のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,434,132人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」

SS+覧 / PC版 /
スレッド評価: スレッド評価について
みんなの評価 :
タグ : - モバマス + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

451 = 450 :

美嘉「は? アンタ、何言ってんの?」

「寂しさが限界って、意味わからないんだけど」

ちひろ「あの……どういう事でしょうか?」

武内P「千川さん、お願いがあるのですが」

ちひろ「? はい、何ですか?」

武内P「こう、頭を抱きしめていただけませんか」

ちひろ「!?」


美嘉・凛「!?」

452 = 450 :

ちひろ「なっ、何言ってるんですか!?」

武内P「30分程度で、大丈夫だと思いますので……」

ちひろ「あの、一体どうしちゃったんですか……?」

武内P「寂しさが限界に――」


武内P「――ああ……うあああ……!」ブルブル


ちひろ「!!?」


美嘉・凛「!!?」

453 = 450 :

武内P「さ、寂しい……寂しくて、たまらない……!」ブルブル

ちひろ「ぷっ、プロデューサーさん!? 凄く震えてますよ!?」

武内P「お願いします……! お願いします、千川さん……!」ブルブル

ちひろ「そっ、そんな事言われても……」

武内P「ひぅ……うぅっ……! 寂しくてたまらない……!」ブルブル

ちひろ「あ……ううっ……!?」


美嘉・凛「……」

454 = 450 :

武内P「ああ……! もう……!」ブルブル

ちひろ「……っ! もう!」

ぎゅっ

ちひろ「こっ、これで良いんですか!?///」

武内P「……ありがとうございます……あぁ、寂しさが消えていく……」

ちひろ「そ、そうですか……///」


美嘉・凛「……」

455 = 450 :

武内P「……ありがとうございます、千川さん」

ちひろ「っ、はい! もう終わりです!」

パッ!

武内P「!?」

ちひろ「プロデューサーさん、寂しさが限界って――」


武内P「あっあっあっあっ!」オブオブ


ちひろ「――まっ、まだだったんですか!?」


美嘉・凛「……」

456 = 450 :

武内P「あっあっあっあっ」オブオブ

ちひろ「す、すみません! 急に離れて!」

ぎゅっ

武内P「……いえ」

ぎゅううっ!

ちひろ「……」

ちひろ「……」キュウンッ!


美嘉「アタシ、今のちひろさんの気持ちがわかった」

「うん。明らかに母性本能を刺激されたよね」

457 = 450 :

武内P「……申し訳、ありません」

ぎゅううっ!

ちひろ「だ、大丈夫ですよ。もう、急に離れませんから!」

武内P「……はい」

ぎゅっ

ちひろ「……」キュウンッ!

ぎゅうっ!


美嘉「ちひろさんの抱きしめる力、強くなった」

「あんなに不安そうな顔されたら、仕方ないかな」

458 = 450 :

武内P「皆さんに、不甲斐ない所をお見せしてしまいました……」

ちひろ「……良いんですよ、プロデューサーさん」

武内P「……千川さん?」

ちひろ「プロデューサーさん、いつも頑張ってますから」

なでなで…

武内P「……そう、でしょうか」

ちひろ「だから、たまには誰かに甘えても良いんです」

なでなで…


美嘉「頭! 頭を撫でだした! ねえ、凛!?」

「見ればわかるから! 落ち着いて美嘉んあああああ!」

美嘉「凛!? 落ち着いて、凛!?」

459 = 450 :

武内P「情けない話ですが……とても、落ち着きます」

ちひろ「うふふっ、そうですか?」

なでなで…

武内P「はい、とても」

ちひろ「……」キュウンッ!

なでなで…


「知ってる? 朝顔の種って、食べちゃいけないんだよ」

美嘉「初めて聞いたケド……なんで、急にその話を?」

「食べたら幻覚を見ると言う朝顔の種が、ここに」

美嘉「ヤバーイ★」

460 = 450 :

「ちひろさん、喉、渇いてない?」


ちひろ「いつも頑張ってて偉いですよー」

なでなで…

武内P「……心が、洗われるようです」ホッコリ

ちひろ「私が、ついてますからねー」

なでなで…

武内P「……私は、此処に居ても良いのですね」ホッコリ


美嘉「聞いちゃいないね」

「……引き剥がすのは無理、かな」

461 = 450 :

美嘉「こうなったら、アタシ達も――」

「――行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように」


ぎゅっ!


武内P「!?」

ちひろ「凛ちゃん、美嘉ちゃん!?」

美嘉「べっ、別に? いつもお世話になってるお礼っていうか?」

「うん。ちひろさんだけに面倒をかけるのは、良くないかなって」


武内P「うわあああああっ!?」ブルブル!


ちひろ・凛・美嘉「!?」

462 = 450 :

ちひろ「プロデューサーさん!? どうしたんですか!?」

美嘉「えっ、なんでアタシ達が抱きしめたら!?」

「ちょっと、どういう事!? 説明して!」


武内P「ああああ! うわあああ!」ブルブル!


ちひろ「っ! ウチの子に触らないで!」

ぐいっ!


美嘉・凛「!?」


ちひろ「もう大丈夫ですよー、怖いお姉ちゃん達は居ないですよ―」

なでなで…

武内P「はい……ありがとう、ございます」

ちひろ「……」キュウウンッ


美嘉・凛「……」

463 = 450 :

美嘉「……ねえ、なんでアタシ達じゃ駄目なの?」

「美嘉が抱きしめたら、急に騒ぎ出した……?」

美嘉「は?」

「そういう怖い所が駄目だったんじゃない?」

美嘉「……怖かったのは凛の方じゃない?」

「あ?」


ちひろ「私がついてますから、安心してくださいねー」ニッコリ

なでなで…

武内P「……良い、笑顔です」ホッコリ

ちひろ「……」キュキュウンッ!


美嘉・凛「……」

464 = 450 :

ちひろ「良い子良い子~」

なでなで…

武内P「あの……先程の、ウチの子、というのは……」

ちひろ「あっ……もしかして、嫌でしたか?」

なでなで…

武内P「いえ……悪くないものだと、そう、思いました」

ちひろ「……」キュキュキュウウンッ!


美嘉・凛「……」

465 = 450 :

武内P「――ありがとうございます。寂しさが、落ち着きました」

ちひろ「……」

なでなで…

武内P「あの、千川さん? もう、大丈夫ですので……」

ちひろ「そう、ですか? 本当に?」

なでなで…

武内P「はい。ご迷惑をおかけしました」

ちひろ「……」


美嘉・凛「……」

466 = 450 :

ちひろ「……」

なでなで…

武内P「……」

ぐいっ!

ちひろ「あっ……」ションボリ

武内P「……申し訳ありません、これ以上は」

ちひろ「そう……ですよね」ションボリ

武内P「ですが……また、お願いするかもしれません」

ちひろ「! も、もうっ! プロデューサーさんはしょうがないですね!」パアッ


美嘉・凛「……」

467 = 450 :

武内P「申し訳ありません、お二人にも――」

美嘉・凛「ねえ」

武内P「? はい、何でしょうか?」

美嘉「アタシ達の――」

「――どっちが怖かったの?」

武内P「……すみません、寂しさが限界だったので、よく覚えていなくて」

美嘉・凛「……」

武内P「ですが、次の機会があっても、お気持ちだけ受け取っておきます」

美嘉・凛「……」

468 = 450 :

美嘉「じゃあさ、今、抱きしめて確かめてみない?★」

武内P「いえ、アイドルの方がそのような事は……」

「アンタ、私のプロデューサーでしょ?」

武内P「渋谷さん。だからこそ、です」

美嘉・凛「……」

武内P「絶対に、いけませんよ」

美嘉・凛「……」

469 = 450 :

  ・  ・  ・

美嘉「……うん、チョー安心する★」

「……私も。美嘉って、やっぱりお姉ちゃんなんだね」

美嘉「そうだよー★ 年上だし、ね!」

「でも、お姉ちゃんも甘えたい時、あるよね」

美嘉「……うん。だから、甘える」

「……私も、今は甘えさせて」

ぎゅっ!


未央「……何? アレ」


武内P「寂しさが、限界だったようです」



おわり

470 = 450 :

ゲームしてきます

471 :

やち天

472 :


「はぁ……んっ……はぁっ……!」


 千川さんの、美しい桃色の唇から艶めかしい吐息が漏れる。
 本来ならば聞くことはない、普段とは全く違う彼女の声。
 悶える姿から発せられる色気は、まるで極上の娼婦のよう。


「千川さん……!」


 千川さんに、声をかける。


「プロデューサー……さぁん……!」


 彼女も、息を切らしながらそれに応える。


「っ……!」


 私はプロデューサーであり、彼女は事務員だ。
 アイドル達よりも、近い関係。


「もう……! もう、私……!」


 彼女の、限界が近い。
 爪を立ててもがく千川さんが、苦しげな声を出している。
 私は、そんな彼女にかける言葉は一つしか思いつかない。


「……頑張ってください!」


 此処は、346プロダクションの社用車内。
 運転するのは私で、


「ぐっ……こ、こきゃっ、こ……!」


 千川さんは、助手席で腹痛に悶えていた。

473 = 472 :


「っ……!」


 千川さんは、今日は午後からの出勤だった。
 プロジェクトメンバーを仕事先に送る、帰り道。
 その道程で、千川さんの自宅が近い事を知ってしまっていた。


「あっあっ……!」


 故に、事務所に戻る途中で千川さんを拾って帰る。
 そんな結論に至ったのは、至極当然の事だろう。
 仕事上の付き合いとは言え、人間関係は円滑にすべきだ。


「ひぃーっ! はっ、ほひぃーっ!」


 千川さんは、最初はその申し出を固辞していた。
 その事に彼女との距離を感じたものの、そのまま引き下がった。
 あくまでも、彼女の意思を尊重するべきだ、と。
 しかし、プロジェクトメンバー達が「せっかくだから」と強引に彼女を説得したのだ。


「……ふぅ……ふぅ……!」


 私達だけ、いつもプロデューサーさんに送迎をしてもらったりしている。
 だから、せっかくだからちひろさんもお願いしちゃいなよ、と。
 その時のプロジェクトメンバー達の、輝く笑顔が今は懐かしい。


「あっ……また波が……!」


 そんなメンバー達に説得された時の千川さんは、少し困った顔をしていた。
 しかし、上目遣いで茶目っ気を出しながら、はにかんだ千川さんの笑顔。
 ほんの少しの間だけど、ドライブデートですね……と、冗談交じりで。
 ああ、その台詞を聞いたメンバー達は、盛り上がっていましたね。


「ぐっ……おおお……!」


 千川さんは、今、何を思っているのだろう。
 出来ることならば、メンバー達を恨むような事は、しないで欲しい。

474 = 472 :


「うん……うん……うっ……!?」


 波をやりすごそうとして、失敗したのだろう。
 チラリと横目で見た千川さんの顔は、普段の彼女とは似つかない。
 腹筋に力が入らないよう、顔の筋肉を全て弛緩。
 口はパカリと開き、視線は定まることなく宙を彷徨っている。


「はぁー……ほぉー……」


 最早、人の発する言葉ではない。
 壊れる寸前の蓄音機が奏でる、断末魔の音色。
 それを断続的に響かせる千川さんは、一体、何なのだろう。


「千川さん、もう着きます!」


 そんな事は、決まっている。
 プロデューサーの私を支えてくれる、大事な仲間だ。


「あっあっあっあっ!」


 千川さんが、一際大きな声をあげた。
 虚ろな目に飛び込んだ、城。
 私達が共に働く、346プロダクションの事務所だ。


「間に、合いましたね!」


 チラリと、横目で千川さんの様子を確認する。
 私の口元には、笑みが浮かんでいた。


「いいえ」


 だが、その笑みは続くこと無く、一瞬で掻き消えた。
 いつも、朗らかな笑みを浮かべる千川さん。
 彼女が一切の表情をなくしているというのに、どうして私が笑顔でいられようか。

475 = 472 :


「プロデューサーさん」


 先程までとは違う、とても落ち着いた声。
 まるで、いつもの、優しい笑みを浮かべている時の彼女の声のようだ。
 しかし、


「私ね、今日はちょっと楽しみだったんです」


 無。
 今の彼女からは、何も感じない。
 そこに確かに存在するのに、その存在が虚空に飲み込まれているようだ。
 それは、彼女が消えて無くなりたいと、そう願っているからだろうか。


「お待たせしちゃいけないな、って準備もバッチリして」


 彼女の声を聞きながら、私は事務所の前に停車した。
 運転の片手間に聞くような、そんな話ではない。
 千川さんは今、とても大事な話をしているのだから。


「でも、こんな事になっちゃいました」


 彼女が目尻に涙を浮かべているのは、己の不甲斐なさからか。
 それとも、打ち寄せる後悔からか。


「……すみません、千川さん」


 私も、右手を首筋にやり、左手で自らの目元を軽く拭う。


「プロデューサーさんが、泣く必要は無いですよ」


 そう言って、千川さんは女神のような笑顔を私に向けた。


「……申し訳、ありません」


 違うんです、千川さん。
 あまりの臭さで、目がシパシパしてきただけなのです。

476 = 472 :


「プロデューサーさんは、悪くありません」


 窓を開けても、良いだろうか。
 このままの状態が続くのは、非常にまずい。
 しかし、此処は事務所の前だ。
 いつ、誰が通って、窓から流れ出る悪臭を浴びるともわからない。


「全部、私が悪いんです」


 嗚呼、何故、私はこんな所に車を停めてしまったのだろう。
 前進し、社用車専用の駐車場に車を停め、脱出。
 後退し、どこか適当な所に車を停め、脱出。
 進むことも戻ることも、今となっては出来そうにない。


「……全部、私が」


 そう、全ては千川さんの許可を取ってからだ。
 この場に留まっていても、何も解決はしない。


「千川さん」


 可能な限り、優しく千川さんに話しかける。
 今の彼女は、とても傷ついている。
 自らを責め、全てを背負い込もうとしている。
 仲間として……断じて、見過ごすわけにはいかない。


「はい……何ですか?」


 気丈にも、彼女は涙を流していなかった。
 その強さは、私も見習いたいと、そう、考えます。
 しかし、私はこうも思うのです。
 その強さをお腹にも、少しだけ分けてあげて欲しい、と。


「……すみません。少し、待ってください」


 彼女が首を傾げた時に香った、シャンプーの香り。
 それが合わさった異臭が私の鼻を直撃し、意識が飛びそうになった。
 手を口元にやり、考え事をするフリをする。
 そうすれば、自然と鼻の穴を手で塞げるから。

477 = 472 :


「……」


 千川さんが、私の言葉を待っている。
 次に発する言葉が、彼女のこれからに大きく関わってくるのは明白だ。
 出来ることならば、最善を。
 私と、千川さんのためになる、最も良い選択をしなければならない。


「……千川さん」
「……はい」


 だが、私はどの選択肢も選ばなかった。


「兎に角、この場を移動しましょう」


 選ばないという選択を選んだのだ。
 問題の先送りでしかない提案だが、今は、それで良い。
 私は今、一刻も早く窓を開けて新鮮な空気を肺に送り込みたい。
 申し訳ありません、千川さん。
 このままこの状態が続けば、私は地上で溺れてしまいそうなのです。


「そう、ですね」


 千川さんは、薄々だが私の様子を見て察していたのだろう。
 自分の生み出してしまったものが、とんでもない代物だという事に。
 自分だとわからないけれど、他人は鮮明に感じるという、アレです。


「では発車します」


 千川さんの同意を得た私は、すぐさま行動に移った。
 普段よりも口調が早くなってしまったのは気付いていたが、それは許して欲しい。
 この場を離れられるという事は、遂に、窓を開けられるのだから――!


「……!」


 しかし、焦った私は発車する前に窓を開けてしまった。



「あっ、ちひろさんにプロデュー……うえっ!? げほっ、ごほっ!」



 それが、さらなる悲劇を産んだ。

478 = 472 :


「は、鼻が……!? それに、目が……!?」


 窓から解き放たれた悪臭の直撃。
 不意を付かれる形のそれは、彼女から嗅覚だけでなく、視覚まで奪ったようだ。
 突然の事に驚き、その両手は何かを探すように前に突き出されている。


「っ……!」


 彼女には申し訳ないが、時間とともに回復して貰うしか無い。
 今は、一刻も早く臭いの原因を取り除かなければならない。
 しかし、本当に申し訳ありません。
 外の世界を知ってしまった今、また、窓を閉めるのはとても難しいのです。


「どこ……!? どこ……!?」


 だが、このままでは発車出来ないのも事実。
 彼女の両の手が、車体に触れてしまう可能性がある。
 それだけは、なんとしても避けなければ。
 だから――



「Let’s go~♪ あのヒ~カリっ目指して~♪」



 ――私は、歌った。
 闇の中を彷徨う彼女を導くように、高々と、大声で。


「!」


 私の声は、彼女に届いた。
 その結果、彼女は『Star!!』の振り付けの通り、人差し指を天に向けていく。
 はい、これで安全に発車出来ますね。


「では、発車します」


 私は、感情を殺してつぶやいた。
 千川さんも涙と鼻水によって、視覚と嗅覚を奪われていた。
 だが、きっと私の声は届いただろう。
 その証拠に、千川さんの泣き声が一際大きくなったのだから。


おわり

479 = 472 :

寝ます
おやすみなさい

480 :

予告なくウンコ
だがそれがいい

481 = 472 :

このスレはキワモノ多めでやろうと思っていました

キョン「ッ……仕方がない、変身ッ!」
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-760.html

8年前に書いた二次創作とのクロスオーバー三次創作を書きます
諸々やるので遅くからになります
面倒な人は飛ばしちゃってください

482 :

このスレは?このスレもの間違いだろ…

483 = 472 :


 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者。
 そんなもん居るわけねぇ! なんて思ってたのは、もう随分と昔のような気がするな。
 今の俺を取り囲む日常とやらは、そんな非日常的な人間達に囲まれるものになっている。
 
 宇宙人――長門有希。
 未来人――朝比奈みくる。
 超能力者――古泉一樹。
 そして、我らがSOS団の団長――涼宮ハルヒ。

 異世界人は残念ながら所属してないが、その代わりに神様が団長をやっている。
 そう考えると、お釣りが来る所かそれだけで大金持ちだ。
 そうは思わないか?


『異世界人と神の価値の違いとは』


 そんなもん知るわけねぇ!
 そもそも、異世界人とやらには会ったことすら無いんだぞ。
 もしかしたら、とんでもなく不細工な奴だったら、見た目が良い分ハルヒの方がマシだ。


『そう』
「そうだとも」


 なんて、他愛の無いやり取りをするのはいつもの事だ。
 俺がくだらない事を言って、律儀に長門がそれに答える。
 まあ、大抵は今みたいにグダグダになって終わっちまうんだけどな。
 それもまた、‘らしく’て良い。


『目標まで、あと20メートル』


 ああ、そうかい。
 この路地を曲がった先に――怪人が居るって訳だな。
 やれやれ、嫌になるぜ、本当。


「……変身」


 そう、俺は人知れずつぶやいた。

484 = 472 :


 体中の細胞の一つ一つが、別のものに置き換わっていく。
 俺自身は、至って平凡な男子高校生だ。
 けど、変身をした後の俺は、違う。


「っ……!」


 腕が、脚が、体が、頭が、人間のそれとはかけ離れていく。


 ――化物!


 なんて、言われた事もあったっけな。
 ……そう、強がってみても、今でもハッキリと思い出せる。
 俺の今のこの姿を見た、ハルヒの怯えた表情を。


「…………」


 ああ、いかんいかん!
 アイツのあんな顔を思い出したら、余計に滅入っちまう。
 今はただ、いつもの、俺が愛する日常を守る事だけ考えよう。
 平凡で、たまに平凡とはかけ離れた刺激のある、あの日常を。


 ズシャリ、ズシャリ。


 地面を踏みしめる音が、ハッキリと聞こえる。
 強化された今の俺の聴覚は、ほんのささいな音すらも拾い上げる。
 普通だったら、まともじゃいられないんだろうな。


 だが、今の俺は普通ではないし、まともでもない。


 異形の――化物だ。


 そんな俺の耳に、いつもとは違う、電子音混じりの二人分の女の声が響いた。


『LIVE SUCCESS!!』


 ……やれやれ、一体何だってんだ?

485 = 472 :


 あんな奇っ怪な音を聞かされて、はーいこんにちはー、
なんてヒョッコリと顔を出す程俺は間抜けじゃない。
 今はこんな見た目をしちゃいるが、本当は平和を愛する凡人だからな。
 ……なんて言っちゃみたが、どっちの姿が本当なんだろうな。
 わからんし、わかった所でやる事は変わらないが。


「…………」


 路地裏の突き当り、行き止まりの所に、男は居た。
 大柄で、無表情な男。
 黒いスーツの上下を着ちゃいるが、その顔つきはどう見ても一般人じゃない。
 現に、その男の足元からは、虹色の粒子が立ち上っている。
 ……仲間割れでもしたのか?
 だとしたら、アイツは‘どっち側’なんだ?


「――新手、ですか」


 低い声が、路地裏に響く。
 地の底から聞こえてくるようなそれは、隠れていても無駄だと、そう言っているようだ。
 やれやれ。
 どうやら、やるしかないみたいだな。


「…………」


 男は、姿を見せた俺の姿を見て、一瞬目を見開いた。
 おいおい、何を驚く必要があるんだ?
 アンタも、俺と似たようなもんだと思ったんだが。


「言葉を話す相手は、初めてだったものですから」


 顔に似合わず、随分と丁寧な口調だな。
 だけどな、油断させようと思ってしているなら、そいつは無駄だぞ。


「話し合いで終わるとは、思ってないだろ?」
「はい。そして、それは貴方も、でしょう?」
「違いない」


 男は、バサリと上着を翻し、銀色に光るベルトを露出させた。

486 = 472 :


「…………」


 男は、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 見たことの無い機種だな。
 ホームボタンを三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに……って、器用だなオイ。


 ――3――4――6!


『LIVE――』


 スマートフォンから、さっきと同じ二人分の声が聞こえる。
 そして、男はスマートフォンを銀色のベルトにかざし、


「変身ッ!」


 言った。


『――START!』


 光に包み込まれた男の体に、黒い鎧が纏われていく。
 その胸元には、ピンク、ブルー、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
 目付きの悪い……なんだったっけか、あのキャラ。
 なあ、アンタのそのフルフェイス、どっかで見たことがあるんだ。
 こういうのって、すぐに思い出さないとボケるって言うだろ?
 戦う前に、教えてくれないか。


「……ぴにゃこら太、です」


 ああ、そうかい。


「不細工で、殴りやすそうな顔で助かったぜ!」


 可愛い顔だったら、殴ると心が痛むからな。
 今のアンタの顔なら、そんな心配はしなくて済む。
 変身前の顔だったら……おっかなくて、逃げ出してたかもな。

487 = 472 :


「おおっ――」


 地を蹴り、一瞬で相手との間合いを詰める。
 その拍子にアスファルトがボゴリと凹んだが、後で長門に言わきゃならん。
 でないと、あの穴に躓く人が出ちまう。
 ……なんて、そんな考え事をしながらのパンチは、


「――らあっ!」
「善処します!」


 黒い不細工面の放った拳で、容易く迎撃された。


「っ……!?」


 速い。
 コイツ、直線で放った俺のパンチを‘横から’撃ち落としやがった!
 想定外の出来事に、あっけなく体勢を崩す。
 間違いない。
 コイツは、今まで戦ってきたどの怪人よりも、強い!


「くっ――!」


 慌てて後ろに飛び退こうとするが、奴の左手が銃を模した握りになっているのが見えた。
 ……おいおい、マジか。


「――企画!」
「う、おおおっ!?」


 夜の闇を照らすような、イエローの光が俺の体を貫いた。


『Passion!!』


 うるせえ!
 パッションだかファッションだか知らないが、飛び道具なんて聞いてねえぞ!


「――検討中です!」


『Cute!!』


 そんな俺の抗議の声は、輝くピンクの拳が腹に打ち込まれた事で中断させられた。

488 = 472 :


「ぐ、あっ……!」


 強い。
 イエローの光が打ち込まれてから、全身が痺れる。
 ピンクのパンチをもらった腹は、まるで爆発したみたいだ。
 相手を舐めていた。
 そう、言わざるを得ない。


「…………」


 ズシャリ、ズシャリと、重量を感じさせる足音。
 それが近づいてくる事に、俺は恐怖を――……覚えない。
 例えコイツが何だろうと、俺は負けるわけにはいかない。
 負けは、俺の愛すべき日常が壊れる事と、同じなのだから。
 それに比べれば、どんな敵だろうと恐れる必要は無い。


「なあ……アンタの戦う理由は、何だ?」


 呼吸を整え、腰を落とした状態で、男に問いかける。
 悪いな、この技はちょいとばかし溜めが必要なんだ。
 卑怯だと思うかい? 必死なんだよ、俺だって。


「……笑顔です」


 その笑顔ってのは、アイツを殺して、って事か。
 だったら、こっちも全力でいかせて貰う。
 さっきと同じと思ったら、大間違いだぜ。


「アイツを殺して? あの、仰っている意味が、よく――」


 初めて見せた、大きな隙。
 それを見逃してやる程、俺はお人好しじゃあない。
 最も、今の俺が人と言えるかは微妙な所だけどな。


「ライダー――」


 両足に溜めた力を――


「――キック!」


 ――爆発させた。

489 = 472 :


「っ!?」


『Cooooo――』


 ブルーの光を纏った右足で迎撃しようとしたようだが――遅い。
 悪いな、これは俺の必殺技なんだ。
 相手を必ず殺す技――ライダーキック。


「ぐおおおおっ!?」


 俺の脚が、男の体の中心を捉えた。
 すさまじく硬いが、確かな手応え。
 激突時に発生した衝撃波が、ビリビリと空気を揺らす。


「あ――ぐ、あっ!」


 吹き飛んだ男は背後の壁に叩きつけられ、磔になった。
 凄いな、壁にめり込む程硬いのか、アンタ。


『LIVE Failed……』


 響く二人の女の声と共に、変身が解けていく。
 だが、その姿はズタボロで、体中は傷だらけ。
 シャツには血が滲んでいるし、口からは血を流している。
 悪いな、上着の袖、取れちまいそうだ。


「貴方は……」


 男は、そんな姿になりながらも、倒れる事は無かった。
 歯を食いしばり、手で膝を掴み、必死の形相でこちらを見ている。
 良いぜ、最期の言葉くらい聞いてやるさ。


「アイドル達を狙う怪人、では……無いのですか?」


 ……は?


「……アイドル?」

490 = 472 :

  ・  ・  ・

「…………」


 不幸な事故や、争いごとが無くならないのには、理由がある。
 その時は最善だと思った行動や、自分が正しいと信じて取った行動。
 そいつが、何の因果かおかしな形で噛み合って起こっちまう。
 神様の気まぐれだってんなら、俺はハルヒの頭にチョップをくらわさにゃいかん。

prrrr!prrrr!

 携帯が音を立てる。
 着信音の変更はしてなかったが、この機会だから着歌とやらを
ダウンロードしてみるのも悪くないかもしれないな。


「――はい、もしもし」


 通話ボタンを押して、日本人が電話に出たらよく言う台詞を口にする。
 電話の向こう側で、ハァハァと疲れたような息遣いがした。


『あの……すみません。道に……迷ってしまって……!』


 いや、説明しましたよね?
 さっき、イチゴとティラミスのクレープを買ってきたって聞いたばかりなんですが。
 あの、迎えに行った方が良いですか?


『! 申し訳ありません。少々お待ちを』


 電話口の向こうで、息を飲む声がした。
 やれやれ。
 年上だってのに、こんな高校生相手にも真面目なんですね、アンタって人は。


『すみません。アイドルに、興味はありませんか?』


 通話はそのままに、胸のポケットにスマートフォンを入れているのだろう。
 スカウトしようと、誰かに声をかけている様子が伝わってくる。


『あたし、アイドルには興味無いの。不思議探索の邪魔しないで』


 おい、今の声は……!?


『待ってください! せめて、名刺だけでも――!』



おわり

491 = 472 :

OPっぽいの書いてスッキリしました
休憩

492 :

男を口説くのが早いキョン

493 :

申し訳ない、何故か下ネタ銀英しか浮かばないので寝ます
おやすみなさい

494 :

朝倉さん消えたままなのかしら……?
おつ

495 :

武内Pって山田孝之ばりの便利さがあるな

それで思ったのが勇者タケウチの語感の良さ

496 :

キョンの方単体は気が向いたら続き書きます

>>495
やってみよう


専務「起きなさい、起きなさい勇者」

497 = 496 :

武内P「……」

専務「今日は、まずは王様にご挨拶しに行く予定の筈です」

専務「誕生日を迎えた貴方は、魔王を倒す旅に出るのでしょう」

武内P「あの……母親役、ですか?」

専務「早く行きなさい。私は、あまり気が長い方ではない」

武内P「……」

武内P「はい。行ってまいります」

498 = 496 :

  ・  ・  ・

武内P「すみません。王様と、会う約束があるのですが」

兵士A「なんだ貴様は! 怪しい奴め!」

武内P「勇者と、そう言えば良いと聞いています」

兵士B「勇者だと? ならば、何故黒のスーツ上下なのだ!」

武内P「クライアントが最初に会うのは私です」

武内P「身だしなみには気をつけろと、そう、言われました」

兵士A「ええい、何を言っている!」

兵士B「捕らえろ! 牢にぶち込んでやる!」

武内P「!? 待ってください! せめて、話を!」

499 = 496 :

  ・  ・  ・

部長「おお、勇者よ! 捕まってしまうとは情けない!」

武内P「……申し訳、ありません」

部長「さて、気を取り直して、キミには旅立ってもらう」

武内P「……」

部長「魔王、蘭子くんの影は世界中に広がっている」

部長「なんとかできるのは、勇者アカバネの息子のキミしかいない」

部長「やって、くれるね?」

武内P「それが……はい、必要な事でしたら」

部長「……ふっ、キミならそう言うと思っていたよ」

500 = 496 :

部長「キミには、これを贈ろう」

チャ~ラ~ラ~リ~ラッチャッラ~ン♪

武内P「……カバンと、名刺ですか」

部長「必要な書類はカバンに入れ、スカウトする時はその名刺を使い給え」

武内P「……モンスターにはどう対処すれば」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

武内P「あの! モンスターには、どう対処すれば!?」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

武内P「……」

武内P「行って、まいります」


←前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
スレッド評価: スレッド評価について
みんなの評価 :
タグ : - モバマス + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

類似してるかもしれないスレッド


トップメニューへ / →のくす牧場書庫について