元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」
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401 = 375 :
「どうした、何か可笑しいことでも?」
すかさず、専務が私の笑いの理由を問うてくる。
「いっ、いえ! 何でもないです!」
そうは言ったものの、彼女の視線が私から外れる事は無い。
「……」
「……」
絡み合う視線。
私達魔法少女ユニットは、今までで最大のピンチを迎えていた。
「……」
そんな視界の端で、プロデューサーさんが体を小さくしているのが見えた。
中腰の姿勢で、ゆっくりと、しかし一歩一歩確実に出入り口であるドアに向かっている。
「――んー! んー!」
「!? 離してください! 離してください、千川さん!」
私は、そんなプロデューサーさんに駆け寄り、腰に抱きついた。
上着を掴むだけでは逃げられてしまう。
「痛っ!? あの、爪が! 爪が突き立てられて!」
「んー! んー!」
今の私に出来る、マジカルでも、プリティーでもない、全力の拘束。
と言うか、普通、今のタイミングで逃げようとします!?
「……」
専務は、そんな暴れる私達の様子を冷静に見つめていた。
その目尻にうっすら涙が浮かんでいるのは、見なかったことにしよう。
402 = 375 :
・ ・ ・
「……兎に角、今日は何も無かった。良いですね?」
絞り出すような声。
「「……はい」」
疲れきった声。
暴れたせいで私の髪は乱れ、プロデューサーさんはシャツのボタンが二つ程飛んだ。
痛み分けというには、痛みが大きすぎた。
「……」
私は、魔法少女マジカルチッヒという事が知られ、変身中の全裸も見られた。
「……」
専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
「……」
プロデューサーさんは、大きな秘密を二つ抱える事となった。
魔法少女二人の正体を知るのは、どんな気持ちなのだろう。
気にはなるが、それを聞く勇気は私にはない。
「それでは……私は、これで失礼します」
今度は、誰もプロデューサーさんを止めない。
そして、私もそれに続こうと、ソファーから立ち上がり――
「待ちたまえ。チッヒ、キミにはまだ話がある」
「……!?」
――かけた時、専務……いや、ミッシーがそれを止めた。
多分、いや、絶対……プリティーで笑ったことを根に持ってるんだわ。
ああ……今日中に帰れるかしら、私。
403 :
もっちー辺りがやらかしてもおかしくないネタだなぁ
404 = 375 :
誤)> 専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
正)> 専務は、魔法少女プリティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
405 = 375 :
・ ・ ・
「……」
私は、二人の魔法……少女、はい、魔法少女の正体を知ってしまった。
それは、不幸な事故であり、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
今後は、迂闊に路地裏に入るのは避けるべきだろう。
「……」
上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。
「……」
彼女達は、平和を守るために戦っているのだ。
……そう、
「――笑顔のために」
右のポケットからスマートフォンを取り出す。
そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、二人分の女性の声が聴こえる。
そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
私も、私の戦いに身を投じるため、変身した。
『――START!』
おわり
406 = 375 :
誤)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。
正)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が吹くと少し寒い。
407 = 375 :
眠気で誤字が多すぎるので寝ます
おやすみなさい
408 = 390 :
同じ世界線だったかw
409 = 389 :
繋がった
410 :
子供向け映画の抱きあわせみたいだ
411 :
>>410
戦隊のメンバーが決まったらやる予定です
申し訳ない
昔、自分の書いたものを読んだら止まらなくなりました
結構な長編なので、今日は書くかわからないです
412 :
上様期待
413 :
甘いの書きます
414 = 413 :
「……」
シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
彼は、自分のデスクに座りながら眠っている。
きっと、ちひろさんがかけてくれたのよね、あの毛布。
「……」
起こさないように、そっとドアを閉める。
だって、この人が居眠りをするだなんて、本当に珍しいんですもの。
ドアの開け閉めの音で起こしちゃうだなんて、勿体無いわよね。
「……うふふっ」
どうやって驚かせちゃおうかしら。
無難に、大きな声でワッと?
それとも、毛布をバサッと取って?
ああ、ダメ……考えただけで、ワクワクしちゃうわ!
「……」
すぅすぅと寝息を立てる彼に、忍び足で近寄る。
ぐるりと回り込んで、すぐ、手を触れられる所までたどり着いた。
「……」
彼は、まだ起きない。
415 = 413 :
「……」
本当に、よく眠ってるわね。
もしかして、アナタの目付きが良くないのって、
そうやって寝ててちゃんとベッドで寝てないから?
だとしたら、ちゃんと寝たらどんな顔になるのかしら。
目が、キラキラしちゃったりするの?
「……」
つい、と顔を近づけて、彼の寝顔を間近で観察する。
いつもの、眉間により気味な皺は無く、まるで子供みたいな寝顔。
それがとっても可愛らしくて、母性本能をくすぐられてしまう。
あっ、くすぐって起こすのも面白そう!
「……」
くすぐったら、どういう顔で笑うのかしら。
アナタの大笑いする姿なんて、見たことがないもの。
穏やかな笑みか、噛み殺すような笑みだけ。
大口を開けて笑ったら……低い声も相まって、悪役みたいになっちゃうかしら?
「……」
彼が、自分では気付いてないだろう頭頂部の寝癖。
それを、人差し指でピコピコと揺らしてみる。
それでも、彼は起きない。
「……」
いつもだったら、この段階で起きるんですけど、ね。
これはもう、もっとイタズラする他に無いと思うんです。
416 = 413 :
「……」
デスクの横にしゃがみこんで、寝ている彼を目線を合わせる。
と言っても、目を開けてるのは私だけ。
一方的に、私がこの人を観察している。
「……」
じい、と睨みつけてみる。
ぷん、と怒った顔をしてみる。
しゅん、と悲しい顔をしてみる。
「……」
だけど、彼は目を開けない。
それは当然よね、だって、寝てるんですもの。
だから、ふにゃっ、と変な顔をしてみる。
「……」
――が、すぐにやめた。
寝たふりをしているんじゃないかと思ったけど、そうじゃないみたい。
私のあんな顔を見たら、この人は絶対に反応を示す。
すぐにやめたのは……もし、あの顔をしている時に目を覚まされたら、
それこそどんな顔をしていいかわからなくなっちゃうから。
「……」
高垣楓の、貴重な変顔を見逃しちゃいましたね。
ちょっとアレな、レアな顔でしたよ。
417 = 413 :
「……」
どうしたら、この人は驚くかしら。
せっかくだから、この状況じゃないと出来ない驚かせ方をしたいわ。
ワッと驚かせるのは、いつだって出来るものね。
……やった事は、無いけれど。
「……」
そっと、彼の肩にかかっている毛布をはいでいく。
思いもよらず、その毛布の手触りが良くて、ホゥ、となった。
大柄な彼のためか、毛布は大きく、かなりの余裕があった。
「……」
お邪魔しま~す。
と、私は言葉に出さずに彼に断りを入れた。
口の動きはちゃんと「お邪魔します」としてたんだし、見てないこの人が悪い。
アイドルを見るのがプロデューサーの仕事でしょう?
居眠りしてないで、仕事してください!
「……」
座る彼の隣にしゃがみ、同じ毛布にくるまっている。
だけど、離れていてはせっかくの毛布が台無しだ。
だって、私と貴方の距離が空いてたら、冷たい空気が入り込んじゃうから。
「……」
そうならない様、彼に体を密着させる。
スーツ越しに感じる、体温。
近づく事で、より鮮明に聞こえるようになった彼の寝息。
「……」
まだ、彼は目を覚まさない。
418 = 413 :
「……」
こんなに無防備で、この人は大丈夫なのかしら。
もしも私が悪い人だったら、大変な事になってましたよ。
わかってますか?
「……」
間近で睨みつけても、彼の反応は無い。
その事が、ちょっぴり寂しい。
だって、この人は私が何かしたら、必ず反応してくれるから。
心からの賞賛や、諦めたようなため息。
そして、極々稀にだけど……お説教も。
「……」
つん、と人差し指で彼の鼻をつついてみる。
だけど、本当によく眠っているのか、反応は無い。
つんつん、と二回つつく。
それでも、彼は眠ったまま。
「……」
鼻をつまむのは……それは、ちょっと可哀想よね。
絶対驚くとは思うんだけど、まだ、もうちょっと彼を眺めていよう。
不器用で、真っすぐで、とっても可愛らしい寝顔の彼を。
「……」
カチリ、コチリと時計の針が時間が進んでいるのを告げている。
それなのに、何故かこの穏やかな時間は、止まっているように思える。
419 = 413 :
「……」
だけど、そろそろ彼を起こしてあげなくっちゃ。
こんな体勢で寝てたら体が痛くなっちゃうし、風邪を引いちゃうもの。
それに、イタズラをして起こすと決めてたし、ね。
「うふふっ」
思わず零れた笑い声。
それが、零れ落ちないように口を両手で塞いだ。
あっ、良い事を思いついちゃった。
「……」
そっと、彼の横顔に顔を近づけていく。
普通は立場が逆だけど、私はしゃがんで、座ってるから逆でも良いですよね。
……ん? なんだかおかしいような、そうでもないような?
「……」
居眠りをしちゃうような王子様には、お仕置きです。
そう思う私は、今、どんな顔をしているのだろうか。
わからないけれど、彼が起きた時に言う言葉はもう、決めてある。
「……」
ゆっくりと、彼の頬に唇を近づけていく。
「……起きてくださ~い」
こうすると目覚めるのが、掟、でしょう?
おわり
420 = 413 :
お察しの方もいらっしゃいましたが、あの絵師さんの絵が大好きなのです
武内P「台風、ですね」
421 = 413 :
楓「はい、とても風が強くて……」
武内P「タクシーを呼ばれては?」
楓「貴方はどうするんですか?」
武内P「いえ、私は電車で……」
楓「だったら、私も負けていられません」
武内P「……あの、何故張り合う必要が?」
422 = 413 :
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「あの、駅は逆方向では」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「……」
楓「ファンの方達と、笑顔で!」
武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」
423 = 413 :
武内P「しかし……風邪を引いてしまいます」
楓「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」
武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「此処は、ライトが暗すぎるわね」
武内P「……台風、ですから」
424 = 413 :
武内P「! すみません、携帯が……」
楓「はい、どうぞ」
武内P「……部長が、車で送ってくださると」
楓「!?」
武内P「……」
楓「!!?」
武内P「……お断り、しておきます」
楓「まあ、せっかくでしたのに……」
武内P「……」
425 = 413 :
武内P「……それでは、行きましょうか」
楓「ええ」
武内P・楓「……」
ズバンッ!
武内P「……一瞬、でしたね」
楓「……傘、壊れちゃいまいたね」
武内P・楓「……」
426 = 413 :
武内P「……やはり、タクシーを呼びましょう」
楓「それしか、無さそうですね」
武内P「料金は、私が出しますので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「いえ、あの、逆方向なので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「……」
427 = 413 :
武内P「それに、私の利用する駅は近いですし……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「料金は、私がおもちします」
武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「風が強くて、よく聞こえません」
428 = 413 :
・ ・ ・
武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」
楓「お手数をおかけしました」
武内P「……」
楓「……?」
武内P「っ……!」
ダッ!
楓「!? 待ってください!」
ダッ!
武内P「何故、追ってくるんですか!?」
楓「逃げるからです!」
429 = 413 :
・ ・ ・
楓「……ふぅ……ふぅ……!」
武内P「……高垣さん、タオルを」
楓「ありがとう……ふぅ……ございます」
武内P「あの、私は電車で帰りますから」
楓「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」
武内P「私のせい、ですか!?」
楓「それに、急に走って疲れちゃいました」
武内P「……!?」
430 = 413 :
楓「……」ジッ
武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」
楓「?」
武内P「私は電車で帰りますからね?」
楓「タクシーが来るのに、ですか?」
武内P「はい」
楓「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」
武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」
431 = 413 :
楓「雨に濡れて、一人で帰れだなんて……」
武内P「いえ、それは――」
楓「くしゃみ!」
武内P「? あの、今のは?」
楓「あっ、間違えちゃった」
武内P「?」
楓「はっくしょん!」
武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」
432 = 413 :
武内P「……わかりました。私も、タクシーで帰ります」
楓「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」
武内P「……最初から、素直だったつもりです」
楓「あっ、タクシーが来ましたよ」
武内P「……」
楓「これで、やっと帰れますね」
武内P「……そう、ですね」
433 = 413 :
楓「それじゃあ、先に乗ってください」
武内P「……」
楓「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」
武内P「……」
楓「……」
武内P「いえ、そんな事はありません」
楓「はい、先に乗ってください」
武内P「……」
434 = 413 :
武内P「……」
楓「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」
武内P「……何故、でしょうか」
楓「私、一度やってみたかったんです」
武内P「……何をですか」
楓「前の男を追ってください、って」
武内P「……!」
楓「うふふっ♪」
435 = 413 :
ガチャッ
楓「はい、乗ってください」
武内P「……」
楓「……!」
ぐいぐい!
武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」
楓「よろしい」
武内P「……」
バタンッ
436 = 413 :
武内P「……では、先に高垣さんの自宅に向かいましょう」
楓「あっ、少し寄る所が」
武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」
楓「ありがとうございます」
楓「運転手さん、この住所にお願いします」
武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」
楓「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」
武内P「? どこに行くつもりで――」
武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」
楓「タイ風、ですよ」
おわり
437 = 413 :
忘れてたので書きます
438 = 413 :
「っ……!?」
ガン、ガンとバスの車体にまた衝撃が加えられた。
その衝撃を与えてくる影の正体は――怪人。
頭部がウサギ、と言えば可愛らしいが、
その顔は醜く、残忍な性格を隠すことなくこれでもかと表している。
「……」
プロデューサーさんが、ゆっくりと立ち上がった。
揺れる車内を悠然と歩く姿に、私達は息を飲んだ。
「新田さん」
唐突にかけられた、声。
その声はいつものように低く、落ち着いている。
私達が何かした時の方が、焦ってるんじゃないかしら。
「は、はいっ!」
思考して、返事をするのが遅れてしまった。
きっと、プロデューサーさんは大事な事を言う。
プロジェクトのリーダーとして、聞き逃す訳にはいかない事を。
「私は、此処を離れます」
「離れるって……何を言ってるんですか?」
今も、バスは高速で走り続けている。
止まったら、ウサギの怪人によって私達は終わりだ。
だから、離れるなんて、出来ないはずなのに……。
「皆さんをお願いします」
そう言うと、プロデューサーさんは上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
439 = 413 :
「……」
プロデューサーさんの腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。
「私が、奴を倒します」
右のポケットからスマートフォンを取り出した。
ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
あの声は、確か……。
プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
言った。
『――START!』
プロデューサーさんの体を光が包み込んでいく。
光の粒子はやがて形を成していき、鎧を纏わせた。
鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。
「……」
だけど私は、確かにその向こう側に希望を見た。
440 = 413 :
「だ、だけど……相手は物凄い速さで走ってるんですよ!?」
今のプロデューサーさんは、とても強そうに見える。
けれど、あのウサギの怪人よりも早く走れるというのか。
あんな、高速で動く相手をどうやって……。
「はい。ですが――」
カツン、カツンと歩く音が車内に響く。
私達は、息を飲んで続くプロデューサーさんの言葉を待った。
「――私一人では、ありませんので」
プシュウ、と音を立ててバス前方の出入り口が開いた。
ウサギの怪人から逃げるため、景色が物凄い速さで流れていく。
プロデューサーさんは、
「ピニャコラッター!」
そう言うと、バスの車外へ躍り出た。
いくら鎧を着ているとは言え、この速さで車外に出たらただでは済まない。
そう思った私達の耳に届いた、低い、低い音声。
『ぴにゃぴっぴ』
大きな、黒い影。
その、巨大な黒い影はプロデューサーさんと地面の間に潜り込むと、
プロデューサーさんの体を乗せ、疾風のように走り出した。
『Unit debut!!』
441 = 413 :
・ ・ ・
「……」
吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。
「さあ、行きましょう」
『ぴにゃー』
私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
このマシンは、ただの大型のバイクではない。
人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。
「……!」
『ぴ~――……』
速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。
「ふっ!」
『――にゃ~!』
彼も、私も。
ターン終了と同時に、急加速。
地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。
「UUUUKYUUUUUUU!!」
私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、
「善処します!」
『ぴにゃっぴ!』
速度を緩めること無く、全力で突撃した。
442 = 413 :
「おおおおっ!」
『ぴにゃ~っ!』
高速で走る二つの物体の、正面衝突。
勝ったのは、
「GYUUUUUUUU!?」
私達だ。
当然の結果です。
何故なら、私達は一人ではないのだから。
「……!」
『ぴにゃっぴ!』
「GYUUUU!? GYUUUUUOO!?」
ピニャコラッターは、ウサギの怪人をその前方に乗せ、バスから引き離していく。
ウサギの怪人が暴れて脱出しようともがくが、それは叶わない。
「少し、お時間を頂けますか」
「GYUUUUU!? GYUUAAAA!?」
私の両手が、ウサギの怪人を捕らえて離さないからだ。
『ぴにゃっ!』
運転をピニャコラッターに任せ、距離を稼ぐ。
ここまで来れば、もう心配は無いだろうか。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
私の声を聞いたピニャコラッターは、壁を駆け登る。
私達は一塊となり、高速道路の外へと飛び出した。
443 = 413 :
一塊だった私達の影が、空中で二つに分かれる。
それは当然、私達と、ウサギの怪人にだ。
「……」
ピニャコラッターの上に立ち、彼を足場にして跳び、
「――企画!」
「GYUUUAAA!?」
『CooL!!』
ブルーの光を纏った右の脚をウサギ怪人の頭部に見舞う。
やはり、不安定な体勢で放った一撃では、あまり効果は望めない。
「――検討中です!」
「UUUKYUUAAA!?」
『Cute!!』
しかし、それでも私は追撃の手を緩める事はない。
ピンクの光を纏った拳をウサギ怪人の腹部に突き刺しつつ、地面に叩きつける。
落下の衝撃が合わさったそれでも、仕留めるには至らなかった。
「KYUUUUUUUUU!!」
「ぐおっ!?」
私の下で、ウサギ怪人が力を振り絞り、暴れた。
あの速度が出せるだけの脚だ。
その脚力は相当なもので、蹴り上げられた拍子に距離を空けられてしまう。
「――待ってください!」
しかし、ここで逃がすわけにはいかない。
ここで逃したら、いつ、またアイドル達にその牙を向けるかわからないのだから。
『Passion!!』
私に背を向けて逃走を図ろうとしたウサギ怪人の脚を
銃の形にしていた私の左手から放たれたイエローの光が撃ち抜いた。
444 = 413 :
「KYUUU……KYUUUUU!!」
それでも、奴は諦めなかった。
最初の時の速さは見る影もないが、それでも、走り出す。
一瞬、このまま逃してやろうと、そんな思いに駆られた。
「……」
だが、それは出来ない。
彼は怪人で、アイドルから笑顔を……その生命を奪おうとする者。
そして私は、そんな彼女達を守る……プロデューサーなのだから。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
呼ぶのが遅い、と言わんばかりに、ピニャコラッターが横に走り寄る。
その背に跨り、私達は一つとなる。
怪人を――倒すために。
『Tricoloooooor!!』
ピンク、ブルー、イエローの3つの光を纏った‘私’は、ウサギの怪人に突撃した。
3つの光の尾を引きながら、私はウサギの怪人を粒子にした感触を味わっていた。
『ぴにゃ~……』
そんな私に、ピニャコラッターが声をかけてくる。
彼のボディーを労るように撫でると、彼の鳴き声は止んだ。
なくのはやめろ、ピニャコラッター。
私達は、笑顔を守ったのだから。
445 = 413 :
・ ・ ・
「新田さん、ありがとうございました」
合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
だけど、その表情はなんだか……。
「いっ、いえ……」
「……」
プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?
「……」
顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。
「……新田さん」
「……」
教えてください、プロデューサーさん。
「笑顔です」
「っ!?」
思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。
「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」
だから、笑っていてください。
そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。
おわり
446 :
447 = 413 :
ライダー意識なので、目がこれのでっかい感じかなー、と!
ってかこの画像クッソカッコイイすなw
448 :
449 :
あの魔法少女たちを千佳が見たらどうなるんだろうね
450 :
書きます
武内P「そろそろ、寂しさが限界です」
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