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    元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」

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    451 = 450 :

    美嘉「は? アンタ、何言ってんの?」

    「寂しさが限界って、意味わからないんだけど」

    ちひろ「あの……どういう事でしょうか?」

    武内P「千川さん、お願いがあるのですが」

    ちひろ「? はい、何ですか?」

    武内P「こう、頭を抱きしめていただけませんか」

    ちひろ「!?」


    美嘉・凛「!?」

    452 = 450 :

    ちひろ「なっ、何言ってるんですか!?」

    武内P「30分程度で、大丈夫だと思いますので……」

    ちひろ「あの、一体どうしちゃったんですか……?」

    武内P「寂しさが限界に――」


    武内P「――ああ……うあああ……!」ブルブル


    ちひろ「!!?」


    美嘉・凛「!!?」

    453 = 450 :

    武内P「さ、寂しい……寂しくて、たまらない……!」ブルブル

    ちひろ「ぷっ、プロデューサーさん!? 凄く震えてますよ!?」

    武内P「お願いします……! お願いします、千川さん……!」ブルブル

    ちひろ「そっ、そんな事言われても……」

    武内P「ひぅ……うぅっ……! 寂しくてたまらない……!」ブルブル

    ちひろ「あ……ううっ……!?」


    美嘉・凛「……」

    454 = 450 :

    武内P「ああ……! もう……!」ブルブル

    ちひろ「……っ! もう!」

    ぎゅっ

    ちひろ「こっ、これで良いんですか!?///」

    武内P「……ありがとうございます……あぁ、寂しさが消えていく……」

    ちひろ「そ、そうですか……///」


    美嘉・凛「……」

    455 = 450 :

    武内P「……ありがとうございます、千川さん」

    ちひろ「っ、はい! もう終わりです!」

    パッ!

    武内P「!?」

    ちひろ「プロデューサーさん、寂しさが限界って――」


    武内P「あっあっあっあっ!」オブオブ


    ちひろ「――まっ、まだだったんですか!?」


    美嘉・凛「……」

    456 = 450 :

    武内P「あっあっあっあっ」オブオブ

    ちひろ「す、すみません! 急に離れて!」

    ぎゅっ

    武内P「……いえ」

    ぎゅううっ!

    ちひろ「……」

    ちひろ「……」キュウンッ!


    美嘉「アタシ、今のちひろさんの気持ちがわかった」

    「うん。明らかに母性本能を刺激されたよね」

    457 = 450 :

    武内P「……申し訳、ありません」

    ぎゅううっ!

    ちひろ「だ、大丈夫ですよ。もう、急に離れませんから!」

    武内P「……はい」

    ぎゅっ

    ちひろ「……」キュウンッ!

    ぎゅうっ!


    美嘉「ちひろさんの抱きしめる力、強くなった」

    「あんなに不安そうな顔されたら、仕方ないかな」

    458 = 450 :

    武内P「皆さんに、不甲斐ない所をお見せしてしまいました……」

    ちひろ「……良いんですよ、プロデューサーさん」

    武内P「……千川さん?」

    ちひろ「プロデューサーさん、いつも頑張ってますから」

    なでなで…

    武内P「……そう、でしょうか」

    ちひろ「だから、たまには誰かに甘えても良いんです」

    なでなで…


    美嘉「頭! 頭を撫でだした! ねえ、凛!?」

    「見ればわかるから! 落ち着いて美嘉んあああああ!」

    美嘉「凛!? 落ち着いて、凛!?」

    459 = 450 :

    武内P「情けない話ですが……とても、落ち着きます」

    ちひろ「うふふっ、そうですか?」

    なでなで…

    武内P「はい、とても」

    ちひろ「……」キュウンッ!

    なでなで…


    「知ってる? 朝顔の種って、食べちゃいけないんだよ」

    美嘉「初めて聞いたケド……なんで、急にその話を?」

    「食べたら幻覚を見ると言う朝顔の種が、ここに」

    美嘉「ヤバーイ★」

    460 = 450 :

    「ちひろさん、喉、渇いてない?」


    ちひろ「いつも頑張ってて偉いですよー」

    なでなで…

    武内P「……心が、洗われるようです」ホッコリ

    ちひろ「私が、ついてますからねー」

    なでなで…

    武内P「……私は、此処に居ても良いのですね」ホッコリ


    美嘉「聞いちゃいないね」

    「……引き剥がすのは無理、かな」

    461 = 450 :

    美嘉「こうなったら、アタシ達も――」

    「――行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように」


    ぎゅっ!


    武内P「!?」

    ちひろ「凛ちゃん、美嘉ちゃん!?」

    美嘉「べっ、別に? いつもお世話になってるお礼っていうか?」

    「うん。ちひろさんだけに面倒をかけるのは、良くないかなって」


    武内P「うわあああああっ!?」ブルブル!


    ちひろ・凛・美嘉「!?」

    462 = 450 :

    ちひろ「プロデューサーさん!? どうしたんですか!?」

    美嘉「えっ、なんでアタシ達が抱きしめたら!?」

    「ちょっと、どういう事!? 説明して!」


    武内P「ああああ! うわあああ!」ブルブル!


    ちひろ「っ! ウチの子に触らないで!」

    ぐいっ!


    美嘉・凛「!?」


    ちひろ「もう大丈夫ですよー、怖いお姉ちゃん達は居ないですよ―」

    なでなで…

    武内P「はい……ありがとう、ございます」

    ちひろ「……」キュウウンッ


    美嘉・凛「……」

    463 = 450 :

    美嘉「……ねえ、なんでアタシ達じゃ駄目なの?」

    「美嘉が抱きしめたら、急に騒ぎ出した……?」

    美嘉「は?」

    「そういう怖い所が駄目だったんじゃない?」

    美嘉「……怖かったのは凛の方じゃない?」

    「あ?」


    ちひろ「私がついてますから、安心してくださいねー」ニッコリ

    なでなで…

    武内P「……良い、笑顔です」ホッコリ

    ちひろ「……」キュキュウンッ!


    美嘉・凛「……」

    464 = 450 :

    ちひろ「良い子良い子~」

    なでなで…

    武内P「あの……先程の、ウチの子、というのは……」

    ちひろ「あっ……もしかして、嫌でしたか?」

    なでなで…

    武内P「いえ……悪くないものだと、そう、思いました」

    ちひろ「……」キュキュキュウウンッ!


    美嘉・凛「……」

    465 = 450 :

    武内P「――ありがとうございます。寂しさが、落ち着きました」

    ちひろ「……」

    なでなで…

    武内P「あの、千川さん? もう、大丈夫ですので……」

    ちひろ「そう、ですか? 本当に?」

    なでなで…

    武内P「はい。ご迷惑をおかけしました」

    ちひろ「……」


    美嘉・凛「……」

    466 = 450 :

    ちひろ「……」

    なでなで…

    武内P「……」

    ぐいっ!

    ちひろ「あっ……」ションボリ

    武内P「……申し訳ありません、これ以上は」

    ちひろ「そう……ですよね」ションボリ

    武内P「ですが……また、お願いするかもしれません」

    ちひろ「! も、もうっ! プロデューサーさんはしょうがないですね!」パアッ


    美嘉・凛「……」

    467 = 450 :

    武内P「申し訳ありません、お二人にも――」

    美嘉・凛「ねえ」

    武内P「? はい、何でしょうか?」

    美嘉「アタシ達の――」

    「――どっちが怖かったの?」

    武内P「……すみません、寂しさが限界だったので、よく覚えていなくて」

    美嘉・凛「……」

    武内P「ですが、次の機会があっても、お気持ちだけ受け取っておきます」

    美嘉・凛「……」

    468 = 450 :

    美嘉「じゃあさ、今、抱きしめて確かめてみない?★」

    武内P「いえ、アイドルの方がそのような事は……」

    「アンタ、私のプロデューサーでしょ?」

    武内P「渋谷さん。だからこそ、です」

    美嘉・凛「……」

    武内P「絶対に、いけませんよ」

    美嘉・凛「……」

    469 = 450 :

      ・  ・  ・

    美嘉「……うん、チョー安心する★」

    「……私も。美嘉って、やっぱりお姉ちゃんなんだね」

    美嘉「そうだよー★ 年上だし、ね!」

    「でも、お姉ちゃんも甘えたい時、あるよね」

    美嘉「……うん。だから、甘える」

    「……私も、今は甘えさせて」

    ぎゅっ!


    未央「……何? アレ」


    武内P「寂しさが、限界だったようです」



    おわり

    470 = 450 :

    ゲームしてきます

    471 :

    やち天

    472 :


    「はぁ……んっ……はぁっ……!」


     千川さんの、美しい桃色の唇から艶めかしい吐息が漏れる。
     本来ならば聞くことはない、普段とは全く違う彼女の声。
     悶える姿から発せられる色気は、まるで極上の娼婦のよう。


    「千川さん……!」


     千川さんに、声をかける。


    「プロデューサー……さぁん……!」


     彼女も、息を切らしながらそれに応える。


    「っ……!」


     私はプロデューサーであり、彼女は事務員だ。
     アイドル達よりも、近い関係。


    「もう……! もう、私……!」


     彼女の、限界が近い。
     爪を立ててもがく千川さんが、苦しげな声を出している。
     私は、そんな彼女にかける言葉は一つしか思いつかない。


    「……頑張ってください!」


     此処は、346プロダクションの社用車内。
     運転するのは私で、


    「ぐっ……こ、こきゃっ、こ……!」


     千川さんは、助手席で腹痛に悶えていた。

    473 = 472 :


    「っ……!」


     千川さんは、今日は午後からの出勤だった。
     プロジェクトメンバーを仕事先に送る、帰り道。
     その道程で、千川さんの自宅が近い事を知ってしまっていた。


    「あっあっ……!」


     故に、事務所に戻る途中で千川さんを拾って帰る。
     そんな結論に至ったのは、至極当然の事だろう。
     仕事上の付き合いとは言え、人間関係は円滑にすべきだ。


    「ひぃーっ! はっ、ほひぃーっ!」


     千川さんは、最初はその申し出を固辞していた。
     その事に彼女との距離を感じたものの、そのまま引き下がった。
     あくまでも、彼女の意思を尊重するべきだ、と。
     しかし、プロジェクトメンバー達が「せっかくだから」と強引に彼女を説得したのだ。


    「……ふぅ……ふぅ……!」


     私達だけ、いつもプロデューサーさんに送迎をしてもらったりしている。
     だから、せっかくだからちひろさんもお願いしちゃいなよ、と。
     その時のプロジェクトメンバー達の、輝く笑顔が今は懐かしい。


    「あっ……また波が……!」


     そんなメンバー達に説得された時の千川さんは、少し困った顔をしていた。
     しかし、上目遣いで茶目っ気を出しながら、はにかんだ千川さんの笑顔。
     ほんの少しの間だけど、ドライブデートですね……と、冗談交じりで。
     ああ、その台詞を聞いたメンバー達は、盛り上がっていましたね。


    「ぐっ……おおお……!」


     千川さんは、今、何を思っているのだろう。
     出来ることならば、メンバー達を恨むような事は、しないで欲しい。

    474 = 472 :


    「うん……うん……うっ……!?」


     波をやりすごそうとして、失敗したのだろう。
     チラリと横目で見た千川さんの顔は、普段の彼女とは似つかない。
     腹筋に力が入らないよう、顔の筋肉を全て弛緩。
     口はパカリと開き、視線は定まることなく宙を彷徨っている。


    「はぁー……ほぉー……」


     最早、人の発する言葉ではない。
     壊れる寸前の蓄音機が奏でる、断末魔の音色。
     それを断続的に響かせる千川さんは、一体、何なのだろう。


    「千川さん、もう着きます!」


     そんな事は、決まっている。
     プロデューサーの私を支えてくれる、大事な仲間だ。


    「あっあっあっあっ!」


     千川さんが、一際大きな声をあげた。
     虚ろな目に飛び込んだ、城。
     私達が共に働く、346プロダクションの事務所だ。


    「間に、合いましたね!」


     チラリと、横目で千川さんの様子を確認する。
     私の口元には、笑みが浮かんでいた。


    「いいえ」


     だが、その笑みは続くこと無く、一瞬で掻き消えた。
     いつも、朗らかな笑みを浮かべる千川さん。
     彼女が一切の表情をなくしているというのに、どうして私が笑顔でいられようか。

    475 = 472 :


    「プロデューサーさん」


     先程までとは違う、とても落ち着いた声。
     まるで、いつもの、優しい笑みを浮かべている時の彼女の声のようだ。
     しかし、


    「私ね、今日はちょっと楽しみだったんです」


     無。
     今の彼女からは、何も感じない。
     そこに確かに存在するのに、その存在が虚空に飲み込まれているようだ。
     それは、彼女が消えて無くなりたいと、そう願っているからだろうか。


    「お待たせしちゃいけないな、って準備もバッチリして」


     彼女の声を聞きながら、私は事務所の前に停車した。
     運転の片手間に聞くような、そんな話ではない。
     千川さんは今、とても大事な話をしているのだから。


    「でも、こんな事になっちゃいました」


     彼女が目尻に涙を浮かべているのは、己の不甲斐なさからか。
     それとも、打ち寄せる後悔からか。


    「……すみません、千川さん」


     私も、右手を首筋にやり、左手で自らの目元を軽く拭う。


    「プロデューサーさんが、泣く必要は無いですよ」


     そう言って、千川さんは女神のような笑顔を私に向けた。


    「……申し訳、ありません」


     違うんです、千川さん。
     あまりの臭さで、目がシパシパしてきただけなのです。

    476 = 472 :


    「プロデューサーさんは、悪くありません」


     窓を開けても、良いだろうか。
     このままの状態が続くのは、非常にまずい。
     しかし、此処は事務所の前だ。
     いつ、誰が通って、窓から流れ出る悪臭を浴びるともわからない。


    「全部、私が悪いんです」


     嗚呼、何故、私はこんな所に車を停めてしまったのだろう。
     前進し、社用車専用の駐車場に車を停め、脱出。
     後退し、どこか適当な所に車を停め、脱出。
     進むことも戻ることも、今となっては出来そうにない。


    「……全部、私が」


     そう、全ては千川さんの許可を取ってからだ。
     この場に留まっていても、何も解決はしない。


    「千川さん」


     可能な限り、優しく千川さんに話しかける。
     今の彼女は、とても傷ついている。
     自らを責め、全てを背負い込もうとしている。
     仲間として……断じて、見過ごすわけにはいかない。


    「はい……何ですか?」


     気丈にも、彼女は涙を流していなかった。
     その強さは、私も見習いたいと、そう、考えます。
     しかし、私はこうも思うのです。
     その強さをお腹にも、少しだけ分けてあげて欲しい、と。


    「……すみません。少し、待ってください」


     彼女が首を傾げた時に香った、シャンプーの香り。
     それが合わさった異臭が私の鼻を直撃し、意識が飛びそうになった。
     手を口元にやり、考え事をするフリをする。
     そうすれば、自然と鼻の穴を手で塞げるから。

    477 = 472 :


    「……」


     千川さんが、私の言葉を待っている。
     次に発する言葉が、彼女のこれからに大きく関わってくるのは明白だ。
     出来ることならば、最善を。
     私と、千川さんのためになる、最も良い選択をしなければならない。


    「……千川さん」
    「……はい」


     だが、私はどの選択肢も選ばなかった。


    「兎に角、この場を移動しましょう」


     選ばないという選択を選んだのだ。
     問題の先送りでしかない提案だが、今は、それで良い。
     私は今、一刻も早く窓を開けて新鮮な空気を肺に送り込みたい。
     申し訳ありません、千川さん。
     このままこの状態が続けば、私は地上で溺れてしまいそうなのです。


    「そう、ですね」


     千川さんは、薄々だが私の様子を見て察していたのだろう。
     自分の生み出してしまったものが、とんでもない代物だという事に。
     自分だとわからないけれど、他人は鮮明に感じるという、アレです。


    「では発車します」


     千川さんの同意を得た私は、すぐさま行動に移った。
     普段よりも口調が早くなってしまったのは気付いていたが、それは許して欲しい。
     この場を離れられるという事は、遂に、窓を開けられるのだから――!


    「……!」


     しかし、焦った私は発車する前に窓を開けてしまった。



    「あっ、ちひろさんにプロデュー……うえっ!? げほっ、ごほっ!」



     それが、さらなる悲劇を産んだ。

    478 = 472 :


    「は、鼻が……!? それに、目が……!?」


     窓から解き放たれた悪臭の直撃。
     不意を付かれる形のそれは、彼女から嗅覚だけでなく、視覚まで奪ったようだ。
     突然の事に驚き、その両手は何かを探すように前に突き出されている。


    「っ……!」


     彼女には申し訳ないが、時間とともに回復して貰うしか無い。
     今は、一刻も早く臭いの原因を取り除かなければならない。
     しかし、本当に申し訳ありません。
     外の世界を知ってしまった今、また、窓を閉めるのはとても難しいのです。


    「どこ……!? どこ……!?」


     だが、このままでは発車出来ないのも事実。
     彼女の両の手が、車体に触れてしまう可能性がある。
     それだけは、なんとしても避けなければ。
     だから――



    「Let’s go~♪ あのヒ~カリっ目指して~♪」



     ――私は、歌った。
     闇の中を彷徨う彼女を導くように、高々と、大声で。


    「!」


     私の声は、彼女に届いた。
     その結果、彼女は『Star!!』の振り付けの通り、人差し指を天に向けていく。
     はい、これで安全に発車出来ますね。


    「では、発車します」


     私は、感情を殺してつぶやいた。
     千川さんも涙と鼻水によって、視覚と嗅覚を奪われていた。
     だが、きっと私の声は届いただろう。
     その証拠に、千川さんの泣き声が一際大きくなったのだから。


    おわり

    479 = 472 :

    寝ます
    おやすみなさい

    480 :

    予告なくウンコ
    だがそれがいい

    481 = 472 :

    このスレはキワモノ多めでやろうと思っていました

    キョン「ッ……仕方がない、変身ッ!」
    http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-760.html

    8年前に書いた二次創作とのクロスオーバー三次創作を書きます
    諸々やるので遅くからになります
    面倒な人は飛ばしちゃってください

    482 :

    このスレは?このスレもの間違いだろ…

    483 = 472 :


     宇宙人、未来人、異世界人、超能力者。
     そんなもん居るわけねぇ! なんて思ってたのは、もう随分と昔のような気がするな。
     今の俺を取り囲む日常とやらは、そんな非日常的な人間達に囲まれるものになっている。
     
     宇宙人――長門有希。
     未来人――朝比奈みくる。
     超能力者――古泉一樹。
     そして、我らがSOS団の団長――涼宮ハルヒ。

     異世界人は残念ながら所属してないが、その代わりに神様が団長をやっている。
     そう考えると、お釣りが来る所かそれだけで大金持ちだ。
     そうは思わないか?


    『異世界人と神の価値の違いとは』


     そんなもん知るわけねぇ!
     そもそも、異世界人とやらには会ったことすら無いんだぞ。
     もしかしたら、とんでもなく不細工な奴だったら、見た目が良い分ハルヒの方がマシだ。


    『そう』
    「そうだとも」


     なんて、他愛の無いやり取りをするのはいつもの事だ。
     俺がくだらない事を言って、律儀に長門がそれに答える。
     まあ、大抵は今みたいにグダグダになって終わっちまうんだけどな。
     それもまた、‘らしく’て良い。


    『目標まで、あと20メートル』


     ああ、そうかい。
     この路地を曲がった先に――怪人が居るって訳だな。
     やれやれ、嫌になるぜ、本当。


    「……変身」


     そう、俺は人知れずつぶやいた。

    484 = 472 :


     体中の細胞の一つ一つが、別のものに置き換わっていく。
     俺自身は、至って平凡な男子高校生だ。
     けど、変身をした後の俺は、違う。


    「っ……!」


     腕が、脚が、体が、頭が、人間のそれとはかけ離れていく。


     ――化物!


     なんて、言われた事もあったっけな。
     ……そう、強がってみても、今でもハッキリと思い出せる。
     俺の今のこの姿を見た、ハルヒの怯えた表情を。


    「…………」


     ああ、いかんいかん!
     アイツのあんな顔を思い出したら、余計に滅入っちまう。
     今はただ、いつもの、俺が愛する日常を守る事だけ考えよう。
     平凡で、たまに平凡とはかけ離れた刺激のある、あの日常を。


     ズシャリ、ズシャリ。


     地面を踏みしめる音が、ハッキリと聞こえる。
     強化された今の俺の聴覚は、ほんのささいな音すらも拾い上げる。
     普通だったら、まともじゃいられないんだろうな。


     だが、今の俺は普通ではないし、まともでもない。


     異形の――化物だ。


     そんな俺の耳に、いつもとは違う、電子音混じりの二人分の女の声が響いた。


    『LIVE SUCCESS!!』


     ……やれやれ、一体何だってんだ?

    485 = 472 :


     あんな奇っ怪な音を聞かされて、はーいこんにちはー、
    なんてヒョッコリと顔を出す程俺は間抜けじゃない。
     今はこんな見た目をしちゃいるが、本当は平和を愛する凡人だからな。
     ……なんて言っちゃみたが、どっちの姿が本当なんだろうな。
     わからんし、わかった所でやる事は変わらないが。


    「…………」


     路地裏の突き当り、行き止まりの所に、男は居た。
     大柄で、無表情な男。
     黒いスーツの上下を着ちゃいるが、その顔つきはどう見ても一般人じゃない。
     現に、その男の足元からは、虹色の粒子が立ち上っている。
     ……仲間割れでもしたのか?
     だとしたら、アイツは‘どっち側’なんだ?


    「――新手、ですか」


     低い声が、路地裏に響く。
     地の底から聞こえてくるようなそれは、隠れていても無駄だと、そう言っているようだ。
     やれやれ。
     どうやら、やるしかないみたいだな。


    「…………」


     男は、姿を見せた俺の姿を見て、一瞬目を見開いた。
     おいおい、何を驚く必要があるんだ?
     アンタも、俺と似たようなもんだと思ったんだが。


    「言葉を話す相手は、初めてだったものですから」


     顔に似合わず、随分と丁寧な口調だな。
     だけどな、油断させようと思ってしているなら、そいつは無駄だぞ。


    「話し合いで終わるとは、思ってないだろ?」
    「はい。そして、それは貴方も、でしょう?」
    「違いない」


     男は、バサリと上着を翻し、銀色に光るベルトを露出させた。

    486 = 472 :


    「…………」


     男は、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
     見たことの無い機種だな。
     ホームボタンを三回押し、画面を起動。
     流れるように、暗証番号を画面を見ずに……って、器用だなオイ。


     ――3――4――6!


    『LIVE――』


     スマートフォンから、さっきと同じ二人分の声が聞こえる。
     そして、男はスマートフォンを銀色のベルトにかざし、


    「変身ッ!」


     言った。


    『――START!』


     光に包み込まれた男の体に、黒い鎧が纏われていく。
     その胸元には、ピンク、ブルー、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
     目付きの悪い……なんだったっけか、あのキャラ。
     なあ、アンタのそのフルフェイス、どっかで見たことがあるんだ。
     こういうのって、すぐに思い出さないとボケるって言うだろ?
     戦う前に、教えてくれないか。


    「……ぴにゃこら太、です」


     ああ、そうかい。


    「不細工で、殴りやすそうな顔で助かったぜ!」


     可愛い顔だったら、殴ると心が痛むからな。
     今のアンタの顔なら、そんな心配はしなくて済む。
     変身前の顔だったら……おっかなくて、逃げ出してたかもな。

    487 = 472 :


    「おおっ――」


     地を蹴り、一瞬で相手との間合いを詰める。
     その拍子にアスファルトがボゴリと凹んだが、後で長門に言わきゃならん。
     でないと、あの穴に躓く人が出ちまう。
     ……なんて、そんな考え事をしながらのパンチは、


    「――らあっ!」
    「善処します!」


     黒い不細工面の放った拳で、容易く迎撃された。


    「っ……!?」


     速い。
     コイツ、直線で放った俺のパンチを‘横から’撃ち落としやがった!
     想定外の出来事に、あっけなく体勢を崩す。
     間違いない。
     コイツは、今まで戦ってきたどの怪人よりも、強い!


    「くっ――!」


     慌てて後ろに飛び退こうとするが、奴の左手が銃を模した握りになっているのが見えた。
     ……おいおい、マジか。


    「――企画!」
    「う、おおおっ!?」


     夜の闇を照らすような、イエローの光が俺の体を貫いた。


    『Passion!!』


     うるせえ!
     パッションだかファッションだか知らないが、飛び道具なんて聞いてねえぞ!


    「――検討中です!」


    『Cute!!』


     そんな俺の抗議の声は、輝くピンクの拳が腹に打ち込まれた事で中断させられた。

    488 = 472 :


    「ぐ、あっ……!」


     強い。
     イエローの光が打ち込まれてから、全身が痺れる。
     ピンクのパンチをもらった腹は、まるで爆発したみたいだ。
     相手を舐めていた。
     そう、言わざるを得ない。


    「…………」


     ズシャリ、ズシャリと、重量を感じさせる足音。
     それが近づいてくる事に、俺は恐怖を――……覚えない。
     例えコイツが何だろうと、俺は負けるわけにはいかない。
     負けは、俺の愛すべき日常が壊れる事と、同じなのだから。
     それに比べれば、どんな敵だろうと恐れる必要は無い。


    「なあ……アンタの戦う理由は、何だ?」


     呼吸を整え、腰を落とした状態で、男に問いかける。
     悪いな、この技はちょいとばかし溜めが必要なんだ。
     卑怯だと思うかい? 必死なんだよ、俺だって。


    「……笑顔です」


     その笑顔ってのは、アイツを殺して、って事か。
     だったら、こっちも全力でいかせて貰う。
     さっきと同じと思ったら、大間違いだぜ。


    「アイツを殺して? あの、仰っている意味が、よく――」


     初めて見せた、大きな隙。
     それを見逃してやる程、俺はお人好しじゃあない。
     最も、今の俺が人と言えるかは微妙な所だけどな。


    「ライダー――」


     両足に溜めた力を――


    「――キック!」


     ――爆発させた。

    489 = 472 :


    「っ!?」


    『Cooooo――』


     ブルーの光を纏った右足で迎撃しようとしたようだが――遅い。
     悪いな、これは俺の必殺技なんだ。
     相手を必ず殺す技――ライダーキック。


    「ぐおおおおっ!?」


     俺の脚が、男の体の中心を捉えた。
     すさまじく硬いが、確かな手応え。
     激突時に発生した衝撃波が、ビリビリと空気を揺らす。


    「あ――ぐ、あっ!」


     吹き飛んだ男は背後の壁に叩きつけられ、磔になった。
     凄いな、壁にめり込む程硬いのか、アンタ。


    『LIVE Failed……』


     響く二人の女の声と共に、変身が解けていく。
     だが、その姿はズタボロで、体中は傷だらけ。
     シャツには血が滲んでいるし、口からは血を流している。
     悪いな、上着の袖、取れちまいそうだ。


    「貴方は……」


     男は、そんな姿になりながらも、倒れる事は無かった。
     歯を食いしばり、手で膝を掴み、必死の形相でこちらを見ている。
     良いぜ、最期の言葉くらい聞いてやるさ。


    「アイドル達を狙う怪人、では……無いのですか?」


     ……は?


    「……アイドル?」

    490 = 472 :

      ・  ・  ・

    「…………」


     不幸な事故や、争いごとが無くならないのには、理由がある。
     その時は最善だと思った行動や、自分が正しいと信じて取った行動。
     そいつが、何の因果かおかしな形で噛み合って起こっちまう。
     神様の気まぐれだってんなら、俺はハルヒの頭にチョップをくらわさにゃいかん。

    prrrr!prrrr!

     携帯が音を立てる。
     着信音の変更はしてなかったが、この機会だから着歌とやらを
    ダウンロードしてみるのも悪くないかもしれないな。


    「――はい、もしもし」


     通話ボタンを押して、日本人が電話に出たらよく言う台詞を口にする。
     電話の向こう側で、ハァハァと疲れたような息遣いがした。


    『あの……すみません。道に……迷ってしまって……!』


     いや、説明しましたよね?
     さっき、イチゴとティラミスのクレープを買ってきたって聞いたばかりなんですが。
     あの、迎えに行った方が良いですか?


    『! 申し訳ありません。少々お待ちを』


     電話口の向こうで、息を飲む声がした。
     やれやれ。
     年上だってのに、こんな高校生相手にも真面目なんですね、アンタって人は。


    『すみません。アイドルに、興味はありませんか?』


     通話はそのままに、胸のポケットにスマートフォンを入れているのだろう。
     スカウトしようと、誰かに声をかけている様子が伝わってくる。


    『あたし、アイドルには興味無いの。不思議探索の邪魔しないで』


     おい、今の声は……!?


    『待ってください! せめて、名刺だけでも――!』



    おわり

    491 = 472 :

    OPっぽいの書いてスッキリしました
    休憩

    492 :

    男を口説くのが早いキョン

    493 :

    申し訳ない、何故か下ネタ銀英しか浮かばないので寝ます
    おやすみなさい

    494 :

    朝倉さん消えたままなのかしら……?
    おつ

    495 :

    武内Pって山田孝之ばりの便利さがあるな

    それで思ったのが勇者タケウチの語感の良さ

    496 :

    キョンの方単体は気が向いたら続き書きます

    >>495
    やってみよう


    専務「起きなさい、起きなさい勇者」

    497 = 496 :

    武内P「……」

    専務「今日は、まずは王様にご挨拶しに行く予定の筈です」

    専務「誕生日を迎えた貴方は、魔王を倒す旅に出るのでしょう」

    武内P「あの……母親役、ですか?」

    専務「早く行きなさい。私は、あまり気が長い方ではない」

    武内P「……」

    武内P「はい。行ってまいります」

    498 = 496 :

      ・  ・  ・

    武内P「すみません。王様と、会う約束があるのですが」

    兵士A「なんだ貴様は! 怪しい奴め!」

    武内P「勇者と、そう言えば良いと聞いています」

    兵士B「勇者だと? ならば、何故黒のスーツ上下なのだ!」

    武内P「クライアントが最初に会うのは私です」

    武内P「身だしなみには気をつけろと、そう、言われました」

    兵士A「ええい、何を言っている!」

    兵士B「捕らえろ! 牢にぶち込んでやる!」

    武内P「!? 待ってください! せめて、話を!」

    499 = 496 :

      ・  ・  ・

    部長「おお、勇者よ! 捕まってしまうとは情けない!」

    武内P「……申し訳、ありません」

    部長「さて、気を取り直して、キミには旅立ってもらう」

    武内P「……」

    部長「魔王、蘭子くんの影は世界中に広がっている」

    部長「なんとかできるのは、勇者アカバネの息子のキミしかいない」

    部長「やって、くれるね?」

    武内P「それが……はい、必要な事でしたら」

    部長「……ふっ、キミならそう言うと思っていたよ」

    500 = 496 :

    部長「キミには、これを贈ろう」

    チャ~ラ~ラ~リ~ラッチャッラ~ン♪

    武内P「……カバンと、名刺ですか」

    部長「必要な書類はカバンに入れ、スカウトする時はその名刺を使い給え」

    武内P「……モンスターにはどう対処すれば」

    部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

    武内P「あの! モンスターには、どう対処すれば!?」

    部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

    武内P「……」

    武内P「行って、まいります」


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