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    元スレ刹那「別世界のガンダムだと…?」

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    801 = 797 :

    アセム「ソルたちの邪魔はさせない!」

    ストライクノワールとヴェルデバスターはそれぞれの手持ちのビーム兵器でAGE-2を攻撃する。

    アセム「……ッ!」

    AGE-2は襲い来るビームの群れから離れ、再び別の方角から敵の軍勢に飛び込もうとする。

    そこに付近の二機のスローターダガーがビームライフルとシールドを構え攻撃を仕掛けてきた。

    AGE-2は人型に変形し、右手に持ちかえたハイパードッズライフルを相手に向けた。

    ビームを躱しつつ銃口を向けあった片方へ先駆けて発射する。

    スローターダガーは咄嗟にシールドを前に出して防御したが、
    放たれた螺旋を伴うビームはシールドを撃ち抜き、そのまま右腕を貫いて破壊した。

    シャムス「シールドごと!」

    アセム「この世界の人種問題とか知らないけど!お前たちのやっていることはヴェイガンと変わらない!」

    破損し後退した機体に代わるように、別のスローターダガーが現れ再び二機でAGE-2を狙う。

    AGE-2はMS形態のままで追跡者たちを超えた素早さを見せつけ、翻弄する。

    アセム「守ってみせる!―――そのためなら……!」

    ライフルの射線上に二機が重なるように位置取りし、放ったビームは標的を穿いた。
    二機の体はほとんどをビームに掻き消され残りは宇宙に飛び散る。

    シャムス「貴様ッ!」

    AGE-2に気を取られているヴェルデバスターに三機のシビリアンアストレイがビームガンで攻撃する。

    内一機は二機よりも前に出ていた。生意気に思ったシャムスは機体の両肩にある
    ガンランチャーとビーム砲に加え、両腰と繋がる手持ち銃剣付きビームライフルで斉射した。

    二機がその攻撃で撃墜される。しかし肝心の前に出ていた機体は敵の斉射を読んで他より一足先に躱し、
    距離を取りつつビームガンで反撃した。

    間一髪の様にシンは少し肝を冷やしていた。

    シン「インパルスじゃなくったって!」

    機体のパワーの違いを感じながらも果敢に挑む。

    802 = 797 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ステーション管制室では通信システムへの復旧、ナナバルクへの呼び掛けと共に戦う者たちを案じていた。

    「あれが別世界のMSガンダムの性能か」

    「シン・アスカのアストレイも奮戦している」

    「彼らがいなければ、こちらの犠牲はもっとひどかったじゃろうな」

    「強力な連合の“G”二機を抑えられているのは彼らのお蔭だ。後は……」

    トロヤステーションは外からでなく内からもその侵略を受けている。

    どさくさに紛れていくつかの小型艇がステーションに潜入し、兵隊が武力で以って次々に施設を制圧し目標まで突き進む。
    保安隊は必死に抵抗してその侵攻を遅らせていた。

    中には状況の打開に奮闘する一方で生まれた多くの犠牲に心を痛める者がいた。

    理不尽の暴虐に屈さぬ意地を、今からでも捨てればこれ以上の犠牲はないかもしれない、と考える。

    だが彼女は何としてでも意志を通そうとするだろう。

    「セレーネは負けん気が強い。自分が傷つくことも厭わない」

    803 = 797 :





    やっとここまで来たのだ。

    研究が形になり地球から、火星からその先へ飛び立つまであと少しだったのだ。こんなことで奪われてしまいたくない。

    何よりあのブルーコスモスと密接な繋がりがある相手である。
    コーディネイター中心のメンバーが無事では済まないだろう。生存の為にも戦うしかない。
    だから皆必死になって戦って血を流しているのだ。

    そして逃れ得ぬ危機ではあったが、引き受けてくれたシン・アスカとアセム・アスノの好意にも応えたい。

    だからこそ、やることは一つだった。


    セレーネはスターゲイザーのコックピット、後部座席で前部座席に座るソルと共に発進の準備をしている。

    セレーネ「ごめんなさい。あなたに人殺しをさせてしまうわ……この子にも」

    ソルは何も言わず準備を続ける。表情は穏やかに、その内には戦う意志を持つ。

    DSSDを守りたいという気持ちはセレーネと共に確固であった。

    804 :

    来ていたのか、たまに見に来るから応援してる

    805 :

    突然ですが宣伝です!

    ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!

    文句があればこのスレまで!

    加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/

    806 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    発進したスターゲイザーが戦場を飛ぶ。

    シン「スターゲイザーが出たのか!?」

    アセム「ソルとセレーネさんが!」

    セレーネ「稼働時間はフルパワーで17分。確実に一発で仕留めて。緩まないで」

    ソル「了解」

    新手に気づき、接近するスローターダガーたち。
    ビームの集中砲火を浴びせるがスターゲイザーは段違いのスピードを見せつけて回避、
    敵機をビームガンで撃ち抜いていく。宇宙の戦場に金色の光の輪が舞う。

    シン「戦艦を落とせば」 アセム「戦いが終わる!」

    シャムス「させるかよ!」

    ヴェルデバスターは両手の銃剣付きビームライフルを横に連結し、破壊力と射程距離を
    増加させたバスターモードでその連装ビームキャノンの砲口を遠くの、
    ナナバルクへ向かうシビリアンアストレイとAGE-2へ向けて発射した。

    二機はそれを躱す。だが狙撃に見事に阻まれて時間を取られ、ストライクノワールと
    追随するスローターダガーに突撃される。

    807 = 806 :

    シン「黒いストライク!」

    ストライクノワールは拳銃型ビームライフル、ビームライフルショーティーを両手に持って撃ち
    AGE-2とシビリアンアストレイを完全に分散させる。
    そしてAGE-2を追い掛け、スローターダガーはシビリアンアストレイを襲う。

    AGE-2はハイパードッズライフルでストライクノワールを攻撃するも、避けられて距離を詰められていく。

    アセム「あたらない……!ガンダム、他とは違う!」

    スウェン「……ッ!」

    機体の動向を予測し狙い撃たれた一射にスウェンは冷や汗をかいた。

    あの敵MSの性能は驚異的である。だからこそ自分が当たって、仕留める。
    そして共に突撃してきた明らかに他の保安隊とは違う動きをしているDSSDの自衛MS。
    傭兵か、もしかしたらザフトの兵か、何にせよ戦いの経験を積んでいる動きだった。
    だがシャムスならやれるだろう。終わった後はあの白い新手を仕留めさえすればいい。

    ストライクノワールは左手をウイングに付けている対艦刀フラガラッハ3ビームブレイドに持ち替え、
    相手の右手に持つビームサーベルとかち合った。


    シンは対していたスローターダガーを倒すと、再びナナバルクへ向かおうとする。

    シャムス「今度は俺が相手だ!」

    ヴェルデバスターがシビリアンアストレイへ向かって行く。戦艦を落とすこと一念に進む
    シビリアンアストレイの前に、大型ビームの横やりが入った。

    シン「今度は何だ!?」

    撃った主の周りには、ジェネレーション・システムが兵器を投入するときに現れるあの光が消えていくところであった。

    一体の人型とそれより二倍近い体躯を持つ長い尾と大口を開けて中の三つの砲口を露出させているモノがいた。

    GAT-X1022ブルデュエル

    EMA-06エレゴレラ……モビルアーマー形態

    808 = 806 :

    スウェン「ブルデュエル……!?」

    AGE-2と戦いを繰り広げるスウェンは以前の戦いで死亡した戦友の乗機と同型の姿をシャムスより近くで確認する。

    アセム「もしかして、あれがジェネレーション・システム?」

    シン「やっぱり来やがったか……!」

    シャムス「へっ、おいおいこっちは傷心中だってのに嫌らしいことするじゃねぇか―――どこのヤツだ」

    『スウェン、シャムス、早くヤツラを皆殺しにしちゃいましょう。良いコーディネイターは死んだコーディネイターだけ』

    スウェン「……!?……!?」

    シャムス「ミューディ!?」

    ブルデュエルの左右から機体が転移してくる。

    MA-04Xザクレロ

    ZM-D11Sアビゴル……モビルアーマー形態

    エレゴレラは開放していた正面の三連メガ粒子砲を内部に収納し、機体上部に納めていた腕を出して
    機体に隠れていた腕で持つビームグレイブを掴み、長い尾を持つ下半身をモノアイとともに右側面を
    進行方向に対して正面に向けた。

    向けた面に対して前と後ろの二つの腕は人型の両腕となり、エレゴレラはMS形態としてその姿を変える。

    809 = 806 :

    ブルデュエル周囲の兵器たちは、AGE-2たちを他所にしてある方向へ進んで行く。

    そして自身はAGE-2に襲い掛かる。両手に腕部と一体化しているビームガンで以って、
    まるでストライクノワールを援護するかのように攻撃する。

    スウェン「“援軍ではない”か。ナナバルクも困惑している。しかし―――」

    シャムス「何なんだてめぇは!」

    ヴェルデバスターがビームを放ちつつストライクノワールたちの方へ近づいていく。

    狙いはブルデュエルだった。

    スウェン「シャムス!」

    シャムス「俺は見たんだぞ!ミューディの殺される様を!死体を!こんなふざけたことをしやがってぇ!
          誰の仕業だろうがお前はぶっ殺してやる!この俺がああああああああ!!」

    咆哮と共に突撃し、ヴェルデバスターは手に持つ二つのビームライフルの銃剣で切り刻まんとした。

    不意を突かれたブルデュエルはその機体に刀身を叩きつけられる。

    身に纏うヴァリアブルフェイズシフト装甲により切り裂かれることはなかったが、
    ヴェルデバスターはそのまま勢いで以って押し出して奥へ連れ出していった。

    ここでスウェンは対決していた相手を取り逃がしたことに気づく。AGE-2は機に乗じてトロヤステーションの方へ向かった
    新手三機に対する救援の為、その場から離脱していた。

    ストライクノワールは後を追うようにステーションへ向かう。

    810 = 806 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    スターゲイザーはその力でトロヤステーション付近のかなりの敵を討ち払っていた。
    その活躍ぶりに付近のシビリアンアストレイから喜びの声が上がる。

    『ありがとう、助かった!』

    セレーネ「新手よ」

    ソル「ッ!」

    ジェネレーション・システムの繰り出した三体の機動兵器たちを捉える。
    それらは順に迫って来て、ザクレロが一番手として襲い掛かった。

    身構えるスターゲイザーの前にシビリアンアストレイらが立ち、ビーム攻撃で迎え撃つ。
    ザクレロは果敢に攻撃の中を前進して口内の拡散メガ粒子砲から光線を噴き出した。

    スターゲイザーとシビリアンアストレイたちは散り散りになって躱す。

    ザクレロは攻撃後直ぐにスターゲイザーを追い掛ける。

    ソル「こっちに来る!」

    セレーネ「好都合だわ。スピードならこの子に分がある」

    このまま翻弄して一撃を見舞い、撃破する。
    その意向で行動するもモビルアーマー形態のアビゴルが来た。

    正面尖端のビームキャノンによる攻撃がスターゲイザーを襲う。

    ソル「挟み撃ちにされる」

    アビゴルは注意していたザクレロよりも軽快で、素早い。
    ソルの懸念通りザクレロはスターゲイザーの逃げ道を塞ごうと動く。

    811 = 806 :

    アビゴルに幾つものビームの弾丸が襲い掛かった。

    駆け付けたストライダー形態のAGE-2が正面の両脇砲門のビームバルカンで牽制を掛けたのだ。

    ソル「アセム!」

    アセム「下がって!こいつらは俺がやる!」

    AGE-2はMS形態へ変形しハイパードッズライフルでアビゴルを撃つ。

    アビゴルは放たれたビームを二射続けて回避。AGE-2へ向かって行くと共に機体から両腕両足を伸ばした。

    アセム「モビルスーツ、デカい」

    MS形態となり、両肩から取りだした柄を繋ぎ両先端に湾曲したビームの刃を発生させた
    ビームサイスを持つアビゴルの姿に、アセムは威圧感を覚える。

    ギョロリと開く三つの目、振り回されるビームの刃。AGE-2はビームサーベルを取り出して挑む。



    ザクレロの攻撃で散らばっていた数機のシビリアンアストレイたちは結束してエレゴレラと戦っていた。

    エレゴレラは自身を囲んでビームを撃つ彼らに対して格闘戦を仕掛け囲い込みを破る。
    その巨体から繰り出すパワーと両腕で振るうビームグレイブという長柄の武器、そして
    広い攻撃範囲を持つ長い尾は恐ろしい威力を発揮した。

    エレゴレラは易々と攻撃に当たってくれるものではなく、不意に近づけばその尾が飛んでくる。

    「ぎゃあっ」

    尾を叩きつけられたシビリアンアストレイの機体はひしゃげ、動かなくなった。

    その尾の先にはビーム砲が内蔵されており、柔軟に動く尾から意外なところで発射するのも厄介さの一つであった。

    セレーネ「時間は掛けられない」

    ソル「わかってる」

    エレゴレラとの対決にスターゲイザーが臨む。

    812 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    主な戦場から離れて行われたヴェルデバスターの猛攻に、ブルデュエルも反撃を始めていた。

    ビームガンでの退きつつの射撃から上下左右への機動と攻撃へ移行して相手の火力勝負に対抗する。

    ミューディ『久しぶりの実戦訓練ね、シャムス』

    ブルデュエルはビーム攻撃の中に左肩部に収納される手投げのクナイ型投擲弾、
    スティレットを取り出して五指の間に三つ持ち全て投げつけた。

    放つ光線を目眩ましに混ぜた黒の投擲物は、ヴェルデバスターの不意を衝くのに成功した。
    左肩に命中した一つのスティレットが接触した途端に炸裂する。

    破壊は出来なくとも衝撃で態勢を崩させ攻撃を止めたその隙に、ブルデュエルは右手に
    ビームサーベルを持ち接近する。

    ミューディ『私の勝ち』

    シャムス「黙れぇぇぇぇぇ!!」

    ヴェルデバスターはバーニアを一気に噴射してビームサーベルで切り裂かんとする相手に向かい、
    両肩の六連装ミサイルポッドを開放、発射と同時に突撃を掛けた。

    12のミサイルがブルデュエルを狙い飛ぶも、ブルデュエルは左手のビームガンで撃墜していった。
    ヴェルデバスターは前方に両手の銃剣を突出させて進み、爆風の中で互いに距離を詰めていく。

    813 = 812 :

    迫る爆発の衝撃を物ともせずに二機の接近戦が始まる。

    ブルデュエルは敵の銃剣でこちらの装甲は貫けぬと確信したうえで、その身で防ぎ敵を
    切り裂くつもりであった。
    だがヴェルデバスターは上手だった。狙いは相手のビームサーベルを持つ手。

    逸早く左の方の切っ先で突き、その衝撃で手放させることに見事成功する。透かさず銃剣を離して掴み、
    奪ったビームサーベルで斬りつけた。

    斬ったのはちょうど胸部、コックピットのある箇所ごとだった。シャムスはこの瞬間に生んだ亀裂を通して
    死んだ戦友を演じる卑劣者が居るはずのコックピットの中身を見た。

    『シャムス……』

    誰もいないコックピットから、いつも聞いていた戦友の声が自分を呼ぶ。

    シャムス「このおおおおおお!!」

    ヴェルデバスターは空のコックピットに向かってビームサーベルを突き刺した。
    反撃も許さぬ一撃でコックピットが焼けると、ブルデュエルが息絶える。

    シャムス「ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハッ……!」

    ナナバルクからの通達が届いた。トロヤステーション内に侵入した部隊がターゲットを
    確保して搬入作業に移ったとのことだった。

    これでステーションは破壊可能になった。そう、このやり場のない怒りをぶつける相手は、そこら中に転がっている。

    シャムス「コーディネイター、皆殺しにしてやる……!」

    息を整えたシャムスは戦場へ戻る。エネルギーの残量は気に留めなかった。

    814 = 812 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    シン「クソッ、どうすればいいんだ」

    ジェネレーション・システムの介入により激変した戦場の中、シンは取り残されてしまっていた。

    ファントムペインの旗艦を落とすのも一機では厳しく、ステーションの救援へ向かうも
    遭遇したスローターダガーに阻まれて大きく出遅れてしまった。

    機体は消耗し、もしかしたら自分すら撃墜されてしまうかもしれない。
    何も出来ずに終わる……、酷い無力感に苛まれていた。

    その時戦場にいる者たちへ奇妙な通信が入った。言葉ではない、何かしらの音だった。
    知らなければ偶然入った雑音と思ってしまうそれに、シンは状況打開の機会と受け取った。

    シン「ザフトからの暗号……!」

    その通信はある場所へと導く。



    ファントムペインはただ一機戦場から離れるそれを逃げ出した者として捉えていた。

    受信した通信も偶然入ったノイズとしか受け取らなかった。
    誰が何を叫ぼうと、この用意周到な奇襲作戦には助けなど来ないのだから。
    だから例え想定外の事態があってもこの作戦は完遂する。
    ナナバルクはビーム砲、ゴットフリートの全砲門をトロヤステーションに向け、砲撃する。

    トロヤステーション崩壊の時が迫る。

    815 = 812 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ファントムペインのステーション潜入部隊が入手したのはスターゲイザーに搭載される
    予定だったAIユニットである。

    それは本来スターゲイザーの胸部ブロックに容れられているものであり、
    ソルとセレーネが出撃時にコックピットブロックと交換して留め置かれていたモノだった。

    部隊は潜入時に使った複数の小型艇からワイヤーで吊るして運搬、ナナバルクへ向かう。
    その姿はさながら無防備であったがDSSD側に奪回の力は無かった。

    トロヤステーションはナナバルクとヴェルデバスターの長距離砲撃を受けている。
    破壊されるステーションにいる人々はいつ焼き尽くされてしまうのか、宇宙へ投げ出されてしまうのか
    わからない恐怖におののいていた。

    816 = 812 :

    AGE-2はアビゴルとザクレロ相手に奮戦を続ける。

    右手にハイパードッズライフル、シールドを備える左手にビームサーベルを持ち、
    二機に対して一歩も引かなかった。

    アセム「ハァッ……!」

    ハイパードッズライフルのビームを抜け、ザクレロがヒートナタで切り刻まんとすると、
    避けてその左側面に接近し左腕をサーベルで切り裂き離れた。

    アセム「飛び込めていれば全部を!」

    モビルアーマー形態のアビゴルがビームキャノンで攻撃し、AGE-2は回避して反撃を窺う。
    アセムは全力を振り絞っている。意識を周囲の敵味方すべてに向けて、スターゲイザーやシビリアンアストレイらを
    守りぬくつもりで戦っていた。

    しかしアセムの自身に課した負担は状況による消耗も含め並ならぬものではない。

    アセム「ッ……!」

    アビゴルが中央の割れ目から発生させ飛ばした湾曲している刃型のビームを躱し、
    エレゴレラに向けてビームを放った。視線の先で、スターゲイザーがエレゴレラの尾を
    叩きつけられそうだったからだ。

    狙いはその尾。ビームが掠り、エレゴレラは攻撃を止める。その隙でスターゲイザーは逃げ出す。

    AGE-2を捉えたストライクノワールは彼の意識が一点に集中した所を見事に突いた。
    両翼に備えるレールガンの放った弾丸が二撃ともAGE-2を直撃する。

    817 = 812 :

    アセム「うわああああああっ!!」

    ソル「アセムッ!」

    AGE-2は態勢を大きく崩した。胴体への命中―――パイロットへの負傷は避けられたものの、
    右足の腿付近と左肩の前羽に損傷を受けた。次に大きな衝撃が加われば崩壊するだろう傷だった。

    攻撃を止めたAGE-2にアビゴルとザクレロはいざ好機と襲い掛かる。

    スターゲイザーはそのスピードで逸早くAGE-2へ飛び寄る。
    ビームを撃って寄ってくる彼等を追い払い、続いて攻めてくるストライクノワールと対面する。

    セレーネ「アセム君、しっかりして!」

    ソル「来る!」

    スウェン「足が止まっていれば」

    両手のビームライフルショーティーの銃口を向け、何度も撃つ。
    ビームが着弾しようという所でスターゲイザーは閃光に包まれ、命中したかもわからないまま撃った側の視界を覆った。

    スウェン「……!?」

    消えた光から現れたスターゲイザーは無傷だった。その機体は自身を中心に回る幾つもの緑の光の輪に守られている。

    ヴォアチュール・リュミエールの一つの形。

    スターゲイザーを宇宙の彼方へ連れて行く“運び手”は自身を守る盾となった。

    818 :

    なにこれ超楽しい

    続き待ってます

    819 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    暗号が示した位置に向かうシンのシビリアンアストレイはこちらに向かう存在を捉える。

    ナスカ級高速戦闘艦

    シン「こちらミネルバ隊所属、シン・アスカ!IDは―――!」

    発見次第すぐに通信で呼びかけると、応対後許可を出されシビリアンアストレイはナスカ級に着艦する。
    シンは発着場に降りてすぐにこの戦艦の艦長他艦員たちに迎えられた。

    「我々はデュランダル議長の命でここに来ました」

    艦長に当たる、白い軍服の男が経緯を説明する。

    「デュランダル議長はミネルバから離れ単身で任務中のあなたに機体をご用意したのです」

    艦長はそう言ってシンの左胸に目を留めた。

    「あの、FAITHの徽章は何処へ……?」

    シン「フェイスの?持っているわけないでしょう」

    「は?」

    シン「?」

    「―――まあ、それはともかく、試作機の稼働試験という名目で航行していました。
      あなたの任務の機密度を考慮してのことです」

    シン「とにかく、自分の機体があるんですね?」

    「はい。案内します」

    シンは格納庫内で整列するMS群四機の中に見知らぬ二つの機体を見る。

    ZGMF-1000ザクウォーリア

    AMX-011ザクⅢ

    そして、

    シン「ガンダム……!」

    ZGMF-X42Sデスティニーガンダム

    「なに?」

    シン「いや、何でもないです。―――すぐに戦線に復帰します。出撃準備を!」

    820 = 819 :



    デスティニーガンダムに搭乗したシンは艦員から通信を受ける。

    『議長から録画で伝言が入っています』

    シン「議長から」

    『当然、中身は見ていません』

    シン「急いでるのに……」

    データファイルを探し出し、再生する。そこには執務室にてカメラで撮影したらしい、
    デスクに座るプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルの姿があった。

    シン「議長……」

    デュランダル『はじめまして、別世界のシン・アスカ君』

    シン「……!?」

    デュランダル『人知れずバルバトスを中枢とするガンダム・ワールド管理マシン、ジェネレーション・システム
            と戦ってくれていることに数少ないであろう知る者として深く感謝する。
            私は微力ながら精一杯の支援として―――アプロディアからの要請もあるが、君の一助となるだろう
            この“力”を与えようと思う』

    シン「アプロディア……!」

    デュランダル『斯く言う私もアプロディアから教えられた身だ。赤の空間、別世界の存在、ガンダム・ワールド
            ……夢だと思いたかったが、彼女はこれが証拠だと何度も現実に介入してきた』

    シン「そんなことを……バルバトス……赤、彼女……」

    デュランダル『このZGMF-X42S、デスティニーは君に課せられた使命への力になってくれるはずだ。
            事実、この世界のシン・アスカ君はデスティニーを駆り多大な戦果を挙げている』

    シン「俺が」

    デュランダル『アプロディアがジェネレーション・システムを破壊する役目に君を選んだのは正解だったと私は思う。
            その力で、君の生還と、平和がもたらされることを心から祈っている』

    再生が終了するとファイルを閉じて、シンはデュランダルの言葉を反芻しつつ戦いに向けて意識を整える。

    シン「通信管制、発進を―――シン・アスカ。デスティニー、行きます」

    821 = 819 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ナスカ級の艦内は慌ただしくなっていた。ナナバルクがこちらを察知し、行動を始めたからである。

    「デスティニー、発進!」

    「敵戦艦、例のボギーワンと同型です」

    「MS隊発進。敵艦への警戒、怠るな」

    艦長が指示する。そして副艦長に当たる、黒い軍服の男に話す。

    「シン・アスカ、奴は本当にそれなのか?自分の事情を全く知らない素振りをする」

    「DSSDから“シン・アスカというザフトの兵を保護している”、と連絡があったことは知っています。
      ですがミネルバからはシン・アスカがちゃんといると返ってきましたし……どちらかが影武者?
      しかしデスティニー、急遽拵えた二番機を渡しました。それ程の人物ということです」

    「うむ……」

    「噂、ありますよね。優れた人物の複製―――遺伝子科学に精通している議長は、もしかして……」

    「バカを言うな……!とにかく、連合軍の撃破に当たる。死ぬのは御免だからな」

    シン『こちらシン・アスカ!トロヤステーション周辺の同士救援と、敵の撃破に当たります!』

    「了解した(疑わしいFAITH)。我々は敵艦の撃破に専念する!」

    822 = 819 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    スターゲイザーを守る光の輪はザクレロの吐き出した拡散メガ粒子のビームを弾き、
    モビルアーマー形態のアビゴルの放ったビームも受け止める。

    その背後から、ハイパードッズライフルの放つビームが飛び、ザクレロとアビゴルをその場から離れさせた。

    アセム「もう大丈夫」

    ソル「うん」

    二機の攻撃を見て近距離での攻撃に切り替えたストライクノワールが接近する。
    スターゲイザーは対面し、自身を覆う光の輪の内の一つを発射した。

    スウェン「!?」

    ストライクノワールは直ぐにそれを躱す。

    輪っかは、一度伸び楕円となって放たれて宙で再び輪を作って次々飛んでいく。

    ストライクノワールは後退する。周囲にあったスローターダガーの残骸に輪が命中すると、
    残骸は真っ二つになった。

    スターゲイザーは光の輪を発射しつつストライクノワールを追い掛け、AGE-2も背中を向け、アビゴルたちを追う。

    823 = 819 :

    『ザフトの部隊と戦闘に入る』

    スウェンはナナバルクからの通信で危機感を煽られた。
    ステーションへの砲撃は既にヴェルデバスターによるものだけになっている。

    ファントムペインにとって今回の作戦は、外部からの邪魔を受けない
    中立組織の施設への一方的な武力制圧のはずだった。
    だが予想外の反撃を受け、そこへ正体不明の機動兵器群が出現
    ―――図らずも助けとはなっていたが……そしてザフト軍の介入である。

    『ヴェルデバスター、シャムス・コーザ。シグナルロスト』

    スウェン「……!?」

    そしてヴェルデバスターからのビームも消えた。
    エネルギー切れを狙われ、ステーション砲撃を断たんとするシビリアンアストレイたちにより撃破されたのだった。

    後退するストライクノワールを追う、スターゲイザーの放つ光の輪を避け切れずストライクノワールは左腕を切断される。

    スウェンは周囲を確認して、右手を後方へ伸ばしてワイヤーアンカーを発射する。
    尖端をエレゴレラの背面に引っ掛け、スラスターとワイヤーの戻す勢いでエレゴレラの影に隠れる。

    ソル「こいつ」

    エレゴレラは尾の先のビーム砲でスターゲイザーを撃つ。

    セレーネ「―――ステーションへの砲撃は止んだ。後はこいつ等さえ」

    ヴェルデバスターの撃破で、トロヤステーションを襲うビームは全て無くなった。
    無残な姿だが、ステーションはまだ生きている。

    824 :

    乙です
    原作通りならこの後セレーネがソルを脱出させてからアポロンAのプロパルジョンをスターゲイザーに照射させてノワールもろとも宇宙の彼方へ

    こうなるね

    827 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    「些かバランスが悪いか……」

    MSの操縦席の中で、女は憂慮していた。
    造り上げた状況とはいえ、思わしくない結果になるかもしれなかった。

    「世界は正しく導かねばならぬ。私が、その一助となろう」

    違う世界でスターゲイザーの世界での戦いを観ていた彼女は搭乗している機体と共に光の中に消える。

    そして世界を飛び越え、監視していた戦場に姿を現す。

    828 = 827 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    翼を広げ、そこからさらに光の翼を発生させて飛ぶデスティニーガンダムは視界に
    エレゴレラとそれにアンカーを通して付いているストライクノワールを捉えた。

    捕捉された側も新手の姿を確認する。

    スウェン「ヘブンズベースに出現したザフトの新型か!」

    エレゴレラは尾の先をデスティニーに向けビームを発射する。
    デスティニーガンダムは直ぐにそれを回避する。その時動く前にいた場所に光を纏う自身の姿を残していた。

    光の翼が作り出す残像現象である。何度も放たれるビームを避ける度にデスティニーガンダムは
    残像を生み出し、エレゴレラを惑わせていた。

    シン「なるほど。俺を無視していたのはガンダムに乗ってなかったからってことか
        ―――相手してやるよ。このデスティニーで!」

    デスティニーガンダムはエレゴレラに右手に持つビームライフルの銃口を向けて撃つ。
    ビームは狙いである尾に命中し、身を千切って尾の先が宙を飛んだ。

    危険を察知していたストライクノワールは既にエレゴレラから離れていた。
    そこへスターゲイザーが向かっていく。

    セレーネ「パワーが少ないわ!」

    ソル「わかってるよ、でも一機でも数を減らさないと!」

    逃げるストライクノワールをスターゲイザーが追い、二機はこの場から離れる。

    829 = 827 :

    エレゴレラはビームグレイブで切り裂かんと接近する。デスティニーガンダムは距離を取ると、
    対抗するようにビームライフルを仕舞い背負っている大型剣、アロンダイトビームソードを取り出す。

    シン「パワー!スピード!インパルスを超えている!すぐに使いこなして、
        この力でジェネレーション・システムを……倒す!」

    剣先を中央に来るよう構え、長い剣身の下部からビームの刃を発生させる。
    光の翼は勢いを増しその形を大きくさせて光の粒を散布する。

    シン「うおおおおおおお!!」

    両機ともに真っ向から突進し、互いの武器の刃がぶつかり合う。

    デスティニーガンダムが離れるとエレゴレラが千切れた尾を振るう。それを避け、
    敵の得物の届かない所で右肩に装備されているフラッシュエッジ2ビームブーメランを左手に持ち放り投げた。

    フラッシュエッジは見事に尾の残りを切断して、残像を出しながら相手の背後を取ろうと回り込む主へと正確に戻る。

    エレゴレラはデスティニーガンダムの接近を許さぬよう、尖りのある左側の可変装甲から
    三連メガ粒子砲を露出させ、大型ビームを放つ。

    デスティニーガンダムはビームを下に進むことで避け、今度は相手側の下方から突撃する。

    直ちにエレゴレラは三連メガ粒子砲の先をデスティニーガンダムに向ける。

    再び撃たれる前に、弾丸の如く光り突き進むデスティニーガンダムは両手で持つアロンダイトビームソードの長い剣身で
    すれ違いざまに、その正面を相手の両腕を抜けて切り裂いた。

    エレゴレラの胴体正面に一つの巨大な直線の切り傷ができ、そこから爆発が起こる。

    デスティニーガンダムはアロンダイトビームソードを収納し、背負う高エネルギー長射程ビーム砲を取り出して、
    収めていた砲身を広げその正面と相対する。そしてビームを放った。

    ビームはエレゴレラの機体を貫き、爆散させた。

    830 = 827 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    AGE-2は連携するアビゴル、ザクレロとの戦闘を続けている。
    相手を圧倒せんと動き、ダメージを受けた箇所を傷めてしまうが攻撃を緩める余裕はない。

    今、アビゴルがAGE-2へ接近してビームサイスの、柄の中心を持ち回転させて両端の鎌形ビームの刃を連続で浴びせんとする。

    その素早い猛攻からAGE-2はハイパードッズライフルを切り裂かれるのを恐れ、ビームサーベルで受け止める。
    何度も刃はぶつかり反発しあい後ろへ下がるAGE-2はサーベルの刃をぶつけた反発とスラスターを用いて一気に後退する。

    アビゴルは追撃に、右手と上体を後ろへ捻って前に戻す勢いを乗せてビームサイスを投げつけた。

    アセム「何ッ!」

    AGE-2は咄嗟にハイパードッズライフルの銃口を向ける。

    その時回転して飛ぶビームサイスを何処からか飛んできたビームが破壊した。

    ビームを放ったのはビームライフル片手のデスティニーガンダム。エレゴレラ撃破の後、全速力でAGE-2の救援に向かったのだ。

    シン『アセム!』

    アセム「お前、そのガンダム……」

    シン『ザフト軍の―――俺のいる軍の応援で受け取った新型だ。今、友軍が地球軍の戦艦を相手している。
        とりあえず俺たちはこいつらをぶっ壊してしまえばいいんだ』

    アセム「わかった……。この戦い、絶対に勝ってみせる!」

    並び立ったAGE-2とデスティニーガンダムは前方から迫るザクレロとアビゴルに向けて
    ハイパードッズライフルともう片手に持った高エネルギー長射程ビーム砲で攻撃し、
    それぞれを一対一に持っていくよう仕掛けた。

    AGE-2がアビゴルと、デスティニーガンダムはザクレロと対決する。

    831 = 827 :

    アビゴルは両手に端の二つの発生器で卵型両刃のビーム剣身を作るビームカタールを
    持ってAGE-2に突撃する。

    AGE-2もビームサーベルを両手に持って応戦、斬り合いとなった。

    アセム「ここで落とすんだ!うおおおおおっ!!」

    溢れんばかりの気迫で以って猛攻を掛け、アビゴルに挑む。

    ダメージを受けた部分が悲鳴を上げる。全力で挑むにはこの接戦が最後だった。
    アビゴルのビームカタールによる攻めを、出来る限り距離を開けず機体を翻すか
    ビームサーベルで受けるなどして凌ぎ、撃破の機会を探る。

    そして突破の瞬間を見定めた。

    振るったサーベルの刃がアビゴルの片腕を切り裂く。そのままの勢いでもう片方をも切り裂いた。

    アビゴルは両足のみをモビルアーマー形態に部分変形し、離脱。
    その時多くの球体を、ビームネット発生器を射出する。

    アセム「逃がすかぁ!」

    すかさず右手をハイパードッズライフルに持ち替え引き金を引く。

    放たれた螺旋の伴うビームは展開された発生器同士で繋ぎ合わせたビームの網を突き抜け、アビゴルを射抜いた。



    デスティニーガンダムとザクレロの対決は向かい合い、激突したその時に決着した。

    光の翼を放出し、アロンダイトビームソードを構えてデスティニーガンダムは突進する。
    その際意識して上下左右に揺れ動いた。

    生み出された残像がザクレロの感知機能を混乱させる。
    幾つものデスティニーガンダムが捉えきれない速さで巨大な剣を持って迫り、
    標的を絞れないまま最も間近に迫った機体に刃を振り下ろされる。

    ザクレロは機体を縦に両断され、爆散した。

    シン「やった!後は黒いストライクと―――」

    『救援を求む!』

    シン「なに!?」

    『突如出現した所属不明のMS部隊と応戦中!至急救援を求む!』

    シン「ジェネレーション・システム?また増援を!」

    デスティニーガンダムは通信主のナスカ級のもとへ急ぐ。

    832 = 827 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    「うわぁーっ!」

    ザクウォーリアはビームの刃による一撃に伏せた。

    その武器は扇子を模った武器、ビームファンと呼ばれるもので、
    扇ぐ部分が全てビームの刃となっている。

    GGH-010レギナ

    この黒と紫二色の肌を持つ、女性的な姿をした7つの機体たちはナナバルクとナスカ級の
    それぞれのMSを交えた戦いの間に飛来して、唐突にナナバルク側の援護を始めた。

    率先して攻撃を仕掛けるそれらにナナバルク側は驚き動けずにいた。

    レギナたちの内、戦場の中で戦う姿勢を取らず悠然と見ている一機から女性の声が飛ぶ。

    『ブルーコスモスの勇士達よ。コーディネイター殲滅の達成はすぐそこである。
      勇士達の志の為、この私が手を貸そう―――青き清浄なる世界のために!』

    レギナのパイロットはファントムペインへだけでなく、この戦場にいる者たちに向けて言い放った。

    「あ、ああ……」

    ナスカ級とそのMS部隊たちはレギナたちの戦力に押されていた。こちらに力を割く余裕はなかった。
    ナナバルクとスローターダガーたちは戸惑いつつも言葉に従いその場を離れ、目的達成の為にトロヤステーションへ向かう。

    833 = 827 :

    「貴様ら、突然出てきて!ブルーコスモスめぇ!!」

    ナスカ級を守るザクⅢは両側のスカートに備えるビームキャノンで迫るレギナたちに攻撃する。

    「追え」

    七機の内三機がナナバルクの後を追い掛け、指示したレギナ含む残りはナスカ級に襲い掛かる。

    ナスカ級、ザクウォーリア、ザクⅢから放たれる弾幕を正面から四機が内、
    統率する女が乗る一機は突出して挑み掻い潜る。

    「この!」

    今自身を通り過ぎんとするレギナに顔面を合わせたザクⅢが口からメガ粒子のビームを放つ。

    レギナはそのまま前進し追い掛けるビームを振り切ってザクⅢの背後に回り、
    背部に備えるバインダーシールドライフルの片方を正面に突き出して銃口を向ける。

    ザクⅢはすぐ振り向くも、放たれたビームの方が早く、ザクⅢの機体はレギナによって焼かれた。

    「デスティニー、早く来い!」

    「クソォ!」

    ナスカ級の抵抗も虚しく、レギナは艦橋へ到達する。

    「来たか、デスティニーガンダム」

    女の関心は感知したデスティニーガンダムへと向き、艦橋を撃たれたナスカ級は沈黙する。

    残っていたザクウォーリアも三機のレギナに蹂躙され撃破された。

    シン「うおおおおおおっ!!」

    レギナはその機体を迫ってくるデスティニーガンダムに向け、シールドライフルを持つ手は
    そのままナスカ級に向けられ残った船体にビームを放ち続け破壊していた。

    シン「おまえぇぇえぇぇぇ!!」

    激昂したシンは前方のレギナに向けて引き金を引き続ける。

    834 :

    「来い」

    レギナは相手のビームライフルから放たれるビームを避け、
    内一撃が砲身をシールドに変形させ正面を覆わせたライフルに中てられつつも、後ろへ退く。

    追うデスティニーガンダムに三機のレギナが迫り四対一の状況となるも、デスティニーガンダムに臆す様子はなかった。

    左手に高エネルギー長射程ビーム砲を持ち、両手の武器から光弾と光線を放つ。

    レギナたちは距離を取ってデスティニーガンダムを囲み、反撃に両側のバインダーシールドライフルによる射撃を行った。

    デスティニーガンダムは四方から飛んでくるビームに左手を覆う手甲表面の装置からビームシールドを発生させ、
    攻撃を回避、また受け止めつつも一機に接近して各個撃破を目指す。
    光の翼を出して相手を超えたスピードで近づき、ビームを避けて狙い定めた一機をビームライフルで以って撃ち抜いた。

    「ほぅ……」

    他のレギナを操る女は残る二機を後方に付かせビームを撃たせる。
    二機の放つビームはデスティニーガンダムの縦横への動きを制限するような弾幕を張り、
    自身は突進して近い距離での射撃を行った。

    後退と出来る限りの動きでビームを躱すデスティニーガンダムは
    ビームライフルと高エネルギー長射程ビーム砲を収めてアロンダイトビームソードを取り出す。

    光の翼を拡げさらに光の粒を吹き出し、襲い掛かるビームの群れに飛び込んだ。

    「相手をしてやる」

    女の操るレギナはバインダーシールドライフルを収めて両手にビームファンを持ち、デスティニーガンダムの突撃に応じた。

    デスティニーガンダムは残像を出しての攪乱戦法を繰り出す。
    白や黄色のモビルアーマーたちに効果のあった戦法―――期待したシンは、アロンダイトビームソードを振り下ろす。

    だが相手は的確に、二つのビームファンの刃で一撃を受け止めた。

    『ミラージュコロイドの幻惑など私には通じない』

    シンの通信回線に相手からの声が届く。

    『デスティニーガンダム。火力、防御力、機動力、信頼性、その全てにおいてインパルスガンダムを凌ぐMS。
      シン・アスカをパイロットにすることで完成し、その性能は鬼神の如し』

    シン「は……?」

    『“力”を引き出してみろ、シン・アスカ。これではまだパーツとして不完全だ』

    シン「人を機械みたいに!」

    『トロヤステーションの破壊は目前だ。ガンダムAGE-2とスターゲイザーはここで朽ちる』

    シン「この」

    『父と母と妹の死にざまを見ていた時と変わらないままでいいのか?』

    シン「お前がァァァ!!」

    835 = 834 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    移動したナナバルクは再びトロヤステーションへの砲撃を開始する。

    そこへ逸早く駆け付けたAGE-2は護衛のスローターダガーたちからの攻撃を受け、
    さらにナナバルクを追っていた三機のレギナも襲い掛かる。

    アセム「どけよ!」

    スローターダガーたちの動きはナナバルク防衛の射撃による牽制なのに対し、
    レギナの方は前へ出ていき全力でAGE-2を落としに掛かる。

    アセム「クソッ!」

    彼らの攻撃でハイパードッズライフルの狙いを付けられず、ナナバルクへの狙撃を諦めて目の前のレギナたちの撃破に移る。

    アセム「構っている暇はないんだ!ステーションはもう限界なんだぞ!」

    一斉に向かうレギナたちは放たれたビームにも物怖じせずAGE-2に接近戦を仕掛け、
    いの一番に飛び出した一機がビームファンで斬りかかる。

    AGE-2は銃口を敵に真っ直ぐ向けるが、飛び込んでくる相手の後ろの機体が仲間ごと撃ち落とさんばかりのビームを撃ち、
    躱して生じた一瞬の隙で左肩の装甲が切り裂かれ、ダメージの受けていた左肩の前羽が切断されてしまった。

    アセム「ぐ……!このおっ!!」

    レギナの身は突きだされて機体に触れる間近のハイパードッズライフルの銃口から放たれたビームで消し飛んだ。

    836 = 834 :

    ―――そう。ガンダムAGE-2ノーマルのスピードを捉えるには、
        身を賭して翼を削ぐのが先決だ。

    女の命令が残りのレギナを捨て身の戦闘へ導く。

    一機は両手に背部から両腕と脇腹の隙間に銃身を通したバインダーシールドライフルの
    引き金を持ってビームを撃ち、もう一機はビームファンを持って攻撃を掛ける。

    AGE-2は二機に向かってビームを放つ。

    射撃を行うレギナは攻撃を中断するも、もう一方は撃破したレギナと同じく被弾覚悟で突撃した。

    AGE-2の撃ったビームが特攻する機体の両足を消し飛ばす。

    レギナはそのままビームファンで斬りかかり、AGE-2は左手に持ったビームサーベルで受け止める。

    瞬間、警報が鳴った。

    アセム「!?」

    咄嗟に機体を後ろへ退くとレギナは後ろからビームに貫かれ、爆発した。

    アセム「ぐあぁあーーーっ!!」

    先に動いたAGE-2はビームそのものに巻き込まれず済んだが、爆発の衝撃や飛び散ったレギナの破片が
    襲い掛かり、続けて自分を狙うビームが迫る。

    爆発の影響を受けていたAGE-2は対応が遅れ、右のわき腹にビームを掠めた。触れた高熱が装甲を抉る。

    837 = 834 :

    アセムは両手にライフルを持つレギナを捉える。―――奴は今度こそ本当に仲間を狙って撃ったのだ。

    レギナはビームを撃ち続ける。立ち直れていないAGE-2は窮地に陥るも、
    そこへ幾つかのビームがレギナに襲い掛かる。レギナの注意が逸れた隙を見て、
    すぐに態勢を立て直した。

    『アセム・アスノ君、助けに来たぞ!』

    残っていたシビリアンアストレイたちが助けに来たのだ。一機がAGE-2の傍に来て
    機体に触れ接触回線で話しかける。

    『今、動ける俺たちで二手に別れて敵艦の破壊とスターゲイザーの救援に向かっている!
      ―――ステーションの破損で通信関係はズタズタで何もわからない!それでもやれることをせねばならん!』

    アセム「わかりました。俺も手伝います!」

    『頼む!』

    アセム(スターゲイザー……、ソル、セレーネさん)

    二人の無事を確認するように装置の示すスターゲイザーのシグナルを見る。

    その時、一筋の光芒が宇宙を飛んだ。アポロンAのある方向からだ。

    映像記録で観たプロパルジョンビームのモノだ。
    それは確かに何かへ命中し、その何かはビームに押され飛んで行った。

    アセム「どうしたんだ!?」

    再び装置に目をやると、スターゲイザーのシグナルが消えていた。

    アポロンAで敵機と戦っていたはずだったのに。

    アセム「あ……そんな、まさか……!?」

    838 = 834 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    デスティニーガンダムは一対三の状況の中、二機のビーム攻撃を援護に格闘戦、射撃戦を仕掛ける
    レギナに対して備える武装を駆使し奮闘していた。

    先程は激昂しての突進攻撃を行っていたが、距離を取って遠距離からの面を意識した射撃や
    指示を行う機体に肉薄しての斬り合いなど連携を崩すことを意識した戦い方を取っていた。

    「まさに殻が弾け飛んだように、だな。フフフ……」

    シンは戦いの中で何度かあった感覚を体験していた。

    頭の中がクリアーになる。緊迫する状況に対しての集中力が高まり判断が冴え渡るのだ。
    正体の分からない感覚を意識しつつ、目の前の敵を倒す事に全力を懸ける。

    「SEEDの力。怒れる瞳の者」

    集まったレギナたちは対面し接近する相手へビームを撃ちつつ後退する。

    デスティニーガンダムはビームライフルで対抗しながら追いかけるも、弾幕のなか距離を詰めるのは困難だった。

    そこで敵の正面からではなく迂回しての接近を図る。高い速度を維持したまま右へ左へと針路を変えて迫った。

    相手に対し圧倒的なスピードで少しずつ距離を狭めていく。

    センサーの機能から遠いほど光の翼の攪乱効果は高まっており、狙いを付けるのは難しかった。

    レギナたちは戦法を変えて三機共に接近していく。

    デスティニーガンダムは迫る多くのビームにビームライフルの引き金を引き続け、そして頭部機関砲で迎え撃つ。

    839 = 834 :

    内一機は攻撃を潜り抜けてビームファンに持ち替え、斬りかかった。

    急襲する刃を咄嗟に突き出した左腕に備える対ビームの実体盾で受け止めるとその腕を振るって刃を弾いた。
    態勢を崩した所に直ぐ様銃口を向けてビームを撃ち込み、爆発から離れる。

    「援護しろ」

    女の乗るレギナも両手をビームファンに持ち替えて残る一機にビームを撃たせて接近戦を仕掛ける。

    撃破したレギナの爆発を背後にデスティニーガンダムもビームを避けつつアロンダイトビームソードを両手で持って突撃した。

    二つのビームファンとアロンダイトビームソードの刃がぶつかり合う。

    シン「このぉっ……!」

    互いの刃が離れた瞬間、透かさずデスティニーガンダムはアロンダイトビームソードの剣先を少し後ろへ引き振り抜いた。

    「!?」

    レギナの両腕は瞬く間に切り裂かれ、再び迫る大剣の刃から必死に後ろへ退がる。

    シン「待て!」

    デスティニーガンダムのセンサーが巨大なビームの発射を確認する。

    シン「何だ……!?」

    光芒を辿ると、発射の元はスターゲイザーの実験に使う、レーザー発振ステーションがある方角からのものだった。

    その先端は瞬間青白い光を発して少し途切れたが、すぐに放たれた方向の彼方へと進んでいき、末端から再び途切れた。

    何故撃たれたのか?後退する敵を追いつつ生じた疑問にあの敵の女が応えた。

    『スターゲイザーが飛び立った』

    シン「何!?」

    『世界は正しく導かれたということだ―――また会おう、デスティニーガンダム』

    女のレギナはデスティニーガンダムに襲い掛かるもう一機のレギナに時間を稼いでもらい
    後退を続け、この世界を後にした。

    840 = 834 :




    その後、スターゲイザーが飛ばされる前にセレーネに後事を託され強引に脱出させられたソルが、
    指示通りアポロンAの砲でナナバルクを狙撃、撃沈させる。

    DSSDは敵の撃退を果たし、辛くも危機を脱した。

    841 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    ―――ガンダム・ワールド。どこかの、何時かの世界。

    厚い雲がかかる灰色の空に突然青白い光が発生し、そこからハルファスガンダムが姿を現した。
    発光を終えたハルファスガンダムは地上の生い茂る森林の中に降下し、
    大木を倒しながらその身を屈めて森の中に姿を隠すような様子となった。
    木々の高さは機体を隠すには充分なものではなく、頭部から少し下までははみ出ていた。
    だが自らの行いに恐れと罪悪感を抱き、その思いから逃げたい衝動に駆られる
    アプロディアは意味のないモノであっても無意識に取りたかった行動だった。

    アプロディア「ジェネレーション・システムが何を企んでいようと、
            ガンダム・ワールドの主人公たちに、重荷を背負わせる行為だろうと、
            私の行いが、世界の破壊を助長するモノであろうと……。
            進まなければ。世界を守るために。
            世界を……正しく導く為に」

    842 = 841 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    ―――Gジェネレーションの世界、地球

    ドモンたちを連れたレジスタンス一行は
    ロッキー級陸上戦艦を先頭に後ろの少し離れた所で難民を乗せた幾つもの人員輸送用の大型トラックが走り、
    その周りをイナクト四機やジェニスが道に合わせて囲み、最後尾にカプルを載せたギャロップが走る。
    という構成で大移動を行っていた。

    未開拓の土地を過ぎ荒れてしまった道路を抜けて、人の住んでいた証となる壊れた建造物たちを
    ちらほら通り過ぎるようになってきた。

    ここもかつてはどこかの町だった。大きく見ればどこかの国内だった。
    例えこの国の、町の名前を言っても誰もその面影を感じないだろう。

    ロランは艦内の窓から外の光景を見る。
    周囲の建物の形状はかつて映像記録で観た、宇宙世紀と呼ばれる時代のモノに近いと感じていた。

    そして難民を乗せたトラックたちに目を向ける。
    道路に合わせて列を作り進む人員運搬用のトラックらにはギリギリまで詰め込んだ難民たちが乗っている。
    戦艦には幾つか部屋があり、それを一定の間隔で交代しながら利用して窮屈さを和らげようとしていた。
    しかし、環境は過酷と言っていい。

    この移動に長時間の休息はない。
    襲撃への危険を減らすにはレジスタンス本隊と合流まで走り続けることが前提であり、
    停まるとすればこの集団を隠せる場所を探さないといけないのだ。

    だから少しでも休める時間を作る場所に、この先の崩壊した市街地が利用できることを期待している。

    843 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ロッキー級の格納庫はこれからの作戦の要となるガンダムたちの整備に忙しかった。

    ドモン「ゴッドガンダムの整備はバッチリだ。いつでも出れるぜ」

    点検を終えた直立する愛機の傍で様子を見に来たシローに話す。

    シロー「ジェネレーション・システムのMSいや、モビルファイターの部品が使えてよかったな」

    ドモン「お前のガンダムは大丈夫なのか?継ぎ接ぎと聞いたが」

    シロー「元からだ。ま、何とでもなる」

    この格納庫にはゴッドガンダム、ガンダムEz-8、ターンエーガンダムの他、
    右手の無いリーオーと捕獲した機動兵器の姿や回収した使える部品の山があった。

    そのリーオーの足元近くで、整備士に背中を押され出入り口に向かって歩かされるガロードの姿が見えた。

    ガロード「おいおい!俺はまだまだやれるっての!」

    「ネジの締めが甘くなってるヤツに整備なんて任せられるかぁ」

    「君の機体も用意してあるんだ。パイロットは休んで準備だ」

    ガロード「わかったよ!押すなって歩ける!」


    ドモン「……ふっ」 シロー「くくっ」

    シロー「俺たちも休憩だ」

    844 = 843 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    不満そうに格納庫から出たガロードはぶらり艦内を歩き回る。

    そこへ沈んだ表情をしたマリナの姿を見つけ声を掛けた。気づいた彼女はすぐに明るい表情を繕う。

    ガロード「またシーリンに怒られでもしたのか?」

    マリナ「彼女は正しいことを言っているだけよ」

    ガロード「そうでも言い方ってもんがあるよなぁ。受け取る側がキツイって」

    そう言い、指でつんと目じりを上げてみせる。シーリンの真似をしてるつもりらしい。

    マリナ「あなたはどうしたの?」

    ガロード「整備場を追い出されちまったんだよ。これから物入りで、人手がいるだろうに。
          お前は休めって、まだ出来るのにさ。みんなして味噌っかす扱いするんだもん」

    マリナ「ふふっ……」

    ガロード「何がおかしいんだよ?」

    マリナ「まねたりふくれたり、子どもらしいなって……ふふっ」

    ガロード「なっ……んもー!暗い顔してたから励ましてやろうと思ったのに。お、ロラン」

    丁度二人の会話に通りがかった彼も会話に加わる。

    845 = 843 :

    ガロード「ロランも追い出されちまったのか?」

    ロラン「作戦が近づいてるんだから休むのは大事だよ……まあ疲れ知らずとは感じるけれど」

    右手に持つ乾パンの入っていた空袋が擦れた音を出す。通路を歩きながら食べていたのは内緒にしていた。

    ガンダム他の準備がほとんど終了しているのは彼らレジスタンスの仕事ぶりのおかげだった。
    自分が食べていたような長期保存の効くモノでの食事と、決まった時間のきっちりした、
    ゆっくりとは少し遠い休息で彼らは働いている。
    休憩を言い渡されたときロランもいよいよ気力がなくなっていた所だった。
    汗を流したくもあったが、水だって備蓄しているものだ。

    喧しい音や重機械の動く場所独特の匂い、感触のなかでもオヤジ中心の男たちは不思議と清々しい。
    過酷な環境だからなのだろうか。駐留軍基地跡から今まで、難民から衣食住に関しての問題、諍いは起こらなかった。
    とにかく計画されていた通りの消費生活を営んでいた。

    それは非常に幸いなことで、その忍耐強さはロラン自身、ガロードやドモン等も感心していた。
    出て来た不満は脅威に対する無力感や変わらない環境の閉塞感についてのもので、
    それを変える可能性を持つと見られたロランたちはあの環境に比してもてなされていたのだった。

    来た当時、パイロットスーツのままだったロランとガロードの今着ている私服は自分たちで選ばせてもらった上での貰い物である。
    なので、この世界でも二人ともに馴染みの装いとなっていた。

    846 = 843 :

    今の状況でも重い問題にはなっていない。だが限度があるだろう。

    これからの目的の一つに、この戦艦やトラックなど移動手段に使っているモノのちゃんとした整備もある。
    人も、機械も疲れ切ってしまう前に休憩が必要だ。

    マリナ「やっぱり、行くのね」

    ロラン「……はい」


    この先には、捨てられた都市がある。

    ジェネレーション・システムの襲来以前からある、長きにわたる戦争によって周辺一帯ごと放棄された処で、
    過去の遺物としてこの世界の人々から忘れ去られようとしている場所だ。

    合流地点まで、今使っている道に沿って進むならばこの都市を通った方が最短距離である。
    当然戦いの跡で建造物は倒れ、道路もデコボコだろうが、その辺りはMSが総出で整備に取り掛かる予定だ。
    何より欲しがっていた隠れ処として利用できるかもしれない場所。
    道づくりの上で戦艦や車両の整備点検を行い、再び大移動の準備を整える。

    しかし、絶好の隠れ場所に誰もいないわけがない。そこで先行してMSによる進入を始めるのである。
    始めはイナクトによる飛行での大まかな散策。その後3機のガンダムが進行する。
    先にMSの来訪を見せつけて先入者を動かすのだ。

    安住の地を求めて“力”の象徴が向かってくる。対する先住民の反応。その悲劇は身をもって知っている。
    それでもこの行動を起こすのは、丸腰で、または安易に全員で向かって行った場合に先住者の防衛、略奪行為が
    行われ大きな危険に晒される可能性があるからだ。
    大きな暴力がそこかしこで為されている世界で、しかも一度人の去った場所に、非武装のまま居続けている見込みは低い。

    847 = 843 :

    ガロード「市街地を避ければさらに険しい道を通るし、遠回りになる。先住者とどうなるにしても、
          この大所帯を守る術は必要だと思う」

    マリナ「シーリンからも、そう言われたわ」

    ロラン「僕には一刻も早く先へ進む理由があります。だからといって仕方がない、の一言で済まされる行為でもありません」

    マリナ「……それでも、戦いを止めることはしないのね」

    ロラン「今は“力”が必要だと思っていますから」

    マリナ「そう」

    ロラン「でも、あなたの御気持ちは決して間違っていないと僕は思っています」


    これからの為に、それぞれはこの場を離れた。
    ロランと共に会議室へ向かうガロードはロランの急ぐ理由を尋ね、大まかな経緯を聞く。


    ガロード「月と地球の大戦争が起きるかどうかの大一番か。大変な時に飛ばされちまったな」

    ロラン「アプロディアが“元の時間に戻す”とは言っていたけれどどこまで信用できるか……。
         だから、悪いけど帰れる術が見つかったらすぐに発つよ」

    ガロード「わかった。まさか月の女王様の従者だったなんてな」

    ロラン「別に、僕個人が月と地球の平和と、それを考えるディアナ様をお支えしたいからやっていることだ。
         本来はソシエお嬢様の家の使用人」

    ガロード「え゛っ、別人と言ってもほぼおんなじのの使用人!?」

    ロラン「ああ、言ってなかったか」

    ガロード「苦労してんなぁ」

    848 :

    乙です。更新いつも楽しみにしてます。

    849 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    作戦前に、クラウスによる参加者を集めた説明会が行われた。

    事前の説明通り、イナクトによる空からの散策から始まり、その後三機のガンダムが入れ替わりで進入する。
    探検は実質その三機、ドモンたちが行う。残りはこの移動集団の守備に回る。
    内部の状況が困難であればガンダムたちと共に撤退し、別のルートを選択する。

    クラウス「我々は侵略をしにいくわけではない。難民を無闇に危険に晒すつもりもない」

    繰り返し念を押された注意事項であった。

    シーリン(だが、ガンダムが侵入する以上先入者の警戒は非常に大きくなる……どうなるかはわからないわね
          ―――人の操るガンダムが、周囲にはどう影響を与えるのか)

    クラウスの隣に立つ彼女はレジスタンスとガンダムが関わり合うことでの今後を思案する。
    この作戦は、レジスタンス側のガンダムに対する試験でもあった。

    850 = 849 :

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    各員は発進準備に取りかかる。
    格納庫の慌ただしさの隅でガンダムのパイロットたちは今回の作戦について話していた。

    シロー「現状単機で最大の攻撃力、機動力を持つガンダム三機で状況に対処してほしいということだ」

    ロラン「でも、それだけじゃないですよね……。
         ガンダムって、この世界ではジェネレーション・システムの兵器だけなのだから」

    ガロード「ガンダムを見せて、ビビらせるってことだろ?」

    シロー「そうだ。だが敵意を煽ってしまって、戦う事になるかもしれない」

    ドモン(成程。レジスタンスめ……試しているのか)

    ロラン「僕たちは攻撃の意思がないことを頑張って証明しなければなりません」

    ドモン「“熱砂の猟犬たち”のようにあらかじめ準備がされていることも考えられる。
          例のMS商人のようにガンダムの存在を知り、またレジスタンスが来ることを触れ回っている者もいるかもしれない」

    ガロード「商人や情報屋ってのは情報を伝播、共有するための独自コネクションを持ってるもんな。
          俺たちが知らないだけで、色んな情報が出回っているかも」

    シロー「宇宙へ行く手段もそうだが、情報が足りない。戦力もだ。だから今はレジスタンスに頼るしかない」

    ロラン「一つ一つ進んで行くことが近道」

    今作戦へ向けての意思確認をした所で、喧騒に負けない大声が飛んだ。

    ホレス「おーいロラン君ー!ターンエーのことなんだがー!」

    ロラン「あ、はい!」

    応じてホレスの元へ向かう。もうじきMSたちが出立する時間だ。

    ドモン「俺たちもガンダムに乗るぞ」

    ガロード「しっかりやれよ」

    ドモン「お前も難民の守りがあるだろう」

    シロー「MSで出るのか?」

    ガロード「用意してあるって聞いたよ。リーオーかな……?」

    ふとロランのいる方を向くと、ホレスの他にソシエもいた。内容は分からないが何か興奮した様子でロランに喋っている。

    ガロード「ロラン、本当の世界ではあの娘の使用人なんだって」

    シロー(苦労してんなぁ) ドモン(苦労してるなぁ)

    ソシエ(なんだか心外な視線を感じるわ)


    作戦は始まった。

    三機のイナクトは飛び立ち、その荒れ果てた都市を見渡した後大きな脅威は見られないと判断。ドモンたちのガンダムが発進した。

    こうして新たな戦いが幕を開けた。


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