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    元スレ上条「いくぞ、親友!」一方「おォ!!」

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    タグ : - 一方 + - 上条 + - 木原 + - 農業 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    101 = 77 :

    「き、救急車は呼ばなくて良いんですか?
    で、でで電話がそこにあ、ああ、あるですよ?」

    小萌先生がブルブルと、ケータイのマナーモードみたいに震えながら部屋の隅を指差す。

    何故か懐かしい黒ダイヤルの電話だった。

    「―出血に伴い、血液中の生命力(マナ)が少なくなっています。」

    思わず、上条と一方通行、小萌先生は反射的に声がした方――インデックスの方を見た。

    彼女は倒れたままったが、静かに目を開けていた。

    応急処置のために一番近くにいた一方通行は驚かされた。

    その目はどこまでも冷たく、人間としてありえないと思える程完璧に、『冷静』だった。

    「―警告、第二章第六節。
    出血による生命力の流出が一定量を超えたため、
    強制的に『自動書記(ヨハネのペン)』で覚醒します。
    ……現状を維持すれば、ロンドンの時計塔が示す国際標準時間に換算して、
    およそ十五分後に私の身体に必要最低限の生命力が足りなくなり、絶命します。
    これから私の行う指示に従って、適切な処置を施していただければ幸いでございます。」

    一方通行はそれを聞いて、さらに驚いた。

    先程までと違い、彼女の声は凍りついていた。

    102 = 77 :

    「さて……。」

    上条と一方通行は目を見合わすだけで会話する。

    『……さっき、決めた通りにな。』

    『……あァ。分かってる。』

    「先生、ちょっと。
    非常事態なんで手短に言いますね。こっちに。」

    こいこい、と上条が呼ぶと小萌先生は無警戒でやって来た。

    すまねェ、と一方通行は一応心の中でインデックスに謝って、
    隠されていた傷口を一気にさらけ出した。

    「ひぃっ!?」

    小萌先生の体が震えたのも、無理はない。

    上条も傷口を見て、ショックを受けているようだった。

    一方通行は昔のことがあってか、たいしてショックは受けなかった。

    しかし、憤りを感じていた。

    傷口からは脂肪や筋肉、果ては骨まで見える。

    (ふざけ、やがって……!!)

    少しだけ、インデックスの手を掴む力が増す。

    103 = 77 :

    ゆっくりと、一方通行は傷口を覆い隠していた布を元に戻す。

    「……先生。」

    「ふぇっ!?ひゃい!?」

    「今から救急車、呼んできます。
    先生はその間、この子の話を聞いて、
    お願いを聞いて……とにかく絶対、意識が飛ばないようにしてください。
    この子、服装から分かるように宗教やってるんで、よろしくお願いします。」

    気休め、とでも言えば『魔術』なんてモノを頭ごなしに否定しないだろう。

    それが、二人で考え出した結論である。

    実際、小萌先生は真剣な表情でこくこく頷いている。

    「なぁ、インデックス。
    なんか、俺にやれる事はない、のか?」

    「―ありえません。
    この場における最良の選択肢は、あなたがここから立ち去る事です。」

    そう言われ、彼女は冷徹とも言える声色で返した。

    そう言われた上条の表情は酷く、悔しそうで辛そうだった。

    「……じゃ、先生。
    俺、ちょっとそこの公衆電話まで走ってきます。」

    「……へ?か、上条ちゃん、電話ならそこに―」

    上条はその言葉を無視して出ていく。

    その背中はとても小さい。

    そう、一方通行には見えた。

    104 = 77 :

    「オイ、先生。
    このままじゃ、コイツの意識が飛ンじまいそうなンだが。」

    だから一方通行は彼のためにも、自分が出来る事をする。




    こうしてこの夜、一方通行は『魔術』を初めて見た。




    (これが『魔術』、か……。)

    初めて見た『魔術』に、一方通行は驚いていた。

    まず、あまりにも準備が簡単すぎた事だ。

    目の前には、部屋にあった様々なモノが訳の分からない配置で置いてある。

    しかし、これで『魔術』はあっさり発動した。

    次に、さっきまでのケガの痕が無くなっている事だ。

    これでは『科学』など要らないかもしれない。

    そんなことを思わされた。

    そして、なによりも驚きなのは

    (全く力の向き(ベクトル)が理解出来ねェ、だと……?)

    そう、あらゆる力の向き(ベクトル)を観測し、
    操る彼の能力を持ってしても、インデックスの身体に働いた力は理解出来なかったのだ。

    もしかしたら、自分には『魔術』を『反射』することすら出来ないのかもしれない――
    そう考えて、彼は自分は本当に最強なのか?という疑念を抱いた。

    「いや、そンなことはいいか。」

    彼は、そうつぶやきつつ上条を呼びにいく事にした。

    105 = 77 :

    と言ったところで今回は終了です。
    いいぜ、ステイルと戦うルートへ進もうってんなら
    まずは、そのふざけたベクトルを変更する!!
    ……はい。ただ単に、ステイルと戦っても
    一方さんが圧倒する姿しか思い浮かびませんでしたのでカット。
    次は一週間以内に来ます。
    あと、二回くらいで一巻が終わるといいなぁ……。
    それでは、皆様よいお年を!!

    107 = 95 :


    新年まで来ないのか・・・

    109 :

    神裂「七閃」反射

    神裂「ぐあああ」

    これしかおもいつかない

    110 :

    111 :

    >>110
    …何してん

    112 :

    どうも、1です。
    新年、あけましておめでとうございます。
    今日、投下しようと思ったのですが諸事情で出来ませんでした。
    ので、明日の朝に投下致します。
    皆様、しばしの間お待ちを。

    113 :

    把握

    114 :

    待つぜ!

    115 :

    宣言通り、投下しに参りました。
    それでは、どうぞ。

    116 = 115 :

    一夜明けて、インデックスは熱を出した。

    本人いわく、
    傷口は塞がったが、
    治すための体力が足りないのでこうなっているらしい。

    「……で?何だって下パンツなのお前。」

    現在、彼女は小萌先生のパジャマを上だけ着た状態で寝ている。

    おでこの上にはぬるくなったタオルがあり、それが高熱を示していた。

    「……上条ちゃん。
    先生は、いくら何でもあの服はひどいと思うのです。」

    そりゃそォだ、と一方通行は心の中で呟いた。

    インデックスの方は着慣れた修道服を取られて不機嫌そうだったが。

    「……ていうか。
    何で大人の小萌先生のパジャマがインデックスにぴったり会うんだ?年齢差、いくつなんだか」

    なっ、と先生は絶句しかける。

    そこにインデックスは追い討ちをかける。

    「……みくびらないで。
    私も、流石にこれは少し胸が苦しいかも」

    「むむっ……ありえません!
    いくら何でもその発言は舐めすぎなのです!」

    「その前に苦しくなる胸なんてあったのか!?」

    ジトー、とした眼で二人に睨まれて、上条は全力で土下座した。

    一方通行は呆れた様子で、この場は黙っていた。

    117 = 115 :

    「さて、上条ちゃんに一方ちゃん。
    この子はお二人の何様なのですかー?」

    それを聞かれ、二人はドキッとした。

    当然、来る質問だとは思っていた。

    突然、どう見ても事件性のある傷を負った、外国人の少女を連れ込み、
    あげくの果てには『魔術』などという、訳の分からない事をさせたのだ。

    聞かない方がおかしい。

    ただ、二人はどう答えるか考えていなかった。

    (さァて……どォ答えたもンか……)

    一方通行が考えあぐねていると、

    「……俺の妹です」

    と、上条が答えてしまった。

    馬鹿、とだけ彼はボソッと呟いた。

    「嘘です。この銀髪碧眼ちゃんはどう見ても外国人なのです」

    「……義理なンだよ」

    仕方なく、一方通行もその方向でごまかすことにした。

    「上条ちゃんは変態さんだったのですか?」

    「ジョークです!」

    一方通行は軽く上条を睨む。

    もうちょっとマシな嘘をつけ、と。

    対する上条は口笛を吹きながら、目を反らす。

    118 = 115 :

    「上条ちゃん、一方ちゃん」

    小萌先生は先生口調で言い直す。

    「先生よォ、一つだけ聞いてもいいかァ?」

    「はいー?何でしょうか?」

    「事情を聞きたいのは、
    これを警備員(アンチスキル)や統括理事会に伝えるため、ですか?」

    二人の質問に、小萌先生はあっさり首を縦に振った。

    ためらいもなく、人を売り渡す、そう自分の生徒達に言い切った。

    「上条ちゃん達が一体どんな事に巻き込まれてりか知りません。
    ……ですが、学園都市の中でそれがあったなら、解決するのは私達教師です。
    上条ちゃん達が危ない事になっていると知って、黙っている程先生は子供ではありません。」

    何の能力も、力も、責任もないというのに、
    月詠小萌は、ただ真っ直ぐな『正しさ』で、そう言った。

    119 = 115 :

    「チッ……」

    一方通行は舌打ちする。
    このお子様教師といい、木原数多といい、どいつもこいつも……敵わない。

    こんな風に、誰かのために無償で助けてくれる人間はそう見た事などない。

    だからこそ、そんな人が傷付く所など見たくない。

    上条も同じ結論を下したらしい。

    「先生が赤の他人なら遠慮なく巻き込んでるけど、
    先生には『魔術』の借りがあるんで巻き込みたくないんです」

    真っ直ぐと、そう告げた。

    先生は少し、黙った。

    「ふぅ。そんな風にかっこよくごまかそうたって先生は許さないのです」

    「……?オイ、先生。
    いきなり立ち上がってどこに行くンだよ」

    「執行猶予です。
    先生スーパーにご飯のお買い物に行ってくるです。
    二人はそれまでに何をどう話すべきか、きっちりと整理しとくのです。……それと」

    「それと?」

    「先生、お買い物に夢中で忘れるかもしれません。
    帰ってきたらズルしないで二人の方から話してくれなくちゃダメなんですからねー?」

    そう言った小萌先生は、ステキな笑顔で去っていった。

    120 = 115 :

    (……気を遣わせた、のかァ?)

    何となくだが、あの笑顔を見ると、
    『スーパーから帰ってきた』小萌先生は『全部忘れた』事にしてしまいそうだと思う。

    それでいて、後から相談しても
    『どうして早く言わなかったんですか!?
    先生はすっかりキレイに忘れていたのです!!』
    とか言ってプンスカ怒って、嬉しそうに相談に乗るのだろう。

    「……悪ぃな。
    なりふり構ってられる状況じゃねぇのは分かってるけど。」

    上条が、インデックスの方を振り返って言った。

    「ううん。あれでいいの。
    これ以上巻き込むのは悪いし……それに、もうこれ以上あの人は魔術を使っちゃダメだし」

    インデックスは小さく首を振って、そう言った。

    何でも、魔導書には『違う世界』の知識が載っていて、
    それらは善悪の前に『この世界』には有毒であり、
    それを知った『普通』の人間の脳はそれだけで破壊されるとのことだ。

    121 = 115 :

    「ふ、ふぅん……。
    何だよ、もったいねぇ。
    あのまま先生に錬金術とかやらせようとか思ってたのに。
    知ってるぞー、錬金術。鉛を純金に換えられるんだよな?」

    どうやら、上条はさっきの話から受けた衝撃を表に出さないようにしているらしい。

    ……一方通行にはバレバレだったが。

    「ンな事出来るわきゃ……」

    「……純金の変換(アルス=マグナ)は出来るけど、
    今の素材で道具を用意すると日本円だと……うん、七兆円ぐらいかかるかも」

    それを聞いて、上条はがっかりしたらしく

    「………………超意味ねえ、な」

    と呟いた。

    インデックスも苦笑して、上条に賛同した。

    「……だよね。
    たかが鉛を純金に変換したって貴族を喜ばせる事しかできないもんね」

    二人の会話を聞いていた一方通行は疑問を口にした。

    「オイ、ちょっと待て……。
    そりゃァ、一体どォいう原理なンだ?
    鉛を純金に換えるってこたァ、原子を組み換えるって事なンだろ?」

    「よくわかんないけど、たかが十四世紀の技術だよ?」

    それを聞いて、一方通行はますます驚かされる。

    そんなマネ、この街にいるたった七人の超能力者(レベル5)でも出来るかどうか分からない。

    ますます一方通行は自分の強さが疑わしくなった。

    122 = 115 :

    「とにかく、儀式で使う聖剣や魔杖を今の素材で代用するのにも、限度ってモノが……痛っ……」

    興奮して一気にまくし立てようとした彼女は、頭痛にこめかみを押さえた。

    上条と一方通行は布団の中のインデックスの顔を見る。

    十万三千冊もの魔導書。
    たった一冊で発狂するようなものを、
    一字一句正確に頭に詰め込む作業は、一体どれほどの『痛み』を彼女に与えたのか?

    それでも、インデックスは一言だって苦痛を訴えない。

    知りたい?――そう、彼女は言った。

    自分の痛みを無視して、二人に謝るように。

    静かな声は、普段明るいインデックスだからこそ、より一層『決意』を見せた。

    二人からしてみれば、彼女の抱えた事情などどうでも良かった。

    今更、彼女を見捨てるつもりなどさらさらないのだ。

    彼女の古傷をえぐる必要はない、そう思っていたのだ。

    「私の抱えている事情(モノ)、ホントに知りたい?」

    もう一度、インデックスは言った。

    二人は、覚悟を決めるように、答えた。

    「なんていうか、それじゃこっちが神父さんみてーだな。」

    「……まったくだなァ。」

    123 = 115 :

    インデックスはゆっくりと語り出す。

    十字教の分裂。

    そこから始まった、各宗教の『個性』の入手。

    インデックスが在籍しているイギリス清教では、
    『対魔術師』用の文化・技術が発達した事。

    発達した結果、敵の魔術を調べて対抗策を練る特別な部署が出来た事。

    敵を知らなければ、攻撃を防げない。
    しかし、汚れた敵を理解すれば心も体も汚れる。

    だから、それを一手に引き受けるその部署――必要悪の教会(ネセサリウス)が出来た事。

    そして、その最たるものがインデックスの記憶している十万三千冊である事。

    世界中の魔術を知れば、
    それら全てを中和できる――そのために全て記憶した事。

    しかし、その結果少女は狙われる事になった事。

    十万三千冊を、全て使えば世界の全てをねじ曲げられる力が手に入る。
    そう言った力を持つ者を魔神と呼ぶらしい事。

    そんなモノのために魔術師達は彼女を追い掛け回している事。

    124 = 115 :

    (……ふざけ、やがって)

    全て聞き終えた一方通行はまず、そう思った。

    インデックスの様子から分かる。

    彼女だって好き好んで十万三千冊を叩き込んだわけじゃない。

    少しでも魔術の犠牲者を減らすために、生きてきたのだ。

    その気持ちを逆手に取る魔術師、
    そんな彼『汚れ』などと言う教会、
    何よりも、そんな風に人間をモノ扱いする連中ばかり見たはずなのに、
    他人の事ばかりを考えている目の前の少女が気に食わなかった。

    一方通行は、インデックスのように研究者達(ふざけた連中)に
    利用されていた、昔の自分を思い出してイライラする。

    上条もムカムカきているらしく、歯ぎしりの音が聞こえる。

    「……ごめんね」

    その一言で、上条当麻と一方通行は本当にキレた。

    上条はインデックスのおでこを軽く叩き、
    一方通行は頭にポカリ、とげんこつをくれてやった。

    125 = 115 :

    「……ふざけんなよテメェ。
    そんな大事な話を、何で話さなかった」

    睨みつける二人にインデックスの動きが凍りつく。

    唇が震えながら、何か言葉を出そうと必死になっている。

    「だって、信じてくれると思わなかったし、怖がらせたくなかったし、その……あの」

    泣き出しそうな彼女の言葉はどんどん小さくなり、最後はほぼ聞こえなかった。

    それでも、きらわれたくなかったから、という言葉を二人は聞いた。

    「……ふっざけてンじゃねェぞ、クソガキィ!!」

    一方通行はおもいっきりブチ切れた。

    「ナメてンのか、オマエ!
    人を勝手に値踏みしやがって!
    教会の秘密に、十万三千冊の魔導書?
    確かにすげェなァ、オイ。
    とンでもねェ話だし、今でも信じきれねェお話だ」

    だがなァ、そう彼は一拍置いて告げる。

    「……たった、それだけじゃねェか」

    彼女の両目が見開かれた。

    小さな唇は何かを言おうとして必死に動くが、言葉は出ない。

    126 = 115 :

    上条も大きく頷いて、続きを引き継ぐ。

    「俺達を見くびってんじゃねえよ!
    たかだか十万三千冊なんかで気味悪いとか言うと思ってんのか!?
    魔術師が来たら、テメェを見捨てるとでも思ってたか!?
    ……ふざけんなよ。
    んな程度の覚悟ならあの時、テメェを助けたりなんかしねえんだよ!!」

    二人は、ただ単にインデックスの役に立ちたかったのだ。

    彼女のような人間がこれ以上傷つくのを見たくない。

    たったの、それだけなのだ。

    だというのに、彼女の方は二人に守ってもらおうとしない。

    頼りにされない――それは、悔しいし、辛い。

    「……ちったぁ俺達を信用しろよ。
    ……辛いんなら辛いって言えよ。
    人を勝手に値踏みなんかしてんじゃねーぞ」

    それを聞いたインデックスは、まじまじと二人の顔を見て、突然。



    ふぇ、と涙をその瞳にためた。

    127 = 115 :

    それからはあっという間だった。

    ダムが決壊したかのように、インデックスは大泣きした。

    二人は自惚れていない。

    自分達の言葉に、そこまでの効力があるとは思ってない。

    おそらくは上条達の言葉が引き金となり、
    これまで、彼女の中に溜まっていた何かが爆発したのだ。

    二人は、インデックスを安心させようと頭を優しく撫でた。

    一方通行はこれまで、彼女にこんな言葉をかけてくれる人間が
    いなかったことに憤りを感じた反面、彼女の『弱さ』をようやく見れて嬉しく思う。

    ただまぁ、二人とも女の子の涙でいつまでも喜ぶ変態ではない。

    というか、かなり気まずい。

    何も知らない人がこの光景を見たら、問答無用で死刑宣告されそうだ。

    128 = 115 :

    「……あー、あれだ、あれ。
    俺には右手があるし、魔術師なんて敵じゃねえよ」

    上条が空気を和ませようと、大声で言った。

    「ひっく……。で、でも夏休みの補習があるって……」

    そォいえば、初めて会った時にそンな事を言っていたなァ。

    そう、一方通行は記憶を揺り起こす。

    「え、えーと。んなモンで人様の日常を
    引っ掻き回してゴメンとか思うなって。
    全然問題なし、たぶん大丈夫なんだって。」

    全力で上条はごまかす。

    いや、問題あンだろとツッコミたかったが、一方通行は黙った。

    インデックスは涙をためたまま、黙って上条を見た。

    「……じゃあ、何だって早く行かなきゃとか言ってたの?」

    「……あー」

    「……予定があるから、
    日常があると思ったから、邪魔できないって気持ちもあったのに」

    上条は借りてきたなんとやらのように、大人しくなる。

    「……私がいると、居心地悪かったんだ」

    涙目で言われた上条はもう一度、
    日本の土下座を異国の少女に披露する。

    インデックスはのろのろ身を起こすと、
    上条の頭におもいっきりかぶりついた。

    129 = 115 :

    六百メートルほど離れた、雑居ビルの屋上で、
    魔術師――ステイル=マグヌスは双眼鏡から目を離した。

    「インデックスに同伴していた少年達の身元を探りました。……彼女は?」

    ステイルは振り返らずに、女に答えた。

    「生きてるよ。
    ……だが生きているとなると、
    向こうにも魔術師がいることになるね。」

    女は新たな敵のことより、
    誰も死ななかったという点に安堵している様子だった。

    「それで、神裂。
    アレらは一体何なんだ?」

    「それですが……あちらの白髪の少年の情報は集まりました。
    この街で『最強』に格付けされている能力者だそうです。
    もう一人の、あなたを倒した方の少年の情報は特に集まっていません
    少なくとも魔術師や能力者といった類ではない、という事なのでしょうか」

    130 = 115 :

    それを聞いて、ステイルは吹き出しそうな気分になる。

    「……冗談はやめてくれよ。
    僕の実力は知ってるだろう?
    何の力もない素人が、魔女狩りの王(イノケンティウス)を倒せる訳がない」

    言われた女――神裂火織は目を細め、相槌を打つ。

    「そうですね。
    ……むしろ問題なのは、
    アレだけの戦力が
    『ただのケンカっ早いダメ学生』という分類にされている事です」

    この街には、五行機関と呼ばれる『組織』があり、
    外部の人間はどんな立場であろうと、
    必ず連絡して許可をとって、初めてこの街に入ることが出来る。

    「情報の意図的な封鎖、なのかな。
    おまけにあの子の傷は魔術で治したときた。
    神裂、この極東には他にも魔術組織があるのかい?」

    ここで彼らは
    『あの少年達は五行機関とは違う組織を味方にしている』
    と踏んだ。

    一方通行の情報が、それを間違えた確信に導く。

    『学園都市最強』ならそういったコネもある、そう考えたのだ。

    131 = 115 :

    そうして勘違いしたまま、魔術師達は作戦会議を始める。

    「最悪、組織的な魔術戦に発展すると仮定しましょう。
    ステイル、あなたのルーンは防水性において致命的な欠陥があると、聞きましたが」

    「その点は大丈夫、ルーンはラミネート加工した。
    ……今度は建物のみならず、周囲ニキロに渡って結界を刻む。
    使用枚数は十六万四千枚、時間にして六十時間ほどで準備を終えるだろう。」

    魔術には、相当な準備が必要となる。

    ステイルの炎は本来とても厄介な代物なので、これでも達人の速度なのだ。

    「……楽しそうだよね」

    不意に、ステイルは六百メートル先を見て呟いた。

    「……僕たちは、いつまでアレを引き裂き続けるのかな」

    神裂も、六百メートル先を眺めた。

    視力の高い彼女には鮮明に見える。

    何か激怒しながらツンツン頭の少年にかじりついている少女、
    両手を振り回して暴れているツンツン頭の少年、
    それから少し距離を置いて、呆れたようにそれを眺める白髪の少年。

    ……全てがよく見えた。

    「複雑な気持ち、ですか?」

    彼女は機械のように告げる。

    「かつて、あの場所にいたあなたとしては」

    対して、魔術師はなんでもなさそうに答えた。

    「……いつもの事だよ」

    まさしく、いつもの通りに。

    132 = 115 :

    「それじゃ、あくせられーた!行ってきます!」

    「おォ……。気をつけろよォ、クソガキィ」

    「む、いい加減に名前で呼んでほしいかも」

    「まぁ、しょうがねえよ。
    コイツ、こういう奴だから。」

    あれから三日経って、
    ようやくあちこち出歩けるようになったインデックスは、風呂を所望してきた。

    ただ、小萌先生のアパートには『風呂』などという概念は存在しなかった。

    管理人室のモノを借りるか、最寄の銭湯という二択である。

    一方通行は管理人室のモノを借りることにした。

    上条とインデックスには一人で考えたい事があると言って、銭湯に行かせた。

    小萌先生は、相変わらず何も聞かずに上条達を泊めてくれた。

    上条達の住居は知られていて戻る訳にもいかないので、それはありがたかった。

    133 = 115 :

    「ふゥ……さァてとォ。これから、どォしたもンかね……」

    風呂からあがり、彼は敵の事を考えていた。

    早くイギリスの教会に連れて行かなければならないが、
    その道中で敵が来ない訳がない。

    そうなると、インデックスを守らなくてはならない。

    『魔術』は自分の能力の支配下に置けるか、わからない。

    かなり、不安だ。

    だから対策を練ろうと考えた。

    (今ン所は、これしかねェ……のかァ?)

    そして、唯一思い付いた策はあまりにもギャンブルだった。

    (考えてもしかたない、か)

    そう思い、彼は外に出た。

    コンビニで、缶コーヒーでも買ってこようと思ったのだ。




    コンビニまでの道をのんびり歩く一方通行に、突如爆音が降り注ぐ。

    「……!?」

    爆音の方向を見ると、巨大な炎が舞い上がっていた。

    普段なら、能力者同士のケンカかと思うだろう。

    しかし、今は違った。

    確か、上条は四日前に炎を操る魔術師と戦ったのではないか。

    「……クソったれがァ!!」

    叫ぶと同時に、彼は己の能力で、炎への最短距離を進む。

    134 = 115 :

    直線的に進む一方通行は大通りに出た。

    そこには、彼のよく知る人物がいた。

    それは、『誰か』に切り刻まれている上条当麻だった。

    「……おォォォォ!!」

    叫びながら風を操り暴風の槍を作った彼は、
    それを『誰か』に向かって放った。

    しかし、『誰か』はそれをあっさりと十メートルほども横に跳んで回避した。

    その人物は女だった。

    その女は、二メートルはある刀を腰にさしており、危険な雰囲気を一方通行は感じた。

    「あ、一方通行……?」

    能力で上条に一瞬で近付いた彼はまず、ケガの様子を見た。

    かなりの大ケガと言っていい。

    「……黙ってろ。
    こっからは俺がやる。」

    そう言って一方通行は女の前に立ち塞がる。

    「……オマエが魔術師、だな。」

    「……神裂火織、と申します。
    あなたもそこの少年のようにインデックスの回収を阻みますか?」

    その問いに彼は、

    「……当たり前だ、クソったれ」

    と告げてから、こう、宣言した。

    135 = 115 :











    「悪ィが、こっから先は一方通行だ。
    あのガキにもコイツにも、手は出させねェ!!」



    誰かを護るため、彼はおよそ護るには使えないその能力を振るう。

    136 = 115 :

    といったところで、今回は終了です。
    さぁ、果たして神裂は一方通行に勝てるのか!?
    次回をお楽しみに。
    それでは、皆様。
    また一週間以内に。

    137 :

    ねーちんがんばれ!…あれ?

    138 :

    >>1
    ねーちんにげてえええええええええ

    139 :

    ねーちん・・・御愁傷様です

    140 :

    一方さんはまさに"初見殺し"

    141 :

    まぁ、データ集めてたみたいだし
    何らかの作戦はあるんだろ

    142 :

    聖人相手だと黒翼ないとキツそうだけど

    143 :

    さすがに肉弾戦で一方さんに勝つのは、一方さんの能力知りつくした木原君ぐらいしかいないんじゃね?

    144 :

    誰一人として一方通行の心配はしない…



    頑張れねーちん

    145 :

    普通に考えて負けるわけねーからな

    146 :

    おいオマエラおっぱいばっか見てんじゃネェよ!
    ちっとは一方さんの心配しろよ!
    ねーちんファイト!

    147 :

    魔術を使っても一掃クラスじゃなければ直撃しないしな

    148 :

    あと三日以内に来なかったら腹パンな

    149 :

    一掃ですら喰らっても1度くらいならダメージはあれど得に活動に支障は出ないからなww


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