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    元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」

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    401 = 375 :


    「どうした、何か可笑しいことでも?」


     すかさず、専務が私の笑いの理由を問うてくる。


    「いっ、いえ! 何でもないです!」


     そうは言ったものの、彼女の視線が私から外れる事は無い。


    「……」
    「……」


     絡み合う視線。
     私達魔法少女ユニットは、今までで最大のピンチを迎えていた。


    「……」


     そんな視界の端で、プロデューサーさんが体を小さくしているのが見えた。
     中腰の姿勢で、ゆっくりと、しかし一歩一歩確実に出入り口であるドアに向かっている。


    「――んー! んー!」
    「!? 離してください! 離してください、千川さん!」


     私は、そんなプロデューサーさんに駆け寄り、腰に抱きついた。
     上着を掴むだけでは逃げられてしまう。


    「痛っ!? あの、爪が! 爪が突き立てられて!」
    「んー! んー!」


     今の私に出来る、マジカルでも、プリティーでもない、全力の拘束。
     と言うか、普通、今のタイミングで逃げようとします!?


    「……」


     専務は、そんな暴れる私達の様子を冷静に見つめていた。
     その目尻にうっすら涙が浮かんでいるのは、見なかったことにしよう。

    402 = 375 :

      ・  ・  ・

    「……兎に角、今日は何も無かった。良いですね?」


     絞り出すような声。


    「「……はい」」


     疲れきった声。
     暴れたせいで私の髪は乱れ、プロデューサーさんはシャツのボタンが二つ程飛んだ。
     痛み分けというには、痛みが大きすぎた。


    「……」


     私は、魔法少女マジカルチッヒという事が知られ、変身中の全裸も見られた。


    「……」


     専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。


    「……」


     プロデューサーさんは、大きな秘密を二つ抱える事となった。
     魔法少女二人の正体を知るのは、どんな気持ちなのだろう。
     気にはなるが、それを聞く勇気は私にはない。


    「それでは……私は、これで失礼します」


     今度は、誰もプロデューサーさんを止めない。
     そして、私もそれに続こうと、ソファーから立ち上がり――


    「待ちたまえ。チッヒ、キミにはまだ話がある」
    「……!?」


     ――かけた時、専務……いや、ミッシーがそれを止めた。
     多分、いや、絶対……プリティーで笑ったことを根に持ってるんだわ。
     ああ……今日中に帰れるかしら、私。

    403 :

    もっちー辺りがやらかしてもおかしくないネタだなぁ

    404 = 375 :

    誤)> 専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。

    正)> 専務は、魔法少女プリティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。

    405 = 375 :

      ・  ・  ・

    「……」


     私は、二人の魔法……少女、はい、魔法少女の正体を知ってしまった。
     それは、不幸な事故であり、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
     今後は、迂闊に路地裏に入るのは避けるべきだろう。


    「……」


     上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
     シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。


    「……」


     彼女達は、平和を守るために戦っているのだ。
     ……そう、


    「――笑顔のために」


     右のポケットからスマートフォンを取り出す。
     そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
     流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


     ――3――4――6!



    『LIVE――』



     スマートフォンから、二人分の女性の声が聴こえる。
     そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



    「変身ッ!」



     私も、私の戦いに身を投じるため、変身した。



    『――START!』



    おわり

    406 = 375 :

    誤)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。

    正)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が吹くと少し寒い。

    407 = 375 :

    眠気で誤字が多すぎるので寝ます
    おやすみなさい

    408 = 390 :

    同じ世界線だったかw

    409 = 389 :

    繋がった

    410 :

    子供向け映画の抱きあわせみたいだ

    411 :

    >>410
    戦隊のメンバーが決まったらやる予定です


    申し訳ない
    昔、自分の書いたものを読んだら止まらなくなりました
    結構な長編なので、今日は書くかわからないです

    412 :

    上様期待

    413 :

    甘いの書きます

    414 = 413 :


    「……」


     シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
     彼は、自分のデスクに座りながら眠っている。
     きっと、ちひろさんがかけてくれたのよね、あの毛布。


    「……」


     起こさないように、そっとドアを閉める。
     だって、この人が居眠りをするだなんて、本当に珍しいんですもの。
     ドアの開け閉めの音で起こしちゃうだなんて、勿体無いわよね。


    「……うふふっ」


     どうやって驚かせちゃおうかしら。
     無難に、大きな声でワッと?
     それとも、毛布をバサッと取って?
     ああ、ダメ……考えただけで、ワクワクしちゃうわ!


    「……」


     すぅすぅと寝息を立てる彼に、忍び足で近寄る。
     ぐるりと回り込んで、すぐ、手を触れられる所までたどり着いた。


    「……」


     彼は、まだ起きない。
     

    415 = 413 :


    「……」


     本当に、よく眠ってるわね。
     もしかして、アナタの目付きが良くないのって、
    そうやって寝ててちゃんとベッドで寝てないから?
     だとしたら、ちゃんと寝たらどんな顔になるのかしら。
     目が、キラキラしちゃったりするの?


    「……」


     つい、と顔を近づけて、彼の寝顔を間近で観察する。
     いつもの、眉間により気味な皺は無く、まるで子供みたいな寝顔。
     それがとっても可愛らしくて、母性本能をくすぐられてしまう。
     あっ、くすぐって起こすのも面白そう!


    「……」


     くすぐったら、どういう顔で笑うのかしら。
     アナタの大笑いする姿なんて、見たことがないもの。
     穏やかな笑みか、噛み殺すような笑みだけ。
     大口を開けて笑ったら……低い声も相まって、悪役みたいになっちゃうかしら?


    「……」


     彼が、自分では気付いてないだろう頭頂部の寝癖。
     それを、人差し指でピコピコと揺らしてみる。
     それでも、彼は起きない。


    「……」


     いつもだったら、この段階で起きるんですけど、ね。
     これはもう、もっとイタズラする他に無いと思うんです。

    416 = 413 :


    「……」


     デスクの横にしゃがみこんで、寝ている彼を目線を合わせる。
     と言っても、目を開けてるのは私だけ。
     一方的に、私がこの人を観察している。


    「……」


     じい、と睨みつけてみる。
     ぷん、と怒った顔をしてみる。
     しゅん、と悲しい顔をしてみる。


    「……」


     だけど、彼は目を開けない。
     それは当然よね、だって、寝てるんですもの。
     だから、ふにゃっ、と変な顔をしてみる。


    「……」


     ――が、すぐにやめた。
     寝たふりをしているんじゃないかと思ったけど、そうじゃないみたい。
     私のあんな顔を見たら、この人は絶対に反応を示す。
     すぐにやめたのは……もし、あの顔をしている時に目を覚まされたら、
    それこそどんな顔をしていいかわからなくなっちゃうから。


    「……」


     高垣楓の、貴重な変顔を見逃しちゃいましたね。
     ちょっとアレな、レアな顔でしたよ。

    417 = 413 :


    「……」


     どうしたら、この人は驚くかしら。
     せっかくだから、この状況じゃないと出来ない驚かせ方をしたいわ。
     ワッと驚かせるのは、いつだって出来るものね。
     ……やった事は、無いけれど。


    「……」


     そっと、彼の肩にかかっている毛布をはいでいく。
     思いもよらず、その毛布の手触りが良くて、ホゥ、となった。
     大柄な彼のためか、毛布は大きく、かなりの余裕があった。


    「……」


     お邪魔しま~す。
     と、私は言葉に出さずに彼に断りを入れた。
     口の動きはちゃんと「お邪魔します」としてたんだし、見てないこの人が悪い。
     アイドルを見るのがプロデューサーの仕事でしょう?
     居眠りしてないで、仕事してください!


    「……」


     座る彼の隣にしゃがみ、同じ毛布にくるまっている。
     だけど、離れていてはせっかくの毛布が台無しだ。
     だって、私と貴方の距離が空いてたら、冷たい空気が入り込んじゃうから。


    「……」


     そうならない様、彼に体を密着させる。
     スーツ越しに感じる、体温。
     近づく事で、より鮮明に聞こえるようになった彼の寝息。


    「……」


     まだ、彼は目を覚まさない。

    418 = 413 :


    「……」


     こんなに無防備で、この人は大丈夫なのかしら。
     もしも私が悪い人だったら、大変な事になってましたよ。
     わかってますか?


    「……」


     間近で睨みつけても、彼の反応は無い。
     その事が、ちょっぴり寂しい。
     だって、この人は私が何かしたら、必ず反応してくれるから。
     心からの賞賛や、諦めたようなため息。
     そして、極々稀にだけど……お説教も。


    「……」


     つん、と人差し指で彼の鼻をつついてみる。
     だけど、本当によく眠っているのか、反応は無い。
     つんつん、と二回つつく。
     それでも、彼は眠ったまま。


    「……」


     鼻をつまむのは……それは、ちょっと可哀想よね。
     絶対驚くとは思うんだけど、まだ、もうちょっと彼を眺めていよう。
     不器用で、真っすぐで、とっても可愛らしい寝顔の彼を。


    「……」


     カチリ、コチリと時計の針が時間が進んでいるのを告げている。
     それなのに、何故かこの穏やかな時間は、止まっているように思える。

    419 = 413 :


    「……」


     だけど、そろそろ彼を起こしてあげなくっちゃ。
     こんな体勢で寝てたら体が痛くなっちゃうし、風邪を引いちゃうもの。
     それに、イタズラをして起こすと決めてたし、ね。


    「うふふっ」


     思わず零れた笑い声。
     それが、零れ落ちないように口を両手で塞いだ。
     あっ、良い事を思いついちゃった。


    「……」


     そっと、彼の横顔に顔を近づけていく。
     普通は立場が逆だけど、私はしゃがんで、座ってるから逆でも良いですよね。
     ……ん? なんだかおかしいような、そうでもないような?


    「……」


     居眠りをしちゃうような王子様には、お仕置きです。
     そう思う私は、今、どんな顔をしているのだろうか。
     わからないけれど、彼が起きた時に言う言葉はもう、決めてある。


    「……」


     ゆっくりと、彼の頬に唇を近づけていく。


    「……起きてくださ~い」


     こうすると目覚めるのが、掟、でしょう?



    おわり

    420 = 413 :

    お察しの方もいらっしゃいましたが、あの絵師さんの絵が大好きなのです



    武内P「台風、ですね」

    421 = 413 :

    「はい、とても風が強くて……」

    武内P「タクシーを呼ばれては?」

    「貴方はどうするんですか?」

    武内P「いえ、私は電車で……」

    「だったら、私も負けていられません」

    武内P「……あの、何故張り合う必要が?」

    422 = 413 :

    「私は、共に歩んでいこうと思います」

    武内P「あの、駅は逆方向では」

    「……」

    バシバシ!

    武内P「……すみません」

    「私は、共に歩んでいこうと思います」

    武内P「……」

    「ファンの方達と、笑顔で!」

    武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」

    423 = 413 :

    武内P「しかし……風邪を引いてしまいます」

    「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」

    武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」

    「……」

    バシバシ!

    武内P「……すみません」

    「此処は、ライトが暗すぎるわね」

    武内P「……台風、ですから」

    424 = 413 :

    武内P「! すみません、携帯が……」

    「はい、どうぞ」

    武内P「……部長が、車で送ってくださると」

    「!?」

    武内P「……」

    「!!?」

    武内P「……お断り、しておきます」

    「まあ、せっかくでしたのに……」

    武内P「……」

    425 = 413 :

    武内P「……それでは、行きましょうか」

    「ええ」

    武内P・楓「……」


    ズバンッ!


    武内P「……一瞬、でしたね」

    「……傘、壊れちゃいまいたね」

    武内P・楓「……」

    426 = 413 :

    武内P「……やはり、タクシーを呼びましょう」

    「それしか、無さそうですね」

    武内P「料金は、私が出しますので……」

    「まあ、送ってくださるんですか?」

    武内P「いえ、あの、逆方向なので……」

    「まあ、送ってくださるんですか?」

    武内P「……」

    427 = 413 :

    武内P「それに、私の利用する駅は近いですし……」

    「駅? え、聞こえません」

    武内P「……」

    「料金は、私がおもちします」

    武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」

    「駅? え、聞こえません」

    武内P「……」

    「風が強くて、よく聞こえません」

    428 = 413 :

      ・  ・  ・

    武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」

    「お手数をおかけしました」

    武内P「……」

    「……?」


    武内P「っ……!」

    ダッ!


    「!? 待ってください!」

    ダッ!


    武内P「何故、追ってくるんですか!?」

    「逃げるからです!」

    429 = 413 :

      ・  ・  ・

    「……ふぅ……ふぅ……!」

    武内P「……高垣さん、タオルを」

    「ありがとう……ふぅ……ございます」

    武内P「あの、私は電車で帰りますから」

    「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」

    武内P「私のせい、ですか!?」

    「それに、急に走って疲れちゃいました」

    武内P「……!?」

    430 = 413 :

    「……」ジッ

    武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」

    「?」

    武内P「私は電車で帰りますからね?」

    「タクシーが来るのに、ですか?」

    武内P「はい」

    「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」

    武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」

    431 = 413 :

    「雨に濡れて、一人で帰れだなんて……」

    武内P「いえ、それは――」

    「くしゃみ!」

    武内P「? あの、今のは?」

    「あっ、間違えちゃった」

    武内P「?」

    「はっくしょん!」

    武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」

    432 = 413 :

    武内P「……わかりました。私も、タクシーで帰ります」

    「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」

    武内P「……最初から、素直だったつもりです」

    「あっ、タクシーが来ましたよ」

    武内P「……」

    「これで、やっと帰れますね」

    武内P「……そう、ですね」

    433 = 413 :

    「それじゃあ、先に乗ってください」

    武内P「……」

    「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」

    武内P「……」

    「……」

    武内P「いえ、そんな事はありません」

    「はい、先に乗ってください」

    武内P「……」

    434 = 413 :

    武内P「……」

    「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」

    武内P「……何故、でしょうか」

    「私、一度やってみたかったんです」

    武内P「……何をですか」

    「前の男を追ってください、って」

    武内P「……!」

    「うふふっ♪」

    435 = 413 :

    ガチャッ

    「はい、乗ってください」

    武内P「……」

    「……!」

    ぐいぐい!

    武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」

    「よろしい」

    武内P「……」

    バタンッ

    436 = 413 :

    武内P「……では、先に高垣さんの自宅に向かいましょう」

    「あっ、少し寄る所が」

    武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」

    「ありがとうございます」


    「運転手さん、この住所にお願いします」


    武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」

    「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」

    武内P「? どこに行くつもりで――」


    武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」


    「タイ風、ですよ」



    おわり

    437 = 413 :

    忘れてたので書きます

    438 = 413 :


    「っ……!?」


     ガン、ガンとバスの車体にまた衝撃が加えられた。
     その衝撃を与えてくる影の正体は――怪人。
     頭部がウサギ、と言えば可愛らしいが、
    その顔は醜く、残忍な性格を隠すことなくこれでもかと表している。


    「……」


     プロデューサーさんが、ゆっくりと立ち上がった。
     揺れる車内を悠然と歩く姿に、私達は息を飲んだ。


    「新田さん」


     唐突にかけられた、声。
     その声はいつものように低く、落ち着いている。
     私達が何かした時の方が、焦ってるんじゃないかしら。


    「は、はいっ!」


     思考して、返事をするのが遅れてしまった。
     きっと、プロデューサーさんは大事な事を言う。
     プロジェクトのリーダーとして、聞き逃す訳にはいかない事を。


    「私は、此処を離れます」
    「離れるって……何を言ってるんですか?」


     今も、バスは高速で走り続けている。
     止まったら、ウサギの怪人によって私達は終わりだ。
     だから、離れるなんて、出来ないはずなのに……。


    「皆さんをお願いします」


     そう言うと、プロデューサーさんは上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。

    439 = 413 :


    「……」


     プロデューサーさんの腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。
     

    「私が、奴を倒します」


     右のポケットからスマートフォンを取り出した。
     ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
     流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


     ――3――4――6!



    『LIVE――』



     スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
     あの声は、確か……。
     プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



    「変身ッ!」



     言った。



    『――START!』



     プロデューサーさんの体を光が包み込んでいく。
     光の粒子はやがて形を成していき、鎧を纏わせた。


     鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
     すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
    ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
     プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
    目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。


    「……」


     だけど私は、確かにその向こう側に希望を見た。

    440 = 413 :


    「だ、だけど……相手は物凄い速さで走ってるんですよ!?」


     今のプロデューサーさんは、とても強そうに見える。
     けれど、あのウサギの怪人よりも早く走れるというのか。
     あんな、高速で動く相手をどうやって……。


    「はい。ですが――」


     カツン、カツンと歩く音が車内に響く。
     私達は、息を飲んで続くプロデューサーさんの言葉を待った。


    「――私一人では、ありませんので」


     プシュウ、と音を立ててバス前方の出入り口が開いた。
     ウサギの怪人から逃げるため、景色が物凄い速さで流れていく。
     プロデューサーさんは、



    「ピニャコラッター!」



     そう言うと、バスの車外へ躍り出た。
     いくら鎧を着ているとは言え、この速さで車外に出たらただでは済まない。
     そう思った私達の耳に届いた、低い、低い音声。



    『ぴにゃぴっぴ』



     大きな、黒い影。
     その、巨大な黒い影はプロデューサーさんと地面の間に潜り込むと、
    プロデューサーさんの体を乗せ、疾風のように走り出した。



    『Unit debut!!』

    441 = 413 :

      ・  ・  ・

    「……」


     吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
     ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
     エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。


    「さあ、行きましょう」
    『ぴにゃー』


     私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
     このマシンは、ただの大型のバイクではない。
     人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。


    「……!」
    『ぴ~――……』


     速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
     スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
     それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。


    「ふっ!」
    『――にゃ~!』


     彼も、私も。
     ターン終了と同時に、急加速。
     地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
     高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。



    「UUUUKYUUUUUUU!!」



     私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、



    「善処します!」
    『ぴにゃっぴ!』



     速度を緩めること無く、全力で突撃した。

    442 = 413 :


    「おおおおっ!」
    『ぴにゃ~っ!』


     高速で走る二つの物体の、正面衝突。
     勝ったのは、



    「GYUUUUUUUU!?」



     私達だ。
     当然の結果です。
     何故なら、私達は一人ではないのだから。


    「……!」
    『ぴにゃっぴ!』
    「GYUUUU!? GYUUUUUOO!?」


     ピニャコラッターは、ウサギの怪人をその前方に乗せ、バスから引き離していく。
     ウサギの怪人が暴れて脱出しようともがくが、それは叶わない。


    「少し、お時間を頂けますか」
    「GYUUUUU!? GYUUAAAA!?」


     私の両手が、ウサギの怪人を捕らえて離さないからだ。


    『ぴにゃっ!』


     運転をピニャコラッターに任せ、距離を稼ぐ。
     ここまで来れば、もう心配は無いだろうか。



    「ピニャコラッター!」
    『ぴにゃぴっぴ』



     私の声を聞いたピニャコラッターは、壁を駆け登る。
     私達は一塊となり、高速道路の外へと飛び出した。

    443 = 413 :


     一塊だった私達の影が、空中で二つに分かれる。
     それは当然、私達と、ウサギの怪人にだ。


    「……」


     ピニャコラッターの上に立ち、彼を足場にして跳び、


    「――企画!」
    「GYUUUAAA!?」


    『CooL!!』


     ブルーの光を纏った右の脚をウサギ怪人の頭部に見舞う。
     やはり、不安定な体勢で放った一撃では、あまり効果は望めない。


    「――検討中です!」
    「UUUKYUUAAA!?」


    『Cute!!』


     しかし、それでも私は追撃の手を緩める事はない。
     ピンクの光を纏った拳をウサギ怪人の腹部に突き刺しつつ、地面に叩きつける。
     落下の衝撃が合わさったそれでも、仕留めるには至らなかった。


    「KYUUUUUUUUU!!」
    「ぐおっ!?」


     私の下で、ウサギ怪人が力を振り絞り、暴れた。
     あの速度が出せるだけの脚だ。
     その脚力は相当なもので、蹴り上げられた拍子に距離を空けられてしまう。


    「――待ってください!」


     しかし、ここで逃がすわけにはいかない。
     ここで逃したら、いつ、またアイドル達にその牙を向けるかわからないのだから。


    『Passion!!』


     私に背を向けて逃走を図ろうとしたウサギ怪人の脚を
    銃の形にしていた私の左手から放たれたイエローの光が撃ち抜いた。

    444 = 413 :


    「KYUUU……KYUUUUU!!」


     それでも、奴は諦めなかった。
     最初の時の速さは見る影もないが、それでも、走り出す。
     一瞬、このまま逃してやろうと、そんな思いに駆られた。


    「……」


     だが、それは出来ない。
     彼は怪人で、アイドルから笑顔を……その生命を奪おうとする者。
     そして私は、そんな彼女達を守る……プロデューサーなのだから。


    「ピニャコラッター!」
    『ぴにゃぴっぴ』


     呼ぶのが遅い、と言わんばかりに、ピニャコラッターが横に走り寄る。
     その背に跨り、私達は一つとなる。
     怪人を――倒すために。


    『Tricoloooooor!!』


     ピンク、ブルー、イエローの3つの光を纏った‘私’は、ウサギの怪人に突撃した。
     3つの光の尾を引きながら、私はウサギの怪人を粒子にした感触を味わっていた。


    『ぴにゃ~……』


     そんな私に、ピニャコラッターが声をかけてくる。
     彼のボディーを労るように撫でると、彼の鳴き声は止んだ。


     なくのはやめろ、ピニャコラッター。


     私達は、笑顔を守ったのだから。

    445 = 413 :

      ・  ・  ・

    「新田さん、ありがとうございました」


     合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
     それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
     だけど、その表情はなんだか……。


    「いっ、いえ……」
    「……」


     プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
     それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。


    「こちらこそ、ありがとうございました!」


     でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
     アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
     こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?


    「……」


     顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
     私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。


    「……新田さん」
    「……」


     教えてください、プロデューサーさん。


    「笑顔です」
    「っ!?」


     思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。


    「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」


     だから、笑っていてください。
     そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。



    おわり 

    446 :


    猫っぽいフルフェイススーツとなるとこんなんだろうか

    447 = 413 :

    ライダー意識なので、目がこれのでっかい感じかなー、と!
    ってかこの画像クッソカッコイイすなw

    448 :

    フルフェイススーツっていいよね

    449 :

    あの魔法少女たちを千佳が見たらどうなるんだろうね

    450 :

    書きます


    武内P「そろそろ、寂しさが限界です」


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