元スレ上条「いくぞ、親友!」一方「おォ!!」
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201 = 190 :
あまりの痛みにしゃがみ込んでいた二人は、
ようやく痛みが治まってきたらしく、のろのろと立ち上がる。
「……確かに、とうまやあくせられーたを傷つけたのは許せないんだよ。
事情を聞いたからって、ただで許すわけにはいかないかも。
……だから、今ので少しだけ許すんだよ。
一応言っとくけど、完璧に許したわけじゃないんだよ。えーっと…………」
「神裂です、神裂火織。
そして、あっちがステイル」
「うん、かおりにステイル。
だから、これからは行動で謝罪の意志をしめしてね!!」
そう言って、インデックスは両手を差し出す。
二人は少しだけ、戸惑った様子だったが、ゆっくりと手を差し出す。
「……はい!」
「……あぁ!!」
そして、互いに握手する。
確かに、昔のようには戻れないのかもしれない。
しかし、彼らには『未来』がある。
戻れないなら、もう一度やり直せばいい。
これはそのための一歩なのだ。
そして、今度こそやり直させはしない。……絶対に。
そう、上条と一方通行は心の内に決意した。
202 :
上条と一方通行は公園のベンチに、腰を落としていた。
今、ステイル達はインデックスの身体につけられた、
『首輪』のありかを探している。
それが見つかるまで、身体を休ませろ――そう言われた。
実際は上条がいると、
探査の魔術が打ち消されてしまい、
邪魔になってしまうからなのだが。
「……なぁ、一つ聞いていいか?」
「……なンだよ」
一方通行は面倒だと思ったが、退屈なので返事した。
「お前さ、『魔術』の向き(ベクトル)は変更できないんだろ?
あの時、なんで神裂のよくわかんねー居合切りの向きを変えられたんだ?」
一方通行は少し考え、思い出す。
「あァ……あれか。
説明すンのが面倒だから、パス」
「何だよ。
いいじゃねえか、教えてくれたって」
大きなため息をついて、彼はしぶしぶと口を開く。
203 :
「……確かに、俺には魔術を操れねェ。
一番簡単な『反射』ですらな。……何でかわかるか?」
「何でって……。
既存の物理現象と『魔術』だと法則が違うから、とか?」
上条がそう答えると、一方通行は目を丸くした。
「……オマエ、普段からそれぐらい冴えてろよ」
「お前、馬鹿にしてんのか」
一方通行は無視して続ける。
「まァ、今のでだいたいあってる。
三日前、俺はあのガキの治療に立ち会ってる。
その時、あのチビ教師が『魔術』を使ったンだがな……。
俺はそいつの向きが操れるか、
試してみたンだが、結果はダメだった。
演算式を組み立てても、計算に誤差が出ちまうンだよ。
あの時の神裂が使ったのもそォだ。
……『決定的な何か』がズレてンだ。
おかげで、一定まで『反射』の計算ができても、誤差が広がって中途半端にしか出来なかった」
「……それじゃあ、一体どうやったんだ?」
204 = 203 :
上条の当然の疑問に、一方通行は答える。
「……神裂の攻撃を喰らったときにふと、気付いたンだよ。
俺は自分の中に今、理解できねェものを入力したンだってな。
『反射』は中途半端にしか、働かなかった。
……てこたァだ、その『決定的な何か』にも向き自体はあったンだよ」
改めて考えれば、その通りなのだ。
三日前にインデックスに発動した回復術も、
今日喰らった神裂の攻撃魔術も、
全て、一方通行にまっすぐと情報が伝わっていたのだ。
そうした違和感を、虚数のように
『実際には存在しない、机上の計算を解き明かすためだけの数字』に
置き換えて、数値を逆算し、それを生み出すための法則を浮き彫りにしたのだ。
まさに自分で付けた、その能力の名の通りの事をしただけである。
「……そォして俺は、そいつの向きを逆算して、
『理解できねェ物理法則』を調べあげた。
『限りなく本物に近い推論』だが、そいつは正しかったらしい」
上条はそれを聞いて、
「……そっか。
やっぱ、お前はスゲーよ」
と言った。
205 :
「……あン?」
上条はぽつり、ぽつりと語り出す。
「……この四日間、俺はアイツの――
インデックスの役に全然立てなかった。
やれた事と言えば、ステイルからアイツを助けた事ぐらいだ。
実際、お前がいなけりゃ神裂に殺されてたかもしれない。
教会のついた嘘に気付けないで、
インデックスの記憶を消すのを止められなかったかもしれない。
……そう、考えるとさ、何だか俺ってすげー情けない奴だなって思ったんだ」
一方通行はそれを聞いて、呆れた様子でこう言った。
「はァ……。
オマエって、ほンっとに馬鹿なンだな」
「……え?」
「いいか、上条。
あのガキが、そンな事わざわざ気にするとでも思ってンのか?
アイツはな、オマエにかっこよく助けてほしいとか、思ってねェンだよ。
――――ただ、オマエと一緒にいたいンだよ。
俺とオマエと、三人で過ごしたこの三日間みてェに『普通』に接して欲しいンだよ」
206 = 196 :
そう、彼女はずっとずっと、『異端』な世界でこの一年を過ごしたのだ。
そんな中で、ただ『普通』に自分に接してきて
何の見返りも求めずに守ってくれた優しい少年の存在は、
彼女にとって大きな『救い』だったのだ。
「まったく……。
そもそも、オマエがいなけりゃ、
結局あのガキは助けられねェだろォが。
分かったら、焼肉パーティーの事でも考えてろ」
そう言われ、上条は
「……ありがとな、一方通行。
やっぱり、お前ホントいい奴だな」
と言って、笑った。
「……そりゃ、どォもォ」
一方通行は仏頂面で答えて、星空を見上げた。
「……やぁ。
ようやく君の出番だよ、上条当麻」
しばらくして、ステイルがこちらにやってきた。
どうやら、術式が見つかったらしい。
「ん。分かった、すぐ行く」
「よォやくか、長かったなァ、オイ」
「そうだな。
そんじゃ、まぁ……」
207 = 205 :
「いくぞ、親友!」
「……おォ!!」
今、一人の少女を救うために、二人の少年が立ち上がる。
「(オマエらは絶対に俺が守る)」
「ん?何か言ったか?」
一方通行の小さなつぶやきに、上条が振り返る。
「……なンでもねェよ、三下」
そう言って、一方通行は先に歩き出す。
208 = 196 :
と言ったところで、今回は終了でございます。
次回で、一巻を終わらせます。
はたして、上条たちはインデックスを救うことができるのか!?
……次回をお楽しみに。
それでは、皆様。三日後にお会いしましょう。
209 :
ついにスレタイ回収か、胸熱だな
210 :
楽しみすぎる
211 = 187 :
良い展開だ
212 :
熱いな…
服脱ぐか
おつかれ
213 :
楽しみすぎて俺の貞操がヤバい
214 :
やっぱこの二人は主人公が合ってるな。
燃えてきたぞォ!!!
215 :
皆様、どうも1でございます。
今日の終わりごろに投下します。
今日で一巻を終わらせます。
しばらくお待ちあれ。
218 :
ネクタイをつけ
219 :
ストッキングを履き
220 :
日曜終わっちまったじゃねえか
221 :
>>220
ひゃー!ごめんなさい、風呂入ってました。
そして、服は着とくべき。風邪引いちゃいますよ。
とにかく、今から投下します。
222 :
「……それで?『首輪』ってのは、どこにあるんだ?」
現在、上条は高さ十メートルの屋根付きベンチで眠っている、
インデックスの前に立っていた。
何でも、眠っているほうが探査しやすいから、とのことらしい。
辺りには、探査に使われたルーンのカードが散らばっている。
「あぁ、今説明しよう。
何、そんな難しい場所にあるわけじゃないさ。
まずその子の口を開けて、喉の辺りを見てくれ。
……見たな?そこのいかにもって雰囲気の、それがお目当ての『術式』さ」
上条は発見したらしく、こっちに手を振る。
一方通行と神裂、ステイルの三人は少し二人から距離を置いている。
一応、何かあったらすぐにでも駆け付けられるようにはしているが。
「……うん、よし。
じゃあ、早速ぶっ壊すぞー!!」
「……いちいち大声で叫ぶンじゃねェよ、馬鹿」
「まったくの所だね。
……早いとこあの子を助けろ、ド素人!!」
「……お前ら、あとでぶっ飛ばす」
そんな会話をしながら、上条は右手を口に突っ込む。
神裂とステイルはごくり、と唾を飲み込んでいる。
一方通行も、少しだけ緊張した。
バキン、という『右手』が何かを壊した音がした。
三人は一気に息を吐いて、安堵した。
しかし次の瞬間――――
223 :
「…………ぐっ!?」
上条の右手が勢いよく後ろへと吹き飛ぶ。
元々、神裂に切り裂かれていた傷口が、さらに酷くなっていた。
後方で見ていた三人は、さらに驚くべきモノを見た。
眠っていたはずのインデックスの両目が静かに開く。
その眼の中には鮮血のように鮮やかな、真っ赤な魔法陣の輝きがあった。
「!?いけません、上条とう……」
神裂が叫んだが、もう遅かった。
インデックスの両目が輝くと同時に、何かが爆発した。
上条の体はこちらに向かって、凄まじい勢いで吹き飛ばされる。
「……くっ!!」
ありえないスピードで飛んで来た彼を、神裂が何とか受け止めようとする。
砂を後ろに引きずりながらも、彼女はどうにか受け止めた。
224 :
「――警告、第三章第二節。
Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録(インデックス)の『首輪』、
第一から第三まで全結界の貫通を確認。
再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能。
現状、十万三千冊の『書庫』の保護のために、侵入者の迎撃を優先します」
一方通行達は、目の前を見る。
そこには、不気味な動きでゆっくりと立ち上がるインデックスがいた。
その瞳には、人間らしい光を宿しておらず、ぬくもりもない。
一方通行には、見覚えがある眼だった。
三日前、小萌先生に『魔術』を使わせた時の、
見つめられるだけで凍てついてしまいそうな眼だ。
「……そういや、一つだけ聞いてなかったな」
上条はボロボロの右手を握り締めながら、呟いた。
「『超能力者』でもないのに、魔力とかいうのがお前にない理由」
その答えが、これだ。
教会も馬鹿ではない。
二重三重のセキュリティを作っておいたのだ。
おそらくは『首輪』が外された時のために、
彼女の魔力全てを使い、十万三千冊の魔導書を操る
まさに『最強』の自動迎撃システムを作りだしたのだろう。
225 :
「――『書庫』内の十万三千冊により、
防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算……失敗。
該当する魔術は発見できず。
術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術『ローカルウェポン』を組み上げます」
インデックスはかすかに首を曲げて、
「――侵入者に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。
これより特定魔術『聖(セント)ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」
そう言った瞬間、彼女の両目にあった二つの魔法陣が一気に拡大した。
それらは彼女の顔の前に、重なるように配置してある。
左右一つずつの眼球に固定されているようで、
彼女が首を動かすと空中の魔法陣も同じように後を追う。
インデックスが、人の頭では理解不能な『何か』を歌った瞬間、
魔法陣二つがいきなり輝いて、爆発した。
二つの魔法陣の接点を中心に、
空気に真っ黒な亀裂が四方八方、
インデックスの周りを走り抜けていく。
それ自体が何人たりとも彼女に近づけさせはしない、一つの防壁のように。
そうして、亀裂が内側から膨らむ。
わずかに開いた隙間からは、獣のような匂いが漂う。
226 = 225 :
そうして、『何か』が近づいてきている。
魔術師二人は声も出ないらしい。
呆然と『それ』を見ていた。
そんな中で、上条と一方通行は一歩、前へと踏み出す。
「……ふン。なンつゥかよ、ホントRPGでもやってる気分だな」
「ははは。……まったく、そうだな」
そう言いながらまた一歩踏み出す。
「今の内に帰ってもいいンだぜェ、上条くゥゥゥン?」
「ハッ。そういうそっちこそ、ビビってんじゃねえのか?」
さらに一歩、踏み出す。
「……上等だ、三下。
後で吠え面かくなよ?」
「そっちこそ、な」
「……まァ、いい。そンじゃ――行くか!!」
「あぁ!!」
二人は一気に駆け出す。
ただ、あの少女ともう一度笑いたい――そのためだけに。
227 = 224 :
二人が彼女との距離を四メートルまで縮めたその時、
亀裂が一気に広がり、『開いた』。
そんな巨大な亀裂の奥から、『何か』が覗き込む。
次の瞬間、亀裂の奥から光の柱が二人に襲いかかる。
一方通行よりも少し先に行っていた上条は、それに向かって右手を迷わず突き出す。
じゅう、と鉄板などで肉を焼くような激突音が一方通行に届いてくる。
しかし、光の柱はまったく消えようとしない。
(どォなってやがる!?確かに右手に触れてンじゃねェか!!)
上条は重圧に吹き飛ばされそうになり、じりじりと後退している。
どうやらインデックスは、十万三千冊全てを利用した魔術を放っているようだ。
一冊一冊が『必殺』の意味を持つ、全てを使っているなら納得もいく。
「――『聖ジョージの聖域』は侵入者に対して効果が見られません。
他の術式へ切り替え、
引き続き『首輪』保護のため侵入者の破壊を継続します」
インデックスの冷徹な声が響いてくる。
228 :
そこへ、
「それは『竜王の吐息(ドラゴン・ブレス)』――
伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!
いかな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合わないでください!」
神裂とステイルが駆け寄ってくる。
一方通行はそれを聞いて、
「あァ、そォかよ。
ならこォするまでだ」
言うと同時に地面を踏み抜き、その衝撃のベクトルを操る。
それはそのまま、インデックスが立っている地面へと進み、彼女の足元を隆起させる。
それによって、彼女の体は後ろに吹き飛ぶ形で倒れ込む。
インデックスの『眼球』と連動していた魔法陣が動き、光の柱が大きく狙いを外す。
巨大な剣を振り回すかのごとく、屋根と公園の後ろにあった廃ビルが二つに切り裂かれた。
夜空に漂う漆黒の雲までもが引き裂かれる。
……もしかしたら、大気圏外の人工衛星まで破壊したかもしれない。
破壊された屋根からは、光の柱と同じく純白の光の羽がゆっくりと舞い散る。
229 :
『光の柱』の束縛から逃れた上条は、
一気に走ってインデックスに近づこうとする。
しかし、それより先にインデックスが首を巡らせた。
このままでは、また捕まってしまう!!
「――Fortis931!!
……魔女狩りの王(イノケンティウス)!」
ステイルが叫ぶと同時に、身構える上条の前に、
炎の巨人が出て来て彼の盾となった。
ぶつかり合う光と炎を迂回して、
上条は全速力でインデックスの元へと走り寄る。
「――警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認。
戦闘思考を変更、戦場の検索を開始……完了。
現状、最も難度の高い敵兵『上条当麻』の破壊を最優先します」
『光の柱』ごとインデックスは首を振り回す。
同時に魔女狩りの王も上条の盾になるように動く。
光と炎は互いに喰いつぶし合いながら、延々とぶつかり合う。
上条は、一直線にインデックスを帰る場所へと『迎え』に行く。
あと四、三、二、一メートル!!
「ダメです――――上条とう……」
もう少しで魔法陣に触れられるというところで、神裂の叫びが響く。
何十枚もの光り輝く羽が、彼の頭上へ降りかかろうとしている。
230 :
魔術を知らない上条や一方通行でも分かる。
たった一枚でも触れたら、大変なことになるのだろう。
そして、彼が右手を使えばそれを防げるだろうという事も分かっている。
しかし、
「――警告、第二十二章第一節。
炎の魔術の術式の逆算に成功しました。
曲解した十字教の教義(モチーフ)をルーンにより記述したものと判明。
対十字教用の術式を組み込み中……第一式、第二式、第三式。
命名、
『神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)』完全発動まで十二秒」
魔女狩りの王は、だんだんと押されていく。
光の羽を一枚一枚右手で撃ち落とせば、
その間にインデックスに体勢を立て直されるだろう。
自分の事か、彼女の事か――。
上条の答えはとうに決まっているだろう。
一方通行には、分かっている。
231 :
しかし、一方通行はそんなつまらない未来で終わらせるつもりなどない。
「……お、おォォォォっっっ!!」
彼は風を操り、上条達を吹き飛ばさないように、
羽が舞う上空のみに暴風をたたき付ける。
しかし、
「……くっそがァァァ!!」
羽は全く風の影響を受けず、ゆっくりと落ちていく。
そうしている間に、上条は右手を振り下ろす。
右手に触れた、黒い亀裂とその先の魔法陣はあっさりと切り裂かれる。
まるで、皿なんかを保護するのに使う、
プチプチしたヤツを潰すかのようなお手軽さで。
「――警、こく。最終……章。第、零――……。
『 首輪、』致命的な、破壊……再生、不可……消」
ぷつり、とインデックスの口から全ての声が消えた。
232 :
光の柱も、魔法陣も消え、辺りに走った亀裂が消えていく。
「早くガキ連れて逃げろ、上条!!」
一方通行はそう叫んだ。
声が聞こえた方向――親友の方を上条は見た。
その時、上条当麻の頭の上に、一枚の光の羽が舞い降りた。
「上条!!」
親友の悲痛な叫びを聞いた彼は、笑って一言だけ言うために口を動かす。
「――――」
一方通行はそれを聞いて固まる。
そして、上条は満足そうに笑って、
倒れているインデックスに覆いかぶさるように倒れ込む。
降り注ぐ光の羽から彼女の体を庇うように。
この夜。上条当麻は『死んだ』。
233 = 231 :
翌日――――
一方通行は第七学区にあるとある病院の廊下を、
カエル顔の医者と歩いていた。
この医者は、巷では冥土返し(ヘブンキャンセラー)
とまで呼ばれる名医らしいが、
一方通行にはあんまりそうは思えなかった。
まぁ、どうだっていいことだが。
しばらくして、ある少年の病室に二人はたどり着く。
一方通行がドアを開けようとした瞬間、
白い修道服(安全ピンで留めてある惨めなヤツ)
を着た少女が先にドアを開けて、部屋から出て来た。
ずいぶんとご立腹らしく、
ぷんぷん、という擬音がよく似合いそうな動きをしていた。
そのまま彼女は部屋を出ると、どこかへと歩き出す。
「オイ、クソガキ。
オマエ、どこに……」
「散歩!!!!」
一方通行が行き先を聞こうとすると、
いかにも怒ってます、と言わんばかりに叫んだ。
234 = 229 :
「ナースコールがあったからやってきたけど……あー、これはひどいね?」
先に部屋に入ったカエル医者がそんな事を言った。
一方通行が部屋に入ると、
ベッドから上半身だけずり落ちている、ツンツン頭の少年の姿があった。
少年は頭のてっぺんを両手で押さえて泣いていた。
死ぬ、これはホントに死ぬ、とか独り言をしているのがまた、リアルだ。
一方通行はドアを閉めると、椅子に座る。
そして、ゆっくりと口を開く。
「…………オマエ、本当によかったのかよ?」
「……えっと、何がだ?」
逆に少年は質問する。
質問に質問で返すなよ、とか思ったが、今そんな事はどうでもいい。
彼はもう一度ゆっくり口を開いて、聞き直す。
235 = 222 :
「オマエ、本当は何にも覚えてねェンだろ?」
236 :
透明な少年は黙り込む。
昨日、彼は脳に舞い降りた羽によって脳細胞が『破壊』され、
思い出を全て失ってしまったのだ。
それでも彼は何故か、一方通行からこれまでの経緯を聞いて、
とある少女――インデックスには本当の事を言いたくない、と言った。
「……あれで良かったんじゃないか」
ぽつり、と透明な少年は言った。
「俺。なんだか、あの子にだけは泣いて欲しくないなって思ったんだ。
――そう思えたんだよ。
これがどういう感情か分からないし、きっともう思い出せないんだろうけど、さ」
透明な少年は、何の色もなく笑うと、
「先生は、どうしてあんな話を信じてくれたんです?
魔術師だの、魔法だの、お医者さんには一番遠い存在じゃないですか?」
と、医者の方を見て言った。
「何、患者の必要なモノを揃えるのが僕の仕事だからね?これくらい、朝飯前というヤツだよ」
医者はそう言って、笑った。
何で笑っているのか分からない、と言った顔で。
少年の笑みを見ていると、まるで鏡のように笑ってしまうのだろう。
どちらが『鏡』なのかは、一方通行には分からない。
それぐらい少年の笑みには、哀しみも喜びも、何もなかった。
どこまでも透明なのだ。
237 :
「……案外、俺はまだ覚えてるのかもな」
一方通行はそれを聞いて、思わず尋ねた。
「オマエの『思い出』は、脳細胞ごと『死ンで』ンだぜ?
…………脳に残ってないのによ、一体どこに『思い出』があるってンだよ」
一方通行は、一つの答えを目の前の少年に期待した。
コイツなら、きっとどうなっても根本的な部分は変わってない。
――――そう、思えたのだ。
「どこって、そりゃあ決まってんじゃねえか」
透明な少年は笑って答えてみせた。
「――――心に、じゃないか?」
238 = 229 :
「…………は」
そう聞いて、一方通行はポカン、としてから
「は、はははは!!ひっ、あはははは!!」
おもいきり笑った。
「む。何だよ、人が真面目に答えたのに」
透明な少年は、少しむっとしたらしい。
「ハッ、そりゃ悪かったな」
そう言って、彼は立ち上がり、部屋の出口まで歩き出す。
「……じゃあなァ、また明日来てやる。
そン時にオマエの周りの事、出来る限りは教えてやるよ。
……あとよォ、あのガキの方は俺が当分は面倒を見といてやる」
現在、『首輪』がとれたインデックスは、
当分は様子見として彼らに預けられる事になっている。
……最も、一方通行はインデックスの事は少年の方に任せるつもりだが。
239 = 223 :
「ありがとな。
…………えーっと」
「一方通行(アクセラレータ)だ、一方通行」
「うん。ありがとな、一方通行。
お前って、ホントいい奴なんだな」
そう言われ、一方通行は少し笑う。
……昨日もそンな事言われたなァ、と思う。
何となく彼は、『上条当麻』の最期の言葉を思い出した。
「た の ん だ ぞ 」
それが彼の残した最期の言葉だった。
彼は『親友』の顔を思い浮かべる。
そして、
「……あばよ、『親友』」
そう、彼は少年に聞こえないようにつぶやき、部屋を出ていく。
「……さァて、とォ。
昼になっちまったし、あのガキを捜すとしますかねェ」
『親友』との約束を果たすために、彼は新たな決意を胸に歩き出す。
240 = 230 :
以上で一巻は終了でございます!
最後については、一方さんが二人を庇って
記憶を無くすとかにしようかとも思ったんですが、
なんか、違うなーと思ったのでやめました。
とりあえず、次回からはニ巻!……と言いたいところですが、
1.5巻として、上条さんが退院した時のお話を書きたいなと思います。
ので、次は読み飛ばしてくれても構いません。
それでは、皆様。また、三日後に。
241 :
記憶消失=「上条当麻」の死
の表現が原作よりもなんかガツンときた
242 :
乙
カエル「僕は『冥土帰し』なんだね?」
243 :
いったい何巻までやるつもりなんだww
とりあえず一巻完結おつ
244 :
ずっと続けてほしい胸熱
245 :
うん。これはどんなに長くなってもいいから
ずっと続けて欲しいと思った
一巻完結乙!!!!
246 :
>>243
>>1の書くスピードが上がってかまちーに追いつくまでだろ?
247 :
どもども、1でございます。
超夜中に小ネタ編投下しに来ますね。
皆様、少々お待ちを。
248 :
うむ、
249 :
まだかな
250 :
さて、やって来ました。
1でございます。
これから、投下していきます。
今日は、小ネタ編をお送りいたします。
みんなの評価 : ★★
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