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元スレ武内P「起きたらひどい事になっていました」
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「どうした、何か可笑しいことでも?」
すかさず、専務が私の笑いの理由を問うてくる。
「いっ、いえ! 何でもないです!」
そうは言ったものの、彼女の視線が私から外れる事は無い。
「……」
「……」
絡み合う視線。
私達魔法少女ユニットは、今までで最大のピンチを迎えていた。
「……」
そんな視界の端で、プロデューサーさんが体を小さくしているのが見えた。
中腰の姿勢で、ゆっくりと、しかし一歩一歩確実に出入り口であるドアに向かっている。
「――んー! んー!」
「!? 離してください! 離してください、千川さん!」
私は、そんなプロデューサーさんに駆け寄り、腰に抱きついた。
上着を掴むだけでは逃げられてしまう。
「痛っ!? あの、爪が! 爪が突き立てられて!」
「んー! んー!」
今の私に出来る、マジカルでも、プリティーでもない、全力の拘束。
と言うか、普通、今のタイミングで逃げようとします!?
「……」
専務は、そんな暴れる私達の様子を冷静に見つめていた。
その目尻にうっすら涙が浮かんでいるのは、見なかったことにしよう。
・ ・ ・
「……兎に角、今日は何も無かった。良いですね?」
絞り出すような声。
「「……はい」」
疲れきった声。
暴れたせいで私の髪は乱れ、プロデューサーさんはシャツのボタンが二つ程飛んだ。
痛み分けというには、痛みが大きすぎた。
「……」
私は、魔法少女マジカルチッヒという事が知られ、変身中の全裸も見られた。
「……」
専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
「……」
プロデューサーさんは、大きな秘密を二つ抱える事となった。
魔法少女二人の正体を知るのは、どんな気持ちなのだろう。
気にはなるが、それを聞く勇気は私にはない。
「それでは……私は、これで失礼します」
今度は、誰もプロデューサーさんを止めない。
そして、私もそれに続こうと、ソファーから立ち上がり――
「待ちたまえ。チッヒ、キミにはまだ話がある」
「……!?」
――かけた時、専務……いや、ミッシーがそれを止めた。
多分、いや、絶対……プリティーで笑ったことを根に持ってるんだわ。
ああ……今日中に帰れるかしら、私。
「……兎に角、今日は何も無かった。良いですね?」
絞り出すような声。
「「……はい」」
疲れきった声。
暴れたせいで私の髪は乱れ、プロデューサーさんはシャツのボタンが二つ程飛んだ。
痛み分けというには、痛みが大きすぎた。
「……」
私は、魔法少女マジカルチッヒという事が知られ、変身中の全裸も見られた。
「……」
専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
「……」
プロデューサーさんは、大きな秘密を二つ抱える事となった。
魔法少女二人の正体を知るのは、どんな気持ちなのだろう。
気にはなるが、それを聞く勇気は私にはない。
「それでは……私は、これで失礼します」
今度は、誰もプロデューサーさんを止めない。
そして、私もそれに続こうと、ソファーから立ち上がり――
「待ちたまえ。チッヒ、キミにはまだ話がある」
「……!?」
――かけた時、専務……いや、ミッシーがそれを止めた。
多分、いや、絶対……プリティーで笑ったことを根に持ってるんだわ。
ああ……今日中に帰れるかしら、私。
誤)> 専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
正)> 専務は、魔法少女プリティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
正)> 専務は、魔法少女プリティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。
・ ・ ・
「……」
私は、二人の魔法……少女、はい、魔法少女の正体を知ってしまった。
それは、不幸な事故であり、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
今後は、迂闊に路地裏に入るのは避けるべきだろう。
「……」
上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。
「……」
彼女達は、平和を守るために戦っているのだ。
……そう、
「――笑顔のために」
右のポケットからスマートフォンを取り出す。
そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、二人分の女性の声が聴こえる。
そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
私も、私の戦いに身を投じるため、変身した。
『――START!』
おわり
「……」
私は、二人の魔法……少女、はい、魔法少女の正体を知ってしまった。
それは、不幸な事故であり、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
今後は、迂闊に路地裏に入るのは避けるべきだろう。
「……」
上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。
「……」
彼女達は、平和を守るために戦っているのだ。
……そう、
「――笑顔のために」
右のポケットからスマートフォンを取り出す。
そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、二人分の女性の声が聴こえる。
そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
私も、私の戦いに身を投じるため、変身した。
『――START!』
おわり
誤)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。
正)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が吹くと少し寒い。
正)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が吹くと少し寒い。
「……」
シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
彼は、自分のデスクに座りながら眠っている。
きっと、ちひろさんがかけてくれたのよね、あの毛布。
「……」
起こさないように、そっとドアを閉める。
だって、この人が居眠りをするだなんて、本当に珍しいんですもの。
ドアの開け閉めの音で起こしちゃうだなんて、勿体無いわよね。
「……うふふっ」
どうやって驚かせちゃおうかしら。
無難に、大きな声でワッと?
それとも、毛布をバサッと取って?
ああ、ダメ……考えただけで、ワクワクしちゃうわ!
「……」
すぅすぅと寝息を立てる彼に、忍び足で近寄る。
ぐるりと回り込んで、すぐ、手を触れられる所までたどり着いた。
「……」
彼は、まだ起きない。
「……」
本当に、よく眠ってるわね。
もしかして、アナタの目付きが良くないのって、
そうやって寝ててちゃんとベッドで寝てないから?
だとしたら、ちゃんと寝たらどんな顔になるのかしら。
目が、キラキラしちゃったりするの?
「……」
つい、と顔を近づけて、彼の寝顔を間近で観察する。
いつもの、眉間により気味な皺は無く、まるで子供みたいな寝顔。
それがとっても可愛らしくて、母性本能をくすぐられてしまう。
あっ、くすぐって起こすのも面白そう!
「……」
くすぐったら、どういう顔で笑うのかしら。
アナタの大笑いする姿なんて、見たことがないもの。
穏やかな笑みか、噛み殺すような笑みだけ。
大口を開けて笑ったら……低い声も相まって、悪役みたいになっちゃうかしら?
「……」
彼が、自分では気付いてないだろう頭頂部の寝癖。
それを、人差し指でピコピコと揺らしてみる。
それでも、彼は起きない。
「……」
いつもだったら、この段階で起きるんですけど、ね。
これはもう、もっとイタズラする他に無いと思うんです。
「……」
デスクの横にしゃがみこんで、寝ている彼を目線を合わせる。
と言っても、目を開けてるのは私だけ。
一方的に、私がこの人を観察している。
「……」
じい、と睨みつけてみる。
ぷん、と怒った顔をしてみる。
しゅん、と悲しい顔をしてみる。
「……」
だけど、彼は目を開けない。
それは当然よね、だって、寝てるんですもの。
だから、ふにゃっ、と変な顔をしてみる。
「……」
――が、すぐにやめた。
寝たふりをしているんじゃないかと思ったけど、そうじゃないみたい。
私のあんな顔を見たら、この人は絶対に反応を示す。
すぐにやめたのは……もし、あの顔をしている時に目を覚まされたら、
それこそどんな顔をしていいかわからなくなっちゃうから。
「……」
高垣楓の、貴重な変顔を見逃しちゃいましたね。
ちょっとアレな、レアな顔でしたよ。
「……」
どうしたら、この人は驚くかしら。
せっかくだから、この状況じゃないと出来ない驚かせ方をしたいわ。
ワッと驚かせるのは、いつだって出来るものね。
……やった事は、無いけれど。
「……」
そっと、彼の肩にかかっている毛布をはいでいく。
思いもよらず、その毛布の手触りが良くて、ホゥ、となった。
大柄な彼のためか、毛布は大きく、かなりの余裕があった。
「……」
お邪魔しま~す。
と、私は言葉に出さずに彼に断りを入れた。
口の動きはちゃんと「お邪魔します」としてたんだし、見てないこの人が悪い。
アイドルを見るのがプロデューサーの仕事でしょう?
居眠りしてないで、仕事してください!
「……」
座る彼の隣にしゃがみ、同じ毛布にくるまっている。
だけど、離れていてはせっかくの毛布が台無しだ。
だって、私と貴方の距離が空いてたら、冷たい空気が入り込んじゃうから。
「……」
そうならない様、彼に体を密着させる。
スーツ越しに感じる、体温。
近づく事で、より鮮明に聞こえるようになった彼の寝息。
「……」
まだ、彼は目を覚まさない。
「……」
こんなに無防備で、この人は大丈夫なのかしら。
もしも私が悪い人だったら、大変な事になってましたよ。
わかってますか?
「……」
間近で睨みつけても、彼の反応は無い。
その事が、ちょっぴり寂しい。
だって、この人は私が何かしたら、必ず反応してくれるから。
心からの賞賛や、諦めたようなため息。
そして、極々稀にだけど……お説教も。
「……」
つん、と人差し指で彼の鼻をつついてみる。
だけど、本当によく眠っているのか、反応は無い。
つんつん、と二回つつく。
それでも、彼は眠ったまま。
「……」
鼻をつまむのは……それは、ちょっと可哀想よね。
絶対驚くとは思うんだけど、まだ、もうちょっと彼を眺めていよう。
不器用で、真っすぐで、とっても可愛らしい寝顔の彼を。
「……」
カチリ、コチリと時計の針が時間が進んでいるのを告げている。
それなのに、何故かこの穏やかな時間は、止まっているように思える。
「……」
だけど、そろそろ彼を起こしてあげなくっちゃ。
こんな体勢で寝てたら体が痛くなっちゃうし、風邪を引いちゃうもの。
それに、イタズラをして起こすと決めてたし、ね。
「うふふっ」
思わず零れた笑い声。
それが、零れ落ちないように口を両手で塞いだ。
あっ、良い事を思いついちゃった。
「……」
そっと、彼の横顔に顔を近づけていく。
普通は立場が逆だけど、私はしゃがんで、座ってるから逆でも良いですよね。
……ん? なんだかおかしいような、そうでもないような?
「……」
居眠りをしちゃうような王子様には、お仕置きです。
そう思う私は、今、どんな顔をしているのだろうか。
わからないけれど、彼が起きた時に言う言葉はもう、決めてある。
「……」
ゆっくりと、彼の頬に唇を近づけていく。
「……起きてくださ~い」
こうすると目覚めるのが、掟、でしょう?
おわり
お察しの方もいらっしゃいましたが、あの絵師さんの絵が大好きなのです
武内P「台風、ですね」
武内P「台風、ですね」
楓「はい、とても風が強くて……」
武内P「タクシーを呼ばれては?」
楓「貴方はどうするんですか?」
武内P「いえ、私は電車で……」
楓「だったら、私も負けていられません」
武内P「……あの、何故張り合う必要が?」
武内P「タクシーを呼ばれては?」
楓「貴方はどうするんですか?」
武内P「いえ、私は電車で……」
楓「だったら、私も負けていられません」
武内P「……あの、何故張り合う必要が?」
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「あの、駅は逆方向では」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「……」
楓「ファンの方達と、笑顔で!」
武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」
武内P「あの、駅は逆方向では」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「……」
楓「ファンの方達と、笑顔で!」
武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」
武内P「しかし……風邪を引いてしまいます」
楓「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」
武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「此処は、ライトが暗すぎるわね」
武内P「……台風、ですから」
楓「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」
武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「此処は、ライトが暗すぎるわね」
武内P「……台風、ですから」
武内P「! すみません、携帯が……」
楓「はい、どうぞ」
武内P「……部長が、車で送ってくださると」
楓「!?」
武内P「……」
楓「!!?」
武内P「……お断り、しておきます」
楓「まあ、せっかくでしたのに……」
武内P「……」
楓「はい、どうぞ」
武内P「……部長が、車で送ってくださると」
楓「!?」
武内P「……」
楓「!!?」
武内P「……お断り、しておきます」
楓「まあ、せっかくでしたのに……」
武内P「……」
武内P「……それでは、行きましょうか」
楓「ええ」
武内P・楓「……」
ズバンッ!
武内P「……一瞬、でしたね」
楓「……傘、壊れちゃいまいたね」
武内P・楓「……」
楓「ええ」
武内P・楓「……」
ズバンッ!
武内P「……一瞬、でしたね」
楓「……傘、壊れちゃいまいたね」
武内P・楓「……」
武内P「……やはり、タクシーを呼びましょう」
楓「それしか、無さそうですね」
武内P「料金は、私が出しますので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「いえ、あの、逆方向なので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「……」
楓「それしか、無さそうですね」
武内P「料金は、私が出しますので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「いえ、あの、逆方向なので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「……」
武内P「それに、私の利用する駅は近いですし……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「料金は、私がおもちします」
武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「風が強くて、よく聞こえません」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「料金は、私がおもちします」
武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「風が強くて、よく聞こえません」
・ ・ ・
武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」
楓「お手数をおかけしました」
武内P「……」
楓「……?」
武内P「っ……!」
ダッ!
楓「!? 待ってください!」
ダッ!
武内P「何故、追ってくるんですか!?」
楓「逃げるからです!」
武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」
楓「お手数をおかけしました」
武内P「……」
楓「……?」
武内P「っ……!」
ダッ!
楓「!? 待ってください!」
ダッ!
武内P「何故、追ってくるんですか!?」
楓「逃げるからです!」
・ ・ ・
楓「……ふぅ……ふぅ……!」
武内P「……高垣さん、タオルを」
楓「ありがとう……ふぅ……ございます」
武内P「あの、私は電車で帰りますから」
楓「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」
武内P「私のせい、ですか!?」
楓「それに、急に走って疲れちゃいました」
武内P「……!?」
楓「……ふぅ……ふぅ……!」
武内P「……高垣さん、タオルを」
楓「ありがとう……ふぅ……ございます」
武内P「あの、私は電車で帰りますから」
楓「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」
武内P「私のせい、ですか!?」
楓「それに、急に走って疲れちゃいました」
武内P「……!?」
楓「……」ジッ
武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」
楓「?」
武内P「私は電車で帰りますからね?」
楓「タクシーが来るのに、ですか?」
武内P「はい」
楓「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」
武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」
武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」
楓「?」
武内P「私は電車で帰りますからね?」
楓「タクシーが来るのに、ですか?」
武内P「はい」
楓「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」
武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」
楓「雨に濡れて、一人で帰れだなんて……」
武内P「いえ、それは――」
楓「くしゃみ!」
武内P「? あの、今のは?」
楓「あっ、間違えちゃった」
武内P「?」
楓「はっくしょん!」
武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」
武内P「いえ、それは――」
楓「くしゃみ!」
武内P「? あの、今のは?」
楓「あっ、間違えちゃった」
武内P「?」
楓「はっくしょん!」
武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」
武内P「……わかりました。私も、タクシーで帰ります」
楓「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」
武内P「……最初から、素直だったつもりです」
楓「あっ、タクシーが来ましたよ」
武内P「……」
楓「これで、やっと帰れますね」
武内P「……そう、ですね」
楓「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」
武内P「……最初から、素直だったつもりです」
楓「あっ、タクシーが来ましたよ」
武内P「……」
楓「これで、やっと帰れますね」
武内P「……そう、ですね」
楓「それじゃあ、先に乗ってください」
武内P「……」
楓「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」
武内P「……」
楓「……」
武内P「いえ、そんな事はありません」
楓「はい、先に乗ってください」
武内P「……」
武内P「……」
楓「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」
武内P「……」
楓「……」
武内P「いえ、そんな事はありません」
楓「はい、先に乗ってください」
武内P「……」
武内P「……」
楓「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」
武内P「……何故、でしょうか」
楓「私、一度やってみたかったんです」
武内P「……何をですか」
楓「前の男を追ってください、って」
武内P「……!」
楓「うふふっ♪」
楓「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」
武内P「……何故、でしょうか」
楓「私、一度やってみたかったんです」
武内P「……何をですか」
楓「前の男を追ってください、って」
武内P「……!」
楓「うふふっ♪」
ガチャッ
楓「はい、乗ってください」
武内P「……」
楓「……!」
ぐいぐい!
武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」
楓「よろしい」
武内P「……」
バタンッ
楓「はい、乗ってください」
武内P「……」
楓「……!」
ぐいぐい!
武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」
楓「よろしい」
武内P「……」
バタンッ
武内P「……では、先に高垣さんの自宅に向かいましょう」
楓「あっ、少し寄る所が」
武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」
楓「ありがとうございます」
楓「運転手さん、この住所にお願いします」
武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」
楓「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」
武内P「? どこに行くつもりで――」
武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」
楓「タイ風、ですよ」
おわり
楓「あっ、少し寄る所が」
武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」
楓「ありがとうございます」
楓「運転手さん、この住所にお願いします」
武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」
楓「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」
武内P「? どこに行くつもりで――」
武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」
楓「タイ風、ですよ」
おわり
「っ……!?」
ガン、ガンとバスの車体にまた衝撃が加えられた。
その衝撃を与えてくる影の正体は――怪人。
頭部がウサギ、と言えば可愛らしいが、
その顔は醜く、残忍な性格を隠すことなくこれでもかと表している。
「……」
プロデューサーさんが、ゆっくりと立ち上がった。
揺れる車内を悠然と歩く姿に、私達は息を飲んだ。
「新田さん」
唐突にかけられた、声。
その声はいつものように低く、落ち着いている。
私達が何かした時の方が、焦ってるんじゃないかしら。
「は、はいっ!」
思考して、返事をするのが遅れてしまった。
きっと、プロデューサーさんは大事な事を言う。
プロジェクトのリーダーとして、聞き逃す訳にはいかない事を。
「私は、此処を離れます」
「離れるって……何を言ってるんですか?」
今も、バスは高速で走り続けている。
止まったら、ウサギの怪人によって私達は終わりだ。
だから、離れるなんて、出来ないはずなのに……。
「皆さんをお願いします」
そう言うと、プロデューサーさんは上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
「……」
プロデューサーさんの腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。
「私が、奴を倒します」
右のポケットからスマートフォンを取り出した。
ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
あの声は、確か……。
プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
言った。
『――START!』
プロデューサーさんの体を光が包み込んでいく。
光の粒子はやがて形を成していき、鎧を纏わせた。
鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。
「……」
だけど私は、確かにその向こう側に希望を見た。
「だ、だけど……相手は物凄い速さで走ってるんですよ!?」
今のプロデューサーさんは、とても強そうに見える。
けれど、あのウサギの怪人よりも早く走れるというのか。
あんな、高速で動く相手をどうやって……。
「はい。ですが――」
カツン、カツンと歩く音が車内に響く。
私達は、息を飲んで続くプロデューサーさんの言葉を待った。
「――私一人では、ありませんので」
プシュウ、と音を立ててバス前方の出入り口が開いた。
ウサギの怪人から逃げるため、景色が物凄い速さで流れていく。
プロデューサーさんは、
「ピニャコラッター!」
そう言うと、バスの車外へ躍り出た。
いくら鎧を着ているとは言え、この速さで車外に出たらただでは済まない。
そう思った私達の耳に届いた、低い、低い音声。
『ぴにゃぴっぴ』
大きな、黒い影。
その、巨大な黒い影はプロデューサーさんと地面の間に潜り込むと、
プロデューサーさんの体を乗せ、疾風のように走り出した。
『Unit debut!!』
・ ・ ・
「……」
吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。
「さあ、行きましょう」
『ぴにゃー』
私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
このマシンは、ただの大型のバイクではない。
人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。
「……!」
『ぴ~――……』
速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。
「ふっ!」
『――にゃ~!』
彼も、私も。
ターン終了と同時に、急加速。
地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。
「UUUUKYUUUUUUU!!」
私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、
「善処します!」
『ぴにゃっぴ!』
速度を緩めること無く、全力で突撃した。
「……」
吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。
「さあ、行きましょう」
『ぴにゃー』
私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
このマシンは、ただの大型のバイクではない。
人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。
「……!」
『ぴ~――……』
速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。
「ふっ!」
『――にゃ~!』
彼も、私も。
ターン終了と同時に、急加速。
地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。
「UUUUKYUUUUUUU!!」
私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、
「善処します!」
『ぴにゃっぴ!』
速度を緩めること無く、全力で突撃した。
「おおおおっ!」
『ぴにゃ~っ!』
高速で走る二つの物体の、正面衝突。
勝ったのは、
「GYUUUUUUUU!?」
私達だ。
当然の結果です。
何故なら、私達は一人ではないのだから。
「……!」
『ぴにゃっぴ!』
「GYUUUU!? GYUUUUUOO!?」
ピニャコラッターは、ウサギの怪人をその前方に乗せ、バスから引き離していく。
ウサギの怪人が暴れて脱出しようともがくが、それは叶わない。
「少し、お時間を頂けますか」
「GYUUUUU!? GYUUAAAA!?」
私の両手が、ウサギの怪人を捕らえて離さないからだ。
『ぴにゃっ!』
運転をピニャコラッターに任せ、距離を稼ぐ。
ここまで来れば、もう心配は無いだろうか。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
私の声を聞いたピニャコラッターは、壁を駆け登る。
私達は一塊となり、高速道路の外へと飛び出した。
一塊だった私達の影が、空中で二つに分かれる。
それは当然、私達と、ウサギの怪人にだ。
「……」
ピニャコラッターの上に立ち、彼を足場にして跳び、
「――企画!」
「GYUUUAAA!?」
『CooL!!』
ブルーの光を纏った右の脚をウサギ怪人の頭部に見舞う。
やはり、不安定な体勢で放った一撃では、あまり効果は望めない。
「――検討中です!」
「UUUKYUUAAA!?」
『Cute!!』
しかし、それでも私は追撃の手を緩める事はない。
ピンクの光を纏った拳をウサギ怪人の腹部に突き刺しつつ、地面に叩きつける。
落下の衝撃が合わさったそれでも、仕留めるには至らなかった。
「KYUUUUUUUUU!!」
「ぐおっ!?」
私の下で、ウサギ怪人が力を振り絞り、暴れた。
あの速度が出せるだけの脚だ。
その脚力は相当なもので、蹴り上げられた拍子に距離を空けられてしまう。
「――待ってください!」
しかし、ここで逃がすわけにはいかない。
ここで逃したら、いつ、またアイドル達にその牙を向けるかわからないのだから。
『Passion!!』
私に背を向けて逃走を図ろうとしたウサギ怪人の脚を
銃の形にしていた私の左手から放たれたイエローの光が撃ち抜いた。
「KYUUU……KYUUUUU!!」
それでも、奴は諦めなかった。
最初の時の速さは見る影もないが、それでも、走り出す。
一瞬、このまま逃してやろうと、そんな思いに駆られた。
「……」
だが、それは出来ない。
彼は怪人で、アイドルから笑顔を……その生命を奪おうとする者。
そして私は、そんな彼女達を守る……プロデューサーなのだから。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
呼ぶのが遅い、と言わんばかりに、ピニャコラッターが横に走り寄る。
その背に跨り、私達は一つとなる。
怪人を――倒すために。
『Tricoloooooor!!』
ピンク、ブルー、イエローの3つの光を纏った‘私’は、ウサギの怪人に突撃した。
3つの光の尾を引きながら、私はウサギの怪人を粒子にした感触を味わっていた。
『ぴにゃ~……』
そんな私に、ピニャコラッターが声をかけてくる。
彼のボディーを労るように撫でると、彼の鳴き声は止んだ。
なくのはやめろ、ピニャコラッター。
私達は、笑顔を守ったのだから。
・ ・ ・
「新田さん、ありがとうございました」
合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
だけど、その表情はなんだか……。
「いっ、いえ……」
「……」
プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?
「……」
顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。
「……新田さん」
「……」
教えてください、プロデューサーさん。
「笑顔です」
「っ!?」
思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。
「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」
だから、笑っていてください。
そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。
おわり
「新田さん、ありがとうございました」
合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
だけど、その表情はなんだか……。
「いっ、いえ……」
「……」
プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?
「……」
顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。
「……新田さん」
「……」
教えてください、プロデューサーさん。
「笑顔です」
「っ!?」
思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。
「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」
だから、笑っていてください。
そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。
おわり
ライダー意識なので、目がこれのでっかい感じかなー、と!
ってかこの画像クッソカッコイイすなw
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