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    元スレ上条「いくぞ、親友!」一方「おォ!!」

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    みんなの評価 : ★★
    タグ : - 一方 + - 上条 + - 木原 + - 農業 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    201 = 190 :






    あまりの痛みにしゃがみ込んでいた二人は、
    ようやく痛みが治まってきたらしく、のろのろと立ち上がる。

    「……確かに、とうまやあくせられーたを傷つけたのは許せないんだよ。
    事情を聞いたからって、ただで許すわけにはいかないかも。
    ……だから、今ので少しだけ許すんだよ。
    一応言っとくけど、完璧に許したわけじゃないんだよ。えーっと…………」

    「神裂です、神裂火織。
    そして、あっちがステイル」

    「うん、かおりにステイル。
    だから、これからは行動で謝罪の意志をしめしてね!!」

    そう言って、インデックスは両手を差し出す。

    二人は少しだけ、戸惑った様子だったが、ゆっくりと手を差し出す。

    「……はい!」

    「……あぁ!!」

    そして、互いに握手する。

    確かに、昔のようには戻れないのかもしれない。

    しかし、彼らには『未来』がある。

    戻れないなら、もう一度やり直せばいい。

    これはそのための一歩なのだ。

    そして、今度こそやり直させはしない。……絶対に。

    そう、上条と一方通行は心の内に決意した。



    202 :

    上条と一方通行は公園のベンチに、腰を落としていた。

    今、ステイル達はインデックスの身体につけられた、
    『首輪』のありかを探している。

    それが見つかるまで、身体を休ませろ――そう言われた。

    実際は上条がいると、
    探査の魔術が打ち消されてしまい、
    邪魔になってしまうからなのだが。

    「……なぁ、一つ聞いていいか?」

    「……なンだよ」

    一方通行は面倒だと思ったが、退屈なので返事した。

    「お前さ、『魔術』の向き(ベクトル)は変更できないんだろ?
    あの時、なんで神裂のよくわかんねー居合切りの向きを変えられたんだ?」

    一方通行は少し考え、思い出す。

    「あァ……あれか。
    説明すンのが面倒だから、パス」

    「何だよ。
    いいじゃねえか、教えてくれたって」

    大きなため息をついて、彼はしぶしぶと口を開く。

    203 :

    「……確かに、俺には魔術を操れねェ。
    一番簡単な『反射』ですらな。……何でかわかるか?」

    「何でって……。
    既存の物理現象と『魔術』だと法則が違うから、とか?」

    上条がそう答えると、一方通行は目を丸くした。

    「……オマエ、普段からそれぐらい冴えてろよ」

    「お前、馬鹿にしてんのか」

    一方通行は無視して続ける。

    「まァ、今のでだいたいあってる。
    三日前、俺はあのガキの治療に立ち会ってる。
    その時、あのチビ教師が『魔術』を使ったンだがな……。
    俺はそいつの向きが操れるか、
    試してみたンだが、結果はダメだった。
    演算式を組み立てても、計算に誤差が出ちまうンだよ。
    あの時の神裂が使ったのもそォだ。
    ……『決定的な何か』がズレてンだ。
    おかげで、一定まで『反射』の計算ができても、誤差が広がって中途半端にしか出来なかった」

    「……それじゃあ、一体どうやったんだ?」

    204 = 203 :

    上条の当然の疑問に、一方通行は答える。

    「……神裂の攻撃を喰らったときにふと、気付いたンだよ。
    俺は自分の中に今、理解できねェものを入力したンだってな。
    『反射』は中途半端にしか、働かなかった。
    ……てこたァだ、その『決定的な何か』にも向き自体はあったンだよ」

    改めて考えれば、その通りなのだ。

    三日前にインデックスに発動した回復術も、
    今日喰らった神裂の攻撃魔術も、
    全て、一方通行にまっすぐと情報が伝わっていたのだ。

    そうした違和感を、虚数のように
    『実際には存在しない、机上の計算を解き明かすためだけの数字』に
    置き換えて、数値を逆算し、それを生み出すための法則を浮き彫りにしたのだ。

    まさに自分で付けた、その能力の名の通りの事をしただけである。

    「……そォして俺は、そいつの向きを逆算して、
    『理解できねェ物理法則』を調べあげた。
    『限りなく本物に近い推論』だが、そいつは正しかったらしい」

    上条はそれを聞いて、

    「……そっか。
    やっぱ、お前はスゲーよ」

    と言った。


    205 :

    「……あン?」

    上条はぽつり、ぽつりと語り出す。

    「……この四日間、俺はアイツの――
    インデックスの役に全然立てなかった。
    やれた事と言えば、ステイルからアイツを助けた事ぐらいだ。
    実際、お前がいなけりゃ神裂に殺されてたかもしれない。
    教会のついた嘘に気付けないで、
    インデックスの記憶を消すのを止められなかったかもしれない。
    ……そう、考えるとさ、何だか俺ってすげー情けない奴だなって思ったんだ」

    一方通行はそれを聞いて、呆れた様子でこう言った。

    「はァ……。
    オマエって、ほンっとに馬鹿なンだな」

    「……え?」

    「いいか、上条。
    あのガキが、そンな事わざわざ気にするとでも思ってンのか?
    アイツはな、オマエにかっこよく助けてほしいとか、思ってねェンだよ。
    ――――ただ、オマエと一緒にいたいンだよ。
    俺とオマエと、三人で過ごしたこの三日間みてェに『普通』に接して欲しいンだよ」

    206 = 196 :

    そう、彼女はずっとずっと、『異端』な世界でこの一年を過ごしたのだ。

    そんな中で、ただ『普通』に自分に接してきて
    何の見返りも求めずに守ってくれた優しい少年の存在は、
    彼女にとって大きな『救い』だったのだ。

    「まったく……。
    そもそも、オマエがいなけりゃ、
    結局あのガキは助けられねェだろォが。
    分かったら、焼肉パーティーの事でも考えてろ」

    そう言われ、上条は

    「……ありがとな、一方通行。
    やっぱり、お前ホントいい奴だな」

    と言って、笑った。

    「……そりゃ、どォもォ」

    一方通行は仏頂面で答えて、星空を見上げた。





    「……やぁ。
    ようやく君の出番だよ、上条当麻」

    しばらくして、ステイルがこちらにやってきた。

    どうやら、術式が見つかったらしい。

    「ん。分かった、すぐ行く」

    「よォやくか、長かったなァ、オイ」

    「そうだな。
    そんじゃ、まぁ……」



    207 = 205 :








    「いくぞ、親友!」



    「……おォ!!」



    今、一人の少女を救うために、二人の少年が立ち上がる。



    (オマエらは絶対に俺が守る)」

    「ん?何か言ったか?」

    一方通行の小さなつぶやきに、上条が振り返る。

    「……なンでもねェよ、三下」

    そう言って、一方通行は先に歩き出す。

    208 = 196 :

    と言ったところで、今回は終了でございます。

    次回で、一巻を終わらせます。
    はたして、上条たちはインデックスを救うことができるのか!?
    ……次回をお楽しみに。
    それでは、皆様。三日後にお会いしましょう。

    209 :

    ついにスレタイ回収か、胸熱だな

    210 :

    楽しみすぎる

    211 = 187 :

    良い展開だ

    212 :

    熱いな…
    服脱ぐか

    おつかれ

    213 :

    楽しみすぎて俺の貞操がヤバい

    214 :


     やっぱこの二人は主人公が合ってるな。
    燃えてきたぞォ!!!

    215 :

    皆様、どうも1でございます。
    今日の終わりごろに投下します。
    今日で一巻を終わらせます。
    しばらくお待ちあれ。

    218 :

    ネクタイをつけ

    219 :

    ストッキングを履き

    220 :

    日曜終わっちまったじゃねえか

    221 :

    >>220
    ひゃー!ごめんなさい、風呂入ってました。

    そして、服は着とくべき。風邪引いちゃいますよ。

    とにかく、今から投下します。

    222 :

    「……それで?『首輪』ってのは、どこにあるんだ?」

    現在、上条は高さ十メートルの屋根付きベンチで眠っている、
    インデックスの前に立っていた。

    何でも、眠っているほうが探査しやすいから、とのことらしい。

    辺りには、探査に使われたルーンのカードが散らばっている。

    「あぁ、今説明しよう。
    何、そんな難しい場所にあるわけじゃないさ。
    まずその子の口を開けて、喉の辺りを見てくれ。
    ……見たな?そこのいかにもって雰囲気の、それがお目当ての『術式』さ」

    上条は発見したらしく、こっちに手を振る。

    一方通行と神裂、ステイルの三人は少し二人から距離を置いている。

    一応、何かあったらすぐにでも駆け付けられるようにはしているが。

    「……うん、よし。
    じゃあ、早速ぶっ壊すぞー!!」

    「……いちいち大声で叫ぶンじゃねェよ、馬鹿」

    「まったくの所だね。
    ……早いとこあの子を助けろ、ド素人!!」

    「……お前ら、あとでぶっ飛ばす」

    そんな会話をしながら、上条は右手を口に突っ込む。

    神裂とステイルはごくり、と唾を飲み込んでいる。

    一方通行も、少しだけ緊張した。

    バキン、という『右手』が何かを壊した音がした。

    三人は一気に息を吐いて、安堵した。

    しかし次の瞬間――――


    223 :







    「…………ぐっ!?」

    上条の右手が勢いよく後ろへと吹き飛ぶ。

    元々、神裂に切り裂かれていた傷口が、さらに酷くなっていた。

    後方で見ていた三人は、さらに驚くべきモノを見た。

    眠っていたはずのインデックスの両目が静かに開く。

    その眼の中には鮮血のように鮮やかな、真っ赤な魔法陣の輝きがあった。

    「!?いけません、上条とう……」

    神裂が叫んだが、もう遅かった。

    インデックスの両目が輝くと同時に、何かが爆発した。

    上条の体はこちらに向かって、凄まじい勢いで吹き飛ばされる。

    「……くっ!!」

    ありえないスピードで飛んで来た彼を、神裂が何とか受け止めようとする。

    砂を後ろに引きずりながらも、彼女はどうにか受け止めた。


    224 :

    「――警告、第三章第二節。
    Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録(インデックス)の『首輪』、
    第一から第三まで全結界の貫通を確認。
    再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能。
    現状、十万三千冊の『書庫』の保護のために、侵入者の迎撃を優先します」

    一方通行達は、目の前を見る。

    そこには、不気味な動きでゆっくりと立ち上がるインデックスがいた。

    その瞳には、人間らしい光を宿しておらず、ぬくもりもない。

    一方通行には、見覚えがある眼だった。

    三日前、小萌先生に『魔術』を使わせた時の、
    見つめられるだけで凍てついてしまいそうな眼だ。

    「……そういや、一つだけ聞いてなかったな」

    上条はボロボロの右手を握り締めながら、呟いた。

    『超能力者』でもないのに、魔力とかいうのがお前にない理由」

    その答えが、これだ。

    教会も馬鹿ではない。

    二重三重のセキュリティを作っておいたのだ。

    おそらくは『首輪』が外された時のために、
    彼女の魔力全てを使い、十万三千冊の魔導書を操る
    まさに『最強』の自動迎撃システムを作りだしたのだろう。


    225 :

    「――『書庫』内の十万三千冊により、
    防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算……失敗。
    該当する魔術は発見できず。
    術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術『ローカルウェポン』を組み上げます」

    インデックスはかすかに首を曲げて、

    「――侵入者に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。
    これより特定魔術『聖(セント)ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」

    そう言った瞬間、彼女の両目にあった二つの魔法陣が一気に拡大した。

    それらは彼女の顔の前に、重なるように配置してある。

    左右一つずつの眼球に固定されているようで、
    彼女が首を動かすと空中の魔法陣も同じように後を追う。

    インデックスが、人の頭では理解不能な『何か』を歌った瞬間、
    魔法陣二つがいきなり輝いて、爆発した。

    二つの魔法陣の接点を中心に、
    空気に真っ黒な亀裂が四方八方、
    インデックスの周りを走り抜けていく。

    それ自体が何人たりとも彼女に近づけさせはしない、一つの防壁のように。

    そうして、亀裂が内側から膨らむ。

    わずかに開いた隙間からは、獣のような匂いが漂う。


    226 = 225 :

    そうして、『何か』が近づいてきている。

    魔術師二人は声も出ないらしい。

    呆然と『それ』を見ていた。

    そんな中で、上条と一方通行は一歩、前へと踏み出す。

    「……ふン。なンつゥかよ、ホントRPGでもやってる気分だな」

    「ははは。……まったく、そうだな」

    そう言いながらまた一歩踏み出す。

    「今の内に帰ってもいいンだぜェ、上条くゥゥゥン?」

    「ハッ。そういうそっちこそ、ビビってんじゃねえのか?」

    さらに一歩、踏み出す。

    「……上等だ、三下。
    後で吠え面かくなよ?」

    「そっちこそ、な」

    「……まァ、いい。そンじゃ――行くか!!」

    「あぁ!!」

    二人は一気に駆け出す。

    ただ、あの少女ともう一度笑いたい――そのためだけに。


    227 = 224 :

    二人が彼女との距離を四メートルまで縮めたその時、
    亀裂が一気に広がり、『開いた』。

    そんな巨大な亀裂の奥から、『何か』が覗き込む。

    次の瞬間、亀裂の奥から光の柱が二人に襲いかかる。

    一方通行よりも少し先に行っていた上条は、それに向かって右手を迷わず突き出す。

    じゅう、と鉄板などで肉を焼くような激突音が一方通行に届いてくる。

    しかし、光の柱はまったく消えようとしない。

    (どォなってやがる!?確かに右手に触れてンじゃねェか!!)

    上条は重圧に吹き飛ばされそうになり、じりじりと後退している。

    どうやらインデックスは、十万三千冊全てを利用した魔術を放っているようだ。

    一冊一冊が『必殺』の意味を持つ、全てを使っているなら納得もいく。

    「――『聖ジョージの聖域』は侵入者に対して効果が見られません。
    他の術式へ切り替え、
    引き続き『首輪』保護のため侵入者の破壊を継続します」

    インデックスの冷徹な声が響いてくる。


    228 :

    そこへ、

    「それは『竜王の吐息(ドラゴン・ブレス)』――
    伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!
    いかな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合わないでください!」

    神裂とステイルが駆け寄ってくる。

    一方通行はそれを聞いて、

    「あァ、そォかよ。
    ならこォするまでだ」

    言うと同時に地面を踏み抜き、その衝撃のベクトルを操る。

    それはそのまま、インデックスが立っている地面へと進み、彼女の足元を隆起させる。

    それによって、彼女の体は後ろに吹き飛ぶ形で倒れ込む。

    インデックスの『眼球』と連動していた魔法陣が動き、光の柱が大きく狙いを外す。

    巨大な剣を振り回すかのごとく、屋根と公園の後ろにあった廃ビルが二つに切り裂かれた。

    夜空に漂う漆黒の雲までもが引き裂かれる。

    ……もしかしたら、大気圏外の人工衛星まで破壊したかもしれない。

    破壊された屋根からは、光の柱と同じく純白の光の羽がゆっくりと舞い散る。


    229 :

    『光の柱』の束縛から逃れた上条は、
    一気に走ってインデックスに近づこうとする。

    しかし、それより先にインデックスが首を巡らせた。

    このままでは、また捕まってしまう!!

    「――Fortis931!!
    ……魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

    ステイルが叫ぶと同時に、身構える上条の前に、
    炎の巨人が出て来て彼の盾となった。

    ぶつかり合う光と炎を迂回して、
    上条は全速力でインデックスの元へと走り寄る。

    「――警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認。
    戦闘思考を変更、戦場の検索を開始……完了。
    現状、最も難度の高い敵兵『上条当麻』の破壊を最優先します」

    『光の柱』ごとインデックスは首を振り回す。

    同時に魔女狩りの王も上条の盾になるように動く。

    光と炎は互いに喰いつぶし合いながら、延々とぶつかり合う。

    上条は、一直線にインデックスを帰る場所へと『迎え』に行く。

    あと四、三、二、一メートル!!

    「ダメです――――上条とう……」

    もう少しで魔法陣に触れられるというところで、神裂の叫びが響く。

    何十枚もの光り輝く羽が、彼の頭上へ降りかかろうとしている。


    230 :

    魔術を知らない上条や一方通行でも分かる。

    たった一枚でも触れたら、大変なことになるのだろう。

    そして、彼が右手を使えばそれを防げるだろうという事も分かっている。

    しかし、

    「――警告、第二十二章第一節。
    炎の魔術の術式の逆算に成功しました。
    曲解した十字教の教義(モチーフ)をルーンにより記述したものと判明。
    対十字教用の術式を組み込み中……第一式、第二式、第三式。
    命名、
    『神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)』完全発動まで十二秒」

    魔女狩りの王は、だんだんと押されていく。

    光の羽を一枚一枚右手で撃ち落とせば、
    その間にインデックスに体勢を立て直されるだろう。

    自分の事か、彼女の事か――。

    上条の答えはとうに決まっているだろう。

    一方通行には、分かっている。


    231 :

    しかし、一方通行はそんなつまらない未来で終わらせるつもりなどない。

    「……お、おォォォォっっっ!!」

    彼は風を操り、上条達を吹き飛ばさないように、
    羽が舞う上空のみに暴風をたたき付ける。

    しかし、

    「……くっそがァァァ!!」

    羽は全く風の影響を受けず、ゆっくりと落ちていく。

    そうしている間に、上条は右手を振り下ろす。

    右手に触れた、黒い亀裂とその先の魔法陣はあっさりと切り裂かれる。

    まるで、皿なんかを保護するのに使う、
    プチプチしたヤツを潰すかのようなお手軽さで。

    「――警、こく。最終……章。第、零――……。
    『 首輪、』致命的な、破壊……再生、不可……消」

    ぷつり、とインデックスの口から全ての声が消えた。


    232 :

    光の柱も、魔法陣も消え、辺りに走った亀裂が消えていく。

    「早くガキ連れて逃げろ、上条!!」

    一方通行はそう叫んだ。

    声が聞こえた方向――親友の方を上条は見た。

    その時、上条当麻の頭の上に、一枚の光の羽が舞い降りた。

    「上条!!」

    親友の悲痛な叫びを聞いた彼は、笑って一言だけ言うために口を動かす。

    「――――」

    一方通行はそれを聞いて固まる。

    そして、上条は満足そうに笑って、
    倒れているインデックスに覆いかぶさるように倒れ込む。

    降り注ぐ光の羽から彼女の体を庇うように。





    この夜。上条当麻は『死んだ』。


    233 = 231 :

    翌日――――
    一方通行は第七学区にあるとある病院の廊下を、
    カエル顔の医者と歩いていた。

    この医者は、巷では冥土返し(ヘブンキャンセラー)
    とまで呼ばれる名医らしいが、
    一方通行にはあんまりそうは思えなかった。

    まぁ、どうだっていいことだが。

    しばらくして、ある少年の病室に二人はたどり着く。

    一方通行がドアを開けようとした瞬間、
    白い修道服(安全ピンで留めてある惨めなヤツ)
    を着た少女が先にドアを開けて、部屋から出て来た。

    ずいぶんとご立腹らしく、
    ぷんぷん、という擬音がよく似合いそうな動きをしていた。

    そのまま彼女は部屋を出ると、どこかへと歩き出す。

    「オイ、クソガキ。
    オマエ、どこに……」

    「散歩!!!!」

    一方通行が行き先を聞こうとすると、
    いかにも怒ってます、と言わんばかりに叫んだ。


    234 = 229 :

    「ナースコールがあったからやってきたけど……あー、これはひどいね?」

    先に部屋に入ったカエル医者がそんな事を言った。

    一方通行が部屋に入ると、
    ベッドから上半身だけずり落ちている、ツンツン頭の少年の姿があった。

    少年は頭のてっぺんを両手で押さえて泣いていた。

    死ぬ、これはホントに死ぬ、とか独り言をしているのがまた、リアルだ。

    一方通行はドアを閉めると、椅子に座る。

    そして、ゆっくりと口を開く。

    「…………オマエ、本当によかったのかよ?」

    「……えっと、何がだ?」

    逆に少年は質問する。

    質問に質問で返すなよ、とか思ったが、今そんな事はどうでもいい。

    彼はもう一度ゆっくり口を開いて、聞き直す。


    235 = 222 :








    「オマエ、本当は何にも覚えてねェンだろ?」







    236 :

    透明な少年は黙り込む。

    昨日、彼は脳に舞い降りた羽によって脳細胞が『破壊』され、
    思い出を全て失ってしまったのだ。

    それでも彼は何故か、一方通行からこれまでの経緯を聞いて、
    とある少女――インデックスには本当の事を言いたくない、と言った。

    「……あれで良かったんじゃないか」

    ぽつり、と透明な少年は言った。

    「俺。なんだか、あの子にだけは泣いて欲しくないなって思ったんだ。
    ――そう思えたんだよ。
    これがどういう感情か分からないし、きっともう思い出せないんだろうけど、さ」

    透明な少年は、何の色もなく笑うと、

    「先生は、どうしてあんな話を信じてくれたんです?
    魔術師だの、魔法だの、お医者さんには一番遠い存在じゃないですか?」

    と、医者の方を見て言った。

    「何、患者の必要なモノを揃えるのが僕の仕事だからね?これくらい、朝飯前というヤツだよ」

    医者はそう言って、笑った。

    何で笑っているのか分からない、と言った顔で。

    少年の笑みを見ていると、まるで鏡のように笑ってしまうのだろう。

    どちらが『鏡』なのかは、一方通行には分からない。

    それぐらい少年の笑みには、哀しみも喜びも、何もなかった。

    どこまでも透明なのだ。


    237 :

    「……案外、俺はまだ覚えてるのかもな」

    一方通行はそれを聞いて、思わず尋ねた。

    「オマエの『思い出』は、脳細胞ごと『死ンで』ンだぜ?
    …………脳に残ってないのによ、一体どこに『思い出』があるってンだよ」

    一方通行は、一つの答えを目の前の少年に期待した。

    コイツなら、きっとどうなっても根本的な部分は変わってない。

    ――――そう、思えたのだ。

    「どこって、そりゃあ決まってんじゃねえか」

    透明な少年は笑って答えてみせた。







    「――――心に、じゃないか?」


    238 = 229 :

    「…………は」

    そう聞いて、一方通行はポカン、としてから

    「は、はははは!!ひっ、あはははは!!」

    おもいきり笑った。

    「む。何だよ、人が真面目に答えたのに」

    透明な少年は、少しむっとしたらしい。

    「ハッ、そりゃ悪かったな」

    そう言って、彼は立ち上がり、部屋の出口まで歩き出す。

    「……じゃあなァ、また明日来てやる。
    そン時にオマエの周りの事、出来る限りは教えてやるよ。
    ……あとよォ、あのガキの方は俺が当分は面倒を見といてやる」

    現在、『首輪』がとれたインデックスは、
    当分は様子見として彼らに預けられる事になっている。

    ……最も、一方通行はインデックスの事は少年の方に任せるつもりだが。


    239 = 223 :

    「ありがとな。
    …………えーっと」

    一方通行(アクセラレータ)だ、一方通行」

    「うん。ありがとな、一方通行。
    お前って、ホントいい奴なんだな」

    そう言われ、一方通行は少し笑う。

    ……昨日もそンな事言われたなァ、と思う。

    何となく彼は、『上条当麻』の最期の言葉を思い出した。





    「た の ん だ ぞ 」

    それが彼の残した最期の言葉だった。

    彼は『親友』の顔を思い浮かべる。

    そして、

    「……あばよ、『親友』」

    そう、彼は少年に聞こえないようにつぶやき、部屋を出ていく。

    「……さァて、とォ。
    昼になっちまったし、あのガキを捜すとしますかねェ」

    『親友』との約束を果たすために、彼は新たな決意を胸に歩き出す。


    240 = 230 :

    以上で一巻は終了でございます!
    最後については、一方さんが二人を庇って
    記憶を無くすとかにしようかとも思ったんですが、
    なんか、違うなーと思ったのでやめました。
    とりあえず、次回からはニ巻!……と言いたいところですが、
    1.5巻として、上条さんが退院した時のお話を書きたいなと思います。
    ので、次は読み飛ばしてくれても構いません。
    それでは、皆様。また、三日後に。

    241 :

    記憶消失=「上条当麻」の死
    の表現が原作よりもなんかガツンときた

    242 :


    カエル「僕は『冥土帰し』なんだね?」

    243 :

    いったい何巻までやるつもりなんだww
    とりあえず一巻完結おつ

    244 :

    ずっと続けてほしい胸熱

    245 :


     うん。これはどんなに長くなってもいいから
    ずっと続けて欲しいと思った
     一巻完結乙!!!!

    246 :

    >>243
    >>1の書くスピードが上がってかまちーに追いつくまでだろ?

    247 :

    どもども、1でございます。
    超夜中に小ネタ編投下しに来ますね。
    皆様、少々お待ちを。

    248 :

    うむ、

    249 :

    まだかな

    250 :

    さて、やって来ました。
    1でございます。
    これから、投下していきます。
    今日は、小ネタ編をお送りいたします。


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