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元スレ許嫁「……聞いていない?」
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男「おう。たまには遊んで帰るか?」
友「ん? ああ、悪い。今日はすることがあって」
男「なんだ、珍しくそんな深刻そうな顔して。……何かあったのか?」
友「あ、いや……。ちょっと、考えることがあってな」
男「何か手貸せることあるか?」
友「あ、それだったら……いや。大丈夫だ、ありがとな。これは俺の問題だから……じゃあなっ」タタタッ
男「お、おう。じゃあな!」
男(どうしたんだあんな急いで)
男(それに、なんで今あいつは……)
男「大事そうにメイド服抱えていったんだ?」
男「しかし、どうするか」
男(このまま家に帰っても特にやることもないしな……ん?)
男(ここは渡り廊下だが……妙に汚れが目立つ)
男「ここも、あそこも。おや、この箇所なんて特にだぞ」
男「いや、これは……結構汚れていないか?」
男「……マジか……」
男(結構この渡り廊下通ってたのに、この汚れに気がつくことなくスルーしていたとは……何たる不覚!)
男(しかし、文化祭前に気がついたのは僥倖! 外部の人も来られるし、清らかたる我が校を見てもらうには絶好のチャンスだぜ!)
男「そうと決まれば話は早い! 道具を持って来い、汚物は消毒だああああああ!」
……
男「ふふふふ……ふはははははは! どうした、その程度か!」サッサッ
男「!? ……馬鹿な。効果が無い……? いや、効いている筈だ、全軍、攻撃を止めるな!!」キュッキュッ
男「犠牲は……、少なくない、な。だが、彼らの働きはムダにはしない!!」ゴシゴシ
男「ようやく、ここまで……。いざ、この戦いが終われば、我らの勝利だ!!!」シュッシュ
男「闇より生まれし眷属よ、汝らがいるべき闇へと還れ!」ガリガリ
男「……ここは、平和になる……。だから、守ろう……」ヌリヌリ
……
男「……」
男「見ろよ。凄いだろう? 信じられるか、これがあの渡り廊下なんだぜ?」
男「俺だけの力じゃここまではできなかった。みんな(掃除道具)、……ありがとう、心から」
男「……ありがとう……」
男「……」
男「……」
男「……」
男「うん、綺麗になったし道具片付けたら帰るか」
校門
許嫁「……あ! あら。偶然ね。今帰りかしら?」
男「ああ、掃除に熱中していたらいつの間にかこんな時間だぜ」
許嫁「掃除の何がそれほどまでにあなたを熱くさせるのよ……」
男「うむ。それはだなあ」
許嫁「言わなくて結構。まるで興味ないから」
男「そりゃ残念。お前は何してたのよ?」
許嫁「久しぶりに空いた放課後だから。図書館で読書してたのよ」
男「ふーん、そうか。何か面白い本でも見つけたのか?」
許嫁「そうね。……今日あなた、アルバイトもなかったわよね」
男「ああ。シフトはお前と同じだよ」
許嫁「そ。じゃ、このまま帰るのね」
男「? うん。もうすることもないし」
許嫁「ふうん、そ。じゃあ私も帰ろうかしら」
男「……?」
男(何だこの会話)
許嫁「……」
男「……」
男「帰らないの?」
許嫁「帰るわよ」
男(何故そう言いながら動きださないんだ、こいつは)
男(相変わらずよく分からんやつだな)
許嫁「……」
男「何か待ってるの?」
許嫁「いいえ。特に、そんなものはないわね」
男「じゃ、何で帰らないんだ?」
許嫁「帰るわよ。そう言ったでしょう?」
男「そうか。じゃ、迷子にならないよう帰れよな」
許嫁「……っ。そうね。帰るわ、じゃあね」
許嫁「また家でね」ツカツカ
男(……。こいつ、もしかして)
男「あーっと。このまま、真っ直ぐ帰るのか?」
許嫁「……え?」
許嫁「え、ええ。そうね。他にすることもないから、帰るわ」
許嫁「あなたもそうなのかしら?」
男「ああ、そうだな」
許嫁「そ。ふーん。そうなのね」
男「……」
許嫁「……」
男「……せっかくだし、一緒に帰る?」
許嫁「……せっかくって何よ」
男「まあ、帰り道一緒だからな。それに、わざわざずらすってのも変だろ?」
許嫁「……そう、ね。まあ。あなたがそうしたいって言うんだったら、そうしようかしら」
男「うし。じゃあ行こうぜ」
許嫁「あんまり、早く歩かないでよね」
男「へいへいお嬢様」
……
自室
携帯prprprpr
男「電話……ん、あいつか」ピッ
友『もしもし』
男「カメよ、カメさんよ~♪」
友『せかいのうちで俺ほど~♪ 罪深き、ものは……ない……んだ……。すまない……っ』
男「何をしたんだよ」
友『今、大丈夫か?』
男「ああ。全然平気。どうした?」
友『お前のお嫁さんのことだけど』
男「まだ嫁じゃねーよ。で、何だ」
友『ちょっと気になることがあってな』
男「……気になること?」
友『や、今日の放課後なんだけどさ。彼女、校門で立ってるの見たのさ』
男「何……だと……? 校門に、だと……?」
友『いや、まだ伝えたいところじゃないから』
男「ああ、そう。それで?」
友『なんていうかさ、何かを待ってるような感じ。ちょっとソワソワしているような』
男「……。ふうん」
友『彼女を気にしてるヤツらから色々声をかけられてたりもしたけれど』
男(そんなヤツら本当にいるのか。まあ外見はいいからな。外見だけは)
友『結構長い時間そこにいたなあ』
男「その間、お前は何してたんだよ」
友『……』
男「もしもし?」
友『……何度やってもあの味に敵わないんだ』
男「味?」
友『混ぜ方か? 材料か?』
友『俺とあいつの何が違うって言うんだ! くそう! 上手くパウンドケーキ作れるようになって俺もチヤホヤされたいのに! クラスで注目を浴びて。キャーキャーすごーい。本当は家庭的なこともできるんだね。って。そして女子達が俺にぐふふふ……』
男「そういうヨコシマな考え方が味に影響してるんじゃないかな」
友『そういうわけで家庭科室にいたんだが、まあ、俺の話はいい』
男「ちょっと待て。お前、メイド服着てケーキ作りしてたのか?」
友『……』
男「……」
友『……まあ、俺の話はいい』
男「あ、ああ」
男(深く触れないでおこう)
友『それで。彼女、何してたんだろうな?』
男「はあ? 何か待ってるようだったんなら、その通り何か待ってたんだろ」
友『何待ってたんだろうね? かなりの時間あったぞ』
男「……さあね。俺には分からんな。何考えてるのか分からないヤツだし。用件はそれだけか?」
友『そうか。いやあ。その後お前が一緒に帰ってるの見たからさ、何か知ってるかと思って』
男「……。お前ね」
友『ははは。友人をおちょくるのは楽しいな』
男「……ったくよ。良い性格してるぜ」
男「……」
男(校門で何かを待ってた……)
男(しかもそれなりの時間)
男「……いやいやいやいや」
男(偶然って本人が言ってたし)
男「うんうん。そうに違いないな。そうに違いない」ウンウン
男(確かに、あのときは一緒に帰りたいようなそんな空気を……)
男「……。いやいやいや、俺の勘違いかもな!」
男(……)
男「まあ、一緒に住んでるしな。分かるよ? 一緒に帰るのはな!」
男「だからってわざわざねぇ? そんな、そこそこの時間待ってまでさ。まさかね?」
『何待ってたんだろうね? かなりの時間あったぞ』
男(……)
男(まさかね。あいつが、わざわざ俺をずっと待つような真似をするわけが――)
コンコン
男「のわっ!?」
許嫁『っ。な、何驚いているのよ?』
男「な、何だ? 何か用か?」
許嫁『……別に。私もう寝るから』
男「あ、ああ。分かった」
許嫁『……、オヤスミ』
男「お、おやすみー」
許嫁『うん……』スタスタ
男(最近、行動に驚かされるな)
男「……あれ?」
男(おやすみ、なんて今まで言われたことあったっけ……?)
しかし「覚悟してよね」と言ったわりに一緒に帰ってオヤスミを言っただけである
だがそこがいい
だがそこがいい
……
教室
転校生「ちょっと聞いたんだが。文化祭について、この学校には言い伝えのようなものがあるらしいな」
男「? 言い伝え? そんなのあるのか?」
友「もしかして、後夜祭のときのイルミネーションがうんぬん、ってヤツ?」
転校生「ああ、それだ! その話だな」
男「後夜祭……文化祭の終わりにやるアレか。それがどうしたんだ?」
友「なんだお前知らなかったの? 結構有名だと思ったんだが……」
友「この学校の文化祭で、男女二人。一緒に色々周って楽しむってのがまずあって……」
男「オチがなんとなく読めたぞ」
友「はは、まあ最後まで聞け。それで後夜祭だ。最後に伝統的な行事として、中庭のイルミネーション点灯式あるだろ?」
男「あー、そういや去年もそんなイベントあったな」
友「あのイルミネーションが輝いている間。男子から愛を告白して、それを女子が受け入れれば。その二人は永遠に幸せになる、という」
転校生「そうだ、僕が聞いたのはまさにその話だ」
男「ほーん。そんなのあったんだ。どっかで聞いたような設定だな」
転校生「む、君は興味がないのか?」
男「全然ねー。『夢』と『dream』が異なる文化の言葉なのに、何故睡眠中に見るものと将来の理想の意味をどちらも持ちあわせるのか、という疑問と同じくらい興味ねーな」
転校生「……今僕は、その疑問がかなり気になってしまったんだが」
男「そもそもがこの学校創立してからまだ新しいほうだろ? それで言い伝えやら永遠やら、なんて言われてもな」
転校生「あ、今の疑問の答えって教えてくれるわけじゃないんだ……」
友「実際ここ最近にできたらしいけどな、後夜祭のその話」
男「ウチの学校ってそういった話が全くないからな。そういった物が欲しいって人が言い始めたんだろう」
転校生「君は身も蓋もないことを言う」
男「まあ、そういう類の話、好きな人は好きなんだろうが。俺にはとても……ん?」
許嫁「……」
男「どうした? 何か用か?」
許嫁「……え?」
男「そんなぼんやりとして。何だ、見とれたか?」
許嫁「……あなたそんな顔でよく言えたものね?」
男「別に俺に、とは言ってないが」
許嫁「っ。……相変わらずの減らず口なんだから」
男「お前にそれを言われるとはな……で、何だ? 用事があるのか?」
許嫁「内装班の段取りについて、ちょっと聞きたいことがあってきたの」
転校生「あ、僕ですか。何のことです?」
許嫁「ええ。このクロスについてなんだけど……」
廊下
先輩「天が呼ぶ、地が呼ぶ。そろそろ出せと誰かが呼ぶ!(希望)」
先輩「説明不要っっ!!! 先輩の登場だぁぁぁぁ!」
男「こんにちは先輩」
先輩「……」キョロキョロ
男「? どうしたんです?」
先輩「君のトモダチ、いないよね?」
男「ああ……。あいつなら今日も家庭科室に居ますよ」
先輩「そっかそっかーそれなら良かったでござるよ」ホッ
男「どうしてそんなにソリが合わないんですか?」
先輩「えっ? ……これ、言ってもいいのかなあ」
男「?」
先輩「うーん。キミにだったらいっか。これ、他の人にはナイショだかんね」
男「……はい」
先輩「実はね、彼……」
男「……」ゴクリ
先輩「伊賀、なんだ……」
男「……イガ?」
先輩「そう。私は……甲賀なの。だからお互いを敵としか見られない、これは命より重い……運命(サダメ)……」
男「あ、そうだったんですか。納得がいきました。じゃあ仕方ないですね、それは」(棒)
先輩「あ、あれれ? 信じてないでござるか? その顔は?」
先輩「さ、さてはキミも伊賀のモノ?!」
先輩「ああ! キミと敵味方に分かれるなんて、天はなぜ私にかくも、重い運命(サダメ)を負わせるのか!」
男「いえ。伊賀でも甲賀でもないです。俺はノーマルなんで」
先輩「何かそれ、私がアブノーマルみたいな言い方だねっ?」
男「嬉しそうに言わないでくださいよ」
先輩「むむむッ。さては信じておらんでござるな、御主!?」
男「先輩って嘘下手ですからね」
先輩「……そうかな? そう思う?」
男「ええ。俺にはそう見えますが」
先輩「そ。私も修行が足りぬみたいでござるな!」
先輩「そう言えばさ、文化祭。君のトコ喫茶店やるんだって? 調べたよ! ニンニン!」
男「そうなんですよ。ちょっとだけ衣装が特殊ですけどね。先輩のクラスは何するんですか?」
先輩「んっふっふー。私のクラスはねえ……YAKISAVAだよ!」
男「ああ、やきそ……焼き鯖?」
先輩「うん、焼き鯖屋。大量のサバ仕入れるよ~教室がサバ臭いよぉ~」
男(い、一体どういう経緯でそんな店をすることになったんだろう……恐ろしいクラスだ)
男「でも大丈夫なんですか、主に衛生面で」
先輩「ダイジョーブダイジョーブ! ウチのは腐らないサバだから!」
男「え?」
先輩「何しろ生命力がそこらのとはダンチガイだから! 仕入れてから結構経つのにまだピチピチ跳ねてるの!」
男「え……」
先輩「首をはねられても、他の個体の身体を乗っ取って生き延びたって目撃例もあるくらいよ!」
男「えぇ……」
先輩「常温保存可! 生物を超越した回復力! 百年たってもダイジョーブ! 」
先輩「……まあ日光に当てちゃいけないとか、特殊なエサとか、面倒な条件はあるんだけど」ボソ
男(そ、そんな代物があり得るのか……? 本当だとしても、絶対に口にしたくないぞ)
先輩「絶対食べに来るんだよ、絶対だかんね! もし来なかったら君の教室まで食べさせに行くかんね! 大量のサバと共に襲来するかんね!」
男(……絶対にやめて欲しい)
……
自宅
男「ただいまんぼう」ガチャ
許嫁『……!』
男(ん? リビングから話し声?)
許嫁『……らない?』
男(アイツの他に誰かいるのか……? いや、電話か)
許嫁『別に大したことじゃないのだけれど』
許嫁『一緒に文化祭周らない? 別にあなたが暇だったら、でいいのだけれど』
許嫁『ま、あなたならこの学校の文化祭よく知っていて面倒がなくてすむと思うし』
許嫁『……あ、でも。変な風に取らないでよね? あなたがいたほうが多少は便利かなって思っただけだから。それだけよ』
男(文化祭に誰かを誘ってるのか。にしても相変わらず偉そうな態度だな)
許嫁『そう。だったら一緒に周りましょう?』
男(へえ、誘いたい相手なんていたのか)
男(案外男子相手だったりして)
男(そういやアイツを気にしてるようなヤツらはいるって聞いたな)
男(外見だけはいいからな)
男(……)
男(いや……それは、しかし……)
許嫁「……はぁ」ガチャリ
男「!」
許嫁「きゃっ!? か、帰ってたの!?」
男「ああ。たった今帰ってきたところだ」
許嫁「……、もう。驚かせないでよね。突然帰ってこないで」
男「普通に自分の家に帰ってきたのに突然て……どないせーって言うんじゃ」
……
教室
転校生「君に一つ聞きたいことがあるのだが」
男「絶対に一つだけだぞ」
転校生「……君は言葉の綾というものを知らないのか?」
男「知ってます。じゃあな、答えたぞ。質問は終わりだ」
転校生「違う、今のが聞きたかったわけじゃない!」
男「何だよ早く言えよ。質問一つをどれだけもったいぶるんだよ」
転校生「誰のせいだ誰の……まあいい。今度の文化祭だが、君は誰かと周る約束なんてしたのか?」
男「え……?」ドキン
転校生「違う! 君を特別に誘ってるわけじゃない!」
転校生「器用だな! なんだ、今のドキンってのは!」
転校生「君はすぐに僕の話を茶化す」
男「なはは。お前は可愛い反応をしてくれるからな、ついつい。許せ」
転校生「……可愛いとか言うな」
男「ま、約束なんてしてないが、いつものメンツで遊ぶんじゃないかな。聞きたいのはそれだけか?」
転校生「いや。……その、誘ったりはしないのか?」
男「?」
転校生「……ほら」クイッ
男(アイツのことか)
許嫁『……』
男(席に座って頬杖ついて……何か難しい顔で物思いにふけってるな)
許嫁『……』チラッ
転校生「おや? 君を見たぞ」
男「俺とは限らないだろ。この辺に妖気でも感じたんじゃないか」
許嫁『!? ……』フイッ
転校生「君の視線に気がついて、必要以上に顔を背けた」
男「今度はあの辺に妖気を感じたんだな」
転校生「……誘わないのか?」
男「何でそんなこと聞くんだ?」
転校生「あの話を忘れたのか? 一緒に文化祭を周って、そして後夜祭でイルミネーションが――」
男「何故俺が、アイツを誘わなければいけないのか、と聞いている」
転校生「そうだな。確かに、彼女があの話に関心があるかどうかは分からない」
男「あれ? 俺の言ってること、聞こえた?」
転校生「これは仮に……仮に、だが。僕もそういう話にあまり興味はない。だが、しかし。それでも僕なら。誘われて悪い気はしないと思う」
男「お前の意見なんて尋ねていないぞ?」
転校生「君の態度、分からなくはない。こういうの誘うのって、思ったより勇気がいるものな。なんせ好意を持ってると、相手に告げているようなものだから」
男「何だ? 俺の周りには人の話を聞かないヤツが揃っているのか?」
転校生「……誘わないのか」
男「あのな。誘う誘わない以前に、アイツ誰かともう――」
転校生「そうだ! 僕が誘ってくるぞ? それでいいのか? いいんだな?」
男「……ん?」
転校生「よし! それがいいな! 誘う、誘うぞ~。僕があの人を誘って来るぞ~!」チラッ
男「え……?」ドキン
転校生「僕が、あの人と二人。文化祭を楽しもう! 後夜祭で、イルミネーションを見よう! そして、それで……! よし、誘うぞ~っ」チラッチラッ
男「っ……そ、それだったら俺が……」
転校生「! やっぱり君は――」
男「みたいな流れに本気で出来ると思ったのかお前は」
転校生「くっ、演技か!? ……今のは少し無理があったか」
男「……少しか?」
転校生「君も思っていたより強情な人だ。いや、あるいはそれは余裕というものなのか?」
男「お前も最初の印象に比べると随分と強引なヤツだった」
転校生「何か君、意固地にはなってないだろうか?」
男「……んなことはない」
転校生「本当か?」
男「……。そもそも、お前は何がしたいんだ?」
転校生「えっ? 僕?」
男「何が目的だ? なんで、こんなことを俺に言う?」
転校生「え、いや。僕は、その、なんというか。その……」
男「……」
転校生「その。ええっと……」
男「……。まあ、本人に直接確かめたワケじゃないけど、既に誰かと文化祭周る予定みたいだぞ、アイツ」
転校生「え。ほ、本当か? 嘘じゃないだろうな?」
男「こんな嘘つかないっつーの」
転校生「君も案外素直じゃないところがあるみたいだからな。……本人に確かめてくる」
男「だったら最初からそうしておけよ」
……
転校生「……本当に君は約束をしていないんだな?」
男「ああ。どうだった?」
転校生「先約がある、と」
男「だろ?」
転校生「……君じゃないとしたら、一体誰なんだろう?」
男「聞かなかったのか?」
転校生「あまり言いたくなさそうだったから、聞くのがためらわれて……」
男「何故俺に対して発揮した強引さがそこでは出ない」
転校生「君に心当たりは?」
男「さあね、分からん。本当だ」
転校生「そうか……」
……
校門
許嫁「あら、偶然ね。今、帰りかしら?」
男「ああ。さっき、班の今日の作業が終わったところでな、こっちは順調に行ってるぜ」
許嫁「そ。私の班も良い感じよ。まあ、全くトラブルがないとは言えないんだけど」
男「こっちも同じだ。まあトラブルの一つや二つあるのは当然だし、それに今はそれすら楽しくあるな」
許嫁「そうね、私もそう思うわ。じゃ、私は帰ろうかしら?」
許嫁「……この後、することもないから」
男(……)
男「そうか。じゃあ、せっかくだし――」
許嫁「そうね。そうしようかしら。わざわざ帰りをずらすってのも意識しているみたいで変だものね」
男(……まだ全部言ってないんだが)
……
帰り道
男「……と、こういった顛末で。俺と白い悪魔との死闘が幕を閉じたんだ」テクテク
許嫁「え? ……あ、そうなの。それは大変だったわね」テクテク
男「……?」
男(なんだ、反応がいまいち悪いな)
男(……やはりコンロの白い油汚れと戦う話は高度すぎたか?)
男(俺的にはツボなんだが……よし。こうなったらとっておきだ、赤い絨毯のシミと遭遇した話を――)
許嫁「……」テクテク
男(いや、待て。どこか上の空のような感じがするぞ、コイツ)
男(……よし。確かめてみるか)
男「ところで、今晩のご飯なんだが。シュールストレミングのキビヤック和えなんてどうだろう?」
許嫁「……え?」
男「晩御飯だよ。献立、今のでいいか?」
許嫁「え、ええ。そうね。私はそれでいいと思うわ」
男「……」
男(やはり。コイツ、全く人の話を聞いてないぞ。生返事だ……どうしたんだ?)
男(まあ変なのは今に始まったことじゃないが)
男(何か悩みごとでもあるのか? でも、中々打ち明けてくれないからな)
許嫁「……」テクテク
男(随分険しい顔をしてるな。もし、悩み事だとしたら何だろう?)
男「……」
男(もしかして許婚って関係のことか?)
男(結局のところ。今の状況に甘んじて、俺は何も選べていない)
男(選ぶ……いや、それ以前に)
男(もう俺は、受け入れなければいけないはずなんだ)
男(……)
男(俺の甘えが、こいつにも。無理をさせてるのかな……)
許嫁「……っ」
男「っと。なんだ、急に立ち止まって?」
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