜ」
AGE-1は空に跳び、陸戦強襲型ガンタンクは悪路を走り抜ける。
912 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
リグ・リングは、戦場の支配力を失いかけていた。
F91の猛攻は下界の戦況を見下ろす余裕を欠かせて、迫り来るビームにのみ注意を向けさせる。
それはまさに、シーブック・アノーに応えるF91の“力”だった。
両肩の放熱フィンと共にフェイスカバーを剥いて光を散らし、追い付こうとする姿は追われる側に威圧を掛けていく。
シーブック「機体が重い!重力があるってのは、こうも違うんだ!」
この猛攻はシーブックの焦りでもある。
動けないロラン。黒いガンダムと戦う地上の仲間。死神。ここでヤツを倒せば、この苦悩は終わるのだ。
その為には、空中戦において敵機に劣るとしても、F91の負担が大きいとしても必死で食らいつかなければならない、と飛び込んだ。
リグ・リングのパイロットの女も相手の思惑を読み取っていた。
そして、ガンダムF91とシーブック・アノーの組み合わせは、それを可能にするほどの威力であると。
「やってみせるさ!」
勝利を果たさんとする意気込みと共にリグ・リング胸部の拡散ビーム砲が光り、F91へ浴びせる。
だが、相手はそれを躱して視界から消えてみせ、再び下から浮き上がってその姿とビームサーベルを向かわせてきた。
「何だと!?」
リグ・リングは特徴的な両腕をぐるりと回転させて尖った先端を開き、ビームの刃を出して振り下ろされた一撃を受け止めた。
ぶつけ合いの中、F91のフェイスカバーが開き熱の籠る光を吐き出す。
シーブック『早く!ここから出てけよ!』
「ガンダムF91。宇宙世紀、次世代のガンダム・フォーミュラシリーズ。バイオ・コンピュータによるニュータイプ・パイロットとのシンクロ……流石の性能だ」
913 = 912 :
F91のビームサーベルを受け止めるリグ・リングの両腕が機体から外れた。
本体は飛び去り、F91は追い掛けようとするもその両腕―――ショットクローによるオールレンジ攻撃を受ける。
二つのショットクローは、ビームの刃を発生させるだけでなく、ビームの弾丸を撃ち出して遠近交互の攻撃を仕掛けてきた。
シーブックはそれらを遣り過ごしつつも、まだF91の射程圏内に残る相手を睨んでいる。
早く振り払いたい。その意思を込めて見詰めるのは敵よりも、体の放つ嫌悪感を抱く光であった。
シーブック(光を止めれば、死神は消える。あの、黒いガンダムのパイロットも―――)
その時、地上の戦況が動いたのを知った。フリット達による黒いガンダムへの攻撃が成功したのだ。
F91は飛び回るショットクローの一つを撃ち落とし、もう一つを振り切ってリグ・リングに照準を合わせる。
シーブック「こいつを撃てば!」
――――――《本当にそれでいい?》
死神が、頭の中で囁く。
914 :
おもしろいね
915 :
Gジェネの新作発表されたね
916 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Ez-8たちはサイコ・ガンダムの右腕の破壊に成功していた。
AGE-1の投げつけたナパーム弾がサイコ・ガンダムの右腕に命中し、その爆発を起点にEz-8と陸戦強襲型ガンタンクによる集中攻撃が行われた結果である。
フリット「やった!」
ガロード「いくら相手がニュータイプでデカいガンダム乗りでも、こっちには俺様とガンダム三機がいるんだぜ!」
シロー「まだ右腕一本だぞ!―――だが、この勢いで押し切る!」
相手を警戒しつつ、Ez-8は空になったマシンガンの弾倉を取り換える。
AGE-1突撃の為に、Ez-8も陸戦強襲型ガンタンクも弾薬をかなり消費していた。
ガンタンクは多重連装ロケットランチャーの弾を全て失っていた。
出し惜しみないその勢いがサイコ・ガンダムに損傷を与えたのだが、彼らがこの難局を乗り越えるには、力の差を埋める為にはより大きな勢いが必要だった。
しかし、戦力は消耗していく。それを心のどこかで抱いているからこそ、三機は灰色の瓦礫の上を必死で駆け回り、逆転の芽を探した。
サイコ・ガンダムは、身に着けている左腕の盾を留め具を外して下に落とし、左手のビーム砲を露わにして迎撃態勢を取った。
それは、目下に散らばるものたちへ向けて、ではなく眼光の先から迫るメガランチャー・ビームに対してのものだった。
917 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
再び見えた黒いガンダムは、右腕を失い胴体のビーム砲も壊れていた。
その大きく損ねた容姿にもう一息と判断し、ドモンは搭乗する兵器に期待を込める。
戦場を一時離れたドモンが見つけ出したのは、MSネモが乗り捨てたメガライダーであった。
悪霊の声に従ったのは当然快くはなかったが、この状況の打開への模索からメガライダーを手に入れた時の期待に一直線だった。
だが。
今、彼は悪霊の言葉に惑わされた、愚かな自分を直視させられている。
メガライダーの放ったビームは、サイコ・ガンダムの放てる全ての光によって受け止められ周りに細かな熱の塊を散らせていた。
人ならば飲み込まれているだろう大きさのものだ。
それは建造物の残骸や地上の瓦礫に、ボツボツと穴粒を開けていく。サイコ・ガンダムはバリヤーシステムによってその危険から逃れていた。
シーブック『何で!通信を聞いてくれなかったんです!?下にはみんながいるんですよ!』
突然入りだした通信機からの声を聞いた時、ここに至って、彼は悪霊―――“死神”に操られている事を思い知ったのだった。
ドモン「そんな」
そんな彼を、嘲笑い、死神は言い放つ。
―――《見えぬ者。心の曇り。この一撃が、私の欲する魂を与えてくれる……!》
ドモン「黙れ……!」
嗤う死神を精一杯睨みつけるが、存在が朧なモノに声を荒げるのは実に空虚で、情けなさを覚えるだけだった。
918 = 917 :
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シーブック「ドモンさん……どうして」
F91はリグ・リングを仕留めきれず、これ以上の機体の無理を避ける為にサイコ・ガンダムから距離をとって降下していた。
そして、惨劇を見た。
シーブック「シローさん!!」
サイコ・ガンダムに蹴り上げられた鉄の人形が空に舞う。そして、高層ビルに激突する。
シーブック「ああっ!?」
F91は飛び出した。
あそこにはフリットのガンダムとガロード・ランもいるハズだ、と。先に見える、黒いガンダムが降らすビームの雨の中にいるハズなのだ。
シーブック「―――!」
サイコ・ガンダムの眼と視線が互いにあった。憎しみの形。額からのビームがF91のいた場所を一閃する。
―――《ああ……!やはりお前だ!お前があの戦士の魂を私に差し出す……》
シーブック「死神め……!」
視線の先で、ビームの雨からAGE-1と陸戦強襲型ガンタンクが飛び出すのが見えた。それを覆うように、どす黒い死神の姿が現れる。
シーブック「消えろよ!」
―――《ロラン、シロー、ドモンはまもなく……そして後の二人も地に倒れ伏せる……お前だけだ。お前の“力”で、切れた糸に縋る戦士の断末魔を聞かせて》
シーブック「まやかすな!」
―――《忘れたのか……?あの時、奴を撃たず重力に従ったのは何故か……》
シーブック「呼び止めたのは、お前だ……!」
だが、自分はあの時、手を止めた。
その事実に、その行動の結果に自棄を起こしてしまいそうで、押し止めるには目の前の敵を叩くことに集中するしかなかった。
それこそが嗤う死神の目的なのだと理解しながら、洗脳は既に抗えない所まで及んでいた。
919 :
920 :
おつ
921 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サイコ・ガンダムの上では、死神の謀略によりF91から難を逃れたリグ・リングが、メガライダーに乗るゴッドガンダムに迫る。
「不似合いなものに乗っているな、ゴッドガンダム。……死神の力は絶大の様だ」
リグ・リングは残る片腕の尖端からビームを撃ちながら執拗に追撃。そしてメガライダーの体勢を崩し、ゴッドガンダムを地上へ落とした。
「フフフフフフ………サイコ・ガンダムへの攻撃失敗がそんなにショックか。キング・オブ・ハートの称号が泣いているぞ」
女は反撃の意思を感じないゴッドガンダムを見下ろし、そして地べたに仰向けで倒れるEz-8を一瞥して、
今もなおサイコ・ガンダムへの奮戦を続ける三機を見遣る。
「如何に足掻こうが貴様等は既に風前の灯火。我等ジェネレーション・システムに歯向かう者は消去されるのだ!フフフフフフ………!」
女は勝利の確信への喜びに酔いしれた所に、黒い靄がコックピットの中に立ち込めて死神が姿を現す。
面白くないモノが来た。
女は人形の様な瞳でそれと相対した。
「機械の身にも見えるとはな」
死神は嗤っている。
「貴様はサイコ・ガンダムのCPUに憑いているのだろう。望み通り魂はくれてやる、ガンダムたちを破壊した後でな。我が前から消え失せろ!」
言葉の通りに死神と、取り巻く黒い靄は消え去った。しかし、女は疑問を抱く。
今までその姿を現さなかった“それ”が、何かの目的の為に現れた。これもリグ・リングのサイコ・ウェーブが生み出した現象なのか。
死神が行うのは地獄への誘い。まさか、自身を地獄へ巻き込もうというのか。
サイコ・ガンダムの、この戦場の支配者は我であると信じている。事を起こす前に、その囁きが耳に入る前に決着をつける。
勝利を急ぐリグ・リングが遠くのサイコ・ガンダムと、敵を挟む様に相対して戦場に突入する。
「挟撃だ、サイコ・ガンダム!」
『―――うるさい』
922 = 921 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
光の線や粒が弾け飛び交う中、唐突にサイコ・ガンダムが地面に投げ捨てていた盾を拾い上げ、ある一点へ投げつけた。
その方向には陸戦強襲型ガンタンクがいた。
陸戦強襲型ガンタンクは、自身を覆えそうな大きさの鋼鉄の塊から全速力で駆け出し、何とか逃げ出して、それの行く先を見送る。
その先には挟撃を仕掛けようとしたリグ・リングもいたのだった。
「何!?」
サイコ・ガンダムの狙いは彼女だった。飛行中の高度に合わせ、塊は跳ねてその勢いが鈍器の様に振り下ろす。
不意打ちに面食らい、躱すと共に態勢安定の為一先ずの着地をした。
その隙を狙われた。
ガロード「アンタが敵の指令だって聞いたぜ!」
着地したリグ・リングの右足に砲撃が撃ち込まれた。
崩れた片足を補う為に、姿勢制御のスラスターが激しく噴き出す。すぐ飛び上がろうとするが、それを阻まんと次々砲撃が襲い掛かった。
陸戦強襲型ガンタンクが、着々と間を狭めていく。
ガロード「その光を止めて、戦いを終わらせてやる!」
「ええい……!」
リグ・リングは自由の効かない本体からショットクローを飛ばして迎撃する。
光弾を放ち、突き進むそれに陸戦強襲型ガンタンクはバックしながら対処に臨んだ。
ガロード「腕型のビットか」
モニターに映る、まるで変幻する物体の動きを目で捉え読み、右腕のボップガンを向けて弾丸をばら撒く。
距離を縮めずしてショットクローは爆散した。
ガロード「よっしゃあ!」
しかし、ショットクローに目を取られ過ぎ、乗り越えられぬ段差に後ろのキャタピラがぶつかった。
ガロード「しまった!?」
「“進化を断ち切られた機体”……我に楯突いた報いを知れ!」
その僅かな手間取りに、リグ・リングから意趣返しのビームが放たれる。
ガロード「うわああああああっ!!」
923 :
てす
925 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シーブック『振り向くな、フリット!お前もやられるぞ!』
F91はサイコ・ガンダムに飛び掛かる。
もう犠牲を知るのはウンザリだ、と襲い来るビームの雨の中を掻い潜ってその源であるサイコ・ガンダムの足元に独り着き、
左手でビームサーベルを引き抜き飛び上がった。
傷付いた胴体へ目掛け、憎しみの光を感じぬまま電光石火で斬り裂く。
筈だった。
シーブック「重力が重いから!」
決死の突撃に生じた微妙な感覚のズレが、サイコ・ガンダムに機体を退かせる隙を与えてしまった。
一瞥した標的に手応えのある様子はなく、そのまま飛び越し黒い頭の上を見下ろす形で、憎しみの光と顔を合わせた。
『重力……。それは恨みと呪いを折り重ね、地上を地獄に変える』
シーブック「なに」
死神の妖しさとは違う正反対の低く重い呟き。それは、初めて聞く黒いガンダムのパイロットの声だった。
シーブックの頬に死神の横顔が触れていた。感触は無いが視界にはっきりと映り、語りかける。
―――《私はあの男の執念が見たい……。多くを見捨て、友を裏切り、戦場を生き抜いたその末路。
身体の自由を失い、精神を砕かれ、僅かな命となっても生に執着する》
頭の中に響く死にかけの男と幻の女の声。じわり、じわりと身体が冷えていく。男の命が、死に往くのだ、と感覚が訴えていた。
その引き金を引いてしまうのは、死神に操られた自分。
『俺は生きる……。真っ白い場所、粘液の中で白い肌の女に頭を捏ね繰り回されて、喉の詰まりの取れないままコックピットに縛りつけられても―――』
―――《故郷へ還る事は許されず、異なる大地に逝くべき地獄は定まり、同じ異邦人と戦いその命を散らす……》
『死神……お前だけが、元の俺を思い出させてくれる……』
―――《残された魂はやがて途切れ、断末魔となり消えて往く》
シーブック「死神から離れろぉッ!!」
叫びへの答えは襲い掛かる閃光となって返った。
926 = 925 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
フリット「シーブックさん!!」
彼から見えた、両機の一瞬の沈黙はサイコ・ガンダム頭部からの発光で破られた。
F91はビームの直撃を免れたものの、落下先のビルに背中からぶつかり、崩れ落ちる。
そして視線の先を鋭い閃光が遮った。
フリット「近づけない……!シーブックさん!」
また一人、仲間が倒れるのを見ているだけになるのか。目を背けたい状況の中、眼前を黄金に煌めく機体が駆け抜けて行った。
その姿に目を見開く。
ドモン『下がっていろ、フリット。俺がやる!』
フリット『ドモンさん!……金色のゴッドガンダム!?』
ドモン『俺はキング・オブ・ハート!最強の男だぁぁぁぁぁぁぁ!!』
927 = 925 :
ドモンは、明鏡止水の境地に達することで死神の呪縛から解き放たれていた。
邪心の抜け澄んだ心には、地獄へ誘う呪文の入る余地などない。
ドモン「今、皆を悪霊の呪縛から解き放ってやる……!」
シーブックはゴッドガンダムの光にあてられて動転していた気分を整え始めていた。身体が怯えを無くしていくのを感じながら、戦いを見守る。
眩い機体は素早く、サイコ・ガンダムの放つビームを掻い潜り距離を縮めていた。
そして、渾身の一撃を放とうと更に全身の輝きを漲らせる。
死神はサイコ・ガンダムの頬に寄り添っていた。
ゴッドガンダムが両手に込めたエネルギーの塊を解き放とうとした時、サイコ・ガンダムの破損部分が一斉に、勢いよく爆発を起こした。
928 = 925 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドモン「どういう、ことだ……!?」
シーブック「前から、限界だったんだ……。あのマシンは、パイロットは……死んだ……。死んだか……」
敵ガンダムから溢れる火は、全身を轟々と燃やしていた。生の為にもがいていた黒い巨体は、動くのを止め自身の滅びを受け入れている。
……もしかしたら、自分の攻撃が届いていて、ビームサーベルの切っ先が傷付いたところを燃やしていたのかもしれない。
その前のフリットたちの攻撃から、もしかしたらその前に、ロランの特攻の時から……。
ドモン『シーブック、何か知っているんじゃないのか!?あの悪霊がなんなのか!』
シーブック「悪霊じゃない……。死神だ」
ドモン『死神……!?……なんだっていい、俺たちは最後までそんなものに邪魔されていたってことだ。クソッ!』
シーブック「そうだな……」
燃える黒いガンダムに立つ死神は、天へと昇る黒い煙を見ている。空に吸い込まれ霧散するそれに現を抜かす。その様を、まるで羨むように。
彼女のはっきりとしない身体の黒い靄が煙に交わるが、共に消えていくことはない。
死神は天へ昇れない。
ほんの少しだけ共感する。未だ重力に縛られ、飛び立つことが出来ないこの身の歯痒さに。
931 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
F91の顔はサイコ・ガンダムの遺骸をずっと向いている。
それを見つめる中、はっと一足先に戦いの余韻から抜けたフリットは、Ez-8と陸戦強襲型ガンタンクの救出に意識を傾けた。
しかし、上空から戦場を抜けて行ったリグ・リングの姿に、大きな相手に囚われ続けてしまっていたことを自覚してしまった。敵はまだいたのだ。
ドモン「待てぇッ!」
ゴッドガンダムが直ぐに追い掛けた。慌てたフリットにノイズの強い通信が入る。
ガロード『――ザッ―――わり――逃がしザッちまった―――!ッ』
フリット「ガロードさん、無事なんですね!」
ガロード『お――ことはいいかザッ!を――とっつかまえてくれ!――ィファの居場所ザッ――かせてやる!』
ゴッドガンダムはかなり遠くへと進んでいた。既にF91も後を追っている。
ドモン『シローは無事だ!手助けはいらん、俺一人で追い掛ける!』
シーブックさんによる、仲間の安否や危険を問われての答えが耳に残った。焦燥している印象を受ける。
彼も、そんなドモンさんを心配して追ったのだろう。自分もそうだった。
フリット『すぐ戻りますから!』
932 :
現ss速報最古スレ認定
933 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「連邦の作戦で捨て駒にされた機体ごときに……!」
リグ・リングの女パイロットは、悔しさに独りごちる。仕留めきれなかった、陸戦強襲型ガンタンクを指しての誹謗だった。
地面の段差に躓いた陸戦強襲型ガンタンクだったが、辛くも直撃を免れサイコ・ガンダムが爆発するギリギリまで抵抗を続けていたのだ。
「ヤツさえ倒せていれば、ガンダム共を倒すことも出来たのだ。……いや、死神が望まぬか」
死神は最後まで全てのガンダムたちを翻弄し続けた。
ガンダムEz-8、ガンダムF91、ゴッドガンダム、ターンエーガンダム、ガンダムAGE-1タイタスを手玉に取り、
サイコ・ガンダムが限界を超えて滅びる様を見て満足して消えていった。
関わるモノ全てを尽く地球の重力の井戸へと引き摺り落とす“力”は、その強大な威力を示したのだ。
「だが、我の邪魔をする悪しきモノは、どんな使いような存在でも認める訳にはいかん」
女は追って来る三機の存在を意識し忌々しげに言葉を零す。
「奴らの実力は認めている。今は、“力”を付ける時」
そう深く記憶してただ先を行く。迫る脅威を背後に、創痍を負ったリグ・リングの進む先。空を貫き、青い閃光を纏う人型の機体が降臨した。
「来たか、“ハルファス”……!」
この境遇を左右する存在が、女に興奮を覚えさせる。
934 :
おつ
935 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴッドガンダムが進んだ先に待っていた、向かい合う機体。
追っていた敵は、その足元に追い掛けたままの姿で光を失った残骸となって地に伏せていた。
ドモンはモニターの映像を拡大してこの状況で判断する材料となる、その姿に似ている機体の名を口に出す。
ドモン「ハルファスガンダム……?」
ゴッドガンダムの後に追い付いた二機も倣うように立ち止まり、動きを見せぬ機体を注視した。
比較対照である黒に近い、暗い青の機体色のハルファスガンダムよりも黒く、毒々しい色を装ったモビルスーツ。
間にリグ・リングを挟み相対する四体の機体が静止した時、ハルファスガンダムに似る機体が接触の口火を切る。
『よくも、ジェネレーション・システムの脅威を撃退してくれた。流石はガンダム・ワールドの主役達』
そう発して、謎のモビルスーツは相対するガンダムたちへ右腕を差し出した。
空に向けて開いた掌の上に赤い光が出現する。そして光から女が現れた。
シーブック「なに……」
女は妖艶の装いであった。挑発した視線。大きい胸元の露出等で見える白い肌。
目に付くその白肌は、シーブックとドモンにとっては死神との戦いの忌々しさを想起させるものだった。
ドモン『何者だ』
「アプロディア」
フリット「アプロディア……!?」
「このような姿で話すのは、初めてだったかな?出てくるのだ」
ドモン「確かに、人間の姿は見たことはない」
言われた面々はそれぞれコックピットを開き、身を乗り出す。肉眼で見合うには遠いが、相手の正体を見極める為に直接向かい合う事を選んだ。
「よろしい。ジェネレーション・システムに立ち向かうなら、その従順さによる団結が必要となる。決して独り善がりで余計な混乱を招くことなく」
ドモン「何だとッ……」
アプロディアと名乗る女は口の端をあげて満足気な様子を見せた。一方でシーブックたちの顔は険しくなっていく。
「これが新しい“ハルファス”だ。旧きハルファスは勿論、お前達を圧倒するフェニックスガンダムの実力も超えている」
女は高らかに語り続ける。
フリット「新しい……」
「ジェネレーション・システムは今もガンダム・ワールドを観察し続け、データを収集している。日を追って強大になるのだ―――」
936 = 935 :
ドモン「御託はいい、正体を明かせ」
シーブック「お前はアプロディアではない」
フリット「目的は一体なんだ!」
ドモンの制止から次々に女へ疑惑の声をぶつける。
身構え、携える武器を向ける準備は出来ていた。小さな足場での一触即発である。
「ただの戯れさ」
女は怯まない。両腕を広げて身体を大きく張って見せた。
C・アメリアス「我が名はコード・アメリアス。ジェネレーション・システムのコア、
“バルバトス”により生み出されし数多のガンダム・ワールドを統べるモノ」
フリット「コード・アメリアス……」
シーブック「セシリー・フェアチャイルドは何処にいる!」
正体を知るや否や拳銃を突き付けての問い質しが始まる。
C・アメリアス「月だ。言っておくが、希少なニュータイプを傷つけるようなことはしない。
健全な食事と、余計な気を起こさぬよう清潔な広い部屋に住まわせている」
フリット「本当なのか!?大事だったら、ガンダムに乗せて戦わせたりしない!」
C・アメリアス「“少年”フリット・アスノ。あのCPUはただ死神に魅入られた“オールドタイプ”だ」
フリット「CPUだと!?」
C・アメリアス「“力”を持たぬ、愚かな人間がどうなろうと構わん。―――“力”があっても、
バルバトスが障害と見做したのならばその罪を断罪する。貴様達のようなモノをな」
ドモン『ならば、そのバルバトスとやらと直接決着をつけてやる。俺を月へ連れて行け!』
鬼気迫る唸りがゴッドガンダムを通じて拡声される。
コード・アメリアスとフリットとの問答の中でコックピットへと戻っていたのだ。フリットもAGE-1のコックピットへ入っていく。
C・アメリアス「断る。自力で宇宙へ上がれぬ性能しかない下衆如きが。そのまま地を這いずり回っているがいい」
シーブック「この状況を見て口を開いてもらう……!」
一人外に残る彼は、構える拳銃のグリップを握り締め銃口の向けた先を睨みつける。
937 = 935 :
コード・アメリアスは嘲る表情を変えず、一向に動じない。
銃を向けられて命の危機を感じて表情すら止まっているからなのか、それとも命はとらぬこちらの内を見透かしているのか。
考えは巡るが、脅しとして撃つ場所の狙いを付けようとしていた。しかし、彼にとって指を掛けた引き金はコックピットのものより重い。
C・アメリアス「状況を知るべきは貴様達だ。日に日にジェネレーション・システムは今までのガンダム・ワールドを吸収し超越していく。
そして、新たなガンダム・ワールドへと挑む。貴様達では我々に勝てない」
ドモン『口の減らない女だ!』
フリット『センサー……!?敵が来る!シーブックさん!』
シーブック「な、に……」
呼び掛けに表情では反応するも、彼の姿勢は変わらなかった。
C・アメリアス「フフ……その身が危ういと分かっていても我に銃を向けるか」
脅迫されているはずの相手の嘲笑が、手掛かりを失うことへの恐れを招き身の危険への恐怖に勝っていたのだ。拳銃の引き金に掛けた指の腹が潰れていく。
C・アメリアス「下衆」
ハッキリと狙いを定める。後は引くだけだった。
シーブック「セシリーを返せぇッ!」
拳銃の引き金が引かれた後2度音が弾ける。シーブックは行為に怖気づかず、その目で経過をしっかり見ていた。
銃弾は狙った右腕を穿つ事はなかった。
C・アメリアス「我は機械だ。急所を外す意味もない」
ドモン「立体映像か!?」
C・アメリアス「浅はかだな、ニュータイプ」
言葉を投げると出現時と同じ光となって消えた。光の消失と共にコード・アメリアスのモビルスーツが動き出す。
938 :
きた
940 :
シーブック「く……!」
コード・アメリアスのモビルスーツが動き出すのを見るや否や、失敗のショックから切り替えてF91のコックピットへ飛び乗った。
シーブックを守る為ゴッドガンダムが前に出る。その時、視界の下で残骸が動き出し面食らった。コード・アメリアスのモビルスーツが浮上する。
C・アメリアス「立ち上がるだけなら急ぎのニューロで十分。我の手足であったモノ、最期まで我の命を果たせ」
シーブック『―――!ヤバい!』
ドモン「チッ!」
稼働したF91はゴッドガンダムと共に徐に片足と推進装置で立ち上がるリグ・リングから退避する。それの頭上の空にはモビルスーツの、
ハルファスガンダムと同じ両肩四対の翼状の推進装置、その内蔵する大口径ビーム砲―――クロス・メガビームキャノンの砲口が下を向いていた。
C・アメリアス『これが、ハルファスガンダムを超えた“ガンダム”!“ハルファスベーゼ”だ!!』
AGE-1は単独、襲来した敵への迎撃を行っていた。その機体は、空手の左腕が上の関節部とかろうじて吊り下がっているようなものであった。
フリット「僕が倒し損ねたモビルスーツ」
途中で姿を消していた最後のジェスタだった。
二機の再戦は、ジェスタのビームライフルによる一方的な攻撃から接近したAGE-1の一撃を巡る接近戦へと移り、
ビーム・ラリアットの一撃がジェスタの胴体へ放たれて決着がついた。
その直後、AGE-1は自らが離れた所から大きなエネルギーを感知する。
シーブック、ドモンとコード・アメリアスの向かい合っていた場所へ視線を向けると、光の柱が空から振り下ろされていた。
光は物体を溶かし、それを起点に爆発が起こる。F91とゴッドガンダムは退避を完了して、空を見上げている。
天へ向かって、青い光が飛んでいた。
フリット「コード・アメリアス……!」
青い炎を纏い、鳥を模した飛行体が悠々と宇宙へと飛行している。
どうにも出来ぬところまで飛び去ったそれを、フリットたちは忌々しげに見送るしかなかった。
941 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
地球から宇宙へ抜けたハルファスベーゼは青い炎の様に全身に迸るエネルギーを纏う必殺技、“バーニングフレア”を解いた。
本来、敵の機動兵器を渾身のパワーで体当たりして打ち砕く大技は、短時間での大気圏の離脱を可能にさせたのだ。
青き地球を背後に、ハルファスベーゼはその人型の機体を浮かばせる。
そのカメラは、点々と光る星々と人工の星々を朧げに捉えている。
ハルファスベーゼに溶け込むコード・アメリアスはカメラの焦点を月にあてて見遣っていた。
独り、呆然と月を見詰めていた。
バルバトス『ハルファスベーゼに“跳躍”は不可能だ』
C・アメリアス「分かっている」
通信による試みていた行為の否定に、彼女は静かに返した。
旧型ハルファスガンダムに有り、その性能を超えている新型ハルファスベーゼに無い機能。“試みるだけ無駄”なのだ。
C・アメリアス「ハルファスベーゼの投入、感謝します。おかげで窮地を脱することが出来ました」
バルバトス『お前を殺す事はさせぬ。だが、ハルファスベーゼの攻撃力を存分に発揮しても良かった』
抑揚の薄い無機質な電子音声による所見に対して、高圧的で艶やかさも帯びる女の声がどこかの内部から、ハルファスベーゼの機体に響く。
C・アメリアス「我等は状況を広く見なければ。今は、“力”を付ける時、時成れば奴らを討ち取ります」
バルバトス『解った。私を受け継ぎしモノよ、アプロディアとガンダム・ワールドの主役達の相手、任せる』
バルバトスの音声は消えた。コード・アメリアスは独りになったのを感じた。
C・アメリアス「バルバトス。支援は良いが我の判断に口を出すとは……これでは何の為に“我等”を創りだしたのか」
苦々しく独りごつ。しかし創造主バルバトスは、ジェネレーション・システムという世界なのだから、言葉は筒抜けかもしれない。
だが、あえて聞かせるつもりでもあった。
C・アメリアス「今は、“力”を付ける時。ガンダム・ワールドを統べる為、必要な事なのだ」
コード・アメリアスの切望。ハルファスベーゼをハルファスガンダムからの完全な後継機にする事で果たされるモノ。標的は定まっていた。
狙いは、アプロディア。
942 :
943 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒い煙を昇らせ続ける、サイコ・ガンダムの遺骸が残る戦場跡。
リグ・リングとの苦闘をかろうじて乗り切った陸戦強襲型ガンタンクは、役目を終えたかのように瓦礫に朽ち掛けの身を包ませている。
しかし、中のパイロットはここで納まることを認めずもがき、ガンタンクの顔面すぐ前の水平ドアから上半身を乗り出していた。
ガロード「ハァ……!ハァッ!……!」
肉眼で再び辺りを見回し、生身で空気を味わう。
周りの高層ビル群跡から生まれた破片や瓦礫は地に果て無く夥しく広がり、その上に散らばった金属片は高熱を帯びるその身が冷えるのをゆっくり待つ。
ガロードは風の行き先と、陽の光をじっくり感じ取っていた。戦いの終わりである。
ガロード「ドモンたちは上手くやったかな?」
ゆっくりと、息を整え終えるとそろそろ這い上がってこの場からの脱出を図る。
今はEz-8の下へ行くことに意識を向けている。未だ外へ出られぬシローを解放してやりたかった。
陸戦強襲型ガンタンクを覆う瓦礫群はそのまま地上へ続く緩やかな下り道に見える。
底へ落ちぬよう機体の形と大きさを思い出しながら、そっと瓦礫の地面へ足を踏み入れていく。
944 :
ガロード「うわぁ!?」
その下り道で、足場にした瓦礫が底へ抜けた。両足が一度に落ち、あっという間に腰から下が尖った地中へ沈む。
ガロード「いでで……」
きっと、ズボンの中は擦り剥いているだろう。
ふと見上げると真上には今にも落ちてきそうな破片が屋上の欠けたビルの上に刺さっていた。
思わず背筋が凍り、じたばたともがき始める。
ガロード「あ……!?」
遠くから燃え上がる音が聞こえた。近づいてくる。
それはモビルスーツだった。影の姿は、ガンダム。
しかし人間大で、大人ではなかった。
「キャプテン!落ちた人は大丈夫!?」
「待ってくれ」
この瓦礫の山の下で子どもの声が張り上がる。
背中のバーニアの噴出を止め、無様に下半身を埋めた者に近寄る小さく、頭の大きなガンダム。
「今、助ける」
差し出されたのは、間違いなく機械の、モビルスーツの腕だった。人間ではない。
しかし、その大きな瞳には親しみを感じていた。されるがまま身体を引き上げてもらう。
ガロード「あ、うん。ガンダム?」
キャプテン「そうだ。私はガンダムフォースのキャプテンガンダム。ネオトピアから来た。この世界について教えて欲しい」
ガンダムフォース キャプテンガンダム オプションV
945 :
まさかのガンダムフォースに唖然
946 :
ss速報でも長寿なスレだな
たまーにくると追加きてて嬉しい
947 :
Gジェネも一応SDガンダムだし
三国伝とか騎士も出てるし
ジェネシスは頭身上がりすぎてスーパーデフォルメとは言えなくなったけど
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