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    元スレたしかあったジャンル「ベトナム帰還兵」

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    701 = 696 :

    畑部「ピンと来て無い様ですねぇ…ホラ、ここにあるクロスボウも…んっ」カチャッ……グルグル

    …ビシュッ――――ガィィィン!!

    畑部「訓練しなきゃ使えないでしょ?皆でちゃんと訓練しなきゃ…害虫さんなんて、一匹だって殺せやしないんです」

    畑&音「お、おぃ今の…見た?」「ホンモンの矢だぞ…」「嘘だろ…」ザワザワ

    畑部「長槍だってそうですよ?突けばいいってもんじゃありません」ギラッ

    畑&音「刃が…ついてる…」「そんな、今までは刃なんて…」「え、ネタじゃないの…?ねぇ?」ザワザワ

    畑部「だから皆さん!!一緒に訓練―――…」

    畑&音「ざっけんなあぁぁ!!」「先輩、何ですかコレ!!」「ちゃんと説明しやがれぇええぇぇ!!」ワアアァァ!!

    畑部「し、静かにしてくださーい」

    畑&音「早くメアド教えろおぉぉぉぉぉ!!」「大体なんだ、害虫ってぇぇぇー!!」「女さん達とどう違うのぉ!?」ワアアァァ!!

    畑部「静かにしてくださ…」

    畑&音「どうなってんだあああぁ!!」「説明しろおおおぉぉ!!」「訳わかんねェ事言ってんじゃねえええぇ!!」ワアアァァ!!

    畑部「チッ…」

    新畑(ひ…畑部さんの表情がぁ…)

    畑部「……」チラッ

    弓部「……」コクッ

    新畑(ん…?)

    弓部「すぅ…」

    弓部「全隊、弓を構ええぇぇーーーッ!!」

    「長槍、及びクロスボウ隊構えぇーーーッ!!」

    ガシャッ……ザッ!!

    畑&音「!!!!!!?????」

    703 :

      

    704 :

    なんかすごいことに

    705 = 696 :

    「…………………」ギラァッ…

    畑&音「そんな…」「さ、さっきの機械だぞアレ…」「まさか、本物じゃ…ないよな?」ザワザワ…

    「おいおい、冗談は…」

    ―――…ビイィィィン!!

    畑&音「は…?」「え、先輩…何を…」「ち、ちょっと…やめ…」ザワザワ…!!

    弓部「…フフ…死にたくないなら、黙ってる事ね?次は当てるわ」

    「…………………」グググ…

    畑部「状況が分かったか?勇敢なる兵士諸君、コレは冗談でも何でもない。我々は本気だ」

    畑&音「な…バカな…」「嘘だろオイ…」「狂ってる、狂ってるよ…」ヒソヒソ…

    畑部「これから起きるのはハルマゲドン。神と悪魔、文明と非文明、理性と非理性の戦い」

    畑部「そして諸君等はその名誉ある戦いに、参加するたけの能力を持った精鋭だ」

    畑部「だから結果は見えてる、寸分の疑いも無く…奴等は完膚なきまで敗れ…我々が勝つ…」

    畑部「ただしそれは…諸君等一人一人が、自らの役割を放棄する事なく真っ当したらという前提の上で、だ」

    畑部「ここでいう役割とは…例えば…槍隊ならば、持ち場に立ち続け…クロスボウと長弓なら撃ち続け…軍楽隊なら演奏を続ける…簡単な話だ、作業自体も極めて簡単」

    畑部「これから行う訓練は、これらの作業の反復によって…例え、死の危険があっても同じ効率で同じ作業を行えるか、それだけの事に過ぎないし―――…」

    新畑(誰もが…息を呑んでる…)

    畑部「ただそれだけの事で、勝利は約束される。諸君等は実に幸運だ…」

    新畑(振ってわいたような展開…静かな声によって、一方的に突きつけらていく…否応の無い現実……)

    畑部「最小の危険で、最大の勝利への貢献者として、歴史の転換点の最前線に立会い……」

    新畑(全てが…まるで夢の様で……)

    畑部「一つの世界の終焉を、その両の眼に焼き付ける事が出来るのだから――……」

    新畑(私だって信じられない…)

    畑部「…………」ジロッ…

    新畑(本当に、私達が…本や漫画でしか見たこと無い…あの……)

    畑&音「…………………」シーン…

    新畑(…戦争を?)

    畑部「永遠に語られる戦いだッ!!有史以来続いてきた、我々と害虫共の闘争に終止符が打たれる!!」

    畑&音「――――――…ッ!!」ビクゥッ!!

    706 = 696 :

    畑部「奴等は己が利によってのみ、結びつけられてる!!矮小な、歪で吹けば飛ぶような団結だ!!だが我々は違う!!」

    畑部「高貴なる理念によって、固く結束し!!全員が全員…己の使命に喜びを持って、公共の為、命を捧げられる者達だ!!」

    弓部「結束、ねぇ…」クスクス

    畑部「幾千年の永きに渡り絶えず世界を理性の光で照らし続けた、文明の尖兵として!!高等生物である人類の守護者として!!豊かなる己の故郷を守った愛郷者として!!」

    畑部「この戦いで死んだ者は、死して後も崇められ!!生き残った者は、その絶大なる栄光を身に纏う!!」

    新畑(部長さん…)

    畑部「諸君、今や害虫共は追い詰められ…狩り立てられ…神の災いを名乗り、最期のを抵抗を試みんとしている!!ならば神の名の元、殲滅してやろうではないか!!」

    畑部「例えそれが雌だろうと、幼虫だろうと、老虫だろうと……沈みゆく船から、一匹足りとも生かして帰すな!!」

    畑部「元より共存の道など有り得なければ、慈悲も容赦も必要無い!!そう、奴等は何だ!?」

    畑&弓「――――害虫だッ!!」

    畑部「害虫を踏み潰す事に躊躇はあるか!?」

    畑&弓「否ッ!!」

    畑部「では、どうする!!何を望む!!?」

    畑&弓「殺せッ!!」

    畑&音「ひッッッ…………」

    新畑「ッ…ぅ…」クラッ

    弓部「あら、大丈夫…?」

    畑部「聞こえんぞ!?父祖の土地を食い荒らす害虫共を!!?」

    新畑「だいじょ…ぶです…」(本当、だ…)

    弓部「ま、分かるけどね…」

    畑&弓「殺せッ!!殺せッ!!殺せッ!!殺せッ!!殺せッッ!!」ワアァァァァ…

    新畑(殺意、圧倒的な…殺意……)

    弓部「フフ…凄いわね…」ジュン…

    畑&弓「殺せえええええええええええええぇぇぇぇッ!!!」ワアアアアァァァ……!!

    新畑(噎せ返るような…全身に突き刺さる様な……)

    畑&音「……………………」パクパク


    新畑(本当に戦争が、殺し合いが…やって来るんだ…)

    弓部(パンツ代えなきゃ…)

    707 :


    ごめん、今度から三年生の畑部員とベテランとしてベ畑と表記します。後づけ多くてホントすまん


    畑部「ふぅ…」

    弓部「ご苦労様、中々の名演説だったわね」

    畑部「分かっちゃいましたけど…あの人達に平時で最低でも一年一杯かける軍事教練を、即席で…しかも実戦で使えるまでにさせる…こりゃ大仕事ですね……」

     ベ畑「畑部は傾注!!女性は基本的に全員クロスボウ、男性は槍を担当、各集団には必ず三年生が混じり指導する形になります」

     ベ畑「それぞれ、男女別、言われた通りの武器を手にして下さい」

      畑「私達、これからどうなっちゃうんだろ…」「俺達の槍には刃がついてないぜ…」「見ろよ、先輩達の腰…鉈を…」ザワザワ

    新畑(実戦…丸めた矢が飛んできただけでも、あんだけ怖かったのに……)

    弓部「大丈夫よ、もしもの時は私達がいるじゃない」

    畑部「なるべく使いたくはないですけど…頼りにはしてますよ?鉈だけじゃ弱いですから」

    弓部「あ、そっちか…ま、本業が畑仕事なんだから仕方ないけど…最大の敵は、寧ろ背後にいるって訳ね」

    新畑(…背後?)

    畑部「えぇ、今年は新入部員が多いですし…何たって私達も、教育こそされてきましたが、本当の意味での実戦は皆初めてです」

    弓部「私達も初めてだけど…怖い?」

    畑部「まさか…あ、新畑さん」

    新畑「は、はい!!」

    畑部「貴方は今後助手として、基本的に私の傍にいて下さい。クロスボウの練習の時だけは混ぜて貰って…この旨先輩に伝えてきてくださいね?」

    新畑「わ、わかりました!!伝えてきます!!」タタッ…

    弓部「フフ…アンタにそのケが無いのは知ってるし…随分と買ってるのね、あの娘の事」

    畑部「…一人、知ってるんですよ。新畑さんに似た目を持った人を」

    弓部「へぇ…もしかしておn」

    畑部「男です」キッパリ

    弓部「何だ…」

    畑部「その人は彼女と同じに…優しいけど、優柔不断で…見た感じだって頼りないです…でも…」

    畑部「――…絶対に、何事からも目を逸らさない強さを持った人です」

    弓部「……」

    708 = 707 :

    新畑「伝えてきましたー!!」

    畑部「はいっ♪」クスッ

    弓部「フフフ…確かに、ね」

    新畑「へっ?な、何…ですか?」

    畑部「身に染みて分かってるってトコですか」クスクス

    新畑「ふぇ…?」

    弓部「違いないわ」クスクス

    新畑「むっ…ま、またバカにしてるんじゃないでしょうねぇ!!」

    畑部「いえいえ。あー、アンサンブル部の皆さん」

    「っ…」ビクッ

    畑部「貴方達の役割はもう分かってると思いますけど、演奏による合図、命令の伝達です。なので…」

    「あ、あの」

    畑部「はい、なんでしょう?」ニコッ

    「その…何とか…降りれないでしょうか?」

    畑部「…はい?」

    畑部「おっ、俺も!!別にメアドいらないし…!!」「お、俺だって…!!」「あんなんいらないから…他に楽器出来るヤツを…!!」ザワザワ…

    新畑(な、何だろ…この微妙な気持ち……)

    畑部「ふむ…そうですね、それも良いかも…」

    「じ、じゃあ――!!」

    ―――ビタッ…

    新畑「ぶ、ぶちょ!?」

    畑部「フフ、良いですね。調度良いタイミングです。逃亡兵がどうなるか、初っ端からガツンと先例を作っておくのも手ですし…」

    新畑(ッ!!は、背後って…まさか……)

    「っ…ぅぁ…」

    畑部「幸い貴方達は部外者、大した思い入れも無い…この機会に、皆さんに…現実を叩き込む手助けをして貰いましょう……」

    「あぁぁぁ…」ジョォォ…

    弓部「うわー…これだから男ってのは…ったく、だらしないわねぇ……」

    畑&音「きゃあああー!!」「う、うわっ…何やってんだアレ!?」「ひ、人殺しぃぃぃ!」ワアァァ!!

    畑部「ホラ、見て下さい。注目が集まってきました…フフフ…見せしめには最高の舞台ですね?」ググ…

    「たっ、助…助けぇ…ひぁぁ…」ドクドク…

    709 = 707 :

    新畑「ぶ、部長!!やめっ…!!」

    弓部「良いのよ、殺しゃしないわ」グイッ…

    新畑「でっ、でも首!!首から血がぁ…!!」

    弓部「大丈夫。アイツは冷静に、加減を心得てる…信じてやりなさい」

    新畑「でも…」

    ザワ…ザワ…

    畑部「良いですか、皆さん!!この鉈は敵を斬る為にあるのではありません、臆病者の敗北主義者を叩き切る為にあります!!」

    畑部「貴方達は勝てるんです!!各人が持てる70%程度の力を実戦で発揮さえしてくれれば良い!!しかし…!!」

    畑部「この様に任務を放棄せんとする者を許せば、勝てる戦いも勝てなくなる!!私だって『人間』を殺したくはありません!!」

    畑部「しかし、それによって死ななくても良い、無垢の犠牲者が増えるなら!!ほんの少しでも勝利の可能性が揺らぐなら!!」

    「ひっ…ぐぁ…」ドクドク…

    畑部「私達は喜んで殺人者の汚名を着ます!!」ドンッ

    「ッ…」バタッ

    畑部「一日目です、今日の所はコレだけで許してあげます。分かりますよね?次はありません」

    弓部「ね?」

    新畑「ほっ…」

    畑部「軍規は後程、明確に文書化し提示しますが…」

    畑部「一つだけ確実に言える大原則は…今後逃亡、又は戦意の停滞を促すような発言、行動、命令不服従を確認した場合は例外なく処分するという事です」

    畑&音「…………………」

    新畑(だけど処分って…本気…なのかな…)

    畑部「ん?話は終わりですよ、持ち場に戻って下さい♪」

    畑&音「は、はいぃぃっ!!」「お、おい!!ぼさっとすんな!!」「は、早く楽器出せ!!楽器!!」ダダダ…

    弓部「うふ、鞭が多いわね。強制は余り好きじゃない筈じゃなかったかしらぁ?」

    畑部「仕方ありません。状況が状況ですから…ただ恐怖によってのみ従ってる状態は確かに脆いです…」

    畑部「後は教育で意識を変えていくしか…」

    新畑「よ、よかった…アレは本気じゃなかったんですね…」

    畑部「いえ、本気ですよ?今度からはちゃんと殺します」

    弓部「当たり前じゃない」


    おぅい

    710 = 707 :

    畑部「殺し合いに参加するんですよ、私達は。どこの国でも軍隊の罰則は、重罰が基本です」

    新畑「ッ…!!」

    畑部「居眠りで銃殺なんて当然よね」

    新畑「だ、だけど…私達は一緒に戦うんですよ!!そんな、本気で、鉈なんかもって…脅かすんですか!?」

    畑部「納得できませんか?」

    新畑「ひっ…酷いですよ!!やりすぎだと思います…逃げたいって言っただけで、殺すなんて…最低です……」

    弓部「アンタねぇ、こっちだって…」

    畑部「新畑さん。こういう戦い…古代から続いてきた槍や弓の戦いには一つの傾向があります」

    弓部「……」

    新畑「い、一緒に戦う仲間を脅かしたり、殺したりする事ですか!?」

    畑部「落ち着いて下さい。両軍が衝突してる戦闘の最中は殆ど死者が出ないんですよ」

    新畑「へっ…せ、戦闘…なのに?」

    畑部「実際の殺し合いでは無いですが、前の害虫さん達との戦闘でもそうだったでしょう?」

    畑部「火器の威力だってたかが知れてる上、隊列を組んで戦うから…死者が発生するのは殆ど、敵と接触してる前面で…後ろの方は立ってるだけ」

    新畑「そ、そういえば…」

    畑部「あらゆる手段を使って…敵に背を向けさせさえ、すれば良いんです。つまり、こうゆう戦いの傾向というのはですね…」

    畑部「一度逃げ出したら逃げ出した側の死者は、極端にうなぎ上りになり…逆に逃げ出させた側の死者は極端に、うなぎ下がりになるって事です……」

    新畑「あ……」

    畑部「伝染するんですよ、感情が。例え一部でも独断で行動したら…密集した隊形を、組んでる兵士達は集団心理で、あっという間に流される」

    畑部「背を向け様ものなら、例え後方の兵士達は怯えていなくても…踏みとどまって圧死するより、一緒に逃げ出す方を選ぶ」

    畑部「指揮官の建て直しの声や、合図も耳に入らず…軍隊としての機能は崩壊、ただの無防備な標的、人の群れと化すんです」

    新畑(あの時の…国際交流部の人達だ…)

    畑部「盾や、槍だって前面に向けてる時以外、防御の役には立ちません。飛び道具は当たり放題。しかも敵との距離は最初から近く、追撃する側は簡単に追いつけ」

    畑部「逃亡する敵の姿を見て士気は最高潮に、騎兵だって動員してくるでしょう…そうなると最後尾近くの兵士か、騎兵しか逃げられませんし…」

    畑部「混乱の中で退却のスピードは落ち、運が悪ければ囲まれ…外周部の兵士は殺され、中央部の兵士は圧死します」

    弓部(本当に、気に入ってるのね……たかだか新兵に…ここまで説得する上官だなんて……)

    711 = 707 :

    新畑(私達は…)

    畑部「ましてや敵の全てが機動力のある騎兵で…歩兵主体の軍隊で対決した場合…一旦敗走が始まれば……」

    新畑(もし…あの時の戦いが本物なら……)

    畑部「新畑さんも…この先がどうなるか…実体験で分かりますよね?」

    新畑「……」コクッ

    畑部「二度と…あんな失態を犯すわけにはいかないんです…命が掛かってる」

    畑部「この戦いに参加する人達だけじゃない…私達の土地に住んでる…皆の命が掛かってるんです……」

    新畑「……」

    弓部「そうよ?だから畑部は、権限があるのに最低限の人数しか集めなかったの。戦闘集団としてのモラルが低下するのを避けてね」

    新畑「……」

    畑部「…新畑さんは…十分の一刑なるモノを知ってますか?」

    新畑「いえ…」

    畑部「命令不服従や、逃亡、重大な逸脱行為を犯した部隊は…兵士の中から無作為に、十人に一人の割合で当たるくじを引き……」

    畑部「当たった兵士は、他の九人の兵士から石や棍棒で、撲殺されるという古のローマ軍の罰則です」

    弓部「うっわ…エグいわねぇ…」

    畑部「戦友を殺しても、くじを免れた兵士への罰則は続きます。小麦では無く馬の糧食である、大麦を食わされ…テントで寝る事も許されない」

    畑部「古代ローマの敵にも…害虫さん達は存在しました。ヌミディアに、パルティア、フン…」

    畑部「あの、プロ意識の高いローマ軍ですら、こうした並外れた厳罰主義でモラルを維持せざる負えなかったんです」

    新畑「……」

    畑部「これでも私達のやり方をやり過ぎと言えますか…?」

    新畑「…戦争…なんですね、これが…」

    畑部「えぇ」

    新畑「……」

    712 :

    何このおしっこ漏らしそうなシリアス展開
    ジョボボボボボ

    713 :

    (アルグン…入り口にまで来たな…)チラッ

    「~~~~~♪」

    (まだ入ってこない…)

    「良い音色だ…」

    (それだけゲルの連中の意識が集中してるのか…?)

    (まだ…)

    「……」バサッ

    「……!」

    「ん?」(表の見張りが入ってきた…)

    「……」コトッ

    「おい、どうした?ハハ…まさか曲を忘れたんじゃないだろうな?」

    「いや……」

    ―――――ヒュッ…ビタッ!!

    敵遊「!!!?!?」

    「……」

    「……」ググ…

    「へへ……おっと、テメェ等も動くなよ?」チャッ

    敵遊「き、きさッ…!!」「なっ、ななな何を…!?」「し、正気か…!?」

    「黙れ。ベルケは私の間合いにいる、奥の方にいる連中も…分かるな?」

    敵遊「くっ…!!」

    「動いたらここにいる7人の全員の首が飛ぶぜ」

    敵遊「でっ、出会え!!出会えぇぇぇェェ!!外にいる連中は何を!!」」

    「静かにしてろ…」

    敵遊「ベルケ殿ッ!!敵襲―――がはッ…」ドサッ

    「……」

    敵遊「て、敵襲…だと…」「此処の事じゃないのか?」「ま、まさか…」ザワザワ…

    「ったく、聞こえんだろうが――…」


    「破滅の嘶きがな…」ドドドドドドド…

    714 = 713 :

    畑部「戦争です…」

    新畑「……」

    畑部「戦争…」

    弓部「……」

    畑部「私達は……」

    畑部「私達はこれから…敵を、殺さなければ行けない。新畑さん、貴方は仲間を殺したりなんて言いますが……」

    畑部「害虫さん達なら、何も感じずに殺せるんですか?」

    新畑「っ…」

    畑部「今まで生きてきたであろう、十数年を…この先生きていくであろう、十数年を…貴方は……」

    畑部「何も感じずに、奪えるんですか?」

    弓部「ち、ちょっと…」

    新畑(そうだ…)

    畑部「どうなんですか?殺すんですよ?害虫さんとはいえ…私達は殺すんです、命を絶つんです…」

    新畑(どの道殺すんだ…名前も知らない、誰かを…)

    弓部「ほ、他に聞こええたら……」キョロキョロ…

    新畑(…全て…敵っていう理由…ただそれだけで―――…)

    畑部「嫌ですか?」

    新畑「嫌…です…」

    畑部「そう、当然です。当然嫌…奴等を同族扱いするのは不本意ですが…それが当然なんです」

    新畑「部長さん…」

    弓部(畑部…)

    畑部「本来人間には…他の高等生物と同じく、種の保存の為に、同族殺しを抑制する本能がある筈なんですから」

    畑部「だけど槍や、弓や火器…一撃で敵を殺せる様な道具の発達は…人の抑制本能の発達が付いていけるスピードではなかった」

    弓部(アンタ、自分が…)

    畑部「それらの道具は必然的に…その本来の動物としての抑制本能を麻痺させ…人に加減を無くさせる……」

    畑部「そこで社会的抑制が生まれた。私達は小さい頃からずっと…人を殺しちゃいけないと教わってきましたよね?」

    新畑「……」コクッ

    弓部(…何を話しているか分かってるの?)


    いますかい

    716 :

    見ています

    717 = 713 :

    畑部「だから…本能+社会的抑制の二重のプロテクトがかかってるから、私達は……」

    新畑(はっ……)
     
     『人間なぞ獣と大して変わらん』

    畑部「頭では分かっていても…そうするしか無いと知っていても――…」

     『逃げた敵は傷を癒し…必ず再び牙を剥く……』

    畑部「敵をそう簡単には殺せない…嫌なのは当然、なんですよ…」
     
     『我々は‘その事'を知っている…身をもって…嫌という程にな…』

    畑部「でもこれは、自然界で他に類を見ない…もっとも大規模な同族殺し……」

     『だがな、この違いは大きい…この違いがあるから…』

    畑部「所謂、戦争において大きな障害になります」

     『人は人を徹底的に殺す』

    畑部「かつて人口増加と、それによる圧力で慢性的な食糧不足がおきやすい農耕社会において…騎士や、武士等の戦士階級が君臨し…」

    畑部「政治的な主導権を握りっていたのはこの為です」

    新畑(私達は、知恵を…知ってしまったから…)

    畑部「独特の死生観と美学を持ち…蓄積された富を背景に…殺し合いのみを生業に生きる者……」

    新畑(豊かさを持ってしまったから…)

    畑部「彼等が支配する社会では、家父長制が主流で…無意識的に女性へ母性への迫害や、人口調整の為の女児の死亡率引き上げ等を招きました」

    弓部「……」

    畑部「…けれども、戦争は基本的に彼等に任せてさえいれば良かった」

    畑部「戦士階級が存在しなくなった今…文明が進歩し、同族殺しへの社会的抑制は益々強くなった一方……」

    畑部「戦争は、万人のモノになりました」


    安心したw

    718 = 713 :

    畑部「戦争を、普通の善良な市民が担う様になった以上…いかにして彼等を、戦場で敵に対してのみ殺しのプロテクトを外させるか…」

    畑部「グロテスクな写真を見せるなど、様々な方法が試みがなされましたが…それでも……」

    新畑「……」

    畑部「例えば、コレは南北戦争のケースですが…ある戦場で回収された銃の内半分が装填中のままで、その殆どが複数発以上装填してあったといいます」

    畑部「中には二十四発もの弾丸を装填してる銃もあったとか。こんなモノ本当に撃ってたら自分がミンチです……この結果の意味する所が分かりますか?」

    新畑「撃て…なかった…?」

    畑部「はい。黒目の見える距離で敵と撃ちあわなければならなかった、当時の相当数の兵士達は……」

    畑部「敵を目の前にして発砲出来ず、空しく装填作業を繰り返してたという事です……」

    新畑「……」

    畑部「同様の記録は枚挙に暇がありません。火器が発達して交戦距離が伸びても明後日の方向に、向かってに撃ってただとか…」

    畑部「殆ど訓練期間も無しに動員されざる負えなかったフランス革命期や、ロシア革命内戦期の兵士達…」

    畑部「一般社会で培われた健全な心理的障壁が、大きく働きすぎる彼等に至っては……」

    弓部「有名な話ね。背後に督戦隊を付けられ…殺さなければ、味方に殺される。そんな状況下でようやく戦えた…今の誰かさん達にそっくりじゃない?」

    新畑「私達…」

    畑部「正にそうです。彼等の勝利は決して愛国心や、理想に燃えて~なんて単純な結果だけがもたらした物ではありません」

    畑部「ましてや、私達の武器はクロスボウ等の飛び道具が少ない…槍等の近接武器が主体…同じ様に近接武器を主装備に使っていた戦士階級が…」

    畑部「独自の死生観や美学を形成してまで、回避しようとしていたストレス…恐らく現代の私達にとって生半可なモノじゃないでしょう……」

    新畑「……」

    畑部「近年、ようやくゲーム感覚で敵を殺せるような訓練方法が確立され…兵士の発砲率は先にあげた南北戦争の頃よりもぐんぐんと上がって来ています…」

    畑部「弓道部さん達は、実際三年間に渡ってその訓練方法に基づき訓練されてきた来た兵士…彼女達なら、戦える…」

    弓部「えぇ、殺人への根強い抵抗感を超越できる…最新の心理学と条件反射を使った反復的な訓練よ…少し、時間はかかるけどね…」

    畑部「だけど…そんな彼女達すら、実際に殺しあった後正常でいられるのか…一度外した殺しのプロテクトは、再び完全に戻す事ができるのか…」

    弓部「っ…」

    畑部「PTSD等の問題は今も絶えず…帰還兵問題は何時だって戦争当事国を悩ませでいるんです……」

    弓部「……」

    畑部「本当に人が人を殺す事に…躊躇いを無くさせるなんて…今の訓練方法を持ってしても…きっと……」

    畑部「新畑さん…」

    畑部「どう足掻こうが…殺しは私達を変える…どう取り繕おうが、拭いきれない痕になる……」

    719 :

    畑部「けれども…これから私達が戦う連中は、違う…確かにヤツ等は生物学的には紛れも無く人間……」

    新畑「……」

    畑部「しかし一人一人が…完全な殺人マシーンとして機能する人間です」

    畑部「彼等の社会には貧しさ故、他人の生産に依存する戦士階級等いない…生まれた時から死は、これ以上無い程身近で……」

    畑部「好戦的な神話、伝承が発展し…大胆さや武勇が至上のものとして、骨の髄まで社会の構成員全体に浸透している…」

    新畑(女さんも…)


    ―――ドドドドドドド…ヒヒヒィィィィィン!!

    敵遊「うわあああぁぁ…!?」「かっ、囲まれてるぞォ!!」「は、早く馬に…っぐあぁァ!!」ワアアァァァ!!
     
     ベ「……」

     敵遊「はっ、謀ったな貴様…!!我等を謀りおったな…!!」

     「ベルケを頼む、腰のモノは外してあるから丁重に扱えよ」

     遊「ハッ」

     「外が少し心配だな…」スタスタ…

     敵遊「女あぁぁ!!答えろッ!!貴様、最ッ初からこのつもりでええぇッ―――…!!」ガタッ

     遊「動くな!!」ググ…!!

     「もう良い」

     敵遊「な…」


    畑部「生活の為の狩猟、乗馬の技術は…そのまま殺しの技術に直結し…一人前になるという事は、一人前の戦士になるという事に寸分違わない…」

    新畑(女さんも…そう、なんだよね…それも…リーダーなんだ……)

    畑部「彼等は『敵』と見なしたら最期…」

    新畑(けど、あの時見た…女さんは……)

    畑部「それが顔見知りだろうが」

    新畑(確かに怖かったけど……)

    『どうして解って…えぐっ…くれんのだ……』

    畑部「名前も知らない人間だろうが…」

    新畑(けど…)

    『うえええぇぇぇん……』

    畑部「それこそ何の感情も、抱くこと無く―――…」


     「殺せ」

    720 :

    やっと解除きたあああああぁぁぁ!!
    誰かいますかー!?

    721 :

    いるかなー

    723 :

    敵遊「」ドサァ…

    「ひー、ふー、みー……うむ、八人か…目算通りだな」

    敵遊「くッ、糞おおおおぉぉぉ!!」「ぶっ殺せええええぇ!!」「うおおおおぉぉォ!!」ダダッ

    「諸君。万が一にもあっちがやられちゃ仕舞だ、とっとと片付けるぞ」


    畑部「だから…この鉈は…」

    畑部「私達の敵が、そういう連中で…私達の誰もが、殺しを未経験な以上……絶対に外せないモノ」ギラッ…

    畑部「かくゆう私達の背中も…これから弓道部さん達の矢尻が常に捕える様、命ずるつもりです…一歩も退け無いのは私達とて同じ」

    新畑「!!」

    畑部「こうやって…互いが互いを縛り、監督する……人は…責任を持って、誰かを監督する立場に付けば、無意識的にその地位に合った行動を取れる」

    畑部「看守は看守らしく、囚人は囚人らしく…ソレは逃亡を防ぐ為だけにあるんじゃない……」

    弓部「……」

    畑部「どこまでも冷酷になるため…責任の所在を一手に引き受けるため……」

    新畑(責任の…所在…)

    畑部「上官に強制され、命じられた…父祖の土地を守る為に戦った……これ以上の理由が、大義名分が果たして存在しえるでしょうか?」

    新畑(畑部さんは―――…)

    畑部「これだけは覚えておいて下さい、新畑さん」

    新畑「…はい」

    畑部「私達は私達全体で一つの殺人マシーン…」

    新畑「……」

    新畑「例え、何がどうなろうと…」


    畑部「貴方達を決して、害虫共の様な人殺しにはさせません」


    >>722すまんww色々あって殆どためれて無いwww

    724 = 723 :

    敵遊「ひゅッー…ひゅッー…」

    「…おい、ソイツ」グサッ

    「ん?」

    「ソイツもまだ息がある、楽にしてやれ」

    「おいおい…しぶてぇヤローだな、頭割れてるってのに…」

    「アバカ、首と胴が離れるまでは油断は無しだ」

    「分かってまさァ」ザクッ…

    ベ子「……ぃ」ブルブル

    「……」ギュッ

     遊「アタマンッ!!ご無事ですか!?」

    「あぁ、カサルか。入ってきても大丈夫だぞ、調度終わったところだ…そっちの方は?」

    「掃討段階に入っています。確認はまだですが、損害はほぼ皆無かと」バサッ

    「フッ…確かに怒声も下火だな、杞憂だったか」フキフキ

    「……」

    「……」

    「アタマン、私は」

    「良い。見事な手際だった、タイミングも完璧だ」

    「ハッ」

    「だから、しばらく…」

    「分かりました。全員出るぞ」

    ベ子「…ぅ…ぁ」ブルブル

    「手を繋いで…しっかり…」

    「何をしてる。そこの女とガキも、とっとと――」ズイッ

    ベ子「うッ、うわああああぁぁぁあ!!ちっ、ちち父上のて、敵めぇぇぇぇっ!!」ダッ!!


    畑部「今までの話、聞かされた所で…納得は出来ないでしょう……」

    新畑「……」

    畑部「分かってます、何もかもが…余りに急すぎる……」

    畑部「何故私が?何故俺が…?生まれ育った土地を……あるいは、大切な人を守るため?」

    畑部「害虫さんを良く知る私ですら…どんなに理由を探しても、どんなに頭では理解できても………」

    畑部「選択の余地等ハナから無いものが…命を掛けるに値する事、として果たして実感が持てるか…」

    725 = 723 :

    畑部「ましてや…今の今まで機密保持の為、敢えて何も知らされる事の無かった皆さんが……」

    畑部「どれ程の驚愕と困惑を持って、この事態を迎えているかなんて…正直、想像すら付きません…」

    弓部「……」

    畑部「だけど…」

    新畑(あぁ…)

    畑部「歯車は、動き足したんですよ」

    新畑(やっぱり…怖いんだ、畑部さんも)

    畑部「もう、走りきるしかないんです。何が、何でも…」

    新畑(それも、多分…ずっうと前から……)

    畑部「走れない者がいれば……私は、私の培ってきた信頼や、絆、青春…全てを血の海に投げ捨てでも…走らせるまで……」

    新畑(私達と同じ様に…不安に怯えて……)

    畑部「走りきれない者がいれば…この鉈で、斬り捨てるまで」

    新畑(私達と同じ様に、平和を望んでて…)

    畑部「そうやって走るしか…」ブルッ…

    新畑(それでも、絶対に―――)

    畑部「それしか…っ」

    新畑(部長さん、なんだ)


    「何だァ?」

    ベ子「お、おおおおお前等なんてッ…!!父上が…もがっ、んんん!?」

    「止めなさい」

    「おっ…」

    「大丈夫だから…ね?ホラ、外に」

    「お、おい…見たか?」「あぁ、暗くて分からなかったが…こうして見ると…」「だがベルケの女だぜ?手を出す訳にゃ…」ザワザワ

    ベ子「んんーー!!」ジタバタ

    「…ッ」ギリッ…

    「……」

    「アタマン、血は流させません故――…」

    「他のを使え、指一本とて触れるな」

    「ハッ…」「ほれ見ろ…しゃあねぇ、他を当たろうぜ」「けっ…もう粗方、姦っちまってるだろうよ」ゾロゾロ…

    ベ子「んんんーーー!!」ズルズル

    726 = 723 :

    畑部「…ごめん、なさい」

    畑部「まだ新入生の畑部さんに…こんな…頼りない先輩ですね」ニコッ

    新畑「わ、私の方こそ…ごめんなさい…部長さんの事も考えずに……最低、なんて…っ」

    畑部「良いんですよ。きっと…そう言ってもらいたかったんですから」

    新畑「……」グスッ

    畑部「それに…恨んでくれても。分かってるとは思いますが、選択権が無いのは新畑さんだって例外じゃありません」

    新畑「た、確かに納得は…出来ないです…」

    畑部「えぇ」

    新畑「けど…」

    畑部「けど?」

    弓部「……その位にしときなさい、畑部」

    畑部「そう…ですね…えへ…調子に乗っちゃいました」

    新畑「そ、そんな…」

    弓部「ったく…とにかく懺悔はコレで全部済んだのね?」

    畑部「いーえ」

    弓部「…は?」

    畑部「しょせん言い訳ですよ、言い訳…フフフ、懺悔なんて大層なモンじゃありませんってば」

    弓部「……」

    畑部「もぅ…だから弓部さんまで、心配してくれなくて結構って言ってるんです。柄じゃないですよ?」

    弓部「そ、そっちが柄に無い事するからでしょうが…」

    畑部「まぁまぁ…私は最高指揮官として、貴方達に思う存分戦ってもらう様にするだけですので。愚痴や言い訳はこれで最期…」

    弓部「当然よ…そうして貰わないと困るわ…」

    畑部「えぇ!!計画は全部立ててあるし、下準備も今日出来ました!!明日からはいよいよ、本格的な実行の段階です!!」

    新畑「まだ下準備だったんだ…」

    弓部「ま、アンタの事だし…指揮権譲渡を要求してきた時点で、予想は付いてたけど…」

    弓部「その様子じゃ、もうとっくに一から十まで決まってる様ね?」ニヤッ

    畑部「そのとーり!!今後も口は一切出させませんし、手だって一切空けさせません!!部下は黙って付いて来い!!状況を身体に刻み付こんでやりますっ!!」

    新畑「ひぃぃ…!!」

    弓部「フフ、頼もしいわ。上官はやっぱりこうでなくっちゃね」

    畑部「ハートマンとよんでください!!」

    727 = 723 :

    ―――シーン…

    「…何も、言わないのか」

    「……」

    「……」

    「もう…」

    「…もう我慢しなくても、良いんじゃないのか?」

    「!!だっ、だだ大丈夫だ…!!耐えて…見せる…」

    「ハハ、そうか」ニコッ

    「うっ…」

    「……」

    「…よ、ようやく…話したかと思えば」

    「お前の手にかかっちゃ…形無しだ…な…フフ……」ゴシゴシ

    「いじめちゃ悪いと思ってな、優しい配慮だろう?」

    「こ、このバカ…お前が強すぎるだけだ…」

    「……」

    「お前が、強すぎるから…っ」プルプル

    「美しくなったな」

    「え…は?」

    「しばらく見ないうちに、見違える程美しくなった」

    「な、何を…」

    「お前にも…やっと大切な人が出来たんだな」

    「……っ///」カァァ


    「へくしッ!!」

    「あー…やっぱ屋上は寒ぃな」

    (ここからなら…来ても直ぐに見つけられると思ったんだけどな…)

    「……」

    (何やってんだよ…女さん…)

    728 = 723 :

    「ハハハ、そうか。図星みたいだな」

    「う、あぅ…///」

    「にしてもあの女がなァ…で、相手は誰なんだ?」

    「ちっ、ちち違ッ!!勝手に納得するなっ!!まだ何も言って無いぞ!?」

    「よせよ、何年来の付き合いだと思ってんだ?ハッキリ、顔に書いてんぜ?」

    「うぅぅ~っ…///」

    「いいから早く言えよ、ソレくらい良いだろ?」

    「ぜ、絶対…からかうなよ?」

    「もちろん」

    「はっ、初めて…好き、になった…///」

    「片思いか?」

    「……///」コクッ…

    「なら…何故奪わない?お前なら簡単だろうに」

    「いや彼は、だな…その…」

    「あ、あぁ…すまん…確かにこの情勢じゃな…ただでさえ、お前はこーゆーのからっきしだろうし」ポリポリ

    「違う、そうじゃなくて…」

    「ん?まさか…同族か?俺も知ってる様なヤツか?」

    「ち、違う…」

    「おいおい…もったいぶらないで教えろよ、未だに態度を表明していない連中なんざ……」

    「違うんだ、彼は…!!」

    「あぁ」

    「男は…この世界の人間じゃない」

    「……」

    「……」

    「………………嘘、だろ?」

    「本当だ」

    「お、驚ろいたな…」


    見てたら支援くれー

    730 = 723 :

    「お前が、恋ってだけでも充分驚きなのに……」

    「……///」

    「よりによって、虫ケr」

    「男は虫ケラじゃないッッ!!」

    「っ…とと」

    「た、確かに男は、虫ケラ共と一緒に暮らしてはいるが!!強くて、優しくて、格好良くて…っ!!」

    「あ、あぁ」

    「その上、すっごく強いんだぞ!!」

    「強い二回言ってるぞ、お前」

    「私にだってそうだ!!全ッ然怯まないどころか…何時もニコニコ笑ってくれて!!何時も助けくれて!!」

    「どぅどぅ」

    「弓だって上手いんだからな!?お前にも見せてやりたかった位だ!!演習で男が、バッタバッタと虫ケラ共を射ち倒す勇姿ッ!!」

    「……」ニヤニヤ

    「だからアイツは…!!ただ、少し環境に手違いがあっただけで!!間違っても虫ケラなんかと―――――…なっ、何がおかしい!!?」

    「あ、いや…本当にベタ惚れなんだなァ、と」ニヤニヤ

    「くッ…///」

    「強くて、優しくて、格好良くて~か。女アタマンも意外と乙女チックというか、何と言うか…」ニヤニヤ

    「う、うぅ…だ、だから…貴様に話すのは嫌なんだ…からかうなと言ったのに…」

    「んー?からかってるつもりは無いんだが」ニヤニヤ

    「嘘付け…だ、大体…私はホントのこと話しただけではないか……」

    「うんうん」ニヤニヤ

    「それなのに、お前は何時も何時も…からかいおって…」

    「フフ、そうだな…お前は…ガキの頃から、自分の好きな事となるとすぐムキになる」

    「悪かったな…」

    「なぁに、慣れっこってモンだ」

    「どうせ愚か者だってか…」ムスッ

    「あー、むくれるな、むくれるな。言えた事じゃないのは互い様だ、分かってる」

    「ふん…」プイッ

    「あー…」

    731 :

    しししえええんんん

    話が微妙にわからなくなってきた……

    732 :

    >>731すまん、自分でも分かりにくいと思うwwごめんねwww
    草原                          

    女、男と帰ったその日に、マジャーニ族の大ハーンの軍勢への合流の報と部族成員の大量離脱に遭遇                 
       ↓                               
    以前より躊躇ってた計画を実行する事を決意、部下を率い早朝に出立   
       ↓                           
    近隣の部族長が大ハーンの元に向かってる隙に、その長男である親友ベルケに交渉を呼びかける
       ↓
    失敗したため、やむなく奇襲
       ↓
    ベルケ一家捕虜←今ここ


    学校

    畑部、倉庫より武器を取り出す
       ↓
    他の部活を巻きこみ畑部を中心に、秘密裏に少数での戦時体制に移行←今ここ  


    男、放課後になっても女がいなくて心配中←今ここ

    733 = 732 :


    「……」

    「……」ムスッ

    「べー」

    「っく…」

    「ばぁー」

    「ぷっ…」

    「んげぇー」

    「くっ…あはッ!!あはは!!き、貴様というヤツは…!!こんな時にまで…はははははッ!!」

    「こんなんでウケるお前も大概けどな、赤ん坊じゃあるまいふぃぃ~~」ベー

    「や、やめろッ!!この…ば、あはははは!!く、苦しッ!!あはははははッ!!」

    「ぶッ、ハマりすぎだろ!!ハハッ、こ、こっちまで…!!」

    「だ、だって…貴様のマヌケ面がぁ~!!あははははは!!腹が!!」

    「お、おま…ハハ…に言われたくない!!ハハハ!!」

    「ははははは!!やぁーい、マヌケ面ぁー!!」

    「る、るせぇー!!ハハハハハ!!」

    「はははははは!!はは…!!」

    「アハハハハハハ!!ハハハ…!!」

    「はは…は…ば、ばぁーか」ゼェゼェ

    「ハハハ…お、お前もな…ハハ…」ゼェゼェ

    「ははっ、あははは…」

    「ハハハハハ…」

    「はっ…ぁ」サッ

    「見せてくれ」ガシッ…

    「…ぅ」

    「泣いてる所を、見せてくれ」

    「わ、私は…泣かないって決め…」

    「最期に」

    「…っ」

    「最期に、どうしても見たいんだ。頼む」

    734 = 732 :

    「ふ…ぁ…」プルプル

    「……」

    「うぁ…っ」ジワッ

    「……」

    「あ、ぁ…うあぁぁ…ああぁぁぁぁぁ…」ボロボロ

    「良かった、泣き虫も健在だな」

    「だ、だから…うぇっ…きさ…が強……」ボロボロ

    「ハハ、何言ってるか分かんねェよ」

    「ふ、ぅぁ…あぁぅ…ば、ばかあぁ…ぁぁぁ…」ボロボロ

    「……」
     
    「ばかあああぁぁ……!!」

     遊「アタマン!!」

    「っ…な、なん…だ」
     
     遊「準備が完了しました、略奪品はすべて携行。直ぐにでも執行出来ます」

    「……」

    「……」
     
     遊「アタマン?」

    「クランが付いてる…未練を残すだけだ……」

    「…………分かった」

    「……」

    「殺れ」
     
     遊「ハッ!!」

    「……」


    敵遊「せ、せめて!!せめて礼を持って殺せッ!!俺はカル―――…ぐはぁ!!」ドサッ

    「時間が無いぞ、クラン殿とテルムチ殿をお並べしろ。他は手早く済ませるんだ」

    ベ子「うぅっ…は、母上ぇ…母上ぇ…」

    「お願いします、目隠しを外してやってください」

    「し、しかし…」

    「お願いします」

    「分かりました…」

    735 = 732 :

    ベ子「母上ぇぇ!!」

    「テムルチ、愛しいテムルチ…」

    ――ザシュッ…バシュッ

    「ぎいゃああああああ!!」「うがああぁッ!!」「きゃああああぁぁぁッ!!」ワアアァァ…

    「次の列、前に出ろ!!」

    「どうか泣かないで…貴方は私と勇者ベルケの子…涙なんて流してはいけません……」

    ベ子「うぁぁ゛で、でもっ…でもぉ……ッ!!」

    「ほら、涙を拭いて…顔を上げて…見えるでしょう?」

    ベ子「う゛ぅ…うぅ…」

    「どこまでも澄み切った青…美しい蒼天…何も、怖い事なんて無い…」

    ベ子「うぅ…ぅ…」

    「還るだけ…」

    「私達は皆…母なる大地から生まれ…父なる天の元に還るだけ―――」

    「いずれ誰もが通る道を、テルムチは他人よりも少し早く通る……決して終わりなんかじゃないの」

    ベ子「何でっ…死…ひっぐ…のに……」

    「……」

    「次の列、前へ!!」

    ベ子「みんな…もう…えないのにぃッ!!」

    「会えますよ…」

    ベ子「嘘っ…嘘だぁ!!だって…何で…っ!!」

    「――…天の魂が、あるからです」

    ベ子「っ…」

    736 = 732 :

    「テムルチ、良い?よーく、聞いて…」

    ベ子「……」グスッ

    「私達、生きとし生けるもの…全ての内にはね…」

    「母から得た血と肉の魂、父から得た骨の魂…そして、天から授かった天の魂が宿ってるの…」

    ベ子「…天の…たましい?」

    「えぇ、天の魂…血や骨の魂は、肉体が大地に溶け込んだら無くなってしまうけど…天の魂は違う」

    「他の二つの魂が無くなれば、最期にスーッと額から出ていって…天に昇ってゆく……」

    ベ子「……」

    「そうして昇っていった魂は、テングリで永遠に存在して…家族も、友人も、アタマンも…みーんな今まで通りにそこにいて……」

    「地上で飼ってた家畜を飼い、地上で暮らした人々と暮らす…親も子も、友人も、奴隷も、全部そのまま……変わる事なんて何一つ無い」

    ベ子「全部…そのまま…」

    「そうよ…後は、私達の祖先が私達にしてくれたように…地上の子孫達を見守るだけ…」

    ベ子「じ、じゃあ…父上もっ…母上も…バルフも、クトクも、ノガイも…!?」

    「もちろん…みんな、みんないる…フフッ…今まで、食べてきた羊たちだって待ってるわ」ニコッ

    ベ子「……」

    「だからね、テムルチ…」

    「……」

    「受け止めなさい」

    ベ子「…ッ」ビクッ

    「死を受け止めて、何も残しちゃいけません…恨みも血も…何も、大地に残しちゃいけない」

    「残せば魂が囚われる…地にへばりついたまま、天に還れなくなる…そんなの嫌でしょう?」

    ベ子「!!」ブンブン!!

    「じゃあ、母上の目を見て…笑ってごらんなさい」

    ベ子「え…えへ…へ…」

    「フフ、勇敢ね…テムルチ…それでこそ私とベルケの子…」コクッ

    「……」スッ

    「これで…」

    ベ子「えへへ…へ…ぅ…」

    「向こうで、また―――…」


    ―バシュッッ……!!

    737 :

    「……ん、どうやら済んだ様だな」

    「……」

    「もう一つの願いは、頼むまでもなかった…か」

    「当たり前だ、見損なうな…」

    「ハハ、すまん。しっかし…」

    「……」

    「良く泣くなァ、お前は」

    「泣いて…欲しいんじゃないのか…」

    「あぁ、泣きながら殺して欲しい」

    「あ、悪趣味なヤツめっ…これの何が…」

    「俺だけが…知っている顔かと思ってた。今日までは」

    「…っ」

    「……確かに、強いんだろうな。その男ってのは。お前が惚れるくらいだ」

    「あぁ…」

    「そんな面白いヤツが、向こう側にいたなんて…フフッ、すっかり忘れてた……」

    「……」

    「そう、広いんだったな…世界は…」

    「……」

    「俺達ほど、その広さを知っている人間はいない筈なのに……」

    「うっ…」

    「俺達ほど、その広さに焦がれてきた人間はいない筈なのに………」

    「く…ぅ…」

    「お前の瞳はずっと、俺達より遥か遠くを――――――…」

    「ベ、ベルケ…私はただ…っ」

    「走りきれ、女」

    「ぁ…」

    「アッチにお前の居場所はねぇ、絶対に見守っててやるから…」

    738 = 737 :

    「例え…地平線が消え、虫ケラ共が草原を埋め尽くそうが…大ハーンの軍勢が、幾ら時代を巻き戻そうが…」

    「……」

    「お前だけは…最期まで、本当の狼の子として生きるんだ」

    「ベルケ…」

    「何者にも囚われず、何者にも犯されず…」

    「その羨ましい虫ケラヤローと一緒に…新しい世界を走りきってみせろ……」

    「…!!」

    「そのために殺されたとなりゃ…俺も少しは…な?」ニコッ

    「ベ、ベルケ…お前…」

    「……」

    「お、おお前…もしかして…」

    「……」

    「お、おい…お前…っ!!」

    「……今更、かよ」

    「っあ……」

    「ハァ…鈍すぎんだ、何時だってお前は…その癖、この段になって……」

    「あぁ…ぁ…」

    「これでも、ちっとぁ気を引いてきたつもりだったんだがな……」

    「ん…で……」

    「……美しくなったな…その可愛い泣き顔も…元より高嶺の花だったが…」

    「なん…でっ…」

    「へへ、今じゃ手に届きそうな気配すら―――」

    「何でえええぇぇぇッ!!」

    739 = 737 :

    「うっせェ…」キーン…

    「お、おお前ぇええぇ!!ふ、ふざける゙なぁ゙ッ!!何でぇっ!?」グイッ

    「何でって…」

    「さんざん他人の事、言ってお゙いて…!!何でぇ!!何故、今まで言わなかったぁ゙…!!」

    「そりゃ…お前が俺をそういう風に見て無い事位、俺にだって分かる」

    「だ、だが貴様ごそっ!!貴様こそ奪ったり何だったり゙出来たはずだろ゙うがぁ…ッ!!」

    「無理無理…だって、お前の方が全然強いだろ」

    「う…っ…ぁ…」

    「だから…今から俺は殺される。妻も子も仲間も、何一つ守れずに殺されるんだ。違うか?」

    「あ゙あっ…うあっぁ…ぁ…!!」

    「さ…そろそろやってくれ。悪趣味はもう、たっぷり満足出来た」

    「うあっ…うあぁぁ゙…!!」

    「ホラ、早くしろ…外は落ち着いた様だし…」

    「あ゙あぁ…うああ゙あ゙ぁぁぁ…っ!!」 

    「聞かれる前に、済ませちまった方いいんじゃないのか…?」

    「っ…ぅぅ゙…!!」チャッ…

    「…よし」グッ

    「ゆ、赦しは…うぇっ…」

    「……」

    「赦しは…乞わんっ…!!」

    「当然、草原の習いだ」

    「ハッ…!!ハァ…ハッ!!ハッ…!!」

    「……」

    「ハッ!!ハッ…!!ハァ…!!ゴクッ…!!」



    「……杯、嬉しかったぜ?」

    「うっ…うああああああああああぁぁぁぁッ!!!!!」

    740 = 737 :

    ゴオオォォォォ…

    「ベルケの首を包みたい、手頃な袋をくれ」

    「ハッ」

    「ん…安らかな顔だな。確か、テルムチだっけか?」

    「ハッ…母共々、立派に最後を…」

    「そうか…きっと、無事に昇れるだろうな」

    「えぇ」

    「…よし!!全員撤収だ!!全速で冬営地に戻れッ!!」ヒヒィィィン!!

    「ハイヤアアアアァァァァ!!」

    ――パカラッ…!!パカラッ…!!

    「……」

    「やったな…」ヒソヒソ

    (ベルケ、お前は…)

    「あぁ、一片の容赦も見せずにやり遂げた…」ヒソヒソ

    (私より…弱くなんか無かった…あの時、何も盛らなかったのは……)

    「言ったろ、やはりアタマンは変わってはいなかったんだ…」ヒソヒソ

    (私が、男を射れなかった理由と同じ…)グッ…

    (その為に、全てを失っても…お前は最後まで笑っていられた……だが)

    「畑部の時は、所詮互いに制限してたからな…本当に何か意図があったのやも…」ヒソヒソ

    (私なら、どうだ…?)

    (私なら――…)


    おーい…誰かぁぁ…

    743 = 737 :

    >>742すまんwペース遅いからそれは悪いww
    不安に駆られただけだから、たまに支援してくれるのが一番嬉しいww

    744 = 741 :

    人員確認かよwwwwww
    スレ立てからずっとスレ見てんだから心配すんなw

    746 :

    「おぉ、帰ってきたぞ!!」

    (まだ、夕方…か)テクテク

    「で、どうだったんだ?」「交渉は失敗したらしいな」「まぁな…だが、代わりに皆殺しだ」ワイワイ…

    (略奪品も、思ったより少なかったせいか…本当に早く…)テクテク

    (早く…)ピタッ

    「あっ、アタマン。損害は――」

    「……」

    「アタマン?」

    「……」ダッ!!

    「な、なんだァ?」

    ――――バサッ!!

    「うっ…」(私の寝台に…)

    「ん、女か…話は聞いた、よくやったな」

    「い、いえ…」(置いてたナイフの位置が…違う……)

    「念の為に聞くが…ベルケ一家の死体は、全てその目で確認したか?」

    「はい、母から子まで…安らかな死に顔でした。ベルケの首はココに」(まさか…)

    (いや、見た目自体はどこにでもあるナイフだ…気付かれる筈……)

    「それでこそ我が娘だ」

    「……」

    「……これからも…為すべき事『のみ』を為せ」ポンッ

    「…っ」

    「寝台が汚れるぞ、早く血を落として来い」バサッ

    「……」ギリッ…

    ・・・・・・

    「はぁッ…はぁっッ…!!」パカラッ!!パカラッ!!


    「それでよ、四人目だ。へへ、全員心の臓に当ててやったぜ」「何か…嘘くせェんだよなぁ、お前のホラ多いし」「ちゃんと直に殺したヤツの耳なんだろうな、ソレ?」

    「すまん。娘を見なかったか?」

    「何だt…あ、いえ…」「あー…そういやさっき何か、やたら急いだ様子で駆けてった気が」「げぇ…ホントかよ、今朝からずっと早駆けしっぱなしだぞ?」

    「……そうか」

    >>744ごめんよwwこれからもたまに支援よろwww>>745めんどくさいヤツで申し訳ないww

    748 :

    (ハァ…結局、下校時刻になっても来なかったな……)トボトボ

    (一日会えなかっただけで、こんなに不安になるなんて……)トボトボ

    (俺も、どうかして――…)ピタッ

    「はは…」

    「女さん…!!」

    「遅刻…だな…」ボロッ

    「遅刻って…」(というか何時にも増して、ボロい格好だな…)

    「ス、スマン…ちょっとばかし弓の張り替えかえやら何やら、色々してたら…つい…な」

    「そんな事、学校ですれば良いじゃんか…」

    「む?男は何時もそうゆう事、人前でやるなと言ってただろう…」

    「あ…い、いや…そりゃそうなんだけどさ…」ポリポリ

    「もしや男……私がいなくて…さ、淋しかったか?」

    「…うん」

    「っ…///」

    「……」

    「ば、馬鹿者っ…まだ…約束から二日しかたってないんだぞ?当分は迷惑、掛け続けると言ったろうが…っ」(男…)

    「なのに、たった半日会えなかっただけで……淋しい等と軟弱な事を言うんモンじゃない…」(心配じゃなくて…淋しいって…)

    「…の割りには、すんごい嬉しそうな顔してるけど」

    「う、ううるさい…ほら、いいから一緒に帰るぞ…///」パカパカ

    「でも女さん、せっかく来たばっかりなのに」

    「帰り道で迷惑掛けてやると言ってるんだ、早く来い」ファサッ…

    「あ…」

    ペース遅くてすまん、野暮用が多いもんで

    749 = 748 :

    パカ…パカ…

    「ね、ねぇ女さん…」(やっぱり、何かおかしい…)

    「ん…何だ?」

    「何というか…少し、疲れてる?何時もより、元気ない感じだし…」

    「えっ…そ、そそんな事ないぞ!?元気いっぱい!!」クワッ

    「……」

    「むぅ、元気が無いのは男の方だろ…調子狂うぞ…」

    「あのさ…ホントに、弓の張替えとかしてただけなの?」

    「……どういう意味だ」

    「髪に、血がついてる…」

    「っあ…こ、これは…そのっ!!」サッ

    「……」

    「そ、そうだ…解体もしたから……きっと、コレはその時に付いた血だな…うむ…」(しまった…急いで全部、洗い流したつもりだったんだが…)

    「解体なら、見た事あるけど…ちっとも血なんて出なかったじゃんか……」

    「私にだってミスくらいある…あぁ、あるいは血を飲んだ時に少し零したからその手で髪を――――…」

    「でも女s」

    「男、だからキリが無いと言ったんだ。私は大丈夫…これでこの話は終わりだ」

    「……」

    「………よ、よおぉーし!!それじゃあ今日は本物の弓を射させてやろう!!折角、張り替えて来たんだしなっ!!」グイッ

    「え…い、いや…ちょっと」

    「良いから持ちたまえ!!今日のはまえ騎馬戦で射ったのと違って、実戦仕様の本格的な弓だぞ!?」

    「全然違わない気が…相変わらず小さいし……」

    「今日のは弦の強度が子供の訓練用じゃないって事だ。とりあえず弦を引いてみろ」

    「引いて見ろって…こんな短いの簡単に……んんッ!?」ググ…

    「フフ、何とか引けたようだな…だが…そのまま構えてられるか?」

    「っくぐ…!!な、何コレ!!なんか凄い…固ッ…!!構えてられないっ…!!」プルプル

    「ふふん、だから実戦用と言っただろう。なぁに、気に病むな。訓練していなければ当然…複合弓は全長に比べ強い張力が必要な弓だからな」

    「はぁっ…はぁ…複合…弓?」

    「うむ。このM字型の短い弓…何を隠そうコイツこそが……我々遊牧民の持つ最強の武器だ」

    750 :


    「こんな弓が、最強の兵器…?」

    「フフ…そうだとも、こんな弓がかつて世界を制していたのだ。古の東ローマ帝国等、我々から高額で買い取ってまで、複合弓を軍隊に導入していた位だからな」

    「せ、世界を…」

    「あぁ、遥かスキタイやそれ以前の時代から…世界を席捲した遊牧民達は必ずコイツを効果的に戦法に取り入れ、その力を十二分に使って来た」

    「そんな昔からあるなら…わざわざ輸入なんかしなくても、自分で作れそうなもんだけど……」

    「いいや、そうはいかん。コイツは木製の下地に、動物の骨や腱、金属板等など…様々な素材を絶妙に合わせ、初めて出来るシロモノなんだ」

    「もちろん製造方は門外不出。手間だってかなりかかる」

    「複雑な作りなんだね、コレ…」

    「うむ、もっとも…だからこそ使えるのだがな。虫ケラ共が使う、木材のみの単純な単弓と一緒にしてくれるなよ」

    「じゃあさ、ウチの学校にも…何か特別な弓を使ってる弓道部があるらしいけどアレは……」

    「例によって、単素材で作った芸の無い虫ケラ共の弓だ。ロングボウというらしいが、要求される筋力も尋常じゃないし、長すぎて馬上でなんかとても使えん」

    (というか馬上で使うっていう発想も、そんな無いだろうけど…馬に乗るってだけでも大変だろうに……)

    「技術が無いから、大型化で威力を向上させざる負えなかったんだろうが……安心しろ。複合弓も訓練は必要だが、あそこまでの扱い難さは無いぞ?」

    「はぁ…」(きっと…女さん達は殆ど、馬に乗る生活だから必然的に生まれてきたんだろうな……)

    「小型さ故、馬上での取り扱いに優れ、連射も簡単、弦を引く距離は僅かですむ。お陰で矢自体も短く、多くの矢を携行可能……おまけに」ググッ

    「ん?ちっ、ちょっと…!?」

    ―――ヒュッ…ビイイィィン!!

    「空気抵抗による威力の低下も少ない長射程。見たまえ、少し引いただけでこの威力…フフッ」

    「ブ、ブロック塀に…こっ、こんな小さな弓で……穴が…」

    「俗に複合弓は肘の位置まで、引くだけで…胸の位置まで引いた虫ケラ共、自慢のロングボウに匹敵する威力があると言われているが……」

    「っていうかこれ、人ン家なんだけど……」

    「実戦ではさらに弓懸を使い、弦を耳元まで引く事が出来る上……獣骨の矢尻にトリカブトの猛毒をたっぷりと塗りたくる…」

    「ト、トリカブト…」

    「そうなると射程は四百メートルを優に越え、必中距離は馬上から約五十メートル……放たれた矢は…もはや、どんな防具だろうが貫通を防ぐ事は出来ない」

    (それってもう…初期の銃より遥かに強いんじゃ……)


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