私的良スレ書庫
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元スレ士郎「……俺は、偽物なんだ」
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「……素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公」
ーー冬木市、衛宮邸。かつて"爺さん"が住んでいた家であり、衛宮士郎が暮らす家。そしてここは、現在は主に魔術の鍛錬を行っている土蔵。
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
自分は今、聖杯戦争に参加するためにサーヴァント召喚の儀式を行っている。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。?繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
事前に用意できたのは即興の魔法陣のみ。できれば何かの触媒も欲しかったが、時間にあまり余裕がなかったので仕方ない。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。?聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
魔法陣に魔翌力が集中するのが感じられる。
いよいよだ。いよいよ、この狂った運命を覆すための戦争が始まる。
「誓いを此処に。?我は常世総ての善と成る者、?我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、?抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔法陣の中心から眩いほどの光が放たれ、思わず目を腕で隠す。
どこからともなく強い風が吹き、その勢いに後ずさりをしてしまう。
…光と風が収まったのを確認し、改めて目を魔法陣の方にやると、その中央には何かがぼうっと浮かんでいた。
その姿はーーー
「謂われはなくとも即参上。軒轅陵墓から、良妻狐のデリバリーにやって参りました!」
……巫女装束、だろうか?何やら露出の多い和服を身に纏い、獣耳と大きな尻尾を付けた女性だった。
「…あ、なんかドン引きしてません?えーっと、貴方が私のご主人様…ですよね?」
その言葉にはっと我に帰る。
そうだ、彼女とはこれから先共に闘っていかねばならないのだ。見た目なんかに困惑してはいけないし、何より彼女に失礼だ。
「ーーああ、俺がお前のマスターだ」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1491044772
ーー冬木市、衛宮邸。かつて"爺さん"が住んでいた家であり、衛宮士郎が暮らす家。そしてここは、現在は主に魔術の鍛錬を行っている土蔵。
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
自分は今、聖杯戦争に参加するためにサーヴァント召喚の儀式を行っている。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。?繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
事前に用意できたのは即興の魔法陣のみ。できれば何かの触媒も欲しかったが、時間にあまり余裕がなかったので仕方ない。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。?聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
魔法陣に魔翌力が集中するのが感じられる。
いよいよだ。いよいよ、この狂った運命を覆すための戦争が始まる。
「誓いを此処に。?我は常世総ての善と成る者、?我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、?抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔法陣の中心から眩いほどの光が放たれ、思わず目を腕で隠す。
どこからともなく強い風が吹き、その勢いに後ずさりをしてしまう。
…光と風が収まったのを確認し、改めて目を魔法陣の方にやると、その中央には何かがぼうっと浮かんでいた。
その姿はーーー
「謂われはなくとも即参上。軒轅陵墓から、良妻狐のデリバリーにやって参りました!」
……巫女装束、だろうか?何やら露出の多い和服を身に纏い、獣耳と大きな尻尾を付けた女性だった。
「…あ、なんかドン引きしてません?えーっと、貴方が私のご主人様…ですよね?」
その言葉にはっと我に帰る。
そうだ、彼女とはこれから先共に闘っていかねばならないのだ。見た目なんかに困惑してはいけないし、何より彼女に失礼だ。
「ーーああ、俺がお前のマスターだ」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1491044772
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
【聖杯戦争1日目:開始】
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
【聖杯戦争1日目:開始】
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
『ーー近頃、冬木市内では通り魔事件が相次いでおり、警察が住民に警戒を呼びかけています。被害者はこの一週間で4人に及んでおり……』
「なーんか、最近物騒よねー」
そう言いながらご飯を口の中に放り込んでいくのは、クラスの担任である藤村大河。士郎にとっては姉貴分でもある。
「藤ねえ、食べながら話すのは行儀が悪いって……」
学校ではしっかり者の教師として人望を集めているのだが……ここだとご覧の通りだらけまくっている。オンとオフの差が激しい人だ。
「なーに、士郎?いつの間に私に指図出来るような立場になったのー?」
「いや、別に指図とかそういうわけじゃ……」
「大体ねぇ、私は士郎がちゃーんと成長するまで親代わりをするって切嗣さんに誓ったのよ?だから毎日様子を見に来てるっていうのに、それを士郎ったら…」
申し訳ないが、そんな事情は知らない。
……が、ほぼ毎日様子を見に来てくれる彼女のことは嫌いではない。そもそも嫌いなら毎日のように一緒に朝食を食べてないし。
「…ってあー!もう出ないと遅刻する!テストの採点あったんだーーー!」
彼女はそう言って慌てて家を飛び出した。
朝からテンションが高いようで何よりである。
「なーんか、最近物騒よねー」
そう言いながらご飯を口の中に放り込んでいくのは、クラスの担任である藤村大河。士郎にとっては姉貴分でもある。
「藤ねえ、食べながら話すのは行儀が悪いって……」
学校ではしっかり者の教師として人望を集めているのだが……ここだとご覧の通りだらけまくっている。オンとオフの差が激しい人だ。
「なーに、士郎?いつの間に私に指図出来るような立場になったのー?」
「いや、別に指図とかそういうわけじゃ……」
「大体ねぇ、私は士郎がちゃーんと成長するまで親代わりをするって切嗣さんに誓ったのよ?だから毎日様子を見に来てるっていうのに、それを士郎ったら…」
申し訳ないが、そんな事情は知らない。
……が、ほぼ毎日様子を見に来てくれる彼女のことは嫌いではない。そもそも嫌いなら毎日のように一緒に朝食を食べてないし。
「…ってあー!もう出ないと遅刻する!テストの採点あったんだーーー!」
彼女はそう言って慌てて家を飛び出した。
朝からテンションが高いようで何よりである。
場面は変わり、通学路にて。
「藤村先生、今日は一段とハイテンションでしたね」
隣でそう言って歩いているのは、後輩の間桐桜。クラスメイトの間桐慎二の妹で、家の手伝いをよくしてもらっている。
「まぁな…」
適当な相槌を言いながら通学路を歩いていく。思えばこの道ももう慣れたものだ。
と、交差点に差し掛かった時。目の前にはあまり見慣れない風景があった。
道路を通過していく何台ものパトカー。あたりには警察官が至る所におり、よく見ると路地裏の方には「KEEP OUT!」のテープが張り巡らされている。
「何でしょう、先輩…」
「……いや、分からん」
先ほどテレビでやっていた通り魔事件の捜査だろうか?だとするなら家のすぐ近くで事件が発生したことになる。
「…まあ、あまり気にするな。桜」
「はい」
「藤村先生、今日は一段とハイテンションでしたね」
隣でそう言って歩いているのは、後輩の間桐桜。クラスメイトの間桐慎二の妹で、家の手伝いをよくしてもらっている。
「まぁな…」
適当な相槌を言いながら通学路を歩いていく。思えばこの道ももう慣れたものだ。
と、交差点に差し掛かった時。目の前にはあまり見慣れない風景があった。
道路を通過していく何台ものパトカー。あたりには警察官が至る所におり、よく見ると路地裏の方には「KEEP OUT!」のテープが張り巡らされている。
「何でしょう、先輩…」
「……いや、分からん」
先ほどテレビでやっていた通り魔事件の捜査だろうか?だとするなら家のすぐ近くで事件が発生したことになる。
「…まあ、あまり気にするな。桜」
「はい」
「…………」
昼。普段なら教室で弁当を食べたり生徒会室で会長の手伝いをしたりしているのだが、今日は屋上に来ている。
もちろん理由はある。今目の前で膨れっ面をしているこのサーヴァント、『キャスター』と会話をするためだ。
するためなのだが。
「あのー、『キャスター』さん?何をそんなに拗ねてるんです?」
「…だってご主人様、召喚してから私と全然話そうとしてくれないんですもん……」
「仕方ないだろう?桜や藤ねえの前で実体化させるわけにもいかないし…」
「でもでも!念話でもいいんです、もっと私にも構って下さいまし!狐は寂しいと死んじゃうんですよ?」
「なんでさ」
それを言うなら兎だろう。
「てゆーか、何なんですかあの女二人!ハーレムですか!?一夫多妻ですか!?去勢されたいんですか!?」
「分かった、分かったから!取り敢えず落ち着けって!」
昼。普段なら教室で弁当を食べたり生徒会室で会長の手伝いをしたりしているのだが、今日は屋上に来ている。
もちろん理由はある。今目の前で膨れっ面をしているこのサーヴァント、『キャスター』と会話をするためだ。
するためなのだが。
「あのー、『キャスター』さん?何をそんなに拗ねてるんです?」
「…だってご主人様、召喚してから私と全然話そうとしてくれないんですもん……」
「仕方ないだろう?桜や藤ねえの前で実体化させるわけにもいかないし…」
「でもでも!念話でもいいんです、もっと私にも構って下さいまし!狐は寂しいと死んじゃうんですよ?」
「なんでさ」
それを言うなら兎だろう。
「てゆーか、何なんですかあの女二人!ハーレムですか!?一夫多妻ですか!?去勢されたいんですか!?」
「分かった、分かったから!取り敢えず落ち着けって!」
閑話休題。
「で、聖杯戦争の話なんだけど…」
先ほどから言っているように、このサーヴァントはキャスター。
キャスターはスキル『陣地作成』と『道具作成』により、時間が経てば経つほど強力になるという特性を持つ。
『対魔翌力』スキルを持つ三騎士クラスとの白兵戦は苦手だが、日数が経過するにつれて十分勝ちの目が出てくるのだ。
つまり、キャスターで聖杯戦争を勝ち残るには、いかにして時間を稼ぐかが鍵になるというわけだ。
「どうする?『キャスター』が陣地作成してる間、俺も外に出ない方がいいよな?」
「……えーっとですね、その事なんですけど……」
「?」
「私、陣地作成とか道具作成とか苦手なんで……ぶっちゃけいつまでも最弱です☆」
「……マジ?」
「大マジです」
「…………」
「一応、魔術攻撃はそこそこですけど、耐久も低いんで……一発喰らったらアボンです」
……………。
「で、聖杯戦争の話なんだけど…」
先ほどから言っているように、このサーヴァントはキャスター。
キャスターはスキル『陣地作成』と『道具作成』により、時間が経てば経つほど強力になるという特性を持つ。
『対魔翌力』スキルを持つ三騎士クラスとの白兵戦は苦手だが、日数が経過するにつれて十分勝ちの目が出てくるのだ。
つまり、キャスターで聖杯戦争を勝ち残るには、いかにして時間を稼ぐかが鍵になるというわけだ。
「どうする?『キャスター』が陣地作成してる間、俺も外に出ない方がいいよな?」
「……えーっとですね、その事なんですけど……」
「?」
「私、陣地作成とか道具作成とか苦手なんで……ぶっちゃけいつまでも最弱です☆」
「……マジ?」
「大マジです」
「…………」
「一応、魔術攻撃はそこそこですけど、耐久も低いんで……一発喰らったらアボンです」
……………。
……こういう時、何て言えばいいんだろうか。
「うぅっ、すみません。こんなサーヴァントで……。幻滅しましたよね……?」
「……何言ってんだよ。幻滅なんてするわけないだろ?」
「……ふぇ?」
「弱いからって『キャスター』を嫌うはずないって。だって、俺のサーヴァントは『キャスター』しかいないんだから」
「それに、ただ単に正面からの戦いが苦手ってだけだろ?そんなのは戦術次第でどうにでもなるし」
「キャー!ご主人様ったらイケメンッ!」
『キャスター』は自分の言葉に感動したのか、自分の手を握ってブンブンと上下に振っている。耳と尻尾もせわしなく動いていた。
少々オーバーリアクションにも見えるが、サーヴァントが友好的なのは喜ばしいことだ。
その後、大雑把ではあるが今後の方針を決めた。
基本的には周りに不信感を抱かれないためにも普段通りに学校に通うこと。ただしアサシンの対策のため霊体化した『キャスター』が常に共に行動すること。
基本的に夕方、もしくは夜間に探索を行うこと。
そして、可能な限り不意打ちを狙うこと。複数のサーヴァントが戦っているときに漁夫の利を狙えればベストだ。
「じゃあ、こんな感じで。よろしくな、『キャスター』」
「はい!もちろんです、ご主人様!」
「うぅっ、すみません。こんなサーヴァントで……。幻滅しましたよね……?」
「……何言ってんだよ。幻滅なんてするわけないだろ?」
「……ふぇ?」
「弱いからって『キャスター』を嫌うはずないって。だって、俺のサーヴァントは『キャスター』しかいないんだから」
「それに、ただ単に正面からの戦いが苦手ってだけだろ?そんなのは戦術次第でどうにでもなるし」
「キャー!ご主人様ったらイケメンッ!」
『キャスター』は自分の言葉に感動したのか、自分の手を握ってブンブンと上下に振っている。耳と尻尾もせわしなく動いていた。
少々オーバーリアクションにも見えるが、サーヴァントが友好的なのは喜ばしいことだ。
その後、大雑把ではあるが今後の方針を決めた。
基本的には周りに不信感を抱かれないためにも普段通りに学校に通うこと。ただしアサシンの対策のため霊体化した『キャスター』が常に共に行動すること。
基本的に夕方、もしくは夜間に探索を行うこと。
そして、可能な限り不意打ちを狙うこと。複数のサーヴァントが戦っているときに漁夫の利を狙えればベストだ。
「じゃあ、こんな感じで。よろしくな、『キャスター』」
「はい!もちろんです、ご主人様!」
こんな感じで進んでいきます。
今更ですが、これはFate/staynightのSSです。
キャラ崩壊・原作設定からの乖離などがあります。ご注意ください。
あと遅筆です。ちまちま書き溜めながら進めていきます。今日はこれだけです
今更ですが、これはFate/staynightのSSです。
キャラ崩壊・原作設定からの乖離などがあります。ご注意ください。
あと遅筆です。ちまちま書き溜めながら進めていきます。今日はこれだけです
士郎がセイバーじゃなくてキャス弧が来たと言う事はマスター面子は同じでもサーヴァント面子が全員違うと考えて良いんですか?
例えば凛の所にはエミヤじゃなくてオリオンが来たりとか、イリヤ所にはヘラクレスじゃなくてダレイオス三世が来たりとか
例えば凛の所にはエミヤじゃなくてオリオンが来たりとか、イリヤ所にはヘラクレスじゃなくてダレイオス三世が来たりとか
ーー午後3時。
「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。
「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」
「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」
「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。
「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。ーー午後3時。
「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。
「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」
「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」
「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。
「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。
「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。
「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」
「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」
「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。
「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。ーー午後3時。
「……どうだ、衛宮?直りそうか?」
所変わって生徒会室。生徒会長でクラスメイトの柳洞一成に頼まれ、画面が真っ暗なブラウン管とにらめっこしている。
「前々から不調ではあったんだが、この度天寿を全うしたらしくてな」
「あのなぁ……さすがに天寿を迎えた機械は直らないぞ?」
「そうか……無理を言ってすまない」
「……一成、俺のロッカーから工具箱をとってきてくれるか?」
「え……ということは…!」
「多分まだこいつは、現役で戦えるさ」
「おお…忝い!」
「ご主人様、なんで無関係なあのメガネの手伝いなんかしてるんですか?」
柳洞一成が先に帰った後、一人で作業をしているところに『キャスター』がふと語りかけてきた。
「いや、別に?あいつは友達だし、これも単なる趣味だ」
かく言う自分は、絶賛修理に苦戦中だ。
思ったより複雑なところで回線がこんがらがっている。これは下校時間ギリギリまでかかるコースかもしれない。
「……ま、正義の味方に憧れてたからな。このくらいのことはして当然だ」
「おおー、正義の味方ですか。さすがご主人様、夢が大きいですね!」
「いや……俺は所詮、偽物だから。本物にはどう足掻いてもなれないさ」
「偽物、ですか?」
「……あぁ。俺がやってるのは正義の味方の真似っこにすぎない。こんなの、本物に比べたらおままごとレベルだ」
自分の言葉への返事に困ったのか、沈黙が続く。しばらくして、『キャスター』が口を開いた。
「……でもでも、今はご主人様のおかげであのメガネが助かってます。間違いなく、ご主人様は正義の味方ですよ!」
「……ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しい」
「おおー、正義の味方ですか。さすがご主人様、夢が大きいですね!」
「いや……俺は所詮、偽物だから。本物にはどう足掻いてもなれないさ」
「偽物、ですか?」
「……あぁ。俺がやってるのは正義の味方の真似っこにすぎない。こんなの、本物に比べたらおままごとレベルだ」
自分の言葉への返事に困ったのか、沈黙が続く。しばらくして、『キャスター』が口を開いた。
「……でもでも、今はご主人様のおかげであのメガネが助かってます。間違いなく、ご主人様は正義の味方ですよ!」
「……ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しい」
午後7時。
結局、下校時間ギリギリどころか完全にオーバーしてしまった。すっかり日も落ち、夜の闇が街を包んでいる。
「んじゃ、帰るぞ『キャスター』……どうした?」
「……ご主人様、サーヴァントです。それも2体」
「……っ!」
『キャスター』からの報告に、思わず気が張ってしまう。戦争は既に始まっているのだ。
「……場所は?」
「そんなに遠くない、というか学校内っぽいですね。方向は……」
キャスターが言い終わるより早く、激しく金属音が鳴り響く。音が聞こえてきた方向は、学校のグラウンドの方だ。
こういう時、どう行動すべきだろうか。
「ご主人様、どうします?とりあえずは様子見ですかね?」
「……そうだな。とりあえずグラウンドの方に行ってみよう。一応、少しでも気配が悟られないように霊体化して」
「はい、了解しました!」
結局、下校時間ギリギリどころか完全にオーバーしてしまった。すっかり日も落ち、夜の闇が街を包んでいる。
「んじゃ、帰るぞ『キャスター』……どうした?」
「……ご主人様、サーヴァントです。それも2体」
「……っ!」
『キャスター』からの報告に、思わず気が張ってしまう。戦争は既に始まっているのだ。
「……場所は?」
「そんなに遠くない、というか学校内っぽいですね。方向は……」
キャスターが言い終わるより早く、激しく金属音が鳴り響く。音が聞こえてきた方向は、学校のグラウンドの方だ。
こういう時、どう行動すべきだろうか。
「ご主人様、どうします?とりあえずは様子見ですかね?」
「……そうだな。とりあえずグラウンドの方に行ってみよう。一応、少しでも気配が悟られないように霊体化して」
「はい、了解しました!」
「はああぁぁっ!」
「フっ!せやっ!」
グラウンドのフェンス付近に着いた時には、戦闘はさらに激しさを増していた。鎧を着込み金髪を後ろで束ねた女性と、和服に身を包んだ侍のような男が切り結んでいる。
……しかし、奇妙なのは女性の武器だ。彼女は剣でも槍でもなく、旗を武器に戦っているのだ。
「なるほど……その刀捌きと立ち振る舞い、お見事です。日本の侍よ」
「得物が旗であってもその腕前。『セイバー』、其方からの賛辞、有難く頂戴する」
自分がここまで到着するのにかかった時間も考慮すると、既に切り結んだ回数は二十では足りないだろう。事実、彼らの戦場であるグラウンドの一部は土が大きく抉れている。
しかし一方で、彼らにはまるで疲れた様子もなく、汗の一滴も垂らしているようには見えない。
(これが、サーヴァント同士の戦い……)
人智を超えたその戦いに、息を呑まずにはいられなかった。
「フっ!せやっ!」
グラウンドのフェンス付近に着いた時には、戦闘はさらに激しさを増していた。鎧を着込み金髪を後ろで束ねた女性と、和服に身を包んだ侍のような男が切り結んでいる。
……しかし、奇妙なのは女性の武器だ。彼女は剣でも槍でもなく、旗を武器に戦っているのだ。
「なるほど……その刀捌きと立ち振る舞い、お見事です。日本の侍よ」
「得物が旗であってもその腕前。『セイバー』、其方からの賛辞、有難く頂戴する」
自分がここまで到着するのにかかった時間も考慮すると、既に切り結んだ回数は二十では足りないだろう。事実、彼らの戦場であるグラウンドの一部は土が大きく抉れている。
しかし一方で、彼らにはまるで疲れた様子もなく、汗の一滴も垂らしているようには見えない。
(これが、サーヴァント同士の戦い……)
人智を超えたその戦いに、息を呑まずにはいられなかった。
戦闘は続いた。
『セイバー』が攻める。侍のサーヴァントが受け流し、反撃を試みる。『剣士の英霊』が急激に加速し、体制を立て直す。
戦局はまさに膠着状態で、両者一進一退の接戦だった。思わず魅入ってしまうが、今はそれどころではない。
自分は観客ではなく役者なのだ。今は偶然出番がないだけで、いつ表舞台に上がることになってもおかしくない。
「……なあ『キャスター』、あの侍のクラスは何だか分かるか?」
「あれ?マスターにはサーヴァントの能力が見れるんじゃないんですか?」
「いや、この距離だと流石に厳しいみたいだ」
「そうですか……すみません、私にも正確には分からないです。ただ、消去法で考えるとアサシンじゃないかなーって」
日本刀を武器に戦っている時点でランサー、アーチャー、キャスターは除外される。また、普通に会話が出来ているのでバーサーカーでもないだろう。
一番可能性がありそうなのはセイバーだが、女性の方が即ちセイバーなのでこれもあり得ない。
となると最有力候補はアサシン、次点でライダーといったところか。
どちらか片方だけでも真名が分かれば理想的なのだが……旗を武器に戦った女性の英雄なんて、果たして存在しただろうか?
『セイバー』が攻める。侍のサーヴァントが受け流し、反撃を試みる。『剣士の英霊』が急激に加速し、体制を立て直す。
戦局はまさに膠着状態で、両者一進一退の接戦だった。思わず魅入ってしまうが、今はそれどころではない。
自分は観客ではなく役者なのだ。今は偶然出番がないだけで、いつ表舞台に上がることになってもおかしくない。
「……なあ『キャスター』、あの侍のクラスは何だか分かるか?」
「あれ?マスターにはサーヴァントの能力が見れるんじゃないんですか?」
「いや、この距離だと流石に厳しいみたいだ」
「そうですか……すみません、私にも正確には分からないです。ただ、消去法で考えるとアサシンじゃないかなーって」
日本刀を武器に戦っている時点でランサー、アーチャー、キャスターは除外される。また、普通に会話が出来ているのでバーサーカーでもないだろう。
一番可能性がありそうなのはセイバーだが、女性の方が即ちセイバーなのでこれもあり得ない。
となると最有力候補はアサシン、次点でライダーといったところか。
どちらか片方だけでも真名が分かれば理想的なのだが……旗を武器に戦った女性の英雄なんて、果たして存在しただろうか?
「……む?」
突然、侍のサーヴァントが動きを止めた。負傷を負ったのかと思ったが、そうではなさそうだ。まるで、何かの気配を探しているかのような……。
「『セイバー』よ、ここまでにしておく。どうやら我らの戦いを盗み見する輩がいるようだ」
「っ!」
その言葉が聞こえた途端、全速力で逃げ出した。もし今襲われたら、こちらに勝ち目があるとは思えない。相手は三騎士である『セイバー』と互角の打ち合いをしていたのだ。
例え侍のサーヴァントだけなら対処出来たとしても、最悪の場合『セイバー』も同時に相手にしなければいけないかもしれない。可能性は薄いとはいえ、そうなってしまっては万に一つも生き残れまい。
「キャスター、いつでも戦闘出来るように準備しといてくれ」
『はいっ!』
突然、侍のサーヴァントが動きを止めた。負傷を負ったのかと思ったが、そうではなさそうだ。まるで、何かの気配を探しているかのような……。
「『セイバー』よ、ここまでにしておく。どうやら我らの戦いを盗み見する輩がいるようだ」
「っ!」
その言葉が聞こえた途端、全速力で逃げ出した。もし今襲われたら、こちらに勝ち目があるとは思えない。相手は三騎士である『セイバー』と互角の打ち合いをしていたのだ。
例え侍のサーヴァントだけなら対処出来たとしても、最悪の場合『セイバー』も同時に相手にしなければいけないかもしれない。可能性は薄いとはいえ、そうなってしまっては万に一つも生き残れまい。
「キャスター、いつでも戦闘出来るように準備しといてくれ」
『はいっ!』
「もし彼が無関係な人間だとしたら、これ以上戦いを続けるのはいかがなものかと思うのだがな」
「……マスター。指示を」
『セイバー』のマスター、遠坂凛はしばらく悩んだのち答える。
「……構わないわ。ただ、一つだけ条件がある」
「ふむ?」
「『アサシン』、貴方は目撃者を殺さないで。人が残ってるのに気付かなかったのは私の落ち度だから、責任は私がとるわ」
魔術師たるもの、神秘は秘匿しなければいけない。そのためには、一般人の目撃者は殺すしかない。
そんなことは百も承知だし、この決断が心の贅肉なのも分かっている。
ただ、自分のせいで無関係な生徒が犠牲になることがどうしても許せなかった。
「なるほど、承知した。では失礼するとしよう」
そう言って、『アサシン』…佐々木小次郎は姿を消した。
「……マスター。指示を」
『セイバー』のマスター、遠坂凛はしばらく悩んだのち答える。
「……構わないわ。ただ、一つだけ条件がある」
「ふむ?」
「『アサシン』、貴方は目撃者を殺さないで。人が残ってるのに気付かなかったのは私の落ち度だから、責任は私がとるわ」
魔術師たるもの、神秘は秘匿しなければいけない。そのためには、一般人の目撃者は殺すしかない。
そんなことは百も承知だし、この決断が心の贅肉なのも分かっている。
ただ、自分のせいで無関係な生徒が犠牲になることがどうしても許せなかった。
「なるほど、承知した。では失礼するとしよう」
そう言って、『アサシン』…佐々木小次郎は姿を消した。
「マスター、どうするんですか?」
戦闘終了後、『セイバー』が尋ねてきた。
「そうね……兎に角、明日目撃者に直接聞くしかないわね。今から追っても間に合わないでしょうし」
「はい…。けど、その目撃した人が誰か分かるんですか?」
「ええ。一応、心当たりがあるわ」
足跡がした方を振り向いた時、一瞬だけ見えた短髪の赤毛。そもそも、こんな時間まで学校に残っているという時点で候補は限られているのだ。
あまり他の生徒と関わらない私の耳にも、否が応でも彼の噂は入ってくる。頼まれたことは断らない、学校の便利屋。きっと、今日も生徒会か何かの手伝いをしていたのだろう。
「衛宮くん。きっと彼に違いないわ。明日、朝一で確認しましょう」
戦闘終了後、『セイバー』が尋ねてきた。
「そうね……兎に角、明日目撃者に直接聞くしかないわね。今から追っても間に合わないでしょうし」
「はい…。けど、その目撃した人が誰か分かるんですか?」
「ええ。一応、心当たりがあるわ」
足跡がした方を振り向いた時、一瞬だけ見えた短髪の赤毛。そもそも、こんな時間まで学校に残っているという時点で候補は限られているのだ。
あまり他の生徒と関わらない私の耳にも、否が応でも彼の噂は入ってくる。頼まれたことは断らない、学校の便利屋。きっと、今日も生徒会か何かの手伝いをしていたのだろう。
「衛宮くん。きっと彼に違いないわ。明日、朝一で確認しましょう」
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
【聖杯戦争1日目:終了】
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
【聖杯戦争1日目:終了】
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本日の投下は以上です。
サーヴァントは色々ごちゃ混ぜにしてます。マスターはだいたい五次準拠です。もしかしたら五次にいないマスターも出るかもしれませんが
サーヴァントは色々ごちゃ混ぜにしてます。マスターはだいたい五次準拠です。もしかしたら五次にいないマスターも出るかもしれませんが
※訂正
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【聖杯戦争2日目:開始】
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【聖杯戦争2日目:開始】
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結局、他のサーヴァントからの襲撃はなかった。上手く巻けたのか、それとも別の理由があるのかは分からない。
なので、今日も学校に普通に登校することにした。今日は一人での登校だ。
『一人じゃないですよ、ご主人様♪』
「いや、ナチュラルに心の声読むのやめてくれないかな」
訂正。『キャスター』と二人での登校だ。
昨日の時点で、『セイバー』とアサシンらしきサーヴァントの存在は確認出来た。となると、残るサーヴァントはアーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカーの四騎だ。
アーチャー以外の三騎は基本的に白兵戦を得意とするサーヴァント。それらが互いに消耗しあってくれればベストだ。残った方を『キャスター』が仕留めればよい。
そうなると、問題はアーチャーだ。(多分)遠距離狙撃が可能であるアーチャーをどのように発見するか、前線に引っ張り出すかが課題になるわけだが……
なので、今日も学校に普通に登校することにした。今日は一人での登校だ。
『一人じゃないですよ、ご主人様♪』
「いや、ナチュラルに心の声読むのやめてくれないかな」
訂正。『キャスター』と二人での登校だ。
昨日の時点で、『セイバー』とアサシンらしきサーヴァントの存在は確認出来た。となると、残るサーヴァントはアーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカーの四騎だ。
アーチャー以外の三騎は基本的に白兵戦を得意とするサーヴァント。それらが互いに消耗しあってくれればベストだ。残った方を『キャスター』が仕留めればよい。
そうなると、問題はアーチャーだ。(多分)遠距離狙撃が可能であるアーチャーをどのように発見するか、前線に引っ張り出すかが課題になるわけだが……
「ねえ、衛宮くん」
そんな事を考えている時、突然声をかけられた。気付けばもう校門の前だ。
声をかけた主が誰かはすぐに分かった。
「遠坂……さん?」
遠坂凛。才色兼備、文武両道。文句なしの優等生で、学園のアイドル的存在だ。
別に衛宮士郎と同じクラスじゃないし、特に接点もないはずだが……
「えっと、何か用か?」
彼女は少し悩む素振りをした後、こう答えた。
「……あなた、マスターなのね?」
「!?…マスターって、何のだよ」
「とぼけても無駄よ。貴方がそばにサーヴァントを霊体化させてることは分かってるわ」
『ご主人様、間違いありません。あの小娘のすぐそばにサーヴァントの気配があります』
「…ああ。遠坂もマスターなんだな」
そんな事を考えている時、突然声をかけられた。気付けばもう校門の前だ。
声をかけた主が誰かはすぐに分かった。
「遠坂……さん?」
遠坂凛。才色兼備、文武両道。文句なしの優等生で、学園のアイドル的存在だ。
別に衛宮士郎と同じクラスじゃないし、特に接点もないはずだが……
「えっと、何か用か?」
彼女は少し悩む素振りをした後、こう答えた。
「……あなた、マスターなのね?」
「!?…マスターって、何のだよ」
「とぼけても無駄よ。貴方がそばにサーヴァントを霊体化させてることは分かってるわ」
『ご主人様、間違いありません。あの小娘のすぐそばにサーヴァントの気配があります』
「…ああ。遠坂もマスターなんだな」
「で、何の用だよ」
「そうね……もし貴方が私たちの戦闘を目撃しただけの一般人だったら口封じをしてたところなんだけど」
『口封じ』って、最悪殺されたんだろうか。恐ろしい。
「ま、宣戦布告ってところね。日中の学校ではさすがに戦わないけど、そうじゃない所で会ったら容赦しないから」
そのまま彼女は手を振りながら去っていく。自分にはその背中を黙って見ることしか出来なかった。
『……よろしかったのですか?彼女と手を組む選択肢もあったのでは……』
「あぁ…それも考えたけど。向こうにメリットが無いから、どうせ乗らないと思ってさ」
先ほど、彼女は『私たちの戦闘を』と言っていた。ということは、彼女は『セイバー』か『アサシン』のマスターだということ。
昨日の戦闘からして、どちらも強力なサーヴァントだ。きっと、向こうは単騎でも戦えるだろう。であれば、自称最弱のサーヴァントである『キャスター』と同盟を組む必要はない。
「そうね……もし貴方が私たちの戦闘を目撃しただけの一般人だったら口封じをしてたところなんだけど」
『口封じ』って、最悪殺されたんだろうか。恐ろしい。
「ま、宣戦布告ってところね。日中の学校ではさすがに戦わないけど、そうじゃない所で会ったら容赦しないから」
そのまま彼女は手を振りながら去っていく。自分にはその背中を黙って見ることしか出来なかった。
『……よろしかったのですか?彼女と手を組む選択肢もあったのでは……』
「あぁ…それも考えたけど。向こうにメリットが無いから、どうせ乗らないと思ってさ」
先ほど、彼女は『私たちの戦闘を』と言っていた。ということは、彼女は『セイバー』か『アサシン』のマスターだということ。
昨日の戦闘からして、どちらも強力なサーヴァントだ。きっと、向こうは単騎でも戦えるだろう。であれば、自称最弱のサーヴァントである『キャスター』と同盟を組む必要はない。
「ま、焦る必要はないさ。まだ戦争は始まったばかりだし、しばらくは様子見に徹した方がいいだろ」
そう。『キャスター』の戦力も考えれば今仕掛けるのは無謀だ。当面は敵の出方を伺うべきだろう。ひょっとしたら、その最中に同盟相手が見つかるかもしれない。
『おぉー……なるほど、流石ご主人様。素晴らしい分析です!』
「いや、そんな……このくらい普通だって」
『それはそうと、ご主人様。一つご報告しなければいけないことがありまして』
「ん、何だ?」
『どうやら、この学校に魔術的な罠が仕掛けられているみたいです。それも大量に』
「……なんだって?そんなの全然気付かなかったぞ」
『けっこう巧妙に仕掛けられてるみたいですから、違和感がなくても仕方ありません。ぶっちゃけ私にも正確にはどこにあるかは分かりませんし』
「そうか……でも、罠なんて昨日の夜には無かったはずだよな?」
『はい。つまり、これだけ大量の罠を一晩で設置したとなると……』
「……仕掛けた犯人はかなりの魔術師、ってことか」
『はい。もしくは魔術の心得があるサーヴァントですかね』
そう。『キャスター』の戦力も考えれば今仕掛けるのは無謀だ。当面は敵の出方を伺うべきだろう。ひょっとしたら、その最中に同盟相手が見つかるかもしれない。
『おぉー……なるほど、流石ご主人様。素晴らしい分析です!』
「いや、そんな……このくらい普通だって」
『それはそうと、ご主人様。一つご報告しなければいけないことがありまして』
「ん、何だ?」
『どうやら、この学校に魔術的な罠が仕掛けられているみたいです。それも大量に』
「……なんだって?そんなの全然気付かなかったぞ」
『けっこう巧妙に仕掛けられてるみたいですから、違和感がなくても仕方ありません。ぶっちゃけ私にも正確にはどこにあるかは分かりませんし』
「そうか……でも、罠なんて昨日の夜には無かったはずだよな?」
『はい。つまり、これだけ大量の罠を一晩で設置したとなると……』
「……仕掛けた犯人はかなりの魔術師、ってことか」
『はい。もしくは魔術の心得があるサーヴァントですかね』
書き込み出来てるか不安だけど一応今日投下する分は終了ってことで。
動画作りと新生活の色々が忙しすぎてこっちに手を全然回せてない現状。
動画作りと新生活の色々が忙しすぎてこっちに手を全然回せてない現状。
魔術の心得がある未登場クラスの鯖なんてエミヤとフィンくらいしか…
エターナルに筆が続くんですねわかります
エターナルに筆が続くんですねわかります
その日の放課後。自分は『キャスター』と共に罠を解体することにした。
「罠がもし発動したらウチの生徒や先生がみんな巻き添えになる。それだけは阻止しないとダメだ」
『くっ、イケ魂が眩しい……!……ですが、きっといたちごっこになりますよ?片っ端から解除していっても、また張り直されたら意味が……』
「いいんだよ。罠の展開を遅らせることは出来る。それに、誰が仕掛けたかが分かれば大きいだろ?」
『なるほど!罠を解除した上で張り直すところを待ち伏せするわけですね!』
「ま、そういうことだ」
話を切り上げ、意識を集中する。今いるのは屋上。ここから下へ下へと降りて罠を順に破壊するという寸法だ。
「罠がもし発動したらウチの生徒や先生がみんな巻き添えになる。それだけは阻止しないとダメだ」
『くっ、イケ魂が眩しい……!……ですが、きっといたちごっこになりますよ?片っ端から解除していっても、また張り直されたら意味が……』
「いいんだよ。罠の展開を遅らせることは出来る。それに、誰が仕掛けたかが分かれば大きいだろ?」
『なるほど!罠を解除した上で張り直すところを待ち伏せするわけですね!』
「ま、そういうことだ」
話を切り上げ、意識を集中する。今いるのは屋上。ここから下へ下へと降りて罠を順に破壊するという寸法だ。
「解析、開始……っ!」
頭の中を高圧電流が流れるような感覚。脳が焼き切れそうなほどの痛みの中、違和感がある場所を片っ端から探って行く。
「……屋上には4箇所。ここから12時の方向に1つ、6時の方向に2つ、4時方向に1つかな」
「はい、分かりました!じゃあちゃっちやまと解除してきますね!」
いつの間にか『キャスター』は実体化していた。自分が言った方に駆け足で向かい、罠を丁寧に解除している。
その間に自分は精神を落ち着かせて、買っておいたペットボトルの水を飲むことにした。
魔術も小規模なものならまだしも、大規模なものやある程度高度なものを使うと体への負担が大きい。
もし校舎全体を一気に解析しようものなら間違いなく廃人になってしまうだろう。手間がかかるとはいえ、一箇所ずつ地道に調べていくしかないのだ。
「はぁ……もっと効率的に出来ればなぁ。どんなに楽だったか……」
「なーに言ってるんですかご主人様。正義の味方は泥臭くあってこそですよ!落ち込む必要はありません!」
「あぁ……そうだな。悪い、らしくなかったかもな。よし、次行くぞ!」
「はい!」
頭の中を高圧電流が流れるような感覚。脳が焼き切れそうなほどの痛みの中、違和感がある場所を片っ端から探って行く。
「……屋上には4箇所。ここから12時の方向に1つ、6時の方向に2つ、4時方向に1つかな」
「はい、分かりました!じゃあちゃっちやまと解除してきますね!」
いつの間にか『キャスター』は実体化していた。自分が言った方に駆け足で向かい、罠を丁寧に解除している。
その間に自分は精神を落ち着かせて、買っておいたペットボトルの水を飲むことにした。
魔術も小規模なものならまだしも、大規模なものやある程度高度なものを使うと体への負担が大きい。
もし校舎全体を一気に解析しようものなら間違いなく廃人になってしまうだろう。手間がかかるとはいえ、一箇所ずつ地道に調べていくしかないのだ。
「はぁ……もっと効率的に出来ればなぁ。どんなに楽だったか……」
「なーに言ってるんですかご主人様。正義の味方は泥臭くあってこそですよ!落ち込む必要はありません!」
「あぁ……そうだな。悪い、らしくなかったかもな。よし、次行くぞ!」
「はい!」
『キャスター』の協力もあって、無事校舎にあった罠は日が落ちる前に全て解除することが出来た。
「いえ……まだです。まだ、とびきり大きい罠が残ってます」
「え……?」
……いや、校舎にはもうないはずだ。それは既に全ての階層を解析し終えている。細かいのならまだしも、とびきり大きいのがあるはずがない。
となると、残る可能性は一つだけ。
「弓道場か……!」
この穂群原学園の特徴として、バカみたいに大きい弓道場がある。理事長の趣味だか何だか知らないが、この町どころか市でも有数の大きさだ。
ここは何かと縁がある場所だ。というか、何を隠そう衛宮士郎はかつて弓道部の一員だったのだ。とはいえ一年以上前に辞めてしまっているが。
こうして弓道場に足を踏み入れるのは本当に久しぶりだ。
だが、いくら久しぶりといえこの異変に気付かないほど愚鈍な人間ではない。
「これは……!?」
そこには、壁一面に書かれた膨大な量の魔術式があった。今は静かに威圧感を放っているが、ここに少しでも魔力が流れたら……考えるだけでも恐ろしい。
「『キャスター』、今すぐ解呪を……っ!?」
その時、閉めたはずの扉から突風が吹き込んできた。同時に感じたのは、『キャスター』と似たような魔力の塊。
今は舞い上がるホコリと月光のせいで姿はよく見えないが……間違いない、サーヴァントだ!
だが、いくら久しぶりといえこの異変に気付かないほど愚鈍な人間ではない。
「これは……!?」
そこには、壁一面に書かれた膨大な量の魔術式があった。今は静かに威圧感を放っているが、ここに少しでも魔力が流れたら……考えるだけでも恐ろしい。
「『キャスター』、今すぐ解呪を……っ!?」
その時、閉めたはずの扉から突風が吹き込んできた。同時に感じたのは、『キャスター』と似たような魔力の塊。
今は舞い上がるホコリと月光のせいで姿はよく見えないが……間違いない、サーヴァントだ!
「よお坊主。死にたくなけりゃそれに触るんじゃねーぞ」
ホコリが晴れて見えたのは、青い装束を身に纏い紅の槍を手にした男性だった。ステータスを見るまでもない、間違いなく彼は『ランサー』だろう。
触るなと言われたので、大人しく壁から離れる。ふと横を見ると、『キャスター』が敵意むき出しで『ランサー』を睨みつけている。
このまま戦闘になるのだろうか。そう思っていたところに、予想外の声が聞こえてきた。
「クハッ、ハハハッ!もういい、下がっていいよ『ランサー』」
『ランサー』が霊体化し、今度は声の主が姿を現した。……間違いない、間違えようがない。彼が、『ランサー』のマスターなのだ。
「よお、衛宮」
「慎二……!」
課題レポートと動画作りとポケモンに追われながらも週一投稿のペースは維持していきたい。
今回の描写から分かるように(ぶっちゃけタイトルで分かる)このSSの衛宮士郎は原作とは大きく離れています。
何故本編からこうも違ってしまったのか。そこら辺はSSの後半で分かります。タブンネ。
今回の描写から分かるように(ぶっちゃけタイトルで分かる)このSSの衛宮士郎は原作とは大きく離れています。
何故本編からこうも違ってしまったのか。そこら辺はSSの後半で分かります。タブンネ。
【余談】
このSSから入ってくれた人がいるみたいで嬉しいです。ぶっちゃけTwitterでの身内くらいしか見ないんじゃないかと思ってたので()
もし興味があって見てやってもいいって人がいたら今日上げた動画も見てね!(露骨な宣伝)
ということで今回はここまでです。お疲れ様でした
このSSから入ってくれた人がいるみたいで嬉しいです。ぶっちゃけTwitterでの身内くらいしか見ないんじゃないかと思ってたので()
もし興味があって見てやってもいいって人がいたら今日上げた動画も見てね!(露骨な宣伝)
ということで今回はここまでです。お疲れ様でした
間桐慎二。間桐桜の兄で、衛宮士郎のクラスメイト。そして、弓道部の副部長。
だが、彼が魔術師なんて話は聞いたことがないし、そんな素振りだって見たことない。
「慎二、お前……!」
お前が『ランサー』のマスターなのか?お前がこの罠を仕掛けたのか?何のために?この罠が発動すればどれだけの生徒が犠牲になる?そもそも、お前は魔術師だったのか?
言いたいことは山のようにある。だが、何と言っていいのか分からない。お前、の後の句がまるで出てこない。
自分言葉を詰まらせているのを見てか、それとも初めからその予定だったのか、彼は友人に声をかけた。
「衛宮。久しぶりに二人だけで遊ばないか?」
「は……?」
「僕の家で、さ」
だが、彼が魔術師なんて話は聞いたことがないし、そんな素振りだって見たことない。
「慎二、お前……!」
お前が『ランサー』のマスターなのか?お前がこの罠を仕掛けたのか?何のために?この罠が発動すればどれだけの生徒が犠牲になる?そもそも、お前は魔術師だったのか?
言いたいことは山のようにある。だが、何と言っていいのか分からない。お前、の後の句がまるで出てこない。
自分言葉を詰まらせているのを見てか、それとも初めからその予定だったのか、彼は友人に声をかけた。
「衛宮。久しぶりに二人だけで遊ばないか?」
「は……?」
「僕の家で、さ」
彼に案内されるがままに間桐家に入り、大きなソファに座る。
外見通り広々とした部屋とは対照的に照明は薄暗く、なんとも不気味に思えた。
「……いきなりだけど、聞かせてもらうぞ。慎二、お前は魔術師だったんだな?」
「ああ、そうとも。もともと間桐の家は魔術師の家系でね、聖杯戦争のシステムや令呪を開発したのも間桐なのさ」
「そうだったのか……初耳だ」
「というか、衛宮。お前こそなんでマスターとかやってるわけ?お前が魔術師だなんて、こっちこそ聞いてないんだけど?」
「あー……まあモグリでやってたからな。いや、それはどうでもいいんだ」
話が本筋からズレそうだったので軌道修正する。無駄話をする余裕は時間的にも精神的にもないのだ。
外見通り広々とした部屋とは対照的に照明は薄暗く、なんとも不気味に思えた。
「……いきなりだけど、聞かせてもらうぞ。慎二、お前は魔術師だったんだな?」
「ああ、そうとも。もともと間桐の家は魔術師の家系でね、聖杯戦争のシステムや令呪を開発したのも間桐なのさ」
「そうだったのか……初耳だ」
「というか、衛宮。お前こそなんでマスターとかやってるわけ?お前が魔術師だなんて、こっちこそ聞いてないんだけど?」
「あー……まあモグリでやってたからな。いや、それはどうでもいいんだ」
話が本筋からズレそうだったので軌道修正する。無駄話をする余裕は時間的にも精神的にもないのだ。
「慎二、あの罠はお前が用意したんだろ?」
「ああ。うちの『ランサー』は魔術の心得もあったからね。で?それがどうかした?」
「それがどうしたって……!キャスターに聞いた!あれが起動すれば学校中が火の海になりかねないんだろ!何でわざわざあんなものを!」
「ほら、この学校には遠坂凛っていう生粋の魔術師がいるだろう?僕としても防衛策はとっておきたくてね」
「だからって、あんな危険なものを……!」
「衛宮も知っての通り、僕はケンカが嫌いだ。それに……僕たちは昔からの友達じゃないか」
「………っ」
違う。
今の彼はどこかおかしい。聖杯戦争という大きな戦いに参加したことで、きっと無意識のうちに狂ってしまったに違いない。
そうでなければ、あんな歪んだ顔で笑えるはずがないのだから。
「ああ。うちの『ランサー』は魔術の心得もあったからね。で?それがどうかした?」
「それがどうしたって……!キャスターに聞いた!あれが起動すれば学校中が火の海になりかねないんだろ!何でわざわざあんなものを!」
「ほら、この学校には遠坂凛っていう生粋の魔術師がいるだろう?僕としても防衛策はとっておきたくてね」
「だからって、あんな危険なものを……!」
「衛宮も知っての通り、僕はケンカが嫌いだ。それに……僕たちは昔からの友達じゃないか」
「………っ」
違う。
今の彼はどこかおかしい。聖杯戦争という大きな戦いに参加したことで、きっと無意識のうちに狂ってしまったに違いない。
そうでなければ、あんな歪んだ顔で笑えるはずがないのだから。
「まぁいいや。今度はこっちから一つ」
「……なんだよ」
「衛宮。僕と協力する気はないか?」
「……!」
「実はマスターになったものの、いかんせんまだ不慣れでね。信用できる仲間がほしいのさ」
……。
どうするべきか。『ランサー』のマスターである彼に、学校を火の海にしようとした彼に、協力を持ちかけてきた彼に。自分は何と言えばいいのだろうか。
「……なんだよ」
「衛宮。僕と協力する気はないか?」
「……!」
「実はマスターになったものの、いかんせんまだ不慣れでね。信用できる仲間がほしいのさ」
……。
どうするべきか。『ランサー』のマスターである彼に、学校を火の海にしようとした彼に、協力を持ちかけてきた彼に。自分は何と言えばいいのだろうか。
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