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元スレ許嫁「……聞いていない?」
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「経済的にも無理はしていないのかな? アルバイトをしていると聞いたが」
男「バイトは半ば趣味でやっているようなものです。有難いことに、差し迫ったものはありません」
「……すまない。碌に君の力になってあげられなくて。いや、それどころか私は君に」
男「父とは古い友人だった、その縁で。あのとき家に誘っていただいたこと嬉しく思っています」
「私以外にも、誘いは少なくなかった」
男「そうですね。ただ、あなたは本当に、悲しんでくれているように見えたんです」
「……」
男「すいません、何か偉そうでしたね。結局断ってしまった上に、この言い分なんて」
「いや……」
「また近いうちに、君とは話をしなければならない」
男「ええ。またすぐにでも来て下さいよ、今度はウチに」
「もしかしたら君は私を非難するかもしれない」
男「……え?」
「これから君は、いくつもの選択をしていくだろう」
「でも、それがどういう選択であっても。真に君の心からのものであれば、私は君を応援するよ」
男「……」
「すまない、またすぐに行かなくてはならないんだ。じゃ、身体にだけは気をつけてね」
男「ええ、あなたも! その、何だか、やつれたように見えますよ」
「ふふ、そうか。気をつけよう。ありがとう」
男「……」
男「……選択、か」
『突然のことで戸惑っていると思う』
『今まで聞いたこともなかったんだ、当然だろう』
『何も今すぐ答えを出せって訳じゃない。ゆっくり自分自身のことを考えてくれ』
『ただ、これだけは覚えておいてほしい』
『お前がどんな選択をしようが、私たちは、お前のことを大切に思ってる――』
……
学校
友「おお、久しいな、わが友よ! どうだった夏休み?」
男「言ってた通りだいたいバイトしてたよ」
友「ご苦労さんだね!」
男「お前は何してたんだ? 忙しいっつって、結局一度も会えなかったが」
友「色々とゴタゴタしててな。ま、俺には俺の物語があるってことよ。ひと夏のアバンチュールってヤツさ」フッ
男「本当かあ?」
友「しかし夏休みの間に、気になる噂を聞いたんだよ」
男「噂?」
友「……目撃されたらしい」
男「何が?」
友「夏って言えばアレだよ、アレ」
男「アレ?」
友「クラスメイトの話なんだけどな、夏祭りの話だ」
男「……夏祭り」
友「ああ。俺も行きたかったんだが、すまなかったな……まあ、そのことは置いといて」
友「何人かで一緒に行った奴らの話だ。まあ、何人かって言っても悲しいかな、野郎ばっかりで行ったらしいんだが」
友「出店回って、定番のたこ焼きでも食べるかって話になったらしいんだ」
男「……たこ焼き」
友「注文して出てきたの受け取って。道から外れたところにでも座って食べようとしたらしいのよ。で、ふと横見たらクラスメイトの男子がいた」
友「なんだ、あいつも来てたんだ、声かけるかって口を開こうとしたら」
友「その隣に、最近同じクラスに転校してきた美少女が座ってたらしいんだよ」
男「……」
友「え、なにこれ。何が起きてるのって。その少女ってさ、やっぱりクラスでも人気あるからさあ」
男「……そうなのか」
友「そういや隣にいる野郎。誘ったら、先約があるからとか何とか言って断られたなあって」
友「そのまま震えながら見てるとなんと。少女がそいつの口にたこ焼きを放り込んでいくではないか!」
友「まさか、これは! 俗に言う『あ~ん』とかいう都市伝説ではないかと!」
男「都市伝説だったのか」
友「最後には、二人は仲睦まじく手を取り合ってどこか林の奥へ消えていったっていう……」
男「それは誇張されているぞ」
友「いやあ、恐ろしい話だ」
男「どこがだよ」
友「野郎だけで楽しんでたら、隣に美少女の彼女連れてイチャイチャしているクラスメイトが居たんだぞ」
友「このそこはかとない虚無感。その反動か、最高にはしゃぎながら花火を見てたらしい」
友「野郎だけでな……彼らの涙目に映る花火はとても儚く、美しかったという」
男「……一緒に行ったのは事実だが。そういうんじゃない、そういうのじゃあ」
友「じゃあ、どういうのなんですかね? 例の関係はカタチだけじゃなかったんですか!?」ニヤニヤ
男「たまたまバイトが休みになって。それにまずお前を誘っただろ? そこで断られたから一緒に行くことになっただけだ」
友「断ってファインプレイだったな、オレ!!」グッ
男「……クラスの男子がどうも生暖かい視線向けてくるなあって思ったら、そういう訳だったのか」
友「ま、なんとなくそうじゃないかな、って以前から皆思ってたらしいがな」
男「えっ」
友「あの子がいちばん活き活きと喋ってるのってお前相手のときじゃねえか」
男「え……」
廊下
男「うーん」
男(最初に会ったときより距離が縮まっているのは間違いないが)
男(……ひどかったもんな、むしろ敵意すら感じた)
男「うーむ」
男(今は……どうなんだろ)
男(面白いヤツではあるが。俺はアイツを……)
許嫁「間の抜けた顔をして何をうんうん唸っているのよ」
男「何だ、いたのか」
許嫁「目の前にいたわよ、失礼ね」
男「いや何、お前のこと考えていたんだ」
許嫁「……」
許嫁「!?」
許嫁「な、何よ急に。変なことを言わないで」
男「俺たちってさ、何なのかな?」
許嫁「え?」
許嫁「な、何って急にどうしたの?」
男「いや別になんとなく」
許嫁「なんとなくって……」
許嫁「……」キョロキョロ
許嫁「……」
許嫁「い、許婚よ……期間限定の」ヒソヒソ
許嫁「あとはクラスメイトで、バイトの同僚で、……同居人」ヒソヒソ
男「……そうか、そうだよな」
男(そんなに関係性があれば、多少は親しくもなるわな)
男「うんうん。ありがとな、じゃ」テクテク
許嫁「……な、何なの? 一体」
教室
委員長「さっき先生に聞いたんだけど、今日転校生が来るんだって」
友「な、何だって!? 本当か、それは!?」
男「またこのクラスに?」
委員長「ええ。そうおっしゃっていたわ、先生」
友「そ、それでっ!? 女子か? 可愛い女子なのか!?」
委員長「い、いいえ。男子って」
友「ふーん、そうなんだ。そういやさ、今日の数学の課題やってきた?」
男「清々しいやつだな」
転校生「父の仕事の都合で、こちらに引っ越してきました」
男(教室がざわめいてる……かなりの美青年だ)
転校生「ここの学校は、秋の文化祭にとても力を入れてるって聞きました」
転校生「新入りですけど僕も是非参加したい、協力したいって思っています」
転校生「そういうわけですが、……これからよろしくね」ニッコリ
男「?」
男(こっちを見て微笑んだような……気のせいか?)
男「線は細いが整った顔立ち。爽やかだしモテそうだよな」
友「ついに俺のライバルが現れたか……!」
男「お前は何を言ってるんだ? って噂をすれば」
転校生「やあ。はじめまして」
男「ああ、はじめまして。よろしく」
友「よろしくね~」
男「わざわざ挨拶してまわるだなんて律儀だな」
転校生「いや、君には特別さ」
男「?」
転校生「何、僕は君に……」
男「俺?」
転校生「ああ。君に興味を持っててね」ニッコリ
ざわ・・・ざわ・・・
友「……」
男「えぇ……」
委員長「……」ゴクリ
転校生「ん、どうしたんだい?」
男「いやあ……その、あれだ」
男「そういうのは人それぞれでいいとは思うんだけどな」
男「生憎その、俺はお前の期待には応えられそうもない」
転校生「え?」
男「友人として、付き合うのはもちろんいいんだが。悪いが、恋人にはなれないと思う」
転校生「……こいびと?」
転校生「え、何で……! ってっち、違う! 興味があるとはそういう意味じゃない!」
転校生「か、勘違いするな! 別に君のことが好きってわけじゃないんだか
らなっ!」
友「属性盛りすぎだろ……」
委員長「……」ゴクリ
転校生「違くて! 今のもそういう別の意味があるセリフじゃなくて!」
転校生「そのままの意味だから!」
転校生「つまり、き、君とはライバルなんだ!」
男「は?」
転校生「言いたかったことと何か違う……あ、あー! もー!」ツカツカ
男「……よく分からんが、面白いヤツだな」
友「ははは」
廊下
先輩「呼ばれてないけどジャンバルジャン!」ジャーン
男「先輩今日も元気ですねえ」
先輩「なにせ良いことがあったんだよ! 今キミを見つけたんだよ!」
男「先輩にそう言われるとは光栄です。あ、そう言えば、新しく作った諜報部どうです? 人見つかりました?」
先輩「それがまだ私一人ぽっちなの。部室で一人さみしく、眠ってグーグー動けどタラタラぐーたらぐーたら」
男「意外ですね。簡単に集まりそうな気がしたんですが」
先輩「うぬり。希望者もそこはかとなくいなくはなくなんだけどね。弊社の求人の条件と合わずお祈りを捧げる次第です」
男「条件なんてあったんですか」
先輩「一緒にいて楽しい人。安心する人。私が無理しなくてもいい人」
先輩「目星をつけている人はいるんだけどね、その人、なかなか首を縦に振ってくれなくて」ジー
男「え、僕は……」
先輩「ね、ね。ちょっとだけでいいからさ? お試し期間でいいからさ? どうかなどうかな? ウチの部に来ない?」
先輩「ちょっとだけ、ちょっとだけだから! 何にもしないからさ」ハァハァ
友「へえ。それは興味がありますねえ。センパイ?」
先輩「……あら。どこから出てきたかと思ったら。久しぶりねえ。それとも最近どこかでお会いしました?」
友「気のせいですよ」
先輩「そっかそっか。私の勘違いね。それで? どしたの? もう授業が始まる時間かな?」
友「いえ。目に付いたんで、一応挨拶しておこうと思って」
男(……)
先輩「ふうん。シュショーな心がけね、シュショー」
友「それでさっきの話ですけど、諜報部?でしたか。僕じゃあ入れないんですか?」
先輩「えええ? あなたが? 嬉しいわ。あなたがそんなこと言ってくれるなんて!」
男(……の朝は早い……)
友「やった、でしたら入部ですか?」
先輩「うーん。今ね、厳正なる選考をしたんだけど。結果、残念ながら採用を見送りました」
友「それは残念ですねえ」
男(……いえ、自分の時間というものを大切に……)
男(……そうですね、掃除っていうのは、僕にとって……)
友「そうだ、先輩の連絡先教えてもらっていいですか?」
先輩「え?」
友「この先何が起こるか分かりませんから、ね」
先輩「……」
友「あれ? NGでした?」
先輩「いえ。そうね。先のことなんて分からないものね。例えば――」
先輩「信じていたものに裏切られることもあるかもしれない」
友「……」
男(……彼はそう言うと、我々に背を向けて……)
先輩「な~んてねっ☆ どうどう? 先輩シリアスばーじょん! あの可愛い先輩にこんな一面があったなんて……グッと来ない?」
男「え? あ! UR(ウルトラレア)じゃないですか! やった、珍しいもの見れたなあ!」
先輩「いひひっ。やっぱキミ可愛い! まだまだこれからね! じゃ、ばいばい」バイバイ
男「相変わらず敬遠してるのか、先輩のこと」
友「……まあな。どうも性格が合わないね、あの人とは」
男「仕方ないところもあるのかもしれんが。だが、一緒にいる俺の身にもなってくれ。あの空気の中で」
友「……それは、悪かった」
男「居たたまれなくて。俺頭の中でずっと、ドキュメンタリー番組が自分に取材にきたときのシミュレーションしてたぞ」
友「結構余裕あるじゃねーか」
教室
許嫁「私に? 何の用事かしら?」
転校生「少しお話がしたくて」
許嫁「あら? 私じゃなくてあの男に興味があるんじゃなくて?」
転校生「っ。あれは誤解ですよっ……、僕はっ……」
許嫁「ふふっ。あの男ってそういう冗談をよく言うから気にしないほうがいいわよ」
転校生「……、驚きました。あなたはそのような冗談をおっしゃる方には見えなかった」
許嫁「……どこかで会ったことが?」
転校生「あなたから見れば、僕のような家柄なんて大したことではないでしょうが」
転校生「以前パーティでご一緒させていただいた、しがない男ですよ」
許嫁「……」
転校生「どうしてあなたはこちらの学校に?」
許嫁「それは……」
転校生「そのあたりも含めて、お話したい。どうでしょう、帰りにどこか寄って行きませんか?」
許嫁「二人で?」
転校生「ええ。こんな話、他にする人もいないでしょう?」
許嫁「……」チラッ
男『……でさあ、が……』
友『うっそマジで!?』
許嫁「……」
転校生「どうでしょうか?」
許嫁「ええ。構わないわ」
男「へぇー。以前会ったことがあるのか」
許嫁「ええ。そういう訳だから、帰宅するのは少し遅くなるかもしれないわ」
男「あ、そうなの了解了解」
許嫁「……」
男「ん? 何だよまだ何かあるのか?」
許嫁「もしかしたら、もっと遅くなるかもしれないわね」
男「ああ、そうなの。ま、鍵は持ってるよな」
許嫁「……持ってるわよ」
男「? え、何でお前怒ってんの?」
許嫁「怒ってないわ」
男「いや、その口ぶり。怒ってるときのじゃねーか」
許嫁「怒ってないって言ってるでしょ。言うことはそれだけなの?」
男「それだけなのって言ってきたのはお前……」
許嫁「……もういいわよ」スタスタ
男「なんなんだ一体……」
友「はっはあ、何揉めてるんかとおもたらそゆこと」
男「そうだよ。いきなり機嫌が悪くなって……今一行動が掴めん」
友「お前さんも鈍いね。曲りなりにも一緒に暮らしてる許婚なんだろ? それで夜遅くなりそうっていうんだったら心配してあげてもいいんじゃないの?」
男「ああ、なるほどそういうアレですか」
男「しかし他所様の許婚はともかく、ウチのあの孤高な許婚に限ってそんなことがあるだろうか」
友「誰しもが許婚居るような話し方は止めろ」
男「ま、助かったわ」
友「いいっていいって。……ところで」
男「?」
友「本当に分かっていなかった? もしかしてそういうことかも、とか思わなかった?」
男「う……」
友「お前も可愛いとこあんね」
男「う、嬉しくねー」
男「あーこほん」
許嫁「? 何? 何か用?」
男「そう言えば、今日遅くなるって言ってたが」
許嫁「……言ったわね」
男「どれくらい遅くなるんだ?」
許嫁「何、どうしたの」
男「よっぽど遅くなるって言うんだったら、考えなきゃいけないだろ。夜道を一人歩かせるわけには行かないし」
許嫁「……」
男「かと言ってあの転校生に、同居している家まで送らせるのもな」
許嫁「そう、思うの?」
男「……。ま、遅くなりそうだったら連絡してくれ。じゃ」
許嫁「待って」
許嫁「だったら、あなたも来ればいいじゃない」
男「……え?」
許嫁「今日あなたもシフト入ってないでしょ」
男「え、ああそうだけど」
許嫁「他に用事があるの?」
男「いや、特には……」
許嫁「だったら来ればいいじゃない。駄目なの?」
男「え」
喫茶店
男「むしゃむしゃむしゃむしゃ」
男「ばくばくばくばく……ごっくん」
転校生「……」
許嫁「……」
男「……喫茶店のナポリタンって妙な魅力があるよな」
男「柔く茹でたスパゲティ。少しの玉ねぎと大雑把な輪切りのソーセージ。それをケチャップでざあっと炒める」
男「チーズなどをまぶすのもいいだろう。分かる。美味いし。だが、やはりナポリタンといえば、このシンプルな形こそベストではないだろうか?」
許嫁「口まわり真っ赤にしながら何を力説してるのよ」
転校生「……どうしてそこで君がナポリタンを食べているんだ?」
男「いやあ。最初そんなつもりはなかったんだが、メニューの写真見ているうちに、ついついな」
転校生「そういうことを聞いているんじゃないが……」
男「少し俺の食べる?」
転校生「僕はいいよ。そんなに嬉しそうに食べているのを見ると、取るのも悪い気がする」
男「そんなことはないが……あっフォークが」カシャン
転校生「! 気をつけなよ。っと。ほら」カラン
男「悪いな」
転校生「気にしなくていい。……すいません、店員さん! 替えのフォークを用意していただけませんか?」
男(こいつ面倒見いいな)
男「ふぅ。腹も落ち着いたところで」
許嫁「よく食べたわね。それで今日の晩ご飯入るの?」
男「余裕余裕。まあ食べ切れなかったら明日に回そう。で、何だっけ? 以前会ったことあるって話か」
転校生「え? あ、ああそうだ。とは言え、二三言葉を交わしたくらいだが」
男「ってことはお前は覚えていない?」
許嫁「悪いけれど」
転校生「いいですよ、仕方ない。あなたの家に比べたら僕の家なんて有象無象と変わりないですし」
転校生「まあ、僕の家だけじゃなく、ほとんどがそうなりますけどね」
男「そんなにこいつの家って巨大なんだ」
許嫁「前から言ってるでしょ? 物覚えが悪いわね」
男「いまいちピンと来なくてさ。生まれてこの方庶民なもんで」
転校生「……」
男「あ、どうした?」
転校生「いや、何て言うかちょっと意外で。以前にお見かけしたときと随分様子が変わられてて」
男「猫被るの得意だからな」
許嫁「そういうこと本人の前で言うかしら?」
男「悪い。今度からはお前がいない場所で言うことにしよう」
許嫁「あなたねえ……」
男「以前に見たときはどんな感じだったんだ? このお嬢様は」
許嫁「あなた前にもそんな話気にしてたわね。そんなに、その。私の以前のことが気になるのかしら?」
男「そりゃまあ気になるかな。想像できないし」
許嫁「……そ。気になるのね」
転校生「……」
男「で、どんな感じだったんだ? 下々の者は私の前に跪くのよオーホッホッホッホ、みたいな?」
転校生「い、いやそんなことは」
許嫁「私にどういうイメージ持ってるのよ? すぐそう言うこと言うんだから。あなたって。もう」
転校生「え、ええっと、その。特別な印象は無かった、けど」
男「影薄かったって」
転校生「ち、違いますよ!? お話できる時間が本当に少なかったからでして」
転校生「ただ、目立ってはいらっしゃいました。ちょうど今のクラスでも注目されているように」
男「お前クラスで浮いてるんだって」
転校生「ち、違う!!! 言動ではなく、佇まいのようなものの話だ。それが惹きつけられると」
男「言動についてを省きたくなる気持ちはな、確かに分かる」
転校生「そんなことは言ってない!」
許嫁「まったくもう。あなたっていちいち私の悪口を言わなきゃ気がすまないのかしら?」
男「それはお前だろ? 委員長と一緒に学校を案内したときのこと、忘れてねーぞ」
許嫁「あら。そんな前のことをいつまでも覚えているなんて、つまらない男ね」
許嫁「いい? そもそもあなたは私に敬意が足りないのよ」
男「敬意? 敬意ってのは尊敬する相手に持つものだ」
許嫁「私のどこが尊敬できないっていうのかしら?」
男「例えば、米は洗剤で洗うとマジで思っていたとこ」
許嫁「ぐっ」
許嫁「……あれは引っ掛けを出したあなたが卑怯なのよ」
男「引っ掛けって話じゃないだろ、あれ!?」
許嫁「でも、慌てて止めに入ったあなたの動転具合は滑稽だったわ」
男「洗剤の匂いがする飯を食べたくはなかったからな。そりゃ慌てるよ」
許嫁「ってことで、この話はノーカウントね。ふふふ」
男「どういう理屈だ!」
許嫁「だいたいあなたはねえ、最初に会ったときから不躾だったわ。人を『お前』呼ばわりだなんて」
男「はいはい、悪かった悪かった。じゃあ名前で呼んでやるよ。特別に下の名前でな」
許嫁「やめてくださる? 親しくもないあなたなんかに呼ばれるとゾクゾクするわ」
許嫁「それも下の名前なんて。あなたと私は特別な関係でもないのに」
男「よし、それじゃあ呼ぶぞ」
許嫁「ん……」
男「あ……れ? 何ていうんだっけ? 忘れてしまったぞ?」
許嫁「……あなたね、呼ばれること覚悟したこっちの身にもなってみなさいよね」
男「いや、どうしてだ、本当に口にできないぞ? 仕様か?」
許嫁「侮辱? 侮辱なのね、それは。まったくもう、失礼しちゃうわね。あなたっていつもそうなんだから」
転校生「あ、あんまり大声出さないほうが……目立ってますし……」ワタワタ
店外
転校生「……すまない。その」
男「ん? どうした?」
転校生「今日は話をするだけで。君たちを仲違いさせるつもりはなかったんだ。あんな言い合い、なんて」
男「あ、そうか。ごめん」
転校生「え?」
男「あれが平常運転だ」
転校生「そ、そうなのか?」
男「むしろ今日はテンション高いっていうか、機嫌が良いっていうか。理由は不明だが」
男「何考えているのかよく分からんからな、あいつ。別に不愉快ではないが」
転校生「……」
転校生「君は……」
男「ん?」
転校生「変な奴だな」
男「……。お前は何故ここに転校してきたんだ?」
転校生「え? いや、それは、父の仕事の都合で」
許嫁「だったら私と同じね? ……お待たせ」トコトコ
男「うし。じゃあ帰ろうか。俺たちは帰り一緒だけど――」
転校生「僕は逆方向みたいだね。じゃあ、ここで」
男「また明日。……そうだ、忘れてた」
転校生「?」
男「これからよろしくな」
許嫁「私も」
転校生「……ああ、よろしく」
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