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    元スレ上条「いくぞ、親友!」一方「おォ!!」

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    タグ : - 一方 + - 上条 + - 木原 + - 農業 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    401 = 383 :

    「ちょ、おいインデックス!?」

    「誰かが『魔法陣』を仕掛けてるっぽい。
    調べてくるからとうま達は先に帰ってて!!」

    あっという間にインデックスは路地裏へと消えていく。

    「あ、行っちまった……」

    呆然とした様子で上条は呟く。

    「オイ、とっとと追うぞ」

    「ん。そうだな」

    帰ってろ、などと言われてむざむざ帰る二人ではない。

    そもそも、こんな路地裏を一人で歩かせるのは危険だ。

    二人がインデックスを追って路地裏に入ろうとしたところで、

    「久しぶりだね、上条当麻に一方通行」

    背後から声がした。

    一方通行はすぐさま振り返る。

    そこにいたのは、

    「……ステイル、か?」

    二週間ほど前に出会った、炎を操る『魔術師』――ステイル=マグヌスだった。


    402 :

    「他に誰に見えるんだい?
    僕はそっちに興味があるね」

    そう言って、ステイルは不思議そうに上条を見る。

    「ん?どうした、上条当麻。そんな間抜けな面して」

    そう言われた上条は、

    「別に。何でもねーよ。
    ていうか、お前こんなところで何してんだ?
    神裂と一緒にインデックスに会いにでも来たのか?」

    と、まるでステイルの事を覚えているように返す。

    一方通行は上条に、『魔術師』についても一通りは教えてある。

    なので顔は知らなくても、一方通行の一言を聞いて上手く対応した。

    ステイルはそれを聞いて少し黙ると、

    「……いや?そういう訳じゃないさ。
    君達にちょっとした内緒話をしに、ね」

    言いながら、ステイルは懐から大きな茶封筒を取り出す。

    (内緒話だァ……?)

    一方通行は目の前の少年――といっていいか分からない大男を訝む。

    こんな大通りで『内緒話』など出来るのだろうか。

    そう考えてから思い出す。

    ルーンを刻んだ範囲にのみ効く、人を追い出せる魔術。

    確か――――

    「『人払い』ってやつか」

    そう言われたステイルは、

    「まぁ、そういう事さ。
    あぁ、インデックスなら問題ないよ。
    ルーンによる魔力の流れを調べに行ったんだろうから」

    と言った。


    403 :

    「内緒話って……何の話だよ?」

    さっきまで黙っていた上条が尋ねる。

    ようやく状況を把握しきったらしい。

    「うん?あぁ、そうそう」

    行け(Ehwaz)、とステイルが呟いて封筒を人差し指で弾くと、
    封筒はくるくる回転しながら、上条の手元へと納まる。

    封筒の口には、奇妙な文字が刻んである。

    「受け取るんだ(Gebo)」

    そうステイルが言った途端、その文字が光り、封が真横に裂けた。

    「君達は『三沢塾』って進学予備校の名前は知ってるかな?」

    ステイルは歌うように言った。

    どうやら、封筒の中の書類一枚一枚にルーンが刻んであるようで、
    魔法の絨毯やら一反木綿みたいに必要な書類だけが、二人の前でふわふわ飛んでいる。

    「みさわ……?」

    上条は、『知識』としても覚えがないらしく、首を傾げている。

    「確か……この国でシェア一位を誇る予備校だったかァ?」

    一方通行は、名前だけならば知っていた。

    「この街にもあったはずだが……それがどォかしたのか?」

    そう聞いてみると、ステイルはつまらなさそうに答えた。


    404 = 402 :








    「ああ、それね。
    ……そこ、女の子が監禁されてるから。
    どうにかその子を助け出すのが僕の役目なんだ」

    と、言った。







    405 = 399 :

    一方通行は、思わぬ言葉に驚く。

    冗談とかではない事ぐらいは分かる。

    というか、目の前の魔術師が冗談を言う姿が想像できない。

    上条は上条で、ギョッとした様子でステイルを見ていた。

    「ふん。資料を見てもらえば分かるとは思うけどね」

    そう言って、ステイルは人差し指を立てる。

    上条の持つ封筒から次々とコピー用紙が飛び出し、
    上条と一方通行の周りを取り囲む。

    ――それらは『三沢塾』についての調査結果をまとめたものだった。

    それには、見取り図や出入りする人間のチェックリストなどに記載されている、
    様々な箇所の矛盾点などが指摘されている。

    「今の『三沢塾』は科学崇拝を軸にした新興宗教と化しているんだそうだ」

    ステイルはやっぱりつまらなそうに言った。

    「って、あれか?
    神様の正体はUFOに乗ってきた宇宙人とか、
    聖人のDNAを使ってクローンを作ろうとかっていう……?」

    上条は眉を寄せて、尋ねる。


    406 :

    科学と宗教は相いれない、という考えは少々短絡的だ。

    十字教徒には、西洋圏の医者や科学者だってたくさんいる。

    ただ、科学宗教には最先端の科学技術があって、
    毒ガスやら爆弾やらを生成して、とんでもない事件を起こす時もある。

    なので最先端の科学技術を持ち、
    『学習、教育』の場でもある学園都市は、
    そう言った科学宗教を特に警戒している。

    「教えについては不明だけどね。
    それに正直、『三沢塾』がどんなカルト宗教に変質しようが知った事じゃないし、ね」

    「何だ、そりゃ?」

    ステイルは吐き捨てるように告げる。

    「端的に言うとね。
    『三沢塾』は乗っ取られたのさ。
    科学かぶれのインチキ宗教が、
    正真正銘、本物の魔術師――いや、チューリッヒ学派の錬金術師にね」

    「何だそれ?」

    「うん?まぁ、理解はしなくてもいい。
    大事なのは、そいつが『三沢塾』を乗っ取った理由さ。
    一つは簡単。
    元々ある『三沢塾』って要塞(システム)を、
    そのまま再利用したかったんだろうね。
    生徒(信者)のほとんどは校長(教祖)の首がすげ替わってる事にも気付いてないはずさ」

    そこまで言って、ステイルは一拍置いてこう告げた。

    「ただ、そいつのそもそもの目的は、
    『三沢塾』に捕らえられていた吸血殺し(ディープブラッド)なんだ」


    407 :

    吸血殺し、という言葉は一方通行には聞き覚えがなかった。

    上条を見れば、首を振っていた。

    彼にも覚えがないようだった。

    「何でも、そいつが吸血殺しを狙っていたところを、
    先に『三沢塾』がそれに辿り着いたらしくてね。
    吸血殺しを誰にも気付かれずに
    学園都市から奪い取るつもりだったヤツは、
    おかげで計画変更を余儀なくさせられたって訳なのさ」

    「つまり、『三沢塾』から強引に奪い返したって事なのか……?」

    先に奪われた吸血殺しを奪い返したはいいが、
    学園都市の警備システムに取り囲まれた状況で、
    仕方なく『三沢塾』に立て篭もった、という事なのだろう。

    「そうだね。錬金術師にしてみれば、
    吸血殺し(あれ)の獲得は悲願だろうからね。
    ……いや、それを言うなら全ての魔術師……いや人類全ての、かもしれないけど」


    408 = 407 :

    「???」

    「ンだそりゃ?」

    二人が何の事か分からない、といった顔をするとステイルは、

    「あれは『ある生き物』を殺すための能力なのさ。
    いや、それだけじゃない。
    実在するかですら分からない『ある生き物』を生け捕りできる唯一のチャンスでもある」

    二人はまだ、分からない。

    「それはね、僕達の間じゃカインの末裔なんて隠語が使われているけれど」

    ステイルは小さく小さく笑い、まさに内緒話をするようにこう言った。

    「簡単に言えば、吸血鬼の事だよ」





    「オマエ、本気で言ってンのか?」

    それを聞いて、ようやく出てきた言葉はそれだった。

    吸血鬼、だなんて一方通行にはとても信じられなかった。

    「……冗談で言ってられる内は、幸せだったんだけどね」

    ステイルは何かに怯えるように、二人から目を反らした。


    409 = 403 :

    「ふん。吸血鬼を殺すための吸血殺しが存在する以上、
    『殺されるべき吸血鬼』がいなければ話にならない。
    こればっかりは絶対だ。……僕だって、ありえる事なら否定したいところだよ」

    「……何だよそれ?
    そんな絵本みてーな吸血鬼が、ホントにいるってのか?」

    上条はそれを否定したいらしい。

    一方通行もそうしたい。

    しかし否定するには、目の前の魔術師の放つ空気はあまりにも深刻だった。

    「それを見た者はいない――――それを見た者は死ぬからだ」

    ステイルは自信満々に告げた。

    「……」

    「……」

    「……もちろん僕だって鵜呑みにしている訳じゃないけどね。
    誰も見た事はない、なのに吸血殺しの存在がそれを証明してしまった。
    それが問題なんだ。
    相手がどれだけ強いのか、どこに、どれほどいるのか。
    ――何一つ分からない。だから、分からないモノには手の出しようがない」

    歌うように、ステイルは語る。


    410 :

    「しかしながら、分からないモノには同時に未知の可能性があるのさ」

    ステイルは皮肉げに笑った。

    「……君達は『セフィロトの樹』という言葉には……覚えがあるはずないね」

    「んな事言われたって傷はつかねーけどな」

    「結構。『セフィロトの樹』っていうのは神様、天使、人間などの
    『魂の位(レベル)』を記した身分階級表さ。
    簡単に言えば、人間はこの領域までは踏み込める。
    でもここから先には踏み込むことが出来ない、という注意書きみたいなモノさ」

    「……で?結局は何が言いたいンだよ?」

    「ふむ。ま、要するにだね。
    人間には、どれだけ努力しても辿り着けない高みがある、という事さ。
    それでも上に昇りたいのと思うのが魔術師なんだ。なら、どうすれば良いか」

    そこまで言って、ステイルはさらに笑う。


    411 :








    「答えは簡単さ、人間以外の力を借りれば良いだけだ」







    412 :

    二人は、何も言えなかった。

    「吸血鬼ってのは不死身だからね。
    心臓を取り出しても、生き続ける。
    ……差し詰め、生きる魔道具って感じかな?」

    ステイルは吐き捨てるように言った。

    「事の真偽は関係ない。
    そこに可能性が少しでもあれば、
    それを試すのが学者という生き物なんだ」

    ステイルが言いたい事は、こういう事である。

    吸血鬼がいるかどうか、などはどうでもいい。

    それを信じた人間がいて、
    事件を起こしてしまった以上、誰かがそれを解決しなければならない事。

    ……ただ、それだけの事である。

    「じゃあ、結局吸血鬼は『いるかどうか分からない』ままなのか?」

    あるかどうかも分からない財宝を巡って戦う話は
    映画(ハリウッド)なんかでよく見るが、
    実際に目の当たりにすると何だかバカバカしい。

    「元々『あるかどうか分からないモノ(オカルト)』を扱うのが僕達の仕事だからね。
    ……『三沢塾』も錬金術師も本気みたいだよ?
    吸血鬼と交渉(ゲーム)するための切り札(カード)として吸血殺しを必要としているのさ」


    413 = 407 :

    「……」

    「……」

    「それと、吸血殺しの過去を知ってるかい?
    その子は元々京都の山村に住んでいたらしいけど、ある日全滅したそうだ。
    通報を聞いて駆け付けた人間が見たものは無人の村と、
    立ち尽くす一人の少女と――村を覆い尽くすほどに吹きすさぶ白い灰だけだった、って話さ」

    吸血鬼は死ぬと灰になる、という伝承が一方通行の脳裏をよぎる。

    「確かに吸血鬼なんてそう信じられるモノじゃないさ。
    でもね、吸血殺しとは『吸血鬼を殺す力』だ。
    だったら、まずは吸血殺しは吸血鬼と出会わなくてはならない。
    ぜがひでも吸血鬼に遭遇したいと思う者なら、
    それを押さえておくに越した事はないんじゃないかな。
    ……もっとも、『吸血鬼を殺すほどの絶大な力』の持ち主をどう御するかって話だけどね」

    一方通行は、これ以上ステイルの話を聞かない事にした。

    自分の信じていた科学(世界)が崩壊しそうな気がしたのだ。


    414 = 400 :

    「で、さっきからさンざン『内緒話』してるけどォ、オマエ結局何が言いたいンだよ?」

    話を打ち切るために、手っ取り早く質問した。

    「うん?ああ、そうだね。お互い時間はない、さっさと済まそう」

    ステイルは二回頷いて、語り出す。

    「――とまぁ端的に言うと、
    僕はこれから『三沢塾』に特攻をかけて吸血殺しを連れ出さないとまずい状況にある」

    「ああ」

    「おォ」

    二人は簡単に頷く。

    しかし、ステイルはそれを見てこう告げた。

    「簡単に頷かないで欲しいね。
    君達だって一緒に来るんだから」

    ………………………………。

    「……オイ、オマエ今何て言った。聞こえなかったみてェなンだが」

    「あ、俺もだ。ダメだな、最近耳が遠いみたいで」

    「ふむ。そう言うならもう一度、ゆっくりと、言おうか。
    ……君達は 僕に ついてきて 吸血殺しを 助けるのを 手伝うんだ」

    「ふざけんな!!何で俺達がそんな事に「言っておくけど」

    それを聞いて、上条は怒って何か言おうとしたが、
    ステイルがそれを遮る。


    415 = 398 :

    「拒否権は君達にはないと思うよ。
    従わなければ君達のそばにいる禁書目録(インデックス)は回収する、という方向らしいから」

    ステイルが感情のない声で、そう言った。

    その言葉に二人は黙り込む。

    「必要悪の教会(ネセサリウス)が君達に下した役は、
    あの子の裏切りを防ぐための『足枷』なんだよ?
    君達が教会の意に従わないならその効果は期待できない」

    ため息をつきながら、ステイルは続ける。

    「また、あの子に『首輪』を付けたいのならどうぞ御自由に、というところだね」

    つまるところ、それは脅迫だった。

    「……テメェ。本気で言ってやがんのか、それ?」

    上条はイラついた声で聞いた。

    今の彼には記憶がない。

    インデックスだって、『記憶を失う前』の彼と一方通行の事であって、
    『記憶』のない少年には関係がない事だ。

    それでも、彼は彼女を守りたい――そう、願っている。

    そんな彼を、一方通行は嬉しく思う。


    416 = 407 :

    「……ふん」

    ステイルは、一瞬役目を取られた役者のような顔をして目を逸らした。

    当然だ、と思う。

    しかし、すぐさま無表情になったステイルは何でもなさそうに告げる。

    「殺し合いなら、これが終わってからにしよう。
    ……言い忘れたが、吸血殺しの本名は姫神秋沙という。
    写真はその中にあるから確かめておくといい。
    ……他の資料もよく読んでおけよ?一度目を通したら燃えるようにしたから」

    封筒の中から一枚の写真が出てくる。

    それにもルーンが刻んであるらしく、
    空中を舞って上条達の前で停止した。

    二人は写真を見ようとして、凍り付く。





    「………………え?」

    上条はそう呟く。

    一方通行は、言葉も出なかった。

    生徒手帳か何かに使う証明写真を拡大したそれには、
    昼間の巫女さんが写っていた。


    417 = 397 :

    一方通行は昼間の出来事とステイルの言葉を照らし合わす。

    間違いなく、姫神秋沙はあの巫女さんだ。

    (だとしても、どォして……)

    一方通行はその理由を考えてみる。

    ステイルいわく、姫神は『三沢塾』に監禁されているらしい。

    だとしたら、あんなファーストフード店でのんびりしているはずが――――

    ――帰りの電車賃。四百円。

    逃げ出した、のだろうか。

    それなら、彼女の所持金の少なさも理解できる。

    とりあえず着の身着のままで逃げ出して、
    電車やバスなどの交通機関を乗り継げば、金も減る。

    しかし、ならば何故あんな店にいた?

    そこまで考えて、一方通行は思い出した。

    は確か『やけぐい』と言っていなかったか?

    もう全財産が尽きて、逃げられなかったという事なら?

    せめて最後に『思い出』を作ろうとしていたのなら?


    418 = 407 :

    あと百円を貸して欲しい――そう、彼女は言った。

    それはつまり、あと百円さえあれば
    『三沢塾(地獄)』から逃げ切る自信があったのではないか?

    そのたった一つの少女の願いを、断ち切ったのは一体どこの誰だ?

    「……クソったれがァ……!!」

    一方通行はイラついた。

    あの時、姫神は『先生』に取り囲まれても抵抗するそぶりを見せなかった。

    抵抗したかったはずだったろう。

    必死に逃げ出して、簡単に連れ戻されるのを良しとする訳がない。

    仮に一人で逃げ出すのが無理なら、他の人に助けを求めるはずだ。

    では何故そうしなかったのか。

    その理由が分かって心底イラついた。

    彼女は、一方通行達を事件に巻き込みたくなかったのだ。

    その事に、『三沢塾』や錬金術師の事よりも怒りを抱いた。

    間違えている。

    上条でも、一方通行でも、青髪ピアスでも構わない。

    とにかく、誰かが彼女に百円さえ払えば姫神は救われたのだ。

    なのに、彼女は自分を絶望させた人達を助けるために、
    わざわざ『三沢塾』という、地獄の底に戻っていった。

    そんなの間違えている。


    419 = 407 :

    一方通行には、姫神がどんな扱いを受けているのかなんて、完全には分からない。

    それでも、だいたいは理解できる。

    おそらくは実験動物のように、
    どこまでも暗い、太陽の光が見えない『実験室(場所)』で、
    大きな痛みと苦しみを、味あわされているのだ。

    一方通行には、何となく予想がつく。

    …………昔、そうだったから。

    そして、その痛みは本来一方通行達が背負うものだった。

    そう、考えた一方通行は一つの決意を胸に抱く。

    (待ってやがれ。オマエが嫌がろォと、絶対に助け出してやる)

    姫神を助け出す。

    かつて自分を地獄の底から引きずり上げてくれた、大切な人達のように。


    420 = 396 :

    「オイ、こンなもンでいいのか?」

    「うん?……ああ、問題ないよ。ありがとう」

    現在、一方通行は自分の寮にいた。

    上条が、インデックスを置いていきたいと言ったからだ。

    ガチャリ、と音がして、上条が出てくる。

    「あれ?何してんだ?」

    上条の質問に、ステイルが答える。

    「僕達が出ている間に、インデックスが他の魔術師に狙われない訳ではないからね。
    こうして魔女狩りの王(イノケンティウス)を置いておけば、逃げる時間は稼げるだろう」

    上条がインデックスを置いてくるまでの間、
    一方通行はステイルを手伝ってルーンのカードを貼っていたのだ。

    「――ルーンをばら撒いた『結界』の中でしか使えず、
    ルーンを潰されるとカタチを維持するのが不可能になる、か」

    上条が呟く。

    おそらくは『知識』から引っ張り出したのだろう。


    421 :

    地獄の三沢
    いやなんでもない

    422 = 406 :

    それを聞いてステイルは不機嫌そうに、

    「あれは決して僕の実力が君に劣る訳じゃないさ。
    たまたま地理的な問題があっただけで、スプリンクラーのない場所なら勝てたさ」

    「あーはいはい。分かった分かった」

    上条の中には『知識』のみしかない。

    一方通行から、ステイルと戦ったのは聞いているが、その過程までは知らない。

    適当にごまかして、話を進めようとしているらしい。

    「……ふん。まぁ良い。
    設置も終わった事だし、三沢塾(本題)に向かうとしよう。
    ……まったく、世話が焼ける。あまり結界が強力すぎるとあの子が気付くんだから」

    ぶつぶつ文句を垂れているステイルは、なんだかんだ言って嬉しそうだ。

    それで上条は何となく気付いたらしく、余計な一言を言った。

    「お前さ、インデックスが好きなの?」


    423 = 411 :

    「ぶっ!?」

    瞬間、ステイルは茹でたタコみたいに顔を真っ赤にした。

    「なな何をいきなり言い出すんだ君は!
    あ、あれは保護すべき対象であって、けっ決して恋愛対象には――――!!」

    「オイオイ、上条くゥゥゥゥゥン。
    止してやれよ、ステイルくンが可哀相だろォが」

    そう言って、一方通行は笑いながら話題を打ち切った。

    あまり深入りすると、彼が自滅して『記憶喪失』がバレそうだからだ。

    「そ、それじゃ、『三沢塾』に向かう前に『敵』について触れておこうか」

    ステイルも話題を逸らしたいのか、そんな事を言った。

    学生寮を出て、街を歩きながら話を聞く事にした。

    「敵の名前はね、アウレオルス=イザードという」

    ステイルはそう切り出した。

    「アウレオルスと言えば一人しか存在しないが……。
    うん?なんだい、あまりに有名な名だから驚いているのか」

    「いや、つーかよォ。
    アウレオルスってなァ、誰だよ?」


    424 = 397 :

    一方通行が聞くとステイルは少し考え、
    合点がいったといった表情で言った。

    「……そうか。君達は魔術側(こちら)には疎かったな。
    だがいくら何でもパラケルスという言葉ぐらいは聞き覚えがあるだろう?」

    「???」

    「くっ……!
    知名度の上なら世界で一、二を争う錬金術師の名だ!」

    さっぱり分からない、といった表情を浮かべた上条を見て、
    ステイルは少しイライラした様子で言った。

    「って事は何か、そいつはメチャクチャ強いのか?」

    上条の質問に、ステイルは軽く答えた。

    「アレ自体はたいしたことないが……。
    吸血殺しを押さえるだけの『何か』を所持しているからね。
    それと、考えたくはないが……。
    最悪、もう『ある生き物』を飼い馴らしているかもしれない」

    どうやら、アウレオルスよりもそちらが気になっているらしい。


    425 = 383 :

    一方通行が聞くとステイルは少し考えて、合点がいった、といった表情で言った。

    「……そうか。君達は魔術側(こちら)には疎かったな。
    だがいくら何でもパラケルスという言葉ぐらいは聞き覚えがあるだろう?」

    「???」

    「くっ……!
    知名度の上なら世界で一、二を争う錬金術師の名だ!」

    さっぱり分からない、といった表情を浮かべた上条を見て、
    ステイルは少しイライラした様子で言った。

    「って事は何か、そいつはメチャクチャ強いのか?」

    上条の質問に、ステイルは軽く答えた。

    「アレ自体はたいしたことないが……。
    吸血殺しを押さえるだけの『何か』を所持しているからね。
    それと、考えたくはないが……。
    最悪、もう『ある生き物』を飼い馴らしているかもしれないね」

    どうやら、アウレオルスよりもそちらが気になっているらしい。


    426 :

    「オイ、そンなンでいいのかよ?
    吸血鬼とか、吸血殺しがどれだけイレギュラーなのか知らねェが、
    優先すンのは敵の大将だろォが。油断してっと、返り討ちなンじゃねェか?」

    一方通行には、『敵』を二の次に考えるのが納得できなかった。

    「そうだぞ。
    火事場のケンカだって、火の海ばかりに気を取られたら相手にぶん殴られちまうぞ」

    上条もそう思ったらしく、賛同してきた。

    「ん?ああ、それなら気にする事はないよ。
    アウレオルスの名は確かに一流だが、力はもうそうはないからね。
    それに魔術世界において、錬金術師なんて職業は存在しないんだ」

    ステイルが言うには、
    魔術師というものはまず、一通りの分野を学び、
    それから自分にあった専門分野を見つけるらしい。

    それでもアウレオルスが魔術師ではなく錬金術師と名乗るのは、
    単にそれ以外に能がないから、との事だ。


    427 = 400 :

    「それに……そもそも錬金術は完成された学問ではないからね」

    そう言ってステイルはさらに語る。

    「錬金術の本質ってのは、何かを『作り上げる』事ではなくて、『知る』事にあるんだ」

    簡単に言えば、
    アインシュタインが相対性理論を調べるために、
    核爆弾を作り出したようなものだろう。

    「そして錬金術師は『公式』や『定理』を調べる先に、究極的な目的がある」

    ステイルは、一呼吸して言った。

    「――――世界の全てを、頭の中でシミュレートする事さ」

    ステイルが言うには、
    世界の法則を全て理解すれば、
    頭の中でそれを完全にシミュレートでき、
    自分の頭の中に思い描いたモノを、現実に引っ張り出せるようになるらしい。

    「もっとも、一つでも『公式』が違えば、それは出来ないけどね」

    一方通行はそれを聞き終え、

    「……オイ、ちょっと待てよ。
    世界の全てが相手なンざ勝てっこねェじゃねェか」


    428 = 412 :

    そう、『世界の全て』には自分自身も含まれているのだ。

    どうやっても、相討ちしか結果は待っていない。

    「だから、大丈夫さ。
    錬金術はまだ完成していない学問なんだ」

    「あン?」

    「それってどういう事だよ」

    上条がそう言うと、ステイルは笑った。

    何でもその呪文自体はすでに完成しているが、
    それを語り尽くすには人間の寿命では短すぎるらしい。

    「ま、そんな訳でヤツに出来る事と言ったら、トラップを仕掛ける事ぐらいさ」

    やけに自信たっぷりなステイルの様子に、二人は違和感を感じる。

    「何だ、お前そのイザードって奴と知り合いなのか?」

    「ま、ちょっとした顔見知りさ」

    ステイルいわく、
    アウレオルスはローマ正教のために、
    『魔導書』を注意書きとして書く職務をしていたらしい。

    それで彼はあくまで『知識』しかないため、
    実戦経験はあまりなく、そう強くはないらしい。

    「とは言っても、権力は強い奴だったからね。
    ローマ正教内では彼の背信を罰する用意をしているよ」

    「ふーン」

    「ま、何でもいいけどな。
    ……ほら、戦場が見えたぞ」

    一方通行達は足を止めた。

    美しい夕日に照らされ、目的のビルは彼らを待ち構えていた。


    429 = 402 :

    今回は、これにて終了。
    次回、三沢塾で一方通行達が見た物とは……!?
    お楽しみに。

    木原くン、野原係長か……。
    予想通りすぎるなあ。
    どうせなら、若本さんみたいな意外性のある人が来ればいいのに。

    そして、皆様にご報告。
    これからは毎日投下します。
    どうやっても、今のペースじゃ二年ぐらい掛かりそうなんで。
    それでは、長文で失礼。

    430 = 381 :

    毎日来ると断言しおったで

    431 = 421 :

    毎日来る…①
    来る前には必ず腹パン…②
    ①かつ②
    ⇔毎日腹パン

    433 = 386 :

    誰かここの腹パンをAAで表現してくれよ

    434 = 381 :

    トンファーキックに似た感じの

    435 :

    毎日書けるのか>>1
    今頃首に鍼刺して書いてるのかしら?

    436 :

    逆に考えるんだ
    >>1は腹パンを食らいたいのではなかろうか

    437 :

     やっぱり一方通行と上条さん良く似てるなあ
    毎日とかマジパネエ
    乙です!!

    438 :

    地獄のミサワ塾

    439 :

    さぁみんなで腹パンの用意をしようじゃないか!!

    440 :

    そろそろ超準備始めますか

    441 :

    来ないと腹パンすっぞ!って意味だったはずが何時の間に……

    442 :

    この中に腹パン代行の方はいらっしゃいませんか~?

    445 :

    ども、1です。
    だいたい一時間後に投下開始します。
    どうぞ、お待ちあれ。

    446 = 438 :

    1時間後はすでに毎日ではなかった

    447 :

    とりあえず23時59分59秒までに投下すればぎりぎりセーフだけど・・・無理する必要はないよね

    448 :

    ひょえー待ってるぞ
    アクセラレさんがいながらのアウレオルスとの戦いか…

    449 :

    自転腹パンの用意しとくね!

    450 :

    これはもう腹パンは避けられないな


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