元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ○
451 = 450 :
美嘉「は? アンタ、何言ってんの?」
凛「寂しさが限界って、意味わからないんだけど」
ちひろ「あの……どういう事でしょうか?」
武内P「千川さん、お願いがあるのですが」
ちひろ「? はい、何ですか?」
武内P「こう、頭を抱きしめていただけませんか」
ちひろ「!?」
美嘉・凛「!?」
452 = 450 :
ちひろ「なっ、何言ってるんですか!?」
武内P「30分程度で、大丈夫だと思いますので……」
ちひろ「あの、一体どうしちゃったんですか……?」
武内P「寂しさが限界に――」
武内P「――ああ……うあああ……!」ブルブル
ちひろ「!!?」
美嘉・凛「!!?」
453 = 450 :
武内P「さ、寂しい……寂しくて、たまらない……!」ブルブル
ちひろ「ぷっ、プロデューサーさん!? 凄く震えてますよ!?」
武内P「お願いします……! お願いします、千川さん……!」ブルブル
ちひろ「そっ、そんな事言われても……」
武内P「ひぅ……うぅっ……! 寂しくてたまらない……!」ブルブル
ちひろ「あ……ううっ……!?」
美嘉・凛「……」
454 = 450 :
武内P「ああ……! もう……!」ブルブル
ちひろ「……っ! もう!」
ぎゅっ
ちひろ「こっ、これで良いんですか!?///」
武内P「……ありがとうございます……あぁ、寂しさが消えていく……」
ちひろ「そ、そうですか……///」
美嘉・凛「……」
455 = 450 :
武内P「……ありがとうございます、千川さん」
ちひろ「っ、はい! もう終わりです!」
パッ!
武内P「!?」
ちひろ「プロデューサーさん、寂しさが限界って――」
武内P「あっあっあっあっ!」オブオブ
ちひろ「――まっ、まだだったんですか!?」
美嘉・凛「……」
456 = 450 :
武内P「あっあっあっあっ」オブオブ
ちひろ「す、すみません! 急に離れて!」
ぎゅっ
武内P「……いえ」
ぎゅううっ!
ちひろ「……」
ちひろ「……」キュウンッ!
美嘉「アタシ、今のちひろさんの気持ちがわかった」
凛「うん。明らかに母性本能を刺激されたよね」
457 = 450 :
武内P「……申し訳、ありません」
ぎゅううっ!
ちひろ「だ、大丈夫ですよ。もう、急に離れませんから!」
武内P「……はい」
ぎゅっ
ちひろ「……」キュウンッ!
ぎゅうっ!
美嘉「ちひろさんの抱きしめる力、強くなった」
凛「あんなに不安そうな顔されたら、仕方ないかな」
458 = 450 :
武内P「皆さんに、不甲斐ない所をお見せしてしまいました……」
ちひろ「……良いんですよ、プロデューサーさん」
武内P「……千川さん?」
ちひろ「プロデューサーさん、いつも頑張ってますから」
なでなで…
武内P「……そう、でしょうか」
ちひろ「だから、たまには誰かに甘えても良いんです」
なでなで…
美嘉「頭! 頭を撫でだした! ねえ、凛!?」
凛「見ればわかるから! 落ち着いて美嘉んあああああ!」
美嘉「凛!? 落ち着いて、凛!?」
459 = 450 :
武内P「情けない話ですが……とても、落ち着きます」
ちひろ「うふふっ、そうですか?」
なでなで…
武内P「はい、とても」
ちひろ「……」キュウンッ!
なでなで…
凛「知ってる? 朝顔の種って、食べちゃいけないんだよ」
美嘉「初めて聞いたケド……なんで、急にその話を?」
凛「食べたら幻覚を見ると言う朝顔の種が、ここに」
美嘉「ヤバーイ★」
460 = 450 :
凛「ちひろさん、喉、渇いてない?」
ちひろ「いつも頑張ってて偉いですよー」
なでなで…
武内P「……心が、洗われるようです」ホッコリ
ちひろ「私が、ついてますからねー」
なでなで…
武内P「……私は、此処に居ても良いのですね」ホッコリ
美嘉「聞いちゃいないね」
凛「……引き剥がすのは無理、かな」
461 = 450 :
美嘉「こうなったら、アタシ達も――」
凛「――行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように」
ぎゅっ!
武内P「!?」
ちひろ「凛ちゃん、美嘉ちゃん!?」
美嘉「べっ、別に? いつもお世話になってるお礼っていうか?」
凛「うん。ちひろさんだけに面倒をかけるのは、良くないかなって」
武内P「うわあああああっ!?」ブルブル!
ちひろ・凛・美嘉「!?」
462 = 450 :
ちひろ「プロデューサーさん!? どうしたんですか!?」
美嘉「えっ、なんでアタシ達が抱きしめたら!?」
凛「ちょっと、どういう事!? 説明して!」
武内P「ああああ! うわあああ!」ブルブル!
ちひろ「っ! ウチの子に触らないで!」
ぐいっ!
美嘉・凛「!?」
ちひろ「もう大丈夫ですよー、怖いお姉ちゃん達は居ないですよ―」
なでなで…
武内P「はい……ありがとう、ございます」
ちひろ「……」キュウウンッ
美嘉・凛「……」
463 = 450 :
美嘉「……ねえ、なんでアタシ達じゃ駄目なの?」
凛「美嘉が抱きしめたら、急に騒ぎ出した……?」
美嘉「は?」
凛「そういう怖い所が駄目だったんじゃない?」
美嘉「……怖かったのは凛の方じゃない?」
凛「あ?」
ちひろ「私がついてますから、安心してくださいねー」ニッコリ
なでなで…
武内P「……良い、笑顔です」ホッコリ
ちひろ「……」キュキュウンッ!
美嘉・凛「……」
464 = 450 :
ちひろ「良い子良い子~」
なでなで…
武内P「あの……先程の、ウチの子、というのは……」
ちひろ「あっ……もしかして、嫌でしたか?」
なでなで…
武内P「いえ……悪くないものだと、そう、思いました」
ちひろ「……」キュキュキュウウンッ!
美嘉・凛「……」
465 = 450 :
武内P「――ありがとうございます。寂しさが、落ち着きました」
ちひろ「……」
なでなで…
武内P「あの、千川さん? もう、大丈夫ですので……」
ちひろ「そう、ですか? 本当に?」
なでなで…
武内P「はい。ご迷惑をおかけしました」
ちひろ「……」
美嘉・凛「……」
466 = 450 :
ちひろ「……」
なでなで…
武内P「……」
ぐいっ!
ちひろ「あっ……」ションボリ
武内P「……申し訳ありません、これ以上は」
ちひろ「そう……ですよね」ションボリ
武内P「ですが……また、お願いするかもしれません」
ちひろ「! も、もうっ! プロデューサーさんはしょうがないですね!」パアッ
美嘉・凛「……」
467 = 450 :
武内P「申し訳ありません、お二人にも――」
美嘉・凛「ねえ」
武内P「? はい、何でしょうか?」
美嘉「アタシ達の――」
凛「――どっちが怖かったの?」
武内P「……すみません、寂しさが限界だったので、よく覚えていなくて」
美嘉・凛「……」
武内P「ですが、次の機会があっても、お気持ちだけ受け取っておきます」
美嘉・凛「……」
468 = 450 :
美嘉「じゃあさ、今、抱きしめて確かめてみない?★」
武内P「いえ、アイドルの方がそのような事は……」
凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ?」
武内P「渋谷さん。だからこそ、です」
美嘉・凛「……」
武内P「絶対に、いけませんよ」
美嘉・凛「……」
469 = 450 :
・ ・ ・
美嘉「……うん、チョー安心する★」
凛「……私も。美嘉って、やっぱりお姉ちゃんなんだね」
美嘉「そうだよー★ 年上だし、ね!」
凛「でも、お姉ちゃんも甘えたい時、あるよね」
美嘉「……うん。だから、甘える」
凛「……私も、今は甘えさせて」
ぎゅっ!
未央「……何? アレ」
武内P「寂しさが、限界だったようです」
おわり
470 = 450 :
ゲームしてきます
471 :
やち天
472 :
「はぁ……んっ……はぁっ……!」
千川さんの、美しい桃色の唇から艶めかしい吐息が漏れる。
本来ならば聞くことはない、普段とは全く違う彼女の声。
悶える姿から発せられる色気は、まるで極上の娼婦のよう。
「千川さん……!」
千川さんに、声をかける。
「プロデューサー……さぁん……!」
彼女も、息を切らしながらそれに応える。
「っ……!」
私はプロデューサーであり、彼女は事務員だ。
アイドル達よりも、近い関係。
「もう……! もう、私……!」
彼女の、限界が近い。
爪を立ててもがく千川さんが、苦しげな声を出している。
私は、そんな彼女にかける言葉は一つしか思いつかない。
「……頑張ってください!」
此処は、346プロダクションの社用車内。
運転するのは私で、
「ぐっ……こ、こきゃっ、こ……!」
千川さんは、助手席で腹痛に悶えていた。
473 = 472 :
「っ……!」
千川さんは、今日は午後からの出勤だった。
プロジェクトメンバーを仕事先に送る、帰り道。
その道程で、千川さんの自宅が近い事を知ってしまっていた。
「あっあっ……!」
故に、事務所に戻る途中で千川さんを拾って帰る。
そんな結論に至ったのは、至極当然の事だろう。
仕事上の付き合いとは言え、人間関係は円滑にすべきだ。
「ひぃーっ! はっ、ほひぃーっ!」
千川さんは、最初はその申し出を固辞していた。
その事に彼女との距離を感じたものの、そのまま引き下がった。
あくまでも、彼女の意思を尊重するべきだ、と。
しかし、プロジェクトメンバー達が「せっかくだから」と強引に彼女を説得したのだ。
「……ふぅ……ふぅ……!」
私達だけ、いつもプロデューサーさんに送迎をしてもらったりしている。
だから、せっかくだからちひろさんもお願いしちゃいなよ、と。
その時のプロジェクトメンバー達の、輝く笑顔が今は懐かしい。
「あっ……また波が……!」
そんなメンバー達に説得された時の千川さんは、少し困った顔をしていた。
しかし、上目遣いで茶目っ気を出しながら、はにかんだ千川さんの笑顔。
ほんの少しの間だけど、ドライブデートですね……と、冗談交じりで。
ああ、その台詞を聞いたメンバー達は、盛り上がっていましたね。
「ぐっ……おおお……!」
千川さんは、今、何を思っているのだろう。
出来ることならば、メンバー達を恨むような事は、しないで欲しい。
474 = 472 :
「うん……うん……うっ……!?」
波をやりすごそうとして、失敗したのだろう。
チラリと横目で見た千川さんの顔は、普段の彼女とは似つかない。
腹筋に力が入らないよう、顔の筋肉を全て弛緩。
口はパカリと開き、視線は定まることなく宙を彷徨っている。
「はぁー……ほぉー……」
最早、人の発する言葉ではない。
壊れる寸前の蓄音機が奏でる、断末魔の音色。
それを断続的に響かせる千川さんは、一体、何なのだろう。
「千川さん、もう着きます!」
そんな事は、決まっている。
プロデューサーの私を支えてくれる、大事な仲間だ。
「あっあっあっあっ!」
千川さんが、一際大きな声をあげた。
虚ろな目に飛び込んだ、城。
私達が共に働く、346プロダクションの事務所だ。
「間に、合いましたね!」
チラリと、横目で千川さんの様子を確認する。
私の口元には、笑みが浮かんでいた。
「いいえ」
だが、その笑みは続くこと無く、一瞬で掻き消えた。
いつも、朗らかな笑みを浮かべる千川さん。
彼女が一切の表情をなくしているというのに、どうして私が笑顔でいられようか。
475 = 472 :
「プロデューサーさん」
先程までとは違う、とても落ち着いた声。
まるで、いつもの、優しい笑みを浮かべている時の彼女の声のようだ。
しかし、
「私ね、今日はちょっと楽しみだったんです」
無。
今の彼女からは、何も感じない。
そこに確かに存在するのに、その存在が虚空に飲み込まれているようだ。
それは、彼女が消えて無くなりたいと、そう願っているからだろうか。
「お待たせしちゃいけないな、って準備もバッチリして」
彼女の声を聞きながら、私は事務所の前に停車した。
運転の片手間に聞くような、そんな話ではない。
千川さんは今、とても大事な話をしているのだから。
「でも、こんな事になっちゃいました」
彼女が目尻に涙を浮かべているのは、己の不甲斐なさからか。
それとも、打ち寄せる後悔からか。
「……すみません、千川さん」
私も、右手を首筋にやり、左手で自らの目元を軽く拭う。
「プロデューサーさんが、泣く必要は無いですよ」
そう言って、千川さんは女神のような笑顔を私に向けた。
「……申し訳、ありません」
違うんです、千川さん。
あまりの臭さで、目がシパシパしてきただけなのです。
476 = 472 :
「プロデューサーさんは、悪くありません」
窓を開けても、良いだろうか。
このままの状態が続くのは、非常にまずい。
しかし、此処は事務所の前だ。
いつ、誰が通って、窓から流れ出る悪臭を浴びるともわからない。
「全部、私が悪いんです」
嗚呼、何故、私はこんな所に車を停めてしまったのだろう。
前進し、社用車専用の駐車場に車を停め、脱出。
後退し、どこか適当な所に車を停め、脱出。
進むことも戻ることも、今となっては出来そうにない。
「……全部、私が」
そう、全ては千川さんの許可を取ってからだ。
この場に留まっていても、何も解決はしない。
「千川さん」
可能な限り、優しく千川さんに話しかける。
今の彼女は、とても傷ついている。
自らを責め、全てを背負い込もうとしている。
仲間として……断じて、見過ごすわけにはいかない。
「はい……何ですか?」
気丈にも、彼女は涙を流していなかった。
その強さは、私も見習いたいと、そう、考えます。
しかし、私はこうも思うのです。
その強さをお腹にも、少しだけ分けてあげて欲しい、と。
「……すみません。少し、待ってください」
彼女が首を傾げた時に香った、シャンプーの香り。
それが合わさった異臭が私の鼻を直撃し、意識が飛びそうになった。
手を口元にやり、考え事をするフリをする。
そうすれば、自然と鼻の穴を手で塞げるから。
477 = 472 :
「……」
千川さんが、私の言葉を待っている。
次に発する言葉が、彼女のこれからに大きく関わってくるのは明白だ。
出来ることならば、最善を。
私と、千川さんのためになる、最も良い選択をしなければならない。
「……千川さん」
「……はい」
だが、私はどの選択肢も選ばなかった。
「兎に角、この場を移動しましょう」
選ばないという選択を選んだのだ。
問題の先送りでしかない提案だが、今は、それで良い。
私は今、一刻も早く窓を開けて新鮮な空気を肺に送り込みたい。
申し訳ありません、千川さん。
このままこの状態が続けば、私は地上で溺れてしまいそうなのです。
「そう、ですね」
千川さんは、薄々だが私の様子を見て察していたのだろう。
自分の生み出してしまったものが、とんでもない代物だという事に。
自分だとわからないけれど、他人は鮮明に感じるという、アレです。
「では発車します」
千川さんの同意を得た私は、すぐさま行動に移った。
普段よりも口調が早くなってしまったのは気付いていたが、それは許して欲しい。
この場を離れられるという事は、遂に、窓を開けられるのだから――!
「……!」
しかし、焦った私は発車する前に窓を開けてしまった。
「あっ、ちひろさんにプロデュー……うえっ!? げほっ、ごほっ!」
それが、さらなる悲劇を産んだ。
478 = 472 :
「は、鼻が……!? それに、目が……!?」
窓から解き放たれた悪臭の直撃。
不意を付かれる形のそれは、彼女から嗅覚だけでなく、視覚まで奪ったようだ。
突然の事に驚き、その両手は何かを探すように前に突き出されている。
「っ……!」
彼女には申し訳ないが、時間とともに回復して貰うしか無い。
今は、一刻も早く臭いの原因を取り除かなければならない。
しかし、本当に申し訳ありません。
外の世界を知ってしまった今、また、窓を閉めるのはとても難しいのです。
「どこ……!? どこ……!?」
だが、このままでは発車出来ないのも事実。
彼女の両の手が、車体に触れてしまう可能性がある。
それだけは、なんとしても避けなければ。
だから――
「Let’s go~♪ あのヒ~カリっ目指して~♪」
――私は、歌った。
闇の中を彷徨う彼女を導くように、高々と、大声で。
「!」
私の声は、彼女に届いた。
その結果、彼女は『Star!!』の振り付けの通り、人差し指を天に向けていく。
はい、これで安全に発車出来ますね。
「では、発車します」
私は、感情を殺してつぶやいた。
千川さんも涙と鼻水によって、視覚と嗅覚を奪われていた。
だが、きっと私の声は届いただろう。
その証拠に、千川さんの泣き声が一際大きくなったのだから。
おわり
479 = 472 :
寝ます
おやすみなさい
480 :
予告なくウンコ
だがそれがいい
481 = 472 :
このスレはキワモノ多めでやろうと思っていました
キョン「ッ……仕方がない、変身ッ!」
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-760.html
8年前に書いた二次創作とのクロスオーバー三次創作を書きます
諸々やるので遅くからになります
面倒な人は飛ばしちゃってください
482 :
このスレは?このスレもの間違いだろ…
483 = 472 :
宇宙人、未来人、異世界人、超能力者。
そんなもん居るわけねぇ! なんて思ってたのは、もう随分と昔のような気がするな。
今の俺を取り囲む日常とやらは、そんな非日常的な人間達に囲まれるものになっている。
宇宙人――長門有希。
未来人――朝比奈みくる。
超能力者――古泉一樹。
そして、我らがSOS団の団長――涼宮ハルヒ。
異世界人は残念ながら所属してないが、その代わりに神様が団長をやっている。
そう考えると、お釣りが来る所かそれだけで大金持ちだ。
そうは思わないか?
『異世界人と神の価値の違いとは』
そんなもん知るわけねぇ!
そもそも、異世界人とやらには会ったことすら無いんだぞ。
もしかしたら、とんでもなく不細工な奴だったら、見た目が良い分ハルヒの方がマシだ。
『そう』
「そうだとも」
なんて、他愛の無いやり取りをするのはいつもの事だ。
俺がくだらない事を言って、律儀に長門がそれに答える。
まあ、大抵は今みたいにグダグダになって終わっちまうんだけどな。
それもまた、‘らしく’て良い。
『目標まで、あと20メートル』
ああ、そうかい。
この路地を曲がった先に――怪人が居るって訳だな。
やれやれ、嫌になるぜ、本当。
「……変身」
そう、俺は人知れずつぶやいた。
484 = 472 :
体中の細胞の一つ一つが、別のものに置き換わっていく。
俺自身は、至って平凡な男子高校生だ。
けど、変身をした後の俺は、違う。
「っ……!」
腕が、脚が、体が、頭が、人間のそれとはかけ離れていく。
――化物!
なんて、言われた事もあったっけな。
……そう、強がってみても、今でもハッキリと思い出せる。
俺の今のこの姿を見た、ハルヒの怯えた表情を。
「…………」
ああ、いかんいかん!
アイツのあんな顔を思い出したら、余計に滅入っちまう。
今はただ、いつもの、俺が愛する日常を守る事だけ考えよう。
平凡で、たまに平凡とはかけ離れた刺激のある、あの日常を。
ズシャリ、ズシャリ。
地面を踏みしめる音が、ハッキリと聞こえる。
強化された今の俺の聴覚は、ほんのささいな音すらも拾い上げる。
普通だったら、まともじゃいられないんだろうな。
だが、今の俺は普通ではないし、まともでもない。
異形の――化物だ。
そんな俺の耳に、いつもとは違う、電子音混じりの二人分の女の声が響いた。
『LIVE SUCCESS!!』
……やれやれ、一体何だってんだ?
485 = 472 :
あんな奇っ怪な音を聞かされて、はーいこんにちはー、
なんてヒョッコリと顔を出す程俺は間抜けじゃない。
今はこんな見た目をしちゃいるが、本当は平和を愛する凡人だからな。
……なんて言っちゃみたが、どっちの姿が本当なんだろうな。
わからんし、わかった所でやる事は変わらないが。
「…………」
路地裏の突き当り、行き止まりの所に、男は居た。
大柄で、無表情な男。
黒いスーツの上下を着ちゃいるが、その顔つきはどう見ても一般人じゃない。
現に、その男の足元からは、虹色の粒子が立ち上っている。
……仲間割れでもしたのか?
だとしたら、アイツは‘どっち側’なんだ?
「――新手、ですか」
低い声が、路地裏に響く。
地の底から聞こえてくるようなそれは、隠れていても無駄だと、そう言っているようだ。
やれやれ。
どうやら、やるしかないみたいだな。
「…………」
男は、姿を見せた俺の姿を見て、一瞬目を見開いた。
おいおい、何を驚く必要があるんだ?
アンタも、俺と似たようなもんだと思ったんだが。
「言葉を話す相手は、初めてだったものですから」
顔に似合わず、随分と丁寧な口調だな。
だけどな、油断させようと思ってしているなら、そいつは無駄だぞ。
「話し合いで終わるとは、思ってないだろ?」
「はい。そして、それは貴方も、でしょう?」
「違いない」
男は、バサリと上着を翻し、銀色に光るベルトを露出させた。
486 = 472 :
「…………」
男は、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
見たことの無い機種だな。
ホームボタンを三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに……って、器用だなオイ。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、さっきと同じ二人分の声が聞こえる。
そして、男はスマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
言った。
『――START!』
光に包み込まれた男の体に、黒い鎧が纏われていく。
その胸元には、ピンク、ブルー、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
目付きの悪い……なんだったっけか、あのキャラ。
なあ、アンタのそのフルフェイス、どっかで見たことがあるんだ。
こういうのって、すぐに思い出さないとボケるって言うだろ?
戦う前に、教えてくれないか。
「……ぴにゃこら太、です」
ああ、そうかい。
「不細工で、殴りやすそうな顔で助かったぜ!」
可愛い顔だったら、殴ると心が痛むからな。
今のアンタの顔なら、そんな心配はしなくて済む。
変身前の顔だったら……おっかなくて、逃げ出してたかもな。
487 = 472 :
「おおっ――」
地を蹴り、一瞬で相手との間合いを詰める。
その拍子にアスファルトがボゴリと凹んだが、後で長門に言わきゃならん。
でないと、あの穴に躓く人が出ちまう。
……なんて、そんな考え事をしながらのパンチは、
「――らあっ!」
「善処します!」
黒い不細工面の放った拳で、容易く迎撃された。
「っ……!?」
速い。
コイツ、直線で放った俺のパンチを‘横から’撃ち落としやがった!
想定外の出来事に、あっけなく体勢を崩す。
間違いない。
コイツは、今まで戦ってきたどの怪人よりも、強い!
「くっ――!」
慌てて後ろに飛び退こうとするが、奴の左手が銃を模した握りになっているのが見えた。
……おいおい、マジか。
「――企画!」
「う、おおおっ!?」
夜の闇を照らすような、イエローの光が俺の体を貫いた。
『Passion!!』
うるせえ!
パッションだかファッションだか知らないが、飛び道具なんて聞いてねえぞ!
「――検討中です!」
『Cute!!』
そんな俺の抗議の声は、輝くピンクの拳が腹に打ち込まれた事で中断させられた。
488 = 472 :
「ぐ、あっ……!」
強い。
イエローの光が打ち込まれてから、全身が痺れる。
ピンクのパンチをもらった腹は、まるで爆発したみたいだ。
相手を舐めていた。
そう、言わざるを得ない。
「…………」
ズシャリ、ズシャリと、重量を感じさせる足音。
それが近づいてくる事に、俺は恐怖を――……覚えない。
例えコイツが何だろうと、俺は負けるわけにはいかない。
負けは、俺の愛すべき日常が壊れる事と、同じなのだから。
それに比べれば、どんな敵だろうと恐れる必要は無い。
「なあ……アンタの戦う理由は、何だ?」
呼吸を整え、腰を落とした状態で、男に問いかける。
悪いな、この技はちょいとばかし溜めが必要なんだ。
卑怯だと思うかい? 必死なんだよ、俺だって。
「……笑顔です」
その笑顔ってのは、アイツを殺して、って事か。
だったら、こっちも全力でいかせて貰う。
さっきと同じと思ったら、大間違いだぜ。
「アイツを殺して? あの、仰っている意味が、よく――」
初めて見せた、大きな隙。
それを見逃してやる程、俺はお人好しじゃあない。
最も、今の俺が人と言えるかは微妙な所だけどな。
「ライダー――」
両足に溜めた力を――
「――キック!」
――爆発させた。
489 = 472 :
「っ!?」
『Cooooo――』
ブルーの光を纏った右足で迎撃しようとしたようだが――遅い。
悪いな、これは俺の必殺技なんだ。
相手を必ず殺す技――ライダーキック。
「ぐおおおおっ!?」
俺の脚が、男の体の中心を捉えた。
すさまじく硬いが、確かな手応え。
激突時に発生した衝撃波が、ビリビリと空気を揺らす。
「あ――ぐ、あっ!」
吹き飛んだ男は背後の壁に叩きつけられ、磔になった。
凄いな、壁にめり込む程硬いのか、アンタ。
『LIVE Failed……』
響く二人の女の声と共に、変身が解けていく。
だが、その姿はズタボロで、体中は傷だらけ。
シャツには血が滲んでいるし、口からは血を流している。
悪いな、上着の袖、取れちまいそうだ。
「貴方は……」
男は、そんな姿になりながらも、倒れる事は無かった。
歯を食いしばり、手で膝を掴み、必死の形相でこちらを見ている。
良いぜ、最期の言葉くらい聞いてやるさ。
「アイドル達を狙う怪人、では……無いのですか?」
……は?
「……アイドル?」
490 = 472 :
・ ・ ・
「…………」
不幸な事故や、争いごとが無くならないのには、理由がある。
その時は最善だと思った行動や、自分が正しいと信じて取った行動。
そいつが、何の因果かおかしな形で噛み合って起こっちまう。
神様の気まぐれだってんなら、俺はハルヒの頭にチョップをくらわさにゃいかん。
prrrr!prrrr!
携帯が音を立てる。
着信音の変更はしてなかったが、この機会だから着歌とやらを
ダウンロードしてみるのも悪くないかもしれないな。
「――はい、もしもし」
通話ボタンを押して、日本人が電話に出たらよく言う台詞を口にする。
電話の向こう側で、ハァハァと疲れたような息遣いがした。
『あの……すみません。道に……迷ってしまって……!』
いや、説明しましたよね?
さっき、イチゴとティラミスのクレープを買ってきたって聞いたばかりなんですが。
あの、迎えに行った方が良いですか?
『! 申し訳ありません。少々お待ちを』
電話口の向こうで、息を飲む声がした。
やれやれ。
年上だってのに、こんな高校生相手にも真面目なんですね、アンタって人は。
『すみません。アイドルに、興味はありませんか?』
通話はそのままに、胸のポケットにスマートフォンを入れているのだろう。
スカウトしようと、誰かに声をかけている様子が伝わってくる。
『あたし、アイドルには興味無いの。不思議探索の邪魔しないで』
おい、今の声は……!?
『待ってください! せめて、名刺だけでも――!』
おわり
491 = 472 :
OPっぽいの書いてスッキリしました
休憩
492 :
男を口説くのが早いキョン
493 :
申し訳ない、何故か下ネタ銀英しか浮かばないので寝ます
おやすみなさい
494 :
朝倉さん消えたままなのかしら……?
おつ
495 :
武内Pって山田孝之ばりの便利さがあるな
それで思ったのが勇者タケウチの語感の良さ
496 :
キョンの方単体は気が向いたら続き書きます
>>495
やってみよう
専務「起きなさい、起きなさい勇者」
497 = 496 :
武内P「……」
専務「今日は、まずは王様にご挨拶しに行く予定の筈です」
専務「誕生日を迎えた貴方は、魔王を倒す旅に出るのでしょう」
武内P「あの……母親役、ですか?」
専務「早く行きなさい。私は、あまり気が長い方ではない」
武内P「……」
武内P「はい。行ってまいります」
498 = 496 :
・ ・ ・
武内P「すみません。王様と、会う約束があるのですが」
兵士A「なんだ貴様は! 怪しい奴め!」
武内P「勇者と、そう言えば良いと聞いています」
兵士B「勇者だと? ならば、何故黒のスーツ上下なのだ!」
武内P「クライアントが最初に会うのは私です」
武内P「身だしなみには気をつけろと、そう、言われました」
兵士A「ええい、何を言っている!」
兵士B「捕らえろ! 牢にぶち込んでやる!」
武内P「!? 待ってください! せめて、話を!」
499 = 496 :
・ ・ ・
部長「おお、勇者よ! 捕まってしまうとは情けない!」
武内P「……申し訳、ありません」
部長「さて、気を取り直して、キミには旅立ってもらう」
武内P「……」
部長「魔王、蘭子くんの影は世界中に広がっている」
部長「なんとかできるのは、勇者アカバネの息子のキミしかいない」
部長「やって、くれるね?」
武内P「それが……はい、必要な事でしたら」
部長「……ふっ、キミならそう言うと思っていたよ」
500 = 496 :
部長「キミには、これを贈ろう」
チャ~ラ~ラ~リ~ラッチャッラ~ン♪
武内P「……カバンと、名刺ですか」
部長「必要な書類はカバンに入れ、スカウトする時はその名刺を使い給え」
武内P「……モンスターにはどう対処すれば」
部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」
武内P「あの! モンスターには、どう対処すれば!?」
部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」
武内P「……」
武内P「行って、まいります」
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