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元スレ許嫁「……聞いていない?」
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男「ずっと家にいるのもつまらないだろ? たまにはこういうので息抜きもいいかなと思ったんだが――」
許嫁「……ちょっとそのチケット見せて」
男「ん? ああ」
許嫁「……」マジマジ
許嫁「今上映中の映画がどれでも見られるのね」
男「せっかく貰ったんだし、無駄にするのもどうかと思ってな」
許嫁「……」
男「じゃ、コレやるから誰かと――」
許嫁「分かったわ。あんまり気は進まないけれど、つきあってあげるわよ」
男「えっ?」
許嫁「そうね、たまには映画を観るのもいいかもしれないわ……次の休みでいいかしら?」
男「えっ、お、俺と二人で?」
許嫁「? ほかに誰かいて?」
男「い、いや。そういうことじゃなくて……」
男(……)
男(や、ここで断ってもな。恥をかかせても悪いし)
男(できるかぎりこいつの息抜きになるよう努めるか)
男「よし、そうだな。次の休みに行くか」
男「でも意外だな」
許嫁「何がかしら?」
男「俺と一緒だなんて嫌がるかと思ったんだが」
許嫁「……いつまでも恩着せがましいような顔をされたくないのよ」
男「?」
男(恩着せがましいって何だ……、あ、看病のことか)
男(気にしてたのか。実は案外感謝してるのかもな)
男(つまりその借りを返すということか……んん?)
男(借りを返すために俺と映画に付き合う……? それだとまるで俺が、)
許嫁「あなたがそんなに一緒に映画を見たいのなら、仕方ないわ」
許嫁「映画に付き合ってあげるくらいなら構わないもの」
男「え……」
許嫁「じゃ、次の休日ね」
男「あ、ああ……」
男「……あっるれぇええー?」
男(何故に俺が熱心に誘ったことになったんだ?!)
男(さも俺があいつに気があるかのように)
男「……」
男(ま、まあいいか。もう決まってしまったことを深く考えるのはよそう)
男(……なんとなく二人で行くことになりそうな気はしてたし)
男「……」
男(ま、とりあえず次の休日は映画だな)
日曜日
男「気がついたらあっという間に休日になってた」
許嫁「何言ってるのかしら?」
男「いや、こっちの話だ。用意ができたんなら、さっさと行こうぜ」
映画館
男「うーむ、着いたには着いたが」
許嫁「……」
男「サスペンスやらミステリーやら結構ラインナップがあるなあ」
男「この中で見たいのある?」
許嫁「……別に、ないわ。何でもいいんじゃない?」
男(何か口ごもってるような……)
男「じゃあ、あの『優等生の少女が狂気に犯されていく。戦慄のサイコ・ホラー』なんつーのはどうだ?」
許嫁「……」
男「違うのにしようか」
男(うーんどうするかな。こいつの好みっていうと確か……ん?)
男(この映画は……、こないだベッドの枕元にあった恋愛小説じゃねーか。映像化されたのか)
男「なるほど」ボソリ
男(なんだ。映画につき合ったのも、これが見たかったってのもあったのか)
男「じゃあ、それなんかどうだ? その、コメディっぽいやつ」
許嫁「……これ? あなたこれが見たいの?」
男「ん、まあたまにはこういったジャンルもどうかなって思ってな」
許嫁「ふうん。……ま、あなたが見たいっていうのならそれでいいわ」
男「よし、じゃあそれにしよう」
上映中
『ちょっと、何をグズグズしているのかしら? 確認は取れたの?』
『何かの間違いであって欲しかった……』
男(何かつまらなそうな映画だな。そもそもこのジャンルはあんまり見ないんだが)チラッ
許嫁「……」
男(食い入るように見ている……ま、それならいいか)
男(俺は寝ないことだけ気をつけよう)
『……何をする』
『言わせたいの?』
男(をを)
許嫁「……」
男(ったく。ようやくここまで来たのかよ)
男(なんつー面倒な二人なんだ)
男(思ってた以上にやきもきさせられたぜ……)
……
男「良かったな! ついつい割高なパンフまで買っちまったぜ」
許嫁「そうね、期待通りだったわ」
男「ヒロインが高慢だったのが多少気に障ったけどな」
許嫁「主人公の斜に構えた態度が鼻についたわ。ヒロインに対してもっと敬意を払うべきよ」
男「……」
許嫁「……」
男「ま、せっかく見たんだ。悪いところじゃなく良い所を評価しよう」
許嫁「そうね、あなたにしては珍しく良いことを言うわ」
男「創作物って良いところ、それを見つけ出したほうが楽しい。だから多少の粗があっても気にしてはいけないぞ!」
許嫁「急にどうしたの?」
男「さーてと、どうする? 夕飯はどこかで食べて帰るか」
許嫁「……そうね。そっちのほうが手間がかからないし」
男「この辺で食べるところって言うと――」ウーン
許嫁「ねえ。あなた確か、レストランでアルバイトしているのよね」
男「うっ。だ、駄目だぞ。あそこは駄目だ」
許嫁「どうして?」
男「き、気まずいだろ。自分の働いているところに客として行くなんて」
男(それにこいつと一緒だと茶化されそうだし)
許嫁「ふうん」
許嫁「なおさら行きたくなったわ。駅前のファミレス……こっちの方角かしら?」スタスタ
男「あ、おっおい! ちょ、待てよ!」
今日は以上、続きはまたです。
読んでいただき、ありがとうございます。
読んでいただき、ありがとうございます。
ファミレス
男(結局来てしまった)
許嫁「じゃ、入るわよ」
男(せめて店長がいませんように)ウイーン
ピヨピヨピヨピヨ(入店音)
店長「いらっしゃいま……あれ、どうしたの? 今日シフト入ってないよね?」
男「ちっ」
店長「ひ、酷いなあ。人の顔見て舌打ちするなんて。一応ボク君の上司なんだけど……ん? あれ、お連れさんが――」
男「おいおい何だこの店はあ? 入店した客にそんな口の聞き方するのかあ? ああ?」
店長「やだ、客になった途端ガラが悪いこの子」
店長「お決まりになりましたらお呼びください~~~♪」スタスタ
男「行ったか……」
許嫁「変な人ね」
男「あれで店長なんだよ。まあ、ちょっと子供っぽいところがあるかな――ん?」
店長「……」ニヤニヤ
男(バックヤードからこっちを見てニヤついている)
店長「……」フイッフイッ
男(指さしてやがる……俺らは仮にも客だぞ)
店長「……」クイックイッ
男(小指を立てるな小指を)イラッ
男「いや、やっぱりただのムカつくオッサンだ」
許嫁「ふうん……」キョロキョロ
男「珍しいか? ファミレスが」
許嫁「来たことはないわね……あなたは、ここで働いてもう長いの?」
男「学校に入ってすぐ始めたから、もう1年以上になるかな」
許嫁「にしても、どうしてあなたは働いているの。学生でしょう?」
男「そんなの決まってる。遊ぶ金欲しさだよ」
許嫁「遊ぶ金、ねえ……」
男「ああ。質問は終わりか? 他に聞くことはないか? 一度に複数の料理皿を持つコツ聞きたくないか?」
許嫁「私がそんなこと聞いてどうするのよ」
男「じゃあ今度は俺からの質問だ。以前はどんな学校生活だったんだ?」
許嫁「またその話? どうしてそんなこと聞きたいの?」
男「単純な好奇心だ」
許嫁「あなたお嬢様学校にどんな憧れを抱いているのかしら」
男(別に学校にだけ興味があるわけじゃないんだが)
男(コイツがどんな生活を送っていたのか気になる……少しだけな)
許嫁「……あなたみたいな人が考えているような、そんな良いところではないわ」
許嫁「少なくとも、私の学校は」
許嫁「皆お互いの家を知ってて、その力関係も知ってる。学校内でもその影響はあったわ。教師も含めてね」
男「つまりお前も威張り散らしてたってわけか。国でも指折りの家の力をかさにきてな」
許嫁「……そんなことしないわよ。けど……」
男「?」
許嫁「ただ皆が勝手にそうしたのよ。私はそんなこと、必要じゃなかったのに」
男「ふうん。いろいろと煩わしそうな場所だな」
許嫁「……そうね」
店長「お待たせしました~ごゆっくりどうぞぉ★」
男(しゃべり方が気持ち悪い)
男「さて食うべ食うべ」
許嫁「ん……いただきます」
男「いただきます」
許嫁「……」チャ
許嫁「……」
許嫁「……」モグモグ
許嫁「……? なに、こっち見て」
男「や、そう言えば知り合ってからさ、お前が食べてる姿良く見てるなって思ってな」
許嫁「!?」
許嫁「そ、それはあなたがそうしたがるからでしょう? 別に私がそうしたいわけじゃないからっ」
男「何焦ってんだ。でも、そうかもな」
許嫁「な、何が?」
男「できれば俺は、誰かと一緒に食事したいのかもしれない」
男「一人で食べてるときに、そう思うことがある……偶にな」
許嫁「……」
男(何で今俺睨まれてるんだ?)
許嫁「……」モグモグ
男(分からんヤツ)
許嫁「ごちそうさま」
男「さあてお腹も膨れたことだし、そろそろ帰る……」
店長「えぇっ!? それは本当かい!」
男(ん……?)
店長「それは、それは、困ったなあ!」
店長「今からシフトに入っている君が、動けないほどの高熱なんて!」
店長「いや、いいんだ! いい! 君はゆっくり療養してくれ」
店長「病人に鞭打つようなことはしたくないんだ……!」
店長「いいんだ、いい、こっちのことは心配せずゆっくり眠ってくれ……!」ガチャン
店長「……」
店長「クソッ、まったくこんなことになるなんて!」
店長「……」
「……」
店長「……ほら」ボソ
「あ、え、えええ。て、店長、どうするんですか、これじゃあ人が足りないですよ」
「えっと、これからの忙しくなる時間、私たちだけでは到底凌げないですよお」
店長「くっ困った……、困った! 誰か働いてくれる人がいないかなあ」チラッ
「そ、そうですねえ」
店長「ほんの少しの間だけでいいんだけどなあ。忙しい間だけでいいんだけどなあ」チラッ
男(なんだあの小芝居)
店長「どうか、どうかご慈悲を!」
男「えぇぇぇぇぇ。今から急に働く気なんておきませんよ」
店長「そこを何とか! 何とか! 何とかお願いしますよ!」
男(うるさい)
店長「ただでさえ少ない人数で何とかしているところなんですよ。これで欠勤でちゃったらもう回んないですよ!」
男(何で半ギレしてるんだ)
男「そもそも元より手が不足ぎみなんですよね。その責任は店長にもあるでしょう?」
店長「うっ。ひ、人はもう少し入れようと考えているんだけど、なかなか難しくてね……」
許嫁「……」
店長「それにね、君がいないと始まらないっていうか、この店」
男「え?」
店長「やっぱりね、君みたいな皆に気が回って全体を意識できる人って貴重なんだ」
男「や、それは買いかぶりすぎです」
店長「僕もこの店に来てから、まだ日が浅いでしょう? ベテランのキミにね、サポートしてもらって助かっているよ」
男「ベテランって言えるほど長くはないですって」
店長「そうかな? その割りには、君は頼りになるってみんな言っているよ」
男「え、う、嘘でしょう? ホントですか?」
店長「ほんと、ホント!」
男「いや、僕なんてそんな、そこまで気が利くほうじゃあないですよ、いやいや」
許嫁「まあお節介なのは確かね」
店長「ほら、彼女さんもそう言ってくれてるし」
男・許嫁「「彼女ではないです」」
店長「あ、そ、そう。あはは……」
店長「つまりね。何が言いたいかって言うと、この店は君で回っているようなものなんだ」
男「そんな……」
店長「これからもね、君を中心にがんばって行きたいと思ってる。これからもよろしく頼むよ」
男「あ、ありがとうございます……! 店長にそう言ってもらえるなんて、自信がつきました!」
男「僕のほうからもぜひ、これからもよろしくお願いします!」
店長「そうかね! じゃあ――」
男「帰るんでお会計お願いしますね」
店長「違うじゃん! 今のはこのまま働いてくれる流れだったじゃん!」
店長「しょうがないなあって苦笑して。エプロン手に取る胸アツ展開だったじゃん!」
店長「やだ! 働いてくれなきゃ店長やだ!」
男(駄々をこね始めた……ここ店内だぞ)
店長「お願いします! お願いしますよおおお。何でも、なんでもしますからあああああ」
男「ええい、いい歳こいたオッサンにしてほしいことなどないわ! 放せい!」
許嫁「いいじゃない。助けてあげれば?」
男「え?」
許嫁「このあとすることもないんでしょう?」
男「そりゃそうなんだが……」
店長「頼むよ~欠勤出て人数大きくマイナスで、ホント大変なんだよ~」
男「……はあ、まったく。しょうがない。やりますよ」
店長「ほ、ホントかね? 言質取ったからね!?」
男「ここで『言質取った』は発言としておかしいだろ」
男「じゃあお前は――」
許嫁「待つわよ、長くはならないんでしょう?」
男「え? いや、」
店長「そうだね。深夜のシフトの人も早めに出てきてくれるって言ったから、この忙しい時間帯だけ、本当にゴメンだけどお願いするね」
男「あ、は、はい。分かりました」
男「じゃあ、制服取ってきますね」
店長「よろしく頼むよ」
男「……」
男(先に帰ってくれと言おうとしたんだが……)
許嫁「……」ジー
男「いらっしゃいませ! 2名様でしょうか?」
男「ご注文承りました。少々お待ちくださいませ」
男「オーダーお願いしまーす」
男「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしております」
許嫁「……」ジー
男(あいつからの視線が痛い……何か面白いか?)
男(そうか、ファミレスが物珍しいのかもな)
男(来たことないって言ってたし)
許嫁「……」
許嫁「まったく」
許嫁「お節介なひとね」
許嫁「……」
許嫁「珍しいわ」
男「お疲れさまでしたー」
店長「本当にありがとうね。助かったよ」ペコリ
男「待たせたな」
許嫁「あなたって意外と真面目に働くのね」
男「お前は俺を何だと思ってるんだ」
許嫁「聞きたいの?」
男「やっぱいいわ。好き好んで誹謗中傷を聞きたくはないからな」
許嫁「残念ね」
……
『……そうですか。では、さしあたって大きな問題はなさそうですね』
男「小さな問題は数え切れないほどありますよ」
『そこはお二人で話し合って、乗り越えていってください。ふふふ』
男(……まったく)
男「しかし、一体なにを考えているんですか?」
男「自分はまだしも大変なのは彼女だ。慣れない生活に突然放り込まれて」
男「先日も体調を崩しました――ご存じだとは思いますが」
『あら、そのようなことが?』
男「……、どのような事情があるのかは分かりませんが、あまり無理を強いるようなことは……」
『無理、ですか』
男「ええ」
『そうとばかりとは言えませんよ』
男「?」
『ご実家へされた連絡です。私も詳細を知っているわけではありませんが』
『「慣れていないことが多く苦労もあるが、悪くない」と』
男「彼女が?」
『心配をかけないように、という側面もあるでしょうが。始めのころに比べれば随分と楽しみも増えてきたようですよ』
男「そうかな……」
『最近はお二人でお出かけになることもあるそうじゃないですか?』
男「彼女が楽しんでくれているかは分かりませんがね」
『そちらに向かうまでの生活ですが、あれだけのお立場ですと窮屈なことも多かったようです』
『ご学友をお作りになることも難しく、お父上もお忙しい方ですから』
『ご自宅で食事を取られるのも、お一人の時が多かったそうで』
『プライベートで、どなたかとご一緒にお食事をするという機会も少なかったでしょう』
男「……」
『……一人は寂しいですよ。誰だって。そうはお思いになりませんか?』
男「それは」
『少し、露骨でしたね。お恥ずかしい』
男「いえ、おっしゃりたいことも分かります。僕は――」
『……あら、もうこんな時間ですね』
男「……祖父には、よろしく伝えておいてください」
『ええ』
男「それからもうひとつ」
『?』
男「自分もどんな理由でこんなことになっているのかさっぱり分かりません。だけど――」
男「今の状況も『悪くない』と」
『……、承知しました』
男「……」ピッ
男「……ふぅ」
今日は以上です。次回は少し間が空くかもしれません。
レスありがとうございます、頑張れます。
レスありがとうございます、頑張れます。
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